説明

レーザレーダ

【課題】簡素な構成の光検出器により目標領域からの反射光を適正に受光することができるレーザレーダを提供する。
【解決手段】レーザレーダ1は、レーザ光源21と、ピンホール23aを有するピンホール板23と、ピンホール23aを通過したレーザ光を目標領域において走査させるミラーアクチュエータ25と、目標領域により反射され、さらに、ピンホール板23のミラー面23bによって反射されたレーザ光を受光する光検出器33とを備える。ピンホール板23は、レーザ光の光軸に対して傾くように配置され、レーザ光源21側と反対側の面がミラー面23bとなっている。ミラー69が回動しても、光検出器33に対する反射光の入射位置は変化しないため、単一受光面の小さな光検出器33により、反射光を適正に受光することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標領域にレーザ光を照射したときの反射光をもとに目標領域の状況を検出するレーザレーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、走行時の安全性を高めるために、レーザレーダが家庭用乗用車等に搭載されている。一般に、レーザレーダは、レーザ光を目標領域内でスキャンさせ、各スキャン位置における反射光の有無から、各スキャン位置における障害物の有無を検出する。さらに、各スキャン位置におけるレーザ光の照射タイミングから反射光の受光タイミングまでの所要時間をもとに、各スキャン位置における障害物までの距離が検出される。
【0003】
目標領域からの反射光を受光する受光光学系は、通常、レーザ光を目標領域に照射するための投射光学系から離れた位置に配置される(特許文献1)。目標領域からの反射光は、受光光学系内の光検出器によって受光される。光検出器からは、受光光量に応じた大きさの信号が出力される。この信号が所定の閾値を超えると、当該スキャン位置に障害物が存在すると判定される。また、この信号が前記閾値を超えたタイミングが反射光の受光タイミングとされて、上記のように、当該スキャン位置における障害物までの距離が計測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−14698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように受光光学系が投射光学系から離れた位置に配置されると、目標領域におけるレーザ光の走査位置に応じて、光検出器上における反射光の受光位置が変化する。このため、この構成では、反射光の移動範囲をカバーするために、大きな受光面を有する光検出器が必要になる。
【0006】
この場合、受光面が複数の領域に分割された光検出器が用いられ得る。この構成では、レーザ光の走査位置に対応する分割領域からの検出信号のみが、障害物の検出のために用いられる。こうすると、目標領域からの反射光以外の光(迷光)が受光面上の他の分割領域に入射しても、当該迷光による誤検出を抑制できる。しかし、この構成では、光検出器の各分割領域に、個別に、増幅回路等の回路部を配置する必要があり、回路規模の増大を招くこととなってしまう。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、簡素な構成の光検出器により目標領域からの反射光を適正に受光することができるレーザレーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主たる局面に係るレーザレーダは、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射された前記レーザ光が通過するための第1の孔が形成されるとともに、前記レーザ光の光軸に対して傾くように配置され、前記レーザ光源側と反対側の面が反射面である反射板と、前記孔を通過した前記レーザ光を目標領域において走査させる光走査部と、前記目標領域により反射され、さらに、前記反射板によって反射された前記レーザ
光を受光する光検出器と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡素な構成の光検出器により目標領域からの反射光を適正に受光することができるレーザレーダを提供することができる。
【0010】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態に係るレーザレーダの構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係るミラーアクチュエータの構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係るミラーアクチュエータの組立過程を示す図である。
【図4】実施の形態に係るミラーアクチュエータの組立過程を示す図である。
【図5】実施の形態に係るミラーアクチュエータの組立過程を示す図である。
【図6】実施の形態に係るミラーアクチュエータの組立過程を示す図である。
【図7】実施の形態に係るミラーアクチュエータの組立過程を示す図である。
【図8】実施の形態に係るレーザレーダの構成を示す図である。
【図9】実施の形態に係るサーボ光学系の構成および作用を説明する図である。
【図10】実施の形態に係るレーザレーダの光学系を示す図である。
【図11】実施の形態に係るレーザ光の走査と反射光の入射位置の変化を説明する図である。
【図12】実施の形態に係るレーザレーダの回路構成を示す図である。
【図13】変更例に係るレーザレーダの構成と光学系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、実施の形態に係るレーザレーダ1の構成を模式的に示す図である。同図(a)は、レーザレーダ1の内部を上面から透視した図、同図(b)は、投射/受光窓50を装着する前のレーザレーダ1の正面図である。
【0014】
同図(a)を参照して、レーザレーダ1は、筐体10と、投射光学系20と、受光光学系30と、回路ユニット40と、投射/受光窓50を備える。
【0015】
筐体10は、一辺の一部が斜めに傾いた立方体形状をしており、内部に、投射光学系20と、受光光学系30と、回路ユニット40とを収容する。同図(b)に示す如く、筐体10の正面には、開口11が形成され、開口11の周囲には、投射/受光窓50を嵌め込むための凹部12が形成されている。投射/受光窓50は、その周囲を凹部12に嵌め込んで接着固定することにより、筐体10の正面に装着される。
【0016】
投射光学系20は、レーザ光源21と、集光レンズ22と、ピンホール板23と、ビーム整形レンズ24と、ミラーアクチュエータ25とを備える。
【0017】
受光光学系30は、受光レンズ31と、フィルタ32と、光検出器33とを備える。なお、ピンホール板23と、ビーム整形レンズ24と、ミラーアクチュエータ25は、受光光学系30の一部として共用される。
【0018】
レーザ光源21は、波長900nm程度のレーザ光を出射する。
【0019】
集光レンズ22は、レーザ光源21から出射されたレーザ光(以下、「出射レーザ光」という。)をピンホール板23のピンホール23aの位置に収束させる。
【0020】
ピンホール板23は、ビーム整形レンズ24側の面がミラー面23bとなっており、中央にピンホール23aが形成されている。図示の如く、ピンホール板23は、レーザ光源21の光軸に対してX−Z平面の面内方向に45度傾くように配置されている。ピンホール板23のミラー面23bは、目標領域からの反射光を光検出器33に向かって反射させる。ピンホール23aは、集光レンズ22により収束された出射レーザ光を通過させる。
【0021】
ピンホール23aのサイズを小さくすることで、ピンホール板23のミラー面23bによる目標領域からの反射光の受光光量を大きくできる。さらに、ピンホール23aは、集光レンズ22と組み合わせて、スペイシャルフィルタ(空間フィルタ)として機能する。
【0022】
具体的には、出射レーザ光のうち、所期の角度成分と異なる角度成分の光や、所期の周波数帯と異なる周波数帯の光は、集光レンズ22により、ピンホール23aの位置に収束されない。このため、これらのノイズ成分光は、ピンホール23aの位置において、ピントが合わずにぼやけた状態となる。これにより、出射レーザ光のうち、これらのノイズ成分光は、大半がピンホール板23によって遮光され、所期の角度成分と周波数帯を持つレーザ光のみが、ピンホール23aを通過する。すなわち、集光レンズ22とピンホール23aとを組み合わせることにより、レーザ光源21自体のノイズ成分光や、空気中の微小粒子等によって発生する不所望な角度成分ないし周波数成分のノイズ成分光(空間ノイズ)を除去することができる。
【0023】
このように、出射レーザ光からノイズ成分が除去されることにより、目標領域におけるレーザ光のビームプロファイルを高めることができ、障害物の検出精度を高めることができる。なお、かかるノイズ成分の除去効果は、ピンホール23aのサイズを小さくするほど顕著となる。
【0024】
ビーム整形レンズ24は、出射レーザ光が、目標領域において所定の形状となるよう、出射レーザ光を収束させる。たとえば、目標領域(本実施の形態では、ビーム照射装置のビーム出射口から前方100m程度の位置に設定される)におけるビーム形状が、縦2m、横0.2m程度の楕円形状となるように、ビーム整形レンズ24が設計される。
【0025】
なお、目標領域からの出射レーザ光の反射光(以下、単に「反射光」という。)は、ビーム整形レンズ24に対して、略平行光の状態で入射する。このため、この反射光は、ピンホール23aの位置よりも集光レンズ22側の位置に収束される。出射レーザ光と反射光の収束位置と光路の関係は、追って、図10を参照して説明する。
【0026】
ミラーアクチュエータ25は、ビーム整形レンズ24を透過した出射レーザ光と目標領域からの反射光が入射するミラー69と、このミラー69を2つの軸の周りに回動させるための機構とを備える。ミラー69が回動することにより、目標領域において出射レーザ光が走査される。さらに、目標領域からの反射光は、出射レーザ光が目標領域へと向かう光路を逆行して、ミラー69に入射する。ミラー69に入射した反射光は、ミラー69により反射され、出射レーザ光の光路を逆行し、ビーム整形レンズ24を介してピンホール板23のミラー面23bに入射する。かかる反射光の挙動は、ミラー69がどのような回動位置にあっても同じである。すなわち、ミラー69がどのような回動位置にあっても、目標領域からの反射光は、出射レーザ光の光路を逆行し、ビーム整形レンズ24を介してピンホール板23のミラー面23bに入射する。ミラー69の回転による出射レーザ光と反射光の関係は、追って、図11を参照して説明する。
【0027】
受光レンズ31は、目標領域から反射された光を集光する。
【0028】
フィルタ32は、誘電体多層膜で構成されており、出射レーザ光の波長帯域の光のみを透過するバンドパスフィルタである。フィルタ32は、反射光の入射角に応じて誘電体多層膜の膜厚が調整されている。
【0029】
光検出器33は、APD(アバランシェ・フォトダイオード)またはPINフォトダイオードからなり、受光光量に応じた大きさの電気信号を回路ユニット40に出力する。光検出器33の受光面は、複数の領域に分割されておらず、単一の受光面からなっている。また、光検出器33の受光面は、迷光の影響を抑えるため、縦横の幅が狭く構成されている(例えば1mm前後)。
【0030】
回路ユニット40は、CPUやメモリ等を備え、レーザ光源21およびミラーアクチュエータ25を制御する。また、回路ユニット40は、光検出器33からの信号に基づいて、目標領域における障害物の有無および障害物までの距離を測定する。具体的には、目標領域における所定の走査位置において、レーザ光源21からレーザ光が出射される。このときに光検出器33から信号が出力されると、この走査位置に障害物が存在することが検出される。また、この走査位置においてレーザ光が出射されたタイミングと、光検出器33から信号が出力されたタイミングの時間差から、この障害物までの距離が測定される。回路ユニット40の構成は、追って図12を参照して説明する。
【0031】
投射/受光窓50は、均一な厚みを有する透明な平板からなっている。投射/受光窓50は、透明性の高い材料からなり、また、入射面と出射面に反射防止膜(ARコート)が付されている。また、投射/受光窓50は、投射/受光窓50により反射された出射レーザ光が、ピンホール板23から投射/受光窓50までの光路を逆行して光検出器33に迷光として入射することを防ぐため、出射レーザ光の光軸に対して所定角度だけX−Z平面およびY−Z平面の面内方向に傾けられている。なお、投射/受光窓50の傾きは、ミラーアクチュエータ25が回動した場合においても、投射/受光窓50により反射された出射レーザ光が、光路を逆行して光検出器33に入射しない角度に設定されている。
【0032】
図2は、本実施の形態に係るミラーアクチュエータ25の分解斜視図を示す図である。
【0033】
ミラーアクチュエータ25は、ミラーユニット60と、マグネットユニット70と、サーボユニット80を備えている。
【0034】
図3(a)を参照して、ミラーユニット60は、ミラーユニットフレーム61と、パンコイル装着板62、63と、サスペンションワイヤー固定基板64a、64b、65と、サスペンションワイヤー66a〜66dと、支軸67と、LED68と、ミラー69とを備えている。
【0035】
ミラーユニットフレーム61は、正面視において長方形の輪郭の枠部材からなっている。ミラーユニットフレーム61には、左右の側面にそれぞれ2つのチルトコイル装着部61aが設けられている。各側面のチルトコイル装着部61aは、各側面の中心から上下方向に対称な位置に配置されている。これら4つのチルトコイル装着部61aには、それぞれ、チルトコイル61bが巻回され固着される。
【0036】
また、ミラーユニットフレーム61には、左右に並ぶ軸孔61cと、上下に並ぶ溝61eが形成されている。軸孔61cは、左右の側面の中心位置に配置され、溝61eは上下の側面の中心位置まで延びている。軸孔61cには、それぞれ、左右から軸受け61dが
取り付けられる。
【0037】
ミラーユニットフレーム61の底面は、櫛歯状となっており、サスペンションワイヤー66a、66bを通すための2つのワイヤー孔61fと、サスペンションワイヤー66c、66dを通すための2つのワイヤー孔61gと、後述するサスペンションワイヤー76a〜76cを通すための3つのワイヤー孔61hと、サスペンションワイヤー76d〜76fを通すための3つのワイヤー孔61iが形成されている。なお、ワイヤー孔61h、61iは、サスペンションワイヤー76a〜76fを斜め後方向に傾けて固定するために、サスペンションワイヤー76a〜76fの径よりもやや大きく形成されている。これにより、サスペンションワイヤー76a〜76fを、ミラー69から離れる方向に曲線状に張ることができる。
【0038】
パンコイル装着板62には、2つのパンコイル装着部62aと、サスペンションワイヤー66a、66bを通すための2つのワイヤー孔62cと、サスペンションワイヤー66c、66dを通すための2つのワイヤー孔62dと、支軸67を通すための軸孔62eが設けられている。ワイヤー孔62cは、ワイヤー孔61fと上下方向に直線状に並ぶように形成されており、ワイヤー孔62dは、ワイヤー孔61gと上下方向に直線状に並ぶように形成されている。2つのパンコイル装着部62aには、それぞれ、2つのパンコイル62bが巻回され固着される。また、パンコイル装着板63には、2つのパンコイル装着部63aと支軸67を通すための軸孔63cが設けられている。パンコイル装着部63aには、2つのパンコイル63bが巻回され固着される。
【0039】
サスペンションワイヤー固定基板64a、64bには、それぞれ、サスペンションワイヤー66a、66bを通すための2つの端子穴64cと、サスペンションワイヤー66c、66dを通すための2つの端子穴64dが形成されている(図3(b)参照)。端子穴64c、64dの位置において、後述のように、パンコイル62b、63bと、LED68に電流を供給するための導線が、サスペンションワイヤー66a〜66dに半田等で電気的に接続される。サスペンションワイヤー固定基板64a、64bは、2つの端子穴64c、64dとワイヤー孔62c、62dが整合するように、パンコイル装着板62に接着して固定される。
【0040】
サスペンションワイヤー固定基板65には、サスペンションワイヤー66a、66bを通すための2つの端子穴65aと、サスペンションワイヤー66c、66dを通すための2つの端子穴65bと、サスペンションワイヤー76a〜76cを通すための3つの端子穴65cと、サスペンションワイヤー76d〜76f(図2参照)を通すため3つの端子穴65dが形成されている。なお、3つの端子穴65c、65dは、ワイヤー孔61h、61iと同様に、サスペンションワイヤー76a〜76fを曲線状に張るために、サスペンションワイヤー76a〜76fの径よりもやや大きく形成されている。
【0041】
図3(c)を参照して、サスペンションワイヤー固定基板65には、2つの端子穴65aと3つの端子穴65cのうちの2つとを電気的に接続する回路パターンP1、P2が形成されている。また、サスペンションワイヤー固定基板65には、2つの端子穴65bと3つの端子穴65dのうちの2つとを電気的に接続する回路パターンP3、P4が形成されている。これらの端子穴と、各端子穴に通されたサスペンションワイヤー66a〜66dおよびサスペンションワイヤー76a、76b、76d、76eとを半田付けすることにより、サスペンションワイヤー66a〜66dと、サスペンションワイヤー76a、76b、76d、76eとが、上記回路パターンを介して、電気的に接続される。3つの端子穴65cの残り一つと、3つの端子穴65dの残り一つの位置において、後述のように、左右のチルトコイル61bと、サスペンションワイヤー76c、76fとが、半田等で電気的に接続される。
【0042】
図3(a)に戻り、サスペンションワイヤー固定基板65は、端子穴65aとワイヤー孔61f、端子穴65bとワイヤー孔61g、端子穴65cとワイヤー孔61h、および、端子穴65dとワイヤー孔61iが、それぞれ互いに整合するように、ミラーユニットフレーム61に接着して固定される。
【0043】
サスペンションワイヤー66a〜66dは、りん青銅、ベリリウム銅等からなり、導電性に優れ、ばね性を有する。サスペンションワイヤー66a〜66dは、断面が円形状となっている。サスペンションワイヤー66a〜66dは、互いに同じ形状および特性を持ち、パンコイル62b、63bとLED68への電流供給と、ミラー69のPan方向の回動時において、安定した負荷を与えるために利用される。
【0044】
支軸67には、LED基板固定アーム68bを挿入するための孔67aと、パンコイル63bとLED68を電気的に接続する導線を通すための孔67b、67cと、ミラー69を嵌め込むための段部67dが形成されている。また、支軸67内は、パンコイル63bとLED68を電気的に接続する導線を通すため、空洞となっている。なお、支軸67は、後述するように、ミラー69をPan方向に回動させる回転軸として利用される。
【0045】
LED68は、拡散タイプ(広指向タイプ)であり、広い範囲に光を拡散させることができる。LED68からの拡散光は、後述するように、走査用のレーザ光の目標領域内での走査位置を検出するために利用される。LED68は、LED基板68aに取り付けられている。LED基板68aは、LED基板固定アーム68bに接着された後、支軸67の孔67aに取り付けられる。
【0046】
ミラーユニット60の組立時には、支軸67にミラー69が嵌め込まれた後、支軸67の両端の軸に軸受け67e、ポリスライダーワッシャ67fが取り付けられる。そして、この状態で、2つの軸受け67eが、ミラーユニットフレーム61に形成された溝61eに嵌め込まれる。さらに、上下からパンコイル装着板62の軸孔62eとパンコイル装着板63の軸孔63cが、支軸67に通され、支軸67に接着固定される。
【0047】
その後、サスペンションワイヤー66a、66bが、サスペンションワイヤー固定基板64aの2つの端子穴64cと、2つのワイヤー孔62cと、2つのワイヤー孔61fを介して、サスペンションワイヤー固定基板65の端子穴65aに通される。同様に、サスペンションワイヤー66c、66dが、サスペンションワイヤー固定基板64bの2つの端子穴64dと、2つのワイヤー孔62dと、2つのワイヤー孔61gを介して、サスペンションワイヤー固定基板65の端子穴65bに通される。サスペンションワイヤー66a〜66dは、それぞれ、パンコイル62b、63bと、LED68に電流を供給するための導線とともにサスペンションワイヤー固定基板64a、64b、65に半田付けられる。
【0048】
これにより、図2に示すように、ミラーユニット60の組立が完了する。この状態で、ミラー69は、支軸67の周りにPan方向に回動可能となる。なお、サスペンションワイヤー固定基板64a、64bは、ミラー69のPan方向の回動に伴って、Pan方向に回動する。組み立てられたミラーユニット60は、マグネットユニットフレーム71の開口に収容される。
【0049】
図2に戻り、マグネットユニット70は、マグネットユニットフレーム71と、8つのパンマグネット72と、8つのチルトマグネット73と、2つの支軸74と、サスペンションワイヤー固定基板75と、サスペンションワイヤー76a〜76fと、保護カバー77とを備えている。
【0050】
マグネットユニットフレーム71は、正面視において長方形の輪郭の枠部材からなっている。マグネットユニットフレーム71の左右の側面の中央には、支軸74を通すための軸孔71aと、支軸74を固定するためのネジ穴71bが形成されている。マグネットユニットフレーム71の上面には、サスペンションワイヤー固定基板75を固定するための2つのネジ穴71cが形成されている。また、マグネットユニットフレーム71の上下の内側面の前端には、マグネットユニットフレーム71の内側に突出した4つの鍔部が形成され、これら4つの鍔部には、保護カバー77を固定するためのネジ穴71dが形成されている。さらに、マグネットユニットフレーム71の上下の内側面の後端には、マグネットユニットフレーム71の内側に突出した4つの鍔部が形成され、これら4つの鍔部には、サーボユニットフレーム81を固定するためのネジ穴71eが形成されている。
【0051】
図4は、マグネットユニットフレーム71を後側から見た斜視図である。図4を参照して、8つのパンマグネット72がマグネットユニットフレーム71の上下の内側面に取り付けられる。さらに、8つのチルトマグネット73がマグネットユニットフレーム71の左右の内側面に取り付けられる。
【0052】
図2に戻り、2つの支軸74には、それぞれ、2つのネジ孔74bが形成されている。2つの支軸74は、ポリスライダーワッシャ74aが取り付けられた状態で、マグネットユニットフレーム71に形成された軸孔71aを介して、ミラーユニットフレーム61の軸受け61dに嵌め込まれる。この状態で、2つのネジ孔74bを介して2つのネジ74cがマグネットユニットフレーム71の2つのネジ穴71bに螺着される。これにより、2つの支軸74がマグネットユニットフレーム71に固着される。なお、支軸74は、後述するように、ミラー69をTilt方向に回動させる回転軸として利用される。
【0053】
サスペンションワイヤー固定基板75には、2つのネジ孔75aと、サスペンションワイヤー76a〜76fを通すための3つの端子穴75c、75dが形成されている。なお、3つの端子穴75c、75dは、サスペンションワイヤー76a〜76fを曲線状に張るために、サスペンションワイヤー76a〜76fの径よりもやや大きく形成されている。サスペンションワイヤー固定基板75には、端子穴75c、75dに信号を供給するための回路パターンが形成されている。
【0054】
サスペンションワイヤー76a〜76fは、りん青銅、ベリリウム銅等からなり、導電性に優れ、ばね性を有する。サスペンションワイヤー76a〜76fは、断面が円形状となっている。サスペンションワイヤー76a〜76fは、互いに同じ形状および特性を持ち、チルトコイル61bとパンコイル62b、63bとLED68への電流供給と、ミラー69のTilt方向の回動時において、安定した負荷を与えるために利用される。
【0055】
マグネットユニット70の組立時には、サスペンションワイヤー固定基板75が、マグネットユニットフレーム71の上面に取り付けられる。この状態で、2つのネジ孔75aを介して、2つのネジ75bを2つのネジ穴71cに螺着する。これにより、サスペンションワイヤー固定基板75がマグネットユニットフレーム71に固着される。
【0056】
その後、サスペンションワイヤー76a〜76cが、サスペンションワイヤー固定基板75の3つの端子穴75cと、ミラーユニットフレーム61の3つのワイヤー孔61hを介して、サスペンションワイヤー固定基板65の端子穴65c(図3(a)参照)に通される。同様に、サスペンションワイヤー76d〜76fが、サスペンションワイヤー固定基板75の3つの端子穴75dと、ミラーユニットフレーム61の3つのワイヤー孔61iを介して、サスペンションワイヤー固定基板65の3つの端子穴65d(図3(a)参照)に通される。
【0057】
しかる後、サスペンションワイヤー76a〜76fは、それぞれ、チルトコイル61bと、パンコイル62b、63bと、LED68に電流を供給するための導線とともに、サスペンションワイヤー固定基板65、75に半田付けられる。なお、サスペンションワイヤー76a〜76fは、ミラー69から離れる方向に曲線状に張られる。すなわち、サスペンションワイヤー76a〜76fの上端部は、端子穴75c、75dから離れるに従って後ろ方向に傾くように端子穴75c、75dに固定される。また、サスペンションワイヤー76a〜76fの下端部は、ワイヤー孔61h、61iおよび端子穴65b、65cから離れるに従って後ろ方向に傾くようにワイヤー孔61h、61iおよび端子穴65b、65c固定される。これにより、図5に示す構成体が完成する。この状態で、ミラーユニットフレーム61は、支軸74の周りにTilt方向に回動可能となる。なお、サスペンションワイヤー固定基板65は、ミラーユニットフレーム61のTilt方向の回動に伴って、Tilt方向に回動する。
【0058】
図5は、ミラーユニット60がマグネットユニット70に取り付けられた状態の構成体の斜視図である。図5(a)は、この構成体を図2の前方向から見た斜視図であり、図5(b)は、この構成体を図2の後方向から見た斜視図である。
【0059】
図5(b)を参照して、サスペンションワイヤー66aの両端は、それぞれ、2つの端子穴64cの内側の1つと、2つの端子穴65aの内側の1つに接続されている。同様に、サスペンションワイヤー66cの両端は、2つの端子穴64dの内側の1つと、2つの端子穴65bの内側の1つに接続されている。
【0060】
サスペンションワイヤー66bの両端は、2つの端子穴64cの外側の1つと、2つの端子穴65aの外側の1つに接続されている。同様に、サスペンションワイヤー66dの両端は、2つの端子穴64dの外側の1つと、2つの端子穴65bの外側の1つに接続されている。
【0061】
サスペンションワイヤー76aの両端は、3つの端子穴75cの内側の1つと、3つの端子穴65cの内側の1つに接続されている。同様に、サスペンションワイヤー76dの両端は、3つの端子穴75dの内側の1つと、3つの端子穴65dの内側の1つに接続されている。
【0062】
サスペンションワイヤー76bの両端は、3つの端子穴75cの中央の1つと、3つの端子穴65cの中央の1つに接続されている。同様に、サスペンションワイヤー76eの両端は、3つの端子穴75dの中央の1つと、3つの端子穴65dの中央の1つに接続されている。
【0063】
サスペンションワイヤー76cの両端は、3つの端子穴75cの外側の1つと、3つの端子穴65cの外側の1つと接続されている。同様に、サスペンションワイヤー76fの両端は、3つの端子穴75dの外側の1つと、3つの端子穴65dの外側の1つに接続されている。
【0064】
なお、図5(a)において、75eは、端子である。端子75eを介して、ミラー69をPan方向とチルト方向に駆動するための駆動信号と、LED68を点灯するための駆動信号が供給される。各端子75eは、それぞれ、端子穴75c、75dの何れかと、サスペンションワイヤー固定基板75上の回路パターンを介して接続されている。
【0065】
図2に戻り、サーボユニット80は、サーボユニットフレーム81と、ピンホール取り付け金具82と、ピンホール板83と、PSD基板84と、PSD85とを備えている。
【0066】
サーボユニットフレーム81は、正面視において長方形の輪郭の枠部材からなっている。サーボユニットフレーム81の左右の側面には、ピンホール取り付け金具82を固定するための2つのネジ孔81aが形成されている。また、サーボユニットフレーム81の上下の内側面の前端には、サーボユニットフレーム81の内側に突出した4つの鍔部が形成され、これら4つの鍔部には、それぞれ、ネジ孔81cが形成されている。さらに、サーボユニットフレーム81の左右の内側面の後端には、サーボユニットフレーム81の内側に突出した4つの鍔部が形成され、これら4つの鍔部には、それぞれ、ネジ穴81eが形成されている。
【0067】
ピンホール取り付け金具82の左右の側面には、2つのネジ穴82aが形成されている。また、ピンホール取り付け金具82の背面には、ピンホール板83を固定するための2つのネジ穴82bと、LED68から出射されたサーボ光をピンホール83aを介してPSD85に導くための開口82cが形成されている。
【0068】
ピンホール板83には、ピンホール83aと、2つのネジ孔83bが形成されている。ピンホール83aは、LED68から出射された拡散光のうち、一部の光を通過させる。
【0069】
PSD基板84には、PSD基板84をサーボユニットフレーム81に固定するための4つのネジ孔84aが形成されている。PSD基板84には、PSD85が装着されている。PSD85は、サーボ光の受光位置に応じた信号を出力する。
【0070】
サーボユニット80の組立時には、ピンホール板83が、ピンホール取り付け金具82の背面に当てられる。この状態で、2つのネジ孔83bを介して2つのネジ83cを2つのネジ穴82bに螺着する。これにより、ピンホール板83がピンホール取り付け金具82に固着される。
【0071】
次に、ピンホール取り付け金具82が、サーボユニットフレーム81内に収容される。この状態で、4つのネジ孔81aと4つのネジ穴82aとが合わされ、左右から4つのネジ81bをそれぞれネジ孔81aとネジ穴82aに螺着する。これにより、ピンホール取り付け金具82が、サーボユニットフレーム81に固着される。
【0072】
さらに、PSD基板84が、サーボユニットフレーム81の背部に当てられる。この状態で、4つのネジ孔84aを介して4つのネジ84bを4つのネジ穴81eに螺着する。これにより、PSD基板84が、サーボユニットフレーム81に固着される。こうして、図6に示すサーボユニット80が完成する。図6(a)は、組み立てられたサーボユニット80を前方から見た斜視図、図6(b)は、組み立てられたサーボユニット80を後方から見た斜視図である。
【0073】
こうしてサーボユニット80が組み立てられた後、サーボユニット80が、図5に示す構成体の背部に当てられる。この状態で、サーボユニットフレーム81の4つのネジ孔81cを介して、後方から4つのネジ81dをマグネットユニットフレーム71の4つのネジ穴71eに螺着する。これにより、サーボユニット80が図5に示す構成体に固着される。こうして、図7に示すように、ミラーアクチュエータ25の組立が完了する。図7(a)は、ミラーアクチュエータ25を前方から見た斜視図、図7(b)は、ミラーアクチュエータ25を後方から見た斜視図である。
【0074】
図7に示すアセンブル状態において、8つのパンマグネット72(図4参照)は、パンコイル62b、63b(図3(a)参照)に電流を印加することにより、パンコイル装着板62、63に支軸67を軸とする回動力が生じるよう、配置および極性が調整されてい
る。したがって、パンコイル62b、63bに電流を印加すると、パンコイル62b、63bに生じる電磁駆動力によってパンコイル装着板62、63とともに支軸67が回動し、これにより、ミラー69が、支軸67を軸として回動する。支軸67を軸とするミラー69の回動方向をPan方向という。なお、パンコイル62b、63bへの電流の印加を中止すると、ミラー69は、サスペンションワイヤー66a〜66dのばね性により、回動前の位置に戻される。
【0075】
図7に示すアセンブル状態において、8つのチルトマグネット73(図4参照)は、チルトコイル61b(図3(a)参照)に電流を印加することにより、ミラーユニットフレーム61に支軸74を軸とする回動力が生じるよう、配置および極性が調整されている。したがって、チルトコイル61bに電流を印加すると、チルトコイル61bに生じる電磁駆動力によって、ミラーユニットフレーム61が、支軸74を軸として回動し、ミラーユニットフレーム61と一体的にミラー69が回動する。支軸74を軸とするミラー69の回動方向をTilt方向という。なお、チルトコイル61bへの電流の印加を中止すると、ミラーユニットフレーム61は、サスペンションワイヤー76a〜76fのばね性により、回動前の位置に戻される。
【0076】
なお、上記のようにミラーアクチュエータ25を構成することにより、大きなミラー69を高レスポンスで駆動することができる。このため、目標領域からの反射光を、大きなミラー69で受光できるようになる。
【0077】
図8は、ミラーアクチュエータ25が装着された状態の光学系の構成を示す図である。
【0078】
図8において、500は、光学系を支持するベースである。
【0079】
ベース500の上面には、レーザ光源21と、集光レンズ22と、ピンホール板23と、ビーム整形レンズ24と、ミラーアクチュエータ25と、受光レンズ31と、フィルタ32と、光検出器33が配置されている。レーザ光源21は、ベース500の上面に配されたレーザ光源用の回路基板21aに装着されている。また、光検出器33は、ベース500の上面に配された光検出器33用の回路基板33aに装着されている。
【0080】
レーザ光源21から出射されたレーザ光は、集光レンズ22により、ピンホール板23のピンホール23aの位置に収束される。ピンホール23aを透過した出射レーザ光は、ビーム整形レンズ24によって水平方向および鉛直方向の収束作用を受け、目標領域において所定の形状に整形される。ビーム整形レンズ24を透過した出射レーザ光は、ミラーアクチュエータ25のミラー69に入射し、ミラー69によって目標領域に向かって反射される。ミラーアクチュエータ25によってミラー69が駆動されることにより、出射レーザ光が目標領域内においてスキャンされる。
【0081】
ミラーアクチュエータ25は、中立位置にあるときに、ビーム整形レンズ24からの走査レーザ光がミラー69のミラー面に対し水平方向において45度の入射角で入射するよう配置されている。なお、「中立位置」とは、ミラー面が鉛直方向に対し平行で、且つ、走査レーザ光がミラー面に対し水平方向において45度の入射角で入射するときのミラー69の位置をいう。
【0082】
ベース500の上面には、回路基板21a、33aの他、ミラーアクチュエータ25の背後に、ミラーアクチュエータ25のチルトコイル61b、パンコイル62b、63bに駆動信号を供給するための回路基板(図示せず)が配置されている。これら回路基板は、図1(a)の回路ユニット40に含まれる。
【0083】
図9(a)は、ミラー69の位置を検出するためのサーボ光学系を説明する図である。同図は、図8の光学系をベース500の上面側から見たときの模式図である。同図には、ミラーアクチュエータ25の一部断面図とレーザ光源21のみが示されている。
【0084】
上述の如く、ミラーアクチュエータ25には、LED68と、ピンホール取り付け金具82と、ピンホール板83と、PSD基板84と、PSD85が配されている。
【0085】
LED68、PSD85およびピンホール83aは、ミラーアクチュエータ25のミラー69が上記中立位置にあるときに、LED68がピンホール板83のピンホール83aとPSD85の中心に向き合うように配置されている。すなわち、ミラー69が中立位置にあるとき、LED68から出射されピンホール83aを通るサーボ光が、PSD85の中心に垂直に入射するよう、ピンホール板83およびPSD85が配置されている。また、ピンホール板83は、LED68とPSD85の中間位置よりもPSD85に近い位置に配置されている。
【0086】
ここで、LED68から拡散するように発せられたサーボ光は、その一部が、ピンホール83aを通過し、PSD85によって受光される。ピンホール83a以外の領域に入射されたサーボ光は、ピンホール板83によって遮光される。PSD85は、サーボ光の受光位置に応じた電流信号を出力する。
【0087】
たとえば、図9(b)のようにミラー69が破線で示す中立位置から矢印方向に回動すると、LED68の拡散光(サーボ光)のうちピンホール83aを通る光の光路は、LP1からLP2へと変位する。その結果、PSD85上におけるサーボ光の照射位置が変化し、PSD85から出力される位置検出信号が変化する。この場合、LED68からのサーボ光の発光位置と、PSD85の受光面上におけるサーボ光の入射位置は一対一に対応する。したがって、PSD85にて検出されるサーボ光の入射位置によって、ミラー69の位置を検出することができ、結果、目標領域における走査レーザ光の走査位置を検出することができる。
【0088】
図10は、レーザレーダ1の内部を上面側から見たときの一部平面図である。同図には、出射レーザ光が実線の矢印で示され、目標領域からの反射光が点線の矢印で示されている。
【0089】
図10を参照して、レーザ光源21から出射されるレーザ光は、集光レンズ22によって、ピンホール板23のピンホール23aの位置に収束される。その後、出射レーザ光は、ビーム整形レンズ24を透過した後、ミラー69によって反射され、筺体10内から目標領域に出射される。
【0090】
筺体10から出射される出射レーザ光は、拡散光である。すなわち、出射レーザ光は、拡散光の状態で、ビーム整形レンズ24から出射される。これに対し、目標領域で反射され筺体10に入射する反射光は、遠方にある目標領域の障害物(例えば数10m)によって反射された光であるため、略平行光となる。よって、反射光は、略平行光の状態で、ビーム整形レンズ24に入射する。
【0091】
なお、図10には、便宜上、ミラー69における出射レーザ光と反射光の入射領域が同じであるように示されているが、実際は、出射レーザ光の入射領域よりも反射光の入射領域の方が数段広くなっている。このため、ビーム整形レンズ24における反射光の入射領域は、ビーム整形レンズ24における出射レーザ光の通過領域よりも、かなり広くなっている。
【0092】
このように、反射光は、出射レーザ光の通過領域よりも広い領域において、略平行光の状態で、ビーム整形レンズ24に入射する。このため、反射光は、ビーム整形レンズ24によって、ピンホール23aよりもビーム整形レンズ24から遠い位置に収束され、ミラー面23bには、大きく広がった状態で入射する。これにより、反射光は、大半がピンホール板23のミラー面23bによって反射される。ピンホール板23のミラー面23bによって反射された目標領域からの反射光は、受光レンズ31によって、集光された後、フィルタ32を介して、光検出器33に入射する。これにより、目標領域からの反射光を検出することができる。
【0093】
図11は、ミラー69の回動位置と出射レ―ザ光と反射光の光路の関係を説明する図である。図11(a)は、出射レーザ光の光路を示す図、図11(b)は、反射光の光路を示す図である。
【0094】
図11(a)を参照して、レーザ光源21から出射された出射レーザ光は、集光レンズ22、ピンホール23a、ビーム整形レンズ24、ミラー69を介して、投射/受光窓50より目標領域に照射される。ここで、ミラー69が破線の位置から矢印のように回動すると、出射レーザ光の光路が図中の点線から実線のように変化し、出射レーザ光の進行方向が変化する。これにより、出射レーザ光が目標領域内においてスキャンされる。
【0095】
図11(b)を参照して、目標領域からの反射光は、投射/受光窓50を透過し、ミラー69、ビーム整形レンズ24、ピンホール板23のミラー面23b、受光レンズ31、フィルタ32を介して光検出器33に入射される。なお、フィルタ32は、形状がなるべく小さくなるように、受光レンズ31と光検出器33の間の光検出器33よりの位置に配置されている。ここで、図11(a)と同様に、ミラー69が破線の位置から矢印のように回動すると、出射レーザ光の進行方向の変化に伴い、目標領域からの反射光の光路は、図中の点線から実線のように変化する。このとき、ミラー69は、実線の位置にあるため、目標領域からの反射光は、ミラー69によって、ミラー69の回動前と同じ方向に反射される。すなわち、反射光は、出射レーザ光がピンホール板23からミラー69へと向かう光路を逆行する。したがって、ミラー69が回動しても、ミラー69からピンホール板23までの反射光の光路は変わらない。このため、ミラー69が回動しても、光検出器33に対する反射光の入射位置は変化しないこととなる。
【0096】
なお、仮に、たとえば、ミラー69が、図10(b)の実線の位置にあるときに、目標領域からの反射光以外の迷光が、同図Z軸負方向に沿って投射/受光窓50に入射したとする。この場合、この迷光は、投射/受光窓50を透過してミラー69に入射するが、ミラー69が実線の位置にあるため、同図のX軸負方向には進まない。このため、この迷光は、光検出器33へは照射されず、よって、光検出器33からの出力に、この迷光によるノイズは重畳されない。この効果は、光検出器33の受光面を小さくするほど顕著となる。
【0097】
このように、図11の構成では、ミラー69が回動しても、光検出器33に対する反射光の入射位置は変化しないため、単一受光面の小さな光検出器33により、反射光を適正に受光することができる。また、光検出器33の受光面を小さくすることにより、迷光が光検出器33に入射することを抑制でき、光検出器33からの検出信号の精度を高めることができる。
【0098】
図12は、レーザレーダ1の回路構成を示す図である。なお、同図には、便宜上、投射光学系20および受光光学系30の主要な構成が併せて示されている。図示の如く、レーザレーダ1は、PD信号処理回路101と、スキャンLD駆動回路102と、アクチュエータ駆動回路103と、サーボLED駆動回路104と、PSD信号処理回路105と、
DSP106を備えている。これらの回路は、図1の回路ユニット40に含まれている。
【0099】
PD信号処理回路101は、光検出器33の受光光量に応じた電圧信号を増幅およびデジタル化してDSP106に供給する。
【0100】
スキャンLD駆動回路102は、DSP106からの信号をもとに、レーザ光源21に駆動信号を供給する。具体的には、目標領域にレーザ光を照射するタイミングで、パルス状の駆動信号(電流信号)がレーザ光源21に供給される。
【0101】
PSD信号処理回路105は、PSD85からの出力信号をもとに求めた位置検出信号をDSP106に出力する。サーボLED駆動回路104は、DSP106からの信号をもとに、LED68に駆動信号を供給する。アクチュエータ駆動回路103は、DSP106からの信号をもとに、ミラーアクチュエータ25を駆動する。具体的には、目標領域においてレーザ光を所定の軌道に沿って走査させるための駆動信号がミラーアクチュエータ25に供給される。
【0102】
DSP106は、PSD信号処理回路105から入力された位置検出信号をもとに、目標領域におけるレーザ光の走査位置を検出し、ミラーアクチュエータ25の駆動制御や、レーザ光源21の駆動制御等を実行する。また、DSP106は、PD信号処理回路101から入力される電圧信号に基づいて、目標領域内のレーザ光照射位置に障害物が存在するかを判定し、同時に、レーザ光源21から出力されるレーザ光の照射タイミングと、光検出器33にて受光される目標領域からの反射光の受光タイミングの間の時間差をもとに、障害物までの距離を測定する。
【0103】
以上、本実施の形態によれば、出射レーザ光を走査させるためのミラーアクチュエータ25を、受光光学系30にも共用することで、光検出器33に対する反射光の入射位置を一定にすることができる。したがって、単一受光面の小さな光検出器33を用いることができ、この光検出器33により、反射光を精度よく検出することができる。よって、レーザレーダのコスト削減、小型化を図ることができる。
【0104】
また、本実施の形態では、投射光学系20において、ピンホール板23の前段に集光レンズ22を配することで、ピンホール23aを小さくすることができ、結果、ミラー面23bにより反射される反射光の光量を大きくすることができる。このため、光検出器33による反射光の受光光量を大きくすることができ、精度よく目標領域の障害物を検出することができる。
【0105】
さらに、本実施の形態では、集光レンズ22とピンホール板23からなるスペイシャルフィルタ(空間フィルタ)によって、出射レ―ザ光に含まれる空間ノイズが除去されるため、目標領域における出射レーザ光のビームプロファイルを高めることができ、障害物の検出精度を向上させることができる。
【0106】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記以外に種々の変更が可能である。
【0107】
たとえば、光検出器33の前段に、上記実施の形態における集光レンズ22とピンホール板23との組合せと同様のスペイシャルフィルタを配置しても良い。
【0108】
出射レーザ光の発光強度(例えば、数10W程度)は、非常に大きいため、出射レーザ光の一部が、筺体10内で反射または回折され、迷光となって光検出器33に入射すると、光検出器33の検出信号に大きな影響を与える惧れがある。さらに、筺体10外からの
迷光(例えば、対向車両のライト等)が、光検出器33に直接入射するような場合も、光検出器33の検出信号に影響を与える惧れがある。
【0109】
かかる問題は、光検出器33の前段に、スペイシャルフィルタの構成を配置することにより抑制できる。
【0110】
図13は、受光光学系内に集光レンズとピンホール板を配置した場合のレーザレーダ1の内部を上面側から見た時の一部平面図である。
【0111】
投射光学系120は、レーザ光源21と、ビーム整形レンズ121と、ピンホール板122と、ミラーアクチュエータ25とを備える。
【0112】
受光光学系130は、ミラーアクチュエータ25と、ピンホール板122と、集光レンズ131と、フィルタ132と、ピンホール箱133と、受光レンズ134と、光検出器135とを備える。ミラーアクチュエータ25と、ピンホール板122は、投射光学系120のものと同一である。
【0113】
レーザ光源21と、ミラーアクチュエータ25は、上記実施の形態と同様に構成されている。なお、本変更例では、レーザ光源21から出射される出射レーザ光を収束させずに、ピンホール122aを通過させる。このため、ピンホール122aは上記実施の形態のピンホール23aよりも大きくなり、また、レーザ光源21とピンホール板122は、互いに近づいて設置される。
【0114】
ビーム整形レンズ121は、上記実施の形態と同様に、出射レーザ光が、目標領域において、所定の形状となるよう、出射レーザ光を収束させる。
【0115】
ピンホール板122は、ミラー69側の面がミラー面122bとなっており、中央にピンホール122aが形成されている。ピンホール122aは、出射レーザ光が通過できるように、出射レーザ光のビーム径よりも大きい孔で形成されている。ピンホール板122のミラー面122bは、目標領域からの反射光を光検出器135に向かって反射させる。ピンホール122aは、レーザ光源21により出射された出射レーザ光を通過させる。
【0116】
集光レンズ131は、反射光をピンホール箱133のピンホール133aの位置に収束させる。
【0117】
フィルタ132は、誘電体多層膜で構成されており、出射レーザ光の波長帯域の光のみを透過するバンドパスフィルタである。フィルタ132は、反射光の入射角に応じて誘電体多層膜の膜厚が調整されている。フィルタ132は、ピンホール箱133のピンホール133aに覆うように配置されている。
【0118】
ピンホール箱133は、表面が遮光性のある素材であり、受光レンズ134と光検出器135を囲むように配置される。ピンホール箱133の一つの側面には、中央にピンホール133aが形成されている。ピンホール箱133の外側面は、ピンホール133a以外の位置に入射する光を遮光する。ピンホール133aは、集光レンズ131により、収束された反射光を通過させる。ピンホール133aは、集光レンズ131と組み合わせて、スペイシャルフィルタ(空間フィルタ)として機能し、反射光の空間ノイズを除去する。
【0119】
受光レンズ134は、ピンホール133aを通過し、発散する反射光を光検出器135の位置に集光する。
【0120】
光検出器135は、上記実施の形態同様、反射光を受光し、受光光量に応じた大きさの電気信号を出力する。
【0121】
レーザ光源21から出射されるレーザ光は、ビーム整形レンズ121を透過した後、ピンホール板122に形成されたピンホール122aを通過する。ピンホール板122のピンホール122aを通過した出射レーザ光は、ミラー69によって反射され、筺体10内から目標領域に出射される。
【0122】
上記実施の形態同様、筺体10から出射される出射レーザ光は、拡散光であり、筺体10に入射する反射光は、略平行光である。そのため、反射光は、大きく広がった状態で、ピンホール板122のミラー面122bに入射し、大半が、ピンホール板122のミラー面122bによって反射される。ピンホール板122のミラー面122bによって反射された目標領域からの反射光は、集光レンズ131によってピンホール133aの位置に収束される。反射光は、フィルタ132、ピンホール133aを通過した後、受光レンズ134によって、集光されて光検出器135に入射する。これにより、上記実施の形態同様、目標領域からの反射光を検出することができる。
【0123】
本変更例においても、上記実施の形態同様、単一受光面の小さな光検出器135により、反射光を精度よく検出することができる。加えて、本変更例によれば、集光レンズ131とピンホール133aからなるスペイシャルフィルタが配置されたため、光検出器135に迷光が入射するのを抑制することができる。
【0124】
また、本変更例では、ピンホール箱133が、光検出器135を囲むように配置されるため、ピンホール133aを通る光以外の迷光を遮光することができる。
【0125】
また、本変更例では、ピンホール133aの傍に、フィルタ132が配置されているため、筺体10外からの出射レーザ光の周波数以外の迷光(例えば、対向車のライト等)を効果的に除去することができる。本変更例では、反射光がピンホール133aの大きさに収束されるため、フィルタ132をピンホール133aの傍に配置することで、フィルタ132を小さくすることができる。
【0126】
なお、上記実施の形態の集光レンズ22とピンホール板23との組み合わせを、本変更例の投射光学系に配置してもよい。
【0127】
また、本変更例では、フィルタ132を、ピンホール23aを覆うように配置したが、集光レンズ131の前段(図13の点線位置)に配置してもよいし、あるいは、光検出器135の直前に配置してもよい。フィルタ132を図13の点線位置に配置した場合、フィルタ132は、ピンホール23aの傍に配置した場合に比べ、サイズが大きくなる。しかし、フィルタ132に入射する反射光は、略平行光となるため、誘電体多層膜の膜厚の設計が簡素なフィルタ132を用いることができる。
【0128】
また、本変更例では、ピンホール133aを通過し、発散する反射光を集光するために、受光レンズ134を用いたが、受光レンズ134を用いず、光検出器135をピンホール133aに近づけて配置しても良い。
【0129】
さらに、上記実施の形態では、2つの軸の周りにミラーが回転するミラーアクチュエータの構成例を示したが、本発明は、上記以外の構成のミラーアクチュエータや、レンズを駆動してレーザ光を走査するタイプのアクチュエータ、あるいは、ポリゴンミラーを用いたアクチュエータにも適用可能である。
【0130】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0131】
1 … レーザレーダ
22 … 集光レンズ(第1のレンズ)
23 … ピンホール板(反射板)
23a… ピンホール(第1の孔)
23b… ミラー面(反射面)
25 … ミラーアクチュエータ(光走査部)
33 … 光検出器
131 … 集光レンズ(第2のレンズ)
132 … フィルタ(バンドパスフィルタ)
133 … ピンホール箱(板状部)
133a… ピンホール(第2の孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射された前記レーザ光が通過するための第1の孔が形成されるとともに、前記レーザ光の光軸に対して傾くように配置され、前記レーザ光源側と反対側の面が反射面である反射板と、
前記孔を通過した前記レーザ光を目標領域において走査させる光走査部と、
前記目標領域により反射され、さらに、前記反射板によって反射された前記レーザ光を受光する光検出器と、を備える、
ことを特徴とするレーザレーダ。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザレーダにおいて、
前記レーザ光源から出射された前記レーザ光を収束させて前記第1の孔に入射させる第1のレンズをさらに備える、
ことを特徴とするレーザレーダ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレーザレーダにおいて、
前記光走査部を経由した前記レーザ光が入射する出射窓をさらに備え、
前記出射窓の前記光走査部側の面が、当該面に入射する前記レーザ光の光軸に対して傾けられている、
ことを特徴とするレーザレーダ。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載のレーザレーダにおいて、
第2の孔を有するとともに、前記反射板と前記光検出器との間に配置された板状部材と、
前記目標領域により反射され、前記反射板によって反射された前記レーザ光を収束させて前記第2の孔に入射させる第2のレンズと、をさらに備える、
ことを特徴とするレーザレーダ。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザレーダにおいて、
前記レーザ光の波長帯の光を抽出するためのバンドパスフィルタが、前記第2のレンズと前記光検出器との間であって、前記第2のレンズの入射するときよりも前記レーザ光の断面が小さくなる位置に配置される、
ことを特徴とするレーザレーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−141191(P2012−141191A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293201(P2010−293201)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】