説明

ロジウムの回収方法

【課題】 ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム溶液中のロジウムをギ酸で還元し、高収率でロジウムブラックを回収し、さらにこのロジウムブラックを還元雰囲気下で焼成することにより、高品位のスポンジロジウムを得る方法を提供する。
【解決手段】ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム水溶液にギ酸を添加して、ロジウムを還元回収する操作において、ロジウムをギ酸で還元するのに必要な理論量に対して、ギ酸を2.5〜5.0当量添加し還元後、ろ別することにより、98%以上の高収率でロジウムブラックとして回収するロジウムの回収方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム溶液からギ酸を添加して、ロジウムを固体として回収する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム溶液にギ酸を添加して、ロジウムブラックとしてロジウムを回収する技術は、特公 平1-30896「貴金属含有溶液からの貴金属抽出方法」に開示されている。
【0003】
しかしながら、還元条件の詳細ついては、開示されていない。
【0004】
本発明者らは、ロジウムをギ酸で還元回収する場合、ギ酸の添加量に対するロジウムの回収率がある範囲で極大値を持つことを知見した。
【特許文献1】特公 平1-30896「貴金属含有溶液からの貴金属抽出方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム溶液からギ酸を添加して、ロジウムを固体として回収する際に、ロジウムを高収率で回収する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく以下の発明をなした。
即ち、本発明は、
(1)ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム水溶液にギ酸を添加して、ロジウムを還元回収する操作において、ロジウムをギ酸で還元するのに必要な理論量に対して、ギ酸を2.5〜5.0当量添加し還元後、ろ別することにより、98%以上の高収率でロジウムの固体として回収するロジウムの回収方法。
(2)上記(1)において、ギ酸の添加量を2.5〜3.0当量とすることにより、99%以上の高収率でロジウムの固体として回収するロジウムの回収方法。
(3)上記(1)或いは(2)の何れかにおいて、還元時の温度が、85℃〜95℃であることを特徴とするロジウムの回収方法。
(4)上記(1)から(3)の何れかにおいて、回収したロジウムブラックを還元雰囲気下で焼成することによりスポンジロジウムを得るロジウムの回収方法。
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のロジウム回収方法は、
(1)ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム水溶液にギ酸を添加して、ロジウムを還元回収する操作において、ギ酸の添加量を適正にすることにより、98%以上の高収率でロジウムの固体として回収することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明に関して、詳細に説明する。
本発明者等は、ロジウムをギ酸で還元回収する場合、ギ酸の添加量に対するロジウムの回収率がある範囲で極大値を持つことを見出した。
通常、種々の還元剤を添加して溶液中の金属を還元し、メタルとして高収率で回収しようとする場合、還元に必要な理論量に対して1倍〜数倍添加するのが一般的である。これは、添加した還元剤のうち、目的とする金属の還元に寄与しない分があるためで、目標とする還元率に達するまで、還元剤の添加量を増やす必要がある。また、還元剤はある範囲以上に過剰に添加しても、還元回収率は頭打ちになり、一定になることが多い。
本発明のヘキサクロロロジウム溶液アンモニウム溶液にギ酸を添加して、ロジウムを還元しロジウムブラックを得る操作においても、ギ酸添加量3倍当量までは、同様に還元率が上昇するが、3当量における還元率を極大値とし、これ以上ギ酸添加量を増やすと、還元率は減少することがわかった。この原因は不明確であるが、ギ酸は金属と錯体を作ることが知られており、ギ酸を過剰に添加すると、ロジウムがギ酸と錯体を形成し、ロジウムが還元されにくくなることが考えられる。
還元時の液温度については、85℃〜95℃程度が望ましい。これは、温度が85℃未満であると、ロジウムのギ酸による還元反応は緩慢なため反応が進みにくくロジウム還元率が低下し、温度が95℃以上であると、ギ酸の沸点が107℃(水との共沸点)であることから、ギ酸の蒸発分が増して還元に寄与するギ酸の割合が減少しロジウム還元率が低下すると、考えられるためである。
なお、回収したロジウムを水洗すると、ロジウムの一部が溶解するが、これは、還元操作においてメタルとして沈殿するロジウムブラックとは別に、一部がヘキサクロロロジウム酸アンモニムとして沈殿するためと思われる。
この回収したロジウムは、水洗の有無に関わらず、還元雰囲気下例えば、水素雰囲気下で焼成することにより、スポンジロジウムを得ることができる。
焼成温度は、750℃〜850℃において処理し、残留する酸素を除去し、99.99mass%のスポンジロジウムを得る。
【0009】
本願発明について、図1に示すフローシートに沿って説明する。実施例及び比較例の分析は、溶液についてはICP発光分光分析装置により、スポンジロジウムについてはグロー放電質量分析装置により行なった。
【実施例】
【0010】
[実施例1]
原料としてロジウム以外の金属を殆ど含まない表1に示すヘキサクロロロジウム酸アンモニウム溶液を使用した。




【表1】

還元前の液温度はヘキサクロロロジウム酸アンモニウムの沈殿防止のため、60℃において、ロジウムをギ酸で還元するのに必要なギ酸理論当量を次の反応式より算出し、3当量相当のギ酸を添加し、90℃で1時間加熱した。
2(NH4)3[RhCl6]
+ 3HCOOH → 2Rh + 6HCl + 6NH4Cl +3CO2
この後、室温で1晩放冷し、0.1μmのメンブランフィルターで真空ろ過し、沈殿したロジウムと還元後液ろ液を得た。この時のロジウム回収率を次式より
計算した。
ロジウム回収率(%)=(還元前液Rh量(g)−還元後液ろ液Rh量(g))÷
還元前液Rh量(g)×100
この時の還元後液の分析値を表2に示す。ロジウム回収率は、99.7%であった。
【表2】

【0011】
[実施例2及び比較例]
原料として表1に示すヘキサクロロロジウム酸アンモニウム溶液を使用し、実施例1と同じ条件で、ギ酸の添加量のみを変えて還元して得た還元後液ろ液の分析値とロジウム回収率を表3に示す。






【表3】

【0012】
実施例1、実施例2及び比較例のギ酸添加当量に対するロジウム回収率を図2に示す。
ギ酸添加当量を2.5〜5.0当量にすることで98%以上のロジウム回収率が得られ、更にギ酸添加量を2.5〜3.0当量にすることで99%以上のロジウム回収率が得られることがわかる。
【0013】
[実施例3]
実施例1で得たロジウムブラックを水素雰囲気下、800℃で還元焼成し、スポンジロジウムを得た。これにより、残留する酸素のほとんどが除去でき、更に、GDMSで72成分の不純物(原子番号順にリチウムからウランのうち、ロジウムと不活性ガスを除く)を分析した結果、不純物の合計は84ppmであり、99.99mass%以上のロジウムを得た。
【0014】
以上より、実施例1,2,3により、ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム溶液中のロジウムから、汚染することなく、高収率でロジウムブラックを回収し、このロジウムブラックを焼成することで、高品位のスポンジロジウムを回収できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ロジウム還元回収フローシートの一態様を示す。
【図2】ギ酸の添加当量に対するロジウム回収率を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム水溶液にギ酸を添加して、ロジウムを還元回収する操作において、ロジウムをギ酸で還元するのに必要な理論量に対して、ギ酸を2.5〜5.0当量添加し還元後、ろ別することにより、98%以上の高収率でロジウムブラックとして回収することを特徴とするロジウムの回収方法。
【請求項2】
請求項1において、ギ酸の添加量を2.5〜3.0当量とすることにより、99%以上の高収率でロジウムブラックとして回収することを特徴とするロジウムの回収方法。
【請求項3】
請求項1或いは請求項2の何れかにおいて、還元時の温度が、85℃〜95℃であることを特徴とするロジウムの回収方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかにおいて、回収したロジウムブラックを水素雰囲気下で焼成することによりスポンジロジウムを得ることを特徴とするロジウムの回収方法。
















【図1】
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【図2】
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