説明

レーザーを用いた酵素活性測定方法及び酵素活性測定装置

【課題】従来方法に比べて簡便な操作で測定ができ、さらに生体組織や生細胞内の酵素についても測定が可能な酵素活性測定方法の提供。
【解決手段】基質又は基質代謝産物の多光子励起過程から生ずる放射波の検出によって、酵素の基質代謝により生成する基質代謝産物の量を測定する酵素活性測定方法を提供する。併せて、基質又は基質代謝産物の多光子励起過程を誘導する近赤外フェムト秒レーザー光のレーザー光源11と、基質又は基質代謝産物の多光子励起過程から生ずる放射波を検出する放射波検出部31と、近赤外フェムト秒レーザー光を酵素存在部位へ導入し、かつ、放射波を放射波検出部へ導入する光学経路と、を少なくとも備える酵素活性測定装置を提供する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素活性測定方法などに関する。より詳しくは、多光子励起過程を用いた酵素活性測定方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、組織や細胞内の酵素活性の測定は、生化学的手法によって行われている。まず、組織の一部を摘出してホモジネートを調製したり、培養細胞を回収してライセートを調製した後、組織ホモジネート又は細胞ライセートを遠心分離して酵素活性分画を調製する。次に、調製された酵素活性分画に、酵素の基質となる試薬を加え、この基質試薬と酵素との反応によって生成する基質代謝物の量を測定することで酵素活性を測定する。
【0003】
例えば、比色法では、酵素との反応により発色する基質試薬を用い、その発色の度合いにより酵素活性の測定を行う。他に、酵素との反応により蛍光を発する基質試薬を用いて、その蛍光強度によって酵素活性を測定する蛍光法や、酵素との反応によって吸光波長が変化する基質を用いて、その吸光度の変化によって酵素活性を測定する吸光法等がある。
【0004】
特許文献1には、代表的な薬物代謝酵素であるチトクロームP450(以下、「CYP450」という)の調製法が記載されている。非特許文献2には、この方法などにより得たCYP450を用いた酵素活性測定が記載されている。また、特許文献3及び4には、遺伝子組み換え微生物により製造したCYP450を用いた酵素活性測定が開示されている。非特許文献5には、動物に投与した薬剤を体内で代謝させ、その尿を得ることによるCYP450の酵素活性測定が記載されている。
【特許文献1】特開2006−34215号公報
【非特許文献2】Analytical Biochemistry 276:215-226, 1999
【非特許文献3】American Society for Pharmacology and Experimental Therapeutics DMD 30:845-852, 2002
【非特許文献4】Biochemistry 45:12204-12215, 2006
【特許文献5】特開平11−225791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の酵素活性測定方法では、組織ホモジネート又は細胞ライセートや酵素活性分画を調製する必要があり、その操作が煩雑となっていた。また、従来方法では、組織や細胞を溶解しなければならないため、組織や細胞が生きた状態で、その内部の酵素について活性を測定することは不可能であった。
【0006】
そこで、本発明は、従来方法に比べて簡便な操作で測定ができ、さらに生体組織や生細胞内の酵素についても測定が可能な酵素活性測定方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題解決のため、本発明は、基質又は基質代謝産物の多光子励起過程から生ずる放射波の検出によって、酵素の基質代謝により生成する基質代謝産物の量を測定する酵素活性測定方法を提供する。
酵素活性の測定は、基質及び基質代謝産物のうち、一方のみが多光子励起過程による放射波の発生に至る条件下にて行われる。
特に、酵素が生体内酵素である場合には、基質を生体の酵素存在部位に浸透して酵素活性の測定を行う。
また、本発明は、酵素活性促進剤又は阻害剤の存在下において、酵素の基質代謝により生成する基質代謝産物の量を、基質又は基質代謝産物の多光子励起過程から生ずる放射波の検出によって測定する酵素活性促進剤又は阻害剤の活性測定方法、及び、被検物質の存在下において、酵素の基質代謝により生成する基質代謝産物の量を、基質又は基質代謝産物の多光子励起過程から生ずる放射波の検出によって測定する酵素活性促進剤又は/及び阻害剤のスクリーニング方法も提供する。
さらに、本発明は、基質又は基質代謝産物の多光子励起過程を誘導する近赤外フェムト秒レーザー光のレーザー光源と、基質又は基質代謝産物の多光子励起過程から生ずる放射波を検出する放射波検出部と、近赤外フェムト秒レーザー光を酵素存在部位へ導入し、かつ、放射波を放射波検出部へ導入する光学経路と、を少なくとも備える酵素活性測定装置をも提供するものである。
また、この装置には、酵素存在部位へ基質を導入する浸透装置を設けることができる。
本発明に係る酵素活性測定方法は、酵素として、特に薬物代謝酵素である場場合に好適である。
【0008】
ここで、本発明における各用語の定義を説明する。
【0009】
「多光子励起過程」とは、1個の分子が同時に複数個の光子を吸収(多光子吸収)して、第一電子励起状態以上へ遷移する現象をいう。多光子励起過程は、パルス幅がフェムト秒からピコ秒(サブピコ秒)のフェムト秒レーザー光を対物レンズで標的分子に集光することにより誘起できる。励起された分子は、元のエネルギー状態に戻る際に放射波を発生する。この放射波をとらえることで、標本中の分子を観察することが可能となる。
【0010】
多光子励起過程では、複数個の光子により励起を行うため、従来の一光子励起に比べてエネルギーが低い長波長のレーザーを使用することができる。また、多光子励起過程は、複数個の光子がほぼ同時に分子に到達したときのみ起こるため、レーザーの焦点付近だけで誘起される。さらに、深部到達性に優れた長波長のレーザーを使用するため、標本表面から深部にある標的分子を励起することが可能である。
【0011】
本発明において「放射波」とは、励起状態へ遷移した分子が元のエネルギー状態に戻る際に発生する光をいうものとする。「放射波」には、蛍光や、分子が半導体である場合には量子ドット、レーザー光、テラヘルツ波等が含まれる。なお、本発明において「反射波」は、「放射波」とは異なる意味に用い、多光子励起過程に基づかず、単に標本によって反射された光を「反射波」というものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る酵素活性測定方法及び測定装置によれば、簡便な操作で酵素活性の測定が可能であり、さらに生体組織や生細胞内の酵素についても測定が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0014】
本発明に係る酵素活性測定方法では、酵素の基質又はこの基質が酵素によって代謝されて生成する基質代謝産物を多光子吸収によって励起し、基質又は基質代謝産物の多光子励起過程から生ずる放射波の検出を行う。これにより、酵素の基質代謝により生成する基質代謝産物の量を測定し、酵素活性を評価する。
【0015】
測定は、基質及び基質代謝産物のうち、一方のみが多光子励起過程による放射波の発生に至る条件下にて行われる。
【0016】
具体的に説明すると、例えば、基質代謝産物のみが多光子励起過程による放射波の発生に至る条件下にて行われる場合には、測定対象とする酵素の活性により基質から生成した基質代謝産物を、基質代謝産物の多光子励起過程から発生する放射波の検出によって測定する。この場合、一定時間経過後の放射波強度が大きいほど、酵素代謝により生成した基質代謝産物の量が多く、従って酵素活性が大であることとなる。
【0017】
この場合、酵素活性(K)は次の式(1)で表すことができる。
【0018】
【数1】


(aは補正係数を表す。Tは測定開始時間、Tは測定開始後の一定時間、Fは時間Tに測定した放射波測定値、Fは時間Tに測定した放射波測定値を表す。)
【0019】
また、基質のみが多光子励起過程による放射波の発生に至る条件下にて行われる場合には、測定対象とする酵素の活性により基質から生成した基質代謝産物の量を、基質の多光子励起過程から発生する放射波の減少により算出する。この場合、一定時間経過後の放射波強度が小さいほど、酵素によって代謝された基質が多く、生成した基質代謝産物の量が多い、すなわち、酵素活性が大であることとなる。
【0020】
基質には、測定対象とする酵素又は酵素群に特異的な基質を用いる。これにより測定対象とする酵素の活性のみを、他の多数の酵素と区別して測定することができる。また、複数の酵素からなる酵素群について共通する基質(当該酵素群以外の酵素の基質とはならない)を用いれば、その酵素群全体の酵素活性を測定することも可能である。
【0021】
基質は、測定対象とする酵素の機能に応じて適宜選択され、化学物質、脂質、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、核酸などから選択される。現在、一般的に用いられている標識基質(基質試薬)としては、DFH:(3-hydroxy-5,5-dimethyl-4-(4-methylsulfonylphenyl)-(5H)-furan-2-one)やDFB:(3,4-difluorobenzyloxy)-5,5-dimethyl-4-(4-methylsulfonylphenyl)-
(5H)-furan-2-one)、DFP:3-(Isopropoxy)-5,5-dimethyl-4-(4-methylsulfonylphenyl)-5H-furan-2-one等が挙げられ、本発明においてもこれらの標識試薬を用いることができる。
【0022】
本発明に係る酵素活性測定方法を、測定対象酵素として代表的な薬物代謝酵素であるチトクロームP450(以下、「CYP450」という)を例にとり、さらに具体的に説明する。
【0023】
CYP450は、複数の分子種からなる遺伝子ファミリーによって構成された遺伝子スーパーファミリーである。各ファミリーは、例えばCYP1ファミリーであれば、CYP1A1, CYP1A2, CYP1B1の各分子種から構成されている。ヒトでは合計50種類程度の分子種が報告されている。各分子種は、それぞれ異なる基質特異性を有している。例えば、CYP1A2はカフェインのN-脱エチル化を触媒し、CYP1B1は17-βエストラジオールの4位水酸化を触媒することが知られている。
【0024】
CYP450の基質には、フェノバルビタールをはじめとする多数の薬物が含まれる。例えば、CYP1A2の基質となる薬物には、うつ病治療薬である塩酸アミトリプチリン、塩酸イミプラミン、塩酸クロミプラミン、塩酸ミアンセリン、不整脈治療薬である塩酸メキシレチン、塩酸プロプラノロール、塩酸プロパフェノン等がある。
【0025】
このように、CYP450の各分子種はそれぞれ特異的な基質を有している。このため、酵素活性測定対象とする分子種の基質特異性に応じて、基質を設計、選択することにより、その分子種の活性を特異的に測定することが可能となる。一例として、CYP2C9の場合、基質としてMFC (7-Methoxy-trifluoromethylcoumarin)が用いられる。MFCは、そのままでは蛍光を発しないが、CYP2C9によってHFC (7-Hydroxytrifluoromethylcoumarin)へ代謝されると、蛍光を発するようになる。
【0026】
また、複数の各分子種に共通する特異的基質を使用すれば、分子種群(酵素群)の酵素活性を測定することも可能である。
【0027】
基質又は基質代謝産物の多光子励起過程を誘導するためには、パルス幅がフェムト秒からピコ秒(サブピコ秒)のフェムト秒レーザー光を用いる。レーザー光には、モード同期レーザーを用いて、上記のパルス幅を実現する。モード同期レーザーには、チタンサファイアやエルビム添加ファイバーレーザー媒質などが採用される。
【0028】
近赤外フェムト秒レーザー光(以下、単に「レーザー光」ともいう)は、波長が650nmから1100nmの範囲であり、この範囲から使用する基質及び基質代謝産物の吸光波長に合わせて適宜選択される。より具体的には、例えば、波長830nmでは、パルス幅は200fs以下、繰り返し周波数は80MHzとなる。また、出力安定性は±0.5%程度であり、平均光出力は2W程度である。
【0029】
この近赤外フェムト秒レーザー光を、集光レンズ(対物レンズ)を用いて、測定対象となる酵素及び基質、基質代謝産物が存在する焦点へ集光する。集光レンズには、赤外透過性のものを用いる。レンズの倍率は特に限定されないが、20倍〜40倍程度が適当である。
【0030】
基質又は基質代謝産物は、焦点(酵素存在部位)付近において、集光されたレーザー光の複数個の光子を同時に吸収し、多光子励起過程に至る。励起状態へ遷移した基質又は基質代謝産物は、元のエネルギー状態に戻る際に放射波を発生する。この放射波をとらえることで、酵素の基質代謝により生成する基質代謝産物の量を測定することが可能となる。
【0031】
放射波の検出は、基質又は基質代謝産物の多光子励起過程から発生した放射波を集光レンズにより集光し、光電変換素子へ導光することにより行う。光電変換素子は、放射波を検知して、その強度をデータ変換し、接続されたコンピューターへデータを出力する。
【0032】
測定対象とする酵素は、あらゆる酵素を含み得る。in vitro条件下では、従来方法に従って組織ホモジネート又は細胞ライセートから調製した酵素活性分画を用いることができる。また、単離精製された酵素や、機能が未知であって特定の酵素活性が存するか否かを調べたいタンパク質を用いることもできる。これらを、基質を含有する緩衝液に加えて酵素反応を行い、緩衝液中の基質又は基質代謝物に対し多光子励起を行って酵素活性を測定する。なお、本発明に係る酵素活性測定方法は、このようなin vitro条件下における測定のみでなく、生体組織や生細胞内の酵素(in vivo条件下)についても測定が可能である点に特徴を有する。in vivo条件下での酵素活性測定については、詳しく後述する。
【0033】
測定時には、酵素及び基質に加え、酵素活性促進剤又は阻害剤を緩衝液中に添加することにより、酵素活性促進剤又は阻害剤の酵素活性促進活性又は阻害活性を評価することが可能である。
【0034】
また、酵素及び基質に加え、酵素活性促進剤又は阻害剤の候補化合物(被検物質)を緩衝液中に添加することにより、被検物質が酵素活性促進活性又は阻害活性を有するか否かを評価することもできる。これにより、特定の酵素に対する活性促進剤又は阻害剤をスクリーニングすることが可能である。
【0035】
この場合、酵素活性促進活性又は阻害活性(S)は、次の式(2)で表すことができる。
【0036】
【数2】


(a, bは補正係数を表す。Tは測定開始時間、Tは測定開始後の一定時間、Fは時間Tに測定した放射波測定値、Fは酵素活性促進剤又は阻害剤の非存在下で時間Tに測定した放射波測定値、Fbは酵素活性促進剤又は阻害剤の存在下で時間Tに測定した放射波測定値を表す。)
【0037】
次に、in vivo条件下での酵素活性測定については説明する。近赤外フェムト秒レーザー光の特徴として、従来の一光子励起に用いられるレーザー光に比べて波長が長く、エネルギーが低い点がある。また、近赤外フェムト秒レーザー光では複数個の光子により励起を行うので、焦点付近の分子のみを励起することができる。従って、近赤外フェムト秒レーザー光による多光子励起では、高い深部到達度が得られるほか、標本の焦点以外での蛍光退色やダメージを抑えて、長時間の測定を行い得るといった利点がある。
【0038】
これらの利点から、多光子励起過程を利用した酵素活性測定方法は、生体組織や生細胞内の酵素活性の測定に最適な方法ということができる。高い深部到達度が得られるという特徴は、生体組織の内部(深部)に存する生体内酵素の活性を測定できることを意味する。また、標本の焦点以外での蛍光退色やダメージを抑制できるという特徴は、組織や細胞を傷害することなく(非侵襲的に)、長時間のリアルタイム測定を可能にする。従って、多光子励起過程を利用した酵素活性測定方法では、従来方法とは異なり組織ホモジネートや細胞ライセートを調製することなく、生体組織及び生細胞内の酵素の活性を直接測定することが可能となる。
【0039】
以下、生体組織として皮膚を例にとり、本発明に係る酵素活性測定方法の具体的な実施方法について説明する。図1は、皮膚組織内の酵素活性を測定するための方法を示した模式図である。
【0040】
図1中、符号Aは皮膚表皮、Aは真皮、Aは皮下組織を表している。測定部位とする皮膚は、表面が平滑であり、体毛が少なく、表皮が薄い部位の皮膚が望ましい。例えば、下腕部の肘裏から手首にかけての部位が好適である。このような部位とすることにより、生体表面でのレーザー光の吸収、散乱を防止でき、効率よく放射波を検出することが可能である。さらに、皮膚表面に水や油等を塗布して、生体表面でのレーザー光の散乱を防止することで、より測定精度を向上させることができる。
【0041】
近赤外フェムト秒レーザー光(図中、破線で示す)は、集光レンズ28aにより、本図における測定対象酵素の存在部位である真皮A内の一点(焦点)へ集光される。この際、近赤外フェムト秒レーザー光は、皮膚組織内の水や血液による吸収、組織による散乱が少なく、高い深部到達性を発揮する。
【0042】
測定中は、環境からの光が混入しないように測定部位を遮光する。照射されたレーザー光は、XY平面が直径500μm程度、Z軸方向が1mm程度の紡錘形をした領域(図中、点線で囲った楕円領域)を特に励起する。励起は、集光レンズ28aの作動距離の5mm皮膚表面より深部で起こる。
【0043】
測定部位には、測定対象とする酵素に特異的な基質を塗布する。塗布された基質は、皮膚組織内や組織細胞内へ浸透されて、酵素存在部位に導入される。例えば、上述したCYP2C9の酵素活性を測定する場合には、MFC (7-Methoxy-trifluoromethylcoumarin)をDMSO(dimethyl sulfoxide)に、2.5μM程度の濃度で溶解し、表皮に塗布する。また、図1中符号5で示す浸透装置から基質を、持続的又は断続的に測定部位へ浸透する方法を採用することもできる。浸透装置5は、図に示す浸透部52の他、これに基質溶液を供給する送液ライン、本体等から構成される。浸透装置5については、詳しく後述する。
【0044】
以下、測定対象酵素としてCYP2C9、基質としてMFCを用いる場合について説明するが、酵素及び基質はこれに限定されず、あらゆる酵素及びその酵素に特異的な基質を用いることが可能である。
【0045】
皮膚のCYP2C9存在部位にまで浸透されたMFCは、CYP2C9と反応し、HFC (7-Hydroxytrifluoromethylcoumarin)へと代謝される。このHFCの量を、HFCの多光子励起過程から生ずる放射波(この場合は、蛍光)の検出によって測定する。上記式(1)において、TはMFCを測定部位に塗布する直前(測定開始時間)、TはMFC塗布後の経過時間、Fは時間Tに測定した蛍光測定値(測定部位に何も塗布していない状態での蛍光測定値)、Fは時間Tに測定した蛍光測定値を表す。
【0046】
MFCを測定部位に塗布した時間を基準に、例えば5分間隔にリアルタイムで蛍光強度の測定を行う。HFCの蛍光の検出には、中心波長が520nmで、波長域が50nmの光学フィルターを使用する。
【0047】
これにより、皮膚真皮A内におけるCYP2C9の酵素活性をリアルタイムに測定することが可能である。このとき、皮膚に対する侵襲性は極めて低いため、長時間のリアルタイム測定を行っても、皮膚の傷害はほとんどない。
【0048】
さらに、CYP2C9の酵素活性促進剤又は阻害剤の酵素活性促進活性又は阻害活性を調べたい場合には、MFCと同様にして、測定部位に酵素活性促進剤又は阻害剤を塗布する。また、酵素活性促進剤又は阻害剤は、浸透装置5を用いて浸透してもよい。
【0049】
MFCと酵素活性促進剤又は阻害剤は、混合して浸透する場合、ないしはそれぞれ別個に浸透する場合が考えられる。浸透装置52を用いて別個に浸透する場合には、浸透部52は、MFC用と酵素活性促進剤又は阻害剤用の2つが必要となり、それぞれ測定部位近傍の表皮A上に配置されることとなる。
【0050】
測定部位への基質と酵素活性促進剤又は阻害剤の塗布の順序は、先に酵素活性促進剤又は阻害剤の塗布を行うことが好ましい。その上で、基質を塗布する直前をT(測定開始時間)とする(上記式(2)参照)。
【0051】
(酵素活性促進剤又は阻害剤の非存在下で時間Tに測定した放射波測定値)とFb(酵素活性促進剤又は阻害剤の存在下で時間Tに測定した放射波測定値)は、測定部位を変えて測定する。このとき、例えば、下腕部の肘裏から手首にかけての部位であれば、数cm程度離れた箇所で測定を行うというように、測定部位の条件が可能な限り均一となることが望ましい。
【0052】
また、CYP2C9の酵素活性促進剤又は阻害剤のスクリーニングを行う場合にも、同様にして、測定部位に候補化合物(被検物質)を塗布するか、浸透装置5を用いて浸透する。MFCと被検物質は混合されていてもよく、別個に浸透されてもよい点も同様である。
【0053】
以上、生体組織として皮膚を例にとり、特にCYP2C9を測定対象酵素とする場合について説明した。測定対象とする皮膚の部位は、真皮Aとして説明したが、例えば、図中、符号Bで示す皮脂腺組織内の酵素活性を測定することも可能である。さらに、本発明において測定部位となり得る生体組織には、皮膚の他、つめや耳、指先、口唇、網膜、毛髪等が広く含まれる。また、これら体表に露われる組織に限らず、肝臓や脳、腎臓、筋肉等の体内臓器への適用も可能である。体内臓器組織内の酵素活性を測定するためには、光ファイバーを用いて、レーザー光を体内臓器の測定部位に導光し、かつ放射波の集光を行う。光ファイバーを用いた測定は、内視鏡検査時や開腹手術時などに、患部(術部)組織内の酵素活性を測定するといった応用が考えられる。
【0054】
図2は、生細胞内の酵素活性を測定するための方法を示した模式図である。
【0055】
図2中、符号Cは培養細胞を表す。本図では、培養細胞Cをシャーレ内で培養された状態として示した。細胞の培養は、シャーレの他、フラスコやチャンバースライドなど特に限定されず、レーザー光を透過する素材であれば使用可能である。
【0056】
近赤外フェムト秒レーザー光(図中、破線で示す)は、集光レンズ28aにより、本図における測定対象酵素の存在部位である培養細胞C内へ集光される。この際、核、ミトコンドリア、ゴルジ体等の特定の細胞内オルガネラに対して集光を行うことにより、これら細胞内オルガネラに存在する酵素の活性を測定することが可能である。測定中は、環境からの光が混入しないように遮光する。
【0057】
測定の際は、測定対象とする酵素に特異的な基質を培養溶液に添加する。添加された基質は、培養細胞内へ浸透し、酵素存在部位に導入される。例えば、上述したCYP2C9の酵素活性を測定する場合には、MFC (7-Methoxy-trifluoromethylcoumarin)をDMSO(dimethyl sulfoxide)に、5μM程度の濃度で溶解し、培養細胞に添加する。また、細胞膜透過性が低い基質を用いる場合には、マイクロインジェクション等の手法を用いて基質を培養細胞C内へ導入することもできる。
【0058】
CYP2C9の酵素活性促進剤又は阻害剤の酵素活性促進活性又は阻害活性を調べたい場合には、MFCと同様にして、培養溶液に酵素活性促進剤又は阻害剤を添加する。MFCと酵素活性促進剤又は阻害剤は、混合して添加する場合、ないしは、それぞれ別個に添加する場合が考えられる。
【0059】
また、CYP2C9の酵素活性促進剤又は阻害剤のスクリーニングを行う場合にも、同様にして、培養溶液に候補化合物(被検物質)を添加する。MFCと被検物質は混合されていてもよく、別個に添加されてもよい点も同様である。
【0060】
続いて、本発明に係る酵素活性測定装置について説明する。図3は、その第一の実施形態を表す模式図である。本発明に係る酵素活性測定装置の基本構造は、公知の近赤外多光子励起正立顕微鏡のシステムを転用することが可能である。以下、図に基づいてその構造を簡単に説明する。
【0061】
図3中、符号11は、近赤外パルスで発振するレーザー光源である。レーザー光源11から出射されたレーザー光(図中、破線で示す)は、レーザー光径を調節するためのレーザー光径調整器21を透過し、標本4上でのレーザー光走査に機能するガルバノミラー22によって反射される。
【0062】
続いて、レーザー光は光分岐部23に入る。この光分岐部23は、ダイクロイックフィルターを用いた光学システムやダイクロイックミラー等からなる。本実施形態で使用しているバンドパスフィルター24は、レーザー光を透過させるとともに、光源61から波長600〜950nmの光を照射された標本4からの反射波(図中、点線で示す)を、特定の波長を吸収・減衰した上で、後述するCCDカメラユニット32へ反射する。
【0063】
バンドパスフィルター24を透過したレーザー光は、光分岐部25へ導かれる。光分岐部25も、光分岐部23と同様に、ダイクロイックフィルターを用いた光学システムやダイクロイックミラー等から構成される。本実施形態で使用しているダイクロイックミラー26は、レーザー光源11からのレーザー光を透過させる。また、標本4からの放射波を、特定の波長を選択して、後述する放射波検出部31へ反射するとともに、反射波を光分岐部23へと透過させる。
【0064】
ダイクロイックミラー26を透過したレーザー光は、焦点位置調整機構27に取り付けられた集光レンズ28aにより、標本4の焦点位置4aに集光される。集光レンズ28a及びレーザー光径調整器21、バンドパスフィルター24、ダイクロイックミラー26には、赤外透過性のものを用いる。この点については、特に言及しない限り、他の光学フィルターについても同様である。また、集光レンズ28aの倍率は特に限定されないが、20倍〜40程度が適当である。
【0065】
集光されたレーザー光は、焦点位置4aにおいて、基質及び基質代謝産物の多光子励起過程を誘導する。集光レンズ28aは、焦点位置調整機構27内において、図上下(高さ)方向への位置を調整可能に取り付けられている。これにより、標本4内において焦点位置4aの上下(深さ)方向の位置を調節することができる。
【0066】
また、集光レンズ28aは、焦点位置4aから発せられた放射波及び反射波(図中、それぞれ一点破線及び点線で示す)を集光して、放射波検出部31及びCCDカメラユニット32へ導くためにも機能する。集光された放射波は、まず、ダイクロイックミラー26により、特定の波長が反射される。反射された放射波は、さらにショートパスフィルター29を透過して、放射波検出部31へ導かれる。なお、ショートパスフィルター29は、特定波長以上を遮断する特性を有する。
【0067】
放射波検出部31は特定の波長を選択して受光する機能を有し、一つ以上を用いる。放射波検出部31は、放射波を検出するための光電変換素子からなる。放射波検出部31には、光電変換素子からのデータを蓄積し処理するための不図示のコンピューターが接続される。光電変換素子は、放射波を検知して、その強度をデータ変換し、接続されたコンピューターへデータを出力する。このデータ(放射波測定値)から、上記の式(1)に従って、酵素活性(K)が算出される。
【0068】
以上、説明したように、本発明に係る酵素活性測定装置は、レーザー光源11と、放射波検出部31と、レーザー光を標本4の酵素存在部位へ導入し、かつ、放射波を放射波検出部31へ導入する光学経路とからなる。ここで、「光学経路」には、ガルバノミラー22と光分岐部25、集光レンズ28aが少なくとも含まれる。
【0069】
また、図3に示すとおり、光学経路には、標本4からの反射波を検出するためのCCDカメラユニット32への光分岐部23を含めてもよい。集光レンズ28aにより集光され、光分岐部25のダイクロイックミラー26を透過した反射波(図中、点線で示す)は、光分岐部23のバンドパスフィルター24に反射され、CCDカメラユニット32へ導かれる。なお、CCDカメラユニット32の前段には、ロングパスフィルター33を設けている。ロングパスフィルター33は、特定波長以下を遮断する特性を有する。
【0070】
CCDカメラユニット32には、不図示の画像表示手段が接続される。これにより、通常の白色光源61を落射光学系により照明し、赤外領域にも感度のあるCCDカメラユニット32及び画像表示手段によって標本4をモニター上で確認しながら、レーザー光を照射する部位を定めることが可能となる。CCDカメラユニット32は赤外領域にも感度があるため、例えば、標本4が皮膚であるような場合には、赤外光の皮膚透過性を利用して、皮下(標本4内部)の観察を行うことも可能である。落射光学系は、図3中、符号61の光源、符号71の光径調節器、符号72のロングパスフィルターを備える。なお、光源61から標本4への落射光については図示を省略した。
【0071】
レーザー光源に用いる近赤外フェムト秒レーザー光は、波長が650nmから1100nmの範囲であり、この範囲から使用する基質及び基質代謝産物の吸光波長に合わせて適宜選択される。より具体的には、例えば、波長830nmでは、パルス幅は200fs以下、繰り返し周波数は80MHzとなる。また、出力安定性は±0.5%程度であり、平均光出力は2W程度である。
【0072】
この場合、放射波検出部31で検出される放射波は、例えば、波長500-600nm(蛍光)であり、CCDカメラユニット32で検知される反射波の波長は、600-950nmである。
【0073】
レーザー光の波長、放射波検出部31で検出される放射波の波長は、使用する基質及び基質代謝産物の多光子励起過程から生ずる放射波の波長によって変化する。バンドパスフィルター24、ダイクロイックミラー26、ショートパスフィルター29の各特性は、使用する基質及び基質代謝産物に応じて適宜最適なものを使用する。
【0074】
標本4としては、皮膚やつめ、耳、指先、口唇、網膜、毛髪等の体表に露われる組織を広く含む(図1も参照)。また、標本4を培養細胞とし、図2に示したように生細胞内の酵素活性を測定することもできる。
【0075】
また、特に標本4が皮膚等の生体組織である場合には、酵素活性測定装置に上記の構成に加え、浸透装置5を設け、測定部位の酵素存在部位へ基質や酵素活性促進剤又は阻害剤、被検物質を浸透する構成を採用できる。
【0076】
浸透装置5は、本体51と浸透部52と送液ライン53とからなる。本体51は、基質溶液のリザーバーを有し、送液ライン53を介して浸透部51へと基質溶液を供給する。浸透部52は、測定部位近傍に配置され、本体53から供給される基質溶液を酵素存在部位へ浸透させる。また、浸透装置5は、酵素活性促進剤等の溶液を浸透する場合にも用いられ、この場合には複数の浸透部52及び送液ライン53が本体51に接続され、それぞれ酵素活性促進剤溶液用、阻害剤溶液用等として機能する。
【0077】
本体51には、浸透部51への基質溶液等の供給量を調節するためのバルブ54が設けられている。送液ライン53は、このバルブ54において本体51に接続される。バルブ54により、基質溶液等の供給液量を、持続的又は断続的に制御して供給することが可能とされる。
【0078】
本体51には、一般的なポンプ機能を備える装置を使用できる。加えて、上記のバルブ54のような、供給液量を調整可能な機構を備えていることが望ましい。また、浸透部52は、基質溶液等に湿潤された状態で皮膚等の生体組織に密着するものであり、さらに溶液が蒸発しないような構成とすることが望ましい。具体的には、マイクロ透析装置が好適である。
【0079】
図4は、本発明に係る酵素測定装置の第二の実施形態を表す模式図である。本図では、レーザー光、放射波及び反射波を一部簡略化して示した。
【0080】
図4に示される酵素活性測定装置は、レーザー光、放射波及び反射波を伝送するための光ファイバー28cを備える点が特徴である。この酵素活性測定装置は、標本4として肝臓や脳、腎臓、筋肉等の体内臓器へ適用するためのものである。光ファイバー28cによって、レーザー光を伝送し、これらの体内臓器へ照射できるよう工夫されている。
【0081】
レーザー光源11から出射されたレーザー光は、光分岐部25のダイクロイックミラー26を透過した後、集光レンズ28bによって光ファイバー28c内へ導光され、光ファイバー28c内を伝送されて、集光レンズ(対物レンズ)28aに送られる。続いて、レーザー光は、集光レンズ28aによって標本4の焦点位置4aに集光され、ここで基質及び基質代謝産物の多光子励起過程を誘導する。
【0082】
基質及び基質代謝産物の多光子励起過程により焦点位置4aから発生した放射波(並びに反射波)は、集光レンズ28aによって集光され、光ファイバー28c内を伝送され、放射波検出部31及びCCDカメラユニット32へ導かれる。
【0083】
臓器組織内の酵素活性の測定は、内視鏡検査時や開腹手術時などにおいて行うことが想定される。このため、集光レンズ28a及び光ファイバー28cは、可能な限り小型化することが望ましい。
【0084】
最後に、本発明で測定対象とする酵素について説明する。測定対象酵素は、特に限定されず、in vitro及びin vivoの条件下であらゆる酵素を含み得ることは既に説明した通りである。組織ホモジネート又は細胞ライセートから調製した酵素活性分画や単離精製された酵素、機能が未知であって特定の酵素活性が存するか否かを調べたいタンパク質等も測定対象となる。
【0085】
ここで、特に好適な例として、薬物代謝酵素が挙げられる。薬物代謝酵素は、生体内において、種々の化学物質を代謝する一連の酵素群であり、例えばCYP450、N−アセチル基転移酵素(NAT−2)、メチル基転移酵素(TPMT)などがある。
【0086】
従来、薬効や副作用などの薬剤応答性には、個人差や人種差があることが知られている。このため、患者によっては、予期せぬ副作用が発現する場合や、用量不足により薬効が得られない場合が生じている。そこで、近年、個々人の病状や体質に応じて適切な薬剤を選択し、最良の治療効果をもたらそうとする試みがなされてきている。いわゆるテーラーメード医療の実現である。
【0087】
薬剤応答性の個人差を生じる主な要因の1つが、薬物代謝酵素の遺伝子多型である。薬物代謝酵素にみられる遺伝子多型は、薬物の代謝や動態に関与する酵素の活性に直接影響を与え、個々人の薬剤応答性に密接に関連する。
【0088】
現在、これらの遺伝子多型と薬剤応答性との関係について、多数の症例を集めた大規模な遺伝子解析が行われている。既に、代表的な薬物代謝酵素であるCYP450については、DNAマイクロアレイ技術を用いた遺伝子多型判定技術が実用化されており、その酵素活性と遺伝子多型との関係が明らかにされつつある。
【0089】
本発明に係る酵素活性測定方法及び測定装置を用いれば、このようなDNAベースの解析を行うことなく、直接に生体組織内の薬物代謝酵素の活性測定を行うことが可能である。このため、より簡便かつ迅速に患者個々人の薬物代謝酵素活性の特性を把握することが可能となる。例えば、医師が診察時や手術時において、患部組織に存するCYP450の活性を的確に評価できれば、薬を処方する際に副作用の危険性や適切な用量を見極めることに役立つものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係る酵素活性測定方法及び測定装置は、例えば、創薬分野での薬理試験や安全性試験において、生体組織や生細胞内における酵素活性測定に利用することが可能である。また、例えば、特定の酵素を遺伝子操作した遺伝子改変動物や細胞株において、酵素の活性が所望の程度に発現されているかを確認するための品質検査にも利用することができる。
【0091】
さらには、本発明に係る酵素活性測定方法及び測定装置は、医師が患者個々人の酵素活性の特性を把握し、薬物代謝能力等を評価して、適切な治療薬を処方することを可能とするものであり、テーラーメード医療の実現にも寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】皮膚組織内の酵素活性を測定するための方法を示した模式図である。
【図2】生細胞内の酵素活性を測定するための方法を示した模式図である。
【図3】本発明に係る酵素活性測定装置の第一の実施形態を表す模式図である。
【図4】本発明に係る酵素活性測定装置の第二の実施形態を表す模式図である。
【符号の説明】
【0093】
11 レーザー光源
21 レーザー光径調節器
22 ガルバノミラー
23 光分岐部
24 バンドパスフィルター
25 光分岐部
26 ダイクロイックミラー
27 焦点合わせ機構
28a 集光レンズ(対物レンズ)
28b 集光レンズ
28c 光ファイバー
29 ショートパスフィルター
31 放射波検出部
32 CCDカメラユニット
33 ロングパスフィルター
4 標本
4a 焦点位置
5 浸透装置
51 本体
52 浸透部
53 送液ライン
54 バルブ
61 光源
71 光径調節器
72 ロングパスフィルター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基質又は基質代謝産物の多光子励起過程から生ずる放射波の検出によって、酵素の基質代謝により生成する基質代謝産物の量を測定する酵素活性測定方法。
【請求項2】
基質及び基質代謝産物のうち、一方のみが多光子励起過程による放射波の発生に至る条件下にて行われる請求項1記載の酵素活性測定方法。
【請求項3】
酵素は生体内酵素であり、基質は生体の酵素存在部位に浸透されることを特徴とする請求項1記載の酵素活性測定方法。
【請求項4】
酵素が、薬物代謝酵素であることを特徴とする請求項1記載の酵素活性測定方法。
【請求項5】
酵素活性促進剤又は阻害剤の存在下において、酵素の基質代謝により生成する基質代謝産物の量を、基質又は基質代謝産物の多光子励起過程から生ずる放射波の検出によって測定する酵素活性促進剤又は阻害剤の活性測定方法。
【請求項6】
被検物質の存在下において、酵素の基質代謝により生成する基質代謝産物の量を、基質又は基質代謝産物の多光子励起過程から生ずる放射波の検出によって測定する酵素活性促進剤又は/及び阻害剤のスクリーニング方法。
【請求項7】
基質又は基質代謝産物の多光子励起過程を誘導する近赤外フェムト秒レーザー光のレーザー光源と、
基質又は基質代謝産物の多光子励起過程から生ずる放射波を検出する放射波検出部と、
近赤外フェムト秒レーザー光を酵素存在部位へ導入し、かつ、放射波を放射波検出部へ導入する光学経路と、
を少なくとも備える酵素活性測定装置。
【請求項8】
さらに、酵素存在部位へ基質を導入する浸透装置を備える請求項7記載の酵素活性測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−289437(P2008−289437A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139891(P2007−139891)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】