説明

レーザー彫刻用樹脂組成物、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版及びその製造方法、並びに、レリーフ印刷版の製版方法

【課題】リンス洗浄液耐性に優れ、印刷時に水性インキに対する耐久性が高く、また、UVインクに対する耐久性にも優れたレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に好適なレーザー彫刻用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(成分A)エチレン性不飽和基、エポキシ基、オキセタニル基、加水分解性シリル基及びシラノール基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合性基を含有し、さらに、スルホンアミド基を有する低分子化合物、マレイミド基、スクシンイミド基及びフタル酸イミド基よりなる群から選ばれた残基を有する低分子化合物、又は、マレイミド基に由来する構成単位又はスルホンアミド基を有する構成単位を含有する高分子化合物、を含有することを特徴とするレーザー彫刻用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー彫刻用樹脂組成物、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版及びその製造方法、並びに、レリーフ印刷版の製版方法に関する。
【背景技術】
【0002】
支持体表面に積層された感光性樹脂層に凹凸を形成して印刷版を形成する方法としては、感光性組成物を用いて形成したレリーフ形成層に、原画フィルムを介して紫外光により露光し、画像部分を選択的に硬化させて、未硬化部を現像液により除去する方法、いわゆる「アナログ製版」が良く知られている。
【0003】
レリーフ印刷版は、凹凸を有するレリーフ層を有する凸版印刷版であり、このような凹凸を有するレリーフ層は、主成分として、例えば、合成ゴムのようなエラストマー性ポリマー、熱可塑性樹脂などの樹脂、又は、樹脂と可塑剤との混合物を含有する感光性組成物を含有するレリーフ形成層をパターニングし、凹凸を形成することにより得られる。このようなレリーフ印刷版うち、軟質なレリーフ層を有するものをフレキソ版と称することがある。
【0004】
レリーフ印刷版をアナログ製版により作製する場合、一般に銀塩材料を用いた原画フィルムを必要とするため、原画フィルムの製造時間及びコストを要する。さらに、原画フィルムの現像に化学的な処理が必要で、かつ現像廃液の処理をも必要とすることから、さらに簡易な版の作製方法、例えば、原画フィルムを用いない方法、現像処理を必要としない方法などが検討されている。
【0005】
近年は、原画フィルムを必要とせず、走査露光によりレリーフ形成層の製版を行う方法が検討されている。
原画フィルムを必要としない手法として、レリーフ形成層上に画像マスクを形成可能なレーザー感応式のマスク層要素を設けたレリーフ印刷版原版が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。これらの原版の製版方法によれば、画像データに基づいたレーザー照射によりマスク層要素から原画フィルムと同様の機能を有する画像マスクが形成されるため、「マスクCTP方式」と称されており、原画フィルムは必要ではないが、その後の製版処理は、画像マスクを介して紫外光で露光し、未硬化部を現像除去する工程であり、現像処理を必要とする点でなお改良の余地がある。
【0006】
現像工程を必要としない製版方法として、レリーフ形成層をレーザーにより直接彫刻し製版する、いわゆる「直彫りCTP方式」が多く提案されている。直彫りCTP方式は、文字通りレーザーで彫刻することにより、レリーフとなる凹凸を形成する方法で、原画フィルムを用いたレリーフ形成と異なり、自由にレリーフ形状を制御することができるという利点がある。
これまで直彫りCTP方式で用いられた版材は、版材の特性を決定するバインダーとして、疎水性のエラストマー(ゴム)を用いたもの(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−262077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
レリーフ形成層をレーザー彫刻して得られるレリーフ版には、紫外線硬化性のいわゆるUVインクに対する耐久性、水性インクに対する耐久性、及び、洗浄液に対する耐久性が要求される。
本発明が解決しようとする課題は、レーザー彫刻により発生した彫刻カスのリンス洗浄液耐性に優れ、印刷時に水性インキに対する耐久性が高く、また、UVインクに対する耐久性にも優れたレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に好適なレーザー彫刻用樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、レーザー彫刻用のレリーフ印刷版原版において、形成されるレリーフ層のインキ洗浄液への耐性、水性インク耐性及びUVインク耐性に優れたレリーフ印刷版原版及びその製造方法、並びに、それを用いたレリーフ印刷版の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題は、以下の解決手段<1>、<9>〜<11>及び<13>により達成された。好ましい実施形態である<2>〜<8>、<12>、<14>及び<15>と共に列記する。
<1>(成分A)エチレン性不飽和基、エポキシ基、オキセタニル基、加水分解性シリル基及びシラノール基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合性基を含有し、さらに、スルホンアミド基を有する低分子化合物、マレイミド基、スクシンイミド基及びフタル酸イミド基よりなる群から選ばれた残基を有する低分子化合物、又は、マレイミド基に由来する構成単位又はスルホンアミド基を有する構成単位を含有する高分子化合物、を含有することを特徴とするレーザー彫刻用樹脂組成物、
<2>前記高分子化合物が、エチレン性不飽和基又は加水分解性シリル基を含有する、<1>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<3>さらに(成分B)バインダーポリマーを含有する、<1>又は<2>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<4>さらに(成分C)重合性化合物を含有する、<1>〜<3>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<5>さらに(成分D)重合開始剤を含有する、<1>〜<4>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<6>さらに(成分E)可塑剤を含有する、<1>〜<5>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<7>さらに(成分F)香料を含有する、<1>〜<6>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<8>さらに(成分G)700〜1,300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤を含有する、<1>〜<7>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<9><1>〜<8>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を支持体上に有する、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<10><1>〜<8>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋したレリーフ形成層を支持体上に有する、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<11><1>〜<8>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、及び、前記レリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋した架橋レリーフ形成層を形成する架橋工程、を含むことを特徴とする、レリーフ印刷版原版の製造方法、
<12>架橋工程が、前記レリーフ形成層を熱により架橋する工程である、<11>に記載のレリーフ印刷版原版の製造方法、
<13><11>又は<12>に記載のレリーフ印刷版原版の製造方法により製造されたレリーフレリーフ印刷版原版のレリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成するレリーフ層形成工程を含む、レリーフ印刷版の製版方法、
<14>前記レリーフ形成層の厚みが、0.05mm以上10mm以下である、<13>に記載のレリーフ印刷版の製版方法、
<15>前記レリーフ形成層のショアA硬度が50°以上90°以下である、<13>又は<14>に記載のレリーフ印刷版の製版方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レーザー彫刻により発生した彫刻カスのリンス性に優れ、印刷時に水性インキ及び/又はUVインクに好適に使用することができる、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に好適なレーザー彫刻用樹脂組成物を提供することができた。
また、本発明によれば、前記本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を用いることで、形成されるレリーフ層の水性インク耐性及びUVインク耐性に共に優れたレリーフ印刷版原版及びその製造方法、並びに、レリーフ印刷版の製版方法を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
[レーザー彫刻用樹脂組成物]
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分A)エチレン性不飽和基、エポキシ基、オキセタニル基、加水分解性シリル基及びシラノール基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合性基を含有し、さらに、スルホンアミド基を有する低分子化合物、マレイミド基、スクシンイミド基及びフタル酸イミド基よりなる群から選ばれた残基を有する低分子化合物、又は、マレイミド基に由来する構成単位又はスルホンアミド基を有する構成単位を含有する高分子化合物、を含有することを特徴とする。
【0012】
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、レーザー彫刻が施されるレリーフ印刷版原版のレリーフ形成層用途以外にも、他の用途にも広く適用することができる。例えば、以下に詳述する凸状のレリーフ形成をレーザー彫刻により行う印刷版原版のレリーフ形成層のみならず、表面に凹凸や開口部を形成する他の材形、例えば、凹版、孔版、スタンプ等、レーザー彫刻により画像形成される各種印刷版や各種成形体の形成に適用することができる。
本組成物は、中でも、適切な支持体上に備えられたレリーフ形成層の形成に適用することが好ましい。
【0013】
なお、本明細書では、レリーフ印刷版原版の説明に関し、好ましくはバインダーポリマーを含有し、レーザー彫刻に供する画像形成層としての、表面が平坦な層をレリーフ形成層と称し、これをレーザー彫刻して表面に凹凸を形成した層をレリーフ層と称する。
【0014】
上述したように、成分Aは、以下の二種の低分子化合物(成分A1)及び(成分A2)並びに一種の高分子化合物(成分A3)よりなる群から選択される。これらの化合物について以下に説明する。
(成分A1)エチレン性不飽和基、エポキシ基、オキセタニル基、加水分解性シリル基及びシラノール基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合性基を含有し、さらに、スルホンアミド基を有する低分子化合物
ここで、エチレン性不飽和基、エポキシ基、及びオキセタニル基、加水分解性シリル基及びシラノール基はいずれも、自己反応性又は付加反応性を有し、連鎖的な付加反応によりより分子量の高い化合物に変化するか、又は、他の活性な架橋性基と結合することができる点で共通する性質を有する。成分A1は前記の群から選ばれた少なくとも1つの重合性基を含有し、さらに、スルホンアミド基を有する低分子化合物である。
ここで、「低分子化合物」とは、分子量が1,000未満であることを意味し、分子量100〜900であることが好ましい。また、後述の成分A3である「高分子化合物」とは、分子量が1,000以上であることを意味し、他の使用素材との相溶性の観点から、重量平均分子量が1,000〜1,000,000であることが好ましく、重量平均分子量が1,000〜100,000であることがより好ましい。
【0015】
前記のエチレン性不飽和基は、鎖状の構造に限り、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、及びアリル基が含まれ、(メタ)アクリロイル基、及びビニル基が好ましい。
エポキシ基は、鎖状でも環状でもよく、グリシジル基、シクロヘキセンオキシド基が含まれる。
オキセタニル基は、置換基を有していても良く、無置換であるか、又は、炭素数1〜5の低級アルキル基が置換基として好ましい。
【0016】
「加水分解性シリル基及びシラノール基」における「加水分解性シリル基」とは、加水分解性基を含むシリル基のことであり、加水分解性基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、ハロゲン基、アミド基、アセトキシ基、アミノ基、イソプロペノキシ基等を挙げることができる。シリル基は加水分解してシラノール基となり、シラノール基は脱水縮合してシロキサン結合が生成する。このような加水分解性シリル基又はシラノール基は下記式(1)で表されるものが好ましい。
【0017】
【化1】

【0018】
前記式(1)中、R1〜R3はそれぞれ独立に、アルコキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミド基、アセトキシ基、アミノ基、及び、イソプロペノキシ基からなる群より選択される加水分解性基、ヒドロキシル基、水素原子、又は、1価の有機基を表す。但し、R1〜R3の少なくともいずれか1つは、アルコキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミド基、アセトキシ基、アミノ基、及び、イソプロペノキシ基からなる群より選択される加水分解性基、又は、ヒドロキシル基を表す。
1〜R3が1価の有機基を表す場合の好ましい有機基としては、種々の有機溶媒への溶解性を付与できる観点から、炭素数1〜30のアルキル基が挙げられる。
上記式(1)中、ケイ素原子に結合する加水分解性基としては、特にアルコキシ基、ハロゲン原子が好ましい。
アルコキシ基としては、リンス性と耐刷性の観点から炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましい。より好ましくは炭素数1〜15のアルコキシ基、特に好ましくは炭素数1〜5、さらに好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基である。
また、ハロゲン原子として、F原子、Cl原子、Br原子、I原子が挙げられ、合成のしやすさ及び安定性の観点で、好ましくはCl原子及びBr原子が挙げられ、より好ましくはCl原子である。
【0019】
成分Aとしての「加水分解性シリル基又はシラノール基である重合性基を有する化合物」は、前記式(1)で表される基を少なくとも1つ以上有する化合物であることが好ましく、少なくとも2つ以上有する化合物であることが好ましい。特に加水分解性シリル基を少なくとも2つ以上有する化合物が好ましく用いられる。即ち、分子内にケイ素原子を2つ以上有する化合物が好ましく用いられる。化合物中に含まれるケイ素原子の数は2以上6以下が好ましく、2又は3が最も好ましい。
上記加水分解性基は1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、式(1)中における加水分解性基の総個数は2又は3の範囲であることが好ましい。特に3つの加水分解性基がケイ素原子に結合していることが好ましい。加水分解性基がケイ素原子に2個以上結合するときは、それらは互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0020】
上記アルコキシ基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ベンジルオキシ基などを挙げることができる。アルコキシ基の結合したアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基などのジメトキシシリル基;メトキシジメチルシリル基、エトキシジメチルシリル基などのモノアルコキシシリル基を挙げることができる。これらの各アルコキシ基を複数個組み合わせて用いてもよし、異なるアルコキシ基を複数個組み合わせて用いてもよい。
上記アリールオキシ基としては、具体的には、例えば、フェノキシ基などを挙げることができる。アリールオキシ基の結合したアリールオキシシリル基としては、例えば、トリフェノキシシリル基などのトリアリールオキシシリル基を挙げることができる。
【0021】
成分A1におけるスルホンアミド基は、無置換であることが好ましく、フェニレン基に置換しているスルホンアミド基が好ましい。
成分A1の好ましい具体例としては、後掲の実施例に使用のA−4が例示できる。
【0022】
(成分A2)マレイミド基、スクシンイミド基及びフタル酸イミド基よりなる群から選ばれた残基を有する低分子化合物
成分A2は、マレイミド基、スクシンイミド基及びフタル酸イミド基よりなる環状の残基を有する点で共通点を有する低分子化合物である。「低分子」については、成分A1における「低分子」と同義である。
スクシンイミド基は、脂環が縮合していてもよい。
また、マレイミド基は、分子内に1つ又は2つ以上存在することができる。マレイミド基を、2以上有する化合物は、硬化性のエチレン性不飽和化合物として機能し、成分A2として好ましい。
成分A2の具体例は、実施例において使用する成分Aの具体例中のA−2、A−3、A−5〜A−8が例示できる。
【0023】
(成分A3)マレイミド基に由来する構成単位又はスルホンアミド基を有する構成単位を含有する高分子化合物
成分A3は、高分子化合物であり、前述のとおり、「高分子化合物」とは、分子量が1,000以上であることを意味し、重量平均分子量が1,000〜1,000,000であることが好ましく、1,000〜100,000であることがより好ましい。
成分Aとして、成分A1又は成分A2よりも成分A3が好ましい。
成分A3は、マレイミド基に由来する構成単位又はスルホンアミド基を有する構成単位を含有する高分子化合物であり、マレイミド基又はスルホンアミド基を有する構成単位の共重合比は、溶解性と、インキ耐性/洗浄液耐性との両立の観点から、5〜80モル%が好ましく、10〜60モル%がより好ましい。エチレン性不飽和基、エポキシ基、オキセタニル基、加水分解性シリル基及びシラノール基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合性基を含有する構成単位を有することが好ましい。成分A3が、他の重合性基として、イソシアナト基を含有する構成単位を有することもまた、好ましい。
成分A3の高分子を構成する構成単位は、重合性基を有しない非環状のエチレン性不飽和基に由来するか、加水分解性シリル基を含有する非環状のエチレン性不飽和基に由来するか、又は、p−スルホンアミドフェニル基を含有する非環状のエチレン性不飽和基に由来することが好ましい。
【0024】
本発明の樹脂組成物中に含まれる成分Aの含有量は、固形分換算で、0.1〜80重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜60重量%の範囲であり、最も好ましくは5〜60重量%である。
【0025】
以下に成分Aの具体例を列挙する。
【0026】
[3−(2−ニトロベンゼンスルホンアミド)プロピル]カルバミン酸アリル、N−アリルオキシカルボニル−2−ニトロベンゼンスルホンアミド、N−(o−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−メチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−メチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−メチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−エチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−エチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−エチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−n−プロピルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−n−プロピルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−n−プロピルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−i−プロピルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−i−プロピルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−i−プロピルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−n−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−n−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−n−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−i−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−i−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−i−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−sec−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−sec−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−sec−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−t−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−t−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−t−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−フェニルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−フェニルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−フェニルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−(α−ナフチルアミノスルホニル)フェニル)メタクリルアミド、N−(m−(α−ナフチルアミノスルホニル)フェニル)メタクリルアミド、N−(p−(α−ナフチルアミノスルホニル)フェニル)メタクリルアミド、N−(o−(β−ナフチルアミノスルホニル)フェニル)メタクリルアミド、N−(m−(β−ナフチルアミノスルホニル)フェニル)メタクリルアミド、N−(p−(β−ナフチルアミノスルホニル)フェニル)メタクリルアミド、N−(1−(3−アミノスルホニル)ナフチル)メタクリルアミド、N−(1−(3−メチルアミノスルホニル)ナフチル)メタクリルアミド、N−(1−(3−エチルアミノスルホニル)ナフチル)メタクリルアミド、N−(o−メチルスルホニルアミノフェニル)メタクリルアミド、N−(m−メチルスルホニルアミノフェニル)メタクリルアミド、N−(p−メチルスルホニルアミノフェニル)メタクリルアミド、N−(o−エチルスルホニルアミノフェニル)メタクリルアミド、N−(m−エチルスルホニルアミノフェニル)メタクリルアミド、N−(p−エチルスルホニルアミフェニル)メタクリルアミド、N−(o−フェニルスルホニルアミノフェニル)メタクリルアミド、N−(m−フェニルスルホニルアミノフェニル)メタクリルアミド、N−(p−フェニルスルホニルアミノフェニル)メタクリルアミド、N−(o−(p−メチルフェニルスルホニルアミノ)フェニル)メタクリルアミド、N−(m−(p−メチルフェニルスルホニルアミノ)フェニル)メタクリルアミド、N−(p−(p−メチルフェニルスルホニルアミノ)フェニル)メタクリルアミド、N−(p−(α−ナフチルスルホニルアミノ)フェニルメタクリルアミド、N−(p−(β−ナフチルスルホニルアミノ)フェニル)メタクリルアミド、N−(2−メチルスルホニルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(2−エチルスルホニルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(2−フェニルスルホニルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(2−p−メチルフェニルスルホニルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(2−α−ナフチルスルホニルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(2−β−ナフチルスルホニルアミノ)エチルメタクリルアミド、N−(m−ジメチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−ジメチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−ジエチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−ジエチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−ジエチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド等のメタクリルアミド類、上記と同様の置換基を有するアクリルアミド類、
【0027】
またo−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、o−メチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−メチメアミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−メチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、o−エチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−エチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−エチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、o−n−プロピルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−n−プロピルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−n−プロピルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、o−i−プロピルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−i−プロピルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、o−n−ブチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−n−ブチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−n−ブチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−i−ブチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−i−ブチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−sec−ブチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−sec−ブチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−t−ブチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−t−ブチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、o−フェニルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−フェニルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−フェニルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−(α−ナフチルアミノスルホニル)フェニルメタクリレート、p−(α−ナフチルアミノスルホニルフェニル)メタクリレート、m−(β−ナフチルアミノスルホニル)フェニルメタクリレート、p−(β−ナフチルアミノスルホニル)フェニルメタクリレート、1−(3−アミノスルホニル)ナフチルメタクリレート、1−(3−メチルアミノスルホニル)ナフチルメタクリレート、1−(3−エチルアミノスルホニル)ナフチルメタクリレート、o−メチルスルホニルアミノフェニルメタクリレート、m−メチルスルホニルアミノフェニルメタクリレート、p−メチルスルホニルアミノフェニルメタクリレート、o−エチルスルホニルアミノフェニルメタクリレート、m−エチルスルホニルアミノフェニルメタクリレート、p−エチルスルホニルアミノフェニルメタクリレート、o−フェニルスルホニルアミノフェニルメタクリレート、m−フェニルスルホニルアミノフェニルメタクリレート、p−フェニルスルホニルアミノフェニルメタクリレート、o−(p−メチルフェニルスルホニルアミノ)フェニルメタクリレート、m−(p−メチルフェニルスルホニルアミノ)フェニルメタクリレート、p−(p−メチルフェニルスルホニルアミノ)フェニルメタクリレート、p−(α−ナフチルスルホニルアミノ)フェニルメタクリレート、p−(β−ナフチルスルホニルアミノ)フェニルメタクリレート、2−メチルスルホニルアミノエチルメタクリレート、2−エチルスルホニルアミノエチルメタクリレート、2−フェニルスルホニルアミノエチルメタクリレート、2−p−メチルフェニルスルホニルアミノエチルメタクリレート、2−α−ナフチルスルホニルアミノエチルメタクリレート、2−β−ナフチルスルホニルアミノエチルメタクリレート、o−ジメチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−ジメチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−ジメチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、o−ジエチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−ジエチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−ジエチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、等のメタクリル酸エステル類、上記と同様の置換基を有するアクリル酸エステル類などが挙げられる。
【0028】
p−アミノスルホニルスチレン、p−アミノスルホニル−α−メチルスチレン、p−アミノスルホニルフェニルアリルエーテル、p−(N−メチルアミノスルホニル)フェニルアリルエーテル、p−(N−ジメチルアミノスルホニル)フェニルアリルエーテル、メチルスルホニルアミノ酢酸ビニルエステル、フェニルスルホニルアミノ酢酸ビニルエステル、メチルスルホニルアミノ酢酸アリルエステル、フェニルスルホニルアミノ酢酸アリルエステル、p−メチルスルホニルアミノフェニルアリルエーテルなどがある。
以下に成分A3の具体例を示す。共重合比は、モル%を示す。
【0029】
【化2】

【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

【0033】
【化6】

【0034】
【化7】

【0035】
【化8】

【0036】
マレイミド基、スクシンイミド基、及びフタル酸イミド基よりなる群から選ばれた残基を有する低分子化合物(成分A2)の例を以下に示す。
N−(4−アミノフェニル)マレイミド、N−[4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル]マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ビオチニル−N’−(3−マレイミドプロピオニル)−3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジアミン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン
1,2−ビス(マレイミド)エタン、
【0037】
1,6−ビスマレイミドヘキサン、2,3−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)マレイミド、N−ブロモメチル−2,3−ジクロロマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、3,4−ジブロモマレイミド、N−エチルマレイミド、マレイミド、3−マレイミドプロピオン酸、6,7−メチレンジオキシ−4−メチル−3−マレイミドクマリン、N−メチルマレイミド、N−(4−ニトロフェニル)マレイミド、N,N’−1,3−フェニレンジマレイミド、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(1−ピレニル)マレイミド、3−マレイミド安息香酸N−スクシンイミジル、4−マレイミド酪酸N−スクシンイミジル、6−マレイミドヘキサン酸N−スクシンイミジル、3−マレイミドプロピオン酸N−スクシンイミジル、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、N−(アリルオキシカルボニルオキシ)スクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−(tert−ブトキシカルボニル)−O−ベンジル−L−セリンN−スクシンイミジル、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−メチオニンN−スクシンイミジル、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−プロリンスクシンイミジル、N−α−(tert−ブトキシカルボニル)−L−トリプトファン−N−スクシンイミジル、N−カルボベンゾキシ−L−ロイシンN−スクシンイミジル、N−カルボベンゾキシ−L−バリンスクシンイミジル、炭酸2−ブロモベンジルスクシンイミジル、N−クロロスクシンイミド、炭酸ジ(N−スクシンイミジル、3,3’−ジチオジプロピオン酸ジ(N−スクシンイミジル)、スベリン酸ジ(N−スクシンイミジル)、N−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニルオキシ]こはく酸イミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム、スクシンイミド、アクリル酸N−スクシンイミジル、D−ビオチンN−スクシンイミジル、6−[[7−(N,N−ジメチルアミノスルホニル)−2,1,3−ベンゾオキサジアゾール−4−イル]アミノ]ヘキサン酸スクシンイミジル、4−[3,5−ジメチル−4−(4−ニトロベンジルオキシ)フェニル]−4−オキソ酪酸スクシンイミジル、6−(2,4−ジニトロアニリノ)ヘキサン酸N−スクシンイミジル、3−(ジフェニルホスフィノ)プロピオン酸N−スクシンイミジル、フェロセンカルボン酸N−スクシンイミジル、メタクリル酸N−スクシンイミジル、4−ニトロフェニル酢酸N−スクシンイミジル、3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸N−スクシンイミジル、S−アセチルチオグリコール酸N−スクシンイミジル、
【0038】
(2R)−6−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸スクシンイミジル、N−(1,2,2,2−テトラクロロエトキシカルボニルオキシ)こはく酸イミド、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボラート
【0039】
以下にマレイミド基に由来する構成単位又はスルホンアミド基を有する構成単位を有する高分子化合物の別の具体例を例示する。Meは、メチル基を示し、n−Buはn−ブチル基を示し、Acはアセチル基を示す。
【0040】
【化9】

【0041】
【化10】

【0042】
【化11】

【0043】
【化12】

【0044】
【化13】

【0045】
【化14】

【0046】
【化15】

【0047】
<(成分B)バインダーポリマー>
本発明の樹脂組成物は、任意成分として、前記の成分Aとは別の(成分B)バインダーポリマーを含有することが好ましい。すなわち、成分Bは、マレイミド基に由来する構成単位又はスルホンアミド基を有する構成単位を含有する高分子化合物とは異なるポリマーである。
また、成分Bは、成分Aに加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種が含まれる場合に、これらの基と反応して架橋構造を形成しうる官能基(以下、適宜、「反応性官能基」と称する。)を分子内に含むことが好ましく、このようなバインダーポリマーを、以下、適宜(B)ポリマーと称する。
成分Aと反応可能な反応性官能基としては、成分Aが加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種を有する場合、これらの基と反応して−Si−O−結合を形成可能な基であれば特に限定されず、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シラノール基、加水分解性シリル基が好ましく用いられる。
これらの官能基は、成分Bのポリマー分子中のいずれかに存在すればよいが、特にポリマー鎖の側鎖に存在することが好ましい。このようなポリマーとしては、ビニル共重合体(ポリビニルアルコールやポリビニルアセタールなどのビニルモノマーの共重合体及びその誘導体)やアクリル樹脂(ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル系モノマーの共重合体及びその誘導体)が好ましく用いられる。ここで、ビニルモノマーの共重合体の誘導体とは、具体的には、ビニルアルコール単位のOH基あるいはOH基のα位を化学修飾して側鎖を延長した形態とし、その末端にOH基やカルボキシル基といった(A)化合物と反応しうる官能基を導入したバインダーポリマーのことを指す。また、アクリル系モノマーの共重合体の誘導体としては、OH基やカルボキシル基といった(A)化合物と反応する官能基を導入した樹脂が挙げられる。
本発明に用いうる(成分B)バインダーポリマーの製造方法は特に限定されないが、加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくともいずれかと反応して架橋構造を形成可能な基、又はこれらの基に誘導しうる基を有する重合性モノマーを重合又は共重合して製造する方法などが挙げられる。
このような(B)ポリマーとしては、特に、(B−1)ヒドロキシル基を有するバインダーポリマーが好ましく用いられる。
【0048】
(成分B1)ヒドロキシル基を有するバインダーポリマー
以下、本発明の樹脂組成物における成分Bとして好適な(成分B1)ヒドロキシル基を有するバインダーポリマー(以下、適宜、(B−1)特定ポリマーと称する。)について説明する。このバインダーポリマーは水不溶、且つ、炭素数1〜4のアルコールに可溶のバインダーポリマーであることが好ましい。
【0049】
本発明における(B−1)特定ポリマーとして、水性インキ適性とUVインキ適性を両立しつつ、かつ彫刻感度が高く皮膜性も良好であるという観点で、ポリビニルブチラール(PVB)及びその誘導体、側鎖にヒドロキシル基を有するアクリル樹脂、及び側鎖にヒドロキシル基を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0050】
本発明に用いうる(B−1)特定ポリマーは、本発明においてレリーフ形成層を構成するレーザー彫刻用樹脂組成物の好ましい併用成分である、後述する(成分G)700nm〜1,300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤と組み合わせた場合に、ガラス転移温度(Tg)が20℃以上のものとすることで、彫刻感度が向上するため、特に好ましい。このようなガラス転移温度を有するバインダーポリマーを以下、非エラストマーと称する。即ち、エラストマーとは、一般的に、ガラス転移温度が常温以下のポリマーであるとして学術的に定義されている(科学大辞典 第2版、編者 国際科学振興財団、発行 丸善株式会社、P154参照)。従って、非エラストマーとはガラス転移温度が常温を超える温度であるポリマーを指す。バインダーポリマーのガラス転移温度の上限には制限はないが、200℃以下であることが取り扱い性の観点から好ましく、25℃以上120℃以下であることがより好ましい。
【0051】
ガラス転移温度が室温(20℃)以上のポリマーを用いる場合、(B−1)特定ポリマ
ーは常温ではガラス状態をとるが、このためゴム状態をとる場合に比較して、熱的な分子運動はかなり抑制された状態にある。レーザー彫刻においては、レーザー照射時に、赤外線レーザーが付与する熱に加え、所望により併用される(成分G)光熱変換剤の機能により発生した熱が、周囲に存在する(B−1)特定ポリマーに伝達され、これが熱分解、消散して、結果的に彫刻されて凹部が形成される。
本発明の好ましい態様では、(B−1)特定ポリマーの熱的な分子運動が抑制された状態の中に(成分G)光熱変換剤が存在すると(B−1)特定ポリマーへの熱伝達と熱分解が効果的に起こるものと考えられ、このような効果によって彫刻感度がさらに増大したものと推定される。
【0052】
本発明において好ましく用いられる(B−1)特定ポリマーの特に好ましい態様である非エラストマーであるポリマーの具体例を以下に挙げる。
【0053】
(1)ポリビニルアセタール誘導体
本明細書においては、以下、ポリビニルアセタール及びその誘導体を単にポリビニルアセタール誘導体と称する。即ち、本明細書においてポリビニルアセタール誘導体は、ポリビニルアセタール及びその誘導体を包含する概念で使用され、ポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニルを鹸化して得られる。)を環状アセタール化することにより得られる化合物の総称を示す。
ポリビニルアセタール誘導体中のアセタール含量(原料の酢酸ビニルモノマーの総モル数を100%とし、アセタール化されるビニルアルコール単位のモル%)は、30%〜90%が好ましく、50%〜85%がより好ましく、55%〜78%が特に好ましい。
ポリビニルアセタール誘導体中のビニルアルコール単位としては、原料の酢酸ビニルモノマーの総モル数に対して、10モル%〜70モル%が好ましく、15モル%〜50モル%がより好ましく、22モル%〜45モル%が特に好ましい。
また、ポリビニルアセタール誘導体は、その他の成分として、酢酸ビニル単位を有していてもよく、その含量としては0.01〜20モル%が好ましく、0.1〜10モル%がさらに好ましい。ポリビニルアセタール誘導体は、さらに、その他の共重合単位を有していてもよい。
ポリビニルアセタール誘導体としては、ポリビニルブチラール誘導体、ポリビニルプロピラール誘導体、ポリビニルエチラール誘導体、ポリビニルメチラール誘導体などが挙げられ、中でもポリビニルブチラール誘導体(以下、PVB誘導体と称する。)が好ましい。なお、これらの記載においても、例えば、ポリビニルブチラール誘導体とは、本明細書においては、ポリビニルブチラール及びその誘導体を包含する意味で用いられ、他のポリビニルアセタール誘導体類についても同様である。
ポリビニルアセタール誘導体の分子量としては、彫刻感度と皮膜性のバランスを保つ観点で、重量平均分子量として5,000〜800,000であることが好ましく、より好ましくは8,000〜500,000である。さらに、彫刻カスのリンス性向上の観点からは、50,000〜300,000であることが特に好ましい。
【0054】
以下、ポリビニルアセタールの特に好ましい例として、ポリビニルブチラールを挙げて説明するが、これに限定されない。
ポリビニルブチラール誘導体の構造は、以下に示す通りであり、これらの構造単位を含んで構成される。
【0055】
【化16】

【0056】
上記式中、l、m及びnは上記式中のそれぞれの繰返し単位のポリビニルブチラール中における含有量(モル%)を表し、l+m+n=100の関係を満たす。ポリビニルブチラール及びその誘導体中のブチラール含量(上記式中におけるlの値)は、30〜90モル%が好ましく、40〜85モル%がより好ましく、45〜78モル%が特に好ましい。
彫刻感度と皮膜性とのバランスの観点から、ポリビニルブチラール及びその誘導体の重量平均分子量は、5,000〜800,000が好ましく、8,000〜500,000がより好ましく、彫刻カスのリンス性向上の観点からは、50,000〜300,000が特に好ましい。
【0057】
PVBの誘導体としては、市販品としても入手可能であり、その好ましい具体例としては、アルコール溶解性(特にエタノール)の観点で、積水化学製の「エスレックB」シリーズ、「エスレックK(KS)」シリーズ、デンカ製の「デンカブチラール」が好ましい。さらに好ましくは、アルコール溶解性(特にエタノール)の観点で積水化学製の「エスレックB」シリーズとデンカ製の「デンカブチラール」である。これらのうち、特に好ましい市販品を、上記式中の、l、m、及びnの値と、分子量とともに以下に示す。積水化学工業(株)製の「エスレックB」シリーズでは、「BL−1」(l=61、m=3、n=36 重量平均分子量 1.9万)、「BL−1H」(l=67、m=3、n=30 重量平均分子量 2.0万)、「BL−2」(l=61、m=3、n=36 重量平均分子量 約2.7万)、「BL−5」(l=75、m=4、n=21 重量平均分子量 3.2万)、「BL−S」(l=74、m=4、n=22 重量平均分子量 2.3万)、「BM−S」(l=73、m=5、n=22 重量平均分子量 5.3万)、「BH−S」(l=73、m=5、n=22 重量平均分子量 6.6万)が、また、デンカ製の「デンカブチラール」シリーズでは「#3000−1」(l=71、m=1、n=28 重量平均分子量 7.4万)、「#3000−2」(l=71、m=1、n=28 重量平均分子量 9.0万)、「#3000−4」(l=71、m=1、n=28 重量平均分子量 11.7万)、「#4000−2」(l=71、m=1、n=28 重量平均分子量 15.2万)、「#6000−C」(l=64、m=1、n=35 重量平均分子量 30.8万)、「#6000−EP」(l=56、m=15、n=29 重量平均分子量 38.1万)、「#6000−CS」(l=74、m=1、n=25 重量平均分子量 32.2万)、「#6000−AS」(l=73、m=1、n=26 重量平均分子量 24.2万)が、それぞれ挙げられる。
PVB誘導体を(B−1)特定ポリマーとして用いてレリーフ形成層を製膜する際には、溶媒に溶かした溶液をキャストし乾燥させる方法が、膜の表面の平滑性の観点で好ましい。
【0058】
(2)アクリル樹脂
本発明における(B−1)特定ポリマーとして用いうるアクリル樹脂としては、公知のアクリル単量体を用いて得るアクリル樹脂であって、分子内にヒドロキシル基を有するものであれば用いることができる。
ヒドロキシル基を有するアクリル樹脂の合成に用いられるアクリル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類(メタ)アクリルアミド類であって分子内にヒドロキシル基を有するものが好ましい。この様な単量体の具体例としては例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0059】
また、アクリル樹脂としては、上記ヒドロキシル基を有するアクリル単量体以外のアクリル単量体を共重合成分として含むこともできる。このようなアクリル単量体としては、
(メタ)アクリル酸エステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、アセトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体のモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
さらに、ウレタン基やウレア基を有するアクリル単量体を含んで構成される変性アクリル樹脂も好ましく使用することができる。
これらの中でも、水性インキ耐性の観点で、ラウリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレートなど脂肪族環状構造を有する(メタ)アクリレート類が特に好ましい。
【0060】
また、(B−1)特定ポリマーとして、フェノール類とアルデヒド類を酸性条件下で縮合させた樹脂であるノボラック樹脂を用いることができる。
好ましいノボラック樹脂としては、例えばフェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、p−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、o−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、オクチルフェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−、o−又はm−/p−、m−/o−、o−/p−混合のいずれでもよい。)の混合物とホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂などが挙げられる。
これらのノボラック樹脂は、重量平均分子量が800〜200,000で、数平均分子量が400〜60,000のものが好ましい。
(B−1)特定ポリマーとして、ヒドロキシル基を側鎖に有するエポキシ樹脂を用いることも可能である。好ましい具体例としては、ビスフェノールAとエピクロヒドリンの付加物を原料モノマーとして重合して得られるエポキシ樹脂が好ましい。
これらのエポキシ樹脂は、重量平均分子量が800〜200,000で、数平均分子量が400〜60,000のものが好ましい。
【0061】
(B−1)特定ポリマーの中でも、レリーフ形成層としたときのリンス性及び耐刷性の観点でポリビニルブチラール誘導体が特に好ましい。
本発明における(B)ポリマーに含まれるヒドロキシル基の含有量は、前記いずれの態様のポリマーにおいても、0.1〜15mmol/gであることが好ましく、0.5〜7mmol/gであることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物における(B−1)特定ポリマーに代表される(B)ポリマーは、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
<(B−2)併用バインダーポリマー>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物には、上記(成分B)バインダーポリマーとして、ヒドロキシル基を有しないバインダーポリマーなど、成分B1に包含されない公知のバインダーポリマーを併用することができる。以下、このようなバインダーポリマーを(B−2)併用バインダーポリマーと称する。
(B−2)併用バインダーポリマーは、前記(B−1)特定ポリマーとともに、レーザー彫刻用樹脂組成物に含有される主成分を構成するものであり、(B−1)特定ポリマーに包含されない一般的な高分子化合物を適宜選択し、1種又は2種以上を併用して用いることができる。特に、レリーフ形成版原版を印刷版原版に用いる際は、レーザー彫刻性、インキ受与性、彫刻カス分散性などの種々の性能を考慮して選択することが好ましい。
【0063】
(B−2)併用バインダーポリマーとしては、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレアポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ヒドロキシエチレン単位を含む親水性ポリマー、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどから選択して用いることができる。
【0064】
例えば、レーザー彫刻感度の観点からは、露光あるいは加熱により熱分解する部分構造を含むポリマーが好ましい。このようなポリマーは、特開2008−163081号公報〔0038〕に記載されているものが好ましく挙げられる。また、例えば、柔軟で可撓性を有する膜形成が目的とされる場合には、軟質樹脂や熱可塑性エラストマーが選択される。特開2008−163081号公報〔0039〕〜〔0040〕に詳述されている。さらに、レリーフ形成層用組成物の調製の容易性、得られたレリーフ印刷版における油性インクに対する耐性向上の観点から、親水性又は親アルコール性ポリマーを使用することが好ましい。親水性ポリマーとしては、特開2008−163081号公報〔0041〕に詳述されているものを使用することができる。
【0065】
また、ポリ乳酸などのヒドロキシカルボン酸ユニットからなるポリエステルを好ましく用いることができる。このようなポリエステルとしては、具体的には、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、乳酸系ポリマー、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(ブチレンコハク酸)、これらの誘導体又は混合物から成る群から選択されるものが好ましい。
【0066】
加えて、加熱や露光により硬化させ、強度を向上させる目的に使用する場合には、分子内に炭素−炭素不飽和結合をもつポリマーが好ましく用いられる。
このようなポリマーとして、主鎖に炭素−炭素不飽和結合を含むポリマーとしては、例えば、SB(ポリスチレン−ポリブタジエン)、SBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)等が挙げられる。
【0067】
側鎖に炭素−炭素不飽和結合をもつポリマーとしては、前記の本発明で適用可能なバインダーポリマーの骨格に、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニルエーテル基のような炭素−炭素不飽和結合を側鎖に導入することで得られる。バインダーポリマー側鎖に炭素−炭素不飽和結合を導入する方法は、重合性基に保護基を結合させてなる重合性基前駆体を有する構造単位をポリマーに共重合させ、保護基を脱離させて重合性基とする方法、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基などの反応性基を複数有する高分子化合物を作製し、これらの反応性基と反応する基及び炭素−炭素不飽和結合を有する化合物を高分子反応させて導入する方法など、公知の方法をとることができる。これらの方法によれば、高分子化合物中への不飽和結合、重合性基の導入量を制御することができる。
このように、レリーフ印刷版の適用用途に応じた物性を考慮し、目的に応じたバインダーポリマーを選択し、当該バインダーポリマーの1種を、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
本発明におけるバインダーポリマーの重量平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算)は、0.5万〜50万が好ましい。重量平均分子量が0.5万以上であれば、単体樹脂としての形態保持性に優れ、50万以下であれば、水など溶媒に溶解しやすくレリーフ形成層を調製するのに好都合である。バインダーポリマーの重量平均分子量は、より好ましくは1万〜40万、特に好ましくは1.5万〜30万である。
【0069】
バインダーポリマーの総含有量〔成分Bの合計含有量〕は、レーザー彫刻用樹脂組成物の固形分全質量に対し、5〜95重量%が好ましく、15〜80重量%が好ましく、20〜65重量%がより好ましい。
例えば、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物をレリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に適用した場合、バインダーポリマーの含有量を5重量%以上とすることで、得られたレリーフ印刷版を印刷版として使用するに足る耐刷性が得られ、また、80重量%以下とすることで、他成分が不足することがなく、レリーフ印刷版をフレキソ印刷版とした際においても印刷版として使用するに足る柔軟性を得ることができる。
【0070】
本発明に係るレリーフ形成層は、本発明の樹脂組成物において必須成分として上述した成分A、所望により併用される成分B(ポリマーバインダー)と共に、さらに、重合性化合物、重合開始剤、可塑剤、等の任意成分を含む樹脂組成物(本発明の樹脂組成物)からなることが好ましい。以下、成分C以下について詳述する。
【0071】
<(成分C)重合性化合物>
本発明においては、レリーフ形成層中に架橋構造を形成する観点から、これを形成するために、レリーフ形成層用塗布液(本発明の樹脂組成物)は、重合性化合物を含有することが好ましい。
ここで用いうる重合性化合物は、(成分C1)エチレン性不飽和基を分子内に1つ有する単官能モノマー、及び、同結合を分子内に2個以上有する多官能モノマー、(成分C2)加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種を有する化合物、に大別できる。これらの架橋性基を複数有する化合物は、架橋性を有し、レリーフ層のインクに対する耐性を高めるのに有効である。
(成分C)重合性化合物は、成分A以外の化合物であり、スルホンアミド基を有さず、また、マレイミド基をも有しないことが好ましい。
【0072】
<(成分C1)エチレン性不飽和基を分子内に1つ有する単官能モノマー、及び、同結合を分子内に2個以上有する多官能モノマー>
重合性化合物として用いられる、上記成分C1について説明する。
本発明に係るレリーフ形成層は、膜中に架橋構造を有することが好ましいために、単官能モノマーよりも多官能モノマーが好ましく使用される。これらの多官能モノマーの分子量は、200〜2,000であることが好ましい。ここで、エチレン性不飽和基は環状でない基が好ましい。
単官能モノマーとしては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)と一価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と一価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)と多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。
また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。
【0073】
さらに、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、さらにハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。
また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置換した化合物群を使用することも可能である。
重合性化合物としては、特に制限はなく、前記例示した化合物の他、公知の種々の化合物を用いることができ、例えば、特開2009−204962号公報の段落〔0098〕〜〔0124〕に記載の化合物などを使用してもよい。
【0074】
本発明においては、重合性化合物として、彫刻感度向上の観点から、分子内に硫黄原子を有する化合物を用いることが好ましい。
このように分子内に硫黄原子を有する重合性化合物としては、彫刻感度向上の観点から、特に、2つ以上のエチレン性不飽和結合を有し、そのうち2つのエチレン性不飽和結合間を連結する部位に炭素−硫黄結合を有する重合性化合物(以下、適宜、「含硫黄多官能モノマー」と称する。)を用いることが好ましい。
【0075】
本発明における含硫黄多官能モノマー中の炭素−硫黄結合を含んだ官能基としては、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホニル、スルホンアミド、チオカルボニル、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、スルファミン酸、チオアミド、チオカルバメート、ジチオカルバメート、又はチオ尿素を含む官能基が挙げられる。
また、含硫黄多官能モノマーにおける2つのエチレン性不飽和結合間を連結する炭素−硫黄結合を含有する連結基としては、−C−S−、−C−SS−、−NH(C=S)O−、−NH(C=O)S−、−NH(C=S)S−、及び−C−SO2−から選択される少なくとも1つのユニットを含む連結基であることが好ましい。
【0076】
また、含硫黄多官能モノマーの分子内に含まれる硫黄原子の数は1つ以上であれば特に制限は無く、目的に応じて、適宜選択することができるが、彫刻感度と塗布溶剤に対する溶解性のバランスの観点から、1個〜10個が好ましく、1個〜5個がより好ましく、1個〜2個がさらに好ましい。
一方、分子内に含まれるエチレン性不飽和部位の数は2つ以上であれば特に制限は無く、目的に応じて、適宜選択することができるが、架橋膜の柔軟性の観点で、2個〜10個が好ましく、2個〜6個がより好ましく、2個〜4個がさらに好ましい。
【0077】
本発明における含硫黄多官能モノマーの分子量としては、形成される膜の柔軟性の観点から、好ましくは120〜3,000であり、より好ましくは120〜1,500である。
また、本発明における含硫黄多官能モノマーは単独で用いてもよいが、分子内に硫黄原子を持たない多官能重合性化合物や単官能重合性化合物との混合物として用いてもよい。
分子内に硫黄原子を有する重合性化合物の具体例としては、例えば、特開2009-2
55510公報の段落0032〜0037に記載のものを例示でき、ここに記載の化合物を本発明に使用してもよい。
彫刻感度の観点からは、含硫黄多官能モノマー単独で用いる、若しくは、含硫黄多官能モノマーと単官能エチレン性モノマーとの混合物として用いる態様が好ましく、より好ましくは、含硫黄多官能モノマーと単官能エチレン性モノマーとの混合物として用いる態様である。
【0078】
成分Cとして使用しうる他の重合性化合物は、(成分C2)加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種を有する化合物から選択することができ、トリアルコキシシリル基を少なくとも1個、好ましくは2個以上、より好ましくは2〜6個有する化合物の中から選択することができる。このような重合性化合物について以下説明する。
【0079】
<(成分C2)加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種を有する化合物>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物に用いられる(成分C2)加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種を有する化合物〔以下、適宜(C2)化合物と称する。〕における「加水分解性シリル基」とは、加水分解性基を含むシリル基のことであり、加水分解性基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、ハロゲン基、アミド基、アセトキシ基、アミノ基、イソプロペノキシ基等を挙げることができる。シリル基は加水分解してシラノール基となり、シラノール基は脱水縮合してシロキサン結合が生成する。このような加水分解性シリル基又はシラノール基は下記式(1)で表されるものが好ましい。
【0080】
【化17】

【0081】
前記式(1)中、R1〜R3はそれぞれ独立に、アルコキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミド基、アセトキシ基、アミノ基、及び、イソプロペノキシ基からなる群より選択される加水分解性基、ヒドロキシル基、水素原子、又は、1価の有機基を表す。但し、R1〜R3の少なくともいずれか1つは、アルコキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミド基、アセトキシ基、アミノ基、及び、イソプロペノキシ基からなる群より選択される加水分解性基、又は、ヒドロキシル基を表す。
1〜R3が1価の有機基を表す場合の好ましい有機基としては、種々の有機溶媒への溶解性を付与できる観点から、炭素数1〜30のアルキル基が挙げられる。
上記式(1)中、ケイ素原子に結合する加水分解性基としては、特にアルコキシ基、ハロゲン原子が好ましい。
アルコキシ基としては、リンス性と耐刷性の観点から炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましい。より好ましくは炭素数1〜15のアルコキシ基、特に好ましくは炭素数1〜5、さらに好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基である。
また、ハロゲン原子として、F原子、Cl原子、Br原子、I原子が挙げられ、合成のしやすさ及び安定性の観点で、好ましくはCl原子及びBr原子が挙げられ、より好ましくはCl原子である。
【0082】
本発明における「(成分C2)加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種を有する化合物」は、前記式(1)で表される基を少なくとも1つ以上有する化合物であることが好ましく、少なくとも2つ以上有する化合物であることが好ましい。特に加水分解性シリル基を少なくとも2つ以上有する化合物が好ましく用いられる。即ち、分子内にケイ素原子を2つ以上有する化合物が好ましく用いられる。化合物中に含まれるケイ素原子の数は2以上6以下が好ましく、2又は3が最も好ましい。
上記加水分解性基は1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、式(1)中における加水分解性基の総個数は2又は3の範囲であるのが好ましい。特に3つの加水分解性基がケイ素原子に結合していることが好ましい。加水分解性基がケイ素原子に2個以上結合するときは、それらは互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0083】
上記アルコキシ基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ベンジルオキシ基などを挙げることができる。アルコキシ基の結合したアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基などのジメトキシシリル基;メトキシジメチルシリル基、エトキシジメチルシリル基などのモノアルコキシシリル基を挙げることができる。これらの各アルコキシ基を複数個組み合わせて用いてもよし、異なるアルコキシ基を複数個組み合わせて用いてもよい。
上記アリールオキシ基としては、具体的には、例えば、フェノキシ基などを挙げることができる。アリールオキシ基の結合したアリールオキシシリル基としては、例えば、トリフェノキシシリル基などのトリアリールオキシシリル基を挙げることができる。
【0084】
本発明における成分C2に属する化合物の好ましい例としては、複数の前記式(1)で表される基が連結基を介して結合している化合物が挙げられ、このような連結基としては、効果の観点からスルフィド基、イミノ基、又はウレイレン基を含んで構成される連結基が好ましい。
上記特定構造を有する連結基を含む成分C2に属する化合物の代表的な合成方法を以下に示す。
【0085】
(スルフィド基を含む連結基を有する加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種を有する化合物の合成法)
スルフィド基を含む連結基を有する(C2)化合物(以下、適宜、スルフィド連結基含有(C2)化合物と称する)の合成法は特には限定されないが、具体的には、例えば、ハロゲン化炭化水素基を有する(C2)化合物と硫化アルカリの反応、メルカプト基を有する(C2)化合物とハロゲン化炭化水素の反応、メルカプト基を有する(C2)化合物とハロゲン化炭化水素基を有する(C2)化合物の反応、ハロゲン化炭化水素基を有する(C2)化合物とメルカプタン類の反応、エチレン性不飽和二重結合を有する(C2)化合物とメルカプタン類の反応、エチレン性不飽和二重結合を有する(C2)化合物とメルカプト基を有する(C2)化合物の反応、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物とメルカプト基を有する(C2)化合物の反応、ケトン類とメルカプト基を有する(C2)化合物の反応、ジアゾニウム塩とメルカプト基を有する(C2)化合物の反応、メルカプト基を有する(C2)化合物とオキシラン類との反応、メルカプト基を有する(C2)化合物とオキシラン基を有する(C2)化合物の反応、メルカプタン類とオキシラン基を有する(C2)化合物の反応、及び、メルカプト基を有する(C2)化合物とアジリジン類との反応等から選択される合成法のいずれかにより合成される。
【0086】
(イミノ基を含む連結基を有する加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種を有する化合物の合成法)
イミノ基を含む連結基を有する加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種を有する化合物(以下、適宜、イミノ連結基含有(C2)化合物と称する。)の合成法は特には限定されないが、具体的には、例えば、アミノ基を有する(C2)化合物とハロゲン化炭化水素の反応、アミノ基を有する(C2)化合物とハロゲン化炭化水素基を有する(C2)化合物の反応、ハロゲン化炭化水素基を有する(C2)化合物とアミン類の反応、アミノ基を有する(C2)化合物とオキシラン類との反応、アミノ基を有する(C2)化合物とオキシラン基を有する(C2)化合物の反応、アミン類とオキシラン基を有する(C2)化合物の反応、アミノ基を有する(C2)化合物とアジリジン類との反応、エチレン性不飽和二重結合を有する(C2)化合物とアミン類の反応、エチレン性不飽和二重結合を有する(C2)化合物とアミノ基を有する(C2)化合物の反応、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物とアミノ基を有する(C2)化合物の反応、アセチレン性不飽和三重結合を有する化合物とアミノ基を有する(C2)化合物の反応、イミン性不飽和二重結合を有する(C2)化合物と有機アルカリ金属化合物の反応、イミン性不飽和二重結合を有する(C2)化合物と有機アルカリ土類金属化合物の反応、及び、カルボニル化合物とアミノ基を有する(C2)化合物の反応等から選択される合成法のいずれかにより合成される。
【0087】
(ウレイレン基を含む連結基を有する加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種を有する化合物の合成法)
ウレイレン基を含む連結基を有する加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種を有する化合物(以下、適宜、ウレイレン連結基含有(C2)化合物と称する。)の合成法は特には限定されないが、具体的には、例えば、アミノ基を有する(C2)化合物とイソシアン酸エステル類の反応、アミノ基を有する(C2)化合物とイソシアン酸エステルを有する(C2)化合物の反応、及び、アミン類とイソシアン酸エステルを有する(C2)化合物の反応等から選択される合成法のいずれかにより合成される。
【0088】
本発明における(C2)化合物としては、シランカップリング剤を用いることが好ましい。
<シランカップリング剤>
以下、本発明における(C2)化合物として好適なシランカップリング剤について説明する。
本発明においては、Si原子に、アルコキシ基又はハロゲン基が少なくとも1つ直接結合した官能基をシランカップリング基と呼び、このシランカップリング基を分子中に1つ以上有している化合物をシランカップリング剤と称する。シランカップリング基は、Si原子にアルコキシ基又はハロゲン原子が2つ以上直接結合したものが好ましく、3つ以上直接結合したものが特に好ましい。
本発明の樹脂組成物においては、(C2)化合物における加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種、好ましくは、シランカップリング剤におけるシランカップリング基が、(成分B)バインダーポリマー中の反応性官能基、例えば、水酸基(−OH)であれば、この水酸基とアルコール交換反応を起こし、架橋構造を形成する。その結果、バインダーポリマーの分子同士がシランカップリング剤を介して3次元的に架橋される。(成分B)バインダーポリマー中の、(C2)化合物における加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種と反応して架橋構造を形成しうる反応性の官能基については、以下に詳述する。
本発明における好ましい態様であるシランカップリング剤においては、Si原子に直接結合している官能基として、アルコキシ基及びハロゲン原子の少なくとも1つ以上の官能基を有することが必須であり、化合物の取り扱いやすさの観点からは、アルコキシ基を有するものが好ましい。
ここで、アルコキシ基としては、リンス性と耐刷性の観点から炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましい。より好ましくは炭素数1〜15のアルコキシ基、特に好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基である。
また、ハロゲン原子として、F原子、Cl原子、Br原子、I原子が挙げられ、合成のしやすさ及び安定性の観点で、好ましくはCl原子及びBr原子が挙げられ、より好ましくはCl原子である。
【0089】
本発明におけるシランカップリング剤は、膜の架橋度と柔軟性のバランスを良好に保つ観点で、上記シランカップリング基を分子内に1個以上10個以下含むことが好ましく、より好ましくは1個以上5個以下であり、特に好ましくは2個以上4個以下である。
シランカップリング基が2つ以上ある場合には、シランカップリング基同士が連結基で連結されていることが好ましい。連結基としては、ヘテロ原子や炭化水素などの置換基を有してもよい2価以上の有機基が挙げられ、彫刻感度が高い点ではヘテロ原子(N、S、O)を含む態様が好ましく、特に好ましくはS原子を含む連結基である。
このような観点からは、本発明におけるシランカップリング剤として、アルコキシ基としてメトキシ基又はエトキシ基、中でも、メトキシ基がSi原子に結合したシランカップリング基を分子内に2個有し、且つ、これらシランカップリング基が、ヘテロ原子(特に好ましくはS原子)を含むアルキレン基を介して結合している化合物が好適である。より具体的には、スルフィド基を含む連結基を有するものが好ましい。
また、シランカップリング基同士を連結する連結基の他の好ましい態様として、オキシアルキレン基を有する連結基が挙げられる。連結基がオキシアルキレン基を含むことで、レーザ彫刻後の彫刻カスのリンス性が向上する。オキシアルキレン基としては、好ましくはオキシエチレン基であり、より好ましくは、オキシエチレン基が複数連結されたポリオキシエチレン鎖である。ポリオキシエチレン鎖におけるオキシエチレン基の総数としては、2〜50が好ましく、3〜30がより好ましく、4〜15が特に好ましい。
【0090】
本発明に適用しうるシランカップリング剤の具体例を以下に示す。本発明におけるシランカップリング剤としては、例えば、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)デカン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ウレア、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができ、そのほかにも、以下の式で示す化合物が好ましいものとして挙げられるが、本発明はこれらの化合物に制限されるものではない。
【0091】
【化18】

【0092】
【化19】

【0093】
【化20】

【0094】
【化21】

【0095】
【化22】

【0096】
前記各式中、Rは以下の構造から選択される部分構造を表す。分子内に複数のR及びR1が存在する場合、これらは互いに同じでも異なっていてもよく、合成適性上は、同一であることが好ましい。
【0097】
【化23】

【0098】
【化24】

【0099】
前記各式中、Rは以下に示す部分構造を表す。R1は前記したのと同義である。分子内に複数のR及びR1が存在する場合、これらは互いに同じでも異なっていてもよく、合成適性上は、同一であることが好ましい。
【0100】
【化25】

【0101】
(A)化合物は、適宜合成して得ることも可能であるが、市販品を用いることがコストの面から好ましい。(A)化合物としては、例えば、信越化学工業(株)、東レ・ダウコーニング(株)、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ(株)、チッソ(株)等から市販されているシラン製品、シランカップリング剤などの市販品がこれに相当するため、本発明の組成物に、これら市販品を、目的に応じて適宜選択して使用してもよい。
【0102】
本発明におけるシランカップリング剤として、前記化合物の他、1種のシランを用いて得られた部分加水分解縮合物、及び2種以上のシランを用いて得られた部分共加水分解縮合物を用いることができる。以下、これらの化合物を「部分(共)加水分解縮合物」と称することがある。
【0103】
このような部分(共)加水分解縮合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、メチルトリス(メトキシプロポキシ)シラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、へキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、シアノエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシラン又はアセチルオキシシラン、エトキサリルオキシシラン等のアシロキシシランからなるシラン化合物から選択される1種以上を前駆体として用いて得られた部分(共)加水分解縮合物を挙げることができる。
【0104】
これらの部分(共)加水分解縮合物前駆体としてのシラン化合物の中でも、汎用性、コスト面、膜の相溶性の観点から、ケイ素上の置換基としてメチル基及びフェニル基から選択される置換基を有するシラン化合物であることが好ましく、具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランが好ましい前駆体として例示される。
【0105】
この場合、部分(共)加水分解縮合物としては、上記したようなシラン化合物の2量体(シラン化合物2モルに水1モルを作用させてアルコール2モルを脱離させ、ジシロキサン単位としたもの)〜100量体、好ましくは2量体〜50量体、さらに好ましくは2量体〜30量体としたものが好適に使用できるし、2種以上のシラン化合物を原料とする部分(共)加水分解縮合物を使用することも可能である。
【0106】
なお、このような部分(共)加水分解縮合物はシリコーンアルコキシオリゴマーとして市販されているものを使用してもよく(例えば、信越化学工業(株)などから市販されている。)、また、常法に基づき、加水分解性シラン化合物に対し当量未満の加水分解水を反応させた後に、アルコール、塩酸等の副生物を除去することによって製造したものを使用してもよい。製造に際しては、前駆体となる原料の加水分解性シラン化合物として、例えば、上記したようなアルコキシシラン類やアシロキシシラン類を使用する場合は、塩酸、硫酸等の酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、トリエチルアミン等のアルカリ性有機物質等を反応触媒として部分加水分解縮合すればよく、クロロシラン類から直接製造する場合には、副生する塩酸を触媒として水及びアルコールを反応させればよい。
【0107】
本発明の樹脂組成物における成分C2の化合物、好ましくはシランカップリング剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物中に含まれる成分Cの合計含有量は、固形分換算で、0.1〜80重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜40重量%の範囲であり、最も好ましくは5重量%〜30重量%である。
【0108】
本発明に係るレリーフ形成層においては、含硫黄多官能モノマーをはじめとする重合性化合物を用いることにより、膜物性、例えば、脆性、柔軟性などを調整することもできる。
また、レリーフ形成層中の(成分C)重合性化合物の総含有量は、架橋膜の柔軟性や脆性の観点から、組成物の全固形分に対して、5〜50重量%が好ましく、5〜30重量%の範囲がより好ましい。
なお、含硫黄多官能モノマーと他の重合性化合物とを併用する場合、全重合性化合物中の含硫黄多官能モノマーの量は、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。
【0109】
<(成分D)重合開始剤>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物をレリーフ形成層作製に用いる場合には、さらに(成分D)重合開始剤を含有することが好ましい。
本発明に用いることができる(成分D)重合開始剤は架橋触媒として機能する以下の3種類の化合物群から選択できる。すなわち、(成分D−1)アルコール交換反応触媒、(成分D−2)重合開始剤、又は、(成分D−3)エポキシ基及び/又はオキセタニル基と反応して架橋構造を形成しうる硬化剤を含むことが好ましい。
【0110】
(成分D−1)アルコール交換反応触媒
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、架橋構造形成を促進するため、(成分D−1)アルコール交換反応触媒を含有することが好ましく、加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物との組み合わせとして(成分D−1)アルコール交換反応触媒を含有することがより好ましい。
アルコール交換反応触媒は、シランカップリング反応において一般に用いられる反応触媒であれば、限定なく適用できる。
以下、代表的なアルコール交換反応触媒である酸性触媒又は塩基性触媒、及び、金属錯体触媒について順次説明する。
【0111】
−酸性触媒又は塩基性触媒−
酸性触媒又は塩基性触媒としては、酸又は塩基性化合物をそのまま用いるか、あるいは水又は有機溶剤などの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒と称する。)を用いる。溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、あるいは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。
酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素又は置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、リン酸、ヘテロポリ酸、無機固体酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類酸化物、第四級アンモニウム塩化合物、四級ホスホニウム塩化合物などが挙げられる。
【0112】
本発明に用いることができる塩基性触媒として、アミン類の例を以下に示す。
アミン類としては、以下に示す(a)〜(e)の化合物が挙げられる。
(a)ヒドラジン等の水素化窒素化合物;
(b)脂肪族、芳香族又は脂環式の第一級、第二級又は第三級のモノアミン又はジアミン、トリアミン等のポリアミン;
(c)縮合環を含む環状アミンであり少なくとも1つの窒素原子が環骨格に含まれるモノアミン又はポリアミン;
(d)アミノ酸類、アミド類、アルコールアミン類、エーテルアミン類、イミド類又はラクタム類等の含酸素アミン;
(e)O、S、Se等のヘテロ原子を有する含ヘテロ元素アミン;
【0113】
ここで、第二級又は第三級アミンの場合には、窒素原子(N)に対する各々の置換基は、互いに同一であっても、各々異なってもよく、また、これらの置換基のうち、1以上が異なり、その他が同一であってもよい。
アミン類としては、具体的には、ヒドラジン、
第一級アミンとしては;モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン類、モノブチルアミン類、モノペンチルアミン類、モノヘキシルアミン類、モノヘプチルアミン類、ビニルアミン、アリルアミン、ブテニルアミン類、ペンテニルアミン類、ヘキセニルアミン類、ペンタジエニルアミン類、ヘキサジエニルアミン類、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロオクチルアミン、p−メンチルアミン、シクロペンテニルアミン類、シクロヘキセニルアミン類、シクロヘキサジエニルアミン類、アニリン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、ナフチルメチルアミン、トルイジン、トリレンジアミン類、アニゾール、エチレンジアミン、エチレントリアミン、モノエタノールアミン、アミノチオフェン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、アミノアセトンなどが挙げられる。
【0114】
また、第二級アミンとしては;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン類、ジブチルアミン類、ジペンチルアミン類、ジヘキシルアミン類、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン類、メチルブチルアミン類、メチルペンチルアミン類、メチルヘキシルアミン類、エチルプロピルアミン類、エチルブチルアミン類、エチルペンチルアミン類、プロピルブチルアミン類、プロピルペンチルアミン類、プロピルヘキシルアミン類、ブチルペンチルアミン類、ペンチルヘキシルアミン類、ジビニルアミン、ジアリルアミン、ジブテニルアミン類、ジペンテニルアミン類、ジヘキセニルアミン類、メチルビニルアミン、メチルアリルアミン、メチルブテニルアミン類、メチルペンテニルアミン類、メチルヘキセニルアミン類、エチルビニルアミン、エチルアリルアミン、エチルブテニルアミン、エチルペンテニルアミン類、エチルヘキセニルアミン類、プロピルビニルアミン類、プロピルアリルアミン類、プロピルブテニルアミン類、プロピルペンテニルアミン類、プロピルヘキセニルアミン類、ブチルビニルアミン類、ブチルアリルアミン類、ブチルブテニルアミン類、ブチルペンテニルアミン類、ブチルヘキセニルアミン類、ビニルアリルアミン、ビニルブテニルアミン類、ビニルペンテニルアミン類、ビニルヘキセニルアミン類、アリルブテニルアミン類、アリルペンテニルアミン類、アリルヘキセニルアミン類、ブテニルペンテニルアミン類、ブテニルヘキセニルアミン類、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシル、メチルシクロペンチルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、メチルシクロオクチルアミン、エチルシクロペンチルアミン、エチルシクロヘキシルアミン、エチルシクロオクチルアミン、プロピルシクロペンチルアミン類、プロピルシクロヘキシルアミン類、ブチルシクロペンチルアミン類、ブチルシクロヘキシルアミン類、ヘキシルシクロペンチルアミン類、ヘキシルシクロヘキシルアミン類、ヘキシルシクロオクチルアミン類、ビニルシクロペンチルアミン、ビニルシクロヘキシルアミン、ビニルシクロオクチルアミン、アリルシクロペンチルアミン、アリルシクロヘキシルアミン、アリルシクロオクチルアミン、ブテニルシクロペンチルアミン類、ブテニルシクロヘキシルアミン類、ブテニルシクロオクチルアミン類、ジシクロペンテニルアミン類、ジシクロヘキセニルアミン類、ジシクロオクテニルアミン類、メチルシクロペンテニルアミン類、メチルシクロヘキセニルアミン類、メチルシクロオクテニルアミン類、エチルシクロペンテニルアミン類、
【0115】
エチルシクロヘキセニルアミン類、エチルシクロオクテニルアミン類、プロピルシクロペンテニルアミン類、プロピルシクロヘキセニルアミン類、ブチルシクロペンテニルアミン類、ブチルシクロヘキセニルアミン類、ビニルシクロペンテニルアミン類、ビニルシクロヘキセニルアミン類、ビニルシクロオクテニルアミン類、アリルシクロペンテニルアミン類、アリルシクロヘキセニルアミン類、ブテニルシクロペンテニルアミン類、ブテニルシクロヘキセニルアミン類、ジシクロペンタジエニルアミン、ジシクロヘキサジエニルアミン類、ジシクロオクタジエニルアミン類、メチルシクロペンタジエニルアミン、メチルシクロヘキサジエニルアミン類、エチルシクロペンタジエニルアミン、エチルシクロヘキサジエニルアミン類、プロピルシクロペンタジエニルアミン類、プロピルシクロヘキサジエニルアミン類、ジシクロオクタトリエニルアミン類、メチルシクロオクタトリエニルアミン類、エチルシクロオクタトリエニルアミン類、ビニルシクロペンタジエニルアミン、ビニルシクロヘキサジエニルアミン類、アリルシクロペンタジエニルアミン、アリルシクロヘキサジエニルアミン類、ジフェニルアミン、ジトリルアミン類、ジベンジルアミン、ジナフチルアミン類、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリン類、N−ブチルアニリン類、N−メチルトルイジン、N−エチルトルイジン、N−プロピルトルイジン類、N−ブチルトルイジン類、N−メチルベンジルアミン、N−エチルベンジルアミン類、N−プロピルベンジルアミン類、N−ブチルベンジルアミン類、N−メチルナフチルアミン類、N−エチルナフチルアミン類、N−プロピルナフチルアミン類、N−ビニルアニリン、N−アリルアニリン、N−ビニルベンジルアミン、N−アリルベンジルアミン、N−ビニルトルイジン、N−アリルトルイジン、フェニルシクロペンチルアミン、フェニルシクロヘキシルアミン、フェニルシクロオクチルアミン、フェニルシクロペンテニルアミン、フェニルシクロヘキセニルアミン、フェニルシクロペンタジエニルアミン、N−メチルアニゾール、N−エチルアニソール、N−ビニルアニソール、N−アリルアニソール、N−メチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルトリレンジアミン類、N,N’−ジエチルトリレンジアミン類、N−メチルエチレントリアミン、N,N’−ジメチルエチレントリアミン、ピロール、ピロリジン、イミダゾール、ピペリジン、ピペラジン、メチルピロール類、メチルピロリジン類、メチルイミダゾール類、メチルピペリジン類、メチルピペラジン類、エチルピロール類、エチルピロリジン類、エチルイミダゾール類、エチルピペリジン類、エチルピペラジン類、フタルイミド、マレインイミド、カプロラクタム、ピロリドン、モルホリン、N−メチルグリシン、N−エチルグリシン、N−メチルアラニン、N−エチルアラニン、N−メチル−アミノチオフェン、N−エチルアミノチオフェン、2,5−ピペラジンジオン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、プリンなどが挙げられる。
【0116】
また、第三級アミンとしては;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン類、トリブチルアミン類、トリペンチルアミン類、トリヘキシルアミン類、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン類、ジメチルブチルアミン類、ジメチルペンチルアミン類、ジメチルヘキシルアミン類、ジエチルプロピルアミン類、ジエチルブチルアミン類、ジエチルペンチルアミン類、ジエチルヘキシルアミン類、ジプロピルブチルアミン類、ジプロピルペンチルアミン類、ジプロピルヘキシルアミン類、ジブチルペンチルアミン類、ジブチルヘキシルアミン類、ジペンチルヘキシルアミン類、メチルジエチルアミン、メチルジプロピルアミン類、メチルジブチルアミン類、メチルジペンチルアミン類、メチルジヘキシルアミン類、エチルジプロピルアミン類、エチルジブチルアミン類、エチルジペンチルアミン類、エチルジヘキシルアミン類、プロピルジブチルアミン類、プロピルジペンチルアミン類、プロピルジヘキシルアミン類、ブチルジペンチルアミン類、ブチルジヘキシルアミン類、ペンチルジヘキシルアミン類、メチルエチルプロピルアミン類、メチルエチルブチルアミン類、メチルエチルヘキシルアミン類、メチルプロピルブチルアミン類、メチルプロピルヘキシルアミン類、エチルプロピルブチルアミン、エチルブチルペンチルアミン類、エチルブチルヘキシルアミン類、プロピルブチルペンチルアミン類、プロピルブチルヘキシルアミン類、ブチルペンチルヘキシルアミン類、トリビニルアミン、トリアリルアミン、トリブテニルアミン類、トリペンテニルアミン類、トリヘキセニルアミン類、ジメチルビニルアミン、ジメチルアリルアミン、ジメチルブテニルアミン類、ジメチルペンテニルアミン類、ジエチルビニルアミン、ジエチルアリルアミン、ジエチルブテニルアミン類、ジエチルペンテニルアミン類、ジエチルヘキセニルアミン類、ジプロピルビニルアミン類、ジプロピルアリルアミン類、ジプロピルブテニルアミン類、メチルジビニルアミン、メチルジアリルアミン、メチルジブテニルアミン類、エチルジビニルアミン、エチルジアリルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリシクロオクチルアミン、トリシクロペンテニルアミン、トリシクロヘキセニルアミン、トリシクロペンタジエニルアミン、トリシクロヘキサジエニルアミン類、ジメチルシクロペンチルアミン、ジエチルシクロペンチルアミン、ジプロピルシクロペンチルアミン類、
【0117】
ジブチルシクロペンチルアミン類、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチルシクロヘキシルアミン、ジプロピルシクロヘキシルアミン類、ジメチルシクロペンテニルアミン類、ジエチルシクロペンテニルアミン類、ジプロピルシクロペンテニルアミン類、ジメチルシクロヘキセニルアミン類、ジエチルシクロヘキセニルアミン類、ジプロピルシクロヘキセニルアミン類、メチルジシクロペンチルアミン、エチルジシクロペンチルアミン、プロピルシクロペンチルアミン類、メチルジシクロヘキシルアミン、エチルジシクロヘキシルアミン、プロピルシクロヘキシルアミン類、メチルジシクロペンテニルアミン類、エチルジシクロペンテニルアミン類、プロピルジシクロペンテニルアミン類、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルトルイジン類、N,N−ジメチルナフチルアミン類、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジエチルベンジルアミン、N,N−ジエチルトルイジン類、N,N−ジエチルナフチルアミン類、N,N−ジプロピルアニリン類、N,N−ジプロピルベンジルアミン類、N,N−ジプロピルトルイジン類、N,N−ジプロピルナフチルアミン類、N,N−ジビニルアニリン、N,N−ジアリルアニリン、N,N−ジビニルトルイジン類、N,N−ジアリルアニリン、ジフェニルメチルアミン、ジフェニルエチルアミン、ジフェニルプロピルアミン類、ジベンジルメチルアミン、ジベンジルエチルアミン、ジベンジルシクロヘキシルアミン、ジベンジルビニルアミン、ジベンジルアリルアミン、ジトリルメチルアミン類、ジトリルエチルアミン類、ジトリルシクロヘキシルアミン類、ジトリルビニルアミン類、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリ(トリル)アミン類、トリナフチルアミン類、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルトリレンジアミン類、N,N,N’,N’−テトラエチルトリレンジアミン類、N−メチルピロール、N−メチルピロリジン、N−メチルイミダゾール、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピロール、N−メチルピロリジン、N−エチルイミダゾール、N,N’−ジエチルピペラジン、N−エチルピペリジン、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、キノリン、キナゾリン、キヌクリジン、N−メチルピロリドン、N−メチルモルホリン、N−エチルピロリドン、N−エチルモルホリン、N,N−ジメチルアニソール、N,N−ジエチルアニソール、N,N−ジメチルグリシン、N,N−ジエチルグリシン、N,N−ジメチルアラニン、N,N−ジエチルアラニン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノチオフェン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ヘキサメチレンテトラミンなどが挙げられる。
従って、前記塩基性触媒として用いることができるアミン類は、脂肪族又は脂環式、飽和又は不飽和の炭化水素基;芳香族炭化水素基;含酸素及び/又は含イオウ及び/又は含セレン炭化水素基等が1以上の窒素原子と結合した化合物であることが好ましい。熱架橋後の膜強度の観点から、アミンとして好ましいpKaH(共役酸の酸解離定数)の範囲としては、7以上が好ましく、10以上がより好ましい。
【0118】
前記酸性触媒又は塩基性触媒の中でも、膜中でのアルコール交換反応を速やかに進行させる観点で、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ピリジニウム p−トルエンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホン酸、リン酸、ホスホン酸、酢酸、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジンが好ましく、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンが特に好ましい。
【0119】
−金属錯体触媒−
前記アルコール交換反応触媒として用いることができる金属錯体触媒としては、周期律表の2、4、5及び13族から選ばれる金属元素と、β−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール及びエノール性活性水素化合物よりなる群から選ばれたオキソ又はヒドロキシ酸素化合物とから構成されるものであることが好ましい。
さらに、構成金属元素の中では、Mg、Ca、Sr、Baなどの2族元素、Ti、Zrなどの4族元素、V、N、Taなどの5族元素、及び、Al、Gaなどの13族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al又はTiから得られる錯体が優れており、好ましい。例えば、オルトチタン酸エチルなどが挙げられる。
上記金属錯体の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβ−ジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸、酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基又はカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0120】
好ましい配位子はアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基又はカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0121】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、アセチルアセトン、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンが特に好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体における配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲン化物イオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0122】
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アクア錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が特に好ましい。
【0123】
(成分D−2)重合開始剤
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、架橋構造形成を促進するため、(成分D−2)重合開始剤を含有することが好ましく、(成分C1)多官能エチレン性不飽和化合物及び(成分D−2)重合開始剤を含有することがより好ましい。
重合開始剤は、当業者間で公知のものを制限なく使用することができる。以下、好ましい重合開始剤であるラジカル重合開始剤について詳述するが、本発明はこれらの記述により制限を受けるものではない。
【0124】
本発明において、好ましいラジカル重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(l)アゾ系化合物等が挙げられる。以下に、上記(a)〜(l)の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0125】
本発明においては、彫刻感度と、レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に適用した際にはレリーフエッジ形状を良好とするといった観点から、(c)有機過酸化物及び(l)アゾ系化合物がより好ましく、(c)有機過酸化物が特に好ましい。
【0126】
前記(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、及び(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物としては、特開2008−63554号公報の段落0074〜0118に挙げられている化合物を好ましく用いることができる。
また、(c)有機過酸化物及び(l)アゾ系化合物としては、以下に示す化合物が好ましい。
【0127】
(c)有機過酸化物
本発明に用いうるラジカル重合開始剤として好ましい(c)有機過酸化物としては、3,3’,4,4’−テトラ−(ターシャリーブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(ターシャリーアミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(ターシャリーヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(ターシャリーオクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−ターシャリーブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0128】
(l)アゾ系化合物
本発明に用いうるラジカル重合開始剤として好ましい(l)アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロピオニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等を挙げることができる。
【0129】
なお、本発明においては、前記(c)有機過酸化物が本発明における重合開始剤として、膜(レリーフ形成層)の架橋性の観点から好ましく、さらに、予想外の効果として、彫刻感度向上の観点で特に好ましいことを見出した。
【0130】
彫刻感度の観点からは、この(c)有機過酸化物と、(成分B)バインダーポリマーや(B−2)併用バインダーポリマーとしてガラス転移温度が常温以上のポリマーとを組み合わせた態様が特に好ましい。
これは、有機過酸化物を用いてレリーフ形成層を熱架橋により硬化させる際、ラジカル発生に関与しない未反応の有機過酸化物が残存するが、残存した有機過酸化物は、自己反応性の添加剤として働き、レーザー彫刻時に発熱的に分解する。その結果、照射されたレーザーエネルギーに発熱分が加算されるので彫刻感度が高くなったと推定される。
特に(成分B)バインダーポリマーのガラス転移温度が室温以上の場合、有機過酸化物の分解に由来して発生した熱が、バインダーポリマーに効率よく伝達され、かつ(成分B)バインダーポリマーや(B−2)併用バインダーポリマー自体の熱分解に有効に利用されるためより高感度化されるものと推定している。
なお、光熱変換剤の説明において詳述するが、この効果は、光熱変換剤としてカーボンブラックを用いる場合に著しい。これは、カーボンブラックから発生した熱が(c)有機過酸化物にも伝達される結果、カーボンブラックだけでなく有機過酸化物からも発熱するため、(成分B)バインダーポリマー等の分解に使用されるべき熱エネルギーの発生が相乗的に生じるためと考えている。
【0131】
(成分D−3)エポキシ基及び/又はオキセタニル基と反応して架橋構造を形成しうる硬化剤
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、架橋構造形成を促進するため、成分A中のエポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する化合物と反応して架橋構造を形成しうる硬化剤を含有することが好ましい。
成分D−3は、反応の進行が速く、高強度な膜が得られる点から、第一級アミノ基及び酸無水物基よりなる群から選ばれた官能基を1つ以上有する化合物、又は、第二級アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、フェノール性ヒドロキシル基及びヒドロキシル基よりなる群から選ばれた官能基を2つ以上有する化合物であることが好ましく、第一級アミノ基及び酸無水物基よりなる群から選ばれた官能基を1つ以上有する化合物、又は、第二級アミノ基及びメルカプト基よりなる群から選ばれた官能基を2つ以上有する化合物であることがより好ましく、第一級アミノ基及び酸無水物基よりなる群から選ばれた官能基を1つ以上有する化合物であることがさらに好ましい。
【0132】
第一級アミノ基を少なくとも1つ有する化合物としては、特に限定されるものではなく、種々のものを用いることができる。
例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、オレイルアミン、2−エチルヘキシルアミン等の第一級アルキルアミン類、アニリン、4−アミノアセトフェノン、p−アニシジン、2−アミノアントラセン、1−ナフチルアミン等の第一級アニリン類、モノエタノールアミン、2−エトキシエタノールアミン、2−ヒドロキシプロパノールアミン等の第一級アルカノールアミン類、ヘキサンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン類、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン類、1,4−フェニレンジアミン、2,3−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノアントラキノン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等のポリアニリン類、ポリアミン類とアルデヒド化合物と一価又は多価フェノール類との重縮合物からなるマンニッヒ塩基、ポリアミン類とポリカルボン酸やダイマー酸との反応により得られるポリアミドポリアミン類が挙げられる。
これらの中でも、高度な三次元架橋を形勢するのに適していることから、脂肪族ポリアミン類、脂環式ポリアミン類、ポリアニリン類が好ましく、特にヘキサンジアミン、トリエチレンテトラミン、m−キシレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンがより好ましい。
【0133】
第二級アミノ基を少なくとも2つ有する化合物としては、特に限定されるものではなく、種々のものを用いることができる。
例えば、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、2,5−ジメチルピペラジン、N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、ピペラジン、ホモピペラジン、2−メチルピペラジン等が挙げられる。
【0134】
酸無水物基を少なくとも1つ有する化合物としては、特に限定されるものではなく、種々のものを用いることができる。
例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水ナジック酸、水素化無水ナジック酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの酸無水物化合物を使用することができる。これらの中でも、特に好ましくは無水メチルヘキサヒドロフタル酸を用いることで、硬化収縮が少なく、透明性を有し、高強度な硬化膜が得られる。
【0135】
メルカプト基を少なくとも2つ有する化合物としては、特に限定されるものではなく、種々のものを用いることができる。
例えば、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,7−ヘプタンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,12−ドデカンジチオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジチオール、3−メチル−1,5−ペンタンジチオール、2−メチル−1,8−オクタンジチオール等のアルカンジチオールや、1,4−シクロヘキサンジチオール等のシクロアルカンジチオールや、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2−メルカプトエチル)ジスルフィド、2,2’−(エチレンジチオ)ジエタンチオール等の炭素鎖中にヘテロ原子を含有するアルカンジチオールや、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジオキサン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン等の炭素鎖中にヘテロ原子及び脂環構造を含有するアルカンジチオールや、1,1,1−トリス(メルカプトメチル)エタン、2−エーテル−2−メルカプトメチル−1,3−プロパンジチオール、1,8−メルカプト−4−メルカプトメチル−3,6−チアオクタン等のアルカントリチオールや、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、3,3’−チオビス(プロパン−1,2−ジチオール)、2,2’−チオビス(プロパン−1,3−ジチオール)等のアルカンテトラチオール等が挙げられる。
【0136】
カルボキシル基を少なくとも2つ有する化合物としては、特に限定されるものではなく、種々のものを用いることができる。
例えば、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、ナジック酸、水素化ナジック酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0137】
フェノール性ヒドロキシ基を少なくとも2つ有する化合物としては、特に限定されるものではなく、種々のものを用いることができる。
例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型樹脂等の多官能型フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物;ビスフェノールS等の硫黄原子含有型フェノール樹脂等が挙げられる。
【0138】
ヒドロキシル基を少なくとも2つ有する化合物としては、特に限定されるものではなく、種々のものを用いることができる。
例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレンジオール、1,3−テトラメチレンジオール、2−メチル−1,3−トリメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4−シクロヘキサンジオール等)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトールなど)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール類などが挙げられる。
【0139】
本発明における(成分D)重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用することも可能である。
レリーフ形成層中の(成分D)重合開始剤の含有量は、レリーフ形成層の固形分全量に対し0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜3重量%がより好ましい。重合開始剤の含有量を0.01重量%以上とすることで、これを添加した効果が得られ、架橋性レリーフ形成層の架橋が速やかに行われる。また、含有量を10重量%以下とすることで他成分が不足することがなく、レリーフ印刷版として使用するに足る耐刷性が得られるためである。
【0140】
<(成分E)可塑剤>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、可塑剤を含有することが好ましい。可塑剤は、レーザー彫刻用樹脂組成物により形成された膜を柔軟化する作用を有するものであり、バインダーポリマーに対して相溶性のよいものである必要がある。
可塑剤としては、例えば、クエン酸トリブチル、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート等や、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)好ましく用いられる。
【0141】
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、成分Eを1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物における成分Eの含有量は、ガラス転移温度を室温以下に低下させるという観点から、固形分換算で、樹脂組成物の総重量を100重量%として、1〜50重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましく、20〜30重量%がさらに好ましい。
【0142】
<(成分F)香料>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分F)香料を含有することが好ましい。香料は、レリーフ印刷版原版の製造時やレーザー彫刻時の臭気を低減させるのに有効である。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分F)香料を含有することにより、製造中に塗布した液状樹脂組成物を乾燥する際、揮発する溶剤臭をマスクすることができる。また、レーザー彫刻する際に発生するアミン臭やケトン臭、アルデヒド臭、樹脂の鼻につく焦げ臭さなどの不快臭をマスクすることができる。
また、香料としては、香気を有するだけでなく、アミノ基やカルボニル基、アルデヒド基を有する化合物に対し良好に溶解するものであることが好ましい。効果的に臭気を低減し、さらに効果的に作用するには、香料成分がアミノ基やカルボニル基、アルデヒド基を有する化合物に対し良好に溶解する化学構造を有することが好ましい。溶解性においては、直鎖状骨格よりも分岐状骨格がよく、中でも、香料が、炭化水素化合物、アルデヒド化合物、ケトン化合物、エステル化合物、又は、アルコール化合物の場合、良好な溶解性を示す。さらには、環状ケトン化合物、環状エステル化合物の場合は、当該化合物の炭素数が4〜20であるときに良好な溶解性を示す。また、これらの構造を有する化合物は、硫黄の臭気を低減することにも効果的であるため、硫黄原子を有する化合物を含む樹脂組成物においても有用である。
【0143】
香料としては、公知の香料を適宜選択して用いることができ、香料を1種単独で用いることもできるし、複数の香料を組み合わせて使用することもできる。
香料は、樹脂組成物に使用する前記架橋剤、前記ポリマー、及び、溶剤等によって、適宜選択することが好ましく、公知の香料を組み合わせて最適化することが好ましい。香料としては、合成香料−化学と商品知識−(印藤元一著、(株)化学工業日報社発行)、香料化学入門(渡辺昭次著、(株)培風館出版)、香りの百科(日本香料協会編、(株)朝倉書店出版)、香料化学総覧II 単離香料・合成香料・香料の応用((株)廣川書店発行)に記載されている香料が挙げられる。
また、香料としては、天然香料、合成香料のいずれも使用することができる。
【0144】
香料の分子構造に着目すれば、香料としては、脂肪族炭化水素、テルペン炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素類、脂肪族アルコール、テルペンアルコール、芳香族アルコール等のアルコール類、脂肪族エーテル、芳香族エーテル等のエーテル類、脂肪族オキサイド、テルペン類のオキサイド等のオキサイド類、脂肪族アルデヒド、テルペン系アルデヒド、脂環式アルデヒド等、チオアルデヒド、芳香族アルデヒド等のアルデヒド類、脂肪族ケトン、テルペンケトン、脂環式ケトン、脂肪族環状ケトン、非ベンゼン系芳香族ケトン、芳香族ケトン等のケトン類、アセタール類、ケタール類、フェノール類、フエノールエーテル類、脂肪酸、テルペン系カルボン酸、脂環式カルボン酸、芳香族カルボン酸等の酸類、酸アマイド類、脂肪族ラクトン、大環状ラクトン、テルペン系ラクトン、脂環式ラクトン、芳香族ラクトン等のラクトン類、脂肪族エステル、フラン系カルボン酸族エステル、脂肪族環状カルボン酸エステル、シクロヘキシルカルボン酸族エステル、テルペン系カカルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル等のエステル類、ニトロムスク類、ニトリル、アミン、ピリジン類、キノリン類、ピロール、インドール等の含窒素化合物等が例示できる。
【0145】
これらのうち、代表的なものとしては、アセチルセドレン、イソイースーパー(商標名)、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸ベンジル、エチルバニリン、エチレンブラシレート、1−オクテン−3−オール、ガラクソライド(商標名)、カンファー、ケイヒ酸メチル、ゲラニオール、酢酸イソボルニル、酢酸ゲラニル、酢酸ベンジル、酢酸リナリル、サンダロール(商標名)、シクラメンアルデヒド、シクロペンタデカノリッド、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、ジヒドロジャスモン酸メチル、シスジャスミン、ダマスコン、ターピオール、トナリッド(商標名)、バクダノール、バニリン、ヒドロキシシトロネラール、フェニルアセトアルデヒド、2−フェニルエタノール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、シス−3−ヘキセノール、ヘリオトロピン、メチルアトラトレート、メチルイオノン、メントール、イオノン、リナロール、リラール(商標名)、コバノール(商標名)、リリアール(商標名)、ローズオキサイドが例示できる。
【0146】
これらの中でも、香料として、テルペン炭化水素、テルペンアルコール、テルペン類のオキサイド、テルペン系アルデヒド、テルペンケトン、テルペン系カルボン酸、テルペン系ラクトン、テルペン系カルボン酸エステル等のテルペン化合物及び/又は脂肪族エステル、フラン系カルボン酸族エステル、脂肪族環状カルボン酸エステル、シクロヘキシルカルボン酸族エステル、テルペン系カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル等のエステル化合物を使用することが好ましい。
【0147】
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、成分Fを1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物における(成分F)香料の含有量は、樹脂組成物の全固形分量に対し、0.003〜1.5重量%が好ましく、0.005〜1.0重量%がより好ましい。上記範囲であると、マスキング効果を充分に発揮でき、香料の香りが適度であり、作業環境の改善され、また、彫刻感度に優れる。
【0148】
<(成分G)光熱変換剤>
本発明に係るレリーフ形成層は、さらに、光熱変換剤を含有することが好ましい。即ち、本発明における光熱変換剤は、レーザーの光を吸収し発熱することで、レーザー彫刻時の硬化物の熱分解を促進すると考えられる。このため、彫刻に用いるレーザー波長の光を吸収する光熱変換剤を選択することが好ましい。
【0149】
本発明に係るレーザー彫刻用レリーフ形成層を、700〜1,300nmの赤外線を発するレーザー(YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー、面発光レーザー等)を光源としてレーザー彫刻に用いる場合に、光熱変換剤としては、700〜1,300nmに極大吸収波長を有する化合物が用いることが好ましい。
本発明における光熱変換剤としては、種々の染料又は顔料が用いられる。
【0150】
光熱変換剤のうち、染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、具体的には、700nm〜1300nmに極大吸収波長を有するものが挙げられ、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、ジインモニウム化合物、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
【0151】
本発明において好ましく用いられる染料としては、ヘプタメチンシアニン色素等のシアニン系色素、ペンタメチンオキソノール色素等のオキソノール系色素、フタロシアニン系色素及び特開2008−63554号公報の段落〔0124〕〜〔0137〕に記載の染料を挙げることができる。
【0152】
本発明において使用される光熱変換剤のうち、顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0153】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0154】
カーボンブラックは、組成物中における分散性などが安定である限り、ASTMによる分類のほか、用途(例えば、カラー用、ゴム用、乾電池用など)の如何に拘らずいずれも使用可能である。カーボンブラックには、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラックなどが含まれる。なお、カーボンブラックなどの黒色着色剤は、分散を容易にするため、必要に応じて分散剤を用い、予めニトロセルロースやバインダーなどに分散させたカラーチップやカラーペーストとして使用することができ、このようなチップやペーストは市販品として容易に入手できる。
【0155】
本発明においては、比較的低い比表面積及び比較的低いDBP吸収を有するカーボンブラックや比表面積の大きい微細化されたカーボンブラックまでを使用することも可能である。好適なカーボンブラックの例は、Printex(登録商標)U、Printex(登録商標)A、又はSpezialschwarz(登録商標)4(Degussaより)を含む。
【0156】
本発明に適用しうるカーボンブラックとしては、光熱変換により発生した熱を周囲のポリマー等に効率よく伝えることで彫刻感度が向上するという観点で、比表面積が少なくとも150m2/g及びDBP数が少なくとも150ml/100gである、伝導性カーボンブラックが好ましい。
【0157】
この比表面積は好ましくは、少なくとも250m2/g、特に好ましくは少なくとも500m2/gである。DBP数は好ましくは少なくとも200ml/100g、特に好ましくは少なくとも250ml/100gである。上述したカーボンブラックは酸性の又は塩基性のカーボンブラックであってよい。カーボンブラックは、好ましくは塩基性のカーボンブラックである。異なるカーボンブラックの混合物も当然に、使用され得る。
【0158】
約1,500m2/gにまで及ぶ比表面積及び約550ml/100gにまで及ぶDBP数を有する適当な伝導性カーボンブラックが、例えば、Ketjenblack(登録商標)EC300J、Ketjenblack(登録商標)EC600J(Akzoより)、Prinrex(登録商標)XE(Degussaより)又はBlack Pearls(登録商標)2000(Cabotより)、ケッチェンブラック(ライオン(株)製)の名称で、商業的に入手可能である。
【0159】
光熱変換剤としてカーボンブラックを用いる場合には、UV光などを利用した光架橋ではなく、熱架橋の方が膜の硬化性の点で好ましく、前述の好ましい併用成分である(成分D)重合開始剤である(c)有機過酸化物と組み合わせて用いることで、彫刻感度が極めて高くなるのでより好ましい。
本発明の最も好ましい態様としては、前述の如く、(成分B)バインダーポリマー、さらには、(成分D)重合開始剤である(c)有機過酸化物と(成分G)光熱変換剤であるカーボンブラックとを組み合わせて用いた態様を挙げることができる。
【0160】
レーザー彫刻用樹脂組成物中おける光熱変換剤の含有量は、その分子固有の分子吸光係数の大きさにより大きく異なるが、該樹脂組成物の固形分全質量の0.01〜20重量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.05〜10重量%、特に好ましくは0.1〜5重量%の範囲である。
【0161】
<溶剤>
本発明の樹脂組成物を調製する際に用いる溶媒は、組成物を構成する成分A他を溶解する主として非プロトン性の有機溶媒を用いることが好ましい。より具体的には、非プロトン性の有機溶媒/プロトン性有機溶媒=100/0〜50/50(重量比)で用いることが好ましい。より好ましくは100/0〜70/30、特に好ましくは100/0〜90/10である。
非プロトン性の有機溶媒の好ましい具体例は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドである。
プロトン性有機溶媒の好ましい具体例は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオールである。
γ−ブチロラクトンのみを使用することも好ましく、組成物の全固形分100重量部あたり、10〜40重量部を使用することが好ましい。
【0162】
<その他添加剤>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、彫刻感度向上のための添加剤として、ニトロセルロースや高熱伝導性物質、を加えることがより好ましい。ニトロセルロースは自己反応性化合物であるため、レーザー彫刻時、自身が発熱し、共存する親水性ポリマー等のバインダーポリマーの熱分解をアシストする。その結果、彫刻感度が向上すると推定される。高熱伝導性物質は、熱伝達を補助する目的で添加され、熱伝導性物質としては、金属粒子等の無機化合物、導電性ポリマー等の有機化合物が挙げられる。金属粒子としては、粒径がマイクロメートルオーダーから数ナノメートルオーダーの、金微粒子、銀微粒子、銅微粒子が好ましい導電性ポリマーとしては、特に共役ポリマーが好ましく、具体的には、ポリアニリン、ポリチオフェンが挙げられる。
また、共増感剤を用いることで、レーザー彫刻用樹脂組成物を光硬化させる際の感度をさらに向上させることができる。
さらに、組成物の製造中あるいは保存中において重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。
レーザー彫刻用樹脂組成物の着色を目的として染料若しくは顔料等の着色剤を添加してもよい。これにより、画像部の視認性や、画像濃度測定機適性といった性質を向上させることができる。
さらに、レーザー彫刻用樹脂組成物の硬化皮膜の物性を改良するために充填剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
【0163】
(レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版)
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の第1の実施態様は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有する。
また、本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の第2の実施態様は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を架橋した架橋レリーフ形成層を有する。
本発明において「レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版」とは、レーザー彫刻用樹脂組成物からなる架橋性を有するレリーフ形成層が、架橋される前の状態、及び、光又は熱により硬化された状態の両方又はいずれか一方のものをいう。
本発明において「レリーフ形成層」とは、架橋される前の状態の層をいい、すなわち、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなる層であり、必要に応じ、乾燥が行われていてもよい。
架橋レリーフ形成層を有する印刷版原版をレーザー彫刻することにより「レリーフ印刷版」が作製される。
本発明において「架橋レリーフ形成層」とは、前記レリーフ形成層を架橋した層をいう。前記の架橋は、熱及び/又は光により行うことができる。また、前記架橋は樹脂組成物が硬化される反応であれば特に限定されず、成分B同士の反応、成分Bと他の成分との反応などによる架橋構造が例示できる。
また、本発明において「レリーフ層」とは、レリーフ印刷版におけるレーザーにより彫刻された層、すなわち、レーザー彫刻後の前記架橋レリーフ形成層をいう。
【0164】
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、前記のような成分を含有するレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有する。(架橋)レリーフ形成層は、支持体上に設けられることが好ましい。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、必要によりさらに、支持体と(架橋)レリーフ形成層との間に接着層を、また、(架橋)レリーフ形成層上にスリップコート層、保護フィルムを有していてもよい。
【0165】
<レリーフ形成層>
レリーフ形成層は、前記本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなる層であり、熱架橋性の層であることが好ましい。
【0166】
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版によるレリーフ印刷版の作製態様としては、レリーフ形成層を架橋させて架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版とした後、架橋レリーフ形成層(硬質のレリーフ形成層)をレーザー彫刻することによりレリーフ層を形成してレリーフ印刷版を作製する態様であることが好ましい。レリーフ形成層を架橋することにより、印刷時におけるレリーフ層の摩耗を防ぐことができ、また、レーザー彫刻後にシャープな形状のレリーフ層を有するレリーフ印刷版を得ることができる。
【0167】
レリーフ形成層は、レリーフ形成層用の前記の如き成分を有するレーザー彫刻用樹脂組成物を、シート状又はスリーブ状に成形することで形成することができる。レリーフ形成層は、通常、後述する支持体上に設けられるが、製版、印刷用の装置に備えられたシリンダーなどの部材表面に直接形成したり、そこに配置して固定化したりすることもでき、必ずしも支持体を必要としない。
以下、主としてレリーフ形成層をシート状にした場合を例に挙げて説明する。
【0168】
<支持体>
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の支持体に使用する素材は特に限定されないが、寸法安定性の高いものが好ましく使用され、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属、ポリエステル(例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PAN(ポリアクリロニトリル))やポリ塩化ビニルなどのプラスチック樹脂、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ガラスファイバーで補強されたプラスチック樹脂(エポキシ樹脂やフェノール樹脂など)が挙げられる。支持体としては、PETフィルムやスチール基板が好ましく用いられる。支持体の形態は、レリーフ形成層がシート状であるかスリーブ状であるかによって決定される。
【0169】
<接着層>
レリーフ形成層を支持体上に形成する場合、両者の間には、層間の接着力を強化する目的で接着層を設けてもよい。
接着層に使用しうる材料は、レリーフ形成層が架橋された後において接着力を強固にするものであればよく、レリーフ形成層が架橋される前も接着力が強固であることが好ましい。ここで、接着力とは支持体/接着層間及び接着層/レリーフ形成層間の接着力の両者を意味する。
【0170】
支持体/接着層間の接着力は、支持体/接着層/レリーフ形成層からなる積層体から接着層及びレリーフ形成層を400mm/分の速度で剥離する際、サンプル1cm幅当たりの剥離力が1.0N/cm以上又は剥離不能であることが好ましく、3.0N/cm以上又は剥離不能であることがより好ましい。
接着層/レリーフ形成層の接着力は、接着層/レリーフ形成層から接着層を400mm/分の速度で剥離する際、サンプル1cm幅当たりの剥離力が1.0N/cm以上又は剥離不能であることが好ましく、3.0N/cm以上又は剥離不能であることがより好ましい。
接着層に使用しうる材料(接着剤)としては、例えば、I.Skeist編、「Handbook of Adhesives」、第2版(1977)に記載のものを用いることができる。
【0171】
<保護フィルム、スリップコート層>
レリーフ形成層は、レーザー彫刻後レリーフが造形される部分(レリーフ層)となり、そのレリーフ層表面はインキ着肉部として機能する。架橋後のレリーフ形成層は架橋により強化されているので、レリーフ形成層表面に印刷に影響を及ぼすほどの傷や凹みが発生することはほとんどない。しかし、架橋前のレリーフ形成層は強度が不足している場合が多く、表面に傷や凹みが入りやすい。かかる観点からは、レリーフ形成層表面への傷・凹み防止の目的で、レリーフ形成層表面に保護フィルムを設けてもよい。
【0172】
保護フィルムは、薄すぎると傷・凹み防止の効果が得られず、厚すぎると取り扱いが不便になり、コスト高にもなる。よって、保護フィルムの厚さは25μm〜500μmが好ましく、50μm〜200μmがより好ましい。
【0173】
保護フィルムは、印刷版の保護フィルムとして公知の材質、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)のようなポリエステル系フィルム、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)のようなポリオレフィン系フィルムを用いることができる。またフィルムの表面はプレーンでもよいし、マット化されていてもよい。
レリーフ形成層上に保護フィルムを設ける場合、保護フィルムは剥離可能でなければならない。
【0174】
保護フィルムが剥離不可能な場合や、逆にレリーフ形成層に接着しにくい場合には、両層間にスリップコート層を設けてもよい。
スリップコート層に使用される材料は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分鹸化ポリビニルアルコール、ヒドロシキアルキルセルロース、アルキルセルロース、ポリアミド樹脂など、水に溶解又は分散可能で、粘着性の少ない樹脂を主成分とすることが好ましい。これらの中で、粘着性の面から、鹸化度60〜99モル%の部分鹸化ポリビニルアルコール、アルキル基の炭素数が1〜5のヒドロキシアルキルセルロース及びアルキルセルロースが特に好ましく用いられる。
【0175】
レリーフ形成層(及びスリップコート層)/保護フィルムから保護フィルムを200mm/分の速度で剥離する時、1cm当たりの剥離力が5〜200mN/cmであることが好ましく、10〜150mN/cmがさらに好ましい。5mN/cm以上であれば、作業中に保護フィルムが剥離することなく作業でき、200mN/cm以下であれば無理なく保護フィルムを剥離することができる。
【0176】
(レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法)
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、レーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、必要に応じて、このレーザー彫刻用塗布液組成物から溶剤を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法が挙げられる。あるいは、レーザー彫刻用樹脂組成物を、支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して樹脂組成物から溶剤を除去する方法でもよい。
中でも、本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、前記レリーフ形成層を熱及び/又は光により架橋した架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、を含む製造方法であることが好ましい。
【0177】
その後、必要に応じてレリーフ形成層の上に保護フィルムをラミネートしてもよい。ラミネートは、加熱したカレンダーロールなどで保護フィルムとレリーフ形成層を圧着することや、表面に少量の溶剤を含浸させたレリーフ形成層に保護フィルムを密着させることによって行うことができる。
保護フィルムを用いる場合には、先ず保護フィルム上にレリーフ形成層を積層し、次いで支持体をラミネートする方法を採ってもよい。
接着層を設ける場合は、接着層を塗布した支持体を用いることで対応できる。スリップコート層を設ける場合は、スリップコート層を塗布した保護フィルムを用いることで対応できる。
【0178】
<層形成工程>
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程を含むことが好ましい。
レリーフ形成層の形成方法としては、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、必要に応じて、このレーザー彫刻用樹脂組成物から溶剤を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法や、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して溶剤を除去する方法が好ましく例示できる。
レーザー彫刻用樹脂組成物は、例えば、成分、並びに、任意成分として、成分B〜成分Fを適当な溶剤に溶解又は分散させ、次いで、これらの液を混合することによって製造できる。溶剤成分のほとんどは、レリーフ印刷版原版を製造する段階で除去することが好ましいので、溶剤としては、揮発しやすい低分子アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル)等を用い、かつ温度を調整するなどして溶剤の全添加量をできるだけ少なく抑えることが好ましい。
【0179】
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版における(架橋)レリーフ形成層の厚さは、架橋の前後において、0.05mm以上10mm以下が好ましく、0.05mm以上7mm以下がより好ましく、0.05mm以上3mm以下がさらに好ましい。
【0180】
<架橋工程>
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法は、前記レリーフ形成層を熱及び/又は光により架橋した架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程を含む製造方法であることが好ましく、前記レリーフ形成層を熱により架橋した架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程を含む製造方法であることがより好ましい。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を加熱することで、レリーフ形成層を架橋することができる(熱架橋工程)。熱により架橋を行うための加熱手段としては、印刷版原版を熱風オーブンや遠赤外オーブン内で所定時間加熱する方法や、加熱したロールに所定時間接する方法が挙げられる。
レリーフ形成層を熱架橋することで、第1にレーザー彫刻後形成されるレリーフがシャープになり、第2にレーザー彫刻の際に発生する彫刻カスの粘着性が抑制されるという利点がある。
【0181】
また、光重合開始剤等を使用し、重合性化合物を重合し架橋を形成するため、光による架橋をさらに行ってもよい。
レリーフ形成層が光重合開始剤を含有する場合には、光重合開始剤のトリガーとなる活性光線をレリーフ形成層に照射することで、レリーフ形成層を架橋することができる。
光は、レリーフ形成層全面に行うのが一般的である。光(「活性光線」ともいう。)としては可視光、紫外光、及び電子線が挙げられるが、紫外光が最も一般的である。レリーフ形成層の支持体等、レリーフ形成層を固定化するための基材側を裏面とすれば、表面に光を照射するだけでもよいが、支持体が活性光線を透過する透明なフィルムであれば、さらに裏面からも光を照射することが好ましい。表面からの照射は、保護フィルムが存在する場合、これを設けたまま行ってもよいし、保護フィルムを剥離した後に行ってもよい。酸素の存在下では重合阻害が生じる恐れがあるので、レリーフ形成層に塩化ビニルシートを被せて真空引きした上で、活性光線の照射を行ってもよい。
【0182】
(レリーフ印刷版及びその製版方法)
本発明のレリーフ印刷版の製版方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、前記レリーフ形成層を熱及び/又は光で架橋し架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、及び、前記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻する彫刻工程、を含むことが好ましい。
本発明のレリーフ印刷版は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなる層を架橋及びレーザー彫刻して得られたレリーフ層を有するレリーフ印刷版であり、本発明のレリーフ印刷版の製版方法により製版されたレリーフ印刷版であることが好ましい。
本発明のレリーフ印刷版は、水性インキを印刷時に好適に使用することができる。
本発明のレリーフ印刷版の製版方法における層形成工程及び架橋工程は、前記レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法における層形成工程及び架橋工程と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0183】
<彫刻工程>
本発明のレリーフ印刷版の製版方法は、前記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻する彫刻工程を含むことが好ましい。
彫刻工程は、前記架橋工程で架橋された架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程である。具体的には、架橋された架橋レリーフ形成層に対して、所望の画像に対応したレーザー光を照射して彫刻を行うことによりレリーフ層を形成することが好ましい。また、所望の画像のデジタルデータを元にコンピューターでレーザーヘッドを制御し、架橋レリーフ形成層に対して走査照射する工程が好ましく挙げられる。
この彫刻工程には、赤外線レーザーが好ましく用いられる。赤外線レーザーが照射されると、架橋レリーフ形成層中の分子が分子振動し、熱が発生する。赤外線レーザーとして炭酸ガスレーザーやYAGレーザーのような高出力のレーザーを用いると、レーザー照射部分に大量の熱が発生し、架橋レリーフ形成層中の分子は分子切断又はイオン化されて選択的な除去、すなわち、彫刻がなされる。レーザー彫刻の利点は、彫刻深さを任意に設定できるため、構造を3次元的に制御することができる点である。例えば、微細な網点を印刷する部分は、浅く又はショルダーをつけて彫刻することで、印圧でレリーフが転倒しないようにすることができ、細かい抜き文字を印刷する溝の部分は深く彫刻することで、溝にインキが埋まりにくくなり、抜き文字つぶれを抑制することが可能となる。
中でも、光熱変換剤の吸収波長に対応した赤外線レーザーで彫刻する場合には、より高感度で架橋レリーフ形成層の選択的な除去が可能となり、シャープな画像を有するレリーフ層が得られる。
【0184】
彫刻工程に用いられる赤外線レーザーとしては、生産性、コスト等の面から、炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)又は半導体レーザーが好ましい。特に、ファイバー付き半導体赤外線レーザー(FC−LD)が好ましく用いられる。一般に、半導体レーザーは、CO2レーザーに比べレーザー発振が高効率且つ安価で小型化が可能である。また、小型であるためアレイ化が容易である。さらに、ファイバーの処理によりビーム形状を制御できる。
半導体レーザーとしては、波長が700〜1,300nmのものが好ましく、800〜1,200nmのものがより好ましく、860〜1,200nmのものがさらに好ましく、900〜1,100nmのものが特に好ましい。
【0185】
また、ファイバー付き半導体レーザーは、さらに光ファイバーを取り付けることで効率よくレーザー光を出力できるため、本発明における彫刻工程には有効である。さらに、ファイバーの処理によりビーム形状を制御できる。例えば、ビームプロファイルはトップハット形状とすることができ、安定に版面にエネルギーを与えることができる。半導体レーザーの詳細は、「レーザーハンドブック第2版」レーザー学会編、「実用レーザー技術」電子通信学会編等に記載されている。
また、本発明のレリーフ印刷版原版を用いたレリーフ印刷版の製版方法に好適に使用し得るファイバー付き半導体レーザーを備えた製版装置は、特開2009−172658号公報及び特開2009−214334号公報に詳細に記載され、これを本発明に係るレリーフ印刷版の製版に使用することができる。
【0186】
本発明のレリーフ印刷版の製版方法では、彫刻工程に次いで、さらに、必要に応じて下記リンス工程、乾燥工程、及び/又は、後架橋工程を含んでもよい。
リンス工程:彫刻後のレリーフ層表面を、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスする工程。
乾燥工程:彫刻されたレリーフ層を乾燥する工程。
後架橋工程:彫刻後のレリーフ層にエネルギーを付与し、レリーフ層をさらに架橋する工程。
前記工程を経た後、彫刻表面に彫刻カスが付着しているため、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスして、彫刻カスを洗い流すリンス工程を追加してもよい。リンスの手段として、水道水で水洗する方法、高圧水をスプレー噴射する方法、感光性樹脂凸版の現像機として公知のバッチ式又は搬送式のブラシ式洗い出し機で、彫刻表面を主に水の存在下でブラシ擦りする方法などが挙げられ、彫刻カスのヌメリがとれない場合は、石鹸や界面活性剤を添加したリンス液を用いてもよい。
彫刻表面をリンスするリンス工程を行った場合、彫刻されたレリーフ形成層を乾燥してリンス液を揮発させる乾燥工程を追加することが好ましい。
さらに、必要に応じてレリーフ形成層をさらに架橋させる後架橋工程を追加してもよい。追加の架橋工程である後架橋工程を行うことにより、彫刻によって形成されたレリーフをより強固にすることができる。
【0187】
本発明に用いることができるリンス液のpHは、9以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、11以上であることがさらに好ましい。また、リンス液のpHは、14以下であることが好ましく、13.5以下であることがより好ましく、13.2以下であることがさらに好ましく、12.5以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、取り扱いが容易である。
リンス液を上記のpH範囲とするために、適宜、酸及び/又は塩基を用いてpHを調整すればよく、使用する酸及び塩基は特に限定されない。
本発明に用いることができるリンス液は、主成分として水を含有することが好ましい。
また、リンス液は、水以外の溶剤として、アルコール類、アセトン、テトラヒドロフラン等などの水混和性溶剤を含有していてもよい。
【0188】
リンス液は、界面活性剤を含有することが好ましい。
本発明に用いることができる界面活性剤としては、彫刻カスの除去性、及び、レリーフ印刷版への影響を少なくする観点から、カルボキシベタイン化合物、スルホベタイン化合物、ホスホベタイン化合物、アミンオキシド化合物、又は、ホスフィンオキシド化合物等のベタイン化合物(両性界面活性剤)が好ましく挙げられる。
【0189】
また、界面活性剤としては、公知のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等も挙げられる。さらに、フッ素系、シリコーン系のノニオン界面活性剤も同様に使用することができる。
界面活性剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の使用量は特に限定する必要はないが、リンス液の全重量に対し、0.01〜20重量%であることが好ましく、0.05〜10重量%であることがより好ましい。
【0190】
以上のようにして、支持体等の任意の基材表面にレリーフ層を有するレリーフ印刷版が得られる。
レリーフ印刷版が有するレリーフ層の厚さは、耐磨耗性やインキ転移性のような種々の印刷適性を満たす観点からは、0.05mm以上10mm以下が好ましく、より好ましくは0.05mm以上7mm以下、特に好ましくは0.05mm以上3mm以下である。
【0191】
また、レリーフ印刷版が有するレリーフ層のショアA硬度は、50°以上90°以下であることが好ましい。レリーフ層のショアA硬度が50°以上であると、彫刻により形成された微細な網点が凸版印刷機の強い印圧を受けても倒れてつぶれることがなく、正常な印刷ができる。また、レリーフ層のショアA硬度が90°以下であると、印圧がキスタッチのフレキソ印刷でもベタ部での印刷かすれを防止することができる。
なお、本明細書におけるショアA硬度は、25℃において、測定対象の表面に圧子(押針又はインデンタと呼ばれる)を押し込み変形させ、その変形量(押込み深さ)を測定して、数値化するデュロメータ(スプリング式ゴム硬度計)により測定した値である。
【0192】
本発明のレリーフ印刷版は、凸版用印刷機による水性インキ、油性インキ、及び、UVインキ、いずれのインキを用いた場合でも、印刷が可能であり、また、フレキソ印刷機によるUVインキでの印刷も可能である。本発明のレリーフ印刷版は、リンス性に優れており彫刻カスの残存がなく、かつ、得られたレリーフ層が耐刷性に優れ、長期間にわたりレリーフ層の塑性変形や耐刷性低下の懸念がなく、印刷が実施できる。
【実施例】
【0193】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。「部」は、断り書きのない限り、「重量部」を示す。
なお、実施例におけるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特にことわらない限りにおいて、GPC法で測定した値を表示している。
【0194】
(実施例1)
1.レーザー彫刻用架橋性樹脂組成物の調製
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、成分B(バインダーポリマー)としてB−1「デンカブチラール#3000−2」(電気化学工業(株)製、ポリビニルブチラール誘導体 Mw=9万)30部、溶媒としてγ−ブチロラクトン20部を入れ、撹拌しながら70℃で120分間加熱しポリマーを溶解させた。その後、溶液を40℃にし、さらにA成分としてA−1を10部、成分C(重合性化合物)としてモノマー(C−1)グリセロールジメタクリレートを25部、成分E(可塑剤)としてE−1クエン酸トリブチルを30部、成分FとしてF−1バニリン(和光純薬工業(株)製)を1部、成分G(光熱変換剤)としてG−1ケッチェンブラックEC600JD(カーボンブラック、ライオン(株)製)を1部、を添加して30分間撹拌した。その後、成分AとしてA−1:[3−(2−ニトロベンゼンスルホンアミド)プロピル]カルバミン酸アリル(東京化成工業(株)製)を10部、成分D(重合開始剤)としてD−1ジアルキルパーオキサイド)(商品名:パークミル、日油(株)製)を1部添加し、40℃で10分間攪拌した。この操作により、流動性のある架橋性レリーフ形成層用組成物1(レーザー彫刻用樹脂組成物)を得た。
【0195】
2.レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の作製
PET基板上に所定厚のスペーサー(枠)を設置し、上記より得られた架橋性レリーフ形成層用塗布液1をスペーサー(枠)から流出しない程度に静かに流延し、70℃のオーブン中で3時間乾燥させて、厚さが1.28mmのレリーフ形成層を設け、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版1を作製した。
【0196】
3.レリーフ印刷版の作製
得られた原版のレリーフ形成層を80℃で3時間、さらに100℃で3時間加熱してレリーフ形成層を熱架橋した。
架橋後のレリーフ形成層に対し、以下の2種のレーザーにより彫刻した。
炭酸ガスレーザー彫刻機として、レーザー照射による彫刻を、高品位CO2レーザーマーカML−9100シリーズ(KEYENCE(株)製)を用いた。レーザー彫刻用印刷版原版1から保護フィルムを剥離後、炭酸ガスレーザー彫刻機で、出力:12W、ヘッド速度:200mm/秒、ピッチ設定:2400DPIの条件で、1cm四方のベタ部分をラスター彫刻した。
半導体レーザー彫刻機として、最大出力8.0Wのファイバー付き半導体レーザー(FC−LD)SDL−6390(JDSU社製、波長 915nm)を装備したレーザー記録装置を用いた。半導体レーザー彫刻機でレーザー出力:7.5W、ヘッド速度:409mm/秒、ピッチ設定:2400DPIの条件で、1cm四方のベタ部分をラスター彫刻した。
【0197】
レリーフ印刷版が有するレリーフ層の厚さは約1mmであり、表2に示した。
また、レリーフ層のショアA硬度を、前述の測定方法により測定したところ、78°であった。なお、ショア硬度Aの測定は、後述する各実施例及び比較例においても同様に25℃において行った。
【0198】
(実施例2〜36及び比較例1,2)
実施例1において使用した成分A〜Gを表1に記載したような材料と配合とする以外は、実施例1と全く同様にして、実施例2〜36及び比較例1と2のレリーフ印刷版原版を作製した。
これらの試料の作製に使用した材料を以下にまとめた。共重合比はモル%を示す。
【0199】
【化26】

【0200】
【化27】

【0201】
実施例1〜36において成分Bとして使用した材料を以下に示した。
B−1:ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製,#3000−2)
B−2:ポリアミド(東レ(株)製,アミランCM4000)
B−3:メタクリル酸ブチル70mol%−メタクリル酸30mol%コポリマー(合成品)
B−4:スチレンブタジエンゴム(JSR(株)製,TR2000)
B−5:スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(JSR(株)製,SIS5200)
B−6:水素化スチレンブタジエンゴム(JSR(株)製,DYNARON(登録商標)1320P)
B−7:エステル系ポリウレタン(日本ミラクトラン(株)製,ミラクトラン(登録商標)E−185)
また、成分Cとして使用した材料を以下に示した。
C−1:グリセロールジメタクリレート(東京化成工業(株)製)
C−2:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(東京化成工業(株)製)
【0202】
【化28】

【0203】
成分D(重合開始剤)としては、以下のラジカル重合開始剤を使用した。
D−1:ジクミルパーオキサイド(日油(株)製,パークミルD)
D−2:t−ブチルパーオキシ安息香酸(日油(株)製,パーブチルZ)
D−3:ベンゾイルパーオキサイド(日油(株)製,ナイパーBW)
D−4:2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド)(和光純薬工業(株)製,VF−096)
D−5:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF製,IRGACURE 184)
【0204】
また、アルコキシシラン化合物を含む組成物について以下の化合物を使用した。
D−6:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(サンアプロ(株)社製,DBU)
【0205】
(成分E)可塑剤としては、以下の化合物を使用した。
E−1:クエン酸トリブチル(東京化成工業(株)製)
E−2:フタル酸ジオクチル(東京化成工業(株)製)
【0206】
(成分F)香料として以下を使用した。
F−1:バニリン(和光純薬工業(株)製)
F−2:酢酸イソボルニル(東京化成工業(株)製)
【0207】
(成分G)光熱変換剤としては、以下を使用した。
G−1:ケッチェンブラック(ライオン(株)製,EC600JD)
G−2:カーボンブラック(東海カーボン(株)製,N330,HAFカーボン)
なお反応溶媒及び塗布溶媒としては、すべての実施例及び比較例において、γ−ブチロラクトンを使用した。
【0208】
2.レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の作製
実施例1における架橋性レリーフ形成層用塗布液1を、架橋性レリーフ形成層用塗布液2〜36、比較架橋性レリーフ形成層用塗布液C1〜C2に各々変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版2〜36及び比較例のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版C1〜C2を得た。
【0209】
3.レリーフ印刷版の作製
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版2〜36、C1〜C2のレリーフ形成層を、実施例1と同様にして、熱架橋した後、彫刻してレリーフ層を形成することにより、実施例のレリーフ印刷版2〜36、比較例のレリーフ印刷版C1〜C2を得た。
これらのレリーフ印刷版が有するレリーフ層の厚さは、表1にまとめた通り、約1mmであった。
【0210】
【表1】

【0211】
4.レリーフ印刷版の評価
以下の項目でレリーフ印刷版の性能評価を行い、結果を表2にまとめた。
(1)<UVインキ耐性評価>
版をUVインキ((株)ティーアンドケイ東華製、UVフレキソ500藍)に浸漬した。室温で24時間放置した後、取り出し表面に付着したインキを拭き取り秤量して、浸漬前の重量からの重量減少率を算出した。重量減少率が1%未満のものを◎、1%以上2%未満のものを○、2%以上5%未満のものを△、5%以上のものを×とした。
(2)<水性インキ耐性評価>
版を水性インキ(大日精化工業(株)製、ハイドリックFCG)に浸漬した。室温で24時間放置した後、取り出し表面に付着したインキを拭き取り、120℃で1時間乾燥させた版を秤量して、浸漬前の重量からの重量減少率を算出した。重量減少率が1%未満のものを◎、1%以上2%未満のものを○、2%以上5%未満のものを△、5%以上のものを×とした。
(3)<インキ洗浄剤耐性評価>
版をインキ洗浄剤(FLEXOCLEAN製、HEAVY DUTY)に浸漬した.室温で24時間放置した後、取り出し表面に付着したインキ洗浄剤を拭き取り、120℃で1時間乾燥させた版を秤量して、浸漬前の重量からの重量減少率を算出した。重量減少率が1%未満のものを◎、1%以上2%未満のものを○、2%以上5%未満のものを△、5%以上のものを×とした。
【0212】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分A)エチレン性不飽和基、エポキシ基、オキセタニル基、加水分解性シリル基及びシラノール基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合性基を含有し、さらに、スルホンアミド基を有する低分子化合物、
マレイミド基、スクシンイミド基及びフタル酸イミド基よりなる群から選ばれた残基を有する低分子化合物、又は、
マレイミド基に由来する構成単位又はスルホンアミド基を有する構成単位を含有する高分子化合物、を含有することを特徴とする
レーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項2】
前記高分子化合物が、エチレン性不飽和基又は加水分解性シリル基を含有する、請求項1に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項3】
さらに(成分B)バインダーポリマーを含有する、請求項1又は2に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項4】
さらに(成分C)重合性化合物を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項5】
さらに(成分D)重合開始剤を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項6】
さらに(成分E)可塑剤を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項7】
さらに(成分F)香料を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項8】
さらに(成分G)700〜1,300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を支持体上に有する、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋したレリーフ形成層を支持体上に有する、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、及び、
前記レリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋した架橋レリーフ形成層を形成する架橋工程、を含むことを特徴とする
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法。
【請求項12】
架橋工程が、前記レリーフ形成層を熱により架橋する工程である、請求項11に記載のレリーフ印刷版原版の製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12の製造方法により製造されたレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成するレリーフ層形成工程を含む、レリーフ印刷版の製版方法。
【請求項14】
前記レリーフ形成層の厚みが、0.05mm以上10mm以下である、請求項13に記載のレリーフ印刷版の製版方法。
【請求項15】
前記レリーフ形成層のショアA硬度が50°以上90°以下である、請求項13又は14に記載のレリーフ印刷版の製版方法。

【公開番号】特開2012−121300(P2012−121300A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275997(P2010−275997)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】