説明

レーザ走査型顕微鏡

【課題】連続スキャン・モードでサンプルを撮影するとき、そのサンプルが受ける負荷を軽減すること。
【解決手段】走査しつつサンプル上を案内される照射光分配機能を持ち、走査から生じて検出されるサンプル光から該サンプルの像が撮影されるレーザ走査型顕微鏡であって、該サンプルが毎秒画像X枚のフレーム率で走査され、機器パラメータ設定モードでは、走査速度が等しい状態で、好ましくはサンプル保護のため、スキャナ18による走査時のフレーム率を小さくしてX,Y>1の比率X/Yとするレーザ走査型顕微鏡。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ走査型顕微鏡、好ましくは連続スキャン・モードでサンプルを撮影するレーザ走査型顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術(7323DE)では、顕微鏡における画像撮影のための重要な全パラメータの設定に、いわゆる「連続スキャン・モード」を用いることが知られている。ユーザが、サンプルを「オンライン」で観察し、たとえば焦点を合わせ、興味あるサンプル箇所を探し、照度と感度を設定することができるよう、「連続スキャン」で画像を連続的に撮影して表示する(しかし、記憶は行わない)。
【0003】
この場合、サンプルは、特にフレーム率が高いとき(積分時間が少ないとき)、高い負荷を受ける。
走査時間と休止時間(スキャナの帰線期間または帰線走査時間)との(固定された)比は、サンプルの要件に適合されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は連続スキャン・モードでサンプルを撮影するとき、そのサンプルが受ける負荷を軽減することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこの問題を、独立請求項の記載内容によって解決する。好ましい発展形を、従属請求項に記載した。
独立請求項では、走査しつつサンプル上を案内される照射光分配機能を持ち、走査から生じて検出されるサンプル光から該サンプルの像が撮影されるレーザ走査型顕微鏡であって、該サンプルが毎秒画像X枚のフレーム率で走査され、機器パラメータ設定モードでは、走査速度が等しい状態で、好ましくはサンプル保護のため、フレーム率を小さくしてX,Y>1の比率X/Yとする、レーザ走査型顕微鏡を要旨とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明によるレーザ走査型顕微鏡の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施の形態で説明するように、フレーム率が毎秒100画像以上という非常に速いライン・スキャナの場合でも、顕微鏡パラメータ設定の際(機器パラメータ設定モード)、フレーム率は25画像/秒ですでに十分であり、それよりはるかに少なくてよい場合がしばしばである(5画像/秒)。
【0008】
重要なのは、この場合、走査速度自体は下げることなく(積分時間の変化と、画像撮影のパラメータの影響が不利となる)、画像撮影の間の休止時間を増加させることである。
機器パラメータの設定に関してなんら不利を生じることなく、しかし、サンプルの負荷は少なくなるのが有利である。
【0009】
これは、たとえば別々のシフト・レジスタを用いて、積分時間とフレーム率(休止時間)を別々に設定することにより、行うことができる。
これは、これらの値を自動的にプリセットすることによって行うことができる。すなわち、リアルタイムの肉眼に対してフレーム率を毎秒25に固定してプリセットするか、または複数のプリセット(毎秒25、15、5)を行って、ユーザが選択できるようにする。スキャナが動作を続ける場合、照射波長光のスイッチオフまたは削減を行う(たとえば既存のAOTFすなわち音響光学チューナ・フィルタを用いて行うが、これについてはDE7223参照)。この場合、スキャナは速度を減じることなく動作を続行する。または、走査の間でスキャナをストップする。
【0010】
走査速度が非常に速い場合、本来の画像撮影前に十分な過渡時間を事前設定することが有利である。
本発明の発展形は、次のようなものである。
【0011】
ユーザのインタラクションが行われる(調節が作動される)場合は常に、新しい画像が撮影される。これは、たとえば次のような場合である。
−z−ドライブが動く
−サンプル・テーブルが動く
−コンフィギュレーションの変化(フィルタ、ピンホール、積分時間、ゲインなど)
直接のインタラクションなしに(ソフトウェア制御されたボタン、または、たとえば通常の操作ボタンを介して)ユーザが機器を設定することによっても、本発明の操作モードを作動することができる。これは、特に、この目的のため設けられた「リフレッシュ(Refresh)」ボタンにおいても同様である。
【0012】
この方法は、上記のフレーム率削減と組み合わせることができるので、サンプルを保護し、特に蛍光観察の際に退色を防止するのに有利である。
すなわち、このシステムが画像を撮影するのは、ユーザが実際に変更を行う場合だけである。換言すれば、顕微鏡の調整装置と撮影機能との間に信号的結合が存在し、調節が作動されると画像が撮影される。
【0013】
したがって、本発明により、インタラクション終了後、照射停止または画像撮影まで、ある1つの(設定可能な)時間経過を待って、たとえばサンプルに反応時間がある場合、それをも測定できるようになる。いずれにせよ画像の外見に変化がない中間時間には、走査は行わない。こうして照射とサンプル損傷は最小限に抑えられる。スクリーン上には最後に走査された画像が依然として見られることになる(まだ変化が生じてないので、これは依然としてその時点の状態と同じである)。
【0014】
典型的な経過は次の通りである。
−ユーザは、いわゆる「イメージ・オン・デマンド(Image on demand)」モードをアクティブにし(従来は連続スキャンをアクティブにしている)、設定を最適化する。
−ユーザはすでに行った設定に従ってモードを中断する。この時点でモニタには、最後に撮影された画像が依然として見られる。それ以前に撮影された画像はすべて、システムが破棄する。ユーザは、自分が望む場合、最後の画像を記憶させることができる。
【0015】
図1はレーザ走査型顕微鏡1を示す。この顕微鏡は、主として5つの要素から構成されている。すなわち、レーザ走査型顕微鏡のために励起光を生じる線源モジュール2、励起光を調整し、サンプルに沿って走査するのに適した状態で偏向させる走査モジュール3、走査モジュールによって供給された走査光を顕微鏡光路においてサンプルに向ける、簡略化のため模式的にのみ示す顕微鏡モジュール4、および光学的放射線をサンプルから受け取り検出する検出器モジュール5である。この検出器モジュール5は、図1に示すように、複数の分光チャネルとして実施することができる。
【0016】
レーザ走査型顕微鏡は、スポットごとに走査するようになっており、そのレーザ走査型顕微鏡の一般的説明については、独国特許出願公開第19702753号明細書を参照されたい。したがって、この明細書の記載を本願明細書に援用する。
【0017】
線源モジュール2は、レーザ走査型顕微鏡に適した照射ビーム、特に蛍光の原因となる光を生成する。そのため、線源モジュールは、アプリケーションに応じて複数の線源を備える。図示の実施形態では、2つのレーザ6および7が線源モジュール2に設けられ、これらのレーザには光弁8と減衰器9が1つずつ後置され、これらレーザは光を、結合箇所10を経由して、光ファイバ11に出射する。光弁8はビーム偏向器として働き、この偏向器によってビームを遮断できるが、その際レーザ・ユニット6ないしレーザ・ユニット7自体におけるレーザ操作をスイッチオフする必要はない。光弁8はたとえばAOTF(音響光学チューナブルフィルタ:Acousto−Optic Tunable Filter)として形成され、このフィルタはビーム遮断のためレーザビームを、光ファイバ11に出射する前に、ここには図示しない光トラップの方向に偏向させる。
【0018】
図1に示した例では、レーザ・ユニット6は3つのレーザB、C、Dを備えるが、レーザ・ユニット7は、レーザA1のみを有する。したがって、これは、単一波長レーザと複数波長レーザの組み合わせの例である。これらのレーザは単独でまたは共同して、1つまたは複数のファイバに結合されている。この結合を複数のファイバを経由して同時に行い、それらの光を、その後マッチング光学系を通過してから、カラー集光器によって混合することもできる。したがって、さまざまな波長または波長領域を励起光に用いることができる。
【0019】
光ファイバ11に出射された光は、異なる視準光学系12および13により、ビーム集光ミラー14、15を経由して結合され、ビーム形成ユニットでそのビーム断面が変更される。
【0020】
コリメータ12、13は、線源モジュール2から走査モジュール3に供給された光が、無限遠光路に集光されるようにする。これは、そのときどきに、次のような単独のレンズによって行えば有利である。すなわちこのレンズは、ここには(図示しない)中央の作動ユニットによる制御の下に、光軸に沿ってスライドされることにより、焦点調節機能を持つ。そのためコリメータ12、13と光ファイバ各末端との間隔を、調節できるものとする。
【0021】
ビーム形成ユニットについては後に詳しく説明するが、このユニットは、回転対称形でガウス型の断面を持つレーザビームから、すなわちビーム集光ミラー14、15の後に存在するようなレーザビームから、ライン状のビームを生成するが、このライン状のビームはもはや回転対称形ではなく、矩形の照射フィールドを生成するのに適した断面を持つ。
【0022】
ライン状とも呼ばれるこの照射ビームは、励起光として用いられ、メイン・ビーム・スプリッタ17と、下記に説明するズーム光学系とを経由して、スキャナ18に導かれる。メイン・ビーム・スプリッタについても後に詳しく説明するが、ここでは、顕微鏡モジュール4に戻るサンプル光を励起光から分離する機能を持つことだけを、述べておく。
【0023】
スキャナ18は、ライン状のビームを、1軸または2軸に偏向させる。その後、このビームは、走査対物レンズ19と、顕微鏡モジュール4のチューブ・レンズおよび対物レンズとによって、1つの焦点に集光されるが、この焦点は、試験片ないしサンプルの中に位置する。この場合、光学的結像は、サンプルが焦線中で励起光に照射されるように行われる。このスキャナ18は、機器パラメータ設定モードでは、サンプル損傷を最小限に抑えるべく、上記したようにフレーム率を小さくする。
【0024】
ライン状の焦点で励起されたこの種の蛍光ビームは、顕微鏡モジュール4の対物レンズおよびチューブ・レンズと、走査対物レンズ19とを経由して、スキャナ18に戻るので、スキャナ18に向かって戻る方向においては、作用しないビームが再び存在する。したがって、スキャナ18は蛍光光線をデスキャンするともいわれる。
【0025】
メイン・ビーム・スプリッタ17は、励起光と異なる波長領域にある蛍光光線を通過させるので、この光線を検知器モジュール5の偏向ミラー(図示せず)で偏向させ、次いで分析することができる。検知器モジュール5は、図1の実施形態において複数の分光チャネルを備える。すなわち、偏向ミラーから来る蛍光光線は、サブ・ビーム・スプリッタ25で2つの分光チャネルに分割される。
【0026】
いずれの分光チャネルもスリット絞り26、26aを備え、この絞りは、サンプル23の共焦点結像、または部分的な共焦点結像を生じる。この絞りの大きさが、蛍光光線を検出できる焦点深度を決定する。したがって、スリット絞り26、26aのジオメトリは、(厚みのある)試験片内部で、蛍光光線を検出する切断面を決定する。
【0027】
このスリット絞り26には、さらにブロック・フィルタ27が後置され、このフィルタは、検出器モジュール5に達する望ましからぬ励起光を遮断する。そうすると、この種の分離された光線、すなわち、ある定められた深さの切片から生じ、そのラインが扇状に広がるこの光線は、適切な検出器28によって分析される。第2の波長別検出チャネルも、上記のカラー・チャネルと同様に構成され、このチャネルもスリット絞り26a、ブロック・フィルタ27a、検出器28aを備える。
【0028】
検出器モジュール5内に共焦点スリット開口を用いることは、単なる例である。当然のことながら、単一スポット・スキャナを備えることもできる。そうすればスリット絞り26、26aをピンホール絞りに代えることで、ビーム形成ユニットを省略することができる。また、このような構造のため、すべての光学系は回転対称形に作られる。そうすれば、当然のこととして、単一スポット走査、検出の代わりに、基本的には任意の複数スポット配置、たとえばポイント・ダイヤグラムまたはニプコウ・ディスク構成を用いることができる。そうすれば、当然、検出器28に位置解像力を持たせることが重要となる。なぜならば、スキャナが通過する際、複数のサンプル・ポイントが平行して検知されるからである。
【0029】
図1に記載するように、可動式すなわちスライド式のコリメータ12および13の後に存在するガウス・ビームは、ビーム集光ミラー14、16の形によって集光され、共焦点式のスリット絞りを備える図示の構造の場合、次に矩形のビーム断面を持つビーム束に変換される。図1の実施形態の場合、ビーム形成ユニットで円筒形テレスコープ37を用い、このテレスコープに非球面ユニット38を後置し、その後に円筒形光学系39が続く。
【0030】
変換の後は、その断面に相当するほぼ矩形のフィールドを照射するビームが存在し、この場合、フィールド長軸に沿った強度分布はガウス型ではなく、箱形である。
非球面ユニット38を含む照射配置は、チューブ・レンズと対物レンズの間の瞳への均一な入射に用いることができる。これにより、対物レンズの光学的解像度を、完全に活用することができる。したがってこのバリエーションは、単一スポットまたはマルチスポット走査方式の顕微鏡システムにおいて、たとえばライン走査システムにおいて、合目的でもある(後者の方式の場合、サンプル上またはサンプル中に合わせる焦点の軸に、追加して用いる)。
【0031】
たとえばライン状に調整された励起光は、メイン・ビーム・スプリッタ17へと偏向される。このメイン・ビーム・スプリッタは、1つの好ましい実施形態の場合、独国特許出願公開第10257237号明細書に記載のスペクトル上はニュートラルなスプリッタ・ミラーとして作られ、その公開内容を本願明細書に援用する。したがって「ビーム・スプリッタ」という概念は、スペクトル的に作用しないスプリッタ・システムをも含む。ここにいうスペクトル的に独立しているビーム・スプリッタの代わりに、均質なニュートラル・ビーム・スプリッタ(たとえば50/50、70/30、80/20など)、またはダイクロイック・ビーム・スプリッタを用いることもできる。適用例に応じた選択を可能とするために、メイン・ビーム・スプリッタは、好ましくは次のような機構を備えるものとする。すなわち、個々の交換可能なビーム・スプリッタを含む相応のスプリッタ・ホイールによるなど、簡単な交換を可能とするような機構である。
【符号の説明】
【0032】
18…スキャナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ走査型顕微鏡を操作する方法であって、
装置パラメータを設定するためのイメージ・オン・デマンド・モードを提供すること、
前記イメージ・オン・デマンド・モード中にユーザが顕微鏡の設定を変更する場合に、自動的に画像を撮影し表示することを備える方法。
【請求項2】
レーザ走査型顕微鏡であって、
装置パラメータを設定するためのイメージ・オン・デマンド・モードを提供する手段と、
前記イメージ・オン・デマンド・モード中にユーザが顕微鏡の設定を変更する場合に、自動的に画像を撮影し表示する手段とを備えるレーザ走査型顕微鏡。

【図1】
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【公開番号】特開2012−98755(P2012−98755A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−23178(P2012−23178)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【分割の表示】特願2006−128571(P2006−128571)の分割
【原出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(506151659)カール ツァイス マイクロイメージング ゲーエムベーハー (71)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss MicroImaging GmbH
【Fターム(参考)】