説明

レンズ駆動装置

【課題】携帯電話などの小型機器でもオートフォーカス機能やズーム機能を実現することができる小型のレンズ駆動装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ケースと、レンズを保持し駆動力を受けてケースに対し移動するレンズバレルと、ロータを有しロータの回転力をレンズバレルに伝えてレンズバレルを駆動する駆動力伝達部と、ロータに作用してロータを回転させる超音波アクチュエータとを備え、上記超音波アクチュエータが、ロータに一端が接し途中に折れ曲がった角部を有しさらに延在して他端側からケースに対し固定された振動子を備え、角部の劣角側にレンズバレルが位置する姿勢に配備される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズを保持して移動するレンズ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などの小型機器に、被写体を撮影する撮影装置を内蔵することが広範に行われている。日ごろから常に携帯している小型機器に撮影装置が備えられることによって、デジタルカメラやビデオカメラを持ち運ぶ手間をかけずに、いつでも手軽に撮影を行うことができる。また、これらの小型機器には、無線や赤外線などを使ったデータ通信機能が予め搭載されていることが一般的であり、撮影した撮影画像をその場ですぐに他の携帯電話やパーソナルコンピュータなどに送ることができるという利点もある。
【0003】
しかし、携帯電話などといった小型機器に内蔵される撮影装置は、通常のデジタルカメラと比較してかなり小型なために、レンズ、CCD(Charge Couple Device)撮像素子やMOS(Metal Oxide Semiconductor)撮像素子(以下、これらを「撮像素子」と総称する)、およびシャッタの大きさや、それらを収納するスペースが大幅に制限される。このため、これらの小型機器は、デジタルカメラの代替機器として用いられるには撮影機能や撮影画像の画質等が不十分であり、メモ替わりに画像を得る場合や、携帯電話等の待ち受け画面用の画像を得る場合などのように、高画質を要求されない撮影用に用途が限定されることが多い。
【0004】
これらの点に関し、近年では、画素数の多い小型の撮像素子や、これに対応した小型レンズなどが開発されてきており、小型機器を使って撮影される撮影画像の高画質化が急速に進んでいる。残る課題である撮影機能の充実においては、特に、これらの小型機器に、デジタルカメラには標準的に搭載されているオートフォーカス機能やズーム機能が搭載されることが望まれている。
【0005】
オートフォーカス機能やズーム機能は、モータの回転を利用し、レンズを光軸に沿う方向に移動させることによって実現されることが一般的である。通常、レンズを駆動するモータとしては、磁場によってロータを回転させる電磁モータが利用されることが多いが、電磁モータは消費電力が大きく、比較的大型であるため、撮影装置内に搭載しようとすると、撮影装置全体の大きさや重量が大幅に増加してしまううえ、通常の撮影機能を実行する電力に加えて、電磁モータを駆動するのに十分な電力を確保する必要が生じる。したがって、電磁モータを利用したオートフォーカス機能やズーム機能は、小型化および軽量化が求められている携帯電話などには搭載することが困難である。
【0006】
この点に関し、特許文献1および特許文献2には、電磁モータの替わりに圧電を用いたアクチュエータを使ってレンズを移動させる撮影装置について記載されており、特許文献3および特許文献4には、圧電を用いたアクチュエータの基本的な構成について記載されている。
【0007】
図1は、圧電を用いた超音波アクチュエータ10の概略構成図であり、図2は、超音波アクチュエータ10の動作原理を説明するための図である。
【0008】
図1に示すように、超音波アクチュエータ10には、電圧の印加を受けて振動する圧電素子11、圧電素子11の振動を受けて歪む弾性振動体12、圧電素子11および弾性振動体12を支持する支持部材13、弾性振動体12をロータ20に向けて付勢するばね14、およびばね14を弾性振動体12に押し当てる押当板15が備えられている。
【0009】
図2に示すように、弾性振動体12は、2枚の圧電素子11a,11bに挟まれており、例えば、圧電素子11a,11bそれぞれに同じ位相の交流電圧が印加されると、それら圧電素子11a,11bが同じ方向に伸縮して弾性振動体12が変形し、弾性振動体12の先端がロータ20に押し付けられることによって、弾性駆動体12の先端が楕円を描いて駆動され、ロータ20が矢印A方向に回転されることとなる。
【0010】
このような圧電を用いた超音波アクチュエータをレンズに取り付けることによって、電磁モータよりも少ない電力でレンズを駆動することができ、さらに、撮影装置の軽量化や、レンズ駆動の静音化を図ることができる。
【特許文献1】特開2004−294759号公報
【特許文献2】特開2004−294580号公報
【特許文献3】特開2005−218179号公報
【特許文献4】特開2003−199371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、弾性振動体12の歪みとしては、弾性振動体12が伸縮する縦振動と、弾性振動体12が波打つように屈曲する屈曲振動と、縦振動と屈曲振動とが結合された結合振動とが知られており、レンズを高速に駆動するためには、弾性振動体12を結合振動させてロータ20を高速に回転させることが必要である。しかし、上述した特許文献3および特許文献4に記載された技術などによると、弾性振動体を結合振動させるために、複数の圧電素子それぞれに相互に異なる位相の交流電圧を印加する必要があり、電圧制御が複雑化してしまうという問題がある。
【0012】
また、従来の圧電を用いた超音波アクチュエータでは、弾性振動体12を支持する支持部材14に加えて、弾性振動体12をロータ13に押し付けるばね15や押当板16などといった予圧機構が必要となる。特に、予圧機構は、弾性振動体12の歪みには直接的には関係しない部品であるにも関わらず、それ以外の部分と同等のスペースを占めてしまっており、超音波アクチュエータの小型化におけるネックとなってしまっている。
【0013】
以上のようなことから、超音波アクチュエータでレンズを駆動する機構を携帯電話用の撮影装置に搭載するためには、超音波アクチュエータのさらなる小型化や、電圧制御の簡略化などが要求される。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑み、携帯電話などの小型機器でもオートフォーカス機能やズーム機能を実現することができる小型のレンズ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成する本発明のレンズ駆動装置は、ケースと、
レンズを保持し駆動力を受けてケースに対し移動するレンズバレルと、
ロータを有しロータの回転力をレンズバレルに伝えてレンズバレルを駆動する駆動力伝達部と、
ロータに作用してロータを回転させる超音波アクチュエータとを備え、
上記超音波アクチュエータが、ロータに一端が接し途中に折れ曲がった角部を有しさらに延在して他端側からケースに対し固定された振動子を備え、角部の劣角側にレンズバレルが位置する姿勢に配備されたものであることを特徴とする。
【0016】
本発明のレンズ駆動装置によると、振動子のケースに対して固定された側の端(他端側)によって超音波アクチュエータが支持され、その固定された側の端(他端側)と角部との間の部分の弾性によって、ロータと接触する側の端(一端側)がロータに押し付けられる。このため、図1に示す支持部材13や、ばね14や押当板15といった予圧機構が不要となり、超音波アクチュエータを小型化することができる。さらに、本発明のレンズ駆動装置は、超音波アクチュエータが折れ曲がった角部を有しており、その角部の劣角側に空いたスペースでレンズバレルが駆動されるため、超音波アクチュエータにレンズバレルなどを取り付けてもレンズ駆動装置が大型化せず、携帯電話などに搭載してオートフォーカス機能やズーム機能を実現することができる。
【0017】
また、本発明のレンズ駆動装置において、上記振動子が板状のものであって、
上記アクチュエータが、さらに、振動子の、上記一端と上記角部との間の一部分と接触し、交流電圧の印加を受けて振動して振動を振動子に伝える圧電素子を備えたことが好ましい。
【0018】
本発明のレンズ駆動装置によると、圧電素子に交流電圧が印加されると、振動子が交流電圧の位相に応じた方向に歪んで、その歪みの一部の方向が角部で変換され、それら複数方向の歪みが結合されてロータに伝達される。したがって、圧電素子に単相の交流電圧を印加するだけで、上述した結合振動を実現することができ、電圧制御を簡略化することができる。
【0019】
また、本発明のレンズ駆動装置において、上記圧電素子が、振動子の、上記一端と上記角部との間の一部分を挟んで複数設けられたことが好ましい。
【0020】
圧電素子が振動子を挟んで複数設けられることによって、装置の大型化を抑えて、振動子を大きく歪ませることができ、レンズバレルに保持されたレンズを高速に駆動することができる。
【0021】
また、本発明のレンズ駆動装置は、振動子が金属板であって、複数の圧電素子それぞれの一方の電極を兼ねるものであることが好適である。
【0022】
本発明の好適なレンズ駆動装置によると、振動子が圧電素子に電圧を印加する電極を兼ねるため、装置全体を小型化することができる。
【0023】
また、本発明のレンズ駆動装置は、振動子の、上記一端側の一部分が、その一部分を除く部分よりも狭幅に形成されてなることが好ましい。
【0024】
振動子の、ロータと接触する側の一部分が狭幅に形成されることによって、振動子の歪みが効率よくロータに伝達され、レンズバレルに保持されたレンズを確実に駆動することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、携帯電話などの小型機器でもオートフォーカス機能やズーム機能を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
まず、本発明のレンズ駆動装置の説明に先立って、本発明のレンズ駆動装置に適用される超音波アクチュエータについて詳しく説明する。
【0028】
図3は、本発明のレンズ駆動装置に適用される超音波アクチュエータの一例を示す概略構成図である。
【0029】
図3に示すように、超音波アクチュエータ100には、交流電圧の印加を受けて振動する2枚の圧電素子110と、圧電素子110に交流電圧を印加するための電極111と、角部120aでL字形に折れ曲がり、上足121がロータ100Aと接触し、下足122が固定された振動板120とが備えられている。超音波アクチュエータ100は、本発明にいう超音波アクチュエータの一例に相当する。また、振動板120は、本発明にいう振動子の一例にあたり、ロータ100Aは、本発明にいうロータの一例にあたり、圧電素子110は、本発明にいう圧電素子の一例に相当する。
【0030】
図4は、超音波アクチュエータ100の拡大図であり、図5は、圧電素子110の分極方向を示す図である。
【0031】
本実施形態においては、振動板120は、ステンレス(例えば、SUS304)で構成されており、圧電素子110は、圧電セラミクス(例えば、PZT)で構成されている。尚、これら振動板120や圧電素子110を構成する材料は、これらには限らない。
【0032】
振動板120は、上足121の、ロータ100Aと接触する接触部分121aが狭幅に形成されている。また、2枚の圧電素子110は、振動板120の上足121を挟んで配置されており、金属製の振動板120が、圧電素子110の振動を受けて歪む振動体と、2枚の圧電素子110に備えられた2つの電極111それぞれに対する対向電極とを兼ねている。このように、振動板120が、振動体と対向電極とを兼ねることによって、超音波アクチュエータ100を小型化することができる。
【0033】
図5に示すように、2枚の圧電素子110は、厚さ方向(矢印C、矢印C´)にそれぞれ分極されており、それら2枚の圧電素子110に、同じ位相、同じ大きさ、同じ周波数の交流電圧が印加される。
【0034】
図6および図7は、振動板120に発生する歪みの方向を示す図である。
【0035】
2枚の圧電素子110に交流電圧が印加されると、圧電素子110が励振し、振動板120の上足121に歪みが発生する。振動板120の上足121は、下足122の弾性によって図3に示すロータ100Aに押し付けられており、振動板120で発生した歪みは確実にロータ100Aに伝達される。このように、振動板120をL字に折り曲げることによって、圧電素子110を支持する支持部材や、振動板120をロータ100Aに押し付ける予圧機構が不要となり、部品数を減少させて製造コストを抑えることができるとともに、超音波アクチュエータ100を大幅に小型化することができる。
【0036】
また、上足121で発生した歪みの一部は、角部120aによって方向が変換される。その結果、振動板120には、複数方向の歪みが発生し、それら複数方向の歪みが結合されてロータ100Aに伝達される。尚、図6および図7に示す振動板120の振動モードの次数は一例であり、振動板120の長さを変えることなどによって調整することができる。
【0037】
図8は、振動板120の共振周波数を示すグラフである。
【0038】
図8は、横軸が振動板120の上足121の長さXを示し、縦軸が振動板120の共振周波数を示している。
【0039】
超音波アクチュエータ100は、図1および図2に示す従来の超音波アクチュエータ10と比較して、振動板120がL字形状に折れ曲がっていることによって形状の対称性が失われており、縦振動が発生すると、その縦振動の一部が屈曲振動に変換され、逆に、屈曲振動が発生すると、その屈曲振動の一部が縦振動に変換される。このように、超音波アクチュエータ100では、常に2つの振動が混在している。
【0040】
図8に示すように、本実施形態の超音波アクチュエータ100では、縦振動(L−mode)の共振周波数と、屈曲振動(B−mode)の共振周波数とが一致することはなく、それら2つの振動の共振周波数が近づく領域Rにおいて、縦振動のグラフ上で屈曲振動のグラフに最も近づくときの最近共振周波数fLowと、屈曲振動のグラフ上で縦振動のグラフに最も近づくときの最近共振周波数fHighとが存在する。
【0041】
例えば、2枚の圧電素子110に、図8に示す縦振動(L−mode)のグラフ上の最近共振周波数fLowを有する交流電圧が印加されると、振動板120は、主に伸縮方向に歪んで縦振動(L−mode)を発生し、その縦振動が角部120aで曲げ方向の歪みに変換されて、屈曲振動(B−mode)が発生する。これら縦振動と屈曲振動が振動板120の先端部121で結合され、図6に示すように、振動板120の伸縮に振動板120自体の屈曲も加わった合力Tによってロータ100Aが回転される。
【0042】
また、2枚の圧電素子110に、図8に示す屈曲振動(B−mode)のグラフ上の最近共振周波数fHighを有する交流電圧が印加されると、振動板120は、主に曲げ方向に歪んで屈曲振動(B−mode)を発生し、その屈曲振動が角部120aで伸縮方向の歪みに変換されて、縦振動(L−mode)が発生する。これら縦振動と屈曲振動が振動板120の先端部121で結合されることにより、図7に示すように、図6とは逆方向の合力T´によってロータ100Aが回転される。
【0043】
図9は、ロータ100Aを正方向に回転させる動作原理を示す図である。
【0044】
例えば、最近共振周波数fLowを有する交流電圧を印加して圧電素子110を振動させると、振動板120の歪みの振幅は徐々に大きくなる。振動板120の曲げ変位が上方向に最大、伸縮変位が0に近づくと、振動板120の接触部分121aがロータ100Aと接触する(図9のステップS11)。このとき、伸縮速度が伸び方向に最大となる。
【0045】
続いて、振動板120が伸び、接触部分121aがロータ100Aの外周を突っつくことにより、ロータ100Aに回転トルクを与える。その結果、ロータ100Aが矢印M方向に回転する(図9のステップS12)。このとき、伸縮変位が最大、曲げ変位が0付近、下向きの速度が最大となる。
【0046】
振動板120が最大に伸びると、振動板120は縮む方向に変位するが、下向きの曲げ変位が生じており、接触部分121aはロータ100Aから離れる。(図9のステップS13)。このとき、伸縮変位が0、曲げ変位が下方向に最大、縮み方向の速度が最大となる。
【0047】
振動板120が最も縮んだ状態では、振動板120はステップS11とは逆方向に伸縮しているが、接触部分121aはロータ100Aから離れているため、接触部分121aがロータ100Aの回転を妨げず、ロータ100Aは慣性で回転し続ける(図9のステップS14)。
【0048】
以上のようにして、ロータ100Aが正方向(矢印M方向)に回転される。
【0049】
図10は、ロータ100Aを副方向に回転させる動作原理を示す図である。
【0050】
図9とは逆に、最近共振周波数fHighを有する交流電圧を印加して圧電素子110を振動させると、振動板120の伸縮変位が伸び方向に最大のときは、曲げ変位によって振動板120の接触部分121aがロータ100Aとは接触しない(図10のステップS21)。このとき、伸縮方向の変位が最大、曲げ変位が0付近、上向きの速度が最大となる。
【0051】
続いて、振動板120が縮み、接触部分121aがロータ100Aの外周を手招きするようにこすることにより、ロータ100Aに回転トルクを与える。その結果、ロータ100Aが矢印M´方向に回転する(図10のステップS22)。このとき、伸縮変位が0、屈曲変位が0、縮み方向の速度が最大となる。
【0052】
曲げ方向の変位が上方向に最大となるときには、伸縮変位が最小となり、接触部分121aはロータ100Aから離れる。(図10のステップS23)。このとき、伸縮変位は最小、屈曲変位は上方向に最大となる。
【0053】
曲げ方向の変位が下方向に最大となるときには、伸縮変位が最大に近づくが、接触部分121aはロータ100Aから離れているため、接触部分121aがロータ100Aの回転を妨げず、ロータ100Aは慣性で回転し続ける(図10のステップS24)。
【0054】
以上のようにして、ロータ100Aが副方向(矢印M´方向)に回転される。
【0055】
このように、超音波アクチュエータ100によると、2枚の圧電素子110それぞれに同じ交流電圧(大きさ、位相、周波数)を単純に印加するだけで、振動板120に屈曲振動と縦振動との両方が発生するため、簡略な電圧制御でロータ100Aを高速に回転させることができる。また、圧電素子110に印加する交流電圧の周波数を2つの最近共振周波数fHigh、fLowに切り替えることによってロータ100Aの回転方向を変えることができ、ロータ100Aを効率よく回転させることができる。
【0056】
続いて、上述したような超音波アクチュエータが備えられた、本発明のレンズ駆動装置の一実施形態について説明する。
【0057】
図11は、本発明のレンズ駆動装置の一実施形態が適用された撮影装置の外観斜視図である。
【0058】
この撮影装置200は、携帯電話に搭載される小型の撮像装置である。撮影装置200は、外観上、ケース210と前カバー220とで構成されており、前カバー220はビス230によってケース210に取り付けられている。ケース210は、本発明にいうケースの一例に相当する。
【0059】
前カバー220およびケース210の内側には、被写体光を結像するレンズ、およびレンズを駆動するための駆動機構などが配備されており、ケース210の背面には、被写体光を受光して被写体信号を生成するCCDが取り付けられている。尚、本実施形態においては、被写体信号を生成する撮像素子としてCCDを用いるが、携帯電話等に搭載される撮影装置においては、撮像素子としてMOSも広く用いられており、CCDに替えてMOSを適用してもよい。
【0060】
本発明のレンズ駆動装置の一実施形態は、撮影装置200のケース210に取り付けられており、以下では、ケース210の内側に備えられた各種部品に注目して説明する。
【0061】
図12は、ケース210の内側を示す図である。
【0062】
図12に示すように、ケース210の内側には、図3に示す超音波アクチュエータ100と同様の構成を有するL字型の超音波アクチュエータ310と、超音波アクチュエータ310によって回転されるロータ320とが配備されており、さらに、超音波アクチュエータ310のL字の内側に、レンズが内蔵されたレンズバレル350が配備されている。レンズバレル350は、本発明にいうレンズバレルの一例に相当する。
【0063】
図13は、撮影装置200の分解斜視図であり、図14は、撮影装置200の上面の断面図である。図13および図14では、図の下方から被写体光Lが入射されるものとして、図の下方を前、図の上方を後と称して説明する。
【0064】
撮影装置200は、ケース210の内側に、後方から順に、超音波アクチュエータ310、ロータ320、回転軸330、カムリング340、レンズバレル350、およびばね360が配備されており、ビス230によって前カバー220がケース210に固定されている。
【0065】
ロータ320には、カムリング340の歯341と噛み合うギア321が取り付けられている。ギア321とカムリング340とを合わせたものは、本発明にいう駆動力伝達部の一例に相当する。
【0066】
回転軸330は、ロータ320を貫通して、ケース210と前カバー220とによって支持される。その結果、ロータ320が回転軸330を中心に回転自在に軸支される。また、超音波アクチュエータ310は、上足311がロータ320に接触され、下足312がケース210に固定される。
【0067】
続いて、カムリング340がケース210に取り付けられ、レンズバレル350がカムリング340に取り付けられることにより、カムリング340の歯341がロータ320のギア321と噛み合い、レンズバレル350に設けられたレール部351がケース210に穿たれたガイド溝211に嵌め込まれる。
【0068】
さらに、前カバー220にばね360が取り付けられ、前カバー220とケース210とがビス留めされ、ケース210の背面にCCD(図示しない)が取り付けられる。その結果、図14に示すように、レンズバレル350は、ばね360によって前カバー220からケース210に向けて付勢される。
【0069】
以上のような撮像装置200において、以下のような手順でオートフォーカス機能が実現される。尚、ここでは、ロータ320が正方向に回転することによって、レンズバレル350は前方向に移動するものとして説明する。
【0070】
まず、CCDにおいて被写体光が粗く読み取られて被写体信号が生成され、撮像装置200が備えられた携帯電話のCPUにおいて被写体信号のコントラストが取得される。取得されたコントラストは、暫定的な最大のコントラストとして保存される。
【0071】
続いて、携帯電話のCPUによって、超音波アクチュエータ310の圧電素子110(図3参照)に所定の大きさの交流電圧が印加され、ロータ320が正方向に所定角度だけ回転される。ロータ320のギア321がカムリング340の歯341と噛み合った状態で回転されることにより、カムリング340も所定角度だけ正方向に回転される。レンズバレル350に設けられたレール351の背面は、ばね360によってカムリング340のカム面に押し付けられており、カムリング340の回転力が光軸に沿った方向の力に変換されてレンズバレル350に伝達される。その結果、レンズバレル350は、レール部351がガイド溝211に導かれ、光軸に沿って所定距離だけ前方向に移動される。尚、ガイド溝211とレール351は、レンズバレル350の移動方向を導く役割だけではなく、レンズバレル350の回転止めとしての役割も担っている。
【0072】
レンズバレル350が移動されると、再びCCDで被写体光が読み取られて被写体信号が生成される。CPUでは、生成された被写体信号のコントラストが取得され、さらに、今回のコントラストが保存されている最大のコントラストと比較され、今回のコントラストの方が保存されたコントラストよりも大きいときには、今回のコントラストが既に保存されているコントラストに替えて保存される。
【0073】
超音波アクチュエータ310に交流電圧が印加され、ロータ320が正方向に所定角度だけ回転されて、レンズバレル350が所定距離ずつ前方向に移動され、さらに被写体信号のコントラスト値が取得されて、今回のコントラストと保存されているコントラスト(前回までの最大のコントラスト)とが比較される作業が、今回のコントラストが保存されているコントラストよりも小さくなるまで続けられる。
【0074】
通常、レンズが合焦位置に近づくほど被写体信号のコントラストは大きくなるため、レンズバレル350を光軸に沿って所定距離ずつ移動させていくと、初めはレンズが徐々に合焦位置に近づいてコントラストが増加していき、レンズ位置が合焦位置を通過した後は、コントラストは徐々に減少していく。このように、コントラストは山なりに変化するため、コントラストが増加傾向から減少傾向に変化したレンズ位置が合焦位置であると決定することができる。コントラストが増加傾向から減少傾向へと変化する変化点を取得して合焦位置を検出する方法は、「山登り方式AF」として従来から広く適用されている。
【0075】
以上のようにして決定された合焦位置にレンズが移動されることによって、被写体に精度良く焦点を合わせることができ、ピンボケなどが生じていない高画質な撮影画像を取得することができる。
【0076】
また、本実施形態においては、小型化された超音波アクチュエータ310が適用されているうえ、図12に示すように、超音波アクチュエータ310のL字の内側に空いたスペースにレンズバレル350が設けられており、装置全体の大型化が軽減されている。さらに、超音波アクチュエータ310は、従来の電磁モータと比較して省電力であり、従来の超音波アクチュエータと比較して電圧制御が簡易であるため、携帯電話などの小型機器でもオートフォーカス機能やズーム機能を実現することができる。
【0077】
ここで、上記では、圧電を用いた超音波アクチュエータを備えた例について説明したが、本発明にいう超音波アクチュエータは、折れ曲がった形状を有する振動子を使ってロータを回転させることができるものであれば、高分子などを利用した超音波アクチュエータであってもよい。
【0078】
また、上記では、2枚の圧電素子を備えた超音波アクチュエータを備えた例について説明したが、本発明にいう超音波アクチュエータは、3枚以上の圧電素子を備えた超音波アクチュエータであってもよく、また、1枚の圧電素子を備えた超音波アクチュエータであってもよい。
【0079】
また、上記では、L字に曲がった超音波アクチュエータについて説明したが、本発明にいう超音波アクチュエータは、2つ以上の角を有するものであってもよい。
【0080】
また、上記では、圧電素子の電極を兼ねた金属製の振動板を備えた超音波アクチュエータについて説明したが、本発明にいう超音波アクチュエータは、例えば、プラスチック製の振動子を用いて、その振動子とは別に、圧電素子に電圧を印加するための電極を備えたものであってもよい。
【0081】
また、上記では、本発明のレンズ駆動装置を携帯電話に搭載する例について説明したが、本発明のレンズ駆動装置は、小型のデジタルカメラなどに搭載されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】圧電を用いた超音波アクチュエータの概略構成図である。
【図2】超音波アクチュエータの動作原理を説明するための図である。
【図3】本発明のシャッタ装置に適用される超音波アクチュエータの一例を示す概略構成図である。
【図4】図3に示す超音波アクチュエータの拡大図である。
【図5】圧電素子の分極方向を示す図である。
【図6】振動板に発生する歪みの方向を示す図である。
【図7】振動板に発生する歪みの方向を示す図である。
【図8】振動板の共振周波数を示すグラフである。
【図9】ロータを正方向に回転させる動作原理を示す図である。
【図10】ロータを副方向に回転させる動作原理を示す図である。
【図11】本発明のレンズ駆動装置の一実施形態が適用された撮影装置の外観斜視図である。
【図12】ケースの内側を示す図である。
【図13】撮影装置の分解斜視図である。
【図14】撮影装置の上面の断面図である。
【符号の説明】
【0083】
10,100,310 超音波アクチュエータ
11,110 圧電素子
12 弾性振動体
13 支持部材
14 ばね
16 押当板
20,100A,320 ロータ
111 電極
120 振動板
120a 角部
121 上足
122 下足
200 撮影装置
210 ケース
220 前カバー
330 回転軸
340 カムリング
350 レンズバレル
360 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
レンズを保持し駆動力を受けて前記ケースに対し移動するレンズバレルと、
ロータを有し該ロータの回転力を前記レンズバレルに伝えて該レンズバレルを駆動する駆動力伝達部と、
前記ロータに作用して該ロータを回転させる超音波アクチュエータとを備え、
前記超音波アクチュエータが、前記ロータに一端が接し途中に折れ曲がった角部を有しさらに延在して他端側から前記ケースに対し固定された振動子を備え、該角部の劣角側に前記レンズバレルが位置する姿勢に配備されたものであることを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記振動子が板状のものであって、
前記アクチュエータが、さらに、前記振動子の、前記一端と前記角部との間の一部分と接触し、交流電圧の印加を受けて振動して該振動を前記振動子に伝える圧電素子を備えたことを特徴とする請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記圧電素子が、前記振動子の、前記一端と前記角部との間の一部分を挟んで複数設けられたことを特徴とする請求項2記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記振動子が金属板であって、複数の圧電素子それぞれの一方の電極を兼ねるものであることを特徴とする請求項3記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記振動子の、前記一端側の一部分が、該一部分を除く部分よりも狭幅に形成されてなることを特徴とする請求項1記載のレンズ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−271990(P2007−271990A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98276(P2006−98276)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【出願人】(504193837)国立大学法人室蘭工業大学 (70)
【Fターム(参考)】