説明

レーザ光源

【課題】高パワー出力に対して耐久性の高いレーザ光源を提供する。
【解決手段】レーザ光をパルス発振するレーザ光源1であって、共振光路を形成する共振器と、共振光路上に挿入され、励起エネルギが供給されることにより放射光が出力される希土類元素が添加されたファイバ11と、ファイバに励起エネルギを連続的に供給する励起手段と、共振器の共振器損失を変調するQスイッチ手段と、ファイバの端部から出力される放射光を集光する集光レンズ18と、を備え、Qスイッチ手段は集光レンズにより集光された放射光の集光位置に配置され、放射光を透過又は遮断して共振光路の形成及び遮断を機械的に変更する。共振光路の形成及び遮断を機械的に変更するQスイッチ手段は、音響光学素子によるQスイッチ手段と比較して高パワーで出力された放射光に対しての耐久性が高いため、レーザ光源の破損を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光源に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光をパルス発振するレーザ光源は、励起エネルギが供給されることにより放射光を発生するレーザ媒質が共振光路上に配置された共振器と、共振器の共振器損失を変調するQスイッチ手段と、レーザ媒質に励起エネルギを連続的に供給する励起手段と、を備えている。
【0003】
このレーザ光源では、Qスイッチ手段により共振器の共振器損失が大きい値に設定されているときに、励起手段による励起エネルギ供給によりレーザ媒質の反転分布が高められ、その後にQスイッチ手段により共振器の共振器損失が小さい値に設定されると、共振器の共振光路上に配置されているレーザ媒質において誘導放出が短期間に発生する。この誘導放射光が共振器から外部へレーザ光として出力される。上記の変調を周期的に行うことによって、ピークパワーが高いパルスレーザ光が出力される。このようなレーザ光源は、ピークパワーが高いパルス光を出力することができることから、レーザ加工、光計測、光通信など、多くの分野で活用される。
【0004】
上記のQスイッチ手段としては、例えば音響光学(AO)素子を用いる方法が特許文献1に示されている。
【特許文献1】特許第3331726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、用途の広がりから、よりピークパワーが高いパルスレーザ光を出力するレーザ光源に対する要望が高まっている。これに対して、特許文献1記載の光ファイバレーザ装置のように音響光学素子をQスイッチ手段として用いた場合と比較して、より高パワー出力に対して高い耐久性を有するレーザ光源の提供が求められるようになった。
【0006】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、高パワー出力に対して高い耐久性を有するレーザ光源の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るレーザ光源は、レーザ光をパルス発振するレーザ光源であって、共振光路を形成する共振器と、共振光路上に挿入され、励起エネルギが供給されることにより放射光が出力される希土類元素添加ファイバと、希土類元素添加ファイバに励起エネルギを連続的に供給する励起手段と、共振器の共振器損失を変調するQスイッチ手段と、希土類元素添加ファイバからの放射光を拡光した後の共振光路上に設けられた集光レンズとを備え、Qスイッチ手段は、集光レンズの集光位置に配置され、共振光路の形成及び遮断を機械的に変更することを特徴とする。
【0008】
上記のレーザ光源では、連続的に励起エネルギが供給されるファイバから出力される放射光が、集光レンズにより集光された後、Qスイッチ手段に入射する。ここでQスイッチ手段によって放射光が透過される場合には、反射面と出射面との間で放射光の共振光路が形成される。一方、Qスイッチ手段によって放射光が遮断される場合には、共振光路が形成されないため、共振器損失が最大となる。このように上記のレーザ光源では、Qスイッチ手段において放射光の透過及び遮断を周期的に変更することで共振光路の形成及び遮断が変更され、パルス光が出射される。上記のレーザ光源を構成するQスイッチ手段は、音響光学素子によるQスイッチ手段と比較して高パワーで出力された放射光に対しての耐久性が高く、レーザ光源の破損を抑制することができる。したがって、高パワー出力に対して耐久性の高いレーザ光源が提供される。また、集光レンズの集光位置にQスイッチ手段を配置することにより、Qスイッチ手段の切替えに係る繰り返し周波数を高めることが容易となり、高周波数のパルス光を出射させることができる。上記の構成は、音響光学素子によるQスイッチ手段と比較して安価に作成することができるという効果も奏される。
【0009】
ここで、上記の作用を効果的に奏する構成としては、具体的に、Qスイッチ手段は、放射光を吸収又は散乱する板部と、回転軸を中心とする円周上に配置された複数の開口部とを有する円板と、回転軸を中心に円板を回転させる駆動部とを含む態様とすることが挙げられる。
【0010】
また、上記の作用を効果的に奏する他の構成としては、具体的に、Qスイッチ手段は、放射光を吸収又は散乱する遮蔽部と、当該遮蔽部を振動により移動させる駆動部と、を含む態様とすることが挙げられる。
【0011】
また、本発明に係るレーザ光源は、レーザ光をパルス発振するレーザ光源であって、反射面と出射面との間で共振光路を形成する共振器と、共振光路上に挿入され、励起エネルギが供給されることにより放射光が出力される希土類元素添加ファイバと、希土類元素添加ファイバに励起エネルギを連続的に供給する励起手段と、共振器の共振器損失を変調するQスイッチ手段とを備え、Qスイッチ手段は、反射面を操作することにより、共振光路の形成及び遮断を機械的に変更することを特徴とする。
【0012】
上記のレーザ光源によれば、共振器を構成する反射面の共振光路の形成及び遮断を機械的に変更することによって共振器損失を変調するQスイッチ手段として機能するため、音響光学素子によるQスイッチ手段と比較して高パワー出力時においても高い耐久性を有するレーザ光源が提供される。
【0013】
ここで、上記の作用を効果的に奏する構成としては、具体的に、Qスイッチ手段は、多角柱状体で、その中心軸の回りに回転し、回転する周面である側面には、共振器の一部を構成する反射ミラーを有し、回転により反射ミラーが共振光路に対して垂直な位置となる回転体と、回転体を回転させる駆動部とを含み、回転体の回転により、共振光路の形成及び遮断を機械的に変更する態様とすることが挙げられる。
【0014】
また、上記の作用を効果的に奏する他の構成としては、具体的に、Qスイッチ手段は、板部と共振器の一部を構成する反射部が、回転軸を中心とする円周上に配置され、板部は放射光を透過、吸収又は散乱する領域を有し、反射部は放射光を反射する円板と、円板を回転させる駆動部とを含み、円板の回転により、共振光路の形成及び遮断を機械的に変更する態様としてもよい。
【0015】
さらに、上記の作用を効果的に奏する他の構成としては、具体的に、Qスイッチ手段は、共振器の一部を構成し、放射光を反射する反射板と、反射板を振動により移動させる駆動部とを含み、反射板の位置を調整することで、共振光路の形成及び遮断を機械的に変更する態様とすることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高パワー出力に対して高い耐久性を有するレーザ光源が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
(第1実施形態)
本発明に係るレーザ光源の第1実施形態について説明する。図1は第1実施形態に係るレーザ光源1の構成を示す図である。この図に示されるレーザ光源1は、光増幅性ファイバ11、励起光源12、ダイクロイックミラー13、半透過ミラー14、集光レンズ15、全反射ミラー16、レンズ17,18,19及びQスイッチ手段20により構成される。
【0019】
光増幅性ファイバ11は、光導波領域に蛍光性を有する希土類元素が添加された光ファイバからなる増幅媒体であって、その蛍光性元素を励起し得る波長の励起光が供給されると、その希土類元素から蛍光を発する。この希土類元素として好適に用いられる元素はYb元素、Nd元素、Pr元素、Er元素等である。
【0020】
励起光源12は、光増幅性ファイバ11に添加された蛍光性元素を励起するための励起光を連続出力する。この励起光源12は好適にはレーザダイオードを含む。ダイクロイックミラー13は、この励起光源12から出力された励起光を入力して、レンズ15に対して出射させる。また、ダイクロイックミラー13は、半透過ミラー14により反射された光を透過して、レンズ15に対して出力する。さらに、ダイクロイックミラー13は、光増幅性ファイバ11の蛍光性元素から放出されて端面11aから出力されレンズ15に入射し、レンズ15から出射された放射光を透過して、半透過ミラー14へ出力する。
【0021】
レンズ15は、焦点位置が光増幅性ファイバ11の端面11aとなる位置に配置され、ダイクロイックミラー13から出力された光を入力し、光増幅性ファイバ11の端面11aに対して集光する。また、光増幅性ファイバ11の端面11aから出力された放射光を入力し、平行光としてダイクロイックミラー13に対して出力する。
【0022】
レンズ17は、焦点位置が光増幅性ファイバ11の端面11bとなる位置に配置され、光増幅性ファイバ11の端面11bから出力された放射光を入力して平行光として出力する。また、レンズ18から出力された放射光を集光し、光増幅性ファイバ11の端面11bへ入力する。
【0023】
レンズ18は、光増幅性ファイバ11の端面11aから出力されレンズ17に入力し、レンズ17から出力された放射光を集光させる集光レンズとして機能する。レンズ17から出力された放射光は、レンズ18の集光位置に集光され、当該集光位置に配置されたQスイッチ手段20に入力される。また、レンズ18は、Qスイッチ手段20から出力された放射光を入力し、平行光としてレンズ17の方向へ出力する。レンズ18としては、例えば色収差補正された集光レンズ(アクロマティックレンズ)が用いられる。
【0024】
また、レンズ19は、Qスイッチ手段20から出力された放射光を入力し、平行光として全反射ミラー16に入力すると共に、全反射ミラー16から出力された放射光を集光させる。レンズ18とレンズ19とは、レンズ18のQスイッチ手段20側の焦点位置とレンズ19のQスイッチ手段20側の焦点位置とが一致するように配置される。そしてこの焦点位置にQスイッチ手段20が配置される。
【0025】
Qスイッチ手段20は、チョッパディスク(円板)21と、回転軸22と、駆動部23とにより構成される。チョッパディスク21の表面は光を散乱又は吸収する構成であり、図2に示すように回転軸22を中心とする円周上に複数個の開口部21aを備える。開口部21aはチョッパディスクの回転軸22を中心とする円周上に等間隔に配置される。そして、回転軸22を中心にチョッパディスク21を回転させたとき、開口部21aがレンズ18による放射光の集光位置を通過するように、チョッパディスク21及びその回転軸22が配置される。さらにこの回転軸22を回転させる駆動部23が配置される。駆動部23は、モータ等により構成され、一定の速度で回転軸22及びチョッパディスク21を回転させることによって、レンズ18により集光される放射光の集光位置をチョッパディスク21及び開口部21aが交互に通過するように構成される。
【0026】
上記のように構成されるレーザ光源1において、励起光源12から連続出力された励起光は、ダイクロイックミラー13によってレンズ15へ出力される。レンズ15から出力された光は、集光されてレーザ媒質である光増幅性ファイバ11の端面11aに入力し、光増幅性ファイバ11に添加された蛍光性元素を励起する。すなわち、半透過ミラー14と全反射ミラー16との間の光学系とがファブリペロ型の共振器を構成しており、その共振器の共振光路上にレーザ媒質としての光増幅性ファイバ11が配置されている。
【0027】
ここで、光増幅性ファイバの端面11bから放出された放射光は、レンズ17により平行光として出力された後、レンズ18により集光される。そして、ここで、Qスイッチ手段20を構成するチョッパディスク21の開口部21aがレンズ18(レンズ19)の焦点位置にある場合には、レンズ18から出力された放射光はチョッパディスク21の開口部21aを通りレンズ19に入力した後、レンズ19から平行光として出力され全反射ミラー16に到達する。さらに、全反射ミラー16により反射された放射光は再びレンズ19により集光される。そして、上述のようにチョッパディスク21の開口部21aがレンズ18(レンズ19)の焦点位置にある場合には、開口部21aを通りレンズ18へ入力し、レンズ18によりコリメートされた後レンズ17により集光された光は光増幅性ファイバ11の端面11bに入射する。また光増幅性ファイバ11の端面11aから出力された放射光は、ダイクロイックミラー13により透過され、半透過ミラー14に到達する。半透過ミラー14に到達した放射光のうち、一部は透過して出力されるが、その他は反射して再びダイクロイックミラー13を介してレンズ15に入力する。
【0028】
上述のように、レンズ18の集光位置(レンズ19の集光位置)にチョッパディスク21の開口部21aが配置される場合には、この開口部21aを放射光が通過することができる。一方、レンズ18の集光位置にチョッパディスク21の板部が配置される場合には、レンズ18より出力されたチョッパディスク21の板部に到達した放射光は、チョッパディスク21の表面により吸収又は散乱されることから、共振器の共振器損失が極大となる。このように、このように、本実施形態のチョッパディスク21が回転して放射光の透過及び遮断を切り替えることによってQスイッチ手段20として機能し、共振器からパルス光を出力させることができる。
【0029】
第1実施形態に係るレーザ光源1の具体的な構成例は以下のとおりである。光増幅性ファイバ11は光導波領域にYb元素が添加された光ファイバであり、励起光源12はYb元素を励起し得る波長975nm帯の励起光を出力し、このとき、光増幅性ファイバ11は波長1.06μm帯の蛍光を放出する。励起光源12から出力された励起光を入力するダイクロイックミラー13は、波長975nmの光を反射し、波長1.06μmの光を透過する。レンズ15,18,19は、焦点距離f=50mmのレンズであり、レンズ17は焦点距離f=50mmのアクロマティックレンズである。Qスイッチ手段20を構成するチョッパディスク21は直径40mm、厚さ0.3mmのSUSからなり、その表面は光を散乱又は吸収させる加工が施される。また、チョッパディスクに設けられた開口部21aの直径は1mmである。また、チョッパディスク21を回転させる駆動部23の回転速度は、8000rpmである。
【0030】
本実施形態に係るレーザ光源1によれば、上記のように開口部21aを備えるチョッパディスク21によるQスイッチ手段20が放射光の透過及び遮断を機械的に切り替えて、共振光路の形成及び遮断を変更することによって、音響光学素子をQスイッチ手段として用いた場合と比較して照射強度に対する耐性が強くなることから、高パワー出力に対して高い耐久性を得ることができる。
【0031】
また、上記のレーザ光源1では、Qスイッチ手段20と光増幅性ファイバ11の端面11bとの間にレンズ17,18が配置されている。したがって、Qスイッチ手段20のチョッパディスク21への放射光の照射によるチョッパディスク21の熱損傷(アブレーション等)により発生する揮発成分が光増幅性ファイバ11の端面11bに付着することがなく、端面11bの汚れによるレーザ光源1の性能低下を抑制することもできる。
【0032】
さらに、上記のレーザ光源1では、Qスイッチ手段20はレンズ18,19の集光位置に配置され、レンズ18,19により集光された放射光がQスイッチ手段20に入射する構成となっている。このように集光された放射光に対してQスイッチ手段20が用いられるため、Qスイッチ手段20を構成するチョッパディスク21がより高速に回転することで、共振光路の形成及び遮蔽をより高速に切り替えることができ、レーザ光源1から出力されるレーザパルス光の時間幅を短くすることができる。
【0033】
(第2実施形態)
本発明に係るレーザ光源の第2実施形態について説明する。図3は、第2実施形態に係るレーザ光源2の構成図である。本実施形態に係るレーザ光源2は、Qスイッチ手段24が板状の遮蔽板25とこの遮蔽板25を振動により移動させる駆動部26とから構成される点である点以外は、第1実施形態に係るレーザ光源1と同様である。
【0034】
すなわち、本実施形態に係るレーザ光源2のQスイッチ手段24を構成する遮蔽板25がレンズ18及びレンズ19の集光位置にある場合には、遮蔽板25により光が散乱又は吸収されるため、光増幅性ファイバ11の端面11bから出力された放射光を遮断する。したがって、共振器の共振光路が遮断され、共振器損失が極大となる。また、遮蔽板25がレンズ18及びレンズ19の集光位置にない場合、すなわち、遮蔽部25の端又は遮蔽部25に設けられた開孔やスリット等がレンズ18及びレンズ19の集光位置にある場合には、レンズ18から出力された放射光はレンズ19に入力すると共に、レンズ19から出力された放射光はレンズ18に入力するため、共振光路が形成される。そして、駆動部26により遮蔽板25を移動させて共振光路の形成及び遮断を切り替えることによって、Qスイッチ手段として機能し、レーザ光源2からパルス光を出力することができる。
【0035】
なお、第2実施形態に係るレーザ光源2の具体的な構成例は、Qスイッチ手段24をのぞいて第1実施形態に係るレーザ光源1と同様である。Qスイッチ手段24を構成する遮蔽板25は、大きさが10mm×20mm、厚さが0.3mmのSUSであり、表面に光が照射した場合に散乱又は吸収する加工が施されている。また、駆動部26は圧電素子により構成される。
【0036】
第2実施形態に係るレーザ光源2の場合でも、第1実施形態に係るレーザ光源1と同様に、共振光路の形成及び遮断を切り替えるQスイッチ手段24は、音響光学素子をQスイッチ手段として用いた場合と比較して照射強度に対する耐性が強いため、高パワー出力に対して高い耐久性を得ることができる。
【0037】
また、第1実施形態に係るレーザ光源1と同様に、Qスイッチ手段24を構成する遮蔽板25への放射光の照射による遮蔽板25の熱損傷により発生する揮発成分が光増幅性ファイバ11の端面11bに付着することがなく、端面11bの汚れによるレーザ光源2の性能低下を抑制することもできる。
【0038】
さらに、第1実施形態に係るレーザ光源1と同様に、Qスイッチ手段24はレンズ18,19の集光位置に配置され、レンズ18,19により集光された放射光が入射する構成となっている。したがって、Qスイッチ手段24を構成する遮蔽板25の位置をより高速に移動させることで共振光路の形成及び遮蔽をより高速に切り替えることができ、レーザ光源2から出力されるレーザパルス光の時間幅を短くすることができる。
【0039】
(第3実施形態)
本発明に係るレーザ光源の第3実施形態について説明する。図4は、第3実施形態に係るレーザ光源3の構成図である。本実施形態に係るレーザ光源3は、共振器を構成する反射面が複数枚のミラーから構成され、それが移動することによってQスイッチ手段として機能する点が第1実施形態に係るレーザ光源1と異なる点である。
【0040】
すなわち、第1実施形態に係るレーザ光源1の全反射ミラー16に代えて、回転駆動ミラー32を備える。回転駆動ミラー32は、具体的には光増幅性ファイバ11の端面11bから出射された放射光は、レンズ17によりコリメートされた光に対して垂直な回転軸を中心に回転することができる多角柱(図4では六角柱)であり、その側面32aが反射ミラーで覆われている。この回転駆動ミラー32は図示していない駆動部により回転軸を中心に回転することにより、側面32aの反射ミラーの位置が動く構成を備えている。さらに、回転駆動ミラー32は、ブラックボックス31に入れられており、レンズ17によりコリメートされ出力された放射光が入射する方向にのみ、例えば直径3mmのピンホール33が設けられる。
【0041】
このような構成を有するレーザ光源3では、光増幅性ファイバ11の端面11bから出射され、レンズ17によりコリメートされた放射光は、ピンホール33からブラックボックス31へ入射し、ブラックボックス31内に設けられた回転駆動ミラー32の側面32aを照射する。
【0042】
ここで、回転駆動ミラー32の側面32aのいずれか一枚が上述の放射光の入射する方向に対して垂直であるときに側面32aに到達した放射光は、側面32aで反射された後に再びピンホール33から出射され、レンズ17に入射することによって共振光路が形成される。一方、側面32aが放射光の入射する方向に対して垂直となっていないときに側面32aに到達した放射光は、側面32aによって入射した方向とは異なる方向に反射されるため、ブラックボックス31から外部へ出射されず共振光路が遮断され、共振器損失は最大となる。駆動部によって回転駆動ミラー32を回転させることによって回転駆動ミラー32がQスイッチ手段として機能し、側面32aによって共振光路が形成される場合と遮断される場合とが交互に繰り返されるため、レーザ光源3からパルス光を出力することができる。
【0043】
第3実施形態に係るレーザ光源3の場合、共振光路を構成する反射面が共振光路の形成及び遮断を切り替えるQスイッチ手段として機能するため、音響光学素子をQスイッチ手段として用いた場合と比較して、高パワー出力に対して高い耐久性を得ることができる。
【0044】
また、Qスイッチ手段として機能する回転駆動ミラー32の側面32aは全反射ミラーで覆われていて、放射光が照射することによるミラーの熱損傷は発生しないことから、光増幅性ファイバ11の端面11bの損傷の発生は抑制される。また、回転駆動ミラー32が配置されるブラックボックス31と光増幅性ファイバ11の端面11bとの間にはレンズ17が配置されていることから、ブラックボックス31が回転駆動ミラー32により反射された放射光により熱損傷した場合であっても、この熱損傷によって光増幅性ファイバ11の端面11bに汚れが付着することによる性能低下を抑制することができる。
【0045】
(第4実施形態)
本発明に係るレーザ光源の第4実施形態について説明する。図5は、第4実施形態に係るレーザ光源4の構成図である。本実施形態に係るレーザ光源4は、共振器を構成する反射面が回転軸を中心に回転する円板の表面に設けられ、それが移動することによってQスイッチ手段として機能する点が第3実施形態に係るレーザ光源3と異なる点である。
【0046】
第4実施形態に係るレーザ光源4では、第3実施形態に係るレーザ光源3の回転駆動ミラー32に代えて、駆動部37によって回転軸36を中心に回転するディスク(円板)35がブラックボックス31の内部に配置される。ディスク35は例えば直径40mmのアルマイト処理されたアルミ板等であり、その中心部に回転軸36を備える。さらに、図6に示すように回転軸36を中心とする円周上に複数個の反射部35aを備える。反射部35aは例えば直径3.5mmの円形の全反射ミラーであり円周上に等間隔で配置される。また、反射部35aの表面は、レンズ17から出射されピンホール33を経てブラックボックス31内に入射する放射光に対して垂直な面を形成する。そして、回転軸36を中心にディスク35を回転させたとき、反射部35aがレンズ17から出力され、ピンホール33を介して入射する放射光の照射位置に位置するように、ディスク35及びその回転軸36を配置される。さらにこの回転軸36を回転させる駆動部37が配置される。駆動部37は、モータ等により構成され、一定の速度で回転軸36及びディスク35を回転させることによって、放射光の照射位置をディスク35の板部(反射部35aではない部分)及び反射部35aが交互に通過するように構成される。なお、図5では、駆動部37はブラックボックス31の外部に設けられているが、内部に設けてもよい。
【0047】
このレーザ光源4において、ピンホール33を経てブラックボックス31内に入射した放射光の照射位置にディスク35の反射部35aが配置される場合には、この反射部35aにより放射光が反射され、ピンホール33を経て再びレンズ17に入射する。これにより、共振光路が形成される。一方、放射光の照射位置にディスク35の板部が配置される場合には、ピンホール33を経てブラックボックス31内に入射した放射光は、ディスク35の表面により吸収又は散乱され、ブラックボックス31のピンホール33からは出射されない。したがって、共振光路が遮断されるため共振器の共振器損失が極大となる。このように、本実施形態のレーザ光源4では、ディスク35が回転して放射光の照射位置に反射部35aと板部とを交互に配置して放射光路の形成及び遮断を切り替えることによりQスイッチ手段として機能し、共振器からパルス光を出力させることができる。
【0048】
上記の構成を有するレーザ光源4では、共振光路を構成する反射面がディスク35からなり、回転させることで共振光路の形成及び遮断を切り替えるQスイッチ手段として機能するため、音響光学素子をQスイッチ手段として用いた場合と比較して、高パワー出力に対して高い耐久性を得ることができる。
【0049】
また、Qスイッチ手段として機能するディスク35はブラックボックス31に覆われており、ブラックボックス31と光増幅性ファイバ11の端面11bとの間にはレンズ17が配置されていることから、ディスク35やブラックボックス31が放射光により熱損傷した場合であっても、この熱損傷によって光増幅性ファイバ11の端面11bに汚れが付着することによる性能低下を抑制することができる。
【0050】
(第5実施形態)
本発明に係るレーザ光源の第5実施形態について説明する。図7は、第5実施形態に係るレーザ光源5の構成図である。本実施形態に係るレーザ光源5は、共振器を構成する反射面が板状の全反射ミラー39とこの全反射ミラー39を移動させる駆動部41とから構成され、全反射ミラー39が振動により移動することによりQスイッチ手段を構成する点以外は、第4実施形態に係るレーザ光源4と同様である。
【0051】
第5実施形態に係るレーザ光源5では、第4実施形態に係るレーザ光源4のディスク35に代えて、支持部40を介して駆動部41によって移動される全反射ミラー39がブラックボックス31内に配置される。駆動部41は例えば圧電素子等により構成される。また、全反射ミラー39は、ピンホール33を経てブラックボックス31内に入射した放射光の照射位置にある場合には、放射光の光路に対して垂直になるように配置される。そして、放射光の照射位置に全反射ミラー39が配置される場合には、この全反射ミラー39により放射光が反射され、ピンホール33を経て再びレンズ17に入射する。これにより、共振光路が形成される。一方、放射光の照射位置に全反射ミラー39が無い場合、すなわち、全反射ミラー39の端又は全反射ミラー39に設けられた開孔やスリット等が放射光の照射位置にある場合には、ピンホール33を経てブラックボックス31内に入射した放射光は、ブラックボックス31の内壁に到達することとなる。したがって、共振光路が遮断されるため共振器の共振器損失が極大となる。駆動部40は全反射ミラー39を移動させることにより、共振光路の形成及び遮断を繰り返す。この結果、全反射ミラー39を内部に備えるブラックボックス31がQスイッチ手段として機能し、共振器からパルス光を出力させることができる。
【0052】
したがって、第5実施形態に係るレーザ光源5の場合でも、共振光路を構成する反射面が駆動部41によって移動される全反射ミラー39からなり、全反射ミラー39の移動によって共振光路の形成及び遮断を切り替えるQスイッチ手段として機能するため、音響光学素子をQスイッチ手段として用いた場合と比較して、高パワー出力に対して高い耐久性を得ることができる。
【0053】
また、Qスイッチ手段として機能するディスク35はブラックボックス31に覆われており、ブラックボックス31と光増幅性ファイバ11の端面11bとの間にはレンズ17が配置されていることから、ディスク35やブラックボックス31が放射光により熱損傷した場合であっても、この熱損傷によって光増幅性ファイバ11の端面11bに汚れが付着することによる性能低下を抑制することができる。
【0054】
なお、第5実施形態のレーザ光源5の変形例として、全反射ミラー39の位置に代えて、放射光に対する全反射ミラー39の角度を駆動部41により変更することによっても、全反射ミラー39をQスイッチ手段として機能させることができる。具体的には、全反射ミラー39がピンホール33を経てブラックボックス31内に入射する放射光に対して垂直な面である場合には、放射光がピンホール33に向かって反射されることから共振光路が形成される。一方、放射光に対して垂直な面でない場合には、全反射ミラー39により反射された放射光はピンホール33とは異なる方向に反射されるため、共振光路が遮断され、共振器損失が最大となる。このように、全反射ミラー39の角度を変更した場合でも、レーザ光源5からパルス光を出力させることができる。この変形例の場合であっても、高パワー出力に対して高い耐久性を得ることができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0056】
例えば、第1実施形態及び第2実施形態において、Qスイッチ手段20,24は、光増幅性ファイバ11の端面11bと全反射ミラー16との間に配置されているが、共振器内の他の場所に配置することもでき、例えばレンズ15とダイクロイックミラー13との間等に配置することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1実施形態に係るレーザ光源1の構成を示す図である。
【図2】チョッパディスク21を説明する図である。
【図3】第2実施形態に係るレーザ光源2の構成を示す図である。
【図4】第3実施形態に係るレーザ光源3の構成を示す図である。
【図5】第4実施形態に係るレーザ光源4の構成を示す図である。
【図6】ディスク35を説明する図である。
【図7】第5実施形態に係るレーザ光源5の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1,2,3,4,5…レーザ光源、11…光増幅性ファイバ、12…励起光源、13…ダイクロイックミラー、14…半透過性ミラー、15,17,18,19…レンズ、16,39…全反射ミラー、20,24…Qスイッチ手段、21…チョッパディスク、23,26、37,41…駆動部、25…遮蔽板、32…回転駆動ミラー、35…ディスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光をパルス発振するレーザ光源であって、
共振光路を形成する共振器と、
前記共振光路上に挿入され、励起エネルギが供給されることにより放射光が出力される希土類元素添加ファイバと、
前記希土類元素添加ファイバに励起エネルギを連続的に供給する励起手段と、
前記共振器の共振器損失を変調するQスイッチ手段と、
前記希土類元素添加ファイバからの放射光を拡光した後の前記共振光路上に設けられた集光レンズとを備え、
前記Qスイッチ手段は、前記集光レンズの集光位置に配置され、前記共振光路の形成及び遮断を機械的に変更することを特徴とするレーザ光源。
【請求項2】
前記Qスイッチ手段は、
前記放射光を吸収又は散乱する板部と、回転軸を中心とする円周上に配置された複数の開口部とを有する円板と、
前記回転軸を中心に前記円板を回転させる駆動部とを含むことを特徴とする請求項1記載のレーザ光源。
【請求項3】
前記Qスイッチ手段は、
前記放射光を吸収又は散乱する遮蔽部と、当該遮蔽部を振動により移動させる駆動部と、を含むこと特徴とする請求項1記載のレーザ光源。
【請求項4】
レーザ光をパルス発振するレーザ光源であって、
反射面と出射面との間で共振光路を形成する共振器と、
前記共振光路上に挿入され、励起エネルギが供給されることにより放射光が出力される希土類元素添加ファイバと、
前記希土類元素添加ファイバに励起エネルギを連続的に供給する励起手段と、
前記共振器の共振器損失を変調するQスイッチ手段とを備え、
前記Qスイッチ手段は、前記反射面を操作することにより、前記共振光路の形成及び遮断を機械的に変更することを特徴とするレーザ光源。
【請求項5】
前記Qスイッチ手段は、
多角柱状体で、その中心軸の回りに回転し、回転する周面である側面には、前記共振器の一部を構成する反射ミラーを有し、回転により前記反射ミラーが前記共振光路に対して垂直な位置となる回転体と、
前記回転体を回転させる駆動部とを含み、
前記回転体の回転により、前記共振光路の形成及び遮断を機械的に変更することを特徴とする請求項4記載のレーザ光源。
【請求項6】
前記Qスイッチ手段は、
前記板部と前記共振器の一部を構成する反射部が、回転軸を中心とする円周上に配置され、前記板部は前記放射光を透過、吸収又は散乱する領域を有し、前記反射部は前記放射光を反射する円板と、
前記円板を回転させる駆動部とを含み、
前記円板の回転により、前記共振光路の形成及び遮断を機械的に変更することを特徴とする請求項4記載のレーザ光源。
【請求項7】
前記Qスイッチ手段は、
前記共振器の一部を構成し、前記放射光を反射する反射板と、
前記反射板を振動により移動させる駆動部とを含み、
前記反射板の位置を調整することで、前記共振光路の形成及び遮断を機械的に変更することを特徴とする請求項4記載のレーザ光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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