説明

ロッドを受けてロッドを骨アンカー固定要素に結合させるための受け部、および骨アンカー固定装置

【課題】手術時の安全な取扱いおよび骨アンカー固定要素とロッドの安全な固定を可能にする、ロッドを受けてロッドを骨アンカー固定要素に結合させるための改良された受け部、およびそのような受け部を有する骨アンカー固定装置を提供する。
【解決手段】ロッド100を受けてロッドを骨アンカー固定要素1に結合させるための受け部であって、上端9aおよび下端17bを有する受け部本体5と、ロッド100を受けるためのチャネルを有するロッド受け部9と、骨アンカー固定要素のヘッド3を収容するためのヘッド受け部17とを含み、ヘッド受け部は、ヘッド3を導入するための開口端17bを有し、受け部はさらに、ヘッド受け部17を取囲むロック固定リング6を含み、ヘッド受け部は複数の可撓性壁部を含み、可撓性壁部およびロック固定リング6は、可撓性壁部の中の円周方向に分かれた圧力区域21において互いに係合するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッドを受けてロッドを骨アンカー固定要素に結合させるための受け部、およびそのような受け部を有する骨アンカー固定装置に関する。受け部は、ロッド受け部、および骨アンカー固定要素のヘッドを受けるためのヘッド受け部を有する受け部本体と、ヘッドをヘッド受け部内にロック固定するためのロック固定リングとを含む。ヘッドは、複数の可撓性壁区分をロック固定リングで圧縮することによって締付けられ得、締付力は、円周方向に分かれた圧力区域の壁区分で発生する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,733,285号には、湾曲ヘッドを有するねじおよび結合要素を含む整形外科用装置とともに用いる多軸コレット状ロック固定メカニズムが記載されている。結合要素は、湾曲ヘッドが最初に多軸配置される内部チャンバを有するテーパ状かつコレット状の部分を有する。テーパ状かつコレット状の部分の周りにロック固定カラーが配置され、これがテーパの拡大方向に並進運動すると、内部容量が湾曲ヘッド上で収縮して湾曲ヘッドを内部にロック固定する。
【0003】
国際公開第2007/038350号には骨アンカー固定具を支持ロッドに接続するための装置が記載されており、当該装置はコネクタ本体およびキャップを含む。コネクタ本体は、骨アンカー固定具の挿入、角度付けおよび取外しのためのソケットを有する。骨アンカー固定具をソケット内にロック固定するためにコネクタ本体に装着されるように構成されたスリーブが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,733,285号
【特許文献2】国際公開第2007/038350号
【特許文献3】欧州特許公開第2204129号
【特許文献4】米国特許公開第2001/0047173号
【特許文献5】国際公開第2004/089245号
【特許文献6】米国特許公開第2002/0032443号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、手術時の安全な取扱いおよび骨アンカー固定要素とロッドの安全な固定を可能にする、ロッドを受けてロッドを骨アンカー固定要素に結合させるための改良された受け部、およびそのような受け部を有する骨アンカー固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載の受け部、および請求項15に記載の骨アンカー固定装置によって達成される。さらなる発展が従属請求項において与えられる。
【0007】
本発明に係る受け部は、ヘッドの締付けおよびロック固定の観点で改良されている。ヘッド受け部がスリットを有する位置でロック固定リングによって圧力を加えても、ヘッドの効果的な締付けに寄与しない。したがって、本発明に係る骨アンカー固定装置は、ロック固定リングによってヘッド受け部に加えられる圧力が、円周方向において互いに分離された分かれたの圧力区域に集中するように設計される。このため、締付け力を正確に加えることができ、固定の安全性が向上する。
【0008】
さらに、本発明に係る受け部はロック固定前の機能を有し得、この機能では、ロック固定リングは、ヘッドが挿入されているがヘッドを取外すことができないようにまだロック固定されていない状態の受け部本体に対してラッチされる。
【0009】
この骨アンカー固定装置によって、実際の臨床要件に依存して要求に応じてさまざまなアンカー固定要素を任意の好適な受け部と組合せることができるモジュールシステムが提供され得る。これによって多軸ねじのコストが低下し、在庫が減り、豊富なインプラントの選択肢が外科医に与えられる。
【0010】
本発明のさらなる特徴および利点が、添付の図面による実施例の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】骨アンカー固定装置の第1の実施例の斜視展開図である。
【図2】組立てられた状態の図1の骨アンカー固定装置の斜視図である。
【図3a】第1の実施例に係る骨アンカー固定装置の受け部本体の斜視図である。
【図3b】第1の実施例に係る骨アンカー固定装置の受け部本体の側面図である。
【図3c】第1の実施例に係る骨アンカー固定装置の受け部本体の第1の断面図である。
【図3d】第1の実施例に係る骨アンカー固定装置の受け部本体の第2の断面図である。
【図3e】第1の実施例に係る骨アンカー固定装置の受け部本体の底面図である。
【図4a】第1の実施例に係る骨アンカー固定装置のロック固定リングの斜視図である。
【図4b】第1の実施例に係る骨アンカー固定装置のロック固定リングの側面図である。
【図4c】第1の実施例に係る骨アンカー固定装置のロック固定リングの底面図である。
【図4d】第1の実施例に係る骨アンカー固定装置のロック固定リングの断面図である。
【図5a】第1の実施例に係る骨アンカー固定装置の使用工程の断面図である。
【図5b】第1の実施例に係る骨アンカー固定装置の使用工程の断面図である。
【図5c】第1の実施例に係る骨アンカー固定装置の使用工程の断面図である。
【図6】骨アンカー固定装置の第2の実施例の斜視展開図である。
【図7】組立てられた状態の図6の骨アンカー固定装置の斜視図である。
【図8a】第2の実施例の骨アンカー固定装置の受け部本体の斜視図である。
【図8b】第2の実施例の骨アンカー固定装置の受け部本体の側面図である。
【図8c】第2の実施例の骨アンカー固定装置の受け部本体の断面図である。
【図8d】第2の実施例の骨アンカー固定装置の受け部本体の底面図である。
【図9a】第2の実施例の骨アンカー固定装置のロック固定リングの斜視図である。
【図9b】第2の実施例の骨アンカー固定装置のロック固定リングの底面図である。
【図9c】第2の実施例の骨アンカー固定装置のロック固定リングの側面図である。
【図9d】第2の実施例の骨アンカー固定装置のロック固定リングの断面図である。
【図10a】第2の実施例に係る骨アンカー固定装置の使用工程の断面図である。
【図10b】第2の実施例に係る骨アンカー固定装置の使用工程の断面図である。
【図10c】第2の実施例に係る骨アンカー固定装置の使用工程の断面図である。
【図11】骨アンカー固定装置の第3の実施例の斜視展開図である。
【図12】組立てられた状態の図11の骨アンカー固定装置の斜視図である。
【図13a】第3の実施例に係る骨アンカー固定装置の受け部本体の斜視図である。
【図13b】第3の実施例に係る骨アンカー固定装置の受け部本体の側面図である。
【図13c】第3の実施例に係る骨アンカー固定装置の受け部本体の断面図である。
【図13d】第3の実施例に係る骨アンカー固定装置の受け部本体の底面図である。
【図14a】第3の実施例に係る骨アンカー固定装置のロック固定リングの斜視図である。
【図14b】第3の実施例に係る骨アンカー固定装置のロック固定リングの底面図である。
【図14c】第3の実施例に係る骨アンカー固定装置のロック固定リングの側面図である。
【図14d】第3の実施例に係る骨アンカー固定装置のロック固定リングの断面図である。
【図15a】第3の実施例に係る骨アンカー固定装置の使用工程の断面図である。
【図15b】第3の実施例に係る骨アンカー固定装置の使用工程の断面図である。
【図15c】第3の実施例に係る骨アンカー固定装置の使用工程の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
骨アンカー固定装置の第1の実施例が図1から図5cに示される。骨アンカー固定装置は、ねじ山シャフト2および球形状外面部を有するヘッド3を有する、骨ねじの形態の骨アンカー固定要素1を含む。ヘッド3は、ドライバに係合するための凹部4を有する。骨アンカー固定装置は、ロッド100を受けてロッド100を骨アンカー固定要素1に接続するための受け部本体5をさらに含む。ヘッド3を受け部本体5内ににロック固定するために、受け部本体5に係合するロック固定リング6が設けられている。さらに、ロッド100を受け部本体5内に固定するための、内ねじ7の形態の固定装置が設けられている。
【0013】
図3aから図3eにおいて、図3cはロッド軸を含む平面で切取られた断面図であり、図3dはロッド軸に対して垂直に切取られた断面図である。図1から図3eに示されるように、受け部本体5は、実質的に円筒形であり、かつ第1の端9a、反対の第2の端9b、および中心軸またはシリンダ軸Cを有するロッド受け部9を含む。同軸の第1のボア10が第2の端9bに設けられている。第1のボア10の直径は、骨アンカー固定要素のヘッド3の直径よりも小さい。同軸の第2のボア11が、第1の端9aから、第2の端9bからのある距離まで延在する。第2のボア11の直径は第1のボア10の直径よりも大きい。実質的にU字型の凹部12が、ロッド受け部において第1の端9aから第2の端9bの方向に延在しており、凹部12の直径は、ロッド100を凹部内に配置してその中で案内することができるように、ロッド100の直径よりもやや大きい。凹部12によって2本の自由脚12a,12bが形成され、これらに内ねじ山13が設けられている。内ねじ山13は、メートルねじ山、平型ねじ山、負角ねじ山、鋸歯状ねじ山、または任意の他のねじ山であり得る。固定装置が内ねじ7の形態である場合、内ねじ7を締めた時に脚12a,12bが広がらないようにする、平型ねじ山または負角ねじ山などのねじ山形態が用いられ得る。凹部12の深さは、ロッド100および内ねじ7を脚12a,12bの間に挿入できるようなものである。なお、同軸ボア11の直径は中心軸Cに沿って変わり得る。
【0014】
特に図3aおよび図3eに見られるように、凹部12によって形成されるチャネルの両端のロッド受け部に切取部15a,15bが設けられている。
【0015】
受け部本体5は第2の端9bの側に、骨アンカー固定要素1のヘッド3のための収容空間を提供するヘッド受け部17を含む。ヘッド受け部17は実質的に円筒形であり、ロッド受け部9の最大外径よりも小さい外径を有するため、ヘッド受け部17は、たとえば図3bおよび図3cに見られるように、ロッド受け部9に対して引っ込んでいる。ヘッド受け部17の内部中空区分18が、骨アンカー固定要素1のヘッドのための座部を形成する。中空区分18は、開口部19を介してヘッド受け部の自由端17bに開いている。示される実施例では、中空区分18は球形ヘッド3を収容するために球形状である。しかし、中空区分18は一般に、ヘッド3の任意の他の形状に適合され得るか、ヘッド3をヘッド受け部17内にロック固定できるように他の方法で成形され得る。
【0016】
ヘッド受け部17には複数のスリット20が設けられている。スリット20は自由端17bから、ロッド受け部の第2の端9bからのある距離まで延在する。一般に、スリット20は、中空区分18の最大内径を含む領域上に延在する。スリット20によってヘッド受け部17が可撓性を有するため、ヘッド受け部17を圧縮して、ヘッド3を締付け、ヘッド3を摩擦によって内部中空区分18内に最終的にロック固定することができる。ヘッド受け部17は、ヘッド受け部を拡げることによってヘッド3を挿入できるように、かつヘッド受け部を圧縮することによってヘッド3を締付けて最終的にロック固定するように構成される。スリット20のうちのいくつかはロッド受け部内へさらに延在して、たとえば図3aおよび図3bに示されるようにスリット20aを形成する。これによって、ヘッド3の挿入がさらに容易になり得る。
【0017】
スリット20,20aによって、ヘッド受け部17の可撓性壁区分17aが形成される。可撓性壁区分17aの各々には、ロック固定リング6とヘッド受け部17との協働によって発生する圧力がヘッド3に加えられる圧力区域が形成される。圧力区域は、可撓性壁区分17aの中の円周方向に見られる分かれたの区域である。第1の実施例では、圧力区域は、各可撓性壁区分17aの外面の涙滴状突出部21によって形成される。涙滴状突出部21は、軸方向および円周方向において可撓性壁区分17aの中心に配置される。涙滴状突出部21は、その高さおよび幅が開口端17bに向かって増大するように方向付けられる。これによって、ヘッド受け部の外径は、図3dに最もよく見られるように涙滴状突出部の領域内の自由端17bに向かって増大する。したがって、可撓性壁区分17aの各々に、外向きにテーパ状の圧力区域が設けられる。
【0018】
次に図4aから図4dを参照して、ロック固定リング6を説明する。図4aは、ロック固定リング6の斜視図である。ロック固定リング6は実質的に円筒形であり、上端6aおよび下端6bを有する。装着状態では、上端6aはロッド受け部の第1の端9aの方向に方向付けられ、下端6bはヘッド受け部の自由端17bに向かって方向付けられる。下端6bに隣接して、ロック固定リング6は実質的に中空の円筒形状であり内部円筒面61を有すし、その直径は、涙滴状突出部21の最も外側の区域の領域内のヘッド受け部17の外径よりもやや小さい。これによって、ロック固定リング6がヘッド受け部17の周りにある時、ヘッド受け部17を圧縮して、ヘッド3を締付けて最終的にロック固定することができる。たとえば、図4cの線B−Bに沿ったロック固定リングの断面図を示す図4dに示されるように、ロック固定リングの下端6bは丸い端縁を有し得る。円筒面61に隣接して、ロック固定リング6は、上端6aを有する円形縁62を有する。円形縁62と中空円筒面61との間に、環状当接面63が形成されている。円形縁62の高さは、特に図5bに示されるように、ロック固定リング6が最も低い位置にある時に縁62が当接面63と第2の端9bとの間の隙間を埋めるようなものである。これは、たとえば、当接面63と受け部の第2の端9bとの間の隙間に組織が成長することを防止するように作用し得る。ロック固定リング6は、特に図4aおよび図4dに示されるように、当接面63から上端6aに向かって突出する2つの突出部64をさらに有する。突出部64は互いに180°ずれており、ロッド100を受けるのを容易にするための凹状上面64aを有し得る。
【0019】
骨アンカー固定装置のすべての部品は、たとえばチタン、ステンレス鋼、またはニチノールなどの生体適合性合金、またはたとえばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの生体適合性プラスチック材料、などの生体適合性材料からなる。これらの部品はすべて、同一材料または異なる材料からなり得る。
【0020】
次に図5aから図5cを参照して、骨アンカー固定装置の組立および使用を説明する。可撓性壁区分17aを圧縮することによって、ロック固定リング6をヘッド受け部の自由端17bから装着する。次に、ロック固定リングを、図5aに示される挿入位置である第1の位置まで動かす。この位置では、環状当接面63がロッド受け部9の下端9bに当接する。内部円筒面61とヘッド受け部17の外面との間に、可撓性壁区分17aがある程度拡がることができる隙間がある。この状態で、内部中空区分18を拡げることによってヘッド3を自由端17bから挿入することができる。ヘッド3が内部中空区分18に挿入されると、涙滴状突出部21の最も高い点の区域におけるヘッド受け部17の外径は円筒面61の内径よりも大きいため、ロック固定リング6の抜け落ちが防止される。ロック固定リングの突出部64はU字型凹部12と並ぶ。図5aに見られるように、第1の位置では、突出部64はU字型凹部12の底部の上方に突出する。
【0021】
受け部本体5、ロック固定リング6およびアンカー固定要素1を予め組立てることによって達成され得るこの状態で、アンカー固定要素1を骨部または椎骨に挿入する。ヘッドの凹部4には、第1のボア10を通じてドライバでアクセスすることができる。図5aに示される状態では、受け部は骨アンカー固定要素1のヘッド3に対して依然として旋回可能である。通常、安定化ロッド100に接続される少なくとも2つの骨アンカー固定装置が用いられる。骨アンカー固定装置の各々を挿入した後、受け部本体5を回転および/または旋回させて、ロッド100を受けるように調節する。骨アンカー固定装置に対するロッドの正確な位置が達成されると、内ねじ7がロッド100を押圧するまで内ねじ7を脚12a,12bの間にねじ込む。これによって、ロッド100はU字型凹部の底部に向かって移動するため、突出部64の上面64aに係合してロック固定リング6を下降させる。
【0022】
ロック固定リング6がヘッド受け部の自由端17bに向かって移動すると、その円筒内面62が涙滴状突出部21の外向きテーパ状面に係合することによって、可撓性壁区分17aに対する圧力を増す。ロック固定リングが完全に下降すると、ロック固定リングによって可撓性壁区分に加えられる圧力は、ヘッド3が内部中空区分18内に最終的にロック固定されるようなものである。
【0023】
ロッド軸を含む断面においてロッドが挿入されて内ねじ7が締められた骨アンカー固定装置の断面図である図5cに見られるように、ロック固定リングは、涙滴状突出部21によって実現される分かれたの圧力区域以外は可撓性壁区分17aに係合しない。他の区域では、内部円筒面61および可撓性壁区分17aの平行面同士の間に隙間がある。したがって、円周方向に均等に分布した分かれたの圧力区域にのみ圧力が加えられる。圧力は、スリット20などの、ヘッドの締付けに寄与しない位置には加えられない。したがって、締付け力を加える効率が高まる。
【0024】
次に図6から図10cを参照して、骨アンカー固定装置の第2の実施例を説明する。第1の実施例の部品および部分と同一または同様の部品および部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。第2の実施例の骨アンカー固定装置は、本質的に圧力区域およびロック固定リングの設計において、第1の実施例に係る骨固定装置と異なる。
【0025】
特に図1および図8aから図8dに見られるように、受け部本体5′はロッド受け部9の外面において、円周溝22、および溝22の上側の実質的に円筒形の部分と比べて直径がやや小さい円筒部23の形態の、ロック固定リング用係合部を有する。溝22は、以下に説明するロック固定前の位置である第2の位置において、ロック固定リング用止め具として働く。
【0026】
ヘッド受け部17は、各可撓性壁区分にそれぞれ設けられた玉軸受21′によって実現される圧力区域を含む。ヘッド受け部17は、ロッド受け部の第2の端9bに隣接した第1の直径の第1の円筒部17cと、玉軸受21′を有する第1の直径よりも大きい第2の直径の第2の円筒部17dとを有する。第2の部分17dと本質的に同じ直径の第3の部分17eが、自由端17bに設けられている。第2の部分17dと第3の部分17eとの間に、ロック固定リングの一部と係合するために作用する溝24が設けられている。なお、溝22および24は、下降する際にロック固定リングの係合が外れるのを容易にするように、自由端17bに向かって傾斜した傾斜下側端縁を有し得る。第2の部分17dは実質的に、ヘッド3が内部中空区分18に挿入された時のヘッド3の最大外径に対応する内部中空区分18の最大外径の周りの位置にある。スリット20′は好ましくは、たとえば図8bおよび図8cに示されるように、自由端17bから第2の部分17dの上端までしか延在しない。
【0027】
可撓性壁区分17aの各々は、円周方向の中心に、玉軸受21′の形態の分かれたの圧力区域を含む。各玉軸受21′は、内部に玉26を収容するようにサイズ決めされ成形された、実質的に円形の断面を有する凹部25を含む。玉26は凹部内で回転可能であり、玉の一部は第2の円筒部17dから突出する。ロック固定リングが装着されるとすぐに、玉は抜け落ちることができなくなる。図6および図10aから図10cに最もよく見られるように、受け部本体5′は、ロック固定リングと協働する等距離に間隔を空けられた玉26を円周方向に含む。
【0028】
次に図9aから図9dを参照して、ロック固定リングを説明する。ロック固定リング6′は実質的に円筒形であり、上端6aおよび下端6bを有する。下端6bの近傍に、ヘッド受け部17の自由端17bに隣接した第3の部分17eと協働する、内向きに突出する円形端縁610が設けられている。内向きに突出する端縁610は円筒内面を提供する。さらに、内向きに突出する端縁610は、ヘッド受け部17の溝24に係合するように構成される。
【0029】
内向きに突出する端縁610に隣接して、ロック固定リング6′は中空円筒部611を含み、この高さは、特に図10aに見られるように、凹部25から突出する玉26の一部を受けることができるようなものである。したがって、その内径は、内向きに突出する端縁610の内径よりも大きい。中空円筒部611に隣接して中空円筒部612があり、その内径は中空円筒部611の内径よりも小さく、内向きに突出する端縁610の内径よりも大きい。中空円筒部612の内径は、図10bに見られるように、中空円筒部612が玉26の周りに配置されるようにロック固定リングがヘッド受け部17の周りにある時に、中空円筒部612の内面が玉軸受の玉に沿って摺動できるようなものである。
【0030】
上端6aに隣接したロック固定リング6′の上部は、スリット614によって互いに分離された、上向きに延在する壁部613からなる。上向きに延在する壁部613は、ロック固定リングの内周肩615の外周に配置され、これによってロック固定リングの上部が可撓性を有する。スリットの数およびサイズ、ならびに壁部613の厚みは、所望の可撓性が得られるように構成される。壁部613はその自由端において、ロッド受け部9の外面に設けられた溝22に係合するように成形された係合区分613aを含む。
【0031】
ロック固定リング6′は、ロック固定リングが図10aに示されるような第1の位置にある時にヘッド受け部17がロック固定リング6′の中で拡がってヘッド3を導入できるように、ヘッド受け部17に対してサイズ決めされる。
【0032】
第1の実施例のロック固定リング6と同様に、凹状上面部64aを有し得る2つの突出部64が互いに180°ずれて設けられている。上面64aの曲率はロッド100の曲率に対応し得る。突出部64は、ロック固定リング6′が、図10aおよび図10bに示されるようなヘッド3がまだロック固定されていない位置にある時に、U字型凹部12の底部の上方に突出して切取部15a,15b内へ延在するような高さを有する。上向きに延在する壁部613の高さは、ロック固定リングが、その内周肩が第2の端9bに当接する図10aに示される第1の位置にある時に、上向きに延在する壁部613が自身の係合部613aで円周溝22の上方にあるようなものである。外側では、ロック固定リングは、受け部の外側寸法を小さくするために、自身の下端6bに向かってテーパ状であり得る。
【0033】
次に図10aから図10cを参照して、骨アンカー固定装置の機能および使用を説明する。図10aに示されるように、ロック固定リング6′が受け部本体5′に対してラッチされる挿入位置であるロック固定リング6′の第1の位置は、内向きに突出する端縁610がヘッド受け部17の外面の溝24に係合するように規定される。この状態で、ヘッド3を開口部19を通じてヘッド受け部17の内部中空区分18に挿入することができる。内向きに突出する端縁610の内径は溝24の外径よりも大きいため、ヘッド3を導入した時にヘッド受け部17の拡がりが可能である。第1の位置では、特に図10aに見られるように、ロック固定リング6′は、ロッド受け部9と外向きにやや曲がったロック固定リング6′の可撓性壁部613との間の締付け力によってさらに保持される。
【0034】
ロック固定リングが第1の位置にある時、ヘッド受け部17は圧縮されない。この位置では、ロック固定リングは、肩615でヘッド受け部の第2の端9bに当接しており、内向きに突出する端縁610で溝24の上壁に当接しているため、ロッド受け部の第1の端9aに向かって上昇できない。このため、ロック固定リング6′が所定の位置に保持される。溝24の傾斜下側端縁によってロック固定リング6′の意図しない下降が防止されるが、付加的な下向きの力を加えると下降が可能になる。第1の位置では、ヘッドは内部中空区分18内で自由に旋回可能である。ヘッド受け部は圧縮されず、玉26は中空円筒部611内へ突出するために触れられない。
【0035】
ロック固定リング6′が受け部本体5′に対してラッチされる第2の位置が図10bに示される。第2の位置は、ヘッド3を内部中空区分18からから取外すことができず、かつ可撓性壁区分17aによって加えられる若干の摩擦力によってヘッド3が予備的な角度位置に任意に保持される、ロック固定前の位置である。第2の位置では、ロック固定リング6′は、上向きに延在する壁部613の係合部613aがロッド受け部9に設けられた溝22内に弾性的にスナップ留めされるまで、ヘッド受け部の自由端17bに向かって移動している。図10bに示されるように、係合部613aの自由上側端縁が溝22の上壁に当接しているため、ロック固定リングがロック固定前の位置から外れて上昇することが防止される。他方、溝22の傾斜下側端縁によって、ロック固定リングが自由端17bに向かって意図せず下降することが防止されるが、付加的な軸方向の力を加えるとそのような下降が可能になる。
【0036】
第1の位置から第2の位置に達するためには、ロック固定リング6′を下降させなければならない。ロック固定リングが下降する間、中空円筒部612が回転中の玉26に沿って摺動することによって、玉26の位置にある可撓性壁区分17aに圧力を加える。したがって、表面17dから突出する玉26に圧力を加えつつ、ヘッド受け部の2つの円筒面17dとロック固定リングの中空円筒部612とが動かなくなることが防止される。玉26は、ヘッド3を締付けて最終的にロック固定するためにヘッド3に圧力を加えるべき分かれたの圧力区域を規定する。
【0037】
ロック固定前の位置では、骨アンカー固定要素を受け部から取外すことができない。したがって、ヘッドの偶発的な、または意図しない取外しは不可能である。しかし、たとえば手動で摩擦力を克服することによって、ねじ要素の角度付けは依然として可能である。
【0038】
ロック固定位置である第3の位置が図10cに示される。第3の位置は、ヘッド3が受け部17内に最終的にロック固定される位置として規定される。内向きに突出する端縁610は、ヘッド受け部17の自由端17bに隣接した第3の部分17eを圧縮する。玉26の形態の圧力区域を介して加えられる圧力と、内向きに突出する端縁610を介して加えられる圧力との組合せによって、ヘッド3が受け部本体5内にしっかりとロック固定される。ロッド100が突出部64の上面を押す動作を行なうと、ロック固定リングの下降によって第3の位置に達する。固定ねじ7を締めると、ロッドが押下げられる。
【0039】
次に図11から図15cを参照して、骨アンカー固定装置の第3の実施例を説明する。第1および第2の実施例の部品および部分と同一または同様の部品および部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。骨アンカー固定装置の第3の実施例は、圧力区域の設計が第1および第2の実施例と異なる。第3の実施例では、圧力区域21″は、ロック固定リング6″の内側に位置する円周方向に分かれた突出部として定義される。
【0040】
特に図13aから図13dに見られるように、受け部本体5″は、第2の実施例と同様のヘッド受け部17を有する。第2の円筒部17d′は、ヘッド3の最大外径に実質的に対応するヘッド受け部17の軸方向の位置に設けられている。スリット20は、第1および第2の実施例と同様に、自由端17bから、ロッド受け部の第2の端9bからのある距離まで、かつ第2の円筒部17d′の上に延在する。
【0041】
ロック固定リング6″は、図15cに示されるようにロック固定リングが第3の位置にある時に第2の円筒部17d′の位置に軸方向の位置において対応する、円周方向に分かれた突出部620の形態の圧力区域を有する点で、第2の実施例に係るロック固定リングと異なる。突出部620はロック固定リングの内側に突出する。突出部620の数は可撓性壁区分17aの数に対応し、距離は可撓性壁区分17aの距離に対応するため、ロック固定リングを装着すると、各突出部620がひとつの可撓性壁区分17aに係合し得る。突出部620の軸方向の高さは、第2の円筒部17d′の高さとほぼ同一である。突出部620の円周方向の幅は可撓性壁区分17aの幅よりも小さいため、各可撓性壁区分17aに個別の圧力区域が作られる。突出部は、図14aから図14dに示されるように傾斜切取面620aを有する突出リングの切取部を設けることによって生成され得る。しかし、可撓性壁区分17aに対して分かれたの圧力区域を生成するように構成された他の形状も可能である。第3の実施例に係る骨アンカー固定装置の組立および使用は、第2の実施例と同様である。図15aに示されるように、第1の位置では、ロック固定リング6″の内向きに突出する端縁610は、ヘッド受け部17の溝24に係合する。ヘッドは自由端17bから導入され得る。
【0042】
図15bに示されるようなロック固定前の位置である第2の位置では、係合部613aがロッド受け部の溝22に係合する。この位置では、ロック固定リングの突出部620は、ヘッド受け部17の第2の円筒部17d′を圧迫し始める。
【0043】
図15cに示されるような第3の位置では、突出部620は第2の円筒部17d′の中心に実質的に位置決めされ、可撓性壁区分17aを圧縮してヘッド3を締付ける。さらに、内向きに突出する端縁610が第3の円筒部17eに係合する。突出部620および内向きに突出する端縁610の圧力の組合せによって、ヘッドが内部中空区分18内にしっかりとロック固定される。
【0044】
説明した実施例のうちの1つの単一の特徴は、他の実施例の特徴と組合せられるか、交換され得る。たとえば、円周方向に交互に可撓性壁区分上およびロック固定リング上に個別の圧力区域を形成する突出部を有することが可能である。また、第1の実施例のロック固定リングおよび受け部はロック固定前の機能を有するように構成され得、第2および第3の実施例のロック固定リングおよび受け部はロック固定前の機能を有さずに設計され得る。
【0045】
説明した実施例のさらなる変更が可能である。たとえば、骨アンカー固定要素のヘッドは、たとえば円筒形状などの別の形状を有し得、これによって、単一軸の周りの受け部本体に対するねじ要素の回転を可能にする単一軸骨ねじが提供される。
【0046】
圧力区域を形成する突出部は、任意の形状を有し得る。突出部は好ましくは、ロック固定リングの移動を容易にするための丸い形状を有する。
【0047】
ヘッド受け部は、1つの方向におけるヘッドのより大きな角度付けを可能にするために、傾斜開口端を有し得るか、そうでなければ非対称であり得る。
【0048】
アンカー固定要素については、あらゆる種類のアンカー固定要素が用いられ、受け部と組合せられ得る。これらのアンカー固定要素は、たとえば、異なる長さ、異なる直径のねじ、中空ねじ、異なるねじ山形態を有するねじ、釘、フック、およびヘッドとシャフトが別個の部品であるアンカー固定要素である。
【0049】
ロッド受け部も異なる形状を有し得る。たとえば、凹部は、ロッドを上から導入する代わりに横から導入できるように構成され得る。凹部はさらに、U字型ではなく閉じられ得る。2つ以上の部品からなるロック固定装置、外側ナット、外側キャップ、差込ロック固定装置または他のものを含む、さまざまな種類のロック固定装置が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 骨アンカー固定要素、2 ねじ山シャフト、3 ヘッド、4 凹部、5 受け部本体、6 ロック固定リング、7 内ねじ、9 ロッド受け部、17 ヘッド受け部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッドを受けて前記ロッドを骨アンカー固定要素(1)に結合させるための受け部であって、
上端(9a)および下端(17b)を有する受け部本体(5,5′,5″)と、
前記ロッド(100)を受けるためのチャネル(12)を有するロッド受け部(9)と、
前記骨アンカー固定要素のヘッド(3)を収容するためのヘッド受け部(17)とを備え、前記ヘッド受け部は、前記ヘッド(3)を導入するための開口端(19,17b)を有し、前記受け部はさらに、
前記ヘッド受け部(17)を取囲むロック固定リング(6,6′,6″)を備え、
前記ヘッド受け部は複数の可撓性壁部(17a)を含み、
前記可撓性壁部(17a)および前記ロック固定リング(6,6′,6″)は、前記可撓性壁部(17a)の中の円周方向に分かれた圧力区域(21,21′,21″)において互いに係合するように構成される、受け部。
【請求項2】
前記可撓性壁部(17a)はスリット(20)によって分離される、請求項1に記載の受け部。
【請求項3】
前記別個の圧力区域は、前記可撓性壁部(17a)に設けられる円周方向に分離された突出部(21,26)を含む、請求項1または2に記載の受け部。
【請求項4】
前記別個の圧力区域は、前記ロック固定リング(6″)に設けられる円周方向に分離された突出部(620)を含む、請求項1または2に記載の受け部。
【請求項5】
前記別個の圧力区域は楔形要素(21)によって設けられる、請求項1から4のいずれかに記載の受け部。
【請求項6】
前記別個の圧力区域は涙滴状突出部(21)によって設けられる、請求項1から5のいずれかに記載の受け部。
【請求項7】
前記涙滴状突出部は、その幅および高さが前記開口端(19,17)に向かって増大するように方向付けられる、請求項6に記載の受け部。
【請求項8】
前記別個の圧力区域はボール状突出部(21′)である、請求項1から3のいずれかに記載の受け部。
【請求項9】
前記別個の圧力区域は、凹部(25)に回転可能に設けられる玉(26)を含む、請求項8に記載の受け部。
【請求項10】
前記別個の圧力区域以外の前記ヘッド受け部(17)および前記ロック固定リング(6,6′,6″)の対向面は平行である、請求項1から9のいずれかに記載の受け部。
【請求項11】
前記別個の圧力区域はそれぞれ、前記可撓性壁部(17a)の中心に実質的に配置される、請求項1から10のいずれかに記載の受け部。
【請求項12】
前記ヘッド受け部(17)は、前記ヘッドを収容するための内部中空区分(18)を含み、前記別個の圧力区域(21,21′,21″)は、前記内部中空区分(18)の最大内径の位置にある、請求項1から11のいずれかに記載の受け部。
【請求項13】
前記ロック固定リング(6′,6″)は、
自身が前記受け部本体(5′)に対してラッチされ、かつ前記ヘッドが前記ヘッド受け部(17)に導入され得る第1の位置、および
自身が前記受け部本体(5″)に対してラッチされ、かつ前記ヘッドを取外すことができない第2の位置につき得る、請求項1から12のいずれかに記載の受け部。
【請求項14】
前記ロック固定リング(6′,6″)は、自由端(17b)の近傍の前記ヘッド受け部(17e)と協働してさらなる締付けを提供する、内向きに突出する端縁(610)を自身の下端に有する、請求項1から13のいずれかに記載の受け部。
【請求項15】
請求項1から14に記載の受け部と、骨内にアンカー固定するためのシャフト(2)およびヘッド(3)を有する骨アンカー固定要素(1)とを備える、骨アンカー固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図11】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図13d】
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【図14a】
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【図14b】
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【図14c】
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【図14d】
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【図15a】
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【図15b】
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【図15c】
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【公開番号】特開2012−125565(P2012−125565A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−266673(P2011−266673)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【出願人】(511211737)ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト (30)
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
【Fターム(参考)】