説明

レーザ式ガス分析装置及びレーザ式ガス分析方法

【課題】レーザを照射する分析対象ガスに同伴されるダスト等が分析精度に影響を及ぼすのを抑制することのできるレーザ式ガス分析装置を提供する。
【解決手段】レーザを照射するレーザ光照射装置2と、照射されたレーザを受光するレーザ光受光装置3を、分析対象ガスを内部空間に含む機器に配置してガス分析を行うレーザ式ガス分析装置において、前記レーザ光照射装置から前記レーザ光受光装置側に向けて前記機器の内部空間に突出させた外筒22が配置され、両端が前記レーザ光照射装置からのレーザを透過する光透過性部材によって閉塞された密閉空間を有する内筒23が前記外筒内に配置された二重管ノズルを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ式ガス分析装置及びレーザ式ガス分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば焼却,溶融,乾留などが行われる工業炉を安定操業する条件の一つとして、炉内ガス(例えば、乾留ガスや発生ガスなど)のガス成分(例えば、酸素濃度)を管理することは重要である。
【0003】
従来においては、炉内ガスの分析は、ガスをポンプで吸引して分析計に送る方法が行われていた。しかし、炉内ガスを吸引して分析する方法は、ガスをサンプリングしてから分析するまでに時間を要し、リアルタイムで炉内状況を把握することができない。さらに、ガス採取部のダスト除去フィルタが度々目詰まりを起こし、メンテナンス作業に時間がかかるなどの不具合が生じていた。
【0004】
そのため、レーザ式ガス分析装置を用いて炉内ガスを分析することが検討されている(例えば、特許文献1−3参照)。これら特許文献1−3に開示されているレーザ式ガス分析装置は、炉壁やダクトなどにレーザの照射器と受光器を対向配置し、発信器から炉内ガスに照射したレーザを受光器で受光し、受光したレーザの特定波長の減衰量に基づいて演算器がガス成分の濃度を算出する構造である。レーザ式ガス分析装置は、リアルタイムで炉内ガスを分析することが可能である反面、炉内ガスに直接レーザを照射して分析するため、炉内ガスに同伴されるダストやタール等の影響を受けやすくなるという短所もある。
【0005】
そのうち特許文献1及び2に開示されているレーザ式ガス分析装置は、ダスト等の影響を受けて分析精度が低下するのを防止する手段を有している。特許文献1のレーザ式ガス分析装置は、レーザの照射器及び受光器を取り付ける管台内にガスを噴射してダストを吹き払うジェットエアブロー装置を有する。また、特許文献2のレーザ式ガス分析装置は、照射器及び受光器を取り付ける管台内にガスを噴射してダストを除去する噴射ノズルと、レーザの集光レンズの汚れを防止するパージガス供給管を有する。
【0006】
しかしながら、特許文献1−2に開示されているダスト対策は、管台の壁面に堆積したダスト等を除去するものであり、分析対象ガスに照射したレーザの光路上にあるダスト等が及ぼす影響については防止されない。炉内ガスにはレーザが透過しないくらいダスト等が多く含まれる場合もあり、このような悪条件では、特許文献1−3のレーザ式ガス分析装置では正確な分析を行うことができない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−207892号公報
【特許文献2】特開2006−125848号公報
【特許文献3】特開2007−170841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
すなわち、本発明は、一例として挙げた上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、レーザを照射する分析対象ガスに同伴されるダスト等が分析精度に影響を及ぼすのを抑制することのできるレーザ式ガス分析装置及びレーザ式ガス分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従うレーザ式ガス分析装置は、レーザを照射するレーザ光照射装置と、照射されたレーザを受光するレーザ光受光装置を、分析対象ガスを内部空間に含む機器に配置してガス分析を行うレーザ式ガス分析装置において、前記レーザ光照射装置から前記レーザ光受光装置側に向けて前記機器の内部空間に突出させた外筒が配置され、両端が前記レーザ光照射装置からのレーザを透過する光透過性部材によって閉塞された密閉空間を有する内筒が前記外筒内に配置された二重管ノズルを備えることを特徴とする。
【0010】
前記二重管ノズルは、前記外筒と内筒との間の空間にパージガスを供給するパージガス供給管をさらに備えることが好ましい。この場合、前記パージガス供給管の先端は、前記内筒の光透過性部材の表面に向けてガスを噴射させるように配置するのが好ましい。また、例えば内筒内を通過するレーザが減衰するのを抑えるために、前記内筒の密閉空間は、真空にするか、又は不活性ガスを封入することが好ましい。
【0011】
さらに、前記二重管ノズルは、例えば測定光路長を調節可能にするために、前記機器内の突出量を調節可能に設置することが好ましい。
【0012】
本発明に従うレーザ式ガス分析方法は、レーザを照射するレーザ光照射装置と、照射されたレーザを受光するレーザ光受光装置を、分析対象ガスを内部空間に含む機器に配置してガス分析を行うレーザ式ガス分析方法において、前記レーザ光照射装置から前記レーザ光受光装置側に向けて前記機器の内部空間に突出させた外筒が配置され、両端がレーザ光透過部材によって閉塞された密閉空間を有する内筒が前記外筒内に配置された二重管ノズルを配設し、前記レーザ光照射装置からのレーザを、前記内筒内を通過させて外筒の先端から照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レーザ光照射装置とレーザ光受光装置を配置して機器内に含まれるガスの分析を行うにおいて、前記レーザ光照射装置から前記レーザ光受光装置側に向けて前記機器の内部空間に突出させた外筒が配置され、両端が前記レーザ光照射装置からのレーザを透過する光透過性部材によって閉塞された密閉空間を有する内筒が前記外筒内に配置された二重管ノズルを配設し、前記レーザ光照射装置からのレーザを、前記内筒内を通過させて外筒の先端から照射するようにする。これにより、分析対象ガスにダスト等が多く同伴されていたとしても、これらダスト等が分析精度に及ぼす影響を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の好ましい実施形態に従うレーザ式ガス分析装置を示す。
【図2】上記レーザ式ガス分析装置のレーザ光照射装置を示す。
【図3】上記レーザ光照射装置の二重管ノズルの部分拡大図である。
【図4】上記レーザ式ガス分析装置のレーザ光受光装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態によるレーザ式ガス分析装置について、添付図面を参照しながら詳しく説明する。但し、以下に説明する実施形態によって本発明の技術的範囲は何ら限定解釈されることはない。
【0016】
図1は、本実施形態によるレーザ式ガス分析装置の配置の一例として、例えば工業炉などの排ガス口に接続されたガス流路(例えば、排気ダクト1など)に配置した構成を示す。工業炉としては、一例として、コークス乾式消火設備(Coke Dry Quenching equipment:CDQ)、連続焼鈍炉、加熱炉、高炉などが挙げられる。但し、レーザ式ガス分析装置を配置する装置や場所は限定されることなく、分析対象となるガスを内部空間に含む装置,容器,又は、ガス流路等の各種機器のいずれに配置してもよい。さらに、測定するガス成分としては、一例として、酸素(O),一酸化炭素(CO),二酸化炭素(CO),塩化水素(HCl),アンモニア(NH)などを挙げることができるが、特に限定されることはない。
【0017】
図1に示すように、本実施形態によるレーザ式ガス分析装置は、例えば工業炉の炉内から発生した乾留ガスが流れる排気ダクト1の壁面に形成された測定窓の一方側にレーザを照射するレーザ光照射装置2と、測定窓の他方側に、レーザを受光するレーザ光受光装置3が対向配置されている。そして、例えば受光されたレーザの特定波長の減衰量に基づいてガス成分の濃度を算出する演算器(不図示)を備えている。すなわち、酸素を分析対象とする場合、酸素に固有の波長の減衰量に基づいて濃度を算出する。乾留ガス中の酸素濃度は、通常、0〜1vol%で管理されている。なお、濃度の算出方法は、レーザ式ガス分析装置の技術分野において公知であるため、詳しい説明は省略する。
【0018】
レーザ光照射装置2は、図1及び図2に示すように、例えば半導体レーザなどのレーザ光源を含む本体21と、レーザ光受光装置3側に向かって排気ダクト1の内部空間に突出する外筒22と、外筒22内に配置される内筒23を有する。すなわち、レーザ光照射装置2は、外筒22と内筒23によって構成され、測定対象ガスを含む機器の内部空間に突出する二重管ノズルを有する。なお、レーザ光源の種類やレーザの波長は、例えば測定するガス成分に応じて適宜選択することができ、特に限定されることはない。
【0019】
外筒22の先端は、レーザ光受光装置3の近傍まで突出しており、レーザ光受光装置3の外筒32の先端との離間距離(すなわち、測定光路長L)が例えば200mmとなるように設定されている。さらに、外筒22の先端は、測定対象ガスに同伴されるダスト等が侵入するのを防止するために、先端の開口部の口径を小さくした絞り形状となっている。一方、外筒22の後端側は、例えばフランジ24を介して本体21が接続されている。外筒22としては、一例としてステンレス管を使用することができる。なお、図1に例示する外筒22は、その先端側と後端側で2つに分割された構造(22A,22B)であり、その両者間において内筒23の一部を露出させている。そして、内筒23を露出させた部位の外筒の端部は、フランジ25,26によって閉塞している。露出させた内筒23の部位には、後述する真空ポンプと圧力計が接続される。
【0020】
内筒23は、本体21のレーザ光源から照射されたレーザを、外乱が及ぶのを抑制して外筒22の先端近傍まで通過させる機能を有する。そのため、内筒23は、レーザを透過する光透過性部材(例えば、ガラスなど)23aによって両端が閉塞された密閉空間を形成し、内部を通過するレーザが周囲から外乱を受けるのを防止している。内筒23の胴部としては、一例として炭素鋼管を使用することができる。内筒23の両端は、内部を通過するレーザからの直接反射を抑制するために傾斜面とするのが好ましい。さらに、内部を通過するレーザが減衰するのを抑えるために内筒23の密閉空間を減圧状態、好ましくは真空にする。或いは、測定対象とするガス成分を含まない不活性ガス(例えば、純度の高い窒素,アルゴンなど)を封入するようにしてもよい。図1は、内筒23の密閉空間を真空にするために、フランジ間の一部内筒が露出した部位に、配管を介して真空ポンプ27を接続した構成を例示している。図中の符合28は、内筒23の内圧を検出するための圧力計である。なお、内筒23の先端は、必ずしも傾斜面でなくともよく、垂直面であってもよい。また、真空ポンプ27は常設ではなく、例えば内筒23内の真空度が低下した場合に使用する。
【0021】
さらに、二重管ノズルは、外筒22と内筒23の間の空間をパージするガスを吹き込むためのパージガス供給管を備えている。より詳しくは、先端側の外筒22A内に位置する内筒23の側面に、内筒23の長さ方向に沿ってパージガス噴射管4が配置されている。図3には、図2のA−A’断面図、B−B’断面図を示す。
【0022】
パージガス噴射管4は、図3に一例を示すように、内筒23の外周面に4本のパージガス噴射管4が周方向に等間隔で配置されている。これらパージガス噴射管4は、先端部が内側に曲げられ、光透過性部材23aの表面に向けてガスを噴射するようなっている。光透過性部材23aの表面に向けて噴射するガスは、ダスト等が表面に付着するのを抑制するために噴射する。さらに、噴射されたガスは、先端側の外筒22A内をパージし、これにより外筒22A内にダスト等が侵入するのを防止する。パージガスは、外筒22Aに斜め方向から接続したパージガス供給ノズル41からも供給する構成として、二重管ノズルの基端側(根本側)からもパージするようにする。パージするガスは、測定対象とするガス成分を含まない不活性ガス(例えば、窒素など)を選択する。また、パージ圧は、少なくともガス流路内の圧力よりも高ければよい。
【0023】
パージガス供給ノズル41は、ガス配管を介して、例えばガス発生装置やガスボンベなどのガス供給源(不図示)と連結されており、その途中にパージガスバルブ46とブラスタタンク47が接続されている。パージガスバルブ46としては、例えばパルスジェット式の自動開閉バルブを用いることができ、例えば30分に1回の間隔でバルブを開閉してパージガスを供給するように制御することができる。このような構成とすれば、ブラスタ効果によって外筒先端側のダスト等の堆積・閉塞を定期的に吹き飛ばすことができる。
【0024】
但し、パージガス噴射管4から噴射されたガスが、レーザの光軸(例えば、内筒の中心軸上に位置合わせされている)を横切ったり、各噴射管4からのガスが互いに衝突したりする構成にすると、パージガスが乱流となりダスト等が侵入する原因になってしまう場合がある。従って、図3に一例を示すように、レーザの光軸を中心とする同心円(仮想円)の接線方向に各噴射管4の先端が向くように、且つ、各噴射管4の先端が同一方向(時計回り又は反時計回り)に向くように配置するのが好ましい。このようにパージガス噴射管4を配置すれば、レーザの光軸を中心とした旋回流が形成され、この旋回流によってダスト等が付着するのを抑制することができる。但し、図3に示す構成は好ましい一例であって、この構成に限定されることはない。さらに、パージガス噴射管4の数も4本に限定されることはなく、例えば6本又は8本にすることができる。また、パージガス噴射管4の先端は、必ずしも光透過部材23aの表面に噴射する配置でなくともよく、例えば外筒22の先端開口部から外側に向けて噴射する配置であってもよい。
【0025】
パージガス噴射管4の後端側は、フランジ25を貫通するように構成されており、ガス配管42を介して後端側の外筒22Bと連通している。噴射管4に接続されたガス配管42の途中には、流量を調節するバルブ(不図示)を配置するのが好ましい。パージガス流量は、一例として10〜20L/minに設定することができる。
【0026】
一方、後端側に位置する外筒22Bには、分析計用のパージガスを受け入れる供給口43と排出口44が形成されている。供給口43に接続されたガス配管45は、例えばガス発生装置やガスボンベなどのガス供給源(不図示)と連結されている。パージガスに窒素を用いる場合、ガス供給源としては、例えばPSA(Pressure Swing Adsorption)式,分離膜式の窒素ガス発生装置を用いることができる。また、排出口44は、ガス配管42を介してパージガス噴射管4に接続されている。
【0027】
既述したように、外筒22の先端は、好ましい一例として測定光路長Lを200mmに設定しているが、例えばダスト等の濃度に応じて測定光路長Lを適宜調節することが可能である。従って、測定光路長Lを調節可能にする支持構造5として、本実施形態に従うレーザ光照射装置2は、排気ダクト1の側面に固定配置した管台51の内周面と外筒22の外周面との隙間に、例えばグランドパッキンなどのシール材52を配置し、ルーズフランジを含む管状部材であるブッシング53でシール材52を付勢したシール方式の支持構造5を備えている。このように、シール材52によって外筒22を支持する構造としたことにより、レーザ光照射装置2自体が外筒22の長さ方向(すなわち、図1では水平方向)に沿って、気密性を確保した状態でスライド移動可能となっている。この場合、突出量を外側から確認可能なように、外筒22の表面に目盛線などを付加するのが好ましい。また、フランジ25は、必要以上に挿入するのを防止するストッパとしての機能も発揮するようにしてもよい。
【0028】
前述のようにスライド移動可能な構成とした場合、ダスト等の濃度と好ましい測定光路長Lの設定値とを対応付けた情報を準備しておくのが望ましい。分析対象とするガス成分の濃度が比較的低濃度である場合など、対象とするガス成分の濃度と好ましい測定光路長Lの設定値とを対応付けた情報を準備するようにしてもよい。なお、スライド移動させるのは、例えば作業員が手動で行うようにしてもよいが、アクチュエータ等のシリンダ機構によって自動で行える構造とするのが好ましい。
【0029】
続いて、測定対象ガスに照射したレーザを受光するレーザ光受光装置3について、図1及び図4を参照しながら説明する。但し、本実施形態に従うレーザ光受光装置3は、上述のレーザ光照射装置2と同様の構造であるため、詳しい説明については省略する。
【0030】
すなわち、図1及び図4に示すように、分析対象ガスを通過したレーザを受光する受光器を含む本体31と、外筒32と内筒33によって構成される二重管ノズルを有する。但し、レーザ光照射装置2とは異なり、外筒32の先端を排気ダクト1の内部空間に突出させないで、排気ダクト1の内壁面と同じ位置に設定している。勿論、管台61、シール材62及びブッシング63を含むスライド支持構造6を利用して、排気ダクト1の内部空間に二重管ノズルを突出させた構成とすることもできる。
【0031】
さらに、内筒33も、光透過性部材33aによって両端が閉塞され、照射装置側の内筒23と同様の構造である。受光装置側の内筒は、測定対象ガスを通過してきたレーザを、外乱が及ぶのを抑制して本体31の受光器近傍まで通過させる機能を有する。さらに、内筒33の密閉空間は、真空ポンプ37によって減圧、好ましくは真空にされ、その圧力を圧力計38で検出することができる。
【0032】
さらに、詳しい説明は省略するが、照射器側と同様に、外筒32と内筒33の間の空間をパージするパージガス噴射管7、パージガス供給ノズル71、パルスガスバルブなどのパージガスバルブ76、ブラスタタンク77などを含むパージガス供給管を備えている。
【0033】
ここで、図1に例示する構成は、レーザ光照射装置2の二重管ノズルのみを排気ダクト1の内部空間に突出させて、測定範囲(すなわち、測定光路長L)が排気ダクト1の壁面寄りに位置しているが、受光装置3の二重管ノズルも同様に突出させることで測定範囲を排気ダクト1の中央に設定することもできる。このように、スライド式の支持構造5,6を備える構成とすれば、測定に好ましい測定光路長Lと測定位置の両方を設定することが可能となる。
【0034】
以上のように、本実施形態によれば、レーザ光照射装置2からレーザ光受光装置3側に向けて排気ダクト1の内部空間に突出させた外筒22と、その内部に配置される内筒23によって構成される二重管ノズルを配設し、レーザ光源からのレーザが内筒23内を通過して外筒22の先端から分析対象ガスに照射される構成としたことにより、分析対象ガスにダスト等が多く同伴されていたとしても、これらダスト等が分析精度に及ぼす影響を抑えることが可能となる。その結果、ダスト、タールの濃度が高いガスに対しても安定したガス分析を実現できる。
【0035】
すなわち、ダスト等が多く同伴されている場合、測定光路長が長いとレーザが透過することができない場合がある。従って、従来構造のレーザ式ガス分析装置では、幅の狭い箇所に分析計を配置せざるを得ない。しかしながら、工業炉の操業安定化を図る上では、炉内や排気ダクトを流れるガスをリアルタイムに分析することが望ましい。但し、このような場所は、照射器と受光器の離間距離が大きくなってしまう。これに対し、本実施形態は、上述の構成としたことにより、照射器と受光器の離間距離が大きくなってしまうような場所であっても、ダスト等の影響を抑えて分析することが可能である。
【0036】
レーザ光受光装置3も同様の二重管ノズルを備えた構成とすることによって、より確実に上述の効果を高めることが可能となる。但し、受光装置3の外筒32を突出させない場合には、必ずしも二重管ノズルを備えなくともよい。
【0037】
さらに上述の実施形態によれば、例えば真空にされる密閉空間を有する内筒23を配設し、その内部を通過させて外筒22の先端近傍までレーザを導く構成としたことにより、レーザが測定対象ガスに照射されるまでに周囲の外乱を受けるのを抑えることが可能である。これにより、良好な分析精度を確保することができる。さらに、内筒23の容積分だけ外筒22内のパージ空間を縮小化できるので、パージガスの使用量を軽減化することが可能となる。
【0038】
さらに、上述の実施形態に従う二重管ノズルとパージガス供給管の構造は、レーザを利用したガス分析に影響を与えない構造である。すなわち、二重管ノズルの基端側(根本側)からパージガスを流すことでダスト等の付着を防止することができる。さらに、図3に一例を示したように、レーザの光軸に影響を及ぼさない配置とすることによって、パージガスの乱流によるダスト等の侵入を防止することができる。また、特に乾留ガス等の通常酸素濃度が1vol%以下と低いガスの酸素濃度測定の場合は、レーザの光路長(照射器と受光器の離間距離)に占めるパージ窒素の空間が長くなると、窒素中の僅かな酸素濃度の変動が測定値に大きな影響を与えることになる。本実施形態によれば、パージ窒素の空間を内筒両端の光透過性部材近傍に限定することが可能となり、測定値への影響を最小限に抑制することができる。
【0039】
その他、本実施形態によれば、炉内ガスを吸引して分析する方法に比べて、ダスト除去用のフィルタのメンテナンスが不要となり、ランニングコストを削減できるという利点がある。
【0040】
以上、本発明を具体的な実施形態に則して詳細に説明したが、形式や細部についての種々の置換、変形、変更等が、特許請求の範囲の記載により規定されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われることが可能であることは、当該技術分野における通常の知識を有する者には明らかである。従って、本発明の範囲は、前述の実施形態及び添付図面に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載及びこれと均等なものに基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0041】
2 レーザ光照射装置
22 外筒
23 内筒
23a 光透過性部材
27 真空ポンプ
4 パージガス噴射管
46 パージガスバルブ
47 ブラスタタンク
5 スライド式支持構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザを照射するレーザ光照射装置と、照射されたレーザを受光するレーザ光受光装置を、分析対象ガスを内部空間に含む機器に配置してガス分析を行うレーザ式ガス分析装置において、
前記レーザ光照射装置から前記レーザ光受光装置側に向けて前記機器の内部空間に突出させた外筒が配置され、両端が前記レーザ光照射装置からのレーザを透過する光透過性部材によって閉塞された密閉空間を有する内筒が前記外筒内に配置された二重管ノズルを備えることを特徴とするレーザ式ガス分析装置。
【請求項2】
前記二重管ノズルの外筒と内筒との間の空間にパージガスを供給するパージガス供給管を備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザ式ガス分析装置。
【請求項3】
前記パージガス供給管の先端は、前記内筒の光透過性部材の表面に向けてガスを噴射させることを特徴とする請求項2に記載のレーザ式ガス分析装置。
【請求項4】
前記内筒の密閉空間が真空であることを特徴とする請求項1〜3に記載のレーザ式ガス分析装置。
【請求項5】
前記内筒の密閉空間に不活性ガスを封入したことを特徴とする請求項1〜3に記載のレーザ式ガス分析装置。
【請求項6】
前記二重管ノズルは、前記機器内の突出量を調節可能に設置したことを特徴とする請求項1〜5に記載のレーザ式ガス分析装置。
【請求項7】
前記レーザ光受光装置から前記レーザ光照射装置側に向けて前記機器の内部空間に突出させた外筒が配置され、両端が分析対象ガスを通過してきたレーザを透過する光透過性部材によって閉塞された密閉空間を有する内筒が前記外筒内に配置された二重管ノズルをさらに備えることを特徴とする請求項1〜6に記載のレーザ式ガス分析装置。
【請求項8】
レーザを照射するレーザ光照射装置と、照射されたレーザを受光するレーザ光受光装置を、分析対象ガスを内部空間に含む機器に配置してガス分析を行うレーザ式ガス分析方法において、
前記レーザ光照射装置から前記レーザ光受光装置側に向けて前記機器の内部空間に突出させた外筒が配置され、両端がレーザ光透過部材によって閉塞された密閉空間を有する内筒が前記外筒内に配置された二重管ノズルを配設し、前記レーザ光照射装置からのレーザを、前記内筒内を通過させて外筒の先端から照射することを特徴とするレーザ式ガス分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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