説明

レール継目板の締結ボルトの脱落検出装置

【課題】
検測車の走行状態において、レール継目板のボルトの脱落を検出することができるレール継目板の締結ボルトの脱落検出装置を提供することにある。
【解決手段】
この発明は、継目検出器の検出信号に応じてカメラがレール継目に来たタイミングでシャッタを切ってカメラからの静止画を採取するようにしているので、視野を制限しても継目板の画像を静止画として確実に採取することができる。しかも、レール継目板のフランジの影がレール継目板に落ちる角度で照射光学系がレール継目板を照射するので、採取された視野の狭い静止画には、ボルトの脱落があるときにレール継目板の位置にあるフランジの影の画像と締結ボルトの差込み穴とが映し出される。そこで、フランジの影の画像を基準にしてボルトの差込み穴に相当する画像があるか、否かを判定することによりボルト抜けを静止画から高速に検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レール継目板の締結ボルトの脱落検出装置に関し、詳しくは、軌道検測車の走行状態において、レール継目板の締結ボルトの脱落を検出することができるようなレール継目板の締結ボルトの脱落検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道用レールは、周囲の温度に応じて伸縮する。そのため、遊間部(継目)を設けてレールとレールとが連結される。その接続は、継目板によりレールの端部を表裏両側から挟んでボルトで継目板を固定することで行われる。
列車の乗りごこち、レールの損傷などを防止するために、継目が適当な間隔であるか否かが軌道検測車(以下検測車)あるいは点検車などにより定期的に点検され、その間隔が所定の基準幅の範囲にないときには継目間隔が調整される。
このような点検のために検測車に搭載され、レーザ光を継目板の位置に照射して継目板そのものを検出するレール継目板検出装置が公知である(特許文献1)。
また、レールを枕木に固定するボルトのボルト抜けを検出する技術としてレーザ変位計を用いたレール締結具の脱落の検知装置が公知である(特許文献2)。
【特許文献1】特開2001−280918号公報
【特許文献2】特開平11−172606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
遊間がある継目部分は、車輌の車輪が落ち込むので、その分、振動が発生し易く、継目板の締結ボルトが脱落することがみられる。通常、例えば、4本あるいは6本という複数のボルトで継目板を締結し、かつ、継目板がレールの端を表裏両側から狭持する構造でレール同士が結合されるので、1本ボルト抜けが発生してもただそれだけで大きな問題には至らないが、連結状態がゆるむことは確かであり、万が一の事故の問題と乗りこごちの点からボルトの抜けを検測車の走行状態において検出する装置の要請がある。
しかし、現在のところ、そのようなレール継目板の締結ボルトの脱落を検出する装置はない。
図9は、レール同士を締結した状態でのレール継目板の断面説明図である。この図に示すように、継目板1を締結する締結ボルト2(以下ボルト2)が連結レール3,4の側面で継目板1を止めている。継目板1には水平方向に突き出したフランジ3aが上部にあって、それがレール3,4の頭部3b(レール3側で頭部を代表)の裏面と接触している。そのため、上からみたときにはボルト2の頭部2aは、一部が隠れ、あるいはそのナット2bにおいてはその一部しか見えない。それによりボルト2の有無を上部から光学的に検出する場合には、その判別が難しく、検測車の走行状態においてボルト抜けを検出することはなかなか難しい。そのため、特許文献1や特許文献2のような技術がそのまま継目板のボルト抜け検出には適用できない。現在のところ、継目板のボルト抜け検出は、人手に頼っているのが実状である。なお、図中、2cはワッシャであり、3cはボルト差込み穴である。

この発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決し、前記の要請に応えるものであり、検測車の走行状態において、レール継目板のボルトの脱落を検出することができるレール継目板の締結ボルトの脱落検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような目的を達成するためのこの発明のレール継目板の締結ボルトの脱落検出装置の特徴は、レールとレールとを連結するレール継目板の締結ボルト抜けを検出する検測車のレール継目板の締結ボルトの脱落検出装置において、
検測車のレールに設けられレール継目を検出する非接触型の継目検出器と、検測車において継目検出器に対して検測車の走行方向に対して後方に設けられレールの継目板の静止画を撮像するためのカメラと、レール継目板のフランジの影がレール継目板に落ちる角度でレール継目板を照射する照射光学系と、継目検出器の検出信号に応じてカメラがレール継目に対応する位置に来たタイミングでカメラのシャッタを切ってカメラから静止画を採取する制御装置とを備えていて、
静止画におけるフランジの影の画像を基準として決定されるレール継目板の画像の所定の範囲において締結ボルトの差込み穴に相当する画像が静止画にあるか否かを検出するものである。
【発明の効果】
【0005】
ところで、前記したように、従来技術として継目板そのものを検出するレール継目板検出装置が公知であるので、単純には、継目板を検出してその映像をカメラで撮像してボルト抜けを検出することが考えられる。しかし、単に継目板を検出して映像を走行中の検測車で撮像しても視野を広くしないと画像が得られないという問題が起こる。それは、検測車が上下左右に揺れ、かつ、カーブでは、外側に車輌がシフトするからである。視野の広い画像を画像部分として得て、その中から継目板の画像を探し出してボルト抜けを検出するとなると、画像処理として非常に処理ロードが大きくなる上に、検出についての信頼性も低いものとなる。
そこで、この発明は、前記のように継目板の継目部分そのものの位置を検出することで、できるだけ視野の狭い継目板を主体とした画像を得ることを考えた。
この発明にあっては、前記のように、継目検出器の検出信号に応じてカメラがレール継目に来たタイミングでシャッタを切ってカメラからの静止画を採取するようにしているので、視野を制限しても継目板の画像を静止画として確実に採取することができる。しかも、レール継目板のフランジの影がレール継目板に落ちる角度で照射光学系がレール継目板を照射するので、採取された視野の狭い静止画は、継目板を主体とした映像となり、ボルトの脱落があるときにレール継目板の位置にあるフランジの影の画像部分と締結ボルトの差込み穴の画像部分とが映し出される。そこで、フランジの影の画像を基準にしてボルトの差込み穴に相当する画像があるか、否かを判定することによりボルト抜け状態を静止画から高速に検出できる。
その結果、検測車の走行状態においてレール継目板のボルトの脱落を検出することが容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、この発明のレール継目板の締結ボルトの脱落検出装置を適用した一実施例の検測車のレール継目板の締結ボルトの脱落検出装置とその継目板画像撮像装置の説明図であり、図2は、レール継目検出器の説明図、図3は、レール継目検出器の検出回路とデータ処理装置の説明図、図4は、レール継目検出器の検出波形の説明図、図5は、継目検出処理の説明図、図6は、撮像された静止画を二値化した画像の一例を模式的に示した説明図、図7は、図6の二値化画像のY座標に対する明るさ特性の説明図、そして図8は、ボルト抜け穴検出の画像処理のフローチャートである。なお、図9に対応する構成要素と同一のものは、各図において同一の符号で示す。
図1(a)において、10は、レール継目板の締結ボルトの脱落検出装置5(以下締結ボルトの脱落検出装置5)を搭載する検測車であり、10aは、その台車、10bは、車輪である。締結ボルトの脱落検出装置5は、レール継目検出器6と継目板画像撮像装置7、そしてデータ処理装置8とからなる。
レール継目検出器6は、図1(a),図2に示すように、電磁センサ11とケース12、そして検出回路20とからなる。ケース12に内蔵された電磁センサ11は、相互に逆方向に巻かれ、一辺が隣接して配置された巻き形が三角形の2つの空芯コイル11a、11bからなる。これを内装するケース12は、合成樹脂等の非磁性材料で構成され、空芯コイル11a、11bの中心Oa,Obをずらせて樹脂充填された完全密閉状態で固定するものであって、図1(a)に示すように、検測車10の台車10aからブラケット13を介してレール3あるいはレール4の頭部表面から所定距離、例えば、3cm前後離れて、2本のうち片側のレールに対応して設置される。そして、図1(a)のレール3とレール4との間にある継目1aを検出する。
【0007】
図2に示すように空芯コイル11a、11bは、巻き方が相互に逆方向になっているので、検出信号も相互に逆位相になる。そのため、信号にノイズが乗っても相殺される。さらに、レール3,4の頭部3bの幅は、通常、65mm程度であるが、図1に示すように、ケース12により固定される電磁センサ11の空芯コイル11aの中心Oaは、レールの頭部3bの中心線Oに対応して配置され、空芯コイル11bの中心Obは、レールの頭部3bの中心線Oより10mm程度外側にずれてレール3,4に対応するように配置されている。
空芯コイル11bの中心Obを中心線Oから外側にずらせる理由は、レールにはカーブがあるので、このときに検測車10が外側にシフトしたときに中心Obが必要以上に片方が内側にずれることで空芯コイル11a、11bが共に外れて電磁センサ11の検出信号が得られなくなることを防止したものである。なお、検測車10の外側へのずれは、車輪10bのフランジで阻止され、大きくずれることはない。
【0008】
図1(b)に示すように、継目板画像撮像装置7は、継目板撮像カメラ71と照明光学系72とからなり、継目板撮像カメラ71は、台車10aの下側に設置されて継目板1に対してθ=20°〜40°程度の軌道面からの仰角としての角度θで斜め上方から継目板1の側面をレール3,4の内側から撮像する。照明光学系72は、それよりも大きなφ=50°〜70°程度の軌道面からの仰角として角度φで斜め上方でレール3,4の内側から継目板1の側面を照明する。これら継目板撮像カメラ71と照明光学系72は、検測車10の台車10aに固定された筐体73の内部に設置されている。
なお、レール3,4は、それぞれ2本が所定の軌道幅において敷設されているので、図1(a),図1(b)に示されるように、継目板撮像カメラ71が各レールに対して2台ずつ合計4台、照明光学系72が各レールに対して3台で合計6台、筐体73の内部に設置されている。
各継目板撮像カメラ71は、例えば、1画面(1フレーム)640×480画素(VGA)の静止画像を撮影画像として得るCCDカメラであり、継目板1を視野に入れた静止画像を両側のそれぞれのレールに対応してそれぞれに生成する。
ここで、重要なことは、照明光学系72の照射角φである。この照明角φは、継目板1のフランジ3aの影がボルト2のボルト差込み穴3c(図9参照)に重なるか、これとの間に落ちる角度になっている。これにより、例えば、フランジ3aの影が継目板1のボルト部分にかかり、しかもボルトが抜けて穴となっていれば、ボルト差込み穴3cがそのまま黒くなっている画像部分(図6の符号16参照)となる静止画を得ることができる。そこで、フランジ3aの影の画像を基準にして撮像画像からボルト抜けの検出が可能になる。すなわち、継目板1のフランジ3aの影の画像部分(図6の符号15参照)を基準としてそれから一定の範囲内に黒の画素の塊(図7の符号19参照)があった場合に継目板1のボルト抜け穴として検出することが可能になる。それにより、検測車10が走行した状態で継目板1にボルト抜けがあるか否かを高速に判定することができる。
【0009】
図6は、撮像された静止画を二値化した画像の一例を模式的に示した説明図であり、14が継目板撮像カメラ71で撮影したものの二値化画像の1画面分である。この画像14において、継目板1のフランジ3aの影の画像部分が15であり、継目板1のボルト差込み穴の画像部分が16である。レール3,4の頭部3bと継目板1の側面は、反射光が強いので、白レベル(データ“1”)となり、それ以外は黒レベル(データ“0”)となる二値化画像14となる。17aは、明るい上側背景であり、17bは、暗い下側背景である。
18は、継目板1のフランジ3aの影の画像部分15に現れるノイズとしての反射光のノイズ画像部分である。
この二値化画像14において、ボルト差込み穴の画像部分16は、所定の画素数の黒レベルの画素の集合となって現れてくるので、ここでは、これを画像処理により、フランジ3aの影の画像部分15を基準に検出する。
ところで、採取した画像1画面分の全体からボルト抜けを検出すると画像処理のロードが大きくなる上に、各種のノイズが画像に乗ってくるので、高い精度でボルト差込み穴の画像部分16を検出しようとすると、そのノイズ除去処理に時間がかかる。その上に、ボルト差込み穴の画像部分16の判定処理にも時間がかかる。そこで、ここではフランジ3aの影の画像部分15の位置を検出して、これを基準にしてこれからボルトの穴分に相当する範囲でボルト差込み穴の画像部分16があるか否かを判定することでボルト抜け穴検出を高速に行う。この処理については後述する。
【0010】
図3は、レール継目検出器の検出回路とデータ処理装置の説明図であって、検出回路20は、逆方向に巻かれた空芯コイル11a、11bからの信号をそれぞれ受ける差動増幅器21a,21bと、空芯コイル11a、11bにバイアス電流を流すバイアス回路22、差動増幅器21a,21bの信号を所定の距離パルスPLに応じてA/D変換回路(A/D)23a,23bとからなり、A/D23a,23bを介して検出信号をデジタル値に変換してデータ処理装置8に送出するものである。
なお、バイアス回路22は、抵抗R1〜R4と定電圧電源回路22aとからなり、空芯コイル11a、11bにそれぞれバイアス電流を流す回路である。
レールの継目1aの部分では、継目板1とレールとレールの間隙とに応じて空芯コイル11a、11bのインダクタンスが変化し、それに応じた電圧が空芯コイル11a、11bの端子に発生するので差動増幅器21a,21bにそれに応じた検出信号を得ることができる。
距離パルスPLは、車輪10bの回転に応じて発生するパルスであって、距離パルス発生回路24により生成され、45mm走行に1個発生する45mm/Pの波長(周期)のパルス信号である。
データ処理装置8は、MPU81とメモリ82、インタフェース83、画像メモリ84、そしてこれらを接続するバス85等とを有し、距離パルスPLと、これに対応してA/D変換された差動増幅器21a,21bの信号をインタフェース83を介して測定データとして受けてこれらの差演算等をする。
なお、検出回路20と距離パルス発生回路24、そしてデータ処理装置8とは検測車10に搭載されている。
また、レール1本に2台ずつ設けられた継目板撮像カメラ71は、それぞれA/D25a,25bを介してデータ処理装置8に接続される。また、データ処理装置8からインタフェース83を介して4台の継目板撮像カメラ71のシャッタが操作され、各継目板撮像カメラ71の静止画が8ビット256階調の静止画としてA/D変換されて4枚のそれぞれが画像メモリ84の所定の領域にそれぞれに転送されて記憶される。
なお、各レールに対応する2枚のそれぞれの画像は、ボルト差込み穴以上に一部が重複する形で撮像される。
【0011】
図4(a)は、差動増幅器21a,21bのデジタル値をそれぞれグラフ化したデータ処理装置8における測定データであり、BLaが差動増幅器21aの測定データ、BLbが差動増幅器21bの測定データである。長丸で示す部分がレール継目位置(継目1aの位置)の検出信号であり、その前後で波形に凹凸の波があるのは、継目板1によるものである。なお、横軸は、距離パルスPLによるサンプル数、縦軸は電圧[mV]である。BLbの波形が小さいのは、空芯コイル11bがレール中心Oより10mmずれているからである。また、横軸の距離パルスPLによるサンプル数は、検測車10の走行距離に対応している。
そして、データ処理装置8において、これら測定データの差BLa−BLbの演算した結果が図4(b)のグラフBLa−BLbである。これにより、レール継目位置の検出信号DLは、大きな波形の検出信号として得ることができる。しかし、検測車10は、上下左右に揺れて走行するので、それによる検出波形の変動も大きい。
そこで、さらに、これに所定のサンプル区間を設定して所定のサンプル数について1サンプルデータ毎に追加し、先頭の1サンプルデータを消去した移動平均を採ると、図5(a)のような特性グラフ(BLa−BLb)mを得ることができる。
DLがレール継目位置検出信号である。図5(b)に示すように、これにスライスレベルTH(閾値)を設定して検出信号DLを得ることで、図5(c)に示すレール継目位置信号DPを得ることができる。
なお、距離パルスPLからレール継目位置(継目1aの位置)を所定の範囲で含むゲートを設定してレール継目位置信号DPを抽出するようにすれば、検測車の走行途中で発生する各種のノイズが除去され、レール継目位置(継目1aの位置)を高精度に検出することができる。
以上の処理をするために、図3に示すように、データ処理装置8のメモリ82には、測定データBLa,BLbの差算出プログラム、移動平均値算出プログラム、閾値設定・レール継目位置検出プログラム等が格納され、MPU81によりこれらプログラムが順次実行される。
【0012】
データ処理装置8は、レール継目検出器6の測定データからレール継目位置信号DPが検出されたときに、メモリ82に設定されたソフトカウンタ領域において、距離パルス発生回路24から受ける距離パルスPLのカウントを開始して所定距離D(図1参照)走行分に相当するカウント値になったとき、すなわち、継目1a(図1(a)参照)を検出してから検測車10が所定距離Dだけ走行したときにインタフェース83を介して各継目板撮像カメラ71のシャッタを切る制御信号を発生して、各継目板撮像カメラ71により得られた1フレームの画像を採取して画像メモリ84に各継目板撮像カメラ71に対応して4枚の静止画として記憶する。各レール対応の1フレームの静止画2枚、合計4枚をそれぞれに所定の閾値で二値化してメモリ82の作業領域82eに取り込み、作業領域82eに記憶された1フレームの各レールに対応する継目板1の撮像画像(原静止画像)からフランジ3aの影という図6の画像部分15を得て、それから基準線を決定して、二値化画像から基準線の位置を基準にして図6のボルト差込み穴の画像部分16が存在すべき範囲にそれがあるか否かを判定する。
メモリ82には、前記のレール継目検出ための測定データBLa,BLbの差算出プログラム、移動平均値算出プログラム、閾値設定・レール継目位置検出プログラム等とは別に、以上の処理を行うために、継目板画像採取プログラム82aと、二値化処理プログラム82bと、影画像上の基準線検出プログラム82c、そして継目板ボルト穴検出プログラム82d等が格納され、作業領域82eが設けられている。
MPU81は、レール継目検出器6の測定データからレール継目位置信号DPを検出したときに、継目板画像採取プログラム82aをコールして実行する。プログラム81aは、これがMPU81に実行されたときには、距離パルスPLのカウントを開始して、そのカウント値がレール継目検出器6と継目板画像撮像装置7との間の距離Dに相当するものとなったときに、4台の継目板撮像カメラ71のシャッタを切って、A/D25a、25bを介して8ビット256階調の1フレームの静止画像を4枚、各レールに対応して2枚ずつ画像メモリ84にデジタル値として採取する。そして、二値化処理プログラム82bをコールする。
【0013】
二値化処理プログラム82bは、これがMPU81により実行されたときには、画像メモリ84に記憶されたそれぞれの1画面分の画像について所定の閾値で二値化して、図6に示す上側背景と下側背景を一部に含む二値化画像を4枚、メモリ82の作業領域82eに記憶する。
二値化処理の閾値は、レール3,4と垂直方向をY方向としてレール3,4と平行なX方向を水平ラインとして、採取した各静止画像において、水平方向1ライン分640個の画素の明るさを積算し、この積算した明るさをその水平方向1ラインに対応するY方向の各1画素(Y座標値)に対応して算出して作業領域82eにそれをデータとして記憶し、次に、Y方向において積算値の極小値のうち最初に現れる最小明るさレベルの極小値を求めてそれを640で割って1水平ラインの1画素分の平均的な最小極小値として極小値LPを算出する。そして、これより少し上の明るいレベル最小極小値LP+αを閾値としてこれを基準に二値化し、二値化した画像データを生成する。
これにより、図6に示すような二値化画像14が得られる。
すなわち、水平方向1ライン分640個の画素の明るさを積算した場合、最初の最小極小値LPは、図6のフランジ3aの影の画像部分15において水平1ラインの最も黒レベルが多い領域の水平1ライン、図6では、15aとして示す位置の水平1ラインに当たる。そこで、これに対して最小極小値LP+αを閾値とすれば、図6のフランジ3aの影の画像部分15の領域を黒レベルに落とすことができ、それ以外を白レベルにする図6の二値化画像14を得ることができる。ただし、このとき、下側背景17bも黒レベルとなる。
これを画像メモリ84の4枚の静止画についてそれぞれ行い、二値化画像14を4枚、作業領域82eの所定の領域にそれぞれ記憶する。
なお、+αは、影の画像部分15(フランジ3aの影の画像)を黒レベルに落とす値として選択される。
【0014】
影画像上の基準線検出プログラム82cは、これがMPU81により実行されたときには、作業領域82eから二値化画像を読出して、黒を“0”、白を“255”とした白レベルに重み付けをした重み付け処理をして、Y方向の各1画素(各Y座標)について640個(1水平ライン分)の画素の明るさを640個(1水平ライン分)分積算した明るさを算出して、さらに、640で割って、各1水平ラインの1画素当たりの明るさの平均値のデータを算出し、これをY方向の各画素対応の白レベルを重み付けした基準線検出のための重み付けデータ(基準線検出データ)として作業領域82eに記憶する。この基準線検出データをグラフとして示したのが、図7である。すなわち、図7は、図6の二値化画像のY座標に対する明るさ特性の説明図であって、この図7において、最初の最小極小値となる明るさAの位置が前記の極小値Lminの画素位置に対応している。
図6に示すように、フランジ3aの影の画像部分(基準線帯)15は、大枠としてみると白のレベルの帯と白のレベルの帯との間に黒レベルを主体とする帯となって現れている。そこで、図7のような明るさ特性のグラフとなる。なお、極小値Lminの画素位置が黒レベル“0”とならないのは、ノイズとしての反射領域18が存在しているからである。
この基準線検出データにおいて、最大の明るさ255と最小の明るさ最小値Aの1/3のところのレベルを二値化画像14の明るさのスライスレベル(閾値)THaとして次の式により算出する。
THa=(255−A)/3+A
これが、図6におけるノイズ画像部分18を削除したときのフランジ3aの影の画像部分(基準線帯)15に対応する画素位置になる。この処理によりノイズが除去され、画像部分(基準線帯)15の下側の線を基準線としてこの基準線のY座標の画素位置Sが決定される。ここで、継目板ボルト穴検出プログラム82dをコールする。
【0015】
継目板ボルト穴検出プログラム82dは、これがMPU81により実行されたときには、スライスレベルTHaの明るさ部分に当たる領域を基準線の帯、すなわち、フランジ3aの影の画像部分15のうち、図6に示す下側にある基準線S(そのY方向画素位置S)を基準としてY座標Sの位置からこれに連続してあるいはこれから一定の範囲に黒レベルの塊領域19(画像部分16に対応)が図7として示す基準線検出データの中にがあるか否かを、図7のスライスレベルTHaの後ろ側のY方向の画素位置Sから順次検索していく。
すなわち、明るさ255未満でかつスライスレベルTHaの明るさ以上の範囲で同じ程度のある明るさの画素が連続して一定の数、例えば、1画素1mmとすれば、6画素分〜8画素の領域19があるか否かの判定によりボルト差込み穴の画像部分16があるか否かを判定する。基準線に対応するY座標の画素位置SからY方向の一定の範囲、Q画素数の範囲において、それがあったときに、ボルト差込み穴であったと判定する。
なお、同じ程度の明るさは、スライスレベルTHaの明るさ以上の範囲にある明るさに対して±βの明るさを設定することによる。ただし、上限は、明るさ255、下限はスライスレベルTHaの明るさである。
【0016】
図8は、前記の各処理プログラムをMPU81が実行して行うボルト抜け穴検出の画像処理の全体的なフローチャートである。
ここでは、レール継目検出処理とボルト抜け穴検出処理とがタスク処理としてそれぞれパラレルに実行される。さらに、ボルト抜け穴検出処理は、各レールについて同時にタスク処理でパラレルに2枚の二値化静止画像を処理してそれぞれに検出処理がなされる。
まず、図面左側のレール継目検出処理から説明する。
レール継目検出処理は、レール継目検出器6からの検出信号を読込んで(ステップ101)、測定データBLa,BLbの差算出処理をし(ステップ102)、そして移動平均値(BLa−BLb)mの移動平均算出処理をし(ステップ103)、閾値設定・レール継目位置コールして閾値THを設定して、(BLa−BLb)m>THかにより、レール継目があるか否かを判定をする(ステップ104)。
ステップ104の判定結果がYESのときには、前記の検出信号DLの検出位置は、距離パルスPLによるサンプル数に応じて算出された検測車10の走行距離に対応して継目位置の測定データとして外部記憶装置(図示せず)等に記憶される(ステップ105)。そして、ボルト抜け穴検出処理プログラムをコールしてボルト抜け穴検出処理を起動する(ステップ106)。次に処理が終了か否かの判定に入り(ステップ107)、NOのときにはステップ101へ戻り、処理終了にならない限り、ステップ101〜ステップ107までの処理を循環して実行する。
なお、以上のうち、ステップ105の処理とステップ106の処理は、逆になり、ステップ106がステップ105より手前にあってもよい。
【0017】
そして、ステップ104でレール継目1aが検出されると、ステップ106において、ボルト抜け穴検出処理プログラムがコールされて、図面右側のボルト抜け穴検出処理に入る。
ボルト抜け穴検出処理では、カウンタをセットして距離パルスPLのカウントを開始し(ステップ201)、距離パルスPLのカウント値が所定値Kになったか否か判定して(ステップ202)、NOのときにはステップ201へと戻り、次の距離パルスPLを待って距離パルスPLをカウントする。このループで検測車10が図1に示すレール継目検出器6と継目板画像撮像装置7との距離Dだけ走行したかを所定値Kにより判定する。
距離パルスPLの数が所定値Kになったときには判定ステップ202で、YESとなり、検測車10が距離Dだけ走行したことが検出されて、継目板画像採取プログラム82aをMPU81がコールして実行する。そこで、4台の継目板撮像カメラ71のシャッタを切って継目の4枚の画像を画像メモリ84に記憶して、4枚の4画面の画像を採取し(ステップ203)、次にMPU81が二値化処理プログラム82bをコールして実行して、4枚の静止画像に対して最小極小値LP+αを閾値に二値化処理をして、図6に示す二値化画像14を4枚、作業領域82eにそれぞれ記憶する(ステップ204)。なお、このステップ204からは、前記したように各レール対応に2枚の静止画に対してパラレルの検出処理が行われる。以下、そのうち1枚の静止画についての処理を説明する。他のものも同時に同様な処理が行われている。
【0018】
次に、MPU81が影画像上の基準線検出プログラム82cをコールして実行して、明るさに重み付けをしたY方向各画素対応の基準線検出データを生成して(ステップ205)、最大の明るさ255と最小の明るさ最小値Aの1/3のところのレベルを二値化画像14の明るさのスライスレベル(閾値)THaとしてフランジ3aの影の画像部分(基準線帯)15の下側の基準線の画素位置を画素位置Sとして検出する(ステップ206)。そして、明るさ255未満でかつスライスレベルTHaの明るさ以上で同じ程度のある明るさの画素が連続して、例えば、6画素以上で8画素以下の範囲で画素位置Sから連続する画素があるか否かを判定する(ステップ207)。これによりボルト差込み穴か否かを判定する。なお、ボルト差込み穴が2個以上あった場合には、前記の6画素以上で8画素以下の範囲は穴の個数に応じて増加する。2個の場合には、その範囲は8画素以上で10画素となり、3個以上あった場合には12画素以上で15画素となる。継目板が6点ボルト止めのときには1枚の画像の中ではこれ以上の抜けはなく、通常、締付けボルトの抜けは、1個がほとんどであるので、前記のような判定をするが、判定範囲は適宜選択できるものである。
ここで、NOのときには画素位置SをS=S+1に更新して(ステップ208)、S>=Qかを判定して、継目板1のY座標の最大画素位置Qを超えたか否かを判定し(ステップ209)、NOのときにはステップ207に戻る。
ステップ207の判定でYESとなったときには、ボルト差込み穴が検出されたとして、ステップ105で記憶された検出信号DLの検出位置の測定データにボルト差込み穴検出のフラグとして加えられて、現在の走行位置とともに外部記憶装置等に記録して(ステップ210)、ボルト抜け穴検出処理を終了する。
このとき、ボルト抜け穴検出処理は終了するが、レール継目検出処理が終了しない限り、ステップ104でレール継目が検出されるとボルト抜け穴検出処理が再び開始される。
このようにして、継目板1のボルト抜け穴検出が行われ、外部記憶装置にそのデータが記憶される。
なお、継目板1は、検測開始地点から番号付けされて管理されてもよい。
また、前記したステップ207の範囲判定により、継目板1で2本以上ボルト差込み穴があっても、その明るさレベルは、明るさ255未満でかつスライスレベルTHaの明るさ以上の範囲に入るので、この場合も検出可能である。
【0019】
ところで、実施例では、図7に示すY座標に従う基準線検出データにおいてその中に黒レベルの塊領域19(画像部分16に対応)があるか否かを判定してボルト抜け穴の検出を行っているが、さらに黒レベルの塊領域19について、画像メモリ84の原静止画あるいは作業領域82eに記憶された二値化静止画像から塊領域19に対応するXY座標から得られるこの領域の画素数(面積)を求めて、その画素数(面積)がボルト抜け穴に対応するものか否かでボルト抜け穴の有無の判定をしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上説明してきたが、実施例では、1レールについてカメラ2台を用いているが、これは、継目板1の長さが長い場合の例であって、短い場合にはカメラは1台であってもよい。さらに長い場合には、3台設けてもよい。いずれの場合もカメラ1台の視野は大きくしないで済む。また、複数台のカメラで採取した画像は、レール対応に各一枚の静止画に合成されて、これに対してボルト抜け穴の検出処理が行われてもよい。
また、実施例では、レール継目検出器として隣接して配置され相互に逆方向に巻かれた第1、第2の空芯コイルを利用した電磁センサを用いているが、レール継目検出器は、非接触型であれば、レーザ式変位センサや他の光学的なセンサを用いることができることはもちろんである。なお、実施例における電磁センサの空芯コイルの形状は一例であって、円形の空芯コイルであってもよいことはもちろんである。また、必ずしも、プログラム処理によりレール継目(継目1a)を検出する必要はない。
さらに、実施例では、ケース12は、樹脂充填の密閉形のものとしているが、これは、一部が開放されたケースであってもよい。
またさらに、実施例では、継目板のフランジの影とボルト抜け穴とが重なる例を示しているが、これらは、必ずしも重なる状態になくてもよい。ボルト抜け穴の画像部分の検索基準線を得るものとして継目板のフランジの影があればよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1(a)は、この発明のレール継目板の締結ボルトの脱落検出装置を適用した一実施例の検測車のレール継目板の締結ボルトの脱落検出装置の説明図、図1(b)は、と継目板画像撮像装置の説明図である。
【図2】図2は、レール継目検出器の説明図である。
【図3】図3は、レール継目検出器の検出回路とデータ処理装置の説明図である。
【図4】図4は、レール継目検出器の検出波形の説明図である。
【図5】図5は、継目検出処理の説明図である。
【図6】図6は、撮像された静止画を二値化した画像の一例を模式的に示した説明図である。
【図7】図7は、図6の二値化画像のY座標に対する明るさ特性の説明図である。
【図8】図8は、ボルト抜け穴検出の画像処理のフローチャートである。
【図9】図9は、レール同士を締結した状態でのレール継目板の断面説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1…継目板、1a…継目、2…ボルト、
2a…ボルトの頭部、2b…ナット、
3,4…レール、3a…フランジ、3b…レールの頭部、
3c…ボルト差込み穴、
5…レール継目板の締結ボルトの脱落検出装置、
6…レール継目検出器、7…継目板画像撮像装置、
8…データ処理装置、10…検測車、
11…電磁センサ、
11a,11b…空芯コイル、
12…ケース、13…ブラケット、
20…検出回路、21a,21b…差動増幅器、
22a…定電圧電源回路、
23a,23b,25a,25b…A/D変換回路(A/D)、
24…距離パルス発生回路、
71…継目板撮像カメラ、72…照明光学系、
81…MPU、82…メモリ、
82a…継目板画像採取プログラム、
82b…背景除去・二値化処理プログラム、
83c…影画像上の基準線検出プログラム、
82d…継目板ボルト穴検出プログラム、
82e…作業領域、83…インタフェース、
84…画像メモリ、85…バス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールとレールとを連結するレール継目板の締結ボルト抜けを検出する軌道検測車のレール継目板の締結ボルトの脱落検出装置において、
前記軌道検測車のレールに設けられ前記レール継目を検出する非接触型の継目検出器と、
前記軌道検測車において前記継目検出器に対して前記軌道検測車の走行方向に対して後方に設けられ前記レールの継目板の静止画を撮像するためのカメラと、
前記レール継目板のフランジの影が前記レール継目板に落ちる角度で前記レール継目板を照射する照射光学系と、
前記継目検出器の検出信号に応じて前記カメラが前記レール継目に対応する位置に来たタイミングで前記カメラのシャッタを切って前記カメラから前記静止画を採取する制御装置とを備え、
前記静止画における前記フランジの影の画像を基準として決定される前記レール継目板の画像の所定の範囲において前記締結ボルトの差込み穴に相当する画像が前記静止画にあるか否かを検出するレール継目板の締結ボルトの脱落検出装置。
【請求項2】
前記照明光学系は、前記軌道検測車に搭載され、前記レールに対して50°〜70°のうちの選択された角度で前記レールの内側から前記フランジの影を作る光りを前記継目板に照射するものであり、前記所定の範囲は、前記フランジの影の画像の下側の画像ラインを基準とした範囲である請求項1記載のレール継目板の締結ボルトの脱落検出装置。
【請求項3】
前記静止画は、前記レールと直交する垂直方向をY方向とし、前記レールと平行な水平方向をX方向として、前記X方向の1ライン分の画素の明るさを積算した明るさをY方向の各1画素に対応して算出して、前記Y方向において積算値の極小値のうち最初に現れる最小極小値を求めてこの最小極小値を前記水平方向1ライン分の画素の数で割った値を基準にして算出された所定の閾値で前記静止画が二値化処理され、この二値化された画像において前記締結ボルトの差込み穴に相当する画像が検出される請求項2記載のレール継目板の締結ボルトの脱落検出装置。
【請求項4】
前記継目検出器は、前記レールの頭部の上部に対応して前記軌道検測車に設けられ隣接して配置され相互に逆方向に巻かれた第1、第2の空芯コイルと、
これら第1、第2の空芯コイルを収納したケースと、
前記第1、第2の空芯コイルにバイアス電流を流してこれら空芯コイルのインダクタンスの変化に対応する第1、第2の検出信号を得る検出回路とを備え、
前記第1の検出信号と第2の検出信号のレベルの差に基づいて前記継目検出器の検出信号を得る請求項3記載のレール継目板の締結ボルトの脱落検出装置。
【請求項5】
前記ケースは密閉形のものであり、前記第1、第2の空芯コイルは、巻き形が三角形状の空芯コイルであって、それぞれの1辺が隣接して配置され、前記第1、第2の空芯コイルの1つの中心が前記レールの頭部の中心より外側にずれているものであって、前記継目検出器の検出信号は、前記第1の検出信号と第2の検出信号のレベルの差の移動平均値に基づいて決定される請求項4記載のレール継目板の締結ボルトの脱落検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−250573(P2006−250573A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64276(P2005−64276)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】