説明

ロッキング椅子

【課題】背もたれの背面側の外観を向上させると共に背もたれの背面に接触した人の衣服が、背支柱体と背アウターシェルとの連結部の隙間に絡まったり、この部分に不用意に人の指が近づいたとき、指が挟まれて怪我をするおそれのないロッキング椅子を提供する。
【手段】座ベース9に基部が固定された背支柱17の前方から背アウターシェル14の開口部を通過させた後、背支柱17の上部の横ピン43の両端に、背アウターシェルの内面側に設けられた上下スライド可能なガイド部材45を嵌め入れる。これにより、背もたれにおける背アウターシェルの内面側にて、背支柱の上部に対して背アウターシェル14が相対的に上下動可能に連結され、背もたれのノーマル状態及びロッキング状態のいずれの状態においても、背アウターシェルの背面側が被さると共に背支柱の上部に対して開口部の上端縁40aが隙間の小さい状態で重なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、脚で支持された座受け部に固定された背支柱体に対して、背もたれが沈み込みながら後傾するロッキング椅子に係り、より詳しくは、前記背もたれにおける背面側部材の内側に、前記背支柱体の上部が相対的に上下動可能に連結されたロッキング椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背もたれが後傾動するロッキング椅子のタイプとして、背もたれの背面を支持する背支柱の基部が、脚で支持された座受け部に対して移動可能に連結され、座受け部と背支柱とう間に連結されたバネ力に抗して背もたれが沈み込みながら後傾する構成として、特許文献1や2の他、多数開示されている。
【0003】
別のタイプとして、例えば特許文献3では、座受け部(シャーシ)には上面に座クッションを有する中間金具が前後動可能に配置され、この中間金具に側面視でL字状のガイドトラックの基部が固定され、一方、座受け部の後端部に側面視でL字状の背支柱の基部が固定され、この背支柱は上記背もたれの背面側においてガイドトラックを挟んで後ろ側に配置されている。そして、背もたれの背面に設けられた上下スライド部に対して横ピンを介して背支柱が上下動可能に装着されている。他方、背もたれの背面に下向きに延びるブラケット部材の下方に取付けられた横ピンの両側のコロが、上記上下スライド部より下方において、ガイドトラックの上下方向に延びるガイド溝に転動可能嵌まった構成が開示されている。 この構成によれば、着座した人が背もたれに凭れ掛かると、背もたれが後傾しつつ下降すると共に座は全体的に前進動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−236977号公報
【特許文献2】特開2009−165659号公報
【特許文献3】米国特許出願公開公報:US2009/0152921A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献3の構成によれば、背支柱の上端部の横ピンが上下スライド部に対して上下動可能に装着されており、且つこの部分(可動部)が背もたれの背面において外部に露出しているため、背もたれの背面側の外観(美観、デザイン性))が劣る他、背もたれの背面に接触した人の衣服が、上下スライド部と横ピンとの隙間に絡まったり、この部分(可動部)に不用意に人の指が近づいたとき、この可動部に指が挟まれて怪我をするおそれがあった。
【0006】
本願発明は、このような従来技術の問題を解決すべくなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1の発明は、脚で支持された座受け部に固定された背支柱体に対して、背もたれが沈み込みながら後傾するロッキング椅子であって、前記背もたれにおける背面側部材の内側は、当該背面側部材が前記背支柱体の上部に対して上下動可能となるような連結部にて連結され、前記背もたれのノーマル状態及びロッキング状態のいずれの状態においても、前記背支柱体の上部に対して前記背面側部材の背面側が被さっているものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に加えて、前記背面側部材と前記背支柱体との前記連結部は、上下長手の溝または孔と、ピンとからなり、前記背もたれが沈み込みながら後傾するように構成されているものである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1また2に記載のロッキング椅子において、前記背面側部材には背面視で縦長の開口部が形成され、この開口部が前記背支柱体にて塞がれているものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、脚で支持された座受け部に固定された背支柱体に対して、背もたれが沈み込みながら後傾するロッキング椅子であるので、ロッキング状態でであっても、背もたれの後傾角度に対して背もたれの上部の後傾移動量が少ないので、着座者が後ろに大きく反ることがない。
【0011】
そして、請求項1の発明によれば、前記背もたれにおける背面側部材の内側は、当該背面側部材が前記背支柱体の上部に対して上下動可能となるような連結部にて連結されていることと、前記背もたれのノーマル状態及びロッキング状態のいずれの状態においても、前記背支柱体の上部に対して前記背面側部材の背面側が被さっているものであるから、背もたれの姿勢の如何に拘らず、背面側部材と背支柱体の上部との上下動可能な連結部が常に背面側部材にて隠されていることになるから、椅子の背面側の外観が向上するという効果を奏する。また、背もたれの背面に接触した人の衣服が、上記連結部の隙間に絡まったり、この部分(可動部)に不用意に人の指が近づいたとき、この可動部に指が挟まるなどのおそれがなくなるという効果を奏する。
【0012】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明による効果に加えて、前記背面側部材と前記背支柱体との連結部は、上下長手の溝または孔と、ピンとからなり、前記背もたれが沈み込みながら後傾するように構成されているものである。従って、この連結部の構成が極めて簡単で、且つコンパクトにできる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明による効果に加えて、前記背面側部材には背面視で縦長の開口部が形成され、この開口部が前記背支柱体にて塞がれているものであるので、背もたれの姿勢の如何に拘らず、開口部と背支柱体との間に大きな隙間が発生しないから、背もたれの背面に接触した人の衣服が、隙間に絡まったり、この部分に不用意に人の指が近づいたとき、この隙間に指が挟まるなどのおそれがなくなるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係るロッキング椅子の全体の前面側斜視図である。
【図2】(A)はノーマル状態の縦断側面図、(B)はロッキング(後傾)状態の縦断側面図である。
【図3】背面側の斜視図である。
【図4】背支持カバー体を外した状態の背面側の斜視図である。
【図5】背クッション、背アウターシェル、背インナーシェル及び背支持カバー体とを分離した斜視図である。
【図6】座ベースを二点鎖線で示す座ベース内の構造を示す側面図である。
【図7】背アウターシェルと座アウターシェルの重複部を示す下面側斜視図である。
【図8】図7の上面側斜視図である。
【図9】座アウターシェルから座インナーシェルを分離した状態の上面側斜視図である。
【図10】座インナーシェルの下面側斜視図である。
【図11】座アウターシェル、座受け部、背支柱体などを示す斜視図である。
【図12】座受け部から座上金具などを外した状態の斜視図である。
【図13】背支持カバー体の内面側を示す斜視図である。
【図14】背アウターシェル、背支柱体などの座受け部に対する連結部を示す一部切欠き斜視図である。
【図15】図14の XV-XV視断面図である。
【図16】背アウターシェル、背支柱体、スライドガイド部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図16は第1実施形態を示しており、以下、順次説明する。なお、以下の説明で方向を示すため「前後」「手前」「後ろ」「左右」といった文言を使用するが、これらの文言はロッキング椅子(以下、単に椅子と称する)に着座した人の姿勢を基準にしている。「正面視」は着座者と対向した方向から見た状態になる。
【0016】
<第1実施形態の概要>
図1は椅子全体の前面側斜視図であり、まず、図1及び図3に基づいて概要を説明する。本実施形態の椅子は事務用のいわゆる回転椅子に適用しており、椅子は、主要要素として、脚装置1(請求項にいう脚に相当)、座受け部2、座3、背もたれ4、背支柱体5、肘掛け装置7を有している。
【0017】
ガスシリンダより成る脚支柱6は従来から周知の構成の脚装置1の一部を構成するものであり、脚支柱6は、放射状に延びる複数本(一般に5本)の枝足を有する脚本体の中心部に嵌着されている。肘掛け装置7は、オプション部品であり、ベース9(後に詳述する)の左右両側に基端部が着脱可能に取付けられて座3の左右両側に立設されたものである。肘当てが上端に備えられた肘掛け装置7は、本発明の要部でないため、詳細な説明は省略する。なお、肘掛け装置7を取り外した状態では、着脱可能な樹脂カバー8にてベース9の左右両側の肘掛け取付け部9dが覆われている(図6、図7等参照)。
【0018】
座受け部2は、脚支柱6の上端に固定された上向き開放された筐状の座ベース9と、座座ベース9の上端に対して前後スライド自在に取り付けられた座上金具10とを有している(図2、図6、図11、図12等参照)。
【0019】
座3は、座上金具10の上面に取付けられた座アウターシェル11と、座アウターシェル11の上面に取付けられる座インナーシェル12と、座インナーシェル12の上面に取付けられる座クッション体13とが備えられている(図2、図9、図10等参照)。座アウターシェル11及び座インナーシェル12はPOM、PP等の合成樹脂材を素材とした射出成形品であるが、金属製または木製であっても良い。
【0020】
座インナーシェル12は、座前部12aと座後部12bとを有し、座前部12aと座後部12bとの間は座3の左右方向に長い多数のスリット12cを有する。スリット12cは着座者の体圧が強く作用する部分を中心にして多数形成されている(図8〜図10参照)。なお、図10に示すように、数箇所のスリット12cの下面を跨ぐように、断面上向きU字状の補強部12dが座インナーシェル12の下面側に連設されている。このスリット12cの群により、着座者の体圧によって下向きに伸び変形することが許容されており、その結果、高いフィット性が得られる。また、座インナーシェル12は座3に対応して座前部12aと座後部12bとが多数のスリット12cを有する屈曲可能領域を介して連設されているので、座3が屈曲することが許容されている。座3の屈曲の中心線(折り目線)は、おおよそ着座者の尾てい骨が当たる箇所或いはそれより僅かに前のあたりに設定している。なお、座前部12aと座後部12bとはヒンジ(不図示)にて連結された別パーツの構成としても良い。さらに、座後部12bは、後述する背アウターシェル14の基部14bに係合または連結されているので、背アウターシェル14が沈み込みながら後傾するとき、座後部12bのみが下方に沈むように屈曲できる。
【0021】
背もたれ4は、背アウターシェル14と、背アウターシェル14の前面に取付けられる背インナーシェル15と、背インナーシェル15の前面に取付けられる背クッション体16とが備えられている(図2、図3〜図9、図11、図12等参照)。背アウターシェル14及び背インナーシェル15はPOM、PP等の合成樹脂材を素材とした射出成形品である。背面側部材の一例としての背アウターシェル14は、側面視L字状に形成され、背インナーシェル15を支持する本体部14aと、この本体部14aの下端から前方向に延設される基部14bとからなる。
【0022】
実施例では、背支柱体5は、側面視L字状に形成された左右一対のパイプ部材17aを有する背支柱17と、該背支柱17の裏面側を覆う着脱可能な背支柱カバー体18とを備えている。なお、別実施例では、背支柱体5が、背支柱17と背支柱カバー体18とが、例えば樹脂材やアルミ成形品にて一体的に形成されている形態であっても良い。
【0023】
背支柱体5における一対のパイプ部材17aの基部は金属製の座ベース9の内面に固定されたベース基板19に溶接などにて固定され、さらに補強金具20を被せてベース基板19に溶接などにて固定されている(図6、図15等参照)。これに加えてねじ止しても良い。
【0024】
座ベース9は上向き開口の箱状の形態であり、その後部内面に金属製のベース基板19が溶接によって固着されている。座ベース9の後端は開放されている。座ベース9とベース基板19に固着されたブッシュ21に脚支柱6の上端を嵌着している。脚支柱6(ガススプリング)のプッシュバルブを操作する昇降レバー22と、背もたれ4をロッキング動作不可状態とロッキング動作可能状態とに切り換える操作レバー23とが、座ベース9の左右両側に突出するように設けられている(図3、図14等参照)。
【0025】
座ベース9における左右両側板9aには、前後方向に長い長孔24を有し、この長孔24に樹脂製のブッシュ24aを装着している。この左右両ブッシュ24aを左右に貫通し、且つ前後方向に摺動可能になるように、連結軸25が配置されている(図6、図12、図14、図15等参照)。
【0026】
座インナーシェル12が上面にてネジ止めされる平板状の座上金具10の後端部の左右両側には連結軸25に被嵌する取付け孔26が設けられている。また、座上金具10の後端部であって左右方向の中間位置には、後述するロッキングバネ30の後端に嵌合する後部バネ受け体31aを支持するための支持片29が下向きに延設されている(図2、図12、図15等参照)。そして、座ベース9における左右両側板9aの上端に左右外向きの水平片9bを一体に設けて、この水平片9bに断面コ字状で抱持部が形成された樹脂製のスライダ部材28が外嵌して固定されている。座上金具10の左右両側の断面コ字状のスライダ装着部27は、スライダ部材28に被嵌して、座上金具10が座ベース9に対して前後摺動可能に構成されている。座ベース9の前面板9cの内面に固定された前部バネ受け体31bには、ロッキングバネ30の前端が嵌合している。このロッキングバネ30の付勢力により、座上金具10、ひいては座3全体を座受け部2に対して椅子の後方に付勢しているものである。
【0027】
座ベース9における左右両側板9aの外側において、背アウターシェル14の下端基部14bの前端に設けられた左右一対の軸受部32と、上記座上金具10における左右一対の取付け孔26とが、連結軸25に対して被嵌している。取付け孔26は左右両側板9aの外側に対して離間した位置に配置され、軸受部32は外側に接近して配置されている(図12、図14、図16参照)。なお、図12、図14では、連結軸25の様子を見せるため、あえて連結軸25に対して座上金具10を外した状態で図示している。
【0028】
これらにより、ロッキング動作時の背もたれ4が後傾するとき、座上金具10が前方向に移動する。そして、これらの荷重をロッキングバネ30にて弾性的に支持することになる。
【0029】
なお、座インナーシェル12の下面側に係合連結された座アウターシェル11にて、座ベース9における左右両側板9aの外側の上部寄り部位と座上金具10の下方とを覆うと共に長孔24やブッシュ24aも外側から覆われる。また、座アウターシェル11の後端には連結軸25の両端部を覆うカバー部33が一体的に形成されている(図7参照)。これにより、連結軸25が座ベース9から軸方向に抜け出さないように構成されている。さらに、座アウターシェル11の後端には、背アウターシェル14の下端基部14bの前端縁に対して上方から適宜寸法だけ重なる段部34が形成されている(図9参照)。
【0030】
座ベース9内に固定された基部受け(不図示)に対してロックアーム34が上下方向に回動可能に装着されている。ロックアーム34の自由端側には、操作レバー23の先端クランク部23aが嵌まる長孔35が形成されている(図6参照)。操作レバー23の回動操作にて、先端クランク部23aにて長孔35を介してロックアーム34を押し上げて、ロックアーム34の自由端側を上昇させると、当該ロックアーム34の上面に凹み形成されたストッパ係合部34a(図6、図14参照)に連結軸25が嵌まり、この連結軸25の前進動を阻止する。これにより、座上金具10、ひいては座3の前進動を阻止することができると共に背もたれ4の後傾動を阻止し、ロッキング動作不可状態となる。図6に示すように、ロックアーム34を伏せ姿勢にすると、ストッパ係合部34aが連結軸25から外れ、連結軸25の前進動を許容する。これにより、座上金具10、ひいては座3の前進動を許容することができると共に背もたれ4の沈み込みながらの後傾動を許容し、ロッキング動作可能状態となる。
【0031】
次に、背面側部材の一例としての背アウターシェル14と、背支柱体5との連結構造について説明する。本願発明では、後述するように、開口部40は背面視で縦長に形成され、背もたれ4のノーマル状態及びロッキング状態のいずれの状態においても、背支柱体5にて開口部40が塞がれている。また、背支柱体5に対する背アウターシェル14の装着時には、背支柱体5(特に背支柱カバー体18)の少なくとも上部側が開口部40を介して背アウターシェル14の内面側へ通過し得るように形成されているものである。
【0032】
例えば、背アウターシェル14の左右中央側における基部14bの前端から本体部14aの上下方向中途高さ位置まで連続して延びるように、開口部40が形成されている。但し、基部14bの前後方向の中途部及び本体部14aの上下方向中途部は、背アウターシェル14の内面側で開口部40を跨ぐように、複数の連結部材41にて一体的に接続されている(図3〜図5、図7、図11、図12、図14参照)。これにより、開口部40で離間された背アウターシェル14の左右部材が不用意に変形しないようになっている。また、開口部40の外周であって、背アウターシェル14の内面には、その剛性を向上させるために、枡目状の多数の補強リブ42が一体的に形成されている。
【0033】
背支柱体5における背支柱17の上端部には背アウターシェル14に対する連結のための横ピン43(請求項にいうピンに相当)が固定され、横ピン43の左右両端部が外側に露出している。他方、背アウターシェル14における開口部40のうち、本体部14a側にて上下に延びる左右の側縁に沿って、上下長手の左右一対の取付け溝44が互いに向かい合う位置に形成されている。各取付け溝44には、凹み形成された摺動溝45a(請求項にいう上下長手の溝または孔に相当)を有するガイド部材45が嵌まる(図2、図4、図6、図8、図9、図11、図12、図14〜図16参照)。実施例では、図示のように、摺動溝45aは上下長手であり、且つ緩やかな円弧状に形成されている。この円弧の中心は背クッション体16側(椅子の手前側)に位置している。
【0034】
ガイド部材45は金属製の横ピン43の両端部との摺動抵抗が少なく、且つ耐摩耗性を有する高機能樹脂製であっても良いし、横ピン43との摺動部にフッ素コーティングを施した金属部材であっても良い。背支柱17に対して背アウターシェル14を装着する際に、ガイド部材45を背アウターシェル14の内面に固定できる構成を採用しても良い。なお、別実施例として、背アウターシェル14に直接、上下長手の摺動溝45aや上下長手の孔を形成するようにしても良いし、逆に、ガイド部材45を背支柱体5側に設け、横ピン43を背アウターシェル14(背面側部材)に設けても良い。これらの場合、長孔とリンク部材によって構成しても良い。
【0035】
背支柱17に対して背支柱カバー体18が着脱可能に取付けられている。図13に示すように、背支柱カバー体18の内面には、一対のパイプ部材17aのそれぞれを支持するためのU字状の嵌合溝46aが切欠き形成された支持リブ46が複数個所に形成されている。U字状溝46aの開口端の巾寸法はパイプ部材17aの直径より若干狭く形成されており、その近傍に配置された抜け止め爪47が設けられているため、支持リブ46からパイプ部材17aが容易に脱落しない。また、背支柱カバー体18の左右両側板には、横ピン43の両端部を回避するための切欠き部48が形成されている。さらに、背支柱カバー体18の内面の上部には下向きに開放された筐状の嵌合部49が形成され、背支柱カバー体18の内面の下部には係合爪部50が設けられている。
【0036】
従って、背支柱17に対して背支柱カバー体18を強固に取り付けるには、図15に示すように、一対のパイプ部材17aの上端どうしを繋ぐ補強ブラケット51の上端に嵌合部49を上方から被嵌する一方、係合爪部50をベース基板19の後端の立ち上げ片に穿設された係合孔(符号無し)に押し込んで係合すれば良い。なお、背支柱17に対して背アウターシェル14を前側から接近させて、開口部40における一対のガイド部材45に対して上記横ピン43の両端部を嵌め入れる。次いで、背アウターシェル14の基部14bにおける軸受部32及び上座金具10の取付け孔26と、座ベース9のブッシュ24の長孔とを位置合わせし、連結軸25をこれらに通して連結する。
【0037】
背支柱17に対して背支柱カバー体18を先に取り付けした後、背アウターシェル14を背支柱17に取り付けし(図16参照)、さらにそののち背インナーシェル15を背アウターシェル14に固定する順序が好ましい。背支柱17に対して背支柱カバー体18を後で取り付けしても良い。図4はこの様子を示す。
【0038】
ガイド部材45の上端の配置位置は、開口部40の上縁40a(図2〜図4、図7、図15等参照)よりも高い(上)位置に設定されている。
【0039】
そして、横ピン43がガイド部材45に対して上下動可能な軸連結されていることにより、背もたれ4における背アウターシェル14の内面側(背アウターシェル15との間の空間)が、背支柱体5の上部に対して上下動可能に連結され、背もたれ4のノーマル状態(図2(A)参照)及びロッキング状態(図2(B)参照)のいずれの状態においても、背支柱体5の上部に対して背アウターシェル14の背面側(本体部14a)にて被さっていることになる。従って、横ピン43とガイド部材45による上下動可能な連結部が常時背アウターシェル14にて隠されているから、椅子の背面側の外観が向上するという効果を奏する。特に、図15に示すように、背もたれ4がノーマル状態において、背支柱体5(背支柱17に背支柱カバー体18が取付けられたもの)の上端18aが、背アウターシェル14の内面側に位置した状態で、開口部40の上縁40aと寸法H1だけ重なり、且つ上端18aが背アウターシェル14の本体部14aの内面に近接した位置にあるため、本体部14aの開口部40(特に上縁40a近傍)に人の指が触れても、当該指が背アウターシェル14と背支柱体5(背支柱カバー体18)との隙間に挟まることがない。勿論人の衣服が上記隙間に挟まることもない。
【0040】
背もたれ4のロッキング状態においては、姿勢が一定の背支柱体5に対して背もたれ4が沈み込みながら後傾する。このときも背支柱体5の上部に対して背アウターシェル14の背面側が被さっていることになる(図2(B)参照)。その場合、背支柱体5の上部(背支柱カバー体18の上部)が背アウターシェル14の内面側(背アウターシェル15との間の空間)に大きく入り込むことになるが、開口部40の上縁40aに対して背支柱カバー体18の背面が近接して隙間が生じないように、当該背支柱カバー体18の背面形状を設計するべきである。ロッキング状態とは、背もたれ4が実質的に直立となるノーマル状態から最大後傾姿勢までの途中の後傾姿勢をも含む意味である。
【0041】
さらに、背もたれ4のノーマル状態(図2(A)参照)及びロッキング状態(図2(B)参照)のいずれの状態においても、開口部40の上下方向に延びる側縁と、背支柱カバー体18の上下方向に延びる側面との間にできる隙間も極力小さくするように設定することが好ましい。背アウターシェル14の背面側に接近または接触した人の衣服などが上記隙間に挟まらないようにするためである。
【0042】
さらに、背もたれ4のノーマル状態(図2(A)参照)及びロッキング状態(図2(B)参照)のいずれの状態においても、椅子の側面投影視において、背支柱カバー体18の側面の一部と背アウターシェル14の背面とが重なって、両者間に隙間が生じないようにに、背支柱カバー体18及び背アウターシェル14の形状が形成されている。
【0043】
なお、背アウターシェル14と背インナーシェル15との重ね連結(重ね接合)及び座アウターシェル11と座インナーシェル12との重ね連結(重ね接合)の構成は、従来から公知の雄型係合部と雌型係合部との嵌め合わせ構造を採用している。また、これらインナーシェルとアウターシェルとの位置合わせ保持のためには、従来から公知の位置ずれの防止手段(ストッパ手段)を用いる。
【0044】
他の実施例として、背クッション体16とその背面側を支持する背面側部材との間の空間内に、背支柱体の上部との上下動可能な連結部が設けられていても良い。
【0045】
さらに、背面側部材の他の実施例として、背クッション体16の背面を支持する背部材の背面に側面視L字状のフレームが固着されたものである。このフレームは金属製であっても良い。左右一対の側面視L字状の縦フレーム部とこの縦フレーム部の上端間を繋ぐ上フレーム部とからなる背面矢視で門形のフレームであり、この門形のフレームを背部材の左右中央部に固定する。左右一対の縦フレーム部と上フレーム部で囲まれた部位を開口部40とする。左右一対の縦フレーム部の下端基部を座ベース9方向に延設し、その下端基部の前端後述する連結軸25に回動可能に連結する構成とする。座ベース9に固定された背支柱体5は上記開口部40内に配置され、背支柱体5の上部と左右一対の縦フレーム部の内側上部との間に上下動可能な連結部が設けられた構成とするものである。この構成によっても、背もたれの姿勢の如何に拘らず、背面側部材(=背部材とフレーム)と背支柱体の上部との上下動可能な連結部が常に背面側部材にて隠されていることになる。
【符号の説明】
【0046】
1脚装置
2 座受け部
3 座
4 背もたれ
5 背支柱体
9 座ベース
10 座上金具
11 座アウターシェル
12 座インナーシェル
13 座クッション体
14 背アウターシェル
14a 本体部
14b 基部
15 背インナーシェル
16 背クッション体
17 背支柱
17a パイプ部材
18 背支柱カバー体
19 座ベース
24 (長い摺動溝を有する)ブッシュ
25 連結軸
30 ロッキングばね
40 開口部
43 横ピン
45 ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚で支持された座受け部に固定された背支柱体に対して、背もたれが沈み込みながら後傾するロッキング椅子であって、
前記背もたれにおける背面側部材の内側は、当該背面側部材が前記背支柱体の上部に対して上下動可能となるような連結部にて連結され、
前記背もたれのノーマル状態及びロッキング状態のいずれの状態においても、前記背支柱体の上部に対して前記背面側部材の背面側が被さっていることを特徴とするロッキング椅子。
【請求項2】
前記背面側部材と前記背支柱体との前記連結部は、上下長手の溝または孔と、ピンとからなり、前記背もたれが沈み込みながら後傾するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のロッキング椅子。
【請求項3】
前記背面側部材には背面視で縦長の開口部が形成され、この開口部が前記背支柱体にて塞がれていることを特徴とする請求項1または2に記載のロッキング椅子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate