説明

ロボット制御装置

【課題】 内部電源モードと外部電源モードの何れにおいても、電源供給ラインを介して内部回路および外部回路に侵入するノイズを低減する。
【解決手段】 内部電源モードに設定する場合、ジャンパ回路29において短絡片31を2つ用いることにより、導電ピン29aと29bを接続し、導電ピン29cと29dを接続する。ジャンパ回路30も同様に接続する。このとき、内部電源電圧Vp(in)は、ノイズフィルタ28を通してI/O回路とシーケンサに供給される。一方、外部電源モードに設定する場合、ジャンパ回路29において短絡片31を1つ用いることにより、導電ピン29bと29cを接続する。ジャンパ回路30も同様に接続する。このとき、外部電源電圧Vp(out)は、ノイズフィルタ28を通してI/O回路26に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部電源で生成される電源電圧を内部回路および外部回路に供給する電源供給状態と、外部から与えられる電源電圧を内部回路に供給する電源供給状態とを切り替え可能に構成されたロボット制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ロボット制御装置は内部電源を備えており、内部回路例えばCPU基板やI/O基板に対して電源電圧を供給するようになっている。この内部電源は、ロボットを利用する各種設備とロボットを制御するロボット制御装置との間に介在する外部回路例えばシーケンサに対しても電源電圧を供給可能に構成されている(内部電源モード)。一方、外部電源を準備し、この外部電源から外部回路に電源を供給するとともに、ロボット制御装置の内部回路に対して電源を供給することも可能である(外部電源モード)。
【0003】
図3は、従来のロボット制御装置における電源供給切替回路を示している。図3(a)、(b)は、それぞれ上記内部電源モード、外部電源モードにおける接続状態を示している。内部電源からの電源供給ラインはノイズフィルタ1の入力端子に接続されており、ノイズフィルタ1の出力端子はジャンパ回路2(2a、2b)を介して内部回路と外部電源端子3(3a、3b)に接続されている。ここで、外部電源端子3(3a、3b)は、外部回路または外部電源が接続される端子である。ジャンパ回路2を短絡すると図3(a)に示す内部電源モードで動作し、ジャンパ回路2を開放すると図3(b)に示す外部電源モードで動作する。なお、この従来技術は、文献公知発明に係るものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のロボット制御装置では、外部電源モードにおいて外部電源からノイズフィルタ1を介することなく直接内部回路に電源電圧が供給されるので、外部電源の電源供給ラインに重畳したノイズがそのまま内部回路に侵入してしまう不都合が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、内部電源モードと外部電源モードの何れにおいても電源供給ラインを介して内部回路および外部回路に侵入するノイズを低減できるロボット制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した手段によれば、内部電源で生成される電源電圧を内部回路に供給するとともに外部電源端子を介して外部回路に供給する第1の電源供給状態(以下、内部電源モードと称す)において、内部電源で生成される電源電圧はノイズフィルタの入力端子に与えられ、ノイズフィルタの出力電圧は内部回路と外部電源端子に与えられる。一方、外部から外部電源端子を介して与えられる電源電圧を内部回路に供給する第2の電源供給状態(以下、外部電源モードと称す)において、外部から外部電源端子を介して与えられる電源電圧もノイズフィルタの入力端子に与えられ、ノイズフィルタの出力電圧は内部回路に与えられる。これらの電源供給ラインの切り替えは、切替手段を用いることにより自動でまたはマニュアル設定により行われる。
【0007】
本手段によれば、ノイズフィルタを通して内部回路あるいは外部回路に電源が供給されるので、内部電源あるいは外部電源からの電源供給ラインにノイズ(例えばコモンモードノイズ)が重畳していても、これらのノイズを低減した上で内部回路あるいは外部回路に電源供給できる。
【0008】
請求項2に記載した手段によれば、切替手段は、互いに絶縁された複数の導電ピンを備え、隣接する導電ピン同士が短絡可能に構成されたジャンパ手段により構成されている。このジャンパ手段において、電源供給ラインを構成する一対の各ラインについて、内部電源に接続された第1導電ピン、ノイズフィルタの入力端子に接続された第2導電ピン、外部電源端子に接続された第3導電ピンおよびノイズフィルタの出力端子に接続された第4導電ピンがこの順に隣接して配設されている。ノイズフィルタの出力端子は内部回路への電源供給ラインに接続されている。
【0009】
内部電源モードでは、各電源供給ラインについて、第1導電ピンと第2導電ピンとが接続されるとともに第3導電ピンと第4導電ピンとが接続される。一方、外部電源モードでは、第2導電ピンと第3導電ピンとが接続される。この接続形態により、上述したノイズフィルタを通した電源供給ラインが形成される。本手段によれば、ジャンパ手段を介在させるだけで、内部電源モードと外部電源モードの何れの場合でもノイズフィルタを介した電源供給が可能となるので、従来構成に対する部品点数の増加を極力抑えることができる。
【0010】
請求項3に記載した手段によれば、ジャンパ手段は、電源供給ラインを構成する一対の各ラインごとに分離された状態で設けられているので、異なる電源供給ラインに対し設けられた導電ピン同士を誤って短絡することがなく、切替手段を介した電源短絡を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図1および図2を参照しながら説明する。
図1は、ロボット制御装置の概略的な電気的構成を示している。ロボット11は、例えば複数の可動部を有しそれら可動部が関節結合された多関節型の産業用ロボットであり、各可動部(関節)を駆動するためのサーボモータ(図示せず)と、関節の現在の角度(位置)を検出するためのロータリエンコーダ(図示せず)とを備えている。
【0012】
ロボット制御装置12は、シーケンサ13(本発明でいう外部回路に相当)から与えられる動作指令信号に応じて、ロータリエンコーダの信号に基づいて関節の現在の角度を検出するとともに内部演算により関節の指令角度を演算し、これら検出角度と指令角度とに基づいて上記サーボモータを駆動制御するようになっている。シーケンサ13は、ロボット11を利用する設備に繋がっている。
【0013】
ロボット制御装置12は、電源基板14、演算基板15、I/O基板16、ドライバ17、3相200Vの電源線が接続される電源端子18、ロボット11との間でロータリエンコーダの信号およびモータ駆動信号を授受するための端子19、シーケンサ13との間で入出力信号等(例えば入力8点、出力8点)を授受するための端子20などを備えている。端子20のうち端子20a、20bは、本発明でいう外部電源端子に相当し、後述する内部電源モードにおいてロボット制御装置12からシーケンサ13への電源出力端子として機能し、外部電源モードにおいて外部電源21(図1において二点鎖線で示す)からロボット制御装置12への電源入力端子として機能するようになっている。
【0014】
電源基板14は、本発明でいう内部電源に相当し、端子14Aから入力した3相200Vの電源電圧を整流、変圧し安定化した複数の内部電源電圧例えば3.3V、5V、12V、24Vを端子14Bから演算基板15に出力するようになっている。ただし、図1においては、各基板間における24Vの内部電源電圧(以下、内部電源電圧Vp(in)と称す)の授受のみを明示的に示している。演算基板15は、CPU22、メモリ23(ROM、RAM、電気的に書き換え可能な不揮発メモリ)、サーボ制御回路24等が図示しないバスにより接続されて構成されており、端子15Aを通して与えられる上記内部電源電圧により動作するようになっている。また、この内部電源電圧は、端子15Bを介してI/O基板16の端子16Aに出力されている。
【0015】
ROMには、ロボット11を制御するシステムプログラムが格納されており、不揮発性メモリには、教示されるロボット11の動作プログラムおよび種々の設定データが格納されている。また、RAMは、CPU22が実行する各種演算処理におけるデータの一時記憶領域として使用される。演算基板15は、端子15Cを介して、I/O基板16との間でシーケンサ13からの動作指令信号および制御状態信号を入出力するようになっている。また、端子15Dを介して、ロボット11からロータリエンコーダの信号を入力するとともに、ドライバ17に対してモータ駆動信号を出力するようになっている。ドライバ17は、電源基板14から与えられる電源によりロボット11のサーボモータを駆動するようになっている。
【0016】
I/O基板16は、演算基板15とシーケンサ13との間に介在して信号のインターフェースを行うもので、フィルタ回路25、I/O回路26およびFPGA27から構成されている。このうちI/O回路26は、端子16Cを介してシーケンサ13との間でデジタル信号を入出力するもので、その信号はフォトカプラ(図示せず)により絶縁されてFPGA27および端子16Bを介して演算基板15との間で入出力されるようになっている。絶縁された回路のうちシーケンサ13側は24Vの内部電源電圧Vp(in)で動作し、FPGA27側は3.3V、5V等の内部電源電圧で動作するようになっている。
【0017】
フィルタ回路25は、コモンモードノイズ(必要に応じてノーマルモードノイズも)を除去するノイズフィルタ28と、プラス側電源供給ラインとマイナス側電源供給ラインのそれぞれに対して互いに距離を隔てて分離した状態に設けられたジャンパ回路29、30(本発明でいう切替手段、ジャンパ手段に相当)とを備えている。ノイズフィルタ28の出力端子は、I/O回路26(本発明でいう内部回路に相当)への内部電源電圧Vp(in)の電源供給ラインに接続されている。
【0018】
プラス側電源供給ラインに介在するジャンパ回路29は、図2に示すように、互いに絶縁された4つの導電ピン29a、29b、29c、29dが一定間隔を有して一列に並んでおり、隣接する導電ピン同士は短絡片31により短絡可能に構成されている。また、図1に示すように、導電ピン29aは、I/O基板16の端子16Aに接続されており、演算基板15を通して電源基板14に接続されている。導電ピン29b、29dは、それぞれノイズフィルタ28の入力端子、出力端子に接続されている。また、導電ピン29cは、I/O基板16の端子16Cを介して、上述したロボット制御装置12の端子20aに接続されている。マイナス側電源供給ラインに介在するジャンパ回路30も、ジャンパ回路29と同様の構成および接続形態となっている。
【0019】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ロボット制御装置12においては、電源基板14で生成された内部電源電圧が演算基板15、I/O基板16内のFPGA27およびドライバ17に供給されている。I/O基板16内のI/O回路26への電源供給については、2つの電源供給状態(電源モード)を選択可能になっている。これについて、フィルタ回路25内の電源供給ラインの接続状態を示す図2を参照しながら説明する。
【0020】
図2(a)は、内部電源モード(第1の電源供給状態に相当)に設定する場合の接続状態を示している。この場合、ジャンパ回路29において短絡片31を2つ用いることにより、導電ピン29aと29bを接続し、導電ピン29cと29dを接続する。同様に、ジャンパ回路30において短絡片31を2つ用いることにより、導電ピン30aと30bを接続し、導電ピン30cと30dを接続する。
【0021】
その結果、電源基板14で生成された24Vの内部電源電圧Vp(in)は、ノイズフィルタ28の入力端子に与えられ、ノイズフィルタ28の出力電圧は、I/O回路26と、端子20(20a、20b)を介してシーケンサ13に与えられる。つまり、内部電源モードでは、電源基板14で生成された内部電源電圧Vp(in)は、ノイズフィルタを通してI/O回路26とシーケンサ13とに供給される。
【0022】
図2(b)は、外部電源モード(第2の電源供給状態に相当)に設定する場合の接続状態を示している。この場合、ジャンパ回路29において短絡片31を1つ用いることにより、導電ピン29bと29cを接続する。同様に、ジャンパ回路30において短絡片31を1つ用いることにより、導電ピン30bと30cを接続する。そして、ロボット制御装置12の外部に外部電源21を準備し、その電源出力端子を端子20(20a、20b)に接続する。このとき、外部電源21からシーケンサ13にも電源を供給する。
【0023】
その結果、端子20に与えられる24Vの外部電源電圧Vp(out)は、ノイズフィルタ28の入力端子に与えられ、ノイズフィルタ28の出力電圧はI/O回路26に与えられる。つまり、外部電源モードでは、電源基板14で生成された内部電源電圧Vp(in)はI/O回路26に供給されず、代わりに外部電源電圧Vp(out)がノイズフィルタを通してI/O回路26に供給される。
【0024】
このように、本実施形態のロボット制御装置12は、I/O基板16内のプラス側電源供給ライン、マイナス側電源供給ラインのそれぞれにジャンパ回路29、30を備え、I/O回路26に対して電源基板14(内部電源モード)または外部電源21(外部電源モード)から電源を供給することができるので電源供給の自由度が向上する。この場合、ジャンパ回路29、30において、導電ピン29a〜29d、30a〜30dをそれぞれ上述した通りの並びとし、所定の導電ピン同士を短絡片31により短絡することにより、容易に電源モードを設定することができる。
【0025】
そして、内部電源モードでは、I/O回路26とシーケンサ13とにノイズフィルタ28を通して24Vの内部電源電圧Vp(in)が供給され、外部電源モードでは、I/O回路26にノイズフィルタ28を通して24Vの外部電源電圧Vp(out)が供給される。従って、内部電源電圧Vp(in)の電源供給ラインあるいは外部電源電圧Vp(out)の電源供給ラインにコモンモードノイズやノーマルモードノイズが重畳しても、そのノイズを除去(または低減)した上でI/O回路26あるいはシーケンサ13に電源を供給することができる。
【0026】
また、上述した通りの導電ピン29a〜29d、30a〜30dの並びとすることにより、従来構成と比べても部品点数の増加を極力抑えることができる。実際に、従来構成を示す図3と比較しても、ジャンパ回路の個数は2個のままであり、導電ピンの数が2本から4本に増加するだけである。さらに、電源モードにかかわらず、常にノイズフィルタ28の一端側(入力端子側)から他端側(出力端子側)に電力が送られるので、方向性を持つノイズフィルタ28を用いることができる。
【0027】
ジャンパ回路29、30は、プラス側電源供給ラインとマイナス側電源供給ラインのそれぞれに対して互いに分離した状態で設けられているので、異なる電源供給ラインに対して設けられた導電ピン(例えば29dと30a)を誤って短絡することがなく、誤設定等による電源短絡を未然に防止することができる。
【0028】
なお、本発明は上記し且つ図面に示す実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように変形または拡張が可能である。
切替手段は、ジャンパ回路29、30に限られず、リレー等の接点回路、スイッチ回路、短絡コネクタ、半導体スイッチ回路等であってもよい。
上述の実施形態では直流の電源供給ラインに切替手段を設けたが、例えば単相、二相、三相などの交流の電源供給ラインに切替手段を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態を示すロボット制御装置の概略的な電気的構成図
【図2】(a)は内部電源モードを選択する場合の切替回路の接続状態を示し、(b)は外部電源モードを選択する場合の切替回路の接続状態を示す図
【図3】従来構成における図2相当図
【符号の説明】
【0030】
図面中、12はロボット制御装置、13はシーケンサ(外部回路)、14は電源基板(内部電源)、20a、20bは端子(外部電源端子)、25はフィルタ回路、26はI/O回路(内部回路)、28はノイズフィルタ、29、30はジャンパ回路(切替手段、ジャンパ手段)、29a〜29d、30a〜30dは導電ピンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電源と、外部との間で電源電圧の授受を行う外部電源端子とを備え、前記内部電源で生成される電源電圧を内部回路に供給するとともに前記外部電源端子を介して外部回路に供給する第1の電源供給状態と、外部から前記外部電源端子を介して与えられる電源電圧を前記内部回路に供給する第2の電源供給状態とを切り替え可能に構成されたロボット制御装置において、
ノイズフィルタと切替手段とを備え、
前記切替手段は、前記第1の電源供給状態において、前記内部電源で生成される電源電圧を前記ノイズフィルタの入力端子に与えるとともに、前記ノイズフィルタの出力電圧を前記内部回路と前記外部電源端子に与えるように切り替えられ、前記第2の電源供給状態において、外部から前記外部電源端子を介して与えられる電源電圧を前記ノイズフィルタの入力端子に与えるとともに、前記ノイズフィルタの出力電圧を前記内部回路に与えるように切り替えられることを特徴とするロボット制御装置。
【請求項2】
前記ノイズフィルタの出力端子は前記内部回路への電源供給ラインに接続され、
前記切替手段は、互いに絶縁された複数の導電ピンを備え、隣接する導電ピン同士が短絡可能に構成されたジャンパ手段により構成され、
このジャンパ手段において、電源供給ラインを構成する一対の各ラインについて、前記内部電源に接続された導電ピン、前記ノイズフィルタの入力端子に接続された導電ピン、前記外部電源端子に接続された導電ピンおよび前記ノイズフィルタの出力端子に接続された導電ピンがこの順に隣接して配設されていることを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記ジャンパ手段は、前記電源供給ラインを構成する一対の各ラインごとに分離された状態で設けられていることを特徴とする請求項2記載のロボット制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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