説明

レール継ぎ目用絶縁プレート

【課題】列車の安全運転を維持するためには、長期間の使用に耐え、かつ、損耗の程度を早期に発見できる損耗の少ないレール継ぎ目用絶縁プレートが要望されている。
【解決手段】継ぎ目部のレールを絶縁する目的でレール継ぎ目板とレールの間に挿入する絶縁用プレートであって、複数の層からなる耐圧強度、耐摩耗強度に優れた合成繊維クロスに液状エポキシ樹脂を含浸し所定厚みになるように積層、加熱、加圧硬化してなる絶縁プレートであって、該絶縁プレートの中間層には上面、下面と異なる色に着色した着色層を配置してなるレール締結用絶縁プレート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
鉄道におけるレールの継ぎ目部は、鉄道システムにおいて弱点とされるところである。レールの継ぎ目部はレール両側面から継ぎ目プレートが当接され、両プレートを複数個の螺子により強固に締結固定される。本発明はレールの継ぎ目部に用いる継ぎ目用絶縁プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道レールの継ぎ目用絶縁プレートは、ナイロン樹脂を原料とし射出成形法により成形したものが知られているが、この物はレール締結の際3000Kg/ton以上の締結力に達するとナイロンプレートの耐圧限界を越えプレートに伸びが発生し、レール締結力の維持が困難となる。このためプレート取り付け後適時追い締めを行う必要があるが、列車運行中に圧延されプレート材の劣化が進み破断するに至り絶縁不良を起こし列車運行に支障を来たすので、長期間に渉る安定使用は不可能であった。
【0003】
一方、特許第2551526号明細書(特許文献1)には高モジュラスビニロンクロスとアラミド繊維クロスを交互に積層した耐圧、耐摩耗性を有する層を芯層とし、その上面下面を低モジュラスのビニロンクロス層で挾んで圧力吸収部となし、全体にエポキシ樹脂を含浸し、型中において一体に加熱、加圧、成形した絶縁プレートが開示されている。
【0004】
鉄道においてレール継ぎ目用絶縁プレートは、取り付け後損耗度を点検できるのは、頻繁運転される地区では主として終車後が多いため、目視による外観判定評価は可能であるが、プレートの損耗はレール継ぎ目にかかる複雑な荷重による損耗となるため、測定具を用いる損耗度の測定は極めて困難である。そのため安全運転のため長期間の使用に耐えるレール継ぎ目用絶縁プレートの出現が望まれている。
【0005】
【特許文献1】特許第2551526号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鉄道においてレールとレールの継ぎ目は確実に絶縁されていないと列車運行に支障をきたし、重大事故に繋がりかねない。レールの継ぎ目部の絶縁不良はレール締結当初は殆ど発生しないが、長期間、かつ、頻繁運転される大都市近郊エリア、地下鉄等では徐々に絶縁プレートが損耗し、プレートが薄くなり時に破損することがある。絶縁プレート取り付け後の損耗度を点検できるのは、上述したように頻繁運転される地区では主として終車後が多いため、目視による外観判定評価は可能であるが、プレートの損耗はレール継ぎ目にかかる複雑な荷重による損耗になるため、測定具を用いる損耗度の測定は極めて困難である。そのため安全運転を維持するには長期間の使用に耐え、かつ、損耗の程度を早期に発見できる損耗の少ないレール継ぎ目用絶縁プレートが期待されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、鉄道におけるレール継ぎ目板とレールとの間に挿入するレール継ぎ目用絶縁プレートであって、耐圧強度、耐摩耗強度に優れた合成繊維クロスに液状エポキシ樹脂を含浸し所定厚みに積層、加熱、加圧硬化してなるレール継ぎ目用絶縁プレートにおいて、絶縁プレートの中間層は上面、下面に中間層とは異なる色に着色した着色層を配置してなるレール締結用絶縁プレートにある。
更に本発明は、絶縁プレートを形成している繊維素材の色が他の繊維素材と異なることによる着色層が形成される上記のレール締結用絶縁プレートにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、本発明のレール継ぎ目用絶縁プレートは、従来品に比べ著しく載荷能力に優れ、プレートの損耗が少なく、また、色相による目視によって損耗度の判定、保守点検評価が可能であり、プレートの交換時期を正確に把握でき、更に、物性的には硬度、20%ひずみ時圧縮応力に勝り、列車の安全を長期にわたり保持することができ、列車の安全運行に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のレール継ぎ目用絶縁プレートは上述のような構成からなり、繊維クロスからなる中間層には経緯糸共に太デニールのポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートを主成分とする(以下、PET繊維と略称する。)長繊維クロスを何層か重ねた厚手のクロス層を用いる。中間層の厚さとしては液状エポキシ樹脂を含浸した状態で(硬化前で)およそ1.3〜1.4mmが好ましい。
【0010】
この中間層の両面を、中間層に用いたと同じPET繊維又は他の高強度合成繊維からなるクロスを積層した層で挟んで、上下層及び中間層の三層とし又は更に上及び又は下に更に1層を加えた多層であってもよい。繊維クロス層全体の厚みはおよそ4.5〜5mmである。PET繊維とともにまたはPET繊維に変えて使用できる他の合成性繊維としてはアラミド繊維を好適な材料として挙げることができる。
【0011】
上述のように積層した繊維層には、液状熱硬化性樹脂又は樹脂溶液を含浸し余剰液を絞り、硬化後の樹脂含有量を対繊維40〜45質量%の範囲とし、プレート成形型に入れて加圧・加熱・硬化成形する。加熱時の圧力は10K/cm2 程度、加熱は90〜110℃の範囲で15〜20分である。加熱硬化後のプレートの厚さは2.8〜3mmの範囲である。熱硬化性樹脂としては液状エポキシ樹脂が好ましく用いられる。
【実施例】
【0012】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。まず、本発明の評価に用いた試験項目とその試験方法を次に示す。
「載荷試験」;(株)鷺宮製作所製、高周波動特性測定性装置KC−V−2を用い、載荷する面は試験片の30±0.2mm×10±0.3mmの面とした。
載荷力;10±6kN
載荷周波数;正弦波で10Hz
載荷回数;1×107
で行った。
なお、この載荷試験は一般的大都市近郊鉄道線の年間3000万通トン=2.94×108 kNである。この載荷試験条件は、大都市近郊線の実軌道における6.5年程度の荷重条件に相当すると推定される。
「硬度測定」;JIS K7215に準じて行った。
「圧縮試験」;JIS K6911及びJIS K7181に準じて行った。
「外観観察」;1、2.5、5、7.5×106 回及び1×107 回の載荷試験後の試験片の観察形状、亀裂、凹凸などの異常の有無の調査を行った。
「試験片寸法」;上記外観観察と同条件の載荷試験後、試験片の幅、長さ、厚さをノギス、ただし厚さは測厚計を用いて測定した。
【0013】
(実施例1)
絶縁プレートの成形には、NI帝人商事株式会社製のポリエステル繊維クロスであって、経緯糸とも1500dのポリエチレンテレフタレートからなる繊維を5cm当たり47本打込の厚さ0.53mm、引張り強度経緯とも3560N、伸び率は経緯方向とも23.2%のクロスを用い、図1にモデル的に示したようにイ:3層、ロ:2層、ハ:3層構造となし、3層の内、イ層とハ層は無着色(原糸)で用い、ロ層は、赤色に着色したクロス層を用いた。次に、イの層、ロの層、ハの層に厚さ3〜3.5mmになるように「ロ:2層」を中に挟んで積層したクロス層を、アイカ(株)製液状エポキシ樹脂(商品名「アクメックス」L2626)を含浸し、樹脂量が対繊維質量45%になるように窄汁し、次いで真空炉内で繊維層末端まで強制含浸したクロスを図1の構成で所定の型に納め、加圧、加熱し、厚さ3mmの絶縁プレートを得た。
【0014】
(実施例2)
絶縁プレート成形クロスとして実施例1で用いたポリエステル繊維クロスに代えてアラミド繊維クロス、ただし、打ち込み数17本(5cm)、強力経・緯230.5(N)、伸度4.5%、厚み3mmのクロス層に実施例1と同様のエポキシ樹脂を含浸し、図1に示したロ層すなわち中間層は実施例1に記載のポリエステル繊維クロスを4層構成とし、イ、ハには上記のアラミド繊維クロス層を配し、実施例1と同様に加圧、加熱、成形によって厚さ3mmの絶縁プレートを形成した。
本例では用いたイ、ロ、ハの各クロス層に用いた繊維は着色せず生地のままとした。その結果、茶色のアラミド繊維クロス生地に対し、イ、ハに用いたポリエステル繊維クロスは白色であり、実装品として絶縁プレートとして使用したとき、各クロス層の断面を見てクロス層の厚みの損耗を目視により識別することが可能であった。
【0015】
次に、実施例1で得られた本発明の絶縁プレートと従来品であるナイロン製の絶縁プレートを対象として物性テストおよび繰り返し圧縮載荷試験の比較を行った。載荷試験の載荷条件は大都市近郊線の標準的な軌道を想定した場合6.5年に相当する1×107 回の載荷試験を行った。各試験項目は、硬度、20%ひずみの時圧縮応力、厚みの変化の測定、試験終了後の外観観察である。
その結果を表1〜4に示す。
【0016】
載荷測定試験前後の硬度の変化を表1に、載荷測定試験後の厚さの減少率を図2に、載荷測定試験前後の寸法の変化を表2に、保守管理点検の識別判定を表3に、および20%ひずみ時の圧縮応力を表4に示した。
【0017】
[載荷試験による硬度結果]
【表1】

【0018】
[載荷試験前後の寸法変化]
【表2】

【0019】
[保守管理点検の識別判定]
【表3】

【0020】
[20%ひずみ時圧縮応力]
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明によれば、安全性に最も重要性が求められる鉄道において、その基礎を形成しているレールの継ぎ目部分の絶縁用プレートの損耗をプレート層の厚みの変化を目視により早期確実に発見でき、事故などの発生を未然に防止することが可能となり、その結果、長期にわたり列車の安全運行を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のレール継ぎ目用絶縁プレート断面の模式図である。
【図2】本発明の載荷試験による厚さの減少率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0023】
図1において符号1、3はプレートを構成するPET繊維クロスを、2はプレート層の中心を形成する高強力繊維クロス層を示す。
図2において縦軸は厚みの減少率、横軸は載荷試験における加振回数を示す。符号aは本発明品を、bは従来品(ナイロン製)のカーブを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道におけるレール継ぎ目板とレールとの間に挿入するレール継ぎ目用絶縁プレートであって、耐圧強度、耐摩耗強度に優れた合成繊維クロスに液状エポキシ樹脂を含浸し所定厚みに積層、加熱、加圧硬化してなるレール継ぎ目用絶縁プレートにおいて、絶縁プレートの中間層は上面、下面に中間層とは異なる色に着色した着色層を配置してなるレール締結用絶縁プレート。
【請求項2】
絶縁プレートを形成している繊維素材の色が他の繊維素材と異なることによる着色層が形成される請求項1記載のレール締結用絶縁プレート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−303104(P2007−303104A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130831(P2006−130831)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000190172)信号器材株式会社 (19)
【出願人】(592103936)國田技研株式会社 (1)