説明

ロック装置

【課題】部品点数を削減し、かつ操作部材の戻り打音を簡易に緩和できるようにする。
【解決手段】ハウジング1、及び前記ハウジングに対し直線方向に摺動可能に配置されて互いに離間した係止位置と接近した解除位置に切り換えられる一対のロッド2、並びに初期状態から操作状態に揺動されることにより各ロッドを係止位置より解除位置に切換可能な操作部材3を備え、各ロッドを介して開閉体を本体に係脱するロック装置7において、ロック装置7は、ハウジング1と、ロッド2と、操作部材3と、ロッド同士を接続した状態でそのロッド同士を離間する方向へ付勢する接続部材5と、ハウジングと操作部材との間に配置されて操作部材3が接続部材5の付勢力を介して操作状態から初期状態に切り換えられるときにその操作部材の揺動抵抗として働く付勢部材4とからなることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉体を本体に係脱するロック装置のうち、互いに離間されたり接近される一対のロッドを介して係脱する場合に好適なロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は特許文献1に開示のロック装置を示し、(a)は分解構成図、(b)は作動説明図である。同図のロック装置は、左右の円筒部6を有した操作部材(ハンドル)1と、操作部材を保持する支持枠2と、支持枠2に対し円筒部6を介して直線方向に摺動可能に配置されて互いに離間した係止位置と接近した解除位置に切り換えられる2つのロッド(スライドピン)3と、各ロッド3の基端側に連結されてロッドの進退動を促す2つのカム部材4と、各円筒部6に配置されて対応するロッド3をそれぞれ離間方向へ付勢する2つのコイルばね5とからなる。基本作動は、各ロッド3が同(b)のごとくコイルばね5で離間する方向に摺動されて本体であるパネルPのロック孔Hに係合した係止位置と、各ロッド3が操作部材1を初期状態から操作状態に揺動してロッド同士を係止位置より付勢力に抗した解除位置(前記したロック孔Hに対する各ロッドの係合を解除可能にする位置)とに切り換えられる。
【0003】
要部は、操作部材1の揺動により各ロッド3をカム部材4を介して係止位置から解除位置に切り換える点、各ロッド3を操作ハンドル1に対しカム部材4を介して作動連結した点、各ロッド3の後端部側を二叉状の弾性片11に形成した点、各カム部材4の筒状先端部4aに係止孔15を設けるとともに、各弾性片11にその係止孔15に係脱する突起12を設けた点にある。要部作動は、同(b)のごとく各ロッド3がパネル側ロック孔Hに係合された係止状態でも、ロッド3をカム部材4に対して回転させるだけで突起12がカム部材側係止孔15から外れるため、ロッド3、カム部材4を含む駆動機構も容易に取り外しできるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3863837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のロック装置では次のような観点から未だ満足できなかった。すなわち、
(ア)上記のロック装置は、装置構造として操作部材1、支持枠2、2つののロッド3、2つのカム部材4、2つのコイルばね5の合計8点構成であるため、部品管理が煩雑化したり製造費を低減する上で限界がある。このため、部材数を少しでも減らしてコスト低減を図りたい。
【0006】
(イ)上記のロック装置は、各ロッド3を同期して接近したり離間する機構として、各ロッドに装着されるカム部材4と操作部材側円筒部6内の凸部7とで構成されており、例えば、操作部材1を初期状態から持ち上げる操作状態に揺動すると、凸部7が対応するカム部材側のカム溝18の溝縁に沿って移動してカム部材4をコイルばね5の付勢力に抗して円筒部6内に引き込ませ、その結果、ロッド同士が接近つまりロッド3の後退によりロック孔Hとの係合を解除する。このような機構では、操作部材1が操作状態から初期状態に戻されるとき、コイルばね5に蓄積された付勢力により急速に初期状態に切り換えられ、そのとき戻り打音を生じる。この対策例としては、カム部材と操作部材側円筒部との間にOリングを介在させてロッドの摺動時に摺動抵抗を生じさせることで前記の戻り打音を軽減する構成がある(特許第4077391号公報)。しかし、この対策は、制動用ダンパーを追加するよりも簡易であるが、構成部材が合計10点構成となってしまう。
【0007】
本発明の目的は、以上のような課題を解消して、部品点数を削減するとともに操作部材の戻り打音を簡易に軽減することにより、コスト低減及び品質向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、図面を参照して特定すると、ハウジング1、及び前記ハウジングに対し直線方向に摺動可能に配置されて互いに離間した係止位置と接近した解除位置に切り換えられる一対のロッド2、並びに初期状態から操作状態に揺動されることにより前記各ロッドを係止位置より解除位置に切換可能な操作部材3を備え、前記各ロッドを介して開閉体を本体に係脱するロック装置7において、前記ロック装置7は、前記ハウジング1と、前記ロッド2と、前記操作部材3と、前記ロッド同士を接続した状態でそのロッド同士を離間する方向へ付勢する接続部材5と、前記ハウジングと前記操作部材との間に配置されて前記操作部材3が前記接続部材5の付勢力を介して操作状態から初期状態に切り換えられるときにその操作部材の揺動抵抗として働く付勢部材4とからなることを特徴としている。
【0009】
ここで、『開閉体』及び『本体』としては、例えば、開閉体が蓋類であれば本体がその蓋類で開閉されたり覆われる各種筺体等であり、開閉体がグローブボックス類であればそのグローブボックス類を配設している各種パネルなどである。要は、開閉体としては本体側に対して規則的に動くものであればよい。『操作部材の揺動抵抗として働く』とは、操作部材が接続部材の付勢力を介して操作状態(このときは各ロッドが退行してロック孔から抜けて係合を解除可能な解除位置)から初期状態(このときは各ロッドが突出してロック孔に係合可能な係止位置)に切り換えられるときに、付勢部材の無いときに比べて緩やか、又は制動された速さで戻されるというような意味で使用している。
【0010】
以上の本発明は、請求項2〜6で特定したように具体化されることがより好ましい。
(1)、前記ロッド2に前記操作部材3を介して加わる前記付勢部材4の応力に比べ、前記接続部材5によって前記ロッド2を付勢する付勢力の方が大きくなっている構成である(請求項2)。
(2)、前記ロッド2及び前記操作部材3の一方に設けられた傾斜部25、及び他方に設けられて前記傾斜部に当接するアーム部34を有し、前記操作部材3が初期状態から操作状態に揺動されると、前記ロッド同士が前記傾斜部及び前記アーム部のカム作動により前記接続部材5の付勢力に抗して接近される構成である(請求項3)。
【0011】
(3)、前記付勢部材4がコイルばねからなる構成である(請求項4)。なお、この付勢部材4は、コイルばねとして次の接続部材5と同様に捻りコイルばねが最適である。
(4)、前記接続部材5が捻りコイルばねからなる構成である(請求項5)。
(5)、前記捻りコイルばねが、巻線部5cを前記各ロッド2の摺動方向の軸線から外れた箇所に配置しているとともに、両端部5a,5bを前記各ロッドの異なる方にそれぞれ係止している構成である(請求項6)。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明は上記した課題を解消して次のような利点を具備できる。すなわち、
第1に、本発明のロック装置は、上記(ア)の課題に対し、構成部材がハウジング、2つのロッド、操作部材、接続部材、付勢部材の合計6点の部品からなるため、製造費を低減する上で重要となる部材数を減らしてコスト低減を実現し易い。他の特徴としては、特許文献1のカム部材のような中間組立部品がなく、ロッド及び操作部材がそれぞれ単独でハウジングに組み込まれるため組立作業も改善し易くなる。
第2に、本発明のロック装置は、上記(イ)の課題に対し、操作部材が接続部材の付勢力を介して操作状態から初期状態に切り換えられるときにその操作部材の揺動抵抗として働く付勢部材を有しているため、操作部材の操作状態から初期状態に切り換える際に生じる操作部材の打音を軽減でき、かつ、操作部材の初期状態で振動が加わってもガタ付き音の発生を抑えることができる。
第3に、本発明の付勢部材は、既存の制動用ダンパーを用いる構成に比べ簡易でコスト的にも有利であり、また、上記した2つのOリングを用いる構成に比べ単一部材という点、経時変化や熱環境等の影響も受け難くい点で優れている。
【0013】
請求項2の発明は、付勢部材と接続部材の各付勢力の大きさを確認的に特定したもので、仮に、接続部材によりロッドを係止位置方向へ付勢する付勢力の方がロッドに加わる付勢部材の付勢力に起因した応力(操作部材を介してロッドを係止位置方向へ付勢する付勢力と捉えても差し支えない)に比べ小さいと、操作部材を非操作時(操作部材を操作していないとき)にも初期状態に維持不能となるが、そのような不具合を解消する。
【0014】
請求項3の発明は、操作部材の揺動により各ロッドを同期して係止位置から解除位置方向へ摺動する駆動機構として、傾斜部及びアーム部のカム構造を採用することにより、形態例のごとく傾斜部及びアーム部の異なる一方を操作部材とびロッドとにそれぞれ一体形成可能となって簡素化を維持可能にする。これに対し、請求項4の発明は、付勢部材としてコイルばねを用いるため、簡素化と共に熱環境や経時変化に強く信頼性を向上できる。
【0015】
請求項5の発明は、接続部材としてねじれコイルばねを用いるため、簡素化と共に付勢力の大きさ調整などの点で優れている。これに対し、請求項6の発明では、捻りコイルばねが形態例のごとく巻線部を各ロッドの摺動方向の軸線から外れた箇所に配置しているため、特に軸線方向のスベースを小さく抑える仕様に好適なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明形態に係るロック装置の外観を示し、(a)は正面側より見た斜視図、(b)は背面側より見た斜視図である。
【図2】上記ロック装置の細部を示し、(a)は上面図、(b)は正面図である。
【図3】上記ロック装置の細部を示し、(a)は背面図、(b)は左側面図、(d)は図2(a)のA−A線断面図である。
【図4】上記ロック装置の構成を示す分解斜視図である。
【図5】上記ロック装置を操作部材と付勢部材を外した状態で示す分解斜視図である。
【図6】上記ロック装置をハウジングと付勢部材を省略した正面側より見た斜視図で、(a)はロッドの係止位置で示す図、(b)はロッドの解除位置で示す図である。
【図7】図6から更に操作部材を省略して正面側より見た図で、(a)はロッドの係止位置で示す図、(b)はロッドの解除位置で示す図である。
【図8】特許文献1のロック装置を示し、(a)は分解斜視図、(b)はロック装置をロック状態で示す作動図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の形態例について添付した図面を参照しながら説明する。この説明では、ロック装置の構造、組立、作動の順に詳述する。
【0018】
(ロック装置の構造)形態例のロック装置6は、図1〜図7に示されるごとく、ハウジング1と、一対のロッド2A,2B(2)と、各ロッド2A,2Bをハウジング1より突出した係止位置より後退した解除位置に切換可能な操作部材3と、ロッド同士を接続した状態でそのロッド同士を離間する方向へ付勢する捻りコイルばね5と、操作部材3が捻りコイルばね5の付勢力を介して操作状態から初期状態に切り換えられるときにその操作部材の揺動抵抗として働くコイルばね4とで構成されている。次に、以上の各部材の細部を明らかにする。
【0019】
ここで、ハウジング1、ロッド2A,2B、操作部材3は共に樹脂の射出成形品であるが、樹脂以外でも差し支えない。コイルばね4は、本発明の付勢部材に対応しており、コイルばねの荷重方向が主として圧縮応力を受ける圧縮コイルばね(日本工業規格JIS:B2704などを参照し設計される)が用いられ、両端4a,4bが概略90°程度変位している。捻りコイルばね5は、本発明の接続部材に対応しており、コイルばねの荷重方向が主として捻り応力を受ける捻りコイルばね(日本工業規格JIS:B2709などを参照し設計される)が用いられ、両端5a,5bが巻線部5cを挟んで概略V形に変位している。
【0020】
ハウジング1は、図4と図5に示されるごとく、横又は左右に長い主部10及び主部10の下側に設けられた相対的に短い副部15で区画されている。このうち、主部10は、各ロッド2A,2Bを摺動可能に支持する筒部11と、操作部材3を枢支する左右の連結片12と、操作部材3のアーム部13を筒内に余裕を持って導入する左右の通孔13と、コイルばね4を支持する左右の支持片14とを有している。筒部11は、上下面11a,11bと正面11c及び背面11dにより区画され、断面がロッドの後部20に対応した略矩形状となっている。正面11cには、前記した左右の連結片12、2つの通孔13、左右の支持片14が設けられている。各連結片12には、軸部12aが外側面にあって同軸線上に突設されている。各通孔13は、連結片12の内側に設けられて上下に長い矩形孔となっている。各支持片14は、通孔13同士の間に設けられて、対向面に突出された軸部14aを有している。また、正面11cには、右側の支持片14の内側に係止溝14bが上面11aから切り込まれた状態に設けられている。
【0021】
下面11bには副部15が一体化されている。副部15は、主部10に比べ左右寸法が短くなっていて、正面15cが主部の正面11cに対し落ち込んだ段差状に形成され、背面15dが主部の背面11dと面一となっている。副部15の左右には、正面15cから背面15dに貫通された取付孔17が設けられている。この取付孔17は、ロック装置6を開閉体等にねじなどの止め具により装着するときに利用される。副部15の背面15dには、中間部にあって、主部側背面11dも含めて大きな矩形状に切り欠かれた窓部16が設けられている。窓部16には、副部15の正面内側に突設された支持軸18と、筒部11を区画している下面11bの一部が露出されている。支持軸18は、円筒状からなり、円筒の上下に設けられてコ形のスリットにより区画された弾性片部19を有している。その弾性片部19には先端外側へ突出された抜け止め用爪部19aが設けられている。窓部16に露出された下面11bには、支持軸18の真上側にあって副部15の内部と筒部11の内部とを連通している切欠部11eが設けられている。
【0022】
各ロッド2A,2Bは、前記筒部11の空間10aに対し直線方向に摺動可能に配置されて互いに離間した係止位置と接近した解除位置に切り換えられる。すなわち、各ロッド2A,2Bは、空間10aに摺動可能に配置される後部20と、図7のごとくパネル側のロック孔7aに係脱される先端部23と、後部20と先端部23との間に介在された軸部21及び板部22とからなる。なお、軸部21及び板部22は省略してもよい。
【0023】
後部20には、図4及び図6に示されるごとく、捻りコイルばね5の対応する端部を係止する後端側の段差部26と、操作部材3のアーム部34が当接される段差部26より先端側の傾斜部25とが設けられている。各段差部26は、捻りコイルばね5の端部5a又は5bを揺動可能に係止する箇所であり、一方のロッド2Aと他方のロッド2Bとでほぼ対向する関係に設けられている。すなわち、ロッド2Aの段差部26は、後部20の端側にあって筒部11の正面11c又は操作部材3と対向するよう設けられている。一方、ロッド2Bの段差部26は、後部20の端側にあって筒部11の背面11dと対向するよう設けられている。また、各傾斜部25は、後部20の同じ側面側、つまり筒部11の正面11c又は操作部材3と対向する側に設けられている。すなわち、各傾斜部25は、後部20の側面を凹所24に形成し、該凹所24の後端部側の端面を利用して形成され、下から上に向かって次第に後端部側に近づくテーパー面となっている。
【0024】
操作部材3は、筒部正面11cの中間部及び副部正面15cをほぼ覆う大きさの板体30からなる。板体30の背面には、両側に設けられた側板31と、両側板31の上側にあって同軸線上に貫通された軸孔32と、両側板31の間を上下に区画するよう設けられた仕切板33と、仕切板33より上側にあって各側板31の内側に突設されたアーム部34とが設けられている。両側板31には、板突出端側より各軸孔32に通じる案内溝35が対向面に設けられている。案内溝35は、上記連結片の軸部12aを軸孔32に導く溝である。板体30の背面には、リブ状の当て部36が仕切板33より少し上側に設けられている。当て部36は、コイルばね4の端部4bを受け止める箇所である。
【0025】
(組立)以下、以上の各部材の組立手順例について説明する。この例では、図4及び図5に示されるごとく、ハウジング1に対し各ロッド2A,2Bを空間10aに配置し、かつ、コイルばね4を支持片14同士の間に配置する。すなわち、各ロッド2A,2Bは、それぞれの後部20が筒部11の空間10aに異方向から挿入され、各凹所24が対応する通孔13に位置するよう配置される。コイルばね4は、各支持片側の軸部14aがコイル内径に挿入されるよう圧縮しながら支持片14同士の間に配置された後、一端4aが係止溝14bに嵌入されて係止される。
【0026】
次に、操作部材3がハウジング1に組み付けられる。この場合、操作部材3は、各アーム部34を対応する通孔13に挿入した状態で、両側板31を対応する連結片12の外側に押し付ける。すると、各アーム34は、筒部11に挿入された対応するロッド2A又は2Bの凹所24内に突出される。このため、以降は、各ロッド2A,2Bが筒部11内で摺動されるものの、引き抜き不能となる。同時に、操作部材3は、各連結片12に対し、連結片側軸部12aが対応する側板の案内溝35に沿って導かれて最終的に軸孔32に嵌合され、軸部12aを支点として回動ないしは揺動可能に枢支される。その際、この構造では、コイルばね4の他端4bが当て部36に圧接されて、操作部材3が図6に示した操作方向である矢印T3の方向へ付勢される。このため、この組立の途中状態、つまり捻りコイルばね5の組み込み前段階では、操作部材3が図6(a)の略垂直姿勢となる初期状態に比べて、コイルばね4の付勢力により図6(b)の所定傾斜姿勢となる操作状態に近い状態まで揺動変位される。
【0027】
次に、捻りコイルばね5が図1(b)のごとく組み込まれる。すなわち、捻りコイルばね5は、巻線部5cの内径に支持軸18を串差し状に挿通し、かつ、爪部19aにより抜け止めされた状態から、両端5a,5bを内側に弾性変位しながら、一端5aが一方ロッド2Aの段差部26に掛け止めされ、他端5bが他方ロッド2Bの段差部26に掛け止めされる。これにより、ロック装置6として完成される。
【0028】
(作動)以下、以上のように作製されたロック装置6の主な作動特徴について言及する。
(1)、図1〜図3と図6及び図7の各(a)は、ロック装置6の各ロッド2A,2Bが係止位置、つまりロック状態を示している。このロック状態では、各ロッド2A,2Bが捻りコイルバル5の付勢力により筒部11から最大まで突出、又は、ロッド2A,2B同士が最も離間するまで摺動されている。各アーム部34は、各ロッド2A,2Bが離間する方向に摺動される過程で対応するロッドの傾斜部25にあって傾斜の低い箇所から高い箇所に移行される。以上のロック状態において、各ロッド2A,2Bは、先端部23がパネル側のロック孔7aに係合可能となる。また、操作部材3は、アーム部34が傾斜部25に当接された状態で、コイルばね4の付勢力により図6の矢印T3の方向へ付勢されているため、振動を受けてもガタ付くことがなくなりガタ音を回避できる。
【0029】
(2)、図6及び図7の各(b)は、ロック装置6の各ロッド2A,2Bが解除位置、つまりアンロック(ロック解除)状態を示している。まず、ロック装置6は、操作部材3を略垂直姿勢(初期状態)から図6(b)の矢印方向、つまり軸部12aを支点として所定傾斜角だけ揺動操作すると、ロック状態からアンロック状態に切り換えられる。この切換作動は、操作部材3が略垂直姿勢(初期状態)から図6(b)の矢印方向に揺動されると、各アーム部34が対応するロッド2A,2Bの傾斜部25を押圧し、その結果、アーム部34及び傾斜部25のカム作動によりロッド同士を捻りコイルばね5の付勢力に抗して(捻りコイルばね5に付勢力を蓄積すること)接近する方向に摺動する。このため、以上のアンロック状態において、各ロッド2A,2Bは、先端部23がパネル側のロック孔7aから外れて係合解除可能となる。
【0030】
(3)、そして、以上のロック装置6は、アンロック状態に切り換えられた後、操作部材3から手を離すことにより、各ロッド2A,2Bが捻りコイルばね5の付勢力により離間する方向へ摺動して再びロック状態となる。操作部材3は、アーム部34及び傾斜部25のカム作動により、捻りコイルばね5の付勢力に比例した速さで図6(b)の所定傾斜角から図6(a)の略垂直姿勢(初期状態)に戻される。その際、操作部材3は、仮にコイルばね4が無いときに比べて、コイルばね4の付勢力に抗して戻されるため戻し時の打音が抑制される。これにより、ロック装置6は、特に従来の打音を簡易、かつ長期に渡って確実に抑制ないしは軽減して品質を向上できる。
【0031】
換言すると、以上のロック装置6において、コイルばね4と捻りコイルばね5とは次のように機能するように設定されている。図6において、符号T1は操作部材3が捻りコイルばね5の付勢力をロッド2A又は2Bを介して受けるばね荷重、符号T3は操作部材3がコイルばね4から受けるばね荷重、符号T2は同(a)のロック状態から同(b)のアンロック状態に切り換えるときに操作部材3に加える操作荷重である。同(a)のロック状態との関係では、コイルばね4のばね荷重T3がT1に対抗する力として作用、つまりブレーキの役割を果たすため上記した戻し時の打音を抑制ないしは軽減できる。これに対し、同(b)のアンロック状態との関係では、コイルばね4のばね荷重T3が操作部材3を初期状態から操作状態に切り換えるに必要な操作荷重T2と同方向に働くため、操作荷重を軽減するアシストの役割を果たす。
【0032】
なお、本発明のロック装置は、請求項1で特定される構成を備えておればよく、細部は以上の説明を参考にして変更したり展開可能なものである。その一例として、接続部材としては、上記した捻りコイルばね5に代えて、ロッド同士を単純なコイルばね(圧縮コイルばね等)により離間方向へ付勢することも可能である。そのような構成では、ハウジングの軸線方向に長くなるが、軸線と交差する方向のスペースを小さく抑えることが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
1・・・ハウジング(16は窓部)
2・・・ロッド(2Aは右側ロッド、2Bは左側ロッド)
3・・・操作部材(30は板体、31は側板、33は仕切板、34はアーム部)
4・・・コイルばね(付勢部材、4aは一端、4bは他端)
5・・・捻りコイルばね(接続部材、5aは一端、5bは他端、5cは巻線部)
6・・・ロック装置
7・・・本体(7aはロック孔)
10・・・主部(11は筒部、12は連結片、13は通孔、14は支持片)
15・・・副部(17は取付孔、18は支持軸、19は揺動片部)
20・・・後部(24は凹所、25は傾斜部、26き段差部)
23・・・先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング、及び前記ハウジングに対し直線方向に摺動可能に配置されて互いに離間した係止位置と接近した解除位置に切り換えられる一対のロッド、並びに初期状態から操作状態に揺動されることにより前記各ロッドを係止位置より解除位置に切換可能な操作部材を備え、前記各ロッドを介して開閉体を本体に係脱するロック装置において、
前記ロック装置は、前記ハウジングと、前記ロッドと、前記操作部材と、前記ロッド同士を接続した状態でそのロッド同士を離間する方向へ付勢する接続部材と、前記ハウジングと前記操作部材との間に配置されて前記操作部材が前記接続部材の付勢力を介して操作状態から初期状態に切り換えられるときにその操作部材の揺動抵抗として働く付勢部材とからなる、ことを特徴とするロック装置。
【請求項2】
前記ロッドに前記操作部材を介して加わる前記付勢部材の応力に比べ、前記接続部材によって前記ロッドを付勢する付勢力の方が大きいことを特徴とする請求項1に記載のロック装置。
【請求項3】
前記ロッド及び前記操作部材の一方に設けられた傾斜部、及び他方に設けられて前記傾斜部に当接するアーム部を有し、前記操作部材が初期状態から操作状態に揺動されると、前記ロッド同士が前記傾斜部及び前記アーム部のカム作動により前記接続部材の付勢力に抗して接近されることを特徴とする請求項1又は2に記載のロック装置。
【請求項4】
前記付勢部材がコイルばねであることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のロック装置。
【請求項5】
前記接続部材がねじれコイルばねであることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のロック装置。
【請求項6】
前記捻りコイルばねが、巻線部を前記各ロッドの摺動方向の軸線から外れた箇所に配置しているとともに、前記巻線部の両端部を前記各ロッドの異なる方にそれぞれ係止していることを特徴とする請求項5に記載のロック装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−67983(P2013−67983A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206686(P2011−206686)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)