説明

ロッドレンズ製造装置および製造方法

【課題】ロッドレンズの弛みに起因する切断装置の故障等を抑制することができるロッドレンズ製造装置等を提供する。
【解決手段】ロッドレンズL1を連続的に紡糸する紡糸装置12、14、16と、ロッドレンズを所定長に切断する切断装置とを備え、切断装置が、間欠的に作動する切断機構28と、切断機構の上流側に設けられ、切断装置の作動中には送り込みを停止するニップローラ30とを備え、ニップローラが、外周部に所定のトルクがかかると外周部が中心軸に対して空転するフリクションタイプのニップローラであり、ニップローラは、外周部が切断装置へのロッドレンズ送り込み時に、ロッドレンズの送り込みの停止中に紡糸装置から供給されたロッドレンズの長さと次回の送り込み停止までの間に紡糸装置から供給されるロッドレンズの長さの和より長く回転するロッドレンズ製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロッドレンズの製造装置および製造方法に関し、より詳細には、紡糸装置が連続的に製造した長尺のプラスチックロッドレンズが所定長に切断されるロッドレンズ製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナ等に使用されるプラスチックロッドレンズアレイを製造するために使用されるプラスチックロッドレンズは、紡糸口金から連続的に押し出された溶融樹脂材料の糸状体を紫外線によって硬化させて長尺のプラスチックロッドレンズ材とし、更に、この長尺のプラスチックロッドレンズ材を切断装置で順次、所定長に切断することによって製造されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−207106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなプラスチックロッドレンズの製造工程では、紡糸口金から切断装置に至る搬送経路を搬送されている間にロッドレンズが緩んで大きな弛みが生じ、この弛みが、切断装置の故障等の原因となる場合がある。
【0005】
このため、従来のロッドレンズ製造装置では、弛み検出部材を配置し、ロッドレンズの弛みを検知していた。
【0006】
しかしながら、従来の弛み検出部材では、弛みを確実に検出できない場合があった。このような場合には、ロッドレンズの製造を継続して続けていくと、ロッドレンズの弛みが累積的に大きくなり、この累積的に大きくなった弛みが下流側の切断装置等の原因となることがあった。
【0007】
また、近年、プラスチックロッドレンズを効率的に生産するため、複数本、例えば6または8本のプラスチックロッドレンズを同時に押し出すことができる多錘紡糸ノズルが数多く使用されてきている。
このような多錘紡糸ノズルを使用したロッドレンズの製造では、多錘紡糸ノズルから連続的に押し出された6または8本の長尺のプラスチックロッドレンズ材が、搬送されながら硬化され、硬化後、切断される。
【0008】
そして、このような多錘紡糸ノズルを使用したロッドレンズの製造工程では、コ字状の弛み検出部材1をロッドレンズの下方に配置し、この弛み検出部材1がロッドレンズLによって下方に押し下げられる変位量を検出することによって、ロッドレンズLの弛みを検知していた(図1)。
【0009】
一方、搬送される複数のロッドレンズは、円筒状のニップローラ等によって搬送されるが、ニップローラの局所的な径の相違等の種々の要因で、ロッドレンズ毎に弛み量は異なる。このため、ロッドレンズを連続して製造していると、弛み量の差が累積され、1本のロッドレンズの弛みが、他のロッドレンズの弛みに比べて極めて大きくなる場合がある(図1)。
【0010】
しかしながら、このような1本のロッドレンズだけが弛んだ状態では、弛み検出部材1が下方に十分、変位しないため、ロッドレンズに弛みがあることを検出できず、この結果、この大きく弛んだロッドレンズが原因となって、下流側の切断装置で故障が起こる等の問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、ノズルから連続的に押し出されたロッドレンズが所定長に切断されるロッドレンズ製造において、ロッドレンズの弛みに起因する切断装置の故障等を抑制することができるロッドレンズ製造装置およびロッドレンズ製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、
ロッドレンズを連続的に製造するロッドレンズ製造装置であって、
前記ロッドレンズを連続的に紡糸する紡糸装置と、
前記紡糸装置の下流側に設けられ、前記紡糸装置から連続的に供給される前記ロッドレンズを所定長に切断する切断装置とを備え、
前記切断装置が、
間欠的に作動して前記ロッドレンズを所定長に切断する切断機構と、
該切断機構の上流側に設けられ、前記紡糸装置から供給されるロッドレンズを前記切断機構に送り込むと共に、前記切断装置の作動中には前記送り込みを停止するニップローラとを備え、
前記ニップローラが、外周部に所定のトルクがかかると該外周部が中心軸に対して空転するフリクションタイプのニップローラであり、
前記ニップローラは、前記外周部が、前記切断装置へのロッドレンズ送り込み時に、前記ロッドレンズの送り込みの停止中に前記紡糸装置から供給されたロッドレンズの長さと次回の送り込み停止までの間に前記紡糸装置から供給されるロッドレンズの長さの和より長く回転するように回転駆動される、
ことを特徴とするロッドレンズ製造装置が提供される。
【0013】
このような構成を有する本発明によれば、「ニップローラは、前記外周部が、前記切断装置へのロッドレンズ送り込み時に、前記ロッドレンズの送り込みの停止中に前記紡糸装置から供給されたロッドレンズの長さと次回の送り込み停止までの間に前記紡糸装置から供給されるロッドレンズの長さの和より長く回転するように回転駆動される」ので、ロッドレンズの弛みが除去される。
【0014】
このとき「ニップローラが、外周部に所定のトルクがかかると該外周部が中心軸に対して空転するフリクションタイプのニップローラであ」るので、ロッドレンズの弛みが除去されると、当接部は、ロッドレンズからの反作用として作用するトルクによって中心軸に対して空転し、ロッドレンズに過度な張力がかかることが防止される。
【0015】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記ニップローラは、前記切断装置へのロッドレンズ送り込み時に、前記紡糸装置からロッドレンズの供給速度より高い周速度で前記切断装置にロッドレンズを送り込むように回転駆動される。
【0016】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記紡糸装置が、複数本のロッドレンズを連続的に紡糸する紡糸装置であり、
前記切断装置が、前記紡糸装置から連続的に供給される前記複数本のロッドレンズを所定長に切断する切断装置であり、
前記ニップローラの外周部が、前記複数のロッドレンズの各々に当接し互いに独立して空転可能な複数の当接部に長手方向に分割されている。
【0017】
このような構成によれば、弛みがあるロッドレンズのみ、送り込み量が多くなってロッドレンズの弛みを除去することができる。この結果、ロッドレンズ毎に弛みに差があった場合でも、全てのロッドレンズの弛みを除去することが可能となる。
【0018】
本発明の他の態様によれば、
ロッドレンズを連続的に製造するロッドレンズ製造方法であって、
紡糸ノズルから溶融樹脂を連続的に押し出して糸状材を形成するステップと、
前記糸状体を連続的に搬送しながら硬化させロッドレンズとするステップと、
前記ロッドレンズを、該ロッドレンズを所定長に切断する切断装置に向けて連続的に搬送するステップと、
前記連続的に搬送されてきたロッドレンズを前記切断装置に断続的に送り込むステップと、
前記送り込まれたロッドレンズを前記切断装置で所定長に切断するステップと、を備え、
前記送り込みステップが、外周部に所定のトルクがかかると該外周部が中心軸に対して空転するフリクションタイプのニップローラによって行われ、前記送り込みステップでは、前記外周部が、前記送り込みの停止中に搬送されてきたロッドレンズの長さと次回の送り込み停止までの間に搬送されてくるロッドレンズの長さの和より長く回転駆動させられる、
ことを特徴とするロッドレンズ製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、多錘紡糸ノズルを使用したロッドレンズ製造において、ロッドレンズの弛みに起因する切断装置の故障等を抑制することができるロッドレンズ製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来技術の問題点を説明する図面である。
【図2】本発明の好ましい実施形態のプラスチックロッドレンズ製造装置を基本構成を模式的に示す図面である。
【図3】図2のプラスチックロッドレンズ製造装置の作動を説明する図面である。
【図4】図2のプラスチックロッドレンズ製造装置の第4搬送ローラ対の構造を示す一部分を断面とした正面図である。
【図5】図2のプラスチックロッドレンズ製造装置の切断機構の構成を概略的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態のプラスチックロッドレンズ製造装置について説明する。図2は、本発明の好ましい実施形態のプラスチックロッドレンズ製造装置10を基本構成を模式的に示す図面である。
本実施形態のプラスチックロッドレンズ製造装置10は、中心軸から外周部に向かって屈折率が連続的に減少している屈折率分布を有するプラスチックロッドレンズを製造するロッドレンズ製造装置である。
【0022】
図2に概略的に示されているように、本発明の好ましい実施態様のプラスチックロッドレンズ製造装置10は、上流側から順に、8本の糸状体L1を同時に押し出す同心円状複合紡糸ノズル(多錘紡糸ノズル)12と、糸状体L1を構成する各層の樹脂を相互に拡散させて連続的な屈折率分布を与えるための相互拡散部14と、糸状体L1の樹脂を紫外線硬化させる硬化処理部16と、第1搬送ローラ対18と、第2搬送ローラ対20と、加熱延伸機構22と、第3および第4搬送ローラ対24、26と、切断機構28とを備え、連続的にプラスチックロッドレンズを製造することができるように構成されている。
【0023】
同心円状複合紡糸ノズル12はプラスチックロッドレンズを製造するために使用される公知のノズルである。この同心円状複合紡糸ノズル12では、内部の8箇所で硬化後の屈折率が異なる5種類の樹脂が同心状に供給され、上部の8箇所のノズルのそれぞれから、同心状に積層された未硬化樹脂からなる積層体(糸状体)L1が連続的に押し出される。
【0024】
この未硬化状物を構成する物質としては、ラジカル重合性ビニル単量体、またはラジカル重合性ビニル単量体と単量体に可溶な重合体とよりなる組成物等のプラスチックロッドレンズの材料として公知の組成物が用いられる。
【0025】
相互拡散部14は、内部を同心円状複合紡糸ノズル12から押し出された糸条体L1が通過する際、糸状体L1の各層間の屈折率分布が連続的になるように隣接する層間で相互拡散処理が行われる区画である。
【0026】
硬化処理部16は、内部を相互拡散処理が行われた糸条体L1が通過する際、相互拡散処理が行われた糸条体L1を構成する樹脂を紫外線で硬化させる区画である。
【0027】
加熱延伸機構22は、樹脂が紫外線硬化させられた糸条体(プラスチックロッドレンズの原糸)L2に、加熱延伸処理、緩和処理を施す装置である。樹脂が紫外線硬化させられた糸条体(プラスチックロッドレンズの原糸)L2は、第1および第2搬送ローラ対18、20によって、平行状態に配置され、加熱延伸機構22に送り込まれる。
【0028】
図2では模式的に示されている切断機構28は、間欠的に作動し、加熱延伸処理等が施された8本のプラスチックロッドレンズL3(L3-1乃至L3-8)を所定長に切断する機構である。切断機構28の上流側にある第4搬送ローラ対26は、切断機構28が切断作業を行っている間は回転を停止し、切断機構28へのプラスチックロッドレンズL3の送り込みを停止するように制御される。
【0029】
したがって、第3搬送ローラ対24は、常時、一定の速度で回転駆動されプラスチックロッドレンズL3を第4搬送ローラ対26に向けて送り出しているので、第4搬送ローラ対26の停止中は、第3搬送ローラ対24と第4搬送ローラ対26の間で、8本のプラスチックロッドレンズL3(L3-1乃至L3-8)が、弛んだ状態で溜まることになる(図3)。
【0030】
本実施形態のロッドレンズ製造装置10では、各搬送ローラ対、硬化処理部等の作動は、コンピュータ等によって構成される制御装置によって制御される。以上の基本的な構成は、公知の多錘紡糸ノズルを使用したプラスチックロッドレンズ製造装置と同様である。
【0031】
次に、本実施形態のプラスチックロッドレンズ製造装置10の特徴について説明する。
本実施形態のプラスチックロッドレンズ制御装置10では、切断機構28の上流側に設けられている第4搬送ローラ対26を構成する一方のローラ30が、外周部に所定のトルクがかかると外周部が中心軸に対して空転するフリクションタイプのニップローラとされている。
【0032】
図4は、第4搬送ローラ対26近傍を示す一部分を断面とした正面図である。図4に示されているように、ニップローラ30は、モータ(図示せず)によって回転駆動される中心軸(駆動軸)32と、それぞれがベアリング34を介して駆動軸32に連結された8つの円筒状の当接部36-1乃至36-8からなる外周部36を備えている。8つの当接部36-1乃至36-8は、ゴム等の弾性材料で形成され、中心軸(駆動軸)32の長手方向に分割配置され、互いに独立して回転可能に構成されている。
【0033】
このようにニップローラ30の8つの当接部36-1乃至36-8は、それぞれが独立してベアリング34を介して中心軸(駆動軸)32に連結されているので、当接部36-1乃至36-8のいずれかに所定値を越えるトルクが作用すると、その当接部36-1乃至36-8は、回転駆動されている中心軸(駆動軸)32に対して空転する。すなわち、当接部36-1乃至36-8に所定値を越えるトルクが作用すると中心軸(駆動軸)32と、当接部36-1乃至36-8との間に、自然発生的に回転速度の差が生じることになる。
【0034】
また、第4搬送ローラ対26を構成する他方のローラ38は、略円筒状の金属製のフラットローラとされている。
【0035】
図4に示されているように、本実施形態のプラスチックロッドレンズ製造装置10では、加熱延伸機構22で加熱延伸処理等が施された8本のプラスチックロッドレンズL3(L3-1乃至L3-8)のそれぞれが、ニップローラ30の各当接部36-1乃至36-8とフラットローラ38に挟持されて、切断機構28に送り込まれるように構成されている。
【0036】
さらに、第4の当接部36-4に対向してロータリエンコーダ40が設けられ、第4の当接部36-4の回転状態を検出し、検出結果をプラスチックロッドレンズ製造装置の制御装置に送信するように構成されている。
【0037】
上述したように、本実施形態のプラスチックロッドレンズ製造装置では、切断機構28が、間欠的に作動し、8本のプラスチックロッドレンズL3-1乃至L3-8を所定長に切断する。切断機構28によるプラスチックロッドレンズ切断中は、第4搬送ローラ対26(詳細にはニップローラ30とフラットローラ38)は停止し、切断機構28へのプラスチックロッドレンズL3-1乃至L3-8の送り込みは、一時的に中止される。
【0038】
一方、第3搬送ローラ対24は、切断機構28によるプラスチックロッドレンズ切断中も停止することなく回転駆動され、上流側から連続的に送られてくるプラスチックロッドレンズL3-1乃至L3-8を第4搬送ローラ対26方向に(すなわち切断機構28に向けて)送り続ける。
【0039】
この結果、図3に模式的に示すように、プラスチックロッドレンズL3-1乃至L3-8は、切断機構28による切断作業中に、第3搬送ローラ対24と第4搬送ローラ対26の間で弛んだ状態で蓄えられることになる。
【0040】
本実施形態では、切断機構28によるプラスチックロッドレンズL3-1乃至L3-8の切断が完了すると、第4搬送ローラ対26が、再び、回転駆動され、切断機構28にプラスチックロッドレンズL3-1乃至L3-8を送り込み始める。
【0041】
本実施形態では、切断機構28におよるプラスチックロッドレンズの切断作業の完了後に、第4搬送ローラ対26(ニップローラ30)の回転駆動が再開される毎に、ニップローラ30は、回転開始後および回転停止前の所定期間を除き、第3搬送ローラ対24によるプラスチックロッドレンズの送り込み速度より高い速度でプラスチックロッドレンズを切断機構28に送り込むように、回転駆動される。
【0042】
さらに、第4搬送ローラ対26を構成するニップローラ30は、次の切断作業までの間に、外周が、第4搬送ローラ対26による切断機構28へのプラスチックロッドレンズの送り込みが停止されていた間に第3搬送ローラ対24が搬送したプラスチックロッドレンズの長さと次回の送り込み停止までの間に紡糸装置からすなわち第3搬送ローラ対24から供給されるロッドレンズの長さの和より長い長さのプラスチックロッドレンズを切断機構28に送り込むように回転駆動される。
【0043】
このようなニップローラ30の回転駆動により、第3搬送ローラ対24と第4搬送ローラ対26の間の区間では、第4搬送ローラ対26の停止期間中に第3搬送ローラ対24から供給されたプラスチックロッドレンズの長さ、および第4搬送ローラ対26の回転駆動開始から次回の停止期間までの間に第3搬送ローラ対24によって供給されるプラスチックロッドレンズの長さの和より、第4搬送ローラ対26(ニップローラ30)によって切断機構28に向かって送り出されるプラスチックロッドレンズの量(長さ)が大きくなるので、切断機構28の停止中に形成されていた弛みは確実に解消される。
【0044】
第4搬送ローラ対26(ニップローラ30)によって切断機構28に向かって送り出されるプラスチックロッドレンズの量(長さ)を、第4搬送ローラ対26の停止期間中に第3搬送ローラ対24から供給されたプラスチックロッドレンズの長さと、第4搬送ローラ対26の回転駆動開始から次回の停止期間までの間に第3搬送ローラ対24によって供給されるプラスチックロッドレンズの長さの和より、どの程度、大きくするかは、第4搬送ローラ対26の送り込み速度の大きさ並びにプロファイル等は、種々の条件を考慮し、適宜設定される。
【0045】
弛みが完全に解消されると、プラスチックロッドレンズがピンと張った状態となるため、プラスチックロッドレンズを挟持するニップローラ30の外周部36にプラスチックロッドレンズからトルクが係る。この結果、外周部36が中心軸32に対し空転し、プラスチックロッドレンズには所定以上の張力が係ることがなく、プラスチックロッドレンズから弛みが除去された状態が実現される。
【0046】
8本のプラスチックロッドレンズ間で弛みの量に差があった場合でも、それぞれのプラスチックロッドレンズを挟持するニップローラの外周部36が互いに独立して中心軸32に対して空転可能であるため、プラスチックロッドレンズ毎に弛みが解消された時点で、このプラスチックロッドレンズを挟持している当接部36-1乃至36-8が中心軸32に対して空転することになるので、ニップローラの回転量を弛みを確実に解消できる程度の大きな値に設定することにより、全てのプラスチックロッドレンズの弛みを確実に解消することができる。
【0047】
本実施形態のプラスチックロッドレンズ製造装置10は、更に、直径が所定範囲外の不良レンズを排除する不良レンズ排除機構を備えている。以下、この排除機構について説明する。
【0048】
本実施形態の不良レンズ排除機構では、切断機構の上流側にプラスチックロッドレンズの直径測定機42を配置し、この直径測定機42が搬送されるプラスチックロッドレンズL3から直径が所定範囲外の不良レンズ部分を検出すると、下流側の切断機構22で切断されたロッドレンズから、この不良レンズ部分が含まれるロッドレンズを排除する機構である。
【0049】
具体的には、直径測定機42から切断機構22までの経路長とプラスチックロッドレンズの搬送速度に基づいて、不良レンズ部分を含むプラスチックロッドレンズが切断機構に達する時点を算出し、その時点の前後に切断されたロッドレンズ片を不良品として排除する機構である。
【0050】
以下、この機構を説明する。本実施形態のプラスチックロッドレンズ製造装置10では、略平行状態で搬送される8本のプラスチックロッドレンズの各々の直径を測定する直径測定機42が、加熱延伸機構22の下流側に設けられている。直径測定機42は、連続的に搬送される8本のプラスチックロッドレンズL3の各々の直径を光学的に検出する装置であり、検出結果は、プラスチックロッドレンズアレイ製造装置10の制御装置に送信される。
【0051】
図5は、切断機構22の構成を概略的に示す図面である。図5に示されているように、切断機構22は、平行状態で搬送されて来た8本のプラスチックロッドレンズL3-1乃至L3-8を同時に切断する切断機44と、所定長に切断されたプラスチックロッドレンズ片を収容する収容部46とを備えている。収容部46は、8本のプラスチックロッドレンズL3-1乃至L3-8に対応して、並列に8台、設けられている。
【0052】
さらに、切断装置44の下流側には、8本の吸引パイプ48が独立して上下動可能に設けられている。各吸引パイプ48は、8本のプラスチックロッドレンズのそれぞれの搬送経路に設けられ、二点鎖線で示す下方位置では、その先端が、切断装置44によって切断されたプラスチックロッドレンズ片の経路50上に位置するように、実線で示す上方位置では、その先端が、切断装置44によって切断されたプラスチックロッドレンズ片の経路50の上方に位置するように配置されている。
【0053】
各吸引パイプ48の他端には減圧装置(図示せず)が接続され、吸引パイプ48が下方位置に配置され、吸引パイプの先端が、切断されたプラスチックロッドレンズ片の経路50上に位置するときには、先端から切断されたプラスチックロッドレンズ片を吸引して他端側に配置された不良品収容部に運ぶことによって、特定のプラスチックロッドレンズ片が収容部46に収容されないようにしている。
【0054】
各吸引パイプ48の上下動は、プラスチックロッドレンズ製造装置10の制御装置によって個別に制御される。
したがって、8本のプラスチックロッドレンズのうちの特定のプラスチックロッドレンズから特定のタイミングで切断されたプラスチックロッドレンズ片を、吸引パイプで吸引し、収容部46から排除することが可能である。
【0055】
本実施形態のプラスチックロッドレンズ製造装置10では、直径測定機42が、特定のプラスチックロッドレンズで、直径が所定範囲外の不良プラスチックロッドレンズ部分を検出すると、制御装置が、直径測定機42と切断装置42の距離、およびプラスチックロッドレンズの搬送速度から、不良プラスチックロッドレンズ部分近傍が切断機42に達する時期を算出する。
【0056】
そして、予測された不良プラスチックロッドレンズ部分近傍のプラスチックロッドレンズが切断装置42で切断される時期の前後に、そのプラスチックロッドレンズに対応する吸引パイプ48からの吸引を実行しながらその吸引パイプ48を下方位置に降下させ、切断装置42で切断されたプラスチックロッドレンズ片を吸引パイプで吸引して不良品収容部分に運び、通常の経路の終点である収容部46に収容されないようにしている。
【0057】
本発明の前記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【0058】
上記実施形態のプラスチックロッドレンズ製造装置10は、8本の糸状体L1を押し出す同心円状複合紡糸ノズル(多錘紡糸ノズル)12を使用するものであったが、本発明はこれに限定されず、他の本数、例えば1本の糸状体を押し出す紡糸ノズルを使用したプラスチックロッドレンズ製造装置にも適用可能である。
この場合、第4の搬送ローラ対を構成するフリクションタイプのニップローラの外周部を複数の当接部に分割する必要はない。
【符号の説明】
【0059】
10:プラスチックロッドレンズ製造装置
12:同心円状複合紡糸ノズル(多錘紡糸ノズル)
14:相互拡散部
16:硬化処理部
18:第1搬送ローラ対
20:第2搬送ローラ対
22:加熱延伸機構
24:第3搬送ローラ対
26:第4搬送ローラ対
28:切断機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッドレンズを連続的に製造するロッドレンズ製造装置であって、
前記ロッドレンズを連続的に紡糸する紡糸装置と、
前記紡糸装置の下流側に設けられ、前記紡糸装置から連続的に供給される前記ロッドレンズを所定長に切断する切断装置とを備え、
前記切断装置が、
間欠的に作動して前記ロッドレンズを所定長に切断する切断機構と、
該切断機構の上流側に設けられ、前記紡糸装置から供給されるロッドレンズを前記切断機構に送り込むと共に、前記切断装置の作動中には前記送り込みを停止するニップローラとを備え、
前記ニップローラが、外周部に所定のトルクがかかると該外周部が中心軸に対して空転するフリクションタイプのニップローラであり、
前記ニップローラは、前記外周部が、前記切断装置へのロッドレンズ送り込み時に、前記ロッドレンズの送り込みの停止中に前記紡糸装置から供給されたロッドレンズの長さと次回の送り込み停止までの間に前記紡糸装置から供給されるロッドレンズの長さの和より長く回転するように回転駆動される、
ことを特徴とするロッドレンズ製造装置。
【請求項2】
前記ニップローラは、前記切断装置へのロッドレンズ送り込み時に、前記紡糸装置からロッドレンズの供給速度より高い周速度で前記切断装置にロッドレンズを送り込むように回転駆動される、
請求項1に記載のロッドレンズ製造装置。
【請求項3】
前記紡糸装置が、複数本のロッドレンズを連続的に紡糸する紡糸装置であり、
前記切断装置が、前記紡糸装置から連続的に供給される前記複数本のロッドレンズを所定長に切断する切断装置であり、
前記ニップローラの外周部が、前記複数のロッドレンズの各々に当接し互いに独立して空転可能な複数の当接部に長手方向に分割されている、
請求項1または2に記載のロッドレンズ製造装置。
【請求項4】
ロッドレンズを連続的に製造するロッドレンズ製造方法であって、
紡糸ノズルから溶融樹脂を連続的に押し出して糸状材を形成するステップと、
前記糸状体を連続的に搬送しながら硬化させロッドレンズとするステップと、
前記ロッドレンズを、該ロッドレンズを所定長に切断する切断装置に向けて連続的に搬送するステップと、
前記連続的に搬送されてきたロッドレンズを前記切断装置に断続的に送り込むステップと、
前記送り込まれたロッドレンズを前記切断装置で所定長に切断するステップと、を備え、
前記送り込みステップが、外周部に所定のトルクがかかると該外周部が中心軸に対して空転するフリクションタイプのニップローラによって行われ、前記送り込みステップでは、前記外周部が、前記送り込みの停止中に搬送されてきたロッドレンズの長さと次回の送り込み停止までの間に搬送されてくるロッドレンズの長さの和より長く回転駆動させられる、
ことを特徴とするロッドレンズ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−64965(P2011−64965A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215952(P2009−215952)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】