説明

レールを硬化する装置

【課題】高い動作能力で高級品質のレールを製造可能な冷却装置を提供する。
【解決手段】レール断面の少なくとも一部をレール全長にわたって冷媒中で冷却することによりレール1を硬化する装置は、冷媒槽5及び冷却床6を有する。少なくとも2つの冷媒槽5が、位置ぎめ手段4により軸線を平行にして並んで同じ高さに水平に設けられ、レール硬化のために利用可能な冷媒槽5内の冷媒50の一部が、最大レール輪郭の高さを少なくとも10%上回る深さを持っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場合によっては異なる断面形状を持ちかつ50mより大きい長さを持つレール特に異形断面の走行レールを、レール断面の少なくとも一部をレール全長にわたって冷媒中で冷却することにより硬化する装置であって、ころコンベヤの範囲にある横移動手段、レールを硬化装置へ移送する操作つかみ、少なくとも1つの位置ぎめ手段、冷媒槽及び冷却床を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
炭素を含みかつ圧延後冷却床へ移送されて冷却される低合金鋼から成るレールは、例外なくパーライト組織を持ち、材料はそれに応じた機械的特性を持っている。特に列車の大きい車軸荷重及び場合によっては高い速度の場合及びきついカーブにおいて、レール摩耗を少なくするため、従来技術によれば、少なくとも荷重を受けるレール頭部が高い硬度、高い耐摩耗性及び少ない亀裂発生を持つように、特別な熱処理によって組織を調節することができる。
【0003】
レールの冷却の際組織の適切な形成によりレールを硬化する装置は、吹付け冷却装置の通常又は冷媒への没入のために構成することができる。
【0004】
レール硬化用通過吹付け冷却装置は、一般に簡単に構成されるが、大きい所要場所という欠点を持ち、製造過程においてレールの望ましくない品質変動を効果的に防止することもできない。更に通過吹付け冷却装置では、先端レール、溝付きレール、平底レール等のような種々の断面輪郭に必要な程度で冷却を精確に合わせることができず、場合によっては断面範囲の冷却の際歪みが不均一な冷媒作用従ってレールの長さにわたる材料の硬度変動を生じる。
【0005】
レールの吹付け熱処理の際レールを動かないようにするか、又はなるべくそのつどの吹付け手段の間隔だけ交互に僅か移動させることが、既に提案された。
【0006】
更にレール又はレールの断面の一部の熱処理装置を1つ又は複数の浸漬槽により形成することが、公知である。
【0007】
高い圧延能力で硬化されるレールを連続的に製造する際、オーストリア特許第410549号明細書によれば、少なくとも2つの液体冷却装置を整列手段に対して平行に配置し、ころコンベアのころの間に圧延品載置片を持つ横移送手段を設けて、ころコンベアから冷却装置の操作機へ移送し、続いてこの冷却装置から冷却床の載置範囲へ移すことが既に提案された。こうして熱処理装置によるレールの処理量を高めることができる。しかし圧延スタンドからのレールの退出、ころコンベアにおけるレールの整列及び回転は、能動整列手段では無制限に可能ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで本発明は、上記の欠陥を除去し、レール特に異形断面の走行レールを硬化するため最初にあげた種類の装置を提供し、それにより高い動作能力で確実にかつ高品質のレールを経済的に製造可能にすることである。
【0009】
詳細には装置が、
圧延装置から出るレールの妨げられない迅速な移送のため、
レールの軸線方向整列を可能にし、位置ぎめ手段への寸法の精確な挿入を可能にしかつ/又は引渡し手段及び/又は冷却床上へ下ろす操作つかみ、
歪みのない締付け用の位置ぎめ手段及び/又は
位置ぎめ手段と共同作用して使用可能な急冷手段
を持ち、
制御手段により、装置部品が、レールの断面の頭部及び/又は他の部分及び/又は全表面の周期的浸漬が、レールの冷却中に調節可能であるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、少なくとも2つの冷媒槽が、位置ぎめ手段により軸線を平行にして並んで同じ高さに水平に設けられ、レール硬化のために利用可能な冷媒槽内の冷媒の一部が、最大レール輪郭の高さを少なくとも10%上回る深さを持っていることによって、目的が達せられる。
【0011】
本発明の特徴の利点は、主として、軸線を平行にして設けられる2つの冷却槽により得られる高い出力及び特に硬化装置の融通性、及び場合によっては冷媒中におけるレールの連続する全体積冷却及び/又は断面の位置例えば又は上面のみの冷却のため、制御可能な位置ぎめ手段による万能な硬化装置の使用可能性によって得られる。本発明による装置によって、レールの硬化の際冷媒中におけるレールのために多数の浸漬温度を使用し、従ってレール断面にわたって所望の組織分布を得ることも可能である。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、冷媒槽が、底側に1.5mの冷媒槽長さ毎に、制御される冷媒流を供給可能な少なくとも1つの冷媒入口を持ち、冷媒槽内で冷媒入口の上に間隔をおいて、少なくとも1つの穴あけされるか又は冷媒の貫流可能な板が設けられ、かつ/又は冷媒の流れ方向において後に、通路を持つノズル板が挿入されている。
【0013】
本発明によるこの手段によって、断面の表面範囲のための冷媒の局部的冷却強さを、レールの長さにわたって同じに保ち、その結果硬化されるレールの製造において、所望の高い不変な品質を得ることができる。
【0014】
本発明の実施形態により、冷媒槽及び/又は供給導管に、冷媒槽を短時間で空にするため開放可能な冷媒用導出手段が設けられていると、例えば故障の場合できるだけ短い時間に、冷媒を冷媒槽から排出することができ、それによりレール硬化が中断される。この硬化中断は、装置の保護を行い、装置故障の場合冷媒槽内に保たれるレールの一層容易な取出しを可能にする。
【0015】
実施手段を示す図面により本発明が以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】 レールの縦軸線に対して直角な断面図でレールの硬化装置を示す。
【図2】 操作つかみのトング内にあるレールを示す。
【図3】 位置ぎめ手段及び冷媒槽をレールの縦軸線に対して直角な断面図で示す。
【図4】 レールの断面輪郭を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に本発明の実施例が断面図で示されている。レール1は、最後の圧延穴型(図示せず)の後でころコンベヤ2上に移送され、横移動手段21によりころコンベヤ2上に位置ぎめされる。
【0018】
ころコンベヤ2にある位置から、図2に示すようにレール1の長さにわたってつかみ腕31,31′を有する多数のトング30を持つ操作つかみ3により、レール1の受入れが行われる。つかみ腕31,31′は、レール頭部12を軸線方向に整列させる心出し部分312,312′及びレール基部11の垂れ下がり保持用つかみ部分311,311′を形成され、レール基部11のフランジ端部からつかみ腕31,31′までの間隔は、図4に1Z,1R,1Vとして示すように異なるレール輪郭の頭部側を、トング30の心出し部分312,312′により軸線方向に整列させるため、大きくされている。
【0019】
図1に示されている本発明による操作つかみ3は、ころコンベヤ2上で横たわり位置にあるレール1を、レールの長さにわたる多数のトング30により位置に合わせてつかみ、つかみ腕31,31′による保持によって軸線方向に整列させる。トング30は、機械技術的に構成される部分により、 心出し部分312,312′の同時締付けを行いながら、レール軸線に対して直角に垂直運動、水平運動及び回転運動可能なので、側方にあるレール1はころコンベヤから受取られ、軸線方向に向けられ、水平な基部面を持つ垂れ下がり位置へ回され、図3に示すように位置ぎめ手段4の当接部41,41′上へもたらされる。
【0020】
図1に示されているのと同じように、レール1,1′はころコンベヤ2又は位置ぎめ手段4から受取り可能であり、かつ冷却床6上又は引渡し手段61上へ下ろし可能である。
【0021】
本発明による位置ぎめ手段4は図3に示され、レール1の長さにわたって当接部41,41′を有する保持部品40,40′を持ち、レール1が軸線方向に向けられて保持部品へ挿入可能である。締付け手段42,42′は当接部41,41′の方へレール基部11のフランジ端部へ寄りかかり可能である。位置ぎめ手段4及び冷媒50を収容する冷媒槽5は、レール1の硬化過程において共同作用する。
【0022】
本発明によれば、図1からわかるように、冷媒50を持つ少なくとも2つの冷媒槽5が軸線を平行にして並んで装置に設けられ、レール1の硬化のために利用可能な冷媒槽5内の冷媒50部分が、冷媒50中へレールの全範囲の浸漬を可能にするため、レールの最大高さより大きい深さを持っている。
【0023】
図3に示すように、冷媒入口54及び冷媒転向装置53は冷媒槽5の底側に設けられ、レール1に沿って流れる際冷媒50の流速の均一化のため、冷媒槽5の全長にわたって流れを通すことができる板51及び/又はノズル板52が、浸漬空間の方へ挿入可能である。
【0024】
レール1用位置ぎめ手段1及び冷媒50を持つ冷媒槽5は、前述したように共同作用し、制御装置(図示せず)により相対運動可能であり、少なくとも“断面部分の浸漬”及び/又は“頭部硬化”及び/又は“全範囲浸漬硬化”の位置に特定期間位置ぎめ可能である。
【0025】
図4において平底レール1Vに対比して先端レール1Z、溝付きレール1Rに対して示すように、レール1の異なる断面輪郭に対して、頭部軸線xと基部軸線yの間に軸線偏差A,Aがあってもよい。断面輪郭にそれぞれ関係なく中心で、冷媒槽5内のレール頭部の大部分を冷媒50の流れにさらすため、軸線偏差A,Aに相当する位置ぎめ手段4及び冷媒槽5の水平及び軸線平行な位置ぎめが調整可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 レール
11 レール基部
12 レール頭部
1Z 先端レール
1R 溝付きレール
1V 平底レール
y 基部中心軸線
x 頭部中心軸線
A 軸線偏差
H レール高さ
2 ころコンベア
21 横移動手段
3 操作つかみ
30 トング
31,31′ つかみ腕
311,311′ つかみ部分
312,312′ 心出し部分
4 位置ぎめ手段
40,40′ 保持部品
41,41′ 当接部
42,42′ 締付け手段
5 冷媒槽
50 冷媒
51 流通板
52 ノズル板
53 冷媒転向装置
54 冷媒入口
6 冷媒床
61 引渡し手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール断面の少なくとも一部をレール全長にわたって冷媒中で冷却することによりレール(1)を硬化する装置であって、ころコンベヤ(2)の範囲にある横移動手段(21)、レールを硬化装置へ移送する操作つかみ(3)、少なくとも1つの位置ぎめ手段(4)、冷媒槽(5)及び冷却床(6)を有するものにおいて、少なくとも2つの冷媒槽(5)が、位置ぎめ手段(4)により軸線を平行にして並んで同じ高さに水平に設けられ、レール硬化のために利用可能な冷媒槽(5)内の冷媒(50)の一部が、最大レール輪郭の高さを少なくとも10%上回る深さを持っていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
冷媒槽(5)が、底側に1.5mの冷媒槽長さ毎に、制御される冷媒流を供給可能な少なくとも1つの冷媒入口(54)を持ち、冷媒槽(5)内で冷媒入口(54)の上に間隔をおいて、少なくとも1つの穴あけされるか又は冷媒の貫流可能な板(51)が設けられ、かつ/又は冷媒の流れ方向において後に、通路を持つノズル板(52)が挿入されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
冷媒槽(5)及び/又は供給導管に、冷媒槽(5)を短時間で空にするため開放可能な冷媒用導出手段が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−183589(P2012−183589A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−126506(P2012−126506)
【出願日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【分割の表示】特願2009−44817(P2009−44817)の分割
【原出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(595114322)フエーストアルピーネ・シーネン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (7)
【氏名又は名称原語表記】Voest−Alpine Schienen GmbH