説明

レンズ駆動装置およびカメラモジュール

【課題】シャフトを支持する支持部の位置ずれを抑制しつつ、ホルダをベース内に円滑に収容できるレンズ駆動装置およびこれを用いたカメラモジュールを提供する。
【解決手段】
ベース10には、シャフト91の両端とシャフト92の一端を支持する孔13a、13b、14cが一体的に形成され、受け部14側からホルダ62をベース10内に挿入可能な開口Sが形成されている。シャフト92の他端を支持するシャフトホルダ80が、開口Sからベース10内にホルダ60を収容した状態で、ベース10の受け部14に装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ駆動装置およびこれを備えたカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機等にはカメラモジュールが搭載されている。かかるカメラモジュールは、フォーカス調節のためにレンズ駆動装置を備えている。レンズ駆動装置は、制御信号に応じてレンズを光軸方向に変位させる。これにより、被写体に対するフォーカス調節が行われる。
【0003】
レンズ駆動装置の一つとして、ムービングマグネット方式のレンズ駆動装置が知られている(たとえば、特許文献1)。この種のレンズ駆動装置では、レンズを保持するホルダに、磁石が装着される。ホルダは、ベースに対し、レンズの光軸方向に変位可能に支持される。ベースには、ホルダ側の磁石に向き合うようにコイルが配置される。コイルに電流を印加することにより生じる電磁駆動力によって、ホルダが磁石とともに、レンズの光軸方向に駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−185749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記レンズ駆動装置において、ホルダは、たとえば、ベースに装着された一対のシャフトによって、レンズの光軸方向に変位可能に支持される。シャフトは、レンズの光軸に対して平行となるようベースに装着される。ホルダには、各シャフトにそれぞれ係合する係合部が設けられる。
【0006】
この場合、一対のシャフトが正規の位置に正しく配置されないと、シャフト間の間隔にズレが生じ、あるいは、シャフトが互いに平行でなくなる。このため、ホルダの移動時に、シャフトとホルダの係合部との間の摩擦力が大きくなり、ホルダが円滑に移動しない惧れがある。このため、2つのシャフトは、レンズの光軸に平行となり、且つ、正規の位置に適正に位置づけられるよう、ベースに装着される必要がある。そのためには、シャフトの上下端をそれぞれ支持する支持部の位置ずれを、なるべく抑制する必要がある。
【0007】
支持部の位置ずれは、支持部をベースに一体的に形成することにより抑制され得る。支持部を別体として別途ベースに装着すると、ベースに支持部を取り付ける際に、取付誤差が起こり得る。これにより、支持部に位置ずれが起こる。これに対し、予め支持部をベースに一体的に形成しておけば、かかる取付誤差は起こり得ない。よって、各シャフトの支持部を適正に配置できる。
【0008】
しかしこうすると、ベースの上下に各シャフトの支持部が一体化されているため、ホルダをベースの上下何れから収容しようとしても、支持部が邪魔になって、ベース内にホルダを収容することができなくなってしまう。
【0009】
本発明は、かかる課題を解消するために為されたものであり、シャフトを支持する支持部の位置ずれを抑制しつつ、ホルダをベース内に円滑に収容できるレンズ駆動装置およびこれを用いたカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、レンズ駆動装置に関する。この態様に係るレンズ駆動装置は、ベースと、前記ベースに装着される2本のシャフトと、レンズを保持するとともに前記シャフトによって前記レンズの光軸方向に変位可能に支持されたホルダと、前記ホルダを駆動するための駆動部とを備える。前記ベースには、前記2本のシャフトのうち第1のシャフトの両端と第2のシャフトの一端を支持する支持部が一体的に形成され、前記第2のシャフトの他端側から前記ホルダを前記ベース内に挿入可能な開口が形成される。前記第2のシャフトの前記他端を支持する支持部材が、前記開口から前記ベース内に前記ホルダを収容した状態で、前記ベースに装着される。
【0011】
本発明の第2の態様は、カメラモジュールに関する。この態様に係るカメラモジュールは、第1の態様に係るレンズ駆動装置と、前記レンズによって集光された光を受光する撮像素子と、前記駆動部を制御する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1のシャフトの両端と第2のシャフトの一端を支持する支持部がベースに一体的に形成されているため、これら支持部をベースに対して適正な位置に配置できる。また、第2のシャフトの他端側に配された開口からホルダをベース内に円滑に収容することができる。さらに、第2のシャフトの他端が支持部材を介してベースに支持されるため、第2のシャフトをベースに対して強固に位置付けることができる。このように、本発明によれば、シャフトを支持する支持部の位置ずれを抑制しつつ、ホルダをベース内に円滑に収容できるレンズ駆動装置およびカメラモジュールを提供することができる。
【0013】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係るレンズ駆動装置の構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係るベースの構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係るホルダとシャフトの取付方法を説明する図である。
【図4】実施の形態に係る磁性板の取付形態を示す図である。
【図5】実施の形態に係る孔とシャフトの関係を示す図である。
【図6】実施の形態に係る切り溝とシャフトの関係を示す図である。
【図7】実施の形態に係るレンズ駆動装置の動作を説明する図である。
【図8】実施の形態に係るカメラモジュールの構成を示す図である。
【図9】実施の形態の変更例に係るレンズ駆動装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、レンズ駆動装置の構成を示す図である。図1(a)はレンズ駆動装置の分解斜視図である。図1(b)は、カバー100が装着される前のレンズ駆動装置の構成を示す斜視図であり、図1(c)は、カバー100が装着された状態のレンズ駆動装置の斜視図である。本実施の形態では、便宜上、レンズを不図示としている。
【0017】
図1を参照して、レンズ駆動装置は、ベース10と、コイル20と、磁性板31、32(磁性板32は図1には不図示)と、プリント基板40と、フィルタ50と、ホルダ60と、磁石70と、シャフトホルダ80と、シャフト91、92と、カバー100とを備え
ている。
【0018】
ベース10は、平面視で、角が面取りされた正方形の形状を有する。ベース10には、一続きのコイル20が2段に分けて装着される。各段のコイル20は、巻き方向が互いに逆になっている。コイル20の外側面に磁性板31、32が接着される。また、ベース10には、側面にプリント基板40が装着され、このプリント基板40に、コイル20の2つの端部が半田付けされる。さらに、ベース10には、裏面に段部(図示せず)が形成され、この段部にフィルタ50が装着される。フィルタ50は、赤外線除去フィルタである。
【0019】
ホルダ60は、平面視で八角形の形状を有する。ホルダ60は、PPS(ポリフェニレンサルファイト)により、単一部材として一体的に形成されている。ホルダ60には、その中央位置に、レンズバレルを収容するための円形の開口61が形成されている。レンズの光軸は、平面視において、ホルダ60の外形が規定する八角形の中心と一致している。ホルダ10の8つの側面は、開口61に装着されたレンズの光軸に対して対称となるように配置されている。これら8つの側面のうち、互いに隣り合わない4つの側面に、それぞれ磁石70が装着される。
【0020】
4つの磁石70は、たとえば、ネオジウム等からなる焼結磁石であり、片面にNとSが着磁された2極配置構造を有している。各磁石70のサイズおよび磁気強度は互いに等しくなっている。また、各磁石70は、その中心が、対応する側面の中心から一定距離だけ上方にずれた位置に配置されている。2つの磁石70はレンズの光軸に対して対称に配置され、残り2つの磁石70もレンズの光軸に対して対称に配置される。
【0021】
ホルダ60には、対角の位置に、孔62と切り溝63が形成されている。これら孔62と切り溝63にシャフト91、92が通されて、ホルダ60がレンズの光軸方向に変位可能に支持される。シャフト91、92は金属製の部材からなり、断面が円形である。
【0022】
カバー100は、平面視で、角が面取りされた正方形の形状を有する。平面視におけるカバー100の外形は、ベース10の外形と略等しい。平面視におけるカバー100の内側面の形状は、ベース10のコイル20と磁性板31、32が装着された部分の外形と略同じである。カバー100には、光を通すための開口101が形成されている。また、カバー100の側面には、鍔部102と孔102aが形成されている。
【0023】
図2(a)は、ベース10の構成を示す斜視図、図2(b)は、ベース10を上側から見たときの斜視図である。図示の如く、ベース10は、枠状の部材からなっている。ベース10は、樹脂材料を射出成形することにより単一部材として一体的に形成されている。ベース10には、光を通すための開口11が形成されている。また、ベース10の側面には、コイル20を巻き付けるためのコイル装着部12a、12bが、全周に亘って形成されている。
【0024】
ベース10の上面にはシャフト保持部13が形成され、このシャフト保持部13に、シャフト91を圧入するための孔13aが形成されている。また、この孔13aと同軸となる位置に、シャフト91を圧入するための孔13bが形成されている。
【0025】
また、同図(b)を参照して、ベース10の上面の、シャフト保持部13と対角の関係となる位置に、シャフトホルダ80が装着される受け部14が形成されている。この受け部14には、シャフトホルダ80の突起83(図3(a)参照)と嵌合する孔部14aと凹部14eが形成されている。また、受け部14の近傍には、シャフトホルダ80の鍔部81と係合する切り欠き14bが形成されている。さらに、受け部14の下方には、シャ
フト91が圧入される孔14cが形成されている。受け部14にシャフトホルダ80が装着されると、この孔14cが、シャフトホルダ80の孔82(図3(a)参照)と正対する。
【0026】
さらに、ベース10には、シャフト保持部13側からホルダ60をベース10内に挿入可能な大きさの開口Sが形成されている。すなわち、ホルダ60をシャフト保持部13側からベース10内に挿入可能なように、平面方向における受け部14の張り出し量が、シャフト保持部13の張り出し量よりも、小さく抑えられている。これにより、開口Sが、ホルダ60を挿入可能な大きさに広げられている。
【0027】
同図(a)を参照して、ベース10の側面には、段部15が形成され、この段部15に係止片15aが形成されている。また、ベース10の他の側面には、凹部16が形成され、この凹部16に2つの突起16aが形成されている。図示の如く、プリント基板40には、2つの突起16aに対応する位置に2つの孔41が形成されている。2つの孔41に突起16aを挿入させて、プリント基板40が凹部16に装着される。
【0028】
また、ベース10には、段部15の上方に、溝17が形成されている。この溝17は、後述のように磁性板31をコイル20の外側面に接着する際に、接着剤の溜まり溝として機能する。
【0029】
組立時には、まず、図2(a)に示すベース10にコイル20が装着される。さらに、孔41に突起16aを挿入させて、プリント基板40が凹部16に装着される。この状態で、コイル20の端部が突起16aに巻き付けられ、さらに、プリント基板40の端子部42に半田付けされる。その後、レンズと磁石70が装着されたホルダ60が、ベース10の上方からベース10の枠内に収容される。
【0030】
上記の如く、ベース10の上面に形成された開口Sは、ホルダ60を挿入可能な大きさとなっている。ホルダ60は、シャフト保持部13に向き合う側の端(前端)を下方に傾けた状態で、受け部14側から、開口Sを通って、ベース10内に挿入される。こうして、ホルダ60の前端がシャフト保持部13の下に収められた後、ホルダ60の受け部14側の端(後端)を下方に押し込む。このとき、上記のように受け部14の張り出し量が小さく抑えられているため、ホルダ60の後端は、受け部14の上面に当たることなく、ベース10内に入り込む。こうして、レンズと磁石70が装着されたホルダ60が、ベース10の枠内に収容される。
【0031】
図3(a)は、ホルダ60がベース10に収容された状態を示す図である。
【0032】
図3(a)に示す状態において、突部83をベース側の孔部14aと凹部14e(図2(b)参照)に嵌め込むようにして、シャフトホルダ80が受け部14に装着される。このとき、シャフトホルダ80の鍔部81が、ベース10上面の切り欠き14bに係合する。
【0033】
図3(c)は、ベース10の受け部14周辺の拡大図、図3(d)は、シャフトホルダ80の裏面側から見た図である。同図(d)に示すように、突起83は、円柱部83aと、円柱部83aの側面から張り出した方形状の台部83bから成っている。台部83bの高さは円柱部83aの高さよりも一段低くなっている。受け部14側の孔14aは円柱部83aと略同じ形状となっており、凹部14eは台部83bと略同じ形状となっている。
【0034】
シャフトホルダ80は、円柱部83aと台部83bをそれぞれ孔14aと凹部14eに嵌入させるようにして、受け部14の上面に接着される。このとき、2つの鍔部81の裏
側の平面部81aが、それぞれ、対応する切欠き14bの上面(平面)に当接する。
【0035】
円柱部83aと台部83bがそれぞれ孔14aと凹部14eに嵌入することで、受け部14の平面方向におけるシャフトホルダ80の位置決めが為される。このとき、方形状の台部83bが方形状の凹部14eに嵌入するため、円柱部83aを軸としたシャフトホルダ80の回動が規制される。また、2つの鍔部81の裏側の平面部81aが、それぞれ、対応する切欠き14bの上面(平面)に当接することで、受け部14の上面に垂直な方向におけるシャフトホルダ80の位置決めが為される。こうしてシャフトホルダ80の位置決めがなされ、シャフトホルダ80に形成された孔82が所定の位置に正しく位置づけられる。すなわち、シャフトホルダ80の孔82は、ベース10に形成された孔14c(図2(b)参照)と、上下方向において正対するようになる。
【0036】
図3(b)は、こうしてシャフトホルダ80が受け部14に装着された状態を示す図である。
【0037】
この状態において、孔13a、13bと、ホルダ60の孔62とを整合させ、シャフト91を孔13aから圧入する。シャフト91の先端は、孔13aに圧入された後、孔62を通り、その後、孔13b(図2(a)参照)に圧入される。この状態では、シャフト91の後端が孔13aに支持される。こうして、シャフト91のベース10に対する装着と、シャフト91と孔62との係合が完了する。
【0038】
さらに、この状態において、シャフトホルダ80の孔82と、ベース10の孔14c(図2(b)参照)と、ホルダ60の切り溝63(図1(a)参照)とを整合させ、シャフト92を孔82から圧入する。シャフト92の先端は、孔82に圧入された後、切り溝63を通り、その後、孔13cに圧入される。この状態では、シャフト92の後端が孔82に支持される。こうして、シャフト92のベース10に対する装着と、シャフト92と切り溝63との係合が完了する。
【0039】
このように2本のシャフト91、92が装着されることにより、ホルダ60が、レンズの光軸方向に変位可能となるように、ベース10に装着される。しかる後、コイル20の外側面に2つの磁性板31、32が接着される。
【0040】
図4(a)、(b)は、磁性板31、32の装着状態を示す図である。同図(a)は、図1(b)と略同じアングルからレンズ駆動装置を見たときの斜視図、同図(b)は、同図(a)の状態からレンズ駆動装置をレンズの光軸を軸として反時計方向に略90度回転させた状態の斜視図である。同図(b)に示すように、コイル20の外側面には、磁性板31の他に磁性板32が接着される。また、ベース10の磁性板32の近傍には溝18が形成されている。磁性板31、32の接着時には、溝17、18が、接着剤の溜まり溝として機能する。なお、コイル20の外側面には、これら2つの磁性板31、32以外の磁性板は装着されていない。磁性板31、32は、同じ大きさとなっている。
【0041】
こうして磁性板31、32が装着された後、図1(b)に示すように、上方からカバー100がベースに装着される。このとき、カバーの鍔部102がベース10の段部15に嵌り込み、さらに、鍔部102の孔102aが段部15の係止片15aと係合する。こうして、図1(c)に示すように、レンズ駆動装置の組み立てが完了する。
【0042】
図5は、ホルダ60に形成された孔62と、シャフト91との間の係合関係を示す図である。同図(a)は、ホルダ60の上面図、同図(b)は、同図(a)のB−B’断面図、同図(c)は、シャフト91が挿入された状態の孔62の部分の平面図である。
【0043】
同図(b)に示す如く、孔62のシャフト91が挿入される部分の深さはQである。孔62の径Rはシャフト91の径Pよりも僅かに大きい。このため、ホルダ60は、シャフト62に摺接しながら、レンズの光軸方向に変位可能となる。
【0044】
図6は、ホルダ60に形成された切り溝63と、シャフト92との間の係合関係を示す図である。同図(a)は、ホルダ60の上面図、同図(b)は、同図(a)のC−C’断面図、同図(c)は、シャフト92が挿入された状態の切り溝63の部分の平面図である。
【0045】
同図(b)に示す如く、切り溝63のシャフト92が挿入される部分の深さはSである。同図(c)に示すように、切り溝63には、半円形状の円弧部63aと、円弧部63に続く2つの壁面部63bが形成されている。2つの壁面部63bは、互いに平行で、且つ、レンズの光軸に平行となっている。2つの壁面部63bの間にシャフト92が挿入される。2つの壁面部63bの間の距離Tは、シャフト92の径Pよりも僅かに大きい。このように構成されることで、ホルダ60は、シャフト62に摺接しながら、レンズの光軸方向に変位可能となる。
【0046】
本実施の形態では、2つのシャフト91、92の径Pは同じである。また、孔62の深さQと切り溝63の深さSも同じである。さらに、孔62の径Rと切り溝63のギャップTも同じである。
【0047】
本実施の形態では、図4に示すように、2つの磁性板31、32が配置されているため、これら2つの磁性板31、32と磁石70との間の磁力によって、ホルダ60には、レンズの光軸に垂直な方向の力が加わる。この力によって、レンズホルダ60の孔62と切り溝63は、シャフト90に押し付けられる。これにより、コイル20に対する電流の印加が中止されても、ホルダ60を電流印加中止時の位置に位置づけられる。
【0048】
また、本実施の形態では、磁性板31、32の位置が、コイル20が巻かれたホルダ60の側面の中心位置からシャフトホルダ80側に偏った位置に調整されている。これにより、電流印加時のホルダ60の移動がスムーズに行われる。すなわち、孔62はシャフト91と略同径の円弧部分がシャフト91の外周に接し、切り溝63は、平面部分(壁面63b)がシャフト92の外周に接する。このため、シャフト91と孔62の接触面積は、シャフト92と切り溝63との接触面積よりも数段大きくなる。よって、シャフト91と孔62との間の摩擦係数は、シャフト91と切り溝63との間の摩擦係数よりも大きい。
【0049】
したがって、磁性板31、32と磁石70との間の磁力により孔62と切り溝63が、それぞれ、シャフト91、92に同じ力で押し付けられると、シャフト91と孔62との間の摩擦力の方が、シャフト91と切り溝63との間の摩擦力よりも大きくなり、シャフト91、92に沿ったホルダ62の移動がスムーズに行われなくなる。これを解消するべく、本実施の形態では、上記のように磁性板31、32の位置が調整され、孔62よりも切り溝63の方がシャフト91、92に強く押し付けられるようになされている。これにより、シャフト91と孔62との間の摩擦力と、シャフト91と切り溝63との間の摩擦力とが均等化され、シャフト91、92に沿ってホルダ62がスムーズに移動する。
【0050】
図7は、レンズ駆動装置の駆動動作を説明する図である。この図は、図4(a)のA−A’断面を模式的に示す図である。なお、図中、円に黒点のマークおよび円にバツのマークは、電流が流れる方向を示す。円に黒点のマークは図面参照者に向かってくる方向を示し、円にバツのマークは図面参照者から遠ざかる方向を示す。
【0051】
図示のように、コイル20の上段部分21には、磁石70のN極の領域が対向し、下段
部分22には、磁石70のS極の領域が対向している。コイル20に図7(a)に示す方向の電流が流れると、磁石70に図の上方向の推進力が作用し、レンズホルダ60は図の上方向に変位する。これにより、レンズホルダ60は、同図(b)に示すように、上方向に変位する。この状態で、電流の印加が中止されると、ホルダ60は、磁性板31、32と磁石70との間の磁力によってシャフト91、92に押し付けられ、電流印加中止時の位置に保持される。また、図7(b)の状態において、コイル20に逆方向の電流が印加されると、レンズホルダ60は下方向に変位される。
【0052】
このようにして、レンズホルダ60が上方向と下方向に変位されることにより、レンズがオンフォーカス位置に位置づけられる。なお、レンズホルダ60のホームポジションは、レンズホルダ60の下面がベース10に当接する位置である。
【0053】
図8は、上記構成のレンズ駆動装置を搭載するカメラモジュールの概略構成を示す図である。図中、1がレンズ駆動装置である。
【0054】
ベース10の下方には、イメージセンサ200が配されている。また、ベース10には、位置センサとしてホール素子110が配され、ホール素子110からの信号をもとにレンズホルダ60の位置検出が行われる。
【0055】
フォーカス動作時、CPU(Central Processing Unit)301は、ドライバ302を
制御して、レンズホルダ60をホームポジションから予め定められた位置までレンズの光軸方向に変位させる。このとき、ホール素子110からの位置検出信号がCPU301に入力される。同時に、CPU301は、イメージセンサ200から入力される信号を処理して撮像画像のコンストラスト値を取得する。そして、このコンストラスト値が最良となるレンズホルダ60の位置をオンフォーカス位置として取得する。
【0056】
その後、CPU301は、取得したオンフォーカス位置に向けてレンズホルダ60を駆動する。その際、CPU301は、ホール素子110からの信号をモニタし、ホール素子110からの信号がオンフォーカス位置に対応する状態になるまで、レンズホルダ60を駆動する。これにより、レンズホルダ60がオンフォーカス位置に位置づけられる。
【0057】
以上、本実施の形態によれば、シャフト91の両端を支持する孔13a、13bと、シャフト92の一端を支持する孔14cが、ベース10に一体的に形成されているため、これら孔13a、13b、14cを、ベース10に対して適正な位置に配置できる。また、シャフトホルダ80がベース10に装着されるよう構成されているため、シャフトホルダ80が装着されていない状態において、シャフト92の他端側に配された開口Sからホルダ60をベース10内に収容することができる。さらに、シャフト92の他端がシャフトホルダ80を介してベースに支持されるため、シャフト92をベースに対して強固に装着することができる。このとき、シャフトホルダ80(突起83、鍔部81)と受け部14(孔14a、凹部14e、切り欠き14b)の成型精度を高めることにより、シャフトホルダ80の取付誤差を抑制でき、シャフト92の他端を支持する孔82を、適正な位置に配置することができる。このように、本実施の形態によれば、シャフト91、92の位置ずれを抑制しつつ、ホルダ60をベース10内に円滑に収容することができる。
【0058】
また、本実施の形態によれば、シャフトホルダ80側の円柱部83a、台部83bおよび鍔部81を、それぞれ、受け部14側の孔14a、凹部14eおよび切り欠き14bに係合させることにより、シャフトホルダ80の位置決めが適正に行われる。よって、シャフトホルダ80をベース10上にずれなく位置づけることができ、シャフト92の位置ずれを抑制できる。また、この効果を、円柱部83aおよび台部83bを孔14aおよび凹部14eに嵌め込むといった簡単な作業により、達成することができる。
【0059】
また、本実施の形態によれば、シャフト92に対するホルダ60の係合部が切り溝63に形成された2つの壁面部63bからなっており、シャフト92と2つの壁面部63bとの係合状態が比較的緩やかであるため、ホルダ60に僅かな取付誤差が生じても、シャフト92と切り溝63との間の係合が強固になることがない。よって、シャフト92に沿ってホルダ60を円滑に移動させることができる。
【0060】
さらに、本実施の形態によれば、孔62と切り溝63がホルダ62に一体的に形成されているため、孔62と切り溝63に取り付け誤差が生じることもない。よって、ベース10側の孔13a、13b、14cおよび孔82と、ホルダ60側の孔62および切り溝63との間の位置関係を適正に保つことができる。この点からも、シャフト91、92に沿ってホルダ60を円滑に移動させることができる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施形態も上記以外に種々の変更が可能である。
【0062】
たとえば、上記実施の形態では、ホルダ60の一つの側面には一つの磁石70が配されるようにしたが、各側面に2つ以上の磁石を配置するようにしても良い。たとえば、図9に示すように、各側面に配される磁石70を、対応する側面に平行で且つレンズの光軸の回りの方向に2つに分離して配置するようにしても良い。同図(b)は、この場合のホルダ60部分の斜視図、同図(a)は、同図(b)を図中の破線部分で切断して上部を除いたときの上面図である。なお、この構成例では、ベース10の形状が、上記実施の形態に比べて変更されている。たとえば、同図(b)から分かるとおり、ベース10には、プリント基板40を配置するための構成が配されていない。なお、コイル20には、図中の端子41を介して、電流が印加される。
【0063】
同図(a)を参照して、この変更例では、一つの側面に配置される2つの磁石70は、平面視において、当該側面の中心から一定の距離だけ離れた位置に配置されている。このように磁石70を分離して配置することにより、開口61を大きくすることができる。これにより、同じサイズのレンズ駆動装置に、より大きなレンズを装着することでき、レンズの大きさが同じであれば、レンズ駆動装置のサイズを小さくすることができる。
【0064】
なお、磁性板31、32は、対応する側面に配置された2つの磁石のうち、切り溝63に近い方の磁石70に対して、コイル20を挟んで向き合うように配置されている。これにより、上記実施の形態と同様、切り溝63の方が孔62よりも強くシャフト90に押し付けられるようになり、コイル20に電流を印加したときのホルダ60の移動が、滑らかに行われ得る。
【0065】
また、上記実施の形態では、切り溝63によって、シャフト90の位置ずれや、孔63または切り溝63の形成誤差等を吸収するようにしたが、切り溝63に替えて、断面が長細い孔や楕円の孔等を設けて、かかる位置ずれや形成誤差等を吸収するようにしても良い。
【0066】
さらに、シャフト90の径や、孔62の径、深さ、形状および切り溝63のギャップ、深さ、形状も、上記実施の形態に限られるものではなく、適宜、変更可能である。また、ベース10やホルダ60等の形状も、上記に限られるものではなく、適宜変更が可能である。2本のシャフト91、92の径は、必ずしも同じでなくても良い。
【0067】
また、突起83と、これを受ける孔14aおよび凹部14eの形状や、鍔部81と切り欠き14bの配置および形状は、図3(c)、(d)に示したものに限られるものではな
く、互いに係合することによりシャフトホルダ80を適正に位置決めできるものであれば、適宜変更可能である。
【0068】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 … レンズ駆動装置
S … 開口
10 … ベース
13a、13b、14c … 孔(支持部)
14a … 孔(係合部、凹部)
14b … 切り欠き(係合部)
14e … 凹部(係合部、凹部)
20 … コイル(駆動部)
60 … ホルダ
62 … 孔
63b … 壁面部(壁面)
70 … 磁石(駆動部)
80 … シャフトホルダ(支持部材)
83 … 突起(係合部、突起)
81 … 鍔部(係合部)
91 … シャフト(第1のシャフト)
92 … シャフト(第2のシャフト)
200 … イメージセンサ(撮像素子)
301 … CPU(制御部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに装着される2本のシャフトと、
レンズを保持するとともに前記シャフトによって前記レンズの光軸方向に変位可能に支持されたホルダと、
前記ホルダを駆動するための駆動部と、を備え、
前記ベースには、前記2本のシャフトのうち第1のシャフトの両端と第2のシャフトの一端を支持する支持部が一体的に形成され、前記第2のシャフトの他端側から前記ホルダを前記ベース内に挿入可能な開口が形成され、
前記第2のシャフトの前記他端を支持する支持部材が、前記開口から前記ベース内に前記ホルダを収容した状態で、前記ベースに装着される、
ことを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズ駆動装置において、
前記支持部材と、前記支持部材が装着される前記ベースの装着部には、それぞれ、互いに係合して前記支持部材を前記装着部に適正に位置づけるための係合部が形成されている、
ことを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレンズ駆動装置において、
前記支持部材側の係合部は、突起を含み、
前記装着部側の係合部は、前記突起が嵌り込む凹部を含む、
ことを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載のレンズ駆動装置において、
前記ホルダには、前記第1のシャフトが挿入される孔と、前記第2のシャフトを挟む一対の壁面が配されている、
ことを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項5】
請求項4に記載のレンズ駆動装置において、
前記孔と前記壁面は、前記ホルダに一体的に形成されている、
ことを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載のレンズ駆動装置と、
前記レンズによって集光された光を受光する撮像素子と、
前記駆動部を制御する制御部と、を備える、
ことを特徴とするカメラモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−101162(P2013−101162A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47288(P2010−47288)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】