説明

レーザ光源装置

【課題】光ファイバに対して高い結合効率を維持し、高効率・低消費電力を図ることができるレーザ光源装置を提供すること。
【解決手段】ファイバ付きレーザ光源装置100は、波長帯域が異なる、440nm〜490nmの波長の光を出力するレーザ光源102と、525nm〜570nmの波長の光を出力するレーザ光源101とを備える。ファイバ付きレーザ光源装置100は、レーザ光源101,102から発せられたレーザ光を導波させる光ファイバ121と、光ファイバ121に結合させるファイバ結合光学系114と、レーザ光が光ファイバ121へ結合する位置を微動させるアクチュエータ118と、を備え、ファイバ結合光学系114を構成する光学部品が、アクチュエータ118に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力光が光ファイバより出力されるレーザ装置に係り、詳細には、高効率・低消費電力の医療用途などに使用するファイバ付レーザ光源に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療・計測用途において、光を光ファイバに導光した光源を用いる例が増えてきている。例えば、レーザ光を用いて治療部位の光凝固や除去、切開等を行う手術が盛んに実施されている。この手法によれば、治療部位に対して非接触で治療を施すことができるため、例えば眼科手術のように治療部位に直接触れることが好ましくない場合においても適切に処置を行うことが可能である。また、治療部位からの出血を防止できることや、細菌による汚染の可能性が極めて低いこと、日帰り手術が可能など多くの利点があり、歯科・眼科などを中心に普及が進んでいる。
【0003】
また、照明光を照射し体腔内の内視鏡画像を得る内視鏡装置が広く用いられている。内視鏡装置は、光源装置からの照明光を光ファイバに導光し、体腔内を照明する。内視鏡装置は、体腔内の組織で反射された光をCCD等の撮像素子で捉え、ビデオプロセッサにより撮像素子からの撮像信号を信号処理することで観察モニタに内視鏡画像を表示し患部等の観察部位を観察するようになっている。このような内視鏡装置は、電子内視鏡と呼ばれる。
【0004】
内視鏡装置において通常の生体組織観察を行う場合、照明光の波長を順次切り替える方法と、白色光で照明し撮像素子に入射する光の波長を切り替える方法との二通りがある。前者は、光源装置で可視光領域の白色光を発光し、赤・青・緑等特定の波長選択制を持つ回転光学フィルタを介することで、被写体を照明する光波長を順次切り替えて照射し、照明された被写体からの反射光をビデオプロセッサで合成しカラー画像を得ている。後者は、内視鏡の撮像手段の撮像面の前面に光波長フィルタを設け、光源装置で可視光領域の白色光を発光し、該白色光照明による被写体からの反射光を光波長フィルタにてRGBの色成分毎に分離した後撮像し、ビデオプロセッサで画像処理することによってカラー画像を得ている。
【0005】
特許文献1には、生体組織の像を撮像し信号処理する内視鏡装置が記載されている。生体組織は、照射される光の波長により光の吸収特性及び散乱特性が異なる。特許文献1に記載の内視鏡装置は、可視光領域の照明光を、離散的な分光特性の狭帯域なRGB面順次光を生体組織に照射し、生体組織の所望の深部の組織情報を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−95635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の内視鏡装置にあっては、光源に以下のような課題があった。
【0008】
医療・計測機器に用いる光源として、現在はハロゲンランプ等のランプ光源が用いられている。ランプなどの発散角が大きな光源を使用した場合、光源から発した光をすべてファイバに結合させることが困難であり、多く見積もっても光源が発する光の50%以下しか利用できないという課題があった。
【0009】
さらに、伝搬(デリバリー)用光ファイバを使用し、医療・計測機器へ光学的に接続する。しかし、ファイバ端面の劣化等により、デリバリー用ファイバ自体を交換する必要があった。特に、内視鏡においては、使用後に滅菌作業を行うため、内視鏡本体を光源から取り外す作業が発生していた。
【0010】
その際、光ファイバのコア位置にロット間の個体差が生じ、光ファイバのコアの位置ずれにより、結合効率が変化するという問題がある。光学的にロスが更に大きくなるばかりか、機器としての消費電力も増加するため、機器の高効率化の妨げとなっていた。
【0011】
また、機器の高効率化が困難なため廃熱も多くなり、放熱機構が大型化し機器の小型化を困難にしていた。
【0012】
本発明の目的は、光ファイバに対して高い結合効率を維持し、高効率・低消費電力を図ることができるレーザ光源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のレーザ光源装置は、波長帯域が異なる少なくとも二つの光源を有し、前記二つの光源が、440nm〜490nmの波長の光を出力する第1の光源と、525nm〜570nmの波長の光を出力する第2の光源であり、前記第1及び第2の光源から発せられたレーザ光を導波させる光ファイバと、前記光ファイバに結合させる結合光学系と、前記レーザ光が前記光ファイバへ結合する位置を微動させるアクチュエータと、を備え、前記結合光学系を構成する光学部品が、前記アクチュエータに保持されている構成を採る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発散角が30°以下と小さな光源を使用するため、光源が発する光の利用効率を80%以上に高めることができる。
【0015】
また、レーザ光が光ファイバへ結合する位置を微動させるアクチュエータを備え、デリバリー用の光ファイバへレーザ光を結合させる結合光学系が、アクチュエータに保持されている。これにより、デリバリー用の光ファイバを交換した際、レーザ光源装置自身によるアライメントを可能にし、ファイバコアの位置補正を可能としている。その結果、高い結合効率を維持することが可能となり、レーザ光源装置自体の高効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係るレーザ光源装置の概略構成を示す模式図
【図2】従来の光源をランプにした場合のファイバ付き光源装置の構成図
【図3】従来の光源をLEDにした場合のファイバ付き光源装置の構成図
【図4】従来のファイバ付き光源を利用した電子内視鏡装置の構成図
【図5】上記実施の形態1に係るレーザ光源装置を利用した電子内視鏡装置構成図
【図6】上記実施の形態1に係るレーザ光源装置の光ファイバから出力された光の強度分布プロファイルを示す図
【図7】上記実施の形態1に係るレーザ光源装置のファイバのコアへの入射位置と出射位置との関係を示す模式図
【図8】上記実施の形態1に係るレーザ光源装置のファイバ結合部の構成と仕組みを説明する図
【図9】上記実施の形態1に係るレーザ光源装置のファイバ結合部の構成と仕組みを説明する図
【図10】上記実施の形態1に係るレーザ光源装置のファイバのコアへの入射位置と出射位置との関係を示す模式図
【図11】上記実施の形態1に係るレーザ光源装置のファイバから出力される強度分布のプロファイルを示す図
【図12】上記実施の形態1に係るレーザ光源装置のレーザ光源からコリメート光を合波する際における、ビーム直径の関係を示す模式図
【図13】上記実施の形態1に係るレーザ光源装置のレーザ光の発光タイミングと発光時間幅を示す図
【図14】本発明の実施の形態2に係るレーザ光源装置の概略構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るレーザ光源装置の概略構成を示す模式図である。本実施の形態は、本発明に係るレーザ光源装置を、高効率・低消費電力の医療用途などに使用するファイバ付きレーザ光源装置に適用した例である。
【0019】
図1に示すように、ファイバ付きレーザ光源装置100は、波長帯域が異なる2種類のレーザ光源101(第2の光源)及びレーザ光源102(第1の光源)を備える。
【0020】
レーザ光源101は、固体レーザ媒質を励起して得られる赤外光を基本波とし、非線形光学結晶を用いて第2高調波を発生させ、波長532nmの緑色レーザ光を得る変換レーザ光源である。
【0021】
レーザ光源102は、波長440nmの青色レーザ光を発生する半導体レーザ光源である。
【0022】
レーザ光源101の構成について説明する。
【0023】
レーザ光源101は、内部共振器型波長変換レーザ光源である。励起レーザ光源103から発せられた光は、レーザ媒質104へ入射される。レーザ媒質104の端面105と出力ミラー106との間で光学的な共振器(光共振器107)が形成されており、レーザ媒質104から発せられた自然放出光が光共振器107内で共振することで基本波レーザ光108が発生する。光共振器107内に波長変換素子109を挿入することで、基本波レーザ光108を波長変換し緑色レーザ光110を発生させる。
【0024】
本実施の形態では、波長変換素子109として分極反転構造を持つMgO:LiNbO結晶素子を使用した。分極反転構造MgO:LiNbO結晶素子を使用することにより、基本波から第2高調波である緑色レーザ光への変換効率を大幅に高めることができる。
【0025】
レーザ光源101で発生した第2高調波である緑色レーザ光110は、コリメートレンズ111により平行光とし、青色LD光源102で発生したコリメートレンズ112で平行光にされた青色レーザ光とダイクロイックミラー113で同軸ビームとして合波される。合波された光は、ビームスプリッタ119で一部分離され、受光器120で光量がモニタされる。上記同軸ビームは、結合レンズ等のファイバ結合光学系114によりデリバリー用の光ファイバ121へ結合される。光ファイバ121は、コネクタ115により光源に接続されている。
【0026】
励起レーザ光源103と青色LD光源102は、電源装置116及び制御装置117で駆動されている。
【0027】
このように、ファイバ付きレーザ光源装置100は、波長帯域が異なる、440nm〜490nmの波長の光を出力するレーザ光源102と、525nm〜570nmの波長の光を出力するレーザ光源101とを備える。ファイバ付きレーザ光源装置100は、レーザ光源101,102から発せられたレーザ光を導波させる光ファイバ121と、光ファイバ121に結合させるファイバ結合光学系114と、レーザ光が光ファイバ121へ結合する位置を微動させるアクチュエータ118と、を備え、ファイバ結合光学系114を構成する光学部品が、アクチュエータ118に保持されている構成を採る。
【0028】
本実施の形態では、レーザ光源101,102から発せられる光の発散角が30°以下かつ、発光点が0.5mm以下となっていること、及びファイバ結合光学系114がアクチュエータ118により保持されていることを特徴としている。アクチュエータ118は、例えば電磁アクチュエータである。
【0029】
以下、上述のように構成されたレーザ光源装置の作用について説明する。
【0030】
本実施の形態と従来例とを対比して説明するため、まず、従来の光源について述べる。
【0031】
図2及び図3は、従来のランプやLEDなどから発せられた光を光ファイバに結合させたファイバ付き光源装置の概略構成を示す模式図である。図2は、光源をランプにした場合のファイバ付き光源装置の構成図、図3は、光源をLEDにした場合のファイバ付き光源装置の構成図である。
【0032】
図2に示すように、従来のファイバ付きレーザ光源装置200は、光源にランプ光源201を用いている。ランプ光源201から発せられた光は、全周囲に発散されるため、反射ミラー202とコンデンサーレンズ203で一方向に集められる。ランプ光源201の光量は、フィラメント電流等で直接制御することが難しいため、直接アパーチャ204で調整される。アパーチャ204を通った光は、回転光学フィルタ206を通過し、波長成分毎に分離される。回転光学フィルタ206が1回転するタイミングは回転センサ212で検出され、必要な波長成分が出力されるタイミングを監視している。
【0033】
分離された光は、ビームスプリッタ207で一部分離され、受光器208で光量がモニタされる。その後、結合レンズ209で光ファイバ121に結合される構造になっている。
【0034】
光源制御部210は、光ファイバ121に入力される光量や、アパーチャの開度、回転光学フィルタ206のタイミングを制御する。
【0035】
また、ランプから発せられる光は、可視光以外に赤外光も含まれるため、ランプ光源200全体が発熱する。そこで、ヒートシンク214により放熱する構造となっている。
【0036】
上記ファイバ付き光源装置200は、反射ミラー202とコンデンサーレンズ203で集められる光量が限られている上、光量制御時にアパーチ204で遮光される光(213としてハッチングしている部分)、更に、ファイバ121への結合効率が小さいため、光利用効率は10%程度となる。それ以外は、熱として放出されるため、装置の冷却スペースを要し小型化を難しくしている。
【0037】
図3に示すように、従来のファイバ付き光源装置250は、光源にLED光源251を用いている。
【0038】
LED光源251は、ランプ光源201のように全周囲に光を放射しない。しかし、LEDチップからの発散角は、ほぼ180°であるため、やはりレンズで光を集める必要がある。LED251,252はそれぞれ、中心波長が異なるLEDチップである。
【0039】
LED251から出射された光は、コンデンサーレンズ253で集光され、LED252から出射された光は、コンデンサーレンズ254で集光される。集光された光は、ダイクロイックミラー255で合波される。合波した光の一部は、ビームスプリッタ256で一部分離され、受光器257で光量がモニタされる。その後、結合レンズ258で光ファイバ121に結合される構造となっている。
【0040】
LED251,252から出力される光量は、光源制御部259からLED電源回路260に制御指令を送ることで制御される。
【0041】
LEDを使用する場合においても、発する波長によっては入力した電力から出力される光への変換効率が低い場合があり、かつ発散光源のため光ファイバ121への結合効率も40〜50%と小さい。そのため、光利用効率は30%程度となり、ランプ光源よりは発熱量が小さいものの、利用されない光は熱として放出されるため、装置の冷却スペースを要し小型化を難しくしている。
【0042】
以上、従来のファイバ付き光源装置について説明した。次に、この光源を用いた電子内視鏡装置について説明する。
【0043】
図4は、従来のファイバ付き光源を利用した電子内視鏡装置300の構成図である。
【0044】
図4に示すように、電子内視鏡装置300は、制御ボックス301、光源ボックス302、内視鏡本体303、光ファイバ/ケーブル304、及びモニタ画面305を備える。
【0045】
上述したように、従来の光源は、結合光学系が大きく、冷却のために必要な体積も大きいために光源ボックス302が制御ボックス301とは別に配置されている。
【0046】
図5は、本実施の形態のファイバ付きレーザ光源装置100を利用した電子内視鏡装置350の構成図である。
【0047】
電子内視鏡装置350は、ファイバ付きレーザ光源装置100を使用することで、光学系が小型化され、なおかつ放熱に要する体積も小さくできる。このため、制御ボックス351内に光源を配置することができる。
【0048】
しかし、光源をレーザとすることで、光ファイバから出力される光の横モードに強度バラツキが生じるという新たな課題が発生することが判明した。
【0049】
図6は、光ファイバから出力された光の強度分布プロファイルを示す図であり、強度分布(横モード)のバラツキの一例を示している。
【0050】
図6(a)(b)に示すようなバラツキは、ビーム品質(M2値)が2以下とビーム品質のよいレーザビームを使用する際に顕著に現れ、光ファイバ121の個体差によりプロファイルが変化することがわかった。
【0051】
図7は、ファイバのコアへの入射位置と出射位置との関係を示す模式図である。図7は、レーザ光がファイバ121(図1参照)のコア501のどの位置に入射するとどの位置から出射するのかを示している。図中、半円はファイバコアの中心からみた入射側と出射側を模式的に表している。
【0052】
図7(a)に示すように、ファイバコアの中心から距離rだけ離れた点502に入射した場合、図7(b)に示すように、出射側の光強度は半径rのリング状部503で大きくなることがわかった。
【0053】
広がり角が大きくかつコヒーレント性が低いランプ光源及びLED光源からの光は、光ファイバのコアからクラッドへの入射角が大きく、光が光ファイバを伝搬する間にファイバの外へ光が漏れながら均一化される。これに対し、レーザ光源では、広がり角が小さくコヒーレント性が高いため、光ファイバのコアからクラッドへの入射角が小さく、ファイバの外へ光が漏れない反面、出射ビームがリング状になりやすいという特徴がある。つまり、光ファイバ出射後のビームがリング状になるという現象は、レーザ光源特有の現象である。
【0054】
本発明者らは、入射位置つまり中心から入射点までの距離rを時間的に変化させることで、強度分布のバラツキを改善させることを見出し、強度分布低減補正機構と命名した。本実施の形態のファイバ付きレーザ光源装置100は、その強度分布低減補正機構を実現する構成である。
【0055】
強度分布低減補正機構について説明する。
【0056】
[構成例1]
図8は、本実施の形態のファイバ付きレーザ光源装置100Aのファイバ結合部の構成と仕組みを説明する図である。
【0057】
図8に示すように、ファイバ付きレーザ光源装置100Aでは、照明用レーザビーム110をファイバ121へ光学的に結合させる結合レンズ等からなるファイバ結合光学系114は、アクチュエータ118で保持されている。この際、アクチュエータ118に与えている電圧信号に、正弦波あるいは矩形波を重畳することで、ファイバ結合光学系114で集光されるレーザビーム110が光ファイバ121へ結合する位置601を微動させることができる。
【0058】
本発明者らは、この構成を用いて検討した結果、最大で±5μm程度、100〜1kHzで振動させればよいことを見出した。これにより、強度分布を大幅に改善することができた。また、ファイバ121の入射面121aへの入射角度をアクチュエータにより変化させることによっても同様の効果が得られることがわかった。
【0059】
なお、上記構成例1と異なる構成で同様の効果が得られる方法として、後述する図13で光強度制御方法を説明している。
【0060】
[構成例2]
図9は、本実施の形態のファイバ付きレーザ光源装置100Bのファイバ結合部の構成と仕組みを説明する図である。
【0061】
図9に示すように、ファイバ付きレーザ光源装置100Bは、照明用レーザビーム110をコリメートするレンズ111と、ファイバ206に入射する前のレーザ光強度を測定する受光器120と、レーザビームを一度集光するレンズ1101と、再び平行光へ変換するコリメートレンズ1102、ファイバ206への結合レンズ等からなるファイバ結合光学系114と、ファイバコネクタ115と、ファイバ206と、を備える。ファイバ付きレーザ光源装置100Bは、強度分布低減補正機構として、ファイバ結合光学系114を振動させるアクチュエータ118と、光の進行方向から見て結合レンズの手前にマイクロレンズアレイ701と、を備える。拡散板の拡散角は、2°程度である。
【0062】
図10は、ファイバのコアへの入射位置と出射位置との関係を示す模式図である。
【0063】
図10に示すように、ファイバに入射されるビームの入射ビーム位置802は、マイクロレンズアレイ701を設けた効果により、図7の入射ビーム位置502と比較してぼけた状態で合焦する。このため、出射側では、光強度が大きなリング上の部分に幅を持たせることが可能になり、アクチュエータ118の振幅をより小さくできるという効果がある。
【0064】
ここで、図8のファイバ付きレーザ光源装置100Aには、図9のマイクロレンズ701が無い。図8の構成の場合、振幅は±5μm程度必要である。図9のように、ファイバ付きレーザ光源装置100Bは、マイクロレンズ701を備えることで、振幅を±2μm程度とすることができる。
【0065】
図9の構成では、振幅が小さくできるため、レンズを振動させるための電力を削減することができる。また、より簡便な構成でアクチュエータを構成することができるという利点がある。
【0066】
また、アクチュエータ118の消費電力を低減するためには、共振型のアクチュエータを使用することが望ましい。
【0067】
アクチュエータ118は、電磁アクチュエータや圧電素子を使用することができる。1〜2kHzと周波数が高くなると併せて高周波の音も発生するため、アクチュエータ118は、100〜1kHzの周波数とすることが実用上望ましい。
【0068】
なお、アクチュエータ118は、レーザ点灯時のみ動作させることが望ましい。レーザ点灯時のみの動作とすることで、アクチュエータが発熱し、アクチュエータの周波数特性が変化することによる動作周波数変化を抑制することができる。
【0069】
図11は、ファイバ付きレーザ光源装置のファイバから出力される強度分布のプロファイルを示す図である。図11は、図9の構成例2で強度分布を改善した後の回転光学フィルタ206から出射されるビームプロファイルを示している。
【0070】
図11に示すように、均一な強度分布、いわゆる「トップハット」形状のビームプロファイルが得られている。図9のような拡散板を用いる方法でも、同じような形状のプロファイルが得られており、同様の結果が得られていることを確認している。
【0071】
ところで、従来でも、M値が5以上のレーザビームを使用して、ファイバから出射されるビームプロファイルを時間平均してトップハット形状を得る方法がいくつか提案されている。
【0072】
しかし、従来のように、ファイバを単純に振動させたりする方法では、本実施の形態のように、M値が2以下で発散角30°以下と小さなビーム品質のよいレーザ光を集光させる場合、図11のようないわゆるフラットトップ形状とならず、三角形のような形状となることを確認している。このことからも、M値で2以下のレーザビームを使用する場合は、本実施の形態が非常に有効であることが示されている。
【0073】
なお、本実施の形態において使用したファイバとして使用した光ファイバは、コア径が50μmあるいは105μmの石英系ステップインデックスファイバを使用しているが、使用形態にあわせてそれ以外の光ファイバを使用してもよい。
【0074】
また、本実施の形態では、コア径が50μmのステップインデックスファイバを使用したが、光ファイバの屈曲損失の点からコア系300μm以下の光ファイバを用いることが望ましい。本実施の形態のような強度分布のバラツキは、200μm以下のコア径のファイバで顕著となるため、200μm以下のファイバを用いることがより望ましい。
【0075】
また、本実施の形態では、ファイバに入射されるレーザビームのビーム品質(M値)が1.3、ビームの発散角が3°の波長変換レーザ光源を使用したが、M値で2以下、発散角30°以下のレーザビームであれば本構成の効果が十分に得られることを確認している。
【0076】
また、本実施の形態では、ファイバに入射されるレーザビームは、波長変換レーザ光源や半導体レーザ光源を用いていたが、ファイバレーザ等他のレーザ光源、あるいはこれらの光源を基本波として波長変換した光源でも使用可能である。この際、活性層に対して水平方向/垂直方向のいずれかあるいは両方のM値が2以下、かつ発散角が30°以下であれば十分効果がある。このとき、ビームの走査方向はM値が小さい軸方向に垂直な方向となっていることが望ましい。
【0077】
図12は、レーザ光源からコリメート光を合波する際における、ビーム直径の関係を示す模式図である。
【0078】
図12に示すように、波長変換レーザ光源のビーム1001のビーム直径w1は、半導体レーザ光源のビーム1002のビーム直径w2より大きい。波長変換レーザ光源101と半導体レーザ光源102とを合波する際には、半導体レーザ光源のslow軸側のビーム直径w2が波長変換レーザ光源のビーム直径以下となるように調整することが望ましい。
【0079】
このようなビーム直径の関係としておくことで、光ファイバ121への結合効率を高めた状態で、光ファイバ121から出射された際、両者の光を均一に照射することが可能となる。特に、半導体レーザ光源が発するレーザビームは、楕円状のビーム形状となっており、fast軸方向についての光ファイバとの結合ロスを低減できるため、特に有効である。
【0080】
さらに、アクチュエータでの振動方向は、半導体レーザ光源のslow軸側、つまり図10で示すとx軸に平行であることが望ましい。このように振動方向を規定することで、光ファイバへの光結合効率を低下させることなく入射位置を変化させることができ、出射側ビームの強度分布を均一化する効果を大きくすることができる。
【0081】
次に、本実施の形態の光源における、光強度制御方法について述べる。
【0082】
半導体レーザを用いて光量を調整する場合、電流のみで光量制御すると量子シュタルク効果などで発振波長が変化する場合がある。内視鏡など画像取得のための照明として使用する際、照明光の色温度を変化させたい場合は、発光時間(デューティー比)を変化させ発光比率を変え、色温度を制御することが望ましい。また、照明の明るさ(輝度)を変化させたい場合は、電流を制御し発光ピーク値を制御する方法をとることが望ましい。
【0083】
光強度制御の一例について説明する。
【0084】
図13は、レーザ光の発光タイミングと発光時間幅を示す図である。
【0085】
図13(a)は、定常時における時間に対するレーザ点灯タイミングと光出力との関係を示している。
【0086】
図13(a)において、バー1101,1103,1105は、緑色レーザ光を発生する波長変換レーザ光源の出力を示している。バー1101,1103,1105は、点灯時間幅がd1で、出力がP1で動作していることを示している。
【0087】
また、バー1102,1104,1106は、青色レーザ光を発生する半導体LDの出力を示している。バー1102,1104,1106は、青色レーザ光が点灯時間幅d2で、出力がP2で動作していることを示している。
【0088】
図13(b)は、色温度を変化させて、青みを増やした照明光とする場合のレーザ点灯タイミングを示している。
【0089】
図13(b)に示すように、緑色レーザ光の点灯時間幅をd1からd1’へと変化させ、青色レーザ光の点灯時間幅をd2からd2’へと変化させている。このとき、緑色レーザ光の点灯時間と青色レーザ光の点灯時間の和(d1+d2)は、次式(1)に示すように変化させない制御方法を採る。
【0090】
d1+d2=d1’+d2’ …(1)
【0091】
図13(c)は、照明光の強度を変化させる場合のレーザ点灯タイミングを示している。
【0092】
図13(c)では、色温度を変化させる場合と異なり、点灯時間幅を変化させずにピーク出力を変化させている。例えば、照明光の強度を小さくする場合、緑色レーザ光のピーク強度をP1からP1’へ変化させ、青色レーザ光のピーク強度をP2からP2’へ変化させている。
【0093】
このとき、色温度の変化量を小さくするために、次式(2)に示すようにピーク強度の変化量を緑色レーザ光と青色レーザ光で略同一割合としている。
【0094】
d1’÷d1≒d2’÷d2 …(2)
上述した光源制御方法を用いることで、照明光強度を落とさず色温度を変化させたり、色温度を変化させずに照明光強度を変化させたりすることが可能となる。
【0095】
以上詳細に説明したように、本実施の形態のファイバ付きレーザ光源装置100は、波長帯域が異なる、440nm〜490nmの波長の光を出力するレーザ光源102と、525nm〜570nmの波長の光を出力するレーザ光源101とを備える。ファイバ付きレーザ光源装置100は、レーザ光源101,102から発せられたレーザ光を導波させる光ファイバ121と、光ファイバ121に結合させるファイバ結合光学系114と、レーザ光が光ファイバ121へ結合する位置を微動させるアクチュエータ118と、を備え、ファイバ結合光学系114を構成する光学部品が、アクチュエータ118に保持されている構成を採る。
【0096】
ファイバ付きレーザ光源装置100は、発散角が30°以下と小さな光源を使用するため、光源が発する光の利用効率を80%以上に高めることができる。
【0097】
例えば、本実施の形態のファイバ付きレーザ光源装置100は、図2の光源200や図3の光源250と比較して、光源から発せられる光の発散角が30°以下となっているレーザ光源を使用することで、光利用効率を90%以上とすることができる。かつ、図2のような発散光源を用いた場合と比較して、レーザ光を集光したり、光ファイバに結合したりする光学部品の大きさを小さくすることが可能になる。具体的には、10mm以下のレンズを用いても光利用効率を90%以上とすることができるため、ランプやLEDを用いた光源と比較して、光学系を小型化できるという効果がある。
【0098】
さらに、デリバリー用の光ファイバ121へレーザ光を結合させるファイバ結合光学系114が、アクチュエータ118に保持されている。これにより、デリバリー用の光ファイバ121を交換した際、レーザ光源装置自身によるアライメントを可能にし、ファイバコアの位置補正を可能としている。その結果、高い結合効率を維持することが可能となり、レーザ光源装置自体の高効率化を図ることができる。
【0099】
(実施の形態2)
実施の形態1では、2種類の光源を用いる場合について説明した。実施の形態2は、3種類以上の光源を用いる場合について説明する。
【0100】
図14は、本発明の実施の形態2に係るレーザ光源装置の概略構成を示す模式図である。図1と同一構成部分には、同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
【0101】
図14に示すように、3つ以上の波長帯域を持つファイバ付きレーザ光源装置1200は、図1のファイバ付きレーザ光源装置100に加えて、半導体レーザ光源1201、コリメートレンズ1202、及びダイクロイックミラー1203を備える。
【0102】
ファイバ付きレーザ光源装置1200は、半導体レーザ光源1201から発せられる光を光ファイバ121へ結合させるビームに合波させている。
【0103】
3種類以上の光源を用いる場合も、2種類の光源を用いる場合と同様の効果を得ることができる。
【0104】
例えば、半導体レーザ光源1201として、波長635〜645nmの赤色半導体レーザを使用することで、光ファイバ121から白色光を出力させることができる。また、赤色レーザ光源以外にも、波長550nm〜570nmの黄色レーザ光などの光源を追加し、4〜5種類の波長帯域を発生させる光源とすることで、内視鏡光源だけでなく顕微鏡用光源等に使用することも可能になる。
【0105】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
【0106】
上記各実施の形態では、結合光学系を構成する結合レンズを変位させるアクチュエータとして、ムービングコイル型の電磁アクチュエータを使用したが、超音波モータを使用したアクチュエータを使用してもよい。
【0107】
上記各実施の形態では、レーザ光源装置、ファイバ付レーザ光源装置という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、レーザ光源、レーザ機器等であってもよい。
【0108】
さらに、上記レーザ光源装置を構成する各構成、例えばレーザ光源の種類・方法などは前述した実施の形態に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明のレーザ光源装置は、ビーム品質のよいレーザ光源を使用したファイバ付レーザ光源を実現することができ、レーザ機器の高効率化に伴う低消費電力化、及び、良好なビームプロファイルを持つファイバ付きレーザ光源を実現することができる。かかるレーザ光源装置は、内視鏡光源、顕微鏡用光源として有用である。
【符号の説明】
【0110】
100,100A,100B,1200 ファイバ付きレーザ光源装置
101,102 レーザ光源
103 励起レーザ光源
104 レーザ媒質
105 レーザ媒質端面
106 出力ミラー
107 光共振器
109 波長変換素子(非線形光学素子)
111,112 コリメートレンズ
113 誘電体多層膜ミラー(ダイクロイックミラー)
114 ファイバ結合光学系
115 コネクタ
116 電源装置
117 制御装置
118 アクチュエータ
119 ビームスプリッタ
120 受光器
121 光ファイバ
1201 半導体レーザ光源
1202 コリメートレンズ
1203 ダイクロイックミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長帯域が異なる少なくとも二つの光源を有し、
前記二つの光源が、
440nm〜490nmの波長の光を出力する第1の光源と、
525nm〜570nmの波長の光を出力する第2の光源であり、
前記第1及び第2の光源から発せられたレーザ光を導波させる光ファイバと、
前記光ファイバに結合させる結合光学系と、
前記レーザ光が前記光ファイバへ結合する位置を微動させるアクチュエータと、を備え、
前記結合光学系を構成する光学部品が、前記アクチュエータに保持されている、レーザ光源装置。
【請求項2】
レーザの出力と色温度を制御する制御部と、
レーザ光の強度をモニタする受光器と、を備える請求項1記載のレーザ光源装置。
【請求項3】
前記光学部品は、前記光ファイバへの結合レンズである、請求項1記載のレーザ光源装置。
【請求項4】
前記光学部品に入射する前に、前記レーザ光が通過するように設置されたマイクロレンズアレイを備える、請求項1記載のレーザ光源装置。
【請求項5】
前記第1の光源又は前記第2の光源から発せられるレーザビームのM値が、2以下である、請求項1記載のレーザ光源装置。
【請求項6】
前記第1の光源又は前記第2の光源のビームの広がり角が、30°以下である、請求項1記載のレーザ光源装置。
【請求項7】
前記第1の光源又は前記第2の光源は、半導体レーザである、請求項1記載のレーザ光源装置。
【請求項8】
前記光ファイバへレーザビームを結合させる際、レーザビームの入射位置を前記光ファイバのコアにおける中心位置から外側方向に時間的に走査する機構を備える、請求項1記載のレーザ光源装置。
【請求項9】
レーザ光源が点灯している期間に100〜1kHzの周波数で、前記アクチュエータを振動させる、請求項1記載のレーザ光源装置。
【請求項10】
半導体レーザ光源から発せられるレーザビームのslow軸方向に、前記アクチュエータを振動させる、請求項1記載のレーザ光源装置。
【請求項11】
前記アクチュエータは、電磁アクチュエータである、請求項1記載のレーザ光源装置。
【請求項12】
前記結合レンズにより前記光ファイバの端面に結合されるレーザビーム位置の変位量が±5μmである、請求項1記載のレーザ光源装置。
【請求項13】
前記結合レンズにより前記光ファイバの端面に結合されるレーザビーム位置の変位量が±2μmである、請求項1記載のレーザ光源装置。
【請求項14】
前記ファイバがコネクタにより着脱可能である、請求項1記載のレーザ光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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