説明

レール留め具及び引き戸取付構造

【課題】十分な強度を有し、レールを容易かつ強固に取付けることができるレール留め具及び引き戸取付構造を提供する。
【解決手段】中央部長手方向に沿って戸車33の転動溝43を形成した引き戸用レール4を、ビニルハウスの妻面に形成した出入口に取付けるためのレール留め具6であって、Uボルト7などの緊締具を挿通する挿通孔がそれぞれ設けられた対向する取付面部62と、前記転動溝と対向するレール基面と相対したレール当接面部63とを有する箱型基部60と、この箱型基部の前記取付面部の一方から伸延するとともに、先端部を内側に折曲して前記レール当接面部との間で前記引き戸用レールを一側から包持するレール支持部64と、からなる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、中央部長手方向に沿って戸車の転動溝を形成した引き戸用レールを、ビニルハウスの妻面に形成した出入口に取付けるためのレール留め具、及び同留め具を用いた引き戸取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビニルハウスの妻面に形成された出入口には、吊戸式引き戸が設けられることが多い。かかる吊戸式引き戸の取付構造は、前記出入口の上縁に沿って所定長さの上レールをビニルハウスの妻面に配設するとともに、この上レールに前記引き戸の上端に取付けた戸車を係合させて吊り下げた状態でスライドさせる構成となっている。なお、かかる吊戸式引き戸においては、一般に、安定したスライド動作を得るために、引き戸の下部をガイドする下レールを配設している。
【0003】
上記上レール及び下レールは、ビニルハウスの妻面に配設されたパイプにレール留め具を介して取り付けられており、かかるレール留め具としては、例えば図15(a)に示すようなものがあった。図中、Xは上レール、200はパイプ状の妻柱であり、レール留め具100は幅を上レールXと略同寸とし、長さを70から100mm程度とした断面視略L字状に形成され、上レールXを包持した状態で前記妻柱200にUボルト300で固定されている。400は蝶ねじである。
【0004】
レール留め具100は、平面部110と側面部120とから断面視略L字状に形成されており、側面部120の先端部121を内側に折曲して上レールXの下端部を支持する一方、側面部120の上部近傍にボルト挿通孔を形成しており、前記妻柱200を跨るようにして前記Uボルト300を挿通し、前記蝶ねじ400で上レールXを妻柱200に強固に螺着するものである。
【0005】
また、引き戸の取付構造に用いられる従来のレール留め具の一例として、前記平面部110の前後端部から側面部120をそれぞれ下方に伸延させた断面視チャンネル状のレール留め具もあった(例えば、特許文献1の図4を参照。)。
【0006】
かかるレール留め具においても、側面部の上部に形成した挿通孔にUボルトを挿通し、蝶ネジで締付けることによりビニルハウスの妻柱の内側面に上レールXを固定可能としている。
【特許文献1】特開平8−116799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した従来のレール留め具100は、Uボルト300により締め付けられる面が1枚、若しくは2枚板状の側面部120のみの構成なので、妻柱200にUボルト300と蝶ねじ400を用いて取付ける際に、以下のような問題が生じるおそれがあった。
【0008】
すなわち、方持ち支持の側面部120は容易に撓んでしまうので、蝶ねじ400は容易に捩じ込むことが可能な反面、締結するための力加減が難しく、必要以上に締め付けてしまうと、図15(b)に示すように、側面部120の先端部121が上レールXから離隔する方向に反り返ってしまい、上レールXがレール留め具100から脱落してしまうおそれがあった。
【0009】
このように、従来のレール留め具100ではUボルト300と蝶ねじ400による締結力の加減が難しく、施工する際に無用な神経を使うことになるのでその改善が望まれている。
【0010】
また、近年では、ビニルハウスの出入口を二重の引き戸構造として、内側の引き戸として網戸を用いるケースが増えている。
【0011】
しかし、かかる引き戸の取付構造において、上述した従来のレール留め具を用いた場合は、上レールを簡単に二連並設することはできず、既存の引き戸構造に網戸を加えることが容易ではなかった。
【0012】
すなわち、網戸を追加する場合は、一旦、既設の上レールを取り外し、専用の連結具などを用いて新たな上レールを加えて並設しなければならなかった。したがって、施工時間もかかる上に施工コストも増加してしまっていた。
【0013】
本発明は、上記課題を解決することのできるレール留め具、及び同留め具を用いた引き戸取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1記載の本発明では、中央部長手方向に沿って戸車の転動溝を形成した引き戸用レールを、ビニルハウスの妻面に形成した出入口に取付けるためのレール留め具であって、Uボルトなどの緊締具を挿通する挿通孔がそれぞれ設けられた対向する取付面部と、前記転動溝と対向するレール基面と相対したレール当接面部とを有する箱型基部と、この箱型基部の前記取付面部の一方から伸延するとともに、先端部を内側に折曲して前記レール当接面部との間で前記引き戸用レールを一側から包持するレール支持部と、からなるレール留め具とした。
【0015】
請求項2記載の本発明では、中央部長手方向に沿って戸車の転動溝をそれぞれ形成した2連の引き戸用レールを、ビニルハウスの妻面に形成した出入口にレール留め具を介して並設状態に配設し、戸車を設けた内戸と外戸とを、それぞれスライド開閉自在に吊支した引き戸取付構造であって、前記レール留め具は、Uボルトなどの緊締具を挿通する挿通孔がそれぞれ設けられた対向する取付面部と、前記転動溝と対向するレール基面と相対したレール当接面部とを有する箱型基部と、この箱型基部の前記取付面部の一方から伸延するとともに、先端部を内側に折曲して前記レール当接面部との間で前記引き戸用レールを一側から包持するレール支持部と、からなり、当該レール留め具一対を前記レール支持部と反対側をなす取付面部同士で付合わせ、対向する前記レール支持部間で前記二連の引き戸用レールを包持した状態で前記緊締具により連結した引き戸取付構造とした。
【0016】
また、請求項3記載の本発明では、請求項2記載の引き戸取付構造において、前記一対のレール留め具の突合せ部分に、基部から先端部にかけて漸次先細り状に形成した中間部材を介設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
(1)請求項1記載の本発明では、Uボルトなどの緊締具を挿通する挿通孔がそれぞれ設けられた対向する取付面部と、前記転動溝と対向するレール基面と相対したレール当接面部とを有する箱型基部と、この箱型基部の前記取付面部の一方から伸延するとともに、先端部を内側に折曲して前記レール当接面部との間で前記引き戸用レールを一側から包持するレール支持部と、からなるレール留め具としたために、緊締具により締め付けられる箇所が箱型となって十分な強度を有することから、緊締具を締め付ける際にレール支持部は影響を受けることがない。したがって、レールを容易かつ強固に取付けることができるとともに、レールが脱落するおそれもない。
【0018】
(2)請求項2記載の本発明では、請求項1記載のレール留め具を2個用いて、前記レール支持部と反対側をなす取付面部同士で付合わせ、対向する前記レール支持部間で前記二連の引き戸用レールを包持した状態で前記緊締具により連結するようにしたので、レール二連用の専用留め具などが不要であり、同一のレール留め具を用いて簡単に二連の引き戸取付構造が実現できる。また、既設のレールはそのままにして、新たなレールを既設レールに沿って並設することも可能であり、二連の引き戸取付構造を低コストで実現することができる。
【0019】
(3)請求項3記載の本発明では、前記一対のレール留め具の突合せ部分に、基部から先端部にかけて漸次先細り状に形成した中間部材を介設したことにより、緊締具を締め付けると、中間部材の形状に沿って二連のレールの下端部同士が強く押圧され、レール同士は離隔するのではなく密着勝手方向に力を受けることになり、脱落するおそれを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、中央部長手方向に沿って戸車の転動溝を形成した引き戸用レールを、ビニルハウスの妻面に形成した出入口に取付けるためのレール留め具であって、Uボルトなどの緊締具を挿通する挿通孔がそれぞれ設けられた対向する取付面部と、前記転動溝と対向するレール基面と相対したレール当接面部とを有する箱型基部と、この箱型基部の前記取付面部の一方から伸延するとともに、先端部を内側に折曲して前記レール当接面部との間で前記引き戸用レールを一側から包持するレール支持部とからなる構成としたものである。
【0021】
すなわち、ビニルハウスの妻面に形成した出入口に設ける引き戸取付構造に用いられるレール留め具であり、上記構成としたことにより、緊締具により締め付けられる箇所が箱型となって十分な強度を有することから、緊締具を十分に機能させるように強く締め付けてもレール支持部は影響を受けることがない。したがって、緊締具を十分に機能させながら、かつレールの脱落などのおそれがない安全な引き戸取付構造を容易に実現することができる。
【0022】
レール留め具は、アルミ材を好適に用いることができるが、鉄材や樹脂材であってもよい。また、長手寸法は被取付部材となる妻柱のサイズなどに合わせればよく、通常、70〜100mmとし、より好ましくは80〜90mmである。また、幅寸法は、取付けるレール幅寸法と同じ、若しくは0.5mm程度短くすることが好ましい。少なくとも、レール幅よりも広くなることは避けることとする。
【0023】
なお、緊締具としては、パイプ状の妻柱に合わせて適宜選択可能であるが、蝶ねじで簡単に緊締可能なUボルトを好適に用いることができる。勿論、線状あるいは帯状の緊締具を採用してもよい。
【0024】
上記構成のレール留め具を用いると、斬新な引き戸取付構造を実現することができる。すなわち、中央部長手方向に沿って戸車の転動溝をそれぞれ形成した2連の引き戸用レールを、ビニルハウスの妻面に形成した出入口にレール留め具を介して並設状態に配設し、戸車を設けた内戸と外戸とを、それぞれスライド開閉自在に吊支した引き戸取付構造であって、前記レール留め具は、Uボルトなどの緊締具を挿通する挿通孔がそれぞれ設けられた対向する取付面部と、前記転動溝と対向するレール基面と相対したレール当接面部とを有する箱型基部と、この箱型基部の前記取付面部の一方から伸延するとともに、先端部を内側に折曲して前記レール当接面部との間で前記引き戸用レールを一側から包持するレール支持部と、からなり、当該レール留め具一対を前記レール支持部と反対側をなす取付面部同士で付合わせ、対向する前記レール支持部間で前記二連の引き戸用レールを包持した状態で前記緊締具により連結した構造となすものである。
【0025】
このように、上述した構成のレール留め具を2個用いて、前記レール支持部と反対側をなす取付面部同士で付合わせ、対向する前記レール支持部間で前記二連の引き戸用レールを包持した状態で前記緊締具により連結することにより、レール二連用の専用留め具などが不要となり、同一のレール留め具を用いて簡単に二連の引き戸取付構造が実現できる。また、既設のレールはそのままにして、新たなレールを既設レールに沿って並設することも可能であり、二連の引き戸取付構造を低コストで実現することができる。
【0026】
したがって、例えば、既存のビニルハウスなどで、既設の引き戸はそのままに、その内側に新たに引き戸式の網戸を新設することが低コストで実現可能となる。
【0027】
また、上述した引き戸取付構造において、前記一対のレール留め具の突合せ部分には、基部から先端部にかけて漸次先細り状に形成した中間部材を介設することが好ましい。
【0028】
かかる構成とすることにより、Uボルトなどの緊締具を蝶ねじで締め付けると、中間部材の形状に沿って二連のレールの下端部同士が強く押圧され、レール同士は離隔するのではなく密着勝手方向に力を受けることになり、二連のレールが脱落するおそれを防止することができる。
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより具体的に説明する。図1は本実施形態に係る引き戸取付構造を備えるビニルハウスの説明図、図2は同ビニルハウスの妻面に設けた出入口に配設した引き戸取付構造の説明図、図3はレール留め具正面図及び側面図、図4は同レール留め具により上レールを取付けた状態を示す側面図及び正面図、図5は同斜視図、図6は同レール留め具の取付け方法を示す説明図、図7は本実施形態に係る引き戸取付構造全体の断面視による説明図である。
【0030】
図1に示すビニルハウス1は、複数のハウス構築用のパイプ材10を適宜個所で所定の緊締具により連結し、これらパイプ材10を組合わせて構築した構造物の外側にビニルシートSを被覆して構成している。13は妻柱であり、本実施例では矩形筒状としているが円筒パイプ状のものであってもよい。
【0031】
かかるビニルハウス1の妻面11には出入口2が形成されており、この出入口2に本実施形態に係るレール留め具6を有する引き戸取付構造が適用されている。
【0032】
前記出入口2は、例えばトラクタなどの農機やトラックなどの車両が通過できる比較的大きな開口であり、この出入口2の上下位置に、妻柱13,13間に形成される開口サイズに応じた長さの略同一構造とした上レール4と下レール5とを配設し、この上下レール4,5内を2枚の吊戸式の引き戸3,3がスライド自在に取付けられている。
【0033】
前記上下レール4,5は、それぞれ前記妻柱13に上、下レール留め具6,6’により固着状態に取付けられている。そして、かかる上下レール4,5間にスライド自在に取付けられた引き戸3は、縦フレーム31及び横フレーム32を組合わせて矩形形状に形成されており、図示するように、上縁には2個の戸車33,33を連設している。
【0034】
前記出入口2の上縁に沿って配設した上レール4は、所望する強度を有する金属製であり、上面をなすレール基面40と左右側面41,41と下面42とからチャンネル状に形成されており、前記下面42には、前記戸車33がスライド可能で、かつ脱落しない幅で転動溝43がスリット状に形成され(図4〜図7)、図7に示すように、この転動溝43に前記戸車33を転動自在に係合することにより引き戸3を懸下している。
【0035】
一方、前記出入口2の下部に配設された下レール5は、図7に示すように、前記上レール4と略同長さとしており、この下レール5によって各引き戸3の下端部をガイド可能としている。すなわち、この下レール5もやはり所望する強度を有する金属製であって、設置面をなすレール基面50と左右側面51,51と上面52とからチャンネル状に形成されており、前記上面に引き戸3の下端部を挿通して前後方向へのがたつきを防止しながら左右へのスライドをガイドする摺動溝53が形成されている。なお、図7中、G1は下レール5を配置するために、下レール留め具6’の厚みに応じて地上面Gに掘削した凹所であり、下レール5の下端と地上面Gとの間に必要以上の空隙が生じないようにしている。
【0036】
ここで、上記上レール4及び下レール5を妻柱13に取付けるための上、下レール留め具6,6’について詳述する。
【0037】
上レール留め具6は、図3及び図4に示すように、緊締具であるUボルト7を挿通する複数の挿通孔61がそれぞれ設けられた対向する取付面部62と、前記上レール4の転動溝41と対向するレール基面40と相対した平坦なレール当接面部63とを有する箱型基部60と、この箱型基部60の前記取付面部62の一方から伸延するとともに、先端部64aを内側に折曲して前記レール当接面部63との間で前記上レール4を一側から包持するレール支持部64とからなる。なお、レール当接面部63の幅は、上レール4の幅よりも0.5mm程度小さくしている。また、挿通孔61を複数設けたのは、図4(b)に示すように、サイズや形状の異なる妻柱13に対応した複数種のUボルト7を挿通可能にするためである。
【0038】
ところで、本実施形態における上レール留め具6と下レール留め具6’とは、互いに基本的には同一構造であるが、上レール留め具6の上面部65がレール支持部64側に下り勾配を形成しているのに対し、下レール留め具6’は接地させることがあるために、その下面部65’を平坦面としている。なお、上レール留め具6の上面部65は必ずしも勾配をつける必要はなく、下レール留め具6’の下面部65’同様に平坦面に形成してもよい。ところで、以下の説明において、便宜上、レール留め具6と表記する場合があり、これは上レール留め具6と下レール留め具6’とを同時に指すことを意味する。
【0039】
このように、本実施形態に係るレール留め具6は、Uボルト7を挿通する部分を箱型基部60としているために、強度的にきわめて強く、図4〜図7に示すように、妻柱13を跨ぎ前記挿通孔61,61に挿通したUボルト7を蝶ねじ70で締め込んだ場合においても、レール支持部64には影響を与えることがない。したがって、上レール4が上レール留め具6から脱落するおそれもない。
【0040】
ここで、実際に上レール留め具6を用いて上レール4を取り付ける場合について簡単に説明する。
【0041】
図6に示すように、上レール4に上レール留め具6のレール支持部64の先端部64aを係止した状態でレール支持部64とレール当接面部63とで上レール4を包持させ、その状態で妻柱13の後方からUボルト7を上レール留め具6の箱型基部60に設けた挿通孔61に挿通し、蝶ねじ70,70を用いて上レール留め具6をしっかりと妻柱13に固着する。このとき、Uボルト7を挿通した取付面部62,62、上面部65、レール当接面部63とからなる箱型基部60は、きわめて剛性が高いことから、蝶ねじ70の締め込み量に拘わらず、レール支持部64が反り返ったりするようなことがなく、上レール4の保持が確実であり、上レール4に引き戸3を取付けた場合もしっかりと保持した状態を維持し、レール脱落などの不具合が生じない。
【0042】
次に、引き戸3を内外二連に配設した引き戸取付構造について説明する。これは、近年需要が高くなりつつある構造であり、ビニルハウス1の出入口2に網戸を設ける場合に必要となる。この場合、一般に、外側に通常の引き戸3を、内側に網戸仕様の引き戸3を配設するが、かかる二連の引き戸取付構造を、上述したレール留め具6を用いることにより、二連用の専用留め具などを用いることなく、簡単に構築することができる。
【0043】
図8は一対のレール留め具6を用いた新規の二連の引き戸取付構造の上レール部分を示す説明図、図9は同下レール部分を示す説明図、図10及び図11は既設のレールに新たに一つのレールを追加して二連の引き戸取付構造とした場合を示す説明図、図12は前記新規の二連の引き戸取付構造となすための上レール取付方法を示す説明図、図13は中間部材の説明図、図14は既設のレールに新たに一つのレールを追加した引き戸取付構造全体の断面視による説明図である。
【0044】
例えばビニルハウス1自体を新設したときなどに、出入口2に二連の引き戸取付構造を構築する場合は、図8及び図9に示すように、上述した構成のレール留め具6を、上レール4、下レール5それぞれに2個ずつ、すなわち一対で用いればよく、各レール留め具6のレール支持部64と反対側をなす取付面部62同士で付合わせ、対向する2つのレール支持部64間で二連の上レール4,4あるいは下レール5,5を並設状態で包持し、二連レール用の長さのUボルト7により連結するのである。
【0045】
すなわち、上レール4,4を取付ける場合について、図12を参照して説明すると、図示するように、一の上レール留め具6を、レール支持部64を妻柱13側に向けた姿勢とし、他の上レール留め具6を逆姿勢として取付面部62,62同士を付き合わせながら、各上レール4の下端コーナ部分を、各上レール留め具6のレール支持部64の先端部64aで係止して、対向する2つのレール支持部64間で、二連の上レール4,4を包持するとともに、前記一対の上レール留め具6,6の取付面部62,62同士の突合せ部分に、基部から先端部にかけて漸次先細り状に形成した中間部材9を介設し、その状態で妻柱13の後方からUボルト7を各上レール留め具6の箱型基部60に設けた挿通孔61に挿通し、蝶ねじ70,70を用いて一対の上レール留め具6,6をしっかりと妻柱13に固着する。
【0046】
中間部材9は、図13に示すように、上レール留め具6の上面部65と取付面部62との間の折り曲げ部分のアールに合わせた内側面91を有する頭部90と、この頭部90から伸延し、頭部側をなす基部から先端部にかけて漸次先細り形状とした楔形の胴板部92とからなり、この胴板部92に、上レール留め具6に設けた複数の挿通孔61にそれぞれ大きさや位置関係を対応させた連通孔61’を設けている。
【0047】
この中間部材9は、下レール5を二連に配設する場合も用いることができ、かかる中間部材9を用いることにより、Uボルト7を蝶ねじ70で締め付けると、当該中間部材9の楔形状に沿って、二連の上レール4,4(下レール5,5)の下端部(上端部)同士が強く押圧され、レール同士は離隔するのではなく密着勝手方向に力を受けることになり、特に上レール4,4ではレール留め具6からの脱落を可及的に防止することができるようになる。
【0048】
また、このように二連の引き戸取付構造とした場合も、レール留め具6にあっては、Uボルト7を挿通した取付面部62,62、上面部65、レール当接面部63とからなる箱型基部60の剛性が極めて高いことから、蝶ねじ70の締め込み量に拘わらず、レール支持部64が反り返ったりするようなことがなく、二連の上レール4,4の保持が確実であり、各上レール4に引き戸3を取付けた場合もしっかりと保持した状態を維持し、レール脱落などの不具合が生じない。
【0049】
また、既設のビニルハウス1の出入口2に、既設の上、下レール4,5はそのままに、新たに上、下レール4,5を追加して二連の引き戸取付構造を構築する場合であっても本実施形態に係る構成としたレール留め具6を用いることができる。
【0050】
例えば、図11に示すように、既設の上レール4がレール留め具6によって妻柱13に取り付けられている場合、妻柱13を避けた位置において、既設の上レール4と新設の上レール4’’同士をレール留め具6によって固定するものである。すなわち、新設の上レール4’’は、妻柱13にではなく、レール留め具6を介して既設の上レール4に直接取付くことになる。
【0051】
この場合は、既に妻柱13に固着されている既設の上レール4を包持するように、予め二連用のUボルト7を装着した状態で一方のレール留め具6A(図11(b)参照)を配設しておき、新設の上レール4’’を既設の上レール4に並行保持した状態で、突出しているUボルト7に他方のレール留め具6B(図11(b)参照)を挿通しながらこれによって新設の上レール4’’を包持し、その状態で蝶ねじ70によって締結するのである。このようにすれば、既設の上レール4を取り外したりすることなく、簡単に新設の上レール4’’を後付けすることが可能となり、施工も極めて短時間で済む簡便なものとなる。なお、図11に示した例では、既設の上レール4と新設の上レール4’’とが同形状としているが、例えば両者で形状やサイズが異なる場合は、図10及び図14に示したように、それぞれのレールに対応した2種類のレール留め具6,6を用意しておけばよい。図10及び図14において、4’は形状の異なる既設レール、6’’は既設レール4’に対応させたレール留め具である。
【0052】
上述してきたように、本実施形態によれば、二連の引き戸取付構造を構築する場合に、レール二連用の専用留め具などが不要であり、同一のレール留め具6を用いて簡単に二連の引き戸取付構造が実現できる。また、既設レールはそのままにして、新たなレールを既設レールに沿って並設することも可能なので、二連の引き戸取付構造を低コストで実現することができる。
【0053】
以上、本発明を、実施形態を通して説明したが、本発明は上述の実施形態で示した構成に必ずしも限定されることはなく、特許請求の範囲を逸脱することのない限り、形状などについては適宜設計変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施形態に係る引き戸取付構造を備えるビニルハウスの説明図である。
【図2】同ビニルハウスの妻面に設けた出入口に配設した引き戸取付構造の説明図である。
【図3】レール留め具正面図及び側面図である。
【図4】同レール留め具により上レールを取付けた状態を示す側面図及び正面図である。
【図5】同斜視図である。
【図6】同レール留め具の取付け方法を示す説明図である。
【図7】本実施形態に係る引き戸取付構造全体の断面視による説明図である。
【図8】一対のレール連結具を用いた新規の二連の引き戸取付構造の上レール部分を示す説明図である。
【図9】同下レール部分を示す説明図である。
【図10】既設のレールに新たに一つのレールを追加して二連の引き戸取付構造とした場合を示す説明図である。
【図11】既設のレールに新たに一つのレールを追加して二連の引き戸取付構造とした場合を示す説明図である。
【図12】前記新規の二連の引き戸取付構造となすための上レール取付方法を示す説明図である。
【図13】中間部材の説明図である。
【図14】既設のレールに新たに一つのレールを追加した引き戸取付構造全体の断面視による説明図である。
【図15】従来のレール留め具の説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 ビニルハウス
2 出入口
3 引き戸
4 上レール
5 下レール
6 レール留め具
7 Uボルト
13 妻柱
61 挿通孔
62 取付面部
63 レール当接面部
64 レール支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部長手方向に沿って戸車の転動溝を形成した引き戸用レールを、ビニルハウスの妻面に形成した出入口に取付けるためのレール留め具であって、
Uボルトなどの緊締具を挿通する挿通孔がそれぞれ設けられた対向する取付面部と、前記転動溝と対向するレール基面と相対したレール当接面部とを有する箱型基部と、
この箱型基部の前記取付面部の一方から伸延するとともに、先端部を内側に折曲して前記レール当接面部との間で前記引き戸用レールを一側から包持するレール支持部と、
からなるレール留め具。
【請求項2】
中央部長手方向に沿って戸車の転動溝をそれぞれ形成した2連の引き戸用レールを、ビニルハウスの妻面に形成した出入口にレール留め具を介して並設状態に配設し、戸車を設けた内戸と外戸とを、それぞれスライド開閉自在に吊支した引き戸取付構造であって、
前記レール留め具は、
Uボルトなどの緊締具を挿通する挿通孔がそれぞれ設けられた対向する取付面部と、前記転動溝と対向するレール基面と相対したレール当接面部とを有する箱型基部と、
この箱型基部の前記取付面部の一方から伸延するとともに、先端部を内側に折曲して前記レール当接面部との間で前記引き戸用レールを一側から包持するレール支持部と、からなり、
当該レール留め具一対を前記レール支持部と反対側をなす取付面部同士で付合わせ、対向する前記レール支持部間で前記二連の引き戸用レールを包持した状態で前記緊締具により連結した引き戸取付構造。
【請求項3】
前記一対のレール留め具の突合せ部分に、基部から先端部にかけて漸次先細り状に形成した中間部材を介設したことを特徴とする請求項2記載の引き戸取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−146406(P2007−146406A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339400(P2005−339400)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(597088591)佐藤産業株式会社 (30)
【出願人】(503423317)
【Fターム(参考)】