説明

レーザー印刷用積層体、およびレーザー印刷方法

【課題】視認性が良く、耐摩擦性に優れ、GS1DataBar等の細密な図柄の機械読み取り精度も向上するものでありながら、一般的な材料、および加工方法で得られる、レーザー印刷用積層体、袋体、包装体、ラベル、およびレーザー印刷方法を提供することを目的とする。
【解決手段】外層側の透明基材フィルムから内層側に向けて、少なくとも、酸化チタン顔料を含有する白色インキ層が部分的に設けられており、その内層側に熱接着性樹脂層が設けられており、さらに内層側にアルミニウム層が設けられているレーザー印刷用積層体は、YVO4レーザー光などを透明基材フィルムの外層面側から照射することで、細密なレーザー印刷が可能であり、得られたレーザー印刷物は視認性が良いのみならず、機械読み取りが可能であり、最外層の表面がインキ層では無く、透明基材フィルムであることから耐摩耗性にも優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細密な図形や文字をレーザー光照射によって印刷しうるレーザー印刷用積層体、前記レーザー印刷用積層体を用いた粘着ラベル、前記レーザー印刷用積層体を用いた、食品、医薬品、医薬部外品、および医療器具等の包装に使用される袋体、前記レーザー印刷用積層体を用いた、液体、粘調体、固体、粉体、顆粒状等の収納に使用される包装体、および、レーザー光による印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートシール性を有する積層体を用いて周縁端部をヒートシールして袋体を調製し、これに内容物を収納した包装体が流通している。これらの包装体には、商品名、内容物、使用上の注意などの消費者による目視確認が可能な文字や図柄が印刷され、また、生産者、商品名等を数字化した後に図柄化したバーコードが当該商品の固定情報として印刷されている。このような固定情報は、包装材料を製造する段階で印刷されるが、一方、消費期限、ロットナンバー等の日々変化しうる変動情報は、サーマルプリンタ、インクジェットプリンタ、およびレーザー印刷機等を用いて積層体に直接印刷したり、予め前記印刷手段を用いて調整したラベルを商品やその包装体に貼付されることが多い。
【0003】
このような変動情報として、消費期限の他に製造年月日、製造時、ロットナンバーがあり、更に近年の「安全・安心」に対する国民的関心の高まりにより、商品の原材料情報等のトレーサビリティに関する情報を個々の商品に記載する要望があり、特に食品、医薬品、医薬部外品または医療器具の分野でその要望が高まっている。これに対応して、多くの情報を載せることが可能なGS1DataBar等、二次元バーコードを含むバーコードの印刷が実施されつつある。
【0004】
ここで、包装用積層体に固定情報と変動情報とを表示する方法として、固定情報が印刷された包装用積層体に変動情報を包装機上で直接印刷する方法や、包装用積層体に変動情報と固定情報とを包装機上で直接印刷する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
一般的な印刷手段として、サーマルプリンタやインクジェットプリンタを用いて積層体表面に直接インキを載せる方法があり多用されているが、サーマルプリンタのインクリボンやインクジェットプリンタのインキ等の消耗品は高価であり、多くの変動情報を印刷するにはランニングコストが高額になるという問題がある。また、これら消耗品の交換を怠ると印刷漏れが発生する場合もある。更に、UV硬化型インキを用いたオフセット印刷による包装用積層体への変動情報直接印刷も行われているが、包装用積層体表面の汚れや包装用積層体の厚さむら等によって、印刷カスレや文字欠け等が発生する場合がある。
【0006】
これらの問題を解消する方法として、レーザー光を照射して印刷する方法がある。例えば、アルミ蒸着紙のアルミ蒸着面上に、白インキ、黒インキおよびOPニスを塗布して製造したレーザー印刷用積層体が開示されている(特許文献2)。特許文献2記載の方法は、従来技術の問題点、即ち、予め印刷したレーザー発色タイプのインキにレーザー光を照射して発色する印刷方法では、高速印刷が可能であるが当該インキが耐光性や耐薬品性などに劣ること、ラベル紙基材上に着色インキ層を形成し、レーザー光を照射して着色インキ層を除去し、下地のラベル紙基材の色との対比で印刷を行う方法では印刷の鮮明さが不足し、印刷部分のオーバーコート層及びインキ層が完全に除かれるため、印刷部分が耐擦傷性、耐水性などに欠ける場合があることなどに鑑みてなされたものであり、上記構成により、レーザー光の照射によって鮮明な印刷を高速で行うことができ、かつ、印刷された部分の耐光性、耐擦傷性、耐水性、耐薬品性などの性能に優れるというものである。
【0007】
また、透明容器にラベルを貼着する方法も開示されている。すなわち、離型シート上に、粘着層、透明基材シートが積層され、前記透明基材シートの表面に不透明な塗膜からなる表示部が形成され、前記透明基材シートの裏面に前記不透明な塗膜とは異なる色の塗膜からなる遮蔽部が形成されたラベルであって、前記表示部にレーザー光を照射して所定の部分の前記不透明な塗膜を除去することで、前記遮蔽部との色の違いにより文字等の視認可能なラベルが開示されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平10−181721号公報
【特許文献2】特開平9−123607号公報
【特許文献3】特開2006−220695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2、3に記載の技術は、レーザー光の照射によりレーザー光を吸収しやすい上層を除去して、下層を露出し、上層と下層の色の違いから視認可能な文字等を形成する技術である。そのため、上層はレーザー光を吸収しやすい材料に限定され、逆に下層はレーザー光を吸収しにくく、かつ、上層と色のコントラストの取れる材料に限定される。すなわち、レーザー光を吸収しやすいカーボンブラック系の材料(黒色)が上層となり、酸化チタン系の材料(白色)が下層となり、レーザー光の照射により印字される文字等は黒地に白い文字等となる。
【0009】
しかし、黒地の背景に白色の文字や図形が形成されているよりも、白地の背景に黒色の文字や図形が形成されている方が、日常で見慣れた態様であり、機械読み取りのみならず、人間が扱う場合にも視認性が良いことは明らかである。
更に、特許文献2、3に記載の技術は、積層体表面にレーザー用印刷部分として塗布したインキ層が露出しているため、レーザー印刷部が擦れてインキが脱落してしまう恐れがあった。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、視認性が良く、耐摩擦性に優れ、GS1DataBar等の細密な図柄を機械で読み取る場合の読み取り精度も向上するものでありながら、一般的な材料、および加工方法で得られる、レーザー印刷用積層体、袋体、包装体、ラベル、およびレーザー印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、レーザー印刷用積層体について詳細に検討した結果、外層側の透明基材フィルムから内層側に向けて、少なくとも、部分的に酸化チタン顔料を含有する白色インキ層が設けられており、その内層側に熱接着性樹脂層が設けられており、さらに内層側にアルミニウム層が設けられているレーザー印刷用積層体は、例えば、YVO4レーザー光などを透明基材フィルムの外層面側から照射することで、細密なレーザー印刷が可能であり、得られたレーザー印刷物は視認性が良いのみならず、機械読み取りが可能であり、最外層の表面がインキ層では無く、透明基材フィルムであることから耐摩耗性にも優れていることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明の請求項1に係る発明は、レーザー光照射によって図形や文字が形成されるレーザー印刷用積層体において、外層側の透明基材フィルムから内層側に向けて、少なくとも、酸化チタン顔料を含有する白色インキ層が部分的に設けられており、その内層側に熱接着性樹脂層が設けられており、さらに内層側にアルミニウム層が設けられていることを特徴とする、レーザー印刷用積層体である。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載のレーザー印刷用積層体において、少なくとも最内層に、ヒートシール層が設けられていることを特徴とする、レーザー印刷用積層体である。
【0014】
また、本発明の請求項3に係る発明は、請求項1〜2のいずれかに記載のレーザー印刷用積層体の前記白色インキ層を有する積層部に、透明基材フィルムの外層面側からレーザー光が照射されることにより、前記白色インキ層に黒化した意匠が形成されたことを特徴とする、レーザー印刷付き積層体である。
【0015】
また、本発明の請求項4に係る発明は、請求項1に記載のレーザー印刷用積層体の少なくとも最内層に粘着層が設けられており、前記白色インキ層を有する積層部にレーザー光が照射されることにより、黒化した意匠が形成されたことを特徴とする、粘着ラベルである。
【0016】
また、本発明の請求項5に係る発明は、請求項2に記載のレーザー印刷用積層体の前記最内層のヒートシール層同士を対向させ、開口部となる部分以外の外周をヒートシールして袋状に形成したことを特徴とする、レーザー印刷用袋体である。
【0017】
また、本発明の請求項6に係る発明は、請求項3に記載のレーザー印刷付き積層体の前記最内層のヒートシール層同士を対向させ、開口部となる部分以外の外周をヒートシールして、袋状に形成したことを特徴とする、レーザー印刷付き袋体である。
【0018】
また、本発明の請求項7に係る発明は、請求項2に記載のレーザー印刷用積層体の前記最内層のヒートシール層と、ヒートシール層を有する第2の積層体のヒートシール層を対向させ、開口部となる部分以外の外周をヒートシールして袋状に形成したことを特徴とする、レーザー印刷用袋体である。
【0019】
また、本発明の請求項8に係る発明は、請求項3に記載のレーザー印刷付き積層体の前記最内層のヒートシール層と、ヒートシール層を有する第2の積層体のヒートシール層を対向させ、開口部となる部分以外の外周をヒートシールして袋状に形成したことを特徴とする、レーザー印刷付き袋体である。
【0020】
また、本発明の請求項9に係る発明は、請求項5〜8のいずれかに記載の袋体に内容物を収納し、前記袋体の開口部をヒートシールにより密封して形成したことを特徴とする、包装体である。
【0021】
また、本発明の請求項10に係る発明は、開口部をヒートシールしうるプラスチック製容器に内容物を収納し、該開口部と、請求項3に記載のレーザー印刷付き積層体の最内層のヒートシール層を対向させて、該プラスチック製容器と該レーザー印刷付き積層体とをヒートシールにより密封して形成したことを特徴とする、包装体である。
【0022】
また、本発明の請求項11に係る発明は、請求項1〜2のいずれかに記載のレーザー印刷用積層体の前記白色インキ層を有する積層部に、前期透明基材フィルムの外層面側からレーザー光を照射して、前記白色インキ層に黒化した意匠を形成することを特徴とする、レーザー印刷方法である。
【0023】
また、本発明の請求項12に係る発明は、前記レーザー光が、YVO4レーザー光であることを特徴とする、請求項11に記載のレーザー印刷方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明のレーザー印刷用積層体は、上記のような構成とすることにより、発色インキ等の特殊な材料を用いることなく、特許請求の範囲で特定した条件下ではあるが、一般的な材料のみで積層体を形成することができ、走査レーザー光を照射することによって、白色インキ層に対し黒化した意匠、例えばGS1DataBar等、二次元バーコードを含むシンボル、文字、および図柄を、コントラスト良く形成することができ、上記レーザー印刷された細密な図柄等は、目視確認することは元より、機械読み取りすることが可能である。また、本発明のレーザー印刷用積層体においては、最外層の表面がインキ層では無く、透明基材フィルムであることから、レーザー印刷された意匠が擦れにより消失してしまう恐れはなく、耐摩耗性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明のレーザー印刷用積層体1の基本構成を示す概略断面図であり、外層側の透明基材フィルム2から内層側に向けて、少なくとも、レーザー用印刷部として酸化チタン顔料を含有する白色インキ層3が部分的に設けられており、その内層側に熱接着性樹脂層4が設けられており、さらに内層側にアルミニウム層5が設けられていることを示す。ここで、アルミニウム層5としては、一般にアルミニウム箔が好適に用いられる。
【0026】
この基本構成を有する積層体であれば、アルミニウム層やアルミニウム箔面に各種コーティング、および、各種フィルムの貼り合わせ等の追加加工をしても本発明に係る積層体として使用可能である。
【0027】
また、この基本構成を有する積層体であれば、各層の間に各種中間層を設けても良い。例えば、透明基材フィルム2と熱接着性樹脂層4との貼り合わせ面には、必要に応じてアンカーコート層を設けても良い。
【0028】
また、透明基材フィルム2の内側には、白色インキ層3を設ける部分の他に文字、図柄等の印刷部を設けても良いし、白インキ層3と透明基材フィルム2の間に部分的に文字、図柄等の印刷層を設けても良い。
【0029】
本発明で使用する透明基材フィルム2は、可視光透過性を有するものであり、レーザー用印刷部を含む各種印刷部の基材として機能し、さらには、各種印刷部の保護層としても機能するものである。
【0030】
透明基材フィルム2は、単層に限定されず、特に図示しないが複層であっても構わない。ただし、層数が増えるに連れて可視光透過性が低下し、それと共に透明基材フィルムのレーザー光の吸収量が増加して発泡する場合があるため、単層であることがより好ましい。
【0031】
透明基材フィルム2の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール、ポリアミド、アクリル酸エステル又はメタアクリル酸エステルを主成分とするアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリアセタール、アセチル・ジ又はトリ・セルロースの繊維素誘導体や、ポリカーボネートなどよりなる延伸あるいは未延伸フィルム、または、これらのフィルム等との積層体を用いることができるが、中でも二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、耐熱性、並びにコストの両面で優れている。
【0032】
また、透明基材フィルムの厚さは、厚過ぎればレーザー光の吸収量が増加してしまい、材質によってもレーザー光の吸収量が異なり、かつ、積層体の腰にも影響を与えるため、特に限定しないが、通常は6〜50μm、好ましくは12〜25μmの範囲で、積層体の腰や、強度等、透明基材フィルムに求められる性能も考慮しながら選定する。
【0033】
本発明で使用する白インキ層3は、レーザー用印刷部として機能するものであり、酸化チタン顔料を含有するインキから成り、白色インキ層を設ける印刷方式は、酸化チタン系白色顔料を使用した白色インキが存在する印刷方式で、かつ、印刷後のフィルムを巻き取ることが可能な印刷機を用いれば、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷のいずれの方式でも構わないが、白色インキを容易に多く塗布することが可能で、これにより下層のアルミニウム層5の隠蔽性を上げられる点で、グラビア印刷方式が適している。
【0034】
また、白色インキ層3の面積は、レーザー用印刷部として必要最低限の面積でも構わないし、フィルム全面に設けても良い。
【0035】
白色インキ層3と透明基材フィルム2との間には、レーザー印刷と組み合わせて使用する文字を予め印刷した印刷層を設けておくと良い。例えば、「製造年月日:」、「使用期限:」、「ロット番号:」等の文字を印刷しておき、これに対応した位置に所定の数字等の文字をレーザー印刷すれば、レーザー印刷に要する時間を短縮できる。
【0036】
本発明で使用する熱接着性樹脂層4は、透明基材フィルム2とアルミニウム層5を貼り合せる接着層として機能するものであり、さらには、レーザー光照射によって、白インキ層3に黒化した意匠を生じさせる現象に機能するものである。
【0037】
熱接着性樹脂層4には、例えば、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリプロピレン、酸変性ポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物、環状ポリオレフィンなどの単層、または、複層の樹脂を用いることが出来る。具体的には、例えば、溶融低密度ポリエチレン樹脂や、溶融エチレン・アクリル酸共重合体樹脂が好ましい。一般には、この熱接着性樹脂層4を介して透明基材フィルム2とアルミニウム箔を押し出しラミネートするが、必要に応じて透明基材フィルム側にアンカーコート剤を塗布しても良い。
【0038】
なお、熱接着性樹脂の代わりに、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤等を用いたドライラミネーションによって透明基材フィルムとアルミニウム箔を貼り合わせた場合には、鮮明なレーザー印刷を得ることができず、好ましくない。
【0039】
透明基材フィルム2と熱接着性樹脂層4との貼り合わせ面には、必要に応じてアンカーコート剤を塗布する。アンカーコート剤を使用する場合は、有機チタン系、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系等、通常用いられるものの中から、透明基材フィルム、および、インキとの接着性や、加熱殺菌の有無等の使用条件によって選定する。
【0040】
本発明で使用するアルミニウム層5は、レーザー光照射によって、白インキ層3に黒化した意匠を生じさせる現象に機能するものであり、さらには、レーザー光を遮蔽してアルミニウム層5より内層側にレーザー光の影響を与えないように機能するものである。また、積層体を加工して袋体や包装体を形成する場合には、内容物の保護層としても機能するものである。
【0041】
アルミニウム層5としては、例えば、一般的なJIS規格1N30グレードのアルミニウム箔を始め、貼り合わせ加工が可能な、軟質アルミニウム箔であればJIS規格8021、同8079等、グレードを問うことはない。
【0042】
また、アルミニウム箔の厚さも特に限定する必要は無く、積層体の用途に応じ、バリア性、折り曲げ適性、コスト適性等を勘案して選定すれば良く、一般的には6.5〜20μmの厚さのアルミニウム箔が用いられる。
【0043】
また、通常のアルミニウム箔にはつや消し面と、その反対面に光沢面が存在するが、いずれの面を透明基材フィルム側に向けて使用することも可能である。両面つや消しアルミニウム箔、および、両面光沢アルミニウム箔であっても使用することが可能である。
【0044】
また、本発明のアルミニウム箔は、レーザー光を遮蔽し、また白色インキ層を黒化させることに機能するものであるため、ラミネート接着されるアルミニウム箔のみならず、蒸着やスパッタ等の方法で形成されるアルミニウム層であっても良い。
【0045】
図2は本発明のレーザー印刷用積層体の他の構成の一例を示す概略断面図である。
すなわち、本発明に係るレーザー印刷用積層体は、図2に示すように、アルミニウム層5の内層側にさらに接着層6を介してヒートシール層7を設けられている構成であっても良い。ヒートシール層7を設けることにより、レーザー印刷用積層体を他の物品等に貼り付けることや、加工して、袋体や包装体を形成することができる。
【0046】
ヒートシール層7に用いるフィルムは、ヒートシール性を有するフィルムであれば使用可能であり、例えば、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリプロピレン、酸変性ポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物、環状ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリエステルなどのヒートシール性を有する単層フィルムまたはこれらの樹脂の共押しフィルムを使用することができる。更に、上記の樹脂とエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物、ナイロン等のガスバリア性や強靭性等を有する樹脂との共押出し多層フィルムをも使用することができる。
【0047】
また、接着層6、及びそのラミネート法としては、熱接着性樹脂を用いてTダイ押し出しラミネーション法によってラミネートしても良いし、また、2液硬化型のウレタン系接着剤を用いてドライラミネート法によってラミネートしても良い。また、単層、または、共押し出しによる溶融熱接着性樹脂を用いたTダイ押し出しラミネーション法でも良い。Tダイ押し出しラミネーション法の場合は必要に応じてアンカーコート剤を用いることができる。
【0048】
なお、前記ヒートシール層7は、接着層を介さずに直接アルミニウム箔面に、溶融押し出し樹脂コートをしても構わない。アルミニウム箔面に溶融押し出し樹脂コートをする際は、必要に応じてアンカーコート剤を用いる。更にはアルミニウム箔面にホットメルト等をコーティングしても良い。
【0049】
上記のヒートシール層の厚さとしては、本発明のレーザー印刷用積層体を用いて形成される袋体や包装体の使用目的等によって変わってくるが、約5μm〜200μm位の厚さが好ましい。
【0050】
また、特に図示しないが、アルミニウム箔とヒートシール層の間に、積層体の補強その他の理由で単層、または、複層の中間層を設けても良い。
【0051】
図3は本発明のレーザー印刷用積層体1のアルミニウム層5の内層面側に、粘着剤層8を設けて形成された粘着ラベル100の概略断面図である。なお、本発明の粘着ラベルは、レーザー印刷用積層体1のアルミニウム層の内層面側に別途フィルムを貼り合せてから、粘着剤層8を設けて形成しても構わない。
【0052】
ここで、図3においては、離型紙は特に図示していないが、粘着ラベル100は、通常、粘着面に離型紙を貼られた形態で流通される。
【0053】
粘着ラベル100に可変情報のレーザー印刷を施し、何らかの製品に貼付する場合には、巻取り状離型紙に粘着ラベル100が貼付されている状態でレーザー印刷を施すことが好ましい。粘着ラベル100の平面性を維持し易いからである。
【0054】
図4は、図1に示す本発明のレーザー印刷用積層体1において、レーザー光の照射によって、前記白色インキ層3に黒化した意匠であるレーザー印刷部9が形成された状態を示す想像図である。
【0055】
本発明に係るレーザー印刷用積層体1にレーザー印刷する際は、透明基材フィルム2の外層側からエネルギーをコントロールした走査レーザー光を白色インキ層3に照射する。これにより白色インキ層3に黒色の発色が生じ、白色インキ層3に黒化した意匠であるレーザー印刷部9が形成される。これにより、白地に灰色から黒色のコントラストで、赤色LEDのリーダーや目視で読み取リ可能なJANコード、EANコード、図柄、文字等を始め、CCDカメラで読み取リ可能な微細なGS1DataBar等、二次元バーコードを含むシンボルをも印刷することができる。
【0056】
このような方法で白インキ層3にレーザー印刷が可能となる原理の詳細は不明であるが、観察結果から以下のように考えられる。図4に概略を示すように、レーザー印刷された部分の積層体断面を光学顕微鏡で観察すると、表面の透明基材フィルム2は所々に孔が開いているが、大部分はレーザー光照射では消失せずに残っており、かつ、白色インキ層3が熱接着性樹脂層4から生じたカーボン粉末と思われる黒色物質により濃い灰色から黒色になっており、かつ、レーザー印刷部の熱接着性樹脂層4、およびアルミニウム層5は殆ど無傷であることから、レーザー光を前記積層体1に照射すると、レーザー光の一部が白色インキ層3を透過し、また、その一部が熱接着性樹脂層4を透過してアルミニウム層5に到達し、アルミニウム層5で反射して、裏側から白色インキ層3に達することにより、白色インキ層3に含まれる酸化チタン粉末が表裏両面から加熱されて、白色インキ層3と接している熱接着性樹脂が加熱され、炭化するが、白色インキの顔料である酸化チタンは耐熱温度が高く、そのまま残るものと考えられる。
【0057】
なお、レーザー光の照射条件を変化させたところ、照射エネルギーが強過ぎれば照射部の透明基材フィルム2は消失し、熱接着性樹脂層4は発泡して原型を留めず、逆に弱過ぎると白色インキ層3における黒色の発色は認められず、外観上の変化も殆ど無い。
【0058】
本発明で使用するレーザー光の種類は特に問わないが、エネルギー量の微細なコントロールが可能で、かつ、透明基材フィルム2に対する透過率が高いYVO4レーザーを好適に用いることができる。ビームの中心一点にパワーのピークが集中するシングルモードであれば、ムラのない細密な印刷がより好ましく達成できる。
また、レーザー光の走査方式としては、レーザー光に限らず、広く一般に採用されている、照射精度が高く、照射速度の高速化によって、印刷の明瞭化と、高速印刷を達成できる、ガルバノスキャニング方式が適している。
【0059】
図5は、本発明のレーザー印刷用積層体1が複数列連続されてなる巻取り状積層体原反120の斜視図である。
【0060】
本発明に係るレーザー印刷用積層体1の実施形態は、例えば、図5に示すように、連続して文字や図柄等、およびレーザー用印刷部12を、1列または複数列印刷した、巻取り状の形態であって、広い幅のフィルムを用いて大量に、高速で製造できるという特徴を有する。なお、一般的にレーザー用印刷部12に枠を印刷することはないが、図5においては、便宜上、枠を表記した。但し、実際に、レーザー用印刷部12に枠を印刷しても構わない。
【0061】
図6は、図5に示す巻取り状積層体原反120を切断部11で切断した巻取り状積層体130の斜視図である。
【0062】
本発明のレーザー印刷用積層体1を包装材料として包装機で使用し、袋体を形成する場合には、例えば、前記レーザー印刷用積層体1の最内層にヒートシール層を設け、対向して貼り合わせる。また、本発明に係るレーザー印刷用積層体1を製袋機で使用する場合には、前記巻取り状積層体130として使用する場合と、巻取り状積層体原反120のまま使用し、製袋機上で不要部分を除去する場合とがある。
【0063】
ここで、レーザー印刷は、巻取り状積層体130を繰り出した直後、または、袋体を製造した後、のいずれでも実施可能であるが、被印刷物表面の凹凸が大きいと走査レーザー光の焦点が合わなくなる可能性があるため、被印刷物が平面状の時に実施すれば確実である。特に、可変情報のレーザー印刷は、内容物を包装する際に実施するのが通常であり、巻取り状積層体を包装機に供給し、包装体を形成する場合、または、袋体を包装機に供給して包装体を形成する場合のいずれも、内容物を包装する直前にレーザー印刷を施すのが好ましい。但し、内容物の包装後であっても、レーザー用印刷部12の平面性が確保できる場合はこの限りではない。また、本発明に基づく、レーザー印刷した粘着ラベル100を貼付する場合も同様である。
【0064】
なお、本発明に係るレーザー印刷用積層体1の、レーザー印刷部表面の透明基材フィルム2の孔を塞ぎ、加熱殺菌時の剥離や汚れを防ぐため、透明ラベルシール、または、透明粘着テープ等を貼付する場合もある。
【0065】
図7は、本発明に係る巻取り状積層体原反120から作製したレーザー印刷付き袋体140の一例(ピロー袋)を示す概略外観図である。レーザー印刷付き袋体140は、図2に示すレーザー印刷用積層体1の最内層に設けられたヒートシール層7同士を対向させ、開口部となる部分以外の外周をヒートシールして袋状に形成したものであって、袋体の形態としては、三方シールタイプ、四方シールタイプ、スタンディングパウチ、ガセットタイプ、封筒貼りシールタイプ、ピロータイプ等を任意に選ぶことができ、特に限定されるものではない。
【0066】
また、ヒートシールの方法としては、たとえば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の周知の方法で行うことができる。なお、袋状体のヒートシール部には易開封性手段として開封用のノッチ部15を設けてもよい。
【0067】
また、本発明に係るレーザー印刷付き袋体140は、図8に例示したように、2枚の積層体を向かい合わせて、開口部となる部分以外の外周をヒートシールしたものであっても良い。この場合、片面は、本発明に係るレーザー印刷用積層体であるが、もう片方の面は前記レーザー印刷用積層体とヒートシール可能なヒートシール層を有する積層体であればどのような積層体でも良く、例えば、透明積層体であれば、未開封のまま内容物を視認でき、また、バリア性透明積層体を用いれば、それに加えて、脱酸素剤17を内容物16と共に封入すれば、包装体内雰囲気中の酸素を吸収するため、好気性微生物の繁殖を防止でき、また、酸化劣化し易い内容物の酸化を防止できる。
【0068】
バリア性透明積層体に用いるバリア性フィルムとしては、例えば、ポリ塩化ビニリデン系樹脂のフィルム、ポリ塩化ビニリデン系樹脂やポリビニルアルコールを主成分とする組成物をコ−ティングした樹脂のフィルム、延伸ポリアミド系樹脂のフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のフィルム、酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属酸化物の透明蒸着膜を有する樹脂のフィルム等を使用することができる。
【0069】
上記において、無機酸化物の蒸着膜の膜厚としては、厚さ50Å〜3000Å位のものを使用することが好ましく、100〜1000Å位のものが望ましい。
【0070】
本発明において、上記のバリア性を付与する蒸着層を支持する樹脂のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂フィルム、各種ナイロン等のポリアミド系樹脂フィルム、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリブデン樹脂フィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカ−ボネ−ト系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレイト樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニリデンフィルム、アセタール系樹脂フィルム、フッ素系樹脂、その他等を使用することができる。
【0071】
また、ヒートシール層として、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物、環状ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル等のバリア性を有するフィルムを用いる場合もある。
【0072】
図9は、図7に示した本発明に係る袋体に内容物16と脱酸素剤17を収納し、開口部をヒートシールにより密封したレーザー印刷付き包装体150の一例を示す概略外観図である。
【0073】
脱酸素剤17を内容物16と共に封入すれば、包装体内雰囲気中の酸素を吸収するため、好気性微生物の繁殖を防止でき、また、酸化劣化し易い内容物の酸化を防止することができる。
【0074】
図10は、開口部をヒートシールしうるプラスチック製容器18に、本発明のレーザー印刷付き積層体を蓋材19として使用して密封してなる包装体160の側面図であり、内容物16と共に脱酸素剤17を収納した状態を示すものであり、図11は、図10に示した包装体160を蓋材側から見た場合の概略正面図である。
【0075】
ここで、レーザー印刷用積層体1のヒートシール層7として、プラスチック製容器18に対するイージーピールシーラントを使用すれば、易開封性を付与することができ、好ましい。
【0076】
また、プラスチック製容器18は、インジェクション成形、シート成形、ブロー成形等、どのような成形方法であっても、蓋材をヒートシールした時、容器を密封できる形状を有していれば良い。
【0077】
また、レーザー印刷用積層体1、及びプラスチック製容器18がバリア層を有する場合、脱酸素剤17を内容物16と共に封入すれば、包装体内雰囲気中の酸素を吸収するため、好気性微生物の繁殖を防止でき、また、内容物16の酸化を防止できる。
【0078】
図12は、本発明に係るレーザー印刷用積層体1を用いて包装体150を形成する横ピロー包装機30の一実施例を示す概略外観図である。
【0079】
巻取り状積層体130を横ピロー包装機30にセットし、レーザー印刷用積層体1を定量送りローラー35aにより、印刷絵柄1単位毎に間歇送りで供給し、レーザー印刷用積層体1を確実に平面状とすべく設置された受け台34上でレーザー光照射装置31によりレーザー印刷用積層体1にレーザー印刷を施した後、印刷検査装置32を通して、前記レーザー印刷が正常であったかどうか確認する。印刷検査装置32の検査位置にレーザー印刷部を停止させる方法は、レーザー印刷用積層体1に予め光電管マーク等を印刷しておいて、別途センサーで印刷部の位置を読み取るのが一般的である。
【0080】
印刷検査の後、レーザー印刷用積層体1はダンサーロール33を上下しながら通過し、定量送りローラー35bで連続送りされることにより、それまでの間歇送りから連続送りされるようになり、フォーマー37で筒状に形成された後、ヒートシール装置36aにより背シールを施されながら内容物16を内包し、ヒートシール装置36bによって開口部にヒートシールを施されながら切断されて包装体150となり、排出コンベア38によって系外に排出される。
【0081】
ここで、印刷検査装置32は、赤色LED、またはCCDカメラ等を用いて印刷内容を検査する。そして、印刷不良を発見した場合はアラーム信号を出力したり、包装機において、当該不良印刷部を含む積層体に目印となるラベルを貼ったり、内容物の包装を止めて前記の不良積層体で空の袋体を製造したりすることも可能である。
【0082】
なお、一次元バーコードの読み取りは、赤色LED、および、CCDカメラのいずれでも可能だが、二次元バーコードの読み取りは、CCDカメラでのみ可能である。
【0083】
また、特に図示しないが、印刷したレーザー印刷用積層体1を蓋材として用いることにより、成形容器をヒートシールにより密封することも可能であり、射出成形容器、ブロー成形容器、シート成形容器等のトレーシーラー、またはフォーム−フィル−シール方式のインライン成形充填機等に使用できる。
【0084】
また、特に図示しないが、製袋機においても、前記包装機と同様にレーザー印刷可能で、製袋方式によって積層体の供給方式は異なるが、通常は、少なくとも横シール後にカットする際に積層体が間歇送りとなるため、そのような位置でレーザー印刷を施すと良い。
【0085】
また、製袋方式によっては滅菌紙等、不透明なフィルムを挿入したり、積層体と滅菌紙を重ね合わせたりして、異材質の組み合わせで袋体を形成することもあるが、そのような場合でも、透明な積層体との組み合わせとすることによって、本発明を適用することができる。
【実施例】
【0086】
次に、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
本発明に係るレーザー印刷用積層体1の透明基材フィルム2として、厚さ16μm、幅760mmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「E5102」、東洋紡績株式会社製)を選定し、グラビア印刷機で、透明基材フィルム2のコロナ処理面に橙色インキ(製品名「CLIOS」、ザ・インクテック株式会社製)を用いて、図柄、および、文字を、図5に示したように、1列の幅180mmで4列、かつ、縦方向のピッチ220mmで印刷した。なお、図13に示すように、後の工程で設ける白色インキ層のレーザー用印刷部の上半分に相当する位置には、「製造番号」、「製造年月日」、「使用期限」の文字を、左側に寄せて印刷した。その後、酸化チタン顔料系白色インキ(製品名「CLIOS」、ザ・インクテック株式会社製)を用いて、レーザー用印刷部となる白色インキ層3(50mm×50mm)をベタ印刷した。
【0087】
次に、前記の印刷済み二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの印刷面に、2液硬化型ウレタン系アンカーコート剤を塗布し、熱接着性樹脂層4として厚さ20μmの溶融低密度ポリエチレン樹脂を用い、アルミニウム層5として厚さ7μm、幅740mmのアルミニウム箔を用いて、該アルミニウム箔のつや消し面と貼り合わせ、本発明に係るレーザー印刷用積層体1を得た。
【0088】
(実施例2)
本発明に係るレーザー印刷用積層体1の透明基材フィルム2として、厚さ16μm、幅760mmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「E5102」、東洋紡績株式会社製)を選定し、グラビア印刷機で、透明基材フィルム2のコロナ処理面に橙色インキ、および、酸化チタン顔料系白色インキ(製品名「CLIOS」、ザ・インクテック株式会社製)を用いて実施例1と同様に、図柄、文字、および、レーザー用印刷部を印刷した。
【0089】
次に、前記の印刷済み二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの印刷面に、2液硬化型ウレタン系アンカーコート剤を塗布し、熱接着性樹脂層4として厚さ20μmの溶融エチレン・アクリル酸共重合体樹脂を用い、アルミニウム層5として厚さ7μm、幅740mmのアルミニウム箔を用いて、該アルミニウム箔の光沢面と貼り合わせ、本発明に係るレーザー印刷用積層体1を得た。
【0090】
(実施例3)
本発明に係るレーザー印刷用積層体1の透明基材フィルム2として、厚さ20μm、幅760mmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(製品名「FOR」、フタムラ化学株式会社製)を選定し、グラビア印刷機で、透明基材フィルム2のコロナ処理面に青色インキ、および、酸化チタン顔料系白色インキ(製品名「CLIOS」、ザ・インクテック株式会社製)を用いて、実施例1と同様に、図柄、文字、および、レーザー用印刷部を印刷した。
【0091】
次に、前記の印刷済み二軸延伸ポリプロピレンフィルムの印刷面に、2液硬化型ウレタン系アンカーコート剤を塗布し、熱接着性樹脂層4として厚さ20μmの溶融エチレン・アクリル酸共重合体樹脂を用い、アルミニウム層5として厚さ7μm、幅740mmのアルミニウム箔を用いて、該アルミニウム箔のつや消し面と貼り合わせ、本発明に係るレーザー印刷用積層体を得た。
【0092】
(比較例1)
透明基材フィルムとして、厚さ16μm、幅760mmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「E5102」、東洋紡績株式会社製)を選定し、グラビア印刷機で、該透明基材フィルムのコロナ処理面に橙色インキ、および、酸化チタン顔料系白色インキ(製品名「CLIOS」、ザ・インクテック株式会社製)を用いて、実施例1と同様に、図柄、文字、および、レーザー用印刷部を印刷した。
【0093】
次に、前記の印刷済み二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの印刷面と、厚さ7μm、幅760mmのアルミニウム箔の光沢面とを、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いて貼り合わせ、比較用の積層体を得た。
【0094】
(比較例2)
透明基材フィルムとして、厚さ16μm、幅760mmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「E5102」、東洋紡績株式会社製)を選定し、グラビア印刷機で、該透明基材フィルムのコロナ処理面に橙色インキ、および、酸化チタン顔料系白色インキ(製品名「CLIOS」、ザ・インクテック株式会社製)を用いて、実施例1と同様に、図柄、文字、および、レーザー用印刷部を印刷した。
【0095】
次に、前記の印刷済み二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの印刷面に、2液硬化型ウレタン系アンカーコート剤を塗布し、厚さ20μmの溶融低密度ポリエチレン樹脂を押し出して、厚さ40μm、幅780mmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(製品名「XMTN」、フタムラ化学株式会社製)のコロナ処理面と貼り合わせ、比較用の積層体を得た。
【0096】
(実験1)
前記実施例1〜3、および比較例1〜2で作成した積層体をA4版の大きさに切り取り、レーザー光照射装置としてYVO4レーザー印刷機(商品名「MD−V9900」、株式会社キーエンス製)を用い、各積層体のレーザー用印刷部に、図14に示したように、一次元バーコード(RSSリミテッド)と、二次元バーコード(CCA)とで構成される、最小バー幅0.17mmのRSSリミテッドCCA、および、数字等の文字の印刷を、テーブル上で実施した。なお、図14において、RSSリミテッドCCAは略記してある。
【0097】
本発明に係る上記文字、および、RSSリミテッドCCAは、白色インキ層を下地の背景として、走査レーザー光照射部が黒色で表現されてなるものである。
【0098】
そして、レーザー光の照射エネルギーは、レーザー光がアルミニウム箔を貫通するほど大きくしないため、アルミニウム箔の下層側はどのような構成でも良く、粘着剤を塗布すれば粘着ラベルが得られ、ヒートシール層を貼り合わせれば、ヒートシール積層体が得られることになる。更に、プラスチック製容器の開口部に対してヒートシール性を有するフィルムを貼り合わせれば、蓋材を得ることができるが、これらの積層方法に特殊な技術は必要なく、通常のアルミニウム箔と、他のフィルムとの貼り合わせ方法を用いれば良い。
【0099】
なお、アルミニウム箔を貫通するほどのエネルギー量でレーザー光を照射すれば、積層体は破壊されてしまう。従って、本発明に係る粘着ラベルにレーザー印刷を施しても、一般的な透明ラベルにレーザー印刷を施した際に粘着剤が焦げて生じる、不快な異臭は発生することが無く、ごく僅かに樹脂の焦げ臭を感じる程度である。
【0100】
レーザー印刷に際しては、スキャンスピードを400mm/sに固定し、パワー、および、周波数を調整しながら実施した。
【0101】
その結果を表1に示す。本発明に係る実施例1〜3の積層体は、表1に示した条件の範囲内で良好なレーザー印刷物を得ることができたが、比較例1の積層体は、最も良好な条件であっても、薄く滲んだような線しか再現できず、比較例2の積層体は、更に薄い線が描けるか、もしくは、白色インキ層と透明基材フィルムが焼失してしまうかのいずれかであった。
【0102】
表1に示した実施例1〜3の積層体で良好なレーザー印刷物を得た照射条件は、スキャンスピードを400mm/sに固定した場合の数値であり、スキャンスピードを変えれば、最適なパワー、および、周波数の条件も表1の数値とは異なるため、印刷速度、透明基材フィルムの厚さ、および熱接着性樹脂層の厚さ等、印刷対象となる積層体の構造、および機械的条件に応じて最適レーザー印刷条件を見出すと良い。
【0103】
続いて、レーザー印刷後に検証機(商品名「TC201−RL」、ムナゾウ株式会社製)を用いて印刷品質の検証を実施した。その結果を表2に示す。表2に示すように、実施例1、および3はグレードB、実施例2はグレードC、比較例1、および2は、グレードF未満であった。
【0104】
ここでいうグレードとは、米国基準ANSI X3.182により定められたもので、エレメントエッジの判定等、八つの評価項目でシンボルを測定してそれぞれの測定結果をA、B、C、D、Fの5段階で表し、八つの評価結果中の最低評価グレードで、被測定シンボルのグレードを表すものである。ちなみに、Aが最高グレード、Dが最低グレードであって、Fは欠陥を表す。但し、グレードFでも通常のハンディリーダーや検査装置でも読み取り可能だが、シンボルとみなされなかった場合は、グレードFの評価も得られない。一般的にはグレードC以上の使用が勧められている。
【0105】
上記レーザー印刷、および検証結果から明らかなように、レーザー光照射面側のアルミニウム箔の表面状態によりレーザー印刷条件、および印刷物のグレードは異なるが、透明基材フィルムが複層である等の積層体の条件、および、高速印刷を要求される等の機械的条件によって、レーザー印刷の条件が厳しい場合はレーザー印刷条件の範囲が広くなる、アルミニウム箔のレーザー光照射面側を光沢面とし、より高い検証グレードを求められる場合には、アルミニウム箔のレーザー光照射面側をつや消し面とすると良い。
【0106】
(実験2)
前記実施例1の積層体のアルミニウム箔面に、ヒートシール層として、厚さ40μm、幅740mmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(製品名「L4102」、東洋紡績株式会社製)を、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いて貼り合わせ、接着剤が硬化した後、スリットして幅180mmの、本発明に係るレーザー印刷用積層体の巻取り状積層体を得た。
【0107】
前記YVO4レーザー印刷機を装着した横ピロー包装機を用いて、前記巻取り状積層体を使用し、スキャンスピード400mm/s、パワー40%、および、周波数60kHzで、レーザー印刷しつつ、ヒートシール幅15mmの背シールと、ヒートシール幅10mmで、縦220mm、横80mmのピロー袋を形成しつつ、内容物として、青カビ胞子懸濁液を塗布した笹蒲鉾1枚と、脱酸素剤(製品名「エージレスFX−50」、三菱瓦斯化学株式会社製)とを収納し、本発明に係る包装体を得た。
【0108】
包装後、前記包装体の印刷部を、ハンディリーダー(商品名「BT−951」、株式会社キーエンス製)を用いて読み取り操作を行った結果、RSSリミテッド、および、CCAの双方のデータを読み取ることができた。
また、前記包装体を28℃で2週間培養した結果、青カビの繁殖は認められなかった。
【0109】
【表1】

【表2】

【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明のレーザー印刷用積層体の基本構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明のレーザー印刷用積層体の構成の一例を示す概略断面図であり、アルミニウム層の内層側に接着層を介してヒートシール層が設けられているものを示す。
【図3】本発明のレーザー印刷用積層体のアルミニウム層の上に、粘着剤を塗布して形成された粘着ラベルの概略断面図である。
【図4】図1に示す本発明のレーザー印刷用積層体において、レーザー光の照射によって、前記白色インキ層に黒化した意匠が形成された状態を示す想像図である。
【図5】本発明のレーザー印刷用積層体が複数列連続されてなる巻取り状積層体原反の斜視図である。
【図6】図5に示す巻取り状積層体原反を切断箇所で切断した巻取り状積層体の斜視図である。
【図7】本発明に係るレーザー印刷用積層体から作製したレーザー印刷付き袋体の一例を示す概略外観図である。
【図8】本発明に係るレーザー印刷用積層体から作製したレーザー印刷付き袋体の一例を示す概略外観図である。
【図9】図7に示した本発明に係る袋体に内容物と脱酸素剤を収納し、開口部をヒートシールにより密封したレーザー印刷付き包装体の一例を示す概略外観図である。
【図10】開口部をヒートシールしうるプラスチック製容器に、本発明のレーザー印刷付き積層体を蓋材として使用して密封してなる包装体の側面図であり、内容物と共に脱酸素剤を収納した状態を示すものである。
【図11】図10に示した包装体を蓋材側から見た場合の概略正面図である。
【図12】本発明のレーザー印刷用積層体を装着して包装体を形成する横ピロー包装機の一例を示す概略外観図である。
【図13】本発明のレーザー印刷用積層体のレーザー用印刷部に、予め文字、図柄等のデザイン印刷部を設けた例を示す図である。
【図14】図13に示したレーザー用印刷部にレーザー印刷した例を示す図である。
【符号の説明】
【0111】
1・・・レーザー印刷用積層体
2・・・透明基材フィルム
3・・・白色インキ層
4・・・熱接着性樹脂層
5・・・アルミニウム層
6・・・接着層
7・・・ヒートシール層
8・・・粘着剤層
9・・・レーザー印刷部
10・・・文字、図柄等のデザイン印刷部
11・・・切断部
12・・・レーザー用印刷部
13・・・開口部
14・・・ヒートシール部
15・・・ノッチ部
16・・・内容物
17・・・脱酸素剤
18・・・プラスチック製容器
19・・・蓋材
20・・・文字、図柄等のデザイン印刷部
30・・・横ピロー包装機
31・・・レーザー光照射装置
32・・・印刷検査装置
33・・・ダンサーロール
34・・・受け台
35a、35b・・・定量送りローラー
36a、36b・・・ヒートシール装置
37・・・フォーマー
38・・・排出コンベア
100・・・粘着ラベル
110・・・レーザー印刷付き積層体
120・・・巻取り状積層体原反
130・・・巻取り状積層体
140・・・レーザー印刷付き袋体
150・・・レーザー印刷付き包装体
160・・・包装体



【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光照射によって図形や文字が形成されるレーザー印刷用積層体において、外層側の透明基材フィルムから内層側に向けて、少なくとも、酸化チタン顔料を含有する白色インキ層が部分的に設けられており、その内層側に熱接着性樹脂層が設けられており、さらに内層側にアルミニウム層が設けられていることを特徴とする、レーザー印刷用積層体。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザー印刷用積層体において、少なくとも最内層に、ヒートシール層が設けられていることを特徴とする、レーザー印刷用積層体。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載のレーザー印刷用積層体の前記白色インキ層を有する積層部に、透明基材フィルムの外層面側からレーザー光が照射されることにより、前記白色インキ層に黒化した意匠が形成されたことを特徴とする、レーザー印刷付き積層体。
【請求項4】
請求項1に記載のレーザー印刷用積層体の少なくとも最内層に粘着層が設けられており、前記白色インキ層を有する積層部にレーザー光が照射されることにより、黒化した意匠が形成されたことを特徴とする、粘着ラベル。
【請求項5】
請求項2に記載のレーザー印刷用積層体の前記最内層のヒートシール層同士を対向させ、開口部となる部分以外の外周をヒートシールして袋状に形成したことを特徴とする、レーザー印刷用袋体。
【請求項6】
請求項3に記載のレーザー印刷付き積層体の前記最内層のヒートシール層同士を対向させ、開口部となる部分以外の外周をヒートシールして、袋状に形成したことを特徴とする、レーザー印刷付き袋体。
【請求項7】
請求項2に記載のレーザー印刷用積層体の前記最内層のヒートシール層と、ヒートシール層を有する第2の積層体のヒートシール層を対向させ、開口部となる部分以外の外周をヒートシールして袋状に形成したことを特徴とする、レーザー印刷用袋体。
【請求項8】
請求項3に記載のレーザー印刷付き積層体の前記最内層のヒートシール層と、ヒートシール層を有する第2の積層体のヒートシール層を対向させ、開口部となる部分以外の外周をヒートシールして袋状に形成したことを特徴とする、レーザー印刷付き袋体。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の袋体に内容物を収納し、前記袋体の開口部をヒートシールにより密封して形成したことを特徴とする、包装体。
【請求項10】
開口部をヒートシールしうるプラスチック製容器に内容物を収納し、該開口部と、請求項3に記載のレーザー印刷付き積層体の最内層のヒートシール層を対向させて、該プラスチック製容器と該レーザー印刷付き積層体とをヒートシールにより密封して形成したことを特徴とする、包装体。
【請求項11】
請求項1〜2のいずれかに記載のレーザー印刷用積層体の前記白色インキ層を有する積層部に、前期透明基材フィルムの外層面側からレーザー光を照射して、前記白色インキ層に黒化した意匠を形成することを特徴とする、レーザー印刷方法。
【請求項12】
前記レーザー光が、YVO4レーザー光であることを特徴とする、請求項11に記載のレーザー印刷方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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