説明

ロータの歪計測装置、及び線材取付具

【課題】ロータに取り付けられる歪計測装置の信号線を磁気シールドしつつも、この信号線の施工性を高める。
【解決手段】信号線31をロータ1に固定する線材取付具40aは、信号線の長手方向Lの一部に対向する線材押え付け部42と、線材押え付け部42の外周縁であって信号線の径方向Dの両外周縁に形成され、ロータに接合される接合部43と、が形成されているステンレス体41を有している。この線材取付具40aは、さらに、ステンレス体のロータに対向する側の面であって、線材押え付け部42の面と接合部43の少なくとも一部の面に設けられていると共に、信号線の長手方向Lにおける線材押え付け部42の一方の側から、長手方向Lにはみ出している銅箔45と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機のロータの歪を計測するロータの歪計測装置、及びこの装置に接続されている信号線の線材取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
部材の歪を計測する際には、一般的に、印加された電圧に対して、部材の歪量に応じた電圧を出力する歪計が用いられる。このような歪計を用いて、歪を計測する場合、歪の計測環境によっては、歪計からの出力信号が通る信号線に外部からのノイズが乗ることがある。
【0003】
そこで、以下の特許文献1には、歪計からの出力信号が通る導線と、導線の外周を被覆する絶縁層と、この絶縁層の外周に巻き付けられている銅箔と、銅箔の外周を覆う絶縁層と、を備えている信号線が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−148907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されている技術では、導線に銅箔が巻き付けられているため、この銅箔が電磁シールドとして機能し、導線に外部からのノイズが乗ることを防ぐことができる。しかしながら、特許文献1に記載されている技術を用いて、高速で回転する回転機のロータの歪を計測する場合、導線に銅箔を巻き付ける手間の他、この導線及び銅箔を含む信号線をしっかりとロータに固定する手間、さらに、信号線中の銅箔とロータとをアース接続する手間等が必要になる。
【0006】
すなわち、特許文献1に記載されている技術では、信号線の施工性があまりよくない、という問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は、回転機のロータの歪を計測するために必要な信号線を磁気シールドしつつも、この信号線の施工性を高めることができるロータの歪計測装置、及び線材取付具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するための発明に係るロータの歪計測装置は、
ロータの表面に固定され、印加された電圧に対して、該ロータの歪量に応じた電圧を出力する歪計と、前記ロータ中で、該ロータの長手方向で、前記歪計が固定されている位置と異なる位置に取り付けられ、該歪計から出力された電圧の値を外部へ無線送信する送信機と、前記送信機と共に前記ロータに取り付けられ、該送信機に電力を供給すると共に、前記歪計に電圧を印加する電源回路と、前記電源回路から前記歪計に電圧を印加するために両者を電気的に接続する電源線と、前記歪計から出力された電圧の値を前記送信機に送るために両者を電気的に接続する信号線と、前記歪計を前記ロータに固定する歪計取付具と、前記電源線及び前記信号線の束の長手方向の一部を前記ロータに固定する複数の線材取付具と、を備え、
複数の前記線材取付具は、いずれも、前記電源線及び前記信号線で構成される線材の束の長手方向の一部に対向する線材押え付け部と、該線材押え付け部の外周縁であって該線材の径方向の両外周縁に形成され、前記ロータに接合される接合部と、が形成されているステンレス体を有し、複数の前記線材取付具のうち、少なくとも一の線材取付具は、前記ステンレス体と、該ステンレス体の前記ロータに対向する側の面であって、前記線押え付け部の面と前記接合部の少なくとも一部の面に設けられている銅箔と、を有している、ことを特徴とする。
【0009】
当該歪計測装置では、銅箔を有している線材取付具で、信号線をロータに固定すると、線材押え付け部に設けられている銅箔で信号線が覆われ、しかも、接合部に設けられている銅箔がロータに接することになるので、信号線を電磁シールドすることができる。さらに、当該歪計測装置では、線材取付具で信号線をロータに固定する作業のみで、信号線を銅箔で覆うと共に、この銅箔をロータに接触させることができるので、信号線を銅箔で覆う手間や銅箔をロータに接触させる手間を省くことができる。
【0010】
ここで、前記ロータの歪計測装置において、前記銅箔は、前記線材の前記長手方向における前記線押え付け部の一方の側から、該長手方向にはみ出していてもよい。
【0011】
当該歪計測装置では、線材取付具をロータに固定する際、隣り合っている線材取付具のステンレス体相互を接触させなくても、ステンレス体相互間の線材をはみ出し部で磁気シールドすることができる。このため、当該歪計測装置によれば、線材取付具のステンレス体の相互を接触させる必要がなく、線材取付具の固定に関する施工性を高めることができる。
【0012】
また、前記ロータの歪計測装置において、前記電源線及び前記信号線は、前記ロータの表面に沿い且つ該ロータの周方向に並んで、前記線材取付具で、該ロータに固定されていてもよい。
【0013】
当該歪計測装置では、複数の線材がロータの表面に沿い且つロータの周方向に並んだ状態でロータに固定されるので、複数の線材がロータの径方向に重なった状態でロータに固定される場合と比べて、線材にかかる遠心力を小さくすることができる。このため、当該歪計測装置によれば、線材をより長期間に亘って、しっかりとロータに固定することができる。
【0014】
また、前記ロータの歪計測装置において、前記ロータの表面と前記線材取付具との間であって、前記信号線及び前記電源線を除く部分には、接着剤が充填されており、該信号線及び該電源線は、該接着剤によっても該ロータに固定されていてもよい。
【0015】
当該歪計測装置では、線材をより長期間に亘って、しっかりとロータに固定することができる。
【0016】
また、前記ロータの歪計測装置において、前記歪計取付具は、前記歪計と対向し、該歪計を前記ロータの表面に押え付ける歪計押え付け部と、該歪計押え付け部の外周縁に形成され、該ロータに接合される接合部と、が形成されているステンレス体と、該ステンレス体の該ロータに対向する面であって、該歪計押え付け部の面と該接合部の少なくとも一部の面に設けられている銅箔と、を有していてもよい。
【0017】
当該歪計測装置では、銅箔を有している歪計取付具で、歪計をロータに固定すると、歪計押え付け部に設けられている銅箔で歪計が覆われて、しかも、接合部に設けられている銅箔によりロータに接することになるので、歪計を電磁シールドすることができる。さらに、当該歪計測装置では、歪計取付具で歪計をロータに固定する作業のみで、歪計を銅箔で覆うと共に、この銅箔をロータに接触させることができるので、歪計を銅箔で覆う手間や銅箔をロータに接触させる手間を省くことができる。
【0018】
また、前記ロータの歪計測装置において、前記ロータの表面と前記歪計取付具との間であって、前記歪計を除く部分には、接着剤が充填されており、該歪計は、該接着剤によっても該ロータに固定されていてもよい。
【0019】
当該歪計測装置では、歪計をより長期間に亘って、しっかりとロータに固定することができる。
【0020】
また、上記問題点を解決するための発明に係る線材取付具は、
回転機のロータに取り付けられた歪計からの出力信号を通す信号線を、該ロータに固定する線材取付具において、
前記信号線の長手方向の一部に対向する線材押え付け部と、該線材押え付け部の外周縁であって該信号線の径方向の両外周縁に形成され、前記ロータに接合される接合部と、が形成されているステンレス体と、前記ステンレス体の前記ロータに対向する側の面であって、前記線材押え付け部の面と前記接合部の少なくとも一部の面に設けられていると共に、前記信号線の前記長手方向における該線材押え付け部の一方の側から、該長手方向にはみ出している銅箔と、を有している、ことを特徴とする。
【0021】
当該線材取付具では、これで信号線をロータに固定すると、線材押え付け部に設けられている銅箔で信号線が覆われて、しかも、接合部に設けられている銅箔がロータに接することになるので、信号線を電磁シールドすることができる。さらに、当該線材取付具では、これで信号線をロータに固定する作業のみで、信号線を銅箔で覆うと共に、この銅箔をロータに接触させることができるので、信号線を銅箔で覆う手間や銅箔をロータに接触させる手間を省くことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、銅箔を有している線材取付具で信号線をロータに固定すると、線材押え付け部に設けられている銅箔で信号線が覆われ、しかも、接合部に設けられている銅箔がロータに接することになるので、信号線を電磁シールドすることができる。さらに、本発明では、線材取付具で信号線をロータに固定する作業のみで、信号線を銅箔で覆うと共に、この銅箔をロータに接触させることができるので、信号線を銅箔で覆う手間や銅箔をロータに接触させる手間を省くことができる。
【0023】
よって、本発明によれば、信号線を磁気シールドしつつも、この信号線の施工性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る一実施形態における歪計測装置の回路図である。
【図2】本発明に係る一実施形態における各取付具の取付状態を示す説明図である。
【図3】図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】図2におけるIV−IV線断面図である。
【図5】本発明に係る一実施形態の変形例における線材取付具及び線材の断面図である。
【図6】本発明に係る一実施形態における取付治具の展開斜視図である。
【図7】本発明に係る一実施形態における蒸気タービン設備の要部切欠側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るロータの歪計測装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0026】
まず、本実施形態の歪計測装置が設けられる設備について、図7を用いて説明する。
【0027】
本実施形態において、歪計測装置が設けられる設備は、蒸気タービン設備である。
【0028】
この蒸気タービン設備は、蒸気タービンTと、蒸気タービンTの駆動により発電する発電機Gと、クラッチ装置Cと、を備えている。
【0029】
蒸気タービンTは、タービンロータ1tと、このタービンロータ1tを覆うタービンケーシング3tとを備えている。発電機Gは、発電機本体G1とスリップリング装置G2とを備えている。発電機本体G1は、ロータ1g及びステータ(不図示)を備えている。クラッチ装置Cは、発電機ロータ1gとカップリング2を介して接続されている出力ロータ1cと、この出力ロータ1cとタービンロータ1tとの接続及び切断を行うクラッチ機構2cと、タービンロータ1tの端部を回転可能に支持するタービンロータ軸受け3cと、出力ロータ1cを回転可能に支持する出力ロータ軸受け4cと、を備えている。
【0030】
発電機ロータ1gは、スリップリング装置G2を貫通し、そこで、クラッチ装置Cの出力ロータ1cとカップリング2により接続されている。
【0031】
蒸気タービンTのタービンロータ1t、クラッチ装置Cの出力ロータ1c、発電機Gの発電機ロータ1gは、それぞれの回転軸が同一直線上になるように、クラッチ機構2cやカップリング2等を介して、接続され、蒸気タービン設備のロータ1を形成している。
【0032】
本実施形態において、この蒸気タービン設備のロータ1中、最も径の小さい部分は、発電機ロータ1gのスリップリング装置G2内の部分1gaである。このため、蒸気タービン設備のロータ1中で、この発電機ロータ1gのスリップリング装置G2内の部分1gaに最も大きな捩れ応力が作用する。そこで、本実施形態では、スリップリング装置G2内の発電機ロータ1gの部分1gaの歪を歪計測装置で計測する。但し、このスリップリング装置G2は、スリップリングを有している関係で、スリップリングケーシング内には、スパークが発生し易く、このスパークが、歪計測装置にとって電磁ノイズとなる。
【0033】
本実施形態の歪計測装置は、図1に示すように、歪計10と、歪計10による計測結果を外部に送信するテレメータ20と、テレメータ20と歪計10とを電気的に接続する信号線31及び電源線35と、信号線31及び電源線35をロータ1に固定する複数の線材取付具40a,40bと、歪計10をロータ1に固定する歪計取付具50と、を備えている。
【0034】
歪計10は、図7を用いて前述したように、蒸気タービン設備のロータ1中で、スリップリング装置G2内の発電機ロータ1gの部分1gaに固定されている。また、テレメータ20は、蒸気タービン設備のロータ1中で、クラッチケーシング内の出力ロータ1cの部分に固定されている。信号線31及び電源線35は、蒸気タービン設備のロータ1の表面であって、歪計10とテレメータ20との間に敷設されている。
【0035】
歪計10は、図1に示すように、4個の歪ゲージ11a〜11dでホーイストンブリッジ回路を構成しているものである。4個の歪ゲージ11a〜11dの相互の接続点のうち、互いに向かい合う一対の接続点に、外部からの電圧が印加され、残りの一対の接続点間の電圧が出力電圧として出力される。この出力電圧の値、すなわち、残りの一対の接続点の電位差が、計測対象の歪を示す値である。
【0036】
テレメータ20は、歪計10で計測され歪量、つまり、歪計10から出力電圧の値(電圧信号)を外部に無線送信する送信部(送信機)21と、歪計10から出力電圧の値(電圧信号)を送信部21に送るインタフェース22と、送信部21、インタフェース22及び歪計10に電力を供給する電源回路23と、を有している。
【0037】
テレメータ20のインタフェース22と歪計10とは、2本の信号線31で接続されている。また、テレメータ20の電源回路23と歪計10とは、2本の電源線35で接続されている。2本の信号線31は、それぞれ、歪計10の電圧出力用の2つの接続点12a,12bに接続され、2本の電源線35は、それぞれ、歪計10の電圧印加用の2つの接続点12c,12dに接続されている。
【0038】
線材取付具40a,40bは、電磁シールド型の線材取付具40aと、非電磁シールド型の線材取付具40bとがある。電磁シールド型の線材取付具40aは、図2及び図3に示すように、2本の電源線35及び2本の信号線31の束の長手方向(線材が伸びている方向)Lの一部に対向する線材押え付け部42と、この線材押え付け部42の外周縁であって線材の径方向Dの両外周縁に形成され、ロータ1に接合される接合部43,43と、を含むステンレス体41を有している。
【0039】
さらに、この電磁シールド型の線材取付具40aは、ステンレス体41のロータ1に対向する側の面に設けられている銅箔45を有している。この銅箔45は、線材押え付け部42のロータ1に対向する側の面に設けられている電磁シールド部46と、線材の長手方向Lにおける線材押え付け部42の一方の側からこの長手方向Lに向かってはみ出し、電磁シールド部46とつながっているはみ出し部47と、接合部43のロータ1に対応する側の面の一部に設けられ、電磁シールド部46とつながっているアース部48と、を有している。
【0040】
非電磁シールド型の線材取付具40bは、電磁シールド型の線材取付具40aを構成する銅箔45を有していない点を除いて、この電磁シールド型の線材取付具40aと同様である。
【0041】
歪計取付具50は、歪計10及びこの歪計10から伸びる線材31,32の端部と対向し、歪計10及び線材31,32の端部をロータ1の表面に押え付ける歪計押え付け部52と、歪計押え付け部52の外周縁に形成され、ロータ1に接合される接合部53と、を含むステンレス体51を有している。
【0042】
さらに、この歪計取付具50は、ステンレス体41のロータ1に対向する面に設けられている銅箔55を有している。この銅箔55は、歪計押え付け部52のロータ1に対向する面に設けられている電磁シールド部56と、接合部53のロータ1に対向する面の一部に設けられ、電磁シールド部56とつながっているアース部58と、を有している。
【0043】
線材取付具40a及び歪計取付具50の銅箔45,55は、いずれも、ステンレス体41,55に、例えば、ハンダ等で接合されている。
【0044】
信号線31及び電源線35は、いずれも、導線32,36と、この導線32,36の外周を覆う絶縁性樹脂で形成されているシース33,37と、を有している。
【0045】
次に、以上で説明した歪計計測装置の取付手順について説明する。
【0046】
まず、蒸気タービン設備のロータ1中で、クラッチケーシング内の出力ロータ11cの部分に、取付治具を用いて、テレメータ20を固定する。
【0047】
この取付治具60は、図6に示すように、一対の半円弧状のブラケット61と、一対のブラケット61を連結する連結具63と、を有している。各ブラケット61の内径は、これを取り付けるロータ1cの外径とほぼ一致している。各ブラケット61には、各ブラケット61の円弧の仮想軸と平行な方向に貫通した複数の貫通孔62が形成されている。この取付治具60は、ロータ1cを抱き込むように、一対のブラケット61でロータ1cを挟み込んだ後、一対のブラケット61相互を連結具63で連結することで、ロータ1cに固定される。
【0048】
テレメータ20は、この取付治具60の複数の貫通孔62のうち、いずれかの貫通孔62に挿入されて、例えば、接着剤等で貫通孔62内に固定される。また、複数の貫通孔62のうち、他の貫通孔62には、ロータ1cの回転バランスを取るために、バランスウェイトが挿入される。
【0049】
次に、蒸気タービン設備のロータ1中で、スリップリング装置G2内の発電機ロータ11gの部分1gaに、図4に示すように、シリコン系接着剤59を用いて、歪計10を固定する。
【0050】
次に、2本の信号線31の一方の端部及び2本の電源線35の一方の端部を歪計10に接続すると共に、2本の信号線31の他方の端部をテレメータ20のインタフェース22に接続し、さらに、2本の電源線35の他方の端部をテレメータ20の電源回路23に接続する。
【0051】
次に、図2〜図4に示すように、2本の信号線31及び2本の電源線35が、ロータ1の表面に沿い且つロータ1の周方向Sに並ぶ状態にして、2本の信号線31及び2本の電源線35をシリコン系接着剤59でロータ1表面に固定すると共に、このシリコン系接着剤59を歪計10の外周部にも塗布する。
【0052】
最後に、複数の線材取付具40a,40b及び歪計取付具50をロータ1に固定する。
【0053】
線材取付具40a,40bをロータ1に固定する際には、図2及び図3に示すように、各線材取付具40a,40bの線材押え付け部42を線材31,35に対向させると共に、この線材押え付け部42を基準にして、ロータ1の周方向S側に接合部43,43が位置するよう、線材取付具40a,40bを向ける。そして、線材取付具40a,40bの接合部43,43とロータ1とをスポット溶接して、この線材取付具40a,40bをロータ1に固定する。この際のスポット溶接部49の相互間隔は、例えば、5mm以下である。この結果、線材31,35は、線材取付具40a,40bの線材押え付け部42とロータ1表面との間に挟まれて、ロータ1にしっかりと固定される。
【0054】
線材取付具40a,40bのうち、非電磁シールド型の複数の線材取付具40bは、ロータ1中であって、線材に対する電磁ノイズが実質的に存在しない部分、具体的には、テレメータ20と歪計10との間であって、スリップリング装置G2外の部分に固定される。
【0055】
非電磁シールド型の複数の線材取付具40bは、線材の長手方向Lにおいて、相互に接触していてもよいし、相互に離れていてもよい。但し、複数の線材取付具40b相互を離す場合、隣り合う線材取付具40bの間隔は、ロータ1の回転で、この間の線材31,35に遠心力が作用しても、この間の線材31,35がロータ1から離れない間隔である必要がある。なお、ロータ1表面に存在する1gの物体に作用する遠心力は、ロータ半径やロータ1の回転速度によって異なるが、例えば、6kgw以上で、極めて大きな力である。
【0056】
線材取付具40a,40bのうち、電磁シールド型の複数の線材取付具40aは、ロータ1中であって、線材31,35に対する電磁ノイズが存在する部分、具体的には、テレメータ20と歪計10との間であって、スリップリング装置G2内の部分に固定される。
【0057】
この電磁シールド型の複数の線材取付具40aは、線材31,35の長手方向Lにおいて、隣り合う線材取付具40aのうち、一方の線材取付具40aの銅箔45のはみ出し部47と、他方の線材取付具40aの銅箔45の磁気シールド部とが、重なり合うよう、ロータ1に固定される。
【0058】
この電磁シールド型の線材取付具40aをロータ1に固定する際には、前述したように、この線材取付具40aの接合部43とロータ1とをスポット溶接する。このスポット溶接では、接合部43中、銅箔45のアース部48が設けられている部分もスポット溶接する。このように、接合部43中、銅箔45のアース部48が設けられている部分をスポット溶接部49にすることで、銅箔45のアース部48を確実にロータ1に接触させることができる。つまり、銅箔45を確実に接地させることができる。
【0059】
歪計取付具50をロータ1に固定する際には、歪計押え付け部52を歪計10に対向させ、接合部53とロータ1とをスポット溶接して、この歪計取付具50をロータ1に固定する。この際のスポット溶接部49の相互間隔も、例えば、5mm以下である。この結果、歪計10は、歪計取付具50の歪計押え付け部52とロータ1の表面との間に挟まれて、ロータ1にしっかりと固定される。このスポット溶接では、電磁シールド型の線材取付具40aの固定の際と同様、接合部53中、銅箔55のアース部58が設けられている部分もスポット溶接する。
【0060】
以上で、歪計計測装置の取付が完了する。
【0061】
以上のように、本実施形態では、歪計測装置に対する電磁ノイズが存在する位置に存在することになる線材31,35及び歪計10を、取付具40a,50に設けられている銅箔45,55で覆って磁気シールドしているので、これらに対する磁気ノイズの影響を回避することができる。
【0062】
また、本実施形態の電磁シールド型の線材取付具40aには、ステンレス体41に予め銅箔45は設けられているため、信号線31等の線材に銅箔45を巻き付けなくても、この線材取付具40aで線材をロータ1に固定する作業で、線材を銅箔45で覆うことができる。しかも、銅箔45は、接合部43にも設けられているため、この線材取付具40aで線材を固定する作業で、銅箔45をロータ1に接触させることができる、つまり、この銅箔45を接地させることができる。よって、本実施形態では、信号線31に銅箔45を巻き付ける手間や、銅箔45とロータ1とを接地させる手間を省くことができ、線材の施工性を向上させることができる。
【0063】
また、この線材取付具40aは、銅箔45で磁気シールドを行う一方で、ステンレス体41で線材をロータ1に固定しているので、単に銅材のみで形成された線材取付具よりも、長期間に亘って線材をロータ1にしっかりと固定することができる。銅は、延性材料であるため、前述したように、極めての大きな遠心力が作用するところで利用すると、比較的簡単に延びてしまう。このため、銅材のみで形成された線材取付具は、自身及び固定する線材に大きな遠心力が作用すると、比較的簡単に延びてしまい、長期間に亘って線材をロータ1にしっかりと固定することができない。一方、ステンレスは、銅に比べて遥かに延性が低いため、ステンレスを有して形成された線材取付具40aは、自身及び固定する線材に大きな遠心力が作用しても、ほとんど延びず、前述したように、長期間に亘って線材をロータ1にしっかりと固定することができる。
【0064】
また、この線材取付具40aの銅箔45は、はみ出し部47を有しているため、この線材取付具40aをロータ1に固定する際、隣り合っている線材取付具40aのステンレス体41相互を接触させなくても、ステンレス体41相互間の線材31,35をはみ出し部47で磁気シールドすることができる。よって、ステンレス体41の相互を接触させる必要がなく、線材取付具40aの固定に関する施工性を高めることができる。例えば、ロータ1中で、カップリング2(図7)の箇所等、ロータ径が急激に変化して角が存在する箇所に線材31,35を敷設し、この箇所の線材31,35を線材取付具40aで磁気シールドする場合には、線材取付具40aのステンレス体41相互を接触させることが困難なことがある。このような場合でも、本実施形態では、前述したように、ステンレス体41相互を接触させなくても線材を磁気シールドすることができるので、線材取付具40aを簡単にロータ1に固定することができる。
【0065】
また、本実施形態では、図3に示すように、2本の信号線31及び2本の電源線35の合計4本の線材を、ロータ1の表面に沿い且つロータ1の周方向Sに並べた状態で固定しているので、図5に示すように、4本の線材31,35をロータ1の径方向Drに重ねた状態で固定する場合よりも、線材31,35に作用する遠心力を僅かであるものの小さくすることができる。但し、本発明は、複数の線材をロータ1の径方向Drに重ねた状態で固定することを否定するものではない。
【0066】
なお、以上の実施形態では、線材取付具40a,40bとして、電磁シールド型の線材取付具40aと非電磁シールド型の線材取付具40bとを用いているが、全ての線材取付具が電磁シールド型の線材取付具40aであってもよい。
【0067】
また、以上の実施形態における電磁シールド型の線材取付具40aの銅箔45は、はみ出し部47を有しているが、このはみ出し部47は、前述したように、線材取付具40aの固定に関する施工性を高めるためのものであるから、施工性をあまり考慮しない場合には、このはみ出し部47を設けなくてもよい。
【0068】
また、以上の実施形態では、テレメータ、歪計、線材の順で、これらをロータに取り付けているが、これらは、如何なる順で取り付けてもよい。
【0069】
また、以上の実施形態は、蒸気タービン設備のロータ1に歪計測装置を取り付けた例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、ガスタービン設備のロータ等、他の回転機のロータに歪計測装置を取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1:(蒸気タービン設備の)ロータ、1c:出力ロータ、1g:発電機ロータ、1t:タービンロータ、10:歪計、11a〜11d:歪ゲージ、20:テレメータ、21:送信部(送信機)、22:インタフェース、23:電源回路、31:信号線、35:電源線、40a,40b:線材取付具、41:ステンレス体、42:線材押え付け部、43:接合部、45:銅箔、46:電磁シールド部、47:はみ出し部、48:アース部、49:スポット溶接部、50:歪計取付具、51:ステンレス体、52:歪計押え付け部、53:接合部、55:銅箔、56:電磁シールド部、58:アース部、59:接着剤、60:取付治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機のロータの歪を計測するロータの歪計測装置において、
前記ロータの表面に固定され、印加された電圧に対して、該ロータの歪量に応じた電圧を出力する歪計と、
前記ロータ中で、該ロータの長手方向で、前記歪計が固定されている位置と異なる位置に取り付けられ、該歪計から出力された電圧の値を外部へ無線送信する送信機と、
前記送信機と共に前記ロータに取り付けられ、該送信機に電力を供給すると共に、前記歪計に電圧を印加する電源回路と、
前記電源回路から前記歪計に電圧を印加するために両者を電気的に接続する電源線と、
前記歪計から出力された電圧の値を前記送信機に送るために両者を電気的に接続する信号線と、
前記歪計を前記ロータに固定する歪計取付具と、
前記電源線及び前記信号線の束の長手方向の一部を前記ロータに固定する複数の線材取付具と、
を備え、
複数の前記線材取付具は、いずれも、前記電源線及び前記信号線で構成される線材の束の長手方向の一部に対向する線材押え付け部と、該線材押え付け部の外周縁であって該線材の径方向の両外周縁に形成され、前記ロータに接合される接合部と、が形成されているステンレス体を有し、
複数の前記線材取付具のうち、少なくとも一の線材取付具は、前記ステンレス体と、該ステンレス体の前記ロータに対向する側の面であって、前記線押え付け部の面と前記接合部の少なくとも一部の面に設けられている銅箔と、を有している、
ことを特徴とするロータの歪計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロータの歪計測装置において、
前記銅箔は、前記線材の前記長手方向における前記線押え付け部の一方の側から、該長手方向にはみ出している、
ことを特徴とするロータの歪計測装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のロータの歪計測装置において、
前記電源線及び前記信号線は、前記ロータの表面に沿い且つ該ロータの周方向に並んで、前記線材取付具で、該ロータに固定されている、
ことを特徴とするロータの歪計測装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のロータの歪計測装置において、
前記ロータの表面と前記線材取付具との間であって、前記信号線及び前記電源線を除く部分には、接着剤が充填されており、該信号線及び該電源線は、該接着剤によっても該ロータに固定されている、
ことを特徴とするロータの歪計測装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のロータの歪計測装置において、
前記歪計取付具は、前記歪計と対向し、該歪計を前記ロータの表面に押え付ける歪計押え付け部と、該歪計押え付け部の外周縁に形成され、該ロータに接合される接合部と、が形成されているステンレス体と、該ステンレス体の該ロータに対向する面であって、該歪計押え付け部の面と該接合部の少なくとも一部の面に設けられている銅箔と、を有している、
ことを特徴とするロータの歪計測装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のロータの歪計測装置において、
前記ロータの表面と前記歪計取付具との間であって、前記歪計を除く部分には、接着剤が充填されており、該歪計は、該接着剤によっても該ロータに固定されている、
ことを特徴とするロータの歪計測装置。
【請求項7】
回転機のロータに取り付けられた歪計からの出力信号を通す信号線を、該ロータに固定する線材取付具において、
前記信号線の長手方向の一部に対向する線材押え付け部と、該線材押え付け部の外周縁であって該信号線の径方向の両外周縁に形成され、前記ロータに接合される接合部と、が形成されているステンレス体と、
前記ステンレス体の前記ロータに対向する側の面であって、前記線材押え付け部の面と前記接合部の少なくとも一部の面に設けられていると共に、前記信号線の前記長手方向における該線材押え付け部の一方の側から、該長手方向にはみ出している銅箔と、を有している、
ことを特徴とする線材取付具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−103006(P2012−103006A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248825(P2010−248825)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】