説明

レンズ駆動装置及び撮像装置

【課題】高精度かつ高分解能なレンズ位置検出が可能なレンズ駆動装置を提供する。
【解決手段】本発明は、ベース部材2と、フォーカスレンズNを保持すると共にズームレンズMの光軸方向Cでベース部材2に対して移動可能に設けられた第1のレンズ枠4と、入射した光を屈曲すると共にフォーカスレンズNに向かって光を出射する光屈曲部3と、第1のレンズ枠4を移動させる第1の駆動部V1と、第1のレンズ枠4の位置を検出する第1の位置検出部H1と、を備えたレンズ駆動装置1において、第1の位置検出部H1は、ベース部材2と第1のレンズ枠4との一方に設けられ、ズームレンズMの光軸Cに対して傾斜した反射面18を有する反射部16と、ベース部材2と第1のレンズ枠4との他方に設けられ、反射面18に光を照射する投光部と反射面に反射された光を受光する受光部とを有する第1のフォトリフレクタ12と、を備えている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズを駆動するレンズ駆動装置及びそのレンズ駆動装置を利用した撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術文献として特開2008―83396号公報がある。この公報には、光を照射する投光部及び光を受光する受光部を有するフォトリフレクタと、フォトリフレクタに対向する側面部を有し、フォトリフレクタに対して相対的に移動するレンズ保持体と、を備えたレンズの位置検出機構が記載されている。このレンズ保持体の側面部には貫通孔が形成されており、この貫通孔から内部の反射板が露出している。このように構成された位置検出機構では、フォトリフレクタが反射板と対向する場合の受光量と対向しない場合の受光量との差に基づいてレンズ保持体の位置を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008―83396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の位置検出機構では、フォトリフレクタが貫通孔内の反射板と対向する場合と対向しない場合との二段階でしかレンズの位置を検出できないため、分解能が低く微細なレンズ位置検出に対応できないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、高精度かつ高分解能なレンズ位置検出を行うことができるレンズ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、ベースと、レンズを保持すると共にレンズの光軸方向でベースに対して移動可能に設けられたレンズ枠と、レンズに向かって入射した光を屈曲する光屈曲部と、レンズ枠を移動させる駆動手段と、レンズ枠の位置を検出する位置検出手段と、を備えたレンズ駆動装置において、位置検出手段は、ベースとレンズ枠との一方に設けられ、レンズの光軸に対して傾斜した反射面を有する反射部と、ベースとレンズ枠との他方に設けられ、反射面に光を照射する投光部と反射面に反射された光を受光する受光部とを有するフォトリフレクタと、を備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るレンズ駆動装置によれば、レンズ枠の位置に応じて反射部の反射面とフォトリフレクタとの距離が変化することから、この距離をフォトリフレクタで検出することによりレンズ枠の位置を検出することができる。しかも、反射面は光軸に対して傾斜しているので、反射面とフォトリフレクタとの距離はレンズ枠の位置に応じて連続的に変化する。また、反射面は傾斜が一定の平面であることから反射面とフォトリフレクタとの距離からレンズ枠の位置を特定することができる。従って、このレンズ駆動装置によれば、フォトリフレクタにより反射面との距離を検出することで、検出距離に対応するレンズ枠の位置を精密に特定できるので、高精度かつ高分解能なレンズ位置検出を行うことができる。
【0008】
本発明に係るレンズ駆動装置においては、反射部の反射面とフォトリフレクタの投受光面とが対面していることが好ましい。
本発明に係るレンズ駆動装置によれば、反射面と投受光面とを対面させることにより、対面させない場合と比べてフォトリフレクタによる光の投光及び受光を確実に行うことができ、フォトリフレクタの検出精度の向上を図ることができる。
【0009】
本発明に係るレンズ駆動装置においては、反射部は、レンズ枠に設けられ、駆動手段は、ベースに設けられたマグネットと、レンズ枠に設けられたコイルと、を有しレンズ枠は、反射部と一体に形成され、コイルを保持するコイル保持部を有することが好ましい。
本発明に係るレンズ駆動装置によれば、レンズ枠においてコイル保持部と反射部とを一体に形成することで、構造の簡素化及び装置の小型化を図ることができる。
【0010】
本発明に係るレンズ駆動装置においては、反射面とフォトリフレクタとの距離に対するフォトリフレクタの出力電圧特性において、距離に対する出力電圧の変化率が大きい範囲を近距離用のレンズ位置検出エリア及び遠距離用のレンズ位置検出エリアの何れか一方のレンズ位置検出エリアとして設定し、当該範囲より変化率が小さい範囲を他方のレンズ位置検出に利用することが好ましい。
【0011】
本発明に係るレンズ駆動装置によれば、フォーカス用のレンズ位置検出エリアにおける検出距離に対する出力電圧の変化率の大きさに応じて、近距離用のレンズ位置検出エリアと遠距離用のレンズ位置検出エリアを設定することで、近距離及び遠距離の撮像状況にそれぞれ対応したレンズ位置検出を実現することができる。
【0012】
本発明に係るレンズ駆動装置においては、ベースは、光軸方向に延在するガイド溝を有し、レンズ枠は、ガイド溝に係合すると共にガイド溝に沿って摺動可能な凸部を有することが好ましい。
本発明に係るレンズ駆動装置によれば、ガイド部材のガイド溝に係合した凸部がレンズ枠の移動に併せてガイド溝に沿って摺動することで、レンズ枠を光軸方向に精度良く移動させることができる。また、このレンズ駆動装置では、ガイドシャフトを設ける場合と比べて部品点数を削減できので、装置の低コスト化を図ることができる。また、この構成は装置の小型化にも有利である。
【0013】
本発明に係るレンズ駆動装置においては、ベースには、レンズ枠を視認するための視認用孔が形成されていることが好ましい。
本発明に係るレンズ駆動装置によれば、レンズ駆動装置を撮像装置に取り付けた後であっても、ベースの視認用孔を利用することでレンズ枠の位置調整が行い易くなるので、組み立て作業の作業効率を向上させることができる。
【0014】
本発明に係るレンズ駆動装置において、反射面は、平面又は集光可能な曲面であることが好ましい。
反射面を集光可能な湾曲面にすることで、少ない光量で光を効率良く検知することができ、小型の反射部であっても、位置検出の精度を高めることができる。
【0015】
本発明に係るレンズ駆動装置において、反射面は、断面鋸歯状に形成されていることが好ましい。
このような構成を採用すると、反射面の傾斜角度を大きくすることができる。これによって、受光量の変化を大きくすることができ、小型の反射部であっても、位置検出の精度を高めることができる。
【0016】
本発明に係る撮像装置は、上述のレンズ駆動装置を備えることを特徴とする。
本発明に係る撮像装置によれば、高精度かつ高分解能なレンズ枠の位置検出を行うことができるので、撮像性能の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高精度かつ高分解能なレンズ位置検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態に係るレンズ駆動装置を示す側方断面図である。
【図2】図1のレンズ駆動装置を示す平面図である。
【図3】図1のレンズ駆動装置を示す斜視図である。
【図4】フォーカスレンズNがストッパ位置にある状態を示すレンズ駆動装置の側方断面図である。
【図5】図1のレンズ駆動装置におけるレンズ位置検出を説明するための模式図である。
【図6】フォトリフレクタの出力電圧特性の微動エリア及び粗動エリアの他の例を説明するためのグラフである。
【図7】フォトリフレクタの出力電圧特性の微動エリア及び粗動エリアの他の例を説明するためのグラフである。
【図8】第2の実施形態に係るレンズ駆動装置を説明するための模式図である。
【図9】第3の実施形態に係るレンズ駆動装置を示す斜視図である。
【図10】図11のベース部材及びレンズ枠を示す断面図である。
【図11】図11のレンズ枠のガイド凸部を示す拡大断面図である。
【図12】反射面の他の変形例を示す斜視図である。
【図13】反射面の更に他の変形例を示す斜視図である。
【図14】反射面の更に他の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面における寸法、形状、構成要素間の大小関係は実際のものとは必ずしも同一ではない。
【0020】
[第1の実施形態]
図1〜図4に示されるように、第1の実施形態に係るレンズ駆動装置1は、例えば薄型のデジタルカメラや撮像機能付きの携帯情報端末に組み込まれ、ズームレンズM及びフォーカスレンズNを駆動するものである。ズームレンズM及びフォーカスレンズNは、複数のレンズから構成されている。
【0021】
レンズ駆動装置1において、ズームレンズM及びフォーカスレンズNは、その光軸Cが一致するように配置されている。レンズ駆動装置1は、この光軸Cに沿う方向(以下、光軸方向Cと呼ぶ)にズームレンズM及びフォーカスレンズNを駆動する。レンズ駆動装置1の外部には、CCD[Charge Coupled Device]イメージセンサを備えた撮像部Pが設けられている。
【0022】
レンズ駆動装置1は、ベース部材2、光屈曲部3、第1のレンズ枠4、第2のレンズ枠5、ガイドシャフト6,7、マグネット8、第1のコイル9、第2のコイル10、FPC[Flexible Printed Circuits]11、第1のフォトリフレクタ12、及び第2のフォトリフレクタ13を備えている。
【0023】
ベース部材2は、ズームレンズM及びフォーカスレンズNを収容する扁平な箱状部材である。このベース部材2の長手方向は光軸方向Cに一致している。ベース部材2には、光軸C上でズームレンズM及びフォーカスレンズNを挟むように固定レンズG1、G2が設けられている。
【0024】
光屈曲部3は、ベース部材2の外側に設けられており、被写体からの被写体光の光軸Eをベース部材2に向けて屈曲させる部材である。光屈曲部3は、略三角柱状のプリズム3aを備えている。光屈曲部3は、プリズム3aによって被写体光の光軸Eを光軸方向Cへと直角に屈曲させ、ベース部材2内のズームレンズM及びフォーカスレンズNに向けて出射する。光屈曲部3から出射された被写体光は、固定レンズG1、ズームレンズM、フォーカスレンズN、及び固定レンズG2の順に通過してベース部材2の外側に出射され、撮像部Pにより検出される。
【0025】
第1のレンズ枠4及び第2のレンズ枠5は、ズームレンズM及びフォーカスレンズNを保持する長方形板状の部材である。以下、第1のレンズ枠4について説明する。
【0026】
第1のレンズ枠4の中央には、ズームレンズMが嵌め込まれるレンズ穴15が形成されている。この第1のレンズ枠4の両側には、シャフト摺動部16,17が設けられている。シャフト摺動部16,17には、光軸方向Cに延在するガイドシャフト6,7が挿通される挿通孔が形成されている。ガイドシャフト6,7は、ベース部材2に対して固定されており、第1のレンズ枠4の光軸方向Cの移動を案内する部材である。これらのガイドシャフト6,7の一端は、ベース部材2から突出して撮像部Pに固定されている。
【0027】
第1のレンズ枠4は、第1の駆動部(駆動手段)V1によりガイドシャフト6,7に沿って光軸方向Cに移動する。第1のレンズ枠4は、ベース部材2の光屈曲部3側の側壁2aとストッパ部2bとの間で移動する。第1の駆動部V1は、ベース部材2に固定された棒状のマグネット8と、第1のレンズ枠4に固定された第1のコイル9と、からなるリニアアクチュエータである。マグネット8は、ベース部材2内で光軸方向Cに延在するように配置されており、光軸方向CでN極とS極とが交互に着磁されている。
【0028】
第1のコイル9は、第1のレンズ枠4のシャフト摺動部16と一体に固定されている。すなわち、シャフト摺動部16は、第1のコイル9を保持するコイル保持部としても機能する。第1のコイル9の空芯部には、マグネット8が挿通されている。第1の駆動部V1は、通電により第1のコイル9とマグネット8との間に生じる推力によって第1のレンズ枠4を駆動する。
【0029】
図2,図3及び図5に示されるように、第1のレンズ枠4のシャフト摺動部16は、第1のフォトリフレクタ12の光を反射する反射部としても機能するものである。シャフト摺動部16の側面には、反射用平面18が形成されている。この反射用平面18は光軸Cに対して傾斜して設けられている。図5に示すL1は光軸Cに平行な仮想線である。反射用平面18は、光軸方向Cでベース部材2の出口側すなわち固定レンズG2側に向かうほど光軸Cから離れる方向に傾斜している。
【0030】
第1のフォトリフレクタ12は、ベース部材2の側壁2cに埋設されており、投受光面12aがベース部材2の内部に露出している。第1のフォトリフレクタ12の背面には、FPC11の第1の接続端部11aが接続されている。第1の接続端部11aは、ベース部材2の前面側でFPC11のターミナル11bと連結されている。
【0031】
第1のフォトリフレクタ12は、反射用平面18に光を照射する投光部と反射用平面18に反射された光を受光する受光部とを有している(いずれも図示せず)。また、第1のフォトリフレクタ12は、投受光面12aが反射用平面18と対面するように配置されている。すなわち、第1のフォトリフレクタ12は、投受光面12aが反射用平面18と平行になるように配置されている。
【0032】
第1のフォトリフレクタ12と反射用平面18を有するシャフト摺動部16とは、第1のレンズ枠4の位置を検出する第1の位置検出部(位置検出手段)H1として機能する。この第1の位置検出部H1によれば、第1のレンズ枠4の位置に応じて第1のフォトリフレクタ12の投受光面12aと反射用平面18との距離が変わることから、第1のフォトリフレクタ12により投受光面12aと反射用平面18との距離を検出することで、第1のレンズ枠4の位置検出を行うことができる。
【0033】
次に、第2のレンズ枠5について説明を行う。図1〜図4に示されるように、第2のレンズ枠5の中央には、フォーカスレンズNが嵌め込まれるレンズ穴20が形成されている。この第2のレンズ枠5と第1のレンズ枠4とはほぼ同様の構成を有している。
【0034】
第2のレンズ枠5の両側には、シャフト摺動部21,22が設けられている。シャフト摺動部21,22には、光軸方向Cに延在するガイドシャフト6,7がそれぞれ挿通される挿通孔が形成されている。第2のレンズ枠5は、ベース部材2のストッパ部2bと撮像部P側の側壁2dとの間でガイドシャフト6,7に沿って移動する。第2のレンズ枠5は、第2の駆動部(駆動手段)V2により光軸方向Cに移動する。
【0035】
第2の駆動部V2は、ベース部材2に固定された棒状のマグネット8と、第2のレンズ枠5に固定された第2のコイル10と、からなるリニアアクチュエータである。第2の駆動部V2は、通電により第2のコイル10とマグネット8との間に生じる推力によって第2のレンズ枠5を駆動する。第2のコイル10は、第2のレンズ枠5のシャフト摺動部21と一体に固定されている。すなわち、シャフト摺動部21は、第2のコイル10を保持するコイル保持部としても機能する。
【0036】
図2,図3及び図5に示されるように、第2のレンズ枠5のシャフト摺動部21は、第2のフォトリフレクタ13の光を反射する反射部としても機能するものである。シャフト摺動部21の側面には、反射用平面23が形成されている。この反射用平面23は光軸Cに対して傾斜して設けられている。図5に示すL2は光軸Cに平行な仮想線である。反射用平面23は、光軸方向Cでベース部材2の出口側すなわち固定レンズG2側に向かうほど光軸Cから離れる方向に傾斜している。
【0037】
第2のフォトリフレクタ13は、投受光面13aが内側に露出するようにベース部材2の側壁2cに埋設されている。第2のフォトリフレクタ13の背面には、FPC11の第2の接続端部11cが接続されている。
【0038】
第2のフォトリフレクタ13は、反射用平面23に光を照射する投光部と反射用平面23に反射された光を受光する受光部とを有している(いずれも図示せず)。また、第2のフォトリフレクタ13は、投受光面13aが反射用平面23と対面するように配置されている。すなわち、第2のフォトリフレクタ13は、投受光面13aが反射用平面23と平行になるように配置されている。第2のフォトリフレクタ13と反射用平面23を有するシャフト摺動部21とは、第2のレンズ枠5の位置を検出する第2の位置検出部(位置検出手段)H2として機能する。
【0039】
このような構成を有するレンズ駆動装置1では、第1のレンズ枠4の反射用平面18が光軸Cに対して傾斜しているので、第1のフォトリフレクタ12の投受光面12aと反射用平面18との距離は第1のレンズ枠4の位置に応じて連続的に変化する。また、反射用平面18は傾斜が一定の平面であることから反射用平面18と投受光面12aとの距離から第1のレンズ枠4の位置を特定することができる。従って、このレンズ駆動装置1によれば、第1のフォトリフレクタ12により反射用平面18との距離を検出することで、検出距離に対応する第1のレンズ枠4の位置を精密に特定できるので、高精度かつ高分解能のレンズ位置検出を行うことができる。
【0040】
また、このレンズ駆動装置1によれば、第1のフォトリフレクタ12により第1のレンズ枠4の移動距離を直接検出する場合と比べて、第1のフォトリフレクタ12と反射用平面18とを光軸方向Cで対向させる必要がないので、光軸方向Cで装置の小型化を図ることができる。また、レンズ駆動装置1では、第1のフォトリフレクタ12により第1のレンズ枠4の移動距離を直接検出する場合と比べて、第1のフォトリフレクタ12に求められる距離検出範囲を小さくできる。このことは、第1のフォトリフレクタ12の小型化及び低コスト化に有利である。
【0041】
更に、このレンズ駆動装置1では、投受光面12aと反射用平面18とを対面させる構成を採用することにより、対面させない場合と比べてフォトリフレクタによる光の投受光を確実に行うことができ、フォトリフレクタの検出精度の向上を図ることができる。
【0042】
また、このレンズ駆動装置1では、第1のレンズ枠において第1のコイル9を保持するコイル保持部と反射用平面18を有する反射部とガイドシャフト6に沿って摺動するシャフト摺動部16とを一体に形成しているので、コイル保持部、反射部、及びシャフト摺動部を別々に設ける場合と比べて、構造が大幅に簡素化され、装置の小型化が図ることができる。また、このレンズ駆動装置1によれば、第2のレンズ枠5についても上述した各種効果を得ることができる。
【0043】
次に、レンズ駆動装置1におけるレンズ位置検出の制御についてフォーカスレンズNを例として説明する。
【0044】
図4には、フォーカスレンズNが微動エリアFnに位置する状態が示されている。また、図1には、フォーカスレンズNが粗動エリアFfに位置する状態が示されている。微動エリアFnとは、近距離の被写体にフォーカスするために用いるフォーカスレンズNの位置範囲であり、微細なレンズ位置検出が必要となる範囲である。また、粗動エリアFfとは、遠距離の被写体にフォーカスするために用いるフォーカスレンズNの位置範囲であり、微動エリアFnより粗いレンズ位置検出で調整可能な範囲である。微動エリアFnは近距離用のレンズ位置検出エリアに相当し、粗動エリアFfは遠距離用のレンズ位置検出エリアに相当する。
【0045】
ここで、図6は第2のフォトリフレクタ13の出力電圧特性における微動エリアFn及び粗動エリアFfを説明するためのグラフである。第2のフォトリフレクタ13の出力電圧特性とは、第2のフォトリフレクタ13の検出距離と出力電圧との関係を意味する。検出距離とは、第2のフォトリフレクタ13の検出する投受光面13aと反射用平面23との距離である。図6の縦軸は出力電圧を示し、横軸は検出距離を示している。
【0046】
図6に示されるように、第2のフォトリフレクタ13の出力電圧特性は、零距離から所定のピーク距離までは検出距離が長くなるほど上昇し、ピーク距離で最大となった後は検出距離の長さに応じて緩やかに下降する曲線として表される。このような出力電圧特性においては、検出距離に対する出力電圧の変化率が大きいほど、出力電圧を測定して微細な位置検出が可能であることから、変化率の大きい範囲が微動エリアFnとして設定される。また、微動エリアFnとしては、正確性を担保するためリニアリティの高い範囲すなわち変化率の変動の少ない範囲が選択される。一方、粗動エリアFfでは、微細な位置検出を行う必要がないため、変化率の小さい範囲が設定される。図6では、第2のフォトリフレクタ13の出力電圧特性のうち出力電圧がピークを超えた後の範囲を微動エリアFn及び粗動エリアFfとして設定している。
【0047】
図7は、第2のフォトリフレクタ13の出力電圧特性のうち出力電圧がピークを超える前の範囲を微動エリアFn及び粗動エリアFfとして設定した場合の例を示すグラフである。図7では、出力電圧がピークを超える前の範囲において、検出距離に対する出力電圧の変化率が大きくリニアリティの高い範囲を微動エリアFnとして設定し、微動エリアFnより変化率が小さい範囲を粗動エリアFfとして設定している。なお、粗動エリアFfとしてもリニアリティの高い範囲を設定することが好ましい。
【0048】
このレンズ駆動装置1によれば、フォトリフレクタ12,13の出力電圧特性における検出距離に対する出力電圧の変化率の大きさに応じて、近距離用の微動エリアFnと遠距離用の粗動エリアFfとを設定することで、近距離及び遠距離の撮像状況にそれぞれ対応したレンズ位置検出を実現することができる。
【0049】
しかも、このレンズ駆動装置1では、粗動エリアFfを遠距離用のレンズ位置検出に利用し、微動エリアFnを近距離用のレンズ位置検出に利用することで、遠距離の撮影に必要十分なレンズNの位置検出精度を確保しつつ、近距離の撮影時に高精度かつ微細なレンズNの位置検出を実現している。これにより、このレンズ駆動装置1では、検出距離に対する出力電圧の変化率が大きくリニアリティの高い範囲を微動エリアFnと粗動エリアFfとの両方に用いる場合と比べて、微動エリアFnに利用可能な出力電圧特性の範囲を広くすることができるので、近距離の撮影時における高精度なレンズ位置検出を可能にする。このことは、近距離の撮影に対するカメラの撮像性能向上に寄与する。
【0050】
[第2の実施形態]
図8に示されるように、第2の実施形態に係るレンズ駆動装置31は、第1の実施形態に係るレンズ駆動装置1と比べて、第2のレンズ枠32の形状と、第2のフォトリフレクタ33の位置と、が主に異なっている。
【0051】
具体的には、第2の実施形態に係る第2のレンズ枠32では、シャフト摺動部34,35のうち、第1のレンズ枠4のシャフト摺動部16と反対側に位置するシャフト摺動部35に反射用平面36を有している。反射用平面36は、光軸Cに対して傾斜した平面である。図8に光軸Cに平行な仮想線L3を示す。第2のフォトリフレクタ33は、反射用平面36と対面するように第1のフォトリフレクタ13の反対側に配置されている。
【0052】
このような構成を有するレンズ駆動装置31においても、第1の実施形態に係るレンズ駆動装置1と同様の効果を得ることができる。また、光軸方向Cに長さのある第1のレンズ枠4のシャフト摺動部16と第2のレンズ枠5のシャフト摺動部35とが異なるガイドシャフトに配置されるので、光軸方向Cにおける装置の小型化に有利である。
【0053】
[第3の実施形態]
図9に示されるように、第3の実施形態に係るレンズ駆動装置41は、第1の実施形態に係るレンズ駆動装置1と比べて、ガイドシャフト6,7に代えてガイド溝43,44により第1のレンズ枠45及び第2のレンズ枠46を案内する点が主に相違している。
【0054】
第3の実施形態に係るレンズ駆動装置41のベース部材42では、側壁42cの内面に光軸方向Cに延在するガイド溝43が形成されている。ガイド溝43は、側壁42cの内側に形成されたストッパ部42bにより、第1のレンズ枠45用の溝43Aと第2のレンズ枠46用の溝43Bとに分けられている。同様に、ベース部材42の側壁42eの内面には、光軸方向Cに延在するガイド溝44が形成されている。このガイド溝44も第1のレンズ枠45用の溝44Aと第2のレンズ枠46用の溝44Bとに分けられている。
【0055】
図10及び図11は、ガイド溝43,44に沿って切断した断面図である。図10及び図11では、理解を容易にするためベース部材42、第1のレンズ枠45、及び第2のレンズ枠46のみを図示している。
【0056】
図10及び図11に示されるように、第1のレンズ枠45の両側には、ガイド溝43A,44Aとそれぞれ対向するガイド摺動部48,49が形成されている。ガイド摺動部48には、ガイド溝43Aに係合するガイド用凸部48aが形成されている。また、ガイド摺動部49には、ガイド溝44Aに係合するガイド用凸部49aが形成されている。これらのガイド用凸部48a,49aは光軸方向Cに延在している。
【0057】
同様に、第2のレンズ枠46の両側には、ガイド溝43A,44Aとそれぞれ対向するガイド摺動部51,52が形成されている。ガイド摺動部51には、ガイド溝43Bに係合するガイド用凸部51aが形成されている。また、ガイド摺動部52には、ガイド溝44Bに係合するガイド用凸部52aが形成されている。これらのガイド用凸部51a,52aは光軸方向Cに延在している。
【0058】
このレンズ駆動装置41によれば、ベース部材42のガイド溝43A,44Aに係合したガイド凸部48a,49aが第1のレンズ枠45の移動に併せてガイド溝43A,44A内を摺動することで、光軸方向Cで第1のレンズ枠45を精度良く移動させることができる。また、このレンズ駆動装置41によれば、第2のレンズ枠46の移動についても同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、このレンズ駆動装置41によれば、ガイドシャフトを不要とした分、部品点数が削減され、装置の低コスト化を図ることができる。この構成は装置の小型化にも有利である。
【0060】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0061】
例えば、本発明に係る撮像装置としては、デジタルカメラの他、撮像機能付きの携帯電話機や携帯用パーソナルコンピュータ、PDAなどの携帯情報端末機なども利用可能である。
【0062】
また、フォトリフレクタ12,13と反射用平面18,23とは、逆の位置関係であっても良い。すなわち、フォトリフレクタ12,13がレンズ枠に設けられ、反射用平面18,23がベース部材2に形成されても良い。また、フォトリフレクタ12,13の投受光面12a,13aと反射用平面18,23とは必ずしも平行に配置される必要はない。
【0063】
更に、フォトリフレクタ11の出力電圧特性において、微動エリアFnと粗動エリアFfの役割を入れ替えても良い。すなわち、検出距離に対する出力電圧の変化率が大きい微動エリアFnを遠距離用のレンズ検出エリアとして設定すると共に、変化率の小さい粗動エリアFfを近距離用のレンズ検出エリアとして設定しても良い。
【0064】
図12に示されるように、反射面は、レンズNの光軸Cに対して傾斜した反射用湾曲面60として形成されている。この反射用湾曲面60は、集光可能な凹面鏡になっている。反射面を集光可能な湾曲面60にすることで、少ない光量で光を効率良く検知することができ、シャフト摺動部(反射部)16が小型であっても、位置検出の精度を高めることができる。
【0065】
図13に示されるように、反射面は、断面鋸歯状に形成されている。反射面は、同一の傾斜角度をもった2つの反射面61a,61bを有している。平面形状を有する各反射面61a,61bの傾斜角度は、前述した反射用平面18よりも大きくなっており、反射面61aと反射面61bとの間には、傾斜していない段部61cが配置されている。このような構成を採用すると、反射面61a,61bの傾斜角度を大きくすることができる。これによって、受光量の変化を大きくすることができ、シャフト摺動部(反射部)16が小型であっても、位置検出の精度を高めることができる。なお、反射面61a,61bは、湾曲面として形成されてもよく、段部61cは、光軸C方向において、複数個並設されてもよい。
【0066】
図14に示されるように、関連技術として、シャフト摺動部として機能する反射部70の反射面71は、光軸方向において面積を、連続的に拡大又は縮小させるように変化させてもよい。このように、反射面71の反射面積を変えれば受光量が変化するので、位置検出を行うことができる。
【0067】
図12〜図14に示された反射部は、シャフト摺動部21,35,48,51に適用してもよい。
【0068】
前述した反射面18,23,34,60,61a,61b,71は、光路をプリズムで曲げる屈曲光学系と、鏡筒を縮めて本体に格納する沈胴光学系と、の何れであっても適用可能である。因みに、前述したレンズ駆動装置1,31,41は、屈曲光学系を有している。
【0069】
光軸C上において、撮像部Pの前面にIRカットフィルタ(不図示)が配置されてもよい。IRカットフィルタを採用することによって、フォトリフレクタ12,13の投光部から出射される赤外線を撮像部Pが受光することなく、撮像に影響を与えることを回避させることができる。従って、フォトリフレクタ12,13を撮像素子の近傍に配置させ易く、このことは、レンズ駆動装置1,31,41の小型化に寄与する。
【符号の説明】
【0070】
1,31,41…レンズ駆動装置 2,42…ベース部材 2a,2c,2d,2e…側壁 2b…ストッパ部 3…光屈曲部 3a…プリズム 4,45…第1のレンズ枠 5,46…第2のレンズ枠 6,7…ガイドシャフト 8…マグネット 9…第1のコイル 10…第2のコイル 12…第1のフォトリフレクタ 12a,13a…投受光面 13,33…第2のフォトリフレクタ 13a…投受光面 16,21,35,48,51,70…シャフト摺動部(反射部,コイル保持部) 17,22,34,49,52…シャフト摺動部 18,23,36,61a,61b,71…反射用平面(反射面) 42b…ストッパ部 48a,49a,51a,52a…ガイド用凸部 60…反射用湾曲面(反射面) C…光軸 E…被写体光の光軸 Ff…粗動エリア Fn…微動エリア G1…固定レンズ G2…固定レンズ H1…第1の位置検出部(位置検出手段) H2…第2の位置検出部(位置検出手段) M…ズームレンズ N…フォーカスレンズ P…撮像部 V1…第1の駆動部(駆動手段) V2…第2の駆動部(駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、レンズを保持すると共に前記レンズの光軸方向で前記ベースに対して移動可能に設けられたレンズ枠と、前記ベースの外側に設けられ、前記レンズに向かって入射した光を屈曲する光屈曲部と、前記レンズ枠を移動させる駆動手段と、前記レンズ枠の位置を検出する位置検出手段と、を備えたレンズ駆動装置において、
前記位置検出手段は、
前記ベースと前記レンズ枠との一方に設けられ、前記レンズの光軸に対して傾斜した反射面を有する反射部と、
前記ベースと前記レンズ枠との他方に設けられ、前記反射面に光を照射する投光部と前記反射面に反射された光を受光する受光部とを有するフォトリフレクタと、
を備えていることを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記反射部の前記反射面と前記フォトリフレクタの投受光面とが対面していることを特徴とする請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記反射部は、前記レンズ枠に設けられ、
前記駆動手段は、前記ベースに設けられたマグネットと、前記レンズ枠に設けられたコイルと、を有し
前記レンズ枠は、前記反射部と一体に形成され、前記コイルを保持するコイル保持部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記フォトリフレクタと前記反射面との距離に対する前記フォトリフレクタの出力電圧特性において、前記距離に対する前記出力電圧の変化率が大きい範囲を近距離用のレンズ位置検出エリア及び遠距離用のレンズ位置検出エリアの何れか一方のレンズ位置検出エリアとして設定し、当該範囲より前記変化率が小さい範囲を他方のレンズ位置検出エリアとして設定することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記ベースは、前記光軸方向に延在するガイド溝を有し、
前記レンズ枠は、前記ガイド溝に係合すると共に前記ガイド溝に沿って摺動可能な凸部を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のレンズ駆動装置。
【請求項6】
前記ベースには、前記レンズ枠を視認するための視認用孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のレンズ駆動装置。
【請求項7】
前記反射面は、平面又は集光可能な曲面であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のレンズ駆動装置。
【請求項8】
前記反射面は、断面鋸歯状に形成されていることを特徴とする請求項7に記載のレンズ駆動装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載のレンズ駆動装置を備えることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−177904(P2012−177904A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−17527(P2012−17527)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】