説明

レーザドップラ振動計

【課題】測定対象物までの距離の相違による集光角度の変化を抑制する。
【解決手段】干渉光学系2から出射されたレーザ光は、集光光学系3で、測定対象物100の測定対象面上に集光される。そして、測定対象物100の表面で反射した反射光は集光光学系3を通って干渉光学系2に戻され、干渉光学系2において反射光と参照光との干渉が観測される。ここで、測定に先立って、移動制御部9は、距離センサ8を用いて、測定対象物100の測定対象面までの距離を測定すると共に、距離センサ8で測定される距離より求まる集光光学系3と測定対象物100の測定対象面との間の距離が、集光光学系3の固定の焦点距離に一致するように、移動ステージ7を用いて集光光学系3を光軸方向に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザドップラ振動計などの、レーザ光を用いて測定を行うレーザ測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を用いて測定を行うレーザ測定装置としては、測定対象物の振動や変位を、測定対象物で反射したレーザ光にドップラ効果によって生じるドップラシフトを利用して測定するレーザドップラ振動計が知られている(たとえば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平7-120304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般的に、レーザドップラ振動計では、空間分解能を高めるためなどに、レーザ光を集光光学系を用いて、測定対象物の測定対象面上に微少なスポットが照射されるように集光した状態で測定を行う。また、集光光学系の焦点距離を可変に構成し、当該集光光学系の焦点距離を測定対象面までの距離に応じて変更することにより、測定対象面までの距離によらずに、レーザ光を良好に集光できるようにするのが一般的であった。
【0004】
しかしながら、このような焦点距離を変更すると、当該変更に伴う集光角度の変化のために、レーザドップラ振動計で観測できる反射光の光量が変化してしまう場合があった。
また、たとえば、図3aに示すように焦点距離が小さくなると、図3bに示すように焦点距離が大きいに比べ、光軸方向の変位に対する測定対象面300上に照射されるスポットの径の変化が大きくなるために、このスポット径を所望の範囲内に設定したり、測定中維持することが困難となる。
【0005】
そして、これらのことは、安定的にレーザドップラ振動計の測定精度を良好に維持する上で不利益となる。
そこで、本発明は、レーザドップラ振動計から測定対象面までの距離の如何に関わらずに、集光光学系の焦点距離を変化させることなく高精度に測定を行うことのできるレーザドップラ振動計を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題達成のために、本発明は、測定対象面の振動を計測するレーザドップラ振動計であって、レーザ光を出射するレーザ光源と、焦点距離が固定の集光光学系と、前記レーザ光源が出射したレーザ光を、第1のレーザ光と第2のレーザ光に分岐し、第1のレーザ光を前記集光光学系に出射する干渉光学系と、集光光学系を光軸方向に移動する移動機構と、前記測定定対象面までの距離を測定する距離測定手段と、測定対象面の振動の計測の開始に先立って、前記距離測定手段が測定した測定対象面までの距離に基づいて、集光光学系と測定対象物の測定対象面との間の距離が、前記集光光学系の焦点距離に一致するように、前記移動機構に集光光学系を光軸方向に移動させる移動制御部とより構成したものである。ただし、前記集光光学系は、前記干渉光学系から入射する第1のレーザ光を前記測定対象面上に集光すると共に、前記測定対象面で反射した反射光を前記干渉光学系に導入するであり、前記干渉光学系は、前記第2のレーザ光の周波数を所定量シフトすると共に、周波数をシフトした第2のレーザ光と、前記集光光学系から導入された前記反射光とを干渉させた干渉光を生成するものである。
【0007】
このようなレーザドップラ振動計によれば、集光光学系を光軸方向に移動することにより、レーザドップラ振動計から測定対象面までの距離によらずに、集光光学系と測定対象面との間の距離を一定に保ち、集光光学系の焦点距離したがって集光角度を変化させることなく、測定対象面にレーザ光を良好に集光させることができる。よって、本発明によれば、レーザドップラ振動計から測定対象面までの距離の如何に関わらずに、集光光学系の焦点距離を変化させることなく高精度に測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、レーザドップラ振動計から測定対象面までの距離の如何に関わらずに、集光光学系の焦点距離を変化させることなく高精度に測定を行うことのできるレーザドップラ振動計を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態をレーザドップラ振動計への適用を例にとり説明する。
まず、図1に、本実施形態に係るレーザドップラ振動計の基本構成を示す。
図示するように、レーザドップラ振動計は、レーザ光源1、干渉光学系2、集光光学系3、参照信号生成部4、光電変換器5、信号処理部6、移動ステージ7、距離センサ8、移動制御部9とを備えている。
そして、干渉光学系2は、第1ビームスプリッタ21、第2ビームスプリッタ22、音響光学素子23、ミラー24、第3ビームスプリッタ25とより構成されている。
ここで、このようなレーザドップラ振動計は、測定対象物100の表面を測定対象面として、その振動や変移の測定を、たとえば、測定対象物100を回転させながら行うものである。
さて、このような構成において、レーザ光源1から射出された周波数f0のレーザービームは、干渉光学系2に入射し、第1ビームスプリッタ21で二分され、二分された一方のビームは、音響光学素子23で、参照信号生成部4が生成する周波数fMの参照信号を用いて周波数fM分周波数がシフトされ、周波数f0+fMの参照ビームとして、ミラー24を介して第3ビームスプリッタ25に入射する。
【0010】
一方、第1ビームスプリッタ21で二分された他方のビームは、第2ビームスプリッタ22を介して、焦点距離が固定の集光光学系3に出射され、集光光学系3で、測定対象物100の測定対象面上に集光される。そして、測定対象物100の表面で反射され集光光学系3に入射した反射光が、集光光学系3によって干渉光学系2に導入され、第2ビームスプリッタ22を介して第3ビームスプリッタ25に入射する。
【0011】
第3ビームスプリッタ25は、このようにして入射する参照ビームと反射光を結合し光電変換器5に出力する。
ここで、測定対象物100による反射光の周波数には、測定対象物100の測定対象面の振動速度に応じたドップラシフトfDが生じており、反射光の周波数はf0+fDとなる。したがって、光電変換器5において、第3ビームスプリッタ25からの入射光を光電変換した電気信号中には、参照ビームと反射光との干渉によるfM±fDのビート信号が観測される。そこで、信号処理部6において、入力するビート信号を参照信号の周波数fMでFM復調することにより、測定対象物100の測定対象面の振動に応じた速度信号Vが得られ、この速度信号Vを解析することにより測定対象物100の測定対象面の変位が求められる。または、信号処理部6において、反射光と参照ビームの光路長の差によって生じる参照信号とビート信号との位相差より測定対象物100の測定対象面の変位を求めるようにすることもできる。
【0012】
一方、以上のような測定に先立って、移動制御部9は、距離センサ8を用いて、測定対象物100の測定対象面までの距離を測定すると共に、距離センサ8で測定される距離より求まる集光光学系3と測定対象物100の測定対象面との間の距離が、集光光学系3の焦点距離に一致するように、移動ステージ7を用いて集光光学系3を光軸方向に移動する。ここで、移動ステージ7は、集光光学系3を保持するホルダと、ステップモータと、ステップモータで駆動される、ホルダを光軸方向に移動するボールネジ機構などを用いて構成することができる。
【0013】
また、距離センサ8は、たとえば、図2aに示すように、干渉光学系2と集光光学系3の間に配置して、集光光学系3から出力される反射光を分岐する光路分岐器81と、光路分岐器81と集光光学系3を介して、測定対象物100の測定対象面300を撮影するカメラ82を用いて構成することができる。この場合、移動制御部9は、カメラ82によって撮影される測定対象面300上に形成されるレーザ光によるスポットの径が所望の大きさとなるように位相ステージによる集光光学系3の移動量及び移動方向を制御することにより、集光光学系3と測定対象物100の測定対象面との間の距離が、集光光学系3の焦点距離に一致するように集光光学系3を光軸方向に移動する。ただし、距離センサ8は、測定対象面までの距離を測定できるものであれば任意の方式のセンサを用いてよい。
【0014】
さて、このようなレーザドップラ振動計によれば、図2a、bに示すように、集光光学系3を光軸方向に移動することにより、集光光学系3の焦点距離Fしたがって集光角度を変化させることなく、レーザドップラ振動計から測定対象面までの距離によらずに、集光光学系3と測定対象面300との間の距離を一定に保ち、測定対象面にレーザ光を良好に集光させることができる。
【0015】
よって、本実施形態によれば、レーザドップラ振動計から測定対象面までの距離の如何に関わらずに、集光光学系3の焦点距離を変化させることなく高精度に測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るレーザドップラ振動計の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るレーザドップラ振動計の焦点移動のようすを示す図である。
【図3】従来のレーザドップラ振動計の焦点移動のようすを示す図である。
【符号の説明】
【0017】
1…レーザ光源、2…干渉光学系、3…集光光学系、4…参照信号生成部、5…光電変換器、6…信号処理部、7…移動ステージ、8…距離センサ、9…移動制御部、21…第1ビームスプリッタ、22…第2ビームスプリッタ、23…音響光学素子、24…ミラー、25…第3ビームスプリッタ、81…光路分岐器、82…カメラ、100…測定対象物、300…測定対象面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象面の振動を計測するレーザドップラ振動計であって、
レーザ光を出射するレーザ光源と、
焦点距離が固定の集光光学系と、
前記レーザ光源が出射したレーザ光を、第1のレーザ光と第2のレーザ光に分岐し、第1のレーザ光を前記集光光学系に出射する干渉光学系と、
集光光学系を光軸方向に移動する移動機構と、
前記測定定対象面までの距離を測定する距離測定手段と、
測定対象面の振動の計測の開始に先立って、前記距離測定手段が測定した測定対象面までの距離に基づいて、集光光学系と測定対象物の測定対象面との間の距離が、前記集光光学系の焦点距離に一致するように、前記移動機構に集光光学系を光軸方向に移動させる移動制御部とを有し、
前記集光光学系は、前記干渉光学系から入射する第1のレーザ光を前記測定対象面上に集光すると共に、前記測定対象面で反射した反射光を前記干渉光学系に導入し、
前記干渉光学系は、前記第2のレーザ光の周波数を所定量シフトすると共に、周波数をシフトした第2のレーザ光と、前記集光光学系から導入された前記反射光とを干渉させた干渉光を生成することを特徴とするレーザドップラ振動計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−101963(P2008−101963A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283414(P2006−283414)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)
【Fターム(参考)】