説明

ロック付カニューラ

【課題】別体で形成されたカニューラとハブを組み合わせた構造を採用することで優れた生産効率を実現しながら、血液や薬液等が流れる流路の壁面を凹凸の少ない滑らかな形状とすることが出来る、新規な構造のロック付カニューラを提供すること。
【解決手段】カニューラ12の基端部側にロック24付のハブ14が設けられたロック付カニューラ10において、カニューラ12の基端部側がテーパ状に拡径された取付部16とされており、カニューラ12が別体のハブ14に対して先端側から挿入されて取付部16の外周面がハブ14の内面に当接されることにより挿入方向で位置決めされていると共に、ハブ14の基端部側が後加工で内周側に変形されることにより取付部16の基端部側の端面に重ねあわされてカニューラ12の抜け出しを阻止する固定片32が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液透析等に用いられるカニューラに係り、特にルアーロック付きのシリンジ等に装着可能とされた、ロック付カニューラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、血液透析等の治療を行うための医療器具の一種として、カニューラ(カテーテル)が用いられているが、その一種として、シリンジ等への接続を容易にするためのロックを備えたロック付カニューラが知られている。即ち、ロック付カニューラは、カニューラの一方の端部(基端部)を大径化してシリンジ等への連結部とすると共に、該連結部の外周面にロックを設けた構造とされている。
【0003】
ところで、ロック付カニューラでは、カニューラを押出し成形によって効率的に製造するために、ロックをカニューラとは別体のハブに形成して、そのハブをカニューラに固定することで、カニューラに連結部を設けることが提案されている。例えば、特開平8−266635号公報(特許文献1)に示されており、カニューラの基端部をロック付のハブに挿入して接着することにより、カニューラの基端部側にシリンジ等への連結部が形成されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に示された構造では、カニューラとハブの間に接着剤が塗布されていることから、接着剤の硬化に伴ってカニューラが変形してしまうおそれがある。特に、特許文献1の図2に示された構造では、接着状態を安定させることが難しく、カニューラの直径の製造誤差等によっては、接着不良を生ずる可能性もあって、安定した品質で製造することが難しい。
【0005】
また、カニューラの端部がハブの軸方向中間部分に位置していることから、カニューラとハブによって構成される流路の壁内面にカニューラの端部による段差が形成される。そうすると、例えば、血液透析等に用いられる場合に、流路内を流れる血液が段差部分で滞留して凝固するといった不具合や、乱流による流量の不安定化や流動抵抗の増大等といった問題が生ずるおそれもあった。特に、特許文献1の図8に示された構造では、カニューラの厚さに加えて、止着ピンの厚さがより大きな段差を生ずることから、上記の如き滞留や乱流が問題となり易かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−266635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、別体で形成されたカニューラとハブを組み合わせた構造を採用することで優れた生産効率を実現しながら、血液や薬液等が流れる流路の壁内面を凹凸の少ない滑らかな形状とすることが出来る、新規な構造のロック付カニューラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の第1の態様は、カニューラの基端部側にロック付のハブが設けられたロック付カニューラにおいて、前記カニューラの基端部側がテーパ状に拡径された取付部とされており、該カニューラが別体の前記ハブに対して先端側から挿入されて該取付部の外周面が前記ハブの内面に当接されることにより挿入方向で位置決めされていると共に、該ハブの基端部側が後加工で内周側に変形されることにより該取付部の基端部側の端面に重ねあわされて該カニューラの抜け出しを阻止する固定片が形成されていることを、特徴とする。
【0009】
第1の態様に従う構造のロック付カニューラによれば、血液や薬液等が流動する流路の壁内面の全体がカニューラによって構成されており、該壁内面が凹凸のない滑らかな面とされる。それ故、流路の壁内面における凹凸の形成が回避されることとなり、血液や薬液のスムーズな流動が実現されると共に、そのような凹凸により血液や薬液が滞留して凝固し、それが剥離して体内に送り込まれる等といった問題も回避される。
【0010】
しかも、カニューラのハブに対する先端側への抜けは、取付部のハブ内周面への当接により防止されていると共に、カニューラのハブに対する基端側への抜けが、取付部の基端面への固定片の係止で防止されていることから、カニューラとハブが機械的な構造をもって強固に位置決め固定され得る。
【0011】
加えて、固定片は、ハブの基端部を後加工で内周側に変形することで形成されている。それ故、固定片がカニューラのハブに対する挿入の妨げになることはなく、挿入時にカニューラを変形させる必要もない。従って、充分な強度を備えたカニューラを採用することが可能となり、カニューラのハブからの抜け出しを確実に防止できると共に、カニューラの中心孔で構成される流路の断面形状の安定化も達成され得る。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載されたロック付カニューラにおいて、前記固定片が前記カニューラの基端部側の端面に溶着されているものである。
【0013】
第2の態様によれば、固定片がカニューラの基端部側の端面に対して重ね合わされているだけでなく、溶着されていることによって、カニューラとハブがより確実に固定される。しかも、カニューラとハブの間に寸法公差等による隙間が存在する場合でも、カニューラとハブを径方向で強固に位置決めすることが可能となる。
【0014】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載されたロック付カニューラにおいて、前記固定片が前記ハブの全周に亘って延びる環状とされているものである。
【0015】
第3の態様によれば、固定片がカニューラの基端部側の端面に対して全周に亘って連続的に重ね合わされて、カニューラがハブに対して基端部側に抜け出すのをより効果的に阻止することが出来る。また、固定片がカニューラの基端部側の端面に対して周上で部分的に形成されている場合に比して、カニューラの基端部側の端面を、周方向に凹凸がない滑らかな形状とすることが可能となる。
【0016】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の何れか1つの態様に記載されたロック付カニューラにおいて、前記ハブの基端部側に突出する薄肉部を内周側に変形することによって前記固定片が形成されているものである。
【0017】
第4の態様によれば、ハブの基端部側に設けられた固定片を構成する部分が薄肉とされていることにより、後加工によって容易に内周側に屈曲させることが出来る。それ故、ハブの本体部分によるカニューラ基端部に対する補強効果やロックによるシリンジ等への固定強度などを充分に確保しつつ、固定片でカニューラの基端部を固定するための加工作業を容易とすることが可能となる。
【0018】
本発明の第5の態様は、第1〜第4の何れか1つの態様に記載されたロック付カニューラにおいて、前記ハブが前記カニューラと同じかそれ以上の硬度の材料で形成されているものである。
【0019】
第5の態様によれば、カニューラの基端部に対するハブによる補強効果が向上されて、カニューラの基端部における拡径等の変形が抑えられ、シリンジ等への接続部分における流路形状の安定化やシリンジ等への接続強度の向上等が図られ得る。
【0020】
本発明の第6の態様は、第1〜第5の何れか1つの態様に記載されたロック付カニューラにおいて、前記ハブの先端部分には、内周面に突出するリブが周方向で相互に離隔して複数設けられており、該リブが前記カニューラの前記取付部に押し付けられているものである。
【0021】
第6の態様によれば、カニューラの外径寸法やハブの内径寸法の公差等によって、カニューラの外周面とハブの内周面との間に隙間が生じた場合でも、カニューラがリブによって支持されて、カニューラとハブとの装着状態における径方向のがたつきを抑えることが出来る。また、カニューラのリブへの当接に基づいて、カニューラ及びハブの寸法公差に起因するカニューラとハブとの長さ方向での相対的なずれも防止されることから、固定片がカニューラの基端部側の端面に対して所定の当接状態で重ね合わされて軸方向のがたつきも抑えられる。即ち、ハブの先端部分にリブを形成して、カニューラへの当接部位を周方向で部分的に設定したことで、製造上の寸法誤差によりハブへのカニューラの当接力が固体間で異なる場合でも、リブやカニューラの僅かな変形により当接力が調節されて目的とするカニューラとハブとの位置決め作用が安定して発揮され得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明に従う構造とされたロック付カニューラにおいては、カニューラをハブに対して強固に固着することが出来ると共に、流路の壁部が全体に亘ってカニューラで構成され得て、流路の壁内面を凹凸のない滑らかな形状とすることが可能となる。しかも、シリンジ等に接続するためのロック付のハブが、流路の形状や構造に悪影響を与えないように形成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態としてのロック付カニューラの正面図。
【図2】図1のII−II断面図。
【図3】図1に示されたロック付カニューラを構成するカニューラの正面図。
【図4】図1に示されたロック付カニューラを構成するハブの正面図。
【図5】図4に示されたハブの側面図。
【図6】図4に示されたハブの平面図。
【図7】図4のVII−VII断面図。
【図8】図7にVIIIで示された要部を拡大して示す断面説明図。
【図9】図3に示されたカニューラに図4に示されたハブを外挿した状態を示す断面図。
【図10】図9のX−X断面を拡大して示す図。
【図11】図9にXIで示された要部を拡大して示す断面説明図。
【図12】図2にXIIで示された要部を拡大して示す断面説明図。
【図13】図2に示されたロック付カニューラのシリンジへの取付状態の要部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1,図2には、本発明の一実施形態としてのロック付カニューラ10が示されている。ロック付カニューラ10は、カニューラ12とロック付のハブ14とを含んで構成されている。なお、以下の説明では、原則として、患者の体内への挿入側である図1中の上側を「先端側」、シリンジ等への装着側である図1中の下側を「基端側」とする。
【0026】
カニューラ12は、図3に示されているように、ポリプロピレン等の合成樹脂等で形成された管体であって、薄肉小径の略円筒形状を呈している。また、カニューラ12は、患者の体内に挿入される先端部が、先端側に向かって次第に小径となるテーパ状の外周面を備えていると共に、ハブ14を装着される基端部が、基端側に向かって湾曲テーパ状に拡径する取付部16とされている。なお、大径とされたカニューラ12の取付部16は、小径とされた他の部分に比して、厚肉とされており、形状の安定性が保持されている。また、カニューラ12は、例えば、合成樹脂の押出成形等によって得ることが出来る。
【0027】
一方、ハブ14は、図4〜図7に示されているように、ハブ本体18を備えている。ハブ本体18は、ポリプロピレン等の合成樹脂で形成されて、カニューラ12よりも厚肉の略円筒形状を有している。また、ハブ本体18は、カニューラ12と同じかそれよりも高い硬度の材料で形成されており、カニューラ12に比して変形し難い硬質の部材となっている。なお、硬度は、ロックウェル硬さ試験等で測定される。
【0028】
また、ハブ本体18の外周面上には、複数の突起20が形成されている。この突起20は、ハブ本体18の長さ方向に所定の長さで延びており、先端側に向かって次第にハブ本体18の外周面からの突出高さが大きくなっている。そして、8個の突起20が、ハブ本体18の外周面上で周方向に所定距離ずつ離隔して、等間隔に設けられている。なお、突起20は、患者の肌に接触しても痛みを与えないように、丸みを帯びた形状とされている。
【0029】
一方、ハブ本体18の内周面は、図7に示されているように、基端側に向かって次第に大径となる軸方向で湾曲した滑らかな筒状面とされており、カニューラ12における取付部16の外周面に対応したテーパ形状とされている。なお、ハブ本体18の内径は、カニューラ12における取付部16の外径に対して、互いに対応する位置で略同じか僅かに大きくなっており、カニューラ12の外径寸法の誤差が吸収されて、カニューラ12がハブ本体18に対して組み付けられるようになっている。
【0030】
また、ハブ本体18の先端部分の内周面には、複数のリブ22が一体形成されている。リブ22は、図7,図8に示されているように、ハブ本体18の径方向内方に向かって突出する突起であって、ハブ本体18の内周面に沿って略長さ方向(図1中、上下)に延びている。更に、リブ22は、略半円形断面形状を有しており、突出先端側に行くに従って次第に周方向で狭幅となっている。また、複数のリブ22がハブ本体18の周方向に等しい間隔で相互に離隔して設けられている。本実施形態では、8つのリブ22が周上で等間隔に設けられており、径方向で対向する4組が設けられている。これにより、リブ22の形成部分において、ハブ本体18の内径寸法が部分的に小さくなっていると共に、リブ22の形成部分を外れた部分において、ハブ本体18の内径寸法が部分的に大きくなっている。
【0031】
また、ハブ本体18の基端部には、外周側に突出するロック24が一体形成されている。ロック24は、図4,図5に示されているように、環状に設けられた螺子であって、径方向に対向して設けられて径方向外方に突出する一対の螺子山26,26と、それら螺子山26,26の間に設けられる一対の溝28,28とを備えている。
【0032】
また、ハブ本体18の基端部には、薄肉部30が形成されている。薄肉部30は、図4,5,7に示されているように、略円筒形状を有しており、ハブ本体18の基端部において長さ方向外側(図4中、下方)に向かって突出するように一体形成されている。また、薄肉部30は、内径がハブ本体18の基端部における内径と略同じになっていると共に、外径がハブ本体18の基端部における外径寸法よりも小さくなっており、ハブ本体18の基端部よりも薄肉とされている。
【0033】
このような構造とされたハブ14が、カニューラ12に対して外挿状態で装着されることにより、ロック付カニューラ10が構成されている。
【0034】
より詳細には、先ず、カニューラ12が、ハブ本体18に対して、先端側を先頭として挿入されて、ハブ14がカニューラ12の基端部に達するまで差し込まれる。そこにおいて、カニューラ12の基端部に基端側に向かって次第に大径となる取付部16が設けられていると共に、ハブ本体18の内周面が基端側に向かって大径となるテーパ形状とされている。これにより、カニューラ12がハブ本体18に対して所定の位置まで挿入されると、図9に示されているように、カニューラ12の取付部16の外周面が、ハブ本体18の内周面に当接して、カニューラ12のハブ14に対する先端部側への移動が制限される。
【0035】
また、図10に示されているように、ハブ本体18の先端部分に形成されたリブ22が、取付部16の先端部分に押し当てられて、カニューラ12がハブ14に対して軸直角方向で位置決めされる。以上により、カニューラ12がハブ14に対して仮固定される。なお、図11に示されているように、カニューラ12とハブ14の仮固定状態において、カニューラ12の基端面がハブ本体18の基端面と略同一平面上に位置していると共に、薄肉部30がカニューラ12の基端面よりも基端側外方に突出している。
【0036】
次に、仮固定されたカニューラ12とハブ14は、薄肉部30によって分離不能な状態に固定される。即ち、カニューラ12の基端面よりも基端側外方に突出した薄肉部30に対して、熱を加えながら径方向内方への外力を及ぼすことにより、図12に示されているように、薄肉部30が内周側に屈曲変形させられる。これにより、ハブ14の基端部には、内周側に向かって突出する環状の固定片32が、薄肉部30を利用して形成される。そして、固定片32がカニューラ12の基端面に全周に亘って重ね合わされることにより、カニューラ12のハブ14に対する基端部側への移動が制限されている。
【0037】
さらに、固定片32が加熱されることによって、カニューラ12の基端面上に延び出した固定片32の全部或いは一部が溶けて、カニューラ12の基端面に付着する。そして、溶融した固定片32が、カニューラ12の基端部側の端面上で冷却されて凝固することにより、カニューラ12とハブ14が固定片32によって分離不能に固定される。なお、本実施形態において、溶融した固定片32は、略半円形断面に成形されて凝固するようになっていると共に、その内周側端縁部(突出先端部)がカニューラ12の内周面よりも内周側には突出しないようになっている。
【0038】
このように固定片32が後加工で形成されることによって、カニューラ12は、ハブ14に対して、抜け出しを阻止された状態で組み付けられている。即ち、カニューラ12の取付部16が基端部側に向かって次第に拡径するテーパ状とされていることにより、カニューラ12のハブ14に対する先端部側への抜け出しが阻止されて、カニューラ12がハブ14に対して挿入方向で位置決めされている。一方、固定片32がカニューラ12の基端部側の端面に重ね合わされて溶着されることにより、カニューラ12のハブ14に対する基端部側への抜出しが阻止されている。これらによって、カニューラ12がハブ14に対して位置決めされており、カニューラ12の基端部にハブ14が分離不能に固定されることによって、基端部にロック24を備えたロック付カニューラ10が形成されている。
【0039】
なお、ロック付カニューラ10は、ルアーロック機構によって、例えば、シリンジ34の先端に取り付けられるようになっている。即ち、図13に示されているように、シリンジ34の先端に設けられた略筒状の接続部36がカニューラ12に差し入れられて、接続部36の開口がカニューラ12の中心孔に接続される。一方、ハブ14のロック24が、シリンジ34において接続部36を取り囲むように設けられたロック筒部38に対して螺着されることにより、ロック付カニューラ10がシリンジ34の先端に装着されるようになっている。なお、ロック付カニューラ10では、ハブ本体18の外周面上に複数の突起20が形成されており、それら突起20が滑り止めとして機能して、シリンジ34への着脱時にハブ本体18をシリンジ34に対して回転させ易くなっている。
【0040】
そして、ロック付カニューラ10は、その先端が血管に刺し入れられると共に、基端がシリンジ34と接続されるようになっており、血管とシリンジ34がロック付カニューラ10を介して連通されるようになっている。具体的には、先ず、ロック付カニューラ10の内腔に図示しない内針ユニットが挿入されることにより留置針が構成される。この留置針が患者の血管に刺し入れられた後で、内針ユニットがロック付カニューラ10から分離して抜き取られることにより、ロック付カニューラ10がカニューラ12の先端を血管に挿入された状態で留置される。そして、留置されたロック付カニューラ10とシリンジ34が上述の如く接続されることにより、血管とシリンジ34がロック付カニューラ10を通じて連通されるようになっている。なお、ロック付カニューラ10の基端部に設けられたロック24が図示しないチューブの先端に取り付けられた雄コネクタに接続されることにより、カニューラ12の中心孔がチューブの中心孔に連通されて、血液が流動する流路の一部がカニューラ12によって構成されるようになっていても良い。
【0041】
このような本実施形態に従う構造のロック付カニューラ10では、カニューラ12とハブ14が、カニューラ12に設けられた取付部16のテーパ形状と、ハブ14に設けられた固定片32とによって、長さ方向で位置決めされており、重ね合わせ面間を固着することなく相互に固定されている。それ故、ロック付カニューラ10において血液や薬液が流動する流路の壁部が、全体に亘って単一のカニューラ12によって構成されており、流路の壁面が凹凸(折れ点)や屈曲(折れ線)を形成されることのない滑らかな形状とされている。その結果、流路の壁面付近において、流体(血液や薬液等)が淀みや乱流を生じるのを防ぐことが出来て、流動流体中に凝固した血液や薬液の塊が混入するのを防ぐことが出来ると共に、スムーズな流動によって血液や薬液の注入量(注出量)を安定させることも可能となる。
【0042】
また、薄肉部30がハブ本体18における他の部分に比して薄肉とされていることにより、薄肉部30の剛性が低減されて、加熱による固定片32の形成を容易に行うことが出来る。それ故、ハブ本体18によるカニューラ12の基端部に対する補強効果や、ロック24によるシリンジ34への固定強度等を充分に確保しつつ、固定片32でカニューラ12の基端部を固定するための加工作業を容易とすることが可能となる。
【0043】
さらに、固定片32が周方向環状をなすように連続的に設けられており、カニューラ12とハブ14が基端面において全周に亘って固着されている。これにより、カニューラ12とハブ14が強固に固定されて、例えば、シリンジ34への着脱時に周方向の外力が作用しても、それらカニューラ12とハブ14の分離が阻止される。
【0044】
また、ハブ14の先端部分には、内周側に突出するリブ22が設けられており、リブ22の突出先端がカニューラ12の外周面に押し当てられるようになっている。これによって、カニューラ12の寸法公差を許容しながら、カニューラ12とハブ14を軸直角方向に位置決めすることが出来る。特に、リブ22が周上で部分的に形成されていることにより、カニューラ12の外径寸法が大きめの場合にも、カニューラ12におけるリブ22を外れた部分が膨出変形を許容されて、カニューラ12が必要以上に変形することなくハブ14に挿入される。
【0045】
また、ハブ14がカニューラ12と同じかそれよりも硬い材料で形成されていることにより、カニューラ12の基端部がハブ14によって保護されて、カニューラ12におけるシリンジ34への装着部分が変形や損傷を生ずるのを防ぐことが出来る。特に、ハブ14をカニューラ12よりも硬い部材とすることで、ロック24の磨耗や変形等を防ぐことが出来ると共に、シリンジ34への着脱時等に手で操作しても、カニューラ12までは外力が伝達され難くなって、カニューラ12のより効果的な保護が実現される。しかも、硬質なハブ14を採用することによって、シリンジ34への接続部分における流路形状の安定化や、シリンジ34への接続強度の向上等も、実現され得る。
【0046】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、固定片は、ハブの基端側において内周側に突出していれば良く、必ずしも略半円形断面に成形される必要はない。具体的には、ハブの基端部に設けられた筒状の薄肉部を、内周側に向かって突出する略円環板形状をなすように内周側に折り曲げることによって、固定片を構成することも出来る。
【0047】
また、固定片は、カニューラの基端部側の端面に溶着されていなくても良く、後加工で内周側に突出するように折り曲げられて、カニューラの基端部側の端面に対して非接着で重ね合わされていても良い。更に、固定片がカニューラの基端部側の端面に溶着される場合には、必ずしも熱溶着に限定されるものではなく、超音波溶着等を採用することも出来る。
【0048】
また、固定片は、ハブ本体における他の部分よりも薄肉の薄肉部を利用して形成されていたが、固定片は必ずしも薄肉部を利用して形成されていなくても良く、ハブ本体の他の部分と同じ厚さとされた基端部を屈曲させて形成されていても良い。
【0049】
また、固定片は、カニューラとハブの固定強度を充分に確保するために、ハブの全周に亘って連続的に形成されていることが望ましいが、周上で部分的に形成されていても良い。
【符号の説明】
【0050】
10:ロック付カニューラ、12:カニューラ、14:ハブ、16:取付部、22:リブ、24:ロック、30:薄肉部、32:固定片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カニューラの基端部側にロック付のハブが設けられたロック付カニューラにおいて、
前記カニューラの基端部側がテーパ状に拡径された取付部とされており、
該カニューラが別体の前記ハブに対して先端側から挿入されて該取付部の外周面が該ハブの内面に当接されることにより挿入方向で位置決めされていると共に、
該ハブの基端部側が後加工で内周側に変形されることにより該取付部の基端部側の端面に重ねあわされて該カニューラの抜け出しを阻止する固定片が形成されていることを特徴とするロック付カニューラ。
【請求項2】
前記固定片が前記カニューラの基端部側の端面に溶着されている請求項1に記載のロック付カニューラ。
【請求項3】
前記固定片が前記ハブの全周に亘って延びる環状とされている請求項1又は2に記載のロック付カニューラ。
【請求項4】
前記ハブの基端部側に突出する薄肉部を内周側に変形することによって前記固定片が形成されている請求項1〜3の何れか1項に記載のロック付カニューラ。
【請求項5】
前記ハブが前記カニューラと同じかそれよりも高い硬度の材料で形成されている請求項1〜4の何れか1項に記載のロック付カニューラ。
【請求項6】
前記ハブの先端部分には、内周面に突出するリブが周方向で相互に離隔して複数設けられており、該リブが前記カニューラの前記取付部に押し付けられている請求項1〜5の何れか1項に記載のロック付カニューラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−224183(P2011−224183A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97580(P2010−97580)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】