説明

ロータディスクの翼溝部の探傷装置

【課題】超音波探傷プローブを所定位置に固定可能で、且つ探傷作業を効率良く実施可能なタービンロータの翼溝部の探傷装置を提供する。
【解決手段】探傷装置10は、超音波探傷プローブ12と、超音波探傷プローブ12を保持する固定台17と、固定台17を上下方向へ移動させる移動台13と、固定台17及び移動台13を支持する支持台11と、を備えている。固定台17は、超音波探傷プローブ12を固定する保持体18と、保持体18を回動させるボールベアリング20と、ボールベアリング20を外周側から保持する固定部19と、から構成されている。保持体18には、貫通孔18aが形成されており、当該貫通孔18aの大きさは、超音波探傷プローブ12の外形寸法よりもやや大きくなるように形成されている。この貫通孔18aの内周面に沿って弾性体21が接着剤等で接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンのタービンブレードの翼根部を収納するロータディスクの翼溝部に生じる応力腐食割れを、超音波探傷プローブを用いて検出するロータディスクの翼溝部の探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントにおける高・中圧蒸気タービンのロータは、高い温度条件で運転されるために、長期間使用されると、応力を受ける部位に応力腐食割れが発生することがある。この応力は、タービンブレードの翼根部が嵌合されているロータディスクの翼溝部の肩部に作用するため、当該肩部はタービンロータの余寿命を評価する上で重要な部位である。しかしながら、この翼溝部には翼根部が嵌合されているために、表面から見えない。そこで、従来から超音波を利用した応力腐食割れの非破壊検出方法が採用されてきた。例えば、特許文献1には、図8に示すように、ロータディスクの翼溝部を超音波により探傷する探傷装置が開示されている。この探傷装置は、超音波探傷プローブ12と、超音波探傷プローブ12をロータディスクの半径方向へ移動させる移動台13と、移動台13を支持する支持台11と、を備えている。ロータディスクの翼溝部を検査する場合には、探傷装置の支持台11をロータディスクの側面に密着するように配置し、超音波探傷プローブ12が支持台11から脱落しないように超音波探傷プローブ12を手で押さえながら、支持台11をロータディスクに沿って走査させることによって応力腐食割れを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−186446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の探傷装置では、超音波探傷プローブを手で押さえながら作業を行わなければならないため、作業効率が悪くて探傷作業に長時間を要するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は係る従来技術の問題点に鑑み、超音波探傷プローブを固定可能で、且つ探傷作業を効率良く実施可能なタービンロータの翼溝部の探傷装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した問題を解決する本発明に係るロータディスクの翼溝部の探傷装置は、タービンブレードの翼根部を収納するロータディスクの翼溝部に生じる応力腐食割れを、超音波探傷プローブを前記ロータディスクの側部に接触させて検出するロータディスクの翼溝部の探傷装置であって、
超音波探傷プローブと、
前記超音波探傷プローブを内方に保持する空間を有し、外形が円形状である保持体と、
前記保持体の外周を支持して前記保持体を回動自在に支持する回動手段と、
内周が前記回動手段の外周に接しており、前記回動手段を保持する固定部と、
上下方向に沿って形成された開口を内部に有しており、当該開口内に前記固定部を収容する支持台と、
前記固定部に接続されており、前記開口に沿って前記固定部を上下方向に移動させる移動手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記ロータディスクの翼溝部の探傷装置によれば、超音波探傷プローブを固定する保持体を備えているため、探傷作業中に超音波探傷プローブを手で押さえなくても超音波探傷プローブは支持台から脱落しない。これにより、探傷作業中に超音波探傷プローブを手で押さえる必要が無くなるため、作業効率が向上し、探傷時間を短縮することができる。
また、回動手段を備えているため、超音波探傷プローブの向きを容易に変更することができる。これにより、ロータディスクの翼溝部に発生した応力腐食割れに対して、角度を変えて超音波を照射することができる。ロータディスクの翼溝部に発生した応力腐食割れでは、ある方向から照射された超音波に対しては反射エコーを発生しない場合があるが、回動手段を備えることで、任意の方向に発生した応力腐食割れに対して反射エコーを生じさせることができるようになり、応力腐食割れ箇所の検出確度の向上を図ることができる。
【0008】
また、前記超音波探傷プローブと前記空間の外周面との間に介在する弾性体を更に備えてもよい。
【0009】
このように、超音波探傷プローブと空間の外周面との間に弾性体を備えているため、超音波プローブを保持体内に容易に脱着することができる。
【0010】
また、前記ロータディスクの側面と前記超音波探傷プローブとの間に検査油を保持する空隙を形成するパッキンを、前記ロータディスクの前記側面と対向する前記回動手段又は前記固定部の側面に設けてもよい。
【0011】
このように、パッキンを備えているため、ロータディスクの側面と超音波探傷プローブとの間に検査油を保持することができる。これにより、従来、探傷作業中に頻繁に行っていた給油作業の回数を低減することができるため、作業効率が更に向上する。また、超音波探傷プローブがロータディスクの側面に接触しないため、超音波探傷プローブの表面の摩耗を防止することができる。
【0012】
また、前記回動手段は、前記保持体の回動角度を調整する角度位置決め手段を備えていてもよい。
【0013】
このように、角度位置決め手段を備えているため、保持体が回動して所望の角度となったときに、その状態を維持することができる。また、角度位置決め手段の制動力よりも大きな力を加えることにより、保持体を回動させることが可能となる。
【0014】
また、上方から供給される前記検査油を前記空隙に導く導入路が、前記超音波探傷プローブの上方で、且つ前記固定部の前記側面にすり鉢状に形成されていてもよい。
【0015】
このように、導入路を備えているため、超音波探傷プローブの上方から供給された粘性の低い検査油を空間内に効率良く導くことができる。また、ロータディスクの側面全体に検査油が拡がることを防止できるので、探傷作業後の検査油の除去作業が容易となる。
【0016】
また、前記支持台は、前記ロータディスクの前記側面に対向する位置に配置される探傷部と、当該探傷部の上方に延設するように設けられ、前記探傷部に対して所定角度に屈曲されて前記ロータディスクの肩部に当接する屈曲部と、から構成されており、
前記ロータディスクの前記肩部の角部を基準として、前記角部から下方へ離間する方向に向かって前記探傷部の表面に目盛りが記されていてもよい。
【0017】
ロータディスクの翼溝部の応力腐食割れを探傷する際は、超音波プローブを設置する所定位置が予め決められている。この所定位置は、ロータディスク外周側肩部の角部を基準として下方へ、例えば、数mmの位置と設定されている。従来、超音波探傷プローブを所定位置に設置する際は、ロータディスク外周側肩部に定規を当てた状態で超音波探傷プローブを設置し、その後、定規を取り外している。この所定位置は、ロータディスクの段数等によって異なるため、他のロータディスクを探傷するときは、定規を当てて位置を決める位置決め作業を毎回行う必要があった。しかしながら、本発明に係る支持台には、ロータディスクの肩部の角部を基準として、角部から下方へ離間する方向に向かって探傷部の表面に目盛りが記されているため、超音波探傷プローブを所望の位置に短時間で容易に配置することができる。
【0018】
また、前記移動手段を介して前記固定部の位置決めをする固定手段を更に備えてもよい。
【0019】
このように、固定手段を備えているため、固定部の位置決めをすることができる。
【0020】
また、前記支持台には、前記開口に沿ってガイド溝が形成されており、
前記固定手段は、前記ロータディスクの前記側面と対向する前記支持台の側面側から前記ガイド溝内に挿入されて、前記支持台及び前記移動手段を貫通するボルトと、前記ボルトに手動で締め付け可能な蝶ナットと、から構成されていることとしてもよい。
【0021】
このように、ガイド溝を貫通するボルトに螺合する蝶ナットを手動で締め付けることで移動手段を支持台に固定することができる。また、蝶ナットを手動で緩めることにより、移動手段を移動可能にすることができる。このように、蝶ナットを手動で操作できるので、移動手段を容易に移動したり、固定したりすることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、超音波探傷プローブを固定可能で、且つ探傷作業を効率良く実施可能なタービンロータの翼溝部の探傷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る探傷装置をロータディスクに取り付けた状態を示す斜視図である。
【図2】探傷装置の斜視図である。
【図3】図2のA矢視図である。
【図4】図2のB矢視図である。
【図5】図2のC−C断面図である。
【図6】図2のD−D断面図である。
【図7】図2のE−E断面図である。
【図8】従来のロータディスクの翼溝部の探傷装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。なお、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る探傷装置をロータディスクに取り付けた状態を示す斜視図である。
図1に示すように、ロータディスク1の外周端部には、全周にわたり外方に向かって開口した翼溝部2が設けられている。タービンブレード4の下部には一体に翼根部5が形成され、タービンブレード4の翼根部5がロータディスク1の翼溝部2に嵌合されることにより、複数のタービンブレード4がロータディスク1の外周端部に接続されている。
【0026】
タービンブレード4の外周端には、タービンブレード4を所定枚数毎に連結するシュラウド6が設けられている。また、ロータディスク1には、翼溝部2に対面した位置に、ロータディスク1の周方向に沿って傾斜面からなる肩部3が形成されている。
【0027】
発電プラントにおける高・中圧蒸気タービンは、高い温度条件で運転されるために、長期間使用されると、図1中に示すように、繰り返し応力を受ける部位には応力腐食割れcが発生することがある。この応力腐食割れcを探傷する探傷装置について以下で説明する。
【0028】
本発明に係るロータディスク1の翼溝部2の探傷装置(以下、ロータディスク1の翼溝部2の探傷装置を単に探傷装置10という)は、超音波探傷プローブ12と、超音波探傷プローブ12を保持する固定台17と、固定台17を上下方向へ移動させる移動台13と、固定台17及び移動台13を支持する支持台11と、を備えている。支持台11には長手方向に沿って開口11aが形成されており、当該開口11a内に固定台17が上下方向に移動可能に装着されている。
【0029】
図2は、探傷装置10の斜視図である。そして、図3及び図4は、それぞれ図2のA矢視図、B矢視図である。さらに、図5〜図7は、それぞれ図2のC−C断面図、D−D断面図、E−E断面図である。なお、図2〜図7では超音波探傷プローブ12の記載を省略している。
【0030】
図2〜図7に示すように、探傷装置10の固定台17は、超音波探傷プローブ12を固定する保持体18と、保持体18を回動させるボールベアリング20と、ボールベアリング20を外周側から保持する固定部19と、から構成されている。
保持体18には、貫通孔18aが形成されており、当該貫通孔18aの大きさは、超音波探傷プローブ12の外形寸法よりもやや大きくなるように形成されている。この貫通孔18aの内周面に沿って弾性体21が接着剤等で接続されている。本実施形態では、弾性体21としてシリコーンゴムを用いた。弾性体21により囲まれた貫通孔18aの大きさは、超音波探傷プローブ12の外形寸法よりもやや小さくなっている。弾性体21に囲まれた貫通孔18a内に超音波探傷プローブ12が嵌め込まれる。弾性体21は変形が容易なので、超音波探傷プローブ12を容易に着脱することができる。また、弾性体21は適度な硬度を有するため、超音波探傷プローブ12を貫通孔18a内に固定することができる。なお、本実施形態では、弾性体21としてシリコーンゴムを用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、エチレンプロピレンゴム、ポリウレタン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、パーフロロエラストマ、天然ゴム等を用いることができる。
【0031】
なお、本実施形態では、保持体18と超音波探傷プローブ12との間に弾性体21を設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、くさび状の薄板を介在させることで、超音波探傷プローブ12を固定してもよい。
【0032】
保持体18の外周を囲うようにボールベアリング20が設けられている。つまり、保持体18の外周面にボールベアリング20の内輪20aの内周面が密着するように設けられている。
また、ボールベアリング20の外周を囲うように固定部19が設けられている。つまり、ボールベアリング20の外周面に固定部19の内周面が密着するように設けられている。この構成により、保持体18は固定部19に対して回動自在となっている。
【0033】
図4に示すように、固定部19の背面の上部には、固定部19の角部19a、19bからそれぞれ中央部へ向かって第1溝22及び第2溝23がすり鉢状に形成されている。これらの溝22、23は、ボールベアリング20の外周面まで形成されている。
第1溝22及び第2溝23の延長線上に位置するボールベアリング20の外輪20bには切欠きが形成されており、第1溝22及び第2溝23は、ボールベアリング20の外輪20bと内輪20aとの間の溝(以下、ボールベアリング20の溝20cという)に連通している。
【0034】
図5及び図6に示すように、ボールベアリング20の溝20c、第1溝22及び第2溝23には、ゴムパッキン24が嵌め込まれている。ボールベアリング20の溝20cに嵌め込まれたゴムパッキン24は、ボールベアリング20の外輪20b及び内輪20aに接触している。この状態で保持体18を回動させると、ゴムパッキン24と外輪20bとの間及びゴムパッキン24と内輪20aとの間にそれぞれ生じる摩擦力により、適度な抵抗が生じる。即ちゴムパッキン24は、角度位置決め手段としての機能を有している。これにより、超音波探傷プローブ12を所望の角度位置に固定することができる。また、摩擦力よりも大きな力を加えることにより、保持体18を回動させることができる。
【0035】
ボールベアリング20の溝20c、第1溝22及び第2溝23には、それぞれ凸部20dが形成されている。また、ゴムパッキン24は、略8の字形の断面形状を有しており、ゴムパッキン24の凹部24aが各溝の凸部20dに係合するように各溝20c、22、23内に嵌め込まれている。これにより、ゴムパッキン24が抜け出すことを防止できる。
ボールベアリング20の溝20c、第1溝22及び第2溝23に嵌め込まれるゴムパッキン24は一体に形成されている。即ち1つのゴムパッキン24ですべての溝20c、22、23を埋めることができる。
本実施形態では、ゴムパッキン24としてOリングを用いたが、これに限定されるものではなく、オイルシールを用いてもよい。要は、耐油性、耐摩耗性を有するものであればよい。
【0036】
ゴムパッキン24の背面側端24bは、ロータディスク1の側面に当接できるように平面状に形成されている。平面状に形成されたゴムパッキン24の背面側端24bは、固定台17の背面17aよりも突出するように配置されている。探傷作業時は、ゴムパッキン24の背面側端24bがロータディスク1の側面に当接して、固定台17及び超音波探傷プローブ12はロータディスク1の側面に接触しないので、これらの摩耗を防止することができる。
一方、固定台17の上部側で、且つ、第1溝22とボールベアリング20の溝20cとの交差部から第2溝23とボールベアリング20の溝20cの交差部までの区間のゴムパッキン24の背面側端24bは、ロータディスク1の側面との間に隙間が形成できるように、他の部位よりも高さが低く形成されている。これにより、固定台17の上方から供給された検査油を保持体18内に導入することができる。
なお、本実施形態では、ボールベアリング20の溝20c、第1溝22及び第2溝23に嵌め込まれるゴムパッキン24として、一体に形成されたものを用いたが、これに限定されるものではなく、分割されたゴムパッキンをそれぞれボールベアリング20の溝20c、第1溝22及び第2溝23に嵌め込んでもよい。
【0037】
図2及び図3に示すように、保持体18の回動角度を目視できるように、固定部19には基準位置25、目盛り26が付されている。基準位置25は、探傷角度の基本である鉛直方向を基準(0°)として付されている。また、保持体18には、指針28が付されており、当該指針28が示す角度に保持体18が傾いていることを示す。
【0038】
固定台17の下部は、支持台11の正面側に配置された移動台13に接続されている。
支持台11の開口11aの両側には、それぞれ開口11aに沿ってガイド孔11cが形成されている。図7に示すように、当該ガイド孔11c及び移動台13を貫通するように背面側からボルト14が挿入されており、このボルト14に蝶ナット15が螺合している。蝶ナット15を手で締め付けることで移動台13を支持台11に固定できる。また、蝶ナット15を緩めることにより、移動台13をガイド孔11cに沿って移動可能となる。移動台13をガイド孔11cに沿って移動させることにより、固定台17を上下方向へ移動させることができる。
【0039】
ボルト14の頭部14aを収納するための座グリ穴11dが支持台11の背面に、ガイド孔11cに沿って形成されている。これにより、ボルト14の頭部14aが支持台11の背面から突出しないので、ロータディスク1の側面を傷つけない。また、蝶ナット15が支持台11の正面側に設けられているため、移動台13を容易に移動させることができる。
【0040】
図2に示すように、支持台11は、ロータディスク1の側面に対向する位置に配置される探傷部11fと、ロータディスク1の肩部3に当接するように屈曲された屈曲部11bとから構成されている。
支持台11の正面11eには、開口11aに沿って目盛り27が記されている。この目盛り27は、ロータディスク1の肩部3の角部3aを基準として下方へ向かって記されている。つまり、肩部3からの距離が記されている。
目盛り27の正面に位置する移動台13の端部には、目盛り27を正確に読み取ることができるように、切欠き部13aが形成されている。
【0041】
このような構成からなる探傷装置10において、ロータディスク1の翼溝部2の周辺を探傷する場合には、図1に示すように、作業員が、超音波探傷プローブ12の装着された支持台11の屈曲部11bを、肩部3に当接するように配置する。この状態で、ゴムパッキン24はロータディスク1の側面に密着している。そして、肩部3を基準面として支持台11をロータディスク1の周方向に移動させながら、ロータディスク1の全周に亘って探傷作業を行う。必要に応じて超音波探傷プローブ12を回動させる。また、探傷作業中に、超音波探傷プローブ12とロータディスク1の側面との間の検査油が不足したら、支持台11の上方から給油する。
【0042】
上述したように、本実施形態に係るロータディスク1の翼溝部2の探傷装置10によれば、弾性体21を有する保持体18を備えているため、探傷作業中に超音波探傷プローブ12を手で押さえなくても、超音波探傷プローブ12は支持台11から脱落しない。これにより、超音波探傷プローブ12を手で押さえる必要が無くなるため、作業効率が向上し、探傷時間を短縮することができる。
また、ボールベアリング20を備えているため、超音波探傷プローブ12の向きを容易に変更することができる。これにより、ロータディスク1の翼溝部2に発生した応力腐食割れに対して、角度を変えて超音波を照射することができる。ロータディスク1の翼溝部2に発生した応力腐食割れでは、ある方向から照射された超音波に対しては反射エコーを発生しない場合があるが、ボールベアリング20を備えることによって、任意の方向に発生した応力腐食割れに対して反射エコーを生じさせることができるようになり、応力腐食割れ箇所の検出確度の向上を図ることができる。
また、ゴムパッキン24を備えているため、ロータディスク1の側面と超音波探傷プローブ12との間に粘性の低い検査油を保持することができる。これにより、従来、探傷作業中に頻繁に行っていた給油作業の回数を低減することができるため、作業効率が更に向上する。また、超音波探傷プローブ12がロータディスク1の側面に接触しないため、超音波探傷プローブ12の表面の摩耗を防止することができる。
さらに、ボールベアリング20の溝20cに嵌め込まれたゴムパッキン24が角度位置決め手段としての機能も有しているため、保持体18が回動して所望の角度となったときに、回動が抑制され、その状態を維持することができる。また、ゴムパッキン24の制動力よりも大きな力を加えることにより、保持体18を回動させることが可能となる。
また、嵌め込まれたゴムパッキン24により溝20cが閉塞されるため、ボールベアリング20からの検査油流出を防ぐことができ、注入した検査油の保持効果が向上する。
そして、第1溝22及び第2溝23に嵌め込まれたゴムパッキン24により、供給した粘性の低い検査油を超音波探傷プローブ12とロータディスク1の側面との間に導くことができる。これにより、ロータディスク1の側面全体に検査油が拡がることを防止できるので、探傷作業後の検査油の除去作業が容易となる。
【0043】
ロータディスク1の翼溝部2の応力腐食割れを探傷する際は、超音波探傷プローブ12を設置する所定位置が予め決められている。この所定位置は、ロータディスク1の肩部3の角部3aを基準として下方へ、例えば、数mmの位置と設定されている。従来、超音波探傷プローブ12を所定位置に設置する際は、ロータディスク1の肩部3に定規を当てた状態で超音波探傷プローブ12を設置し、その後、定規を取り外していた。他のロータディスク1を探傷するときは、定規を当てて位置を決める位置決め作業を毎回行う必要があった。しかしながら、本発明に係る支持台11には、ロータディスク1の肩部3の角部3aを基準として、角部3aから下方へ離間する方向に向かって支持台11に目盛り27が記されているため、超音波探傷プローブ12を所望の位置に短時間で容易に配置することができる。
【0044】
また、手動で締め付け可能な蝶ナット15を備えているため、工具等を用いることなく、移動台13を支持台11に固定したり、移動台13を移動させたりすることができる。
【0045】
さらに、ガイド孔11cを貫通するボルト14及び蝶ナット15により移動台13と支持台11とが連結されているため、蝶ナット15を緩めることで、移動台13をガイド溝に沿って移動させることができる。これにより、移動台13を容易に移動させることが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1 ロータディスク
2 翼溝部
3 肩部
3a角部
4 タービンブレード
5 翼根部
6 シュラウド
10 探傷装置
11 支持台
11a 開口
11b 屈曲部
11c ガイド孔
11d 座グリ穴
11e 正面
11f 探傷部
12 超音波探傷プローブ
13 移動台
13a 切欠き部
14 ボルト
14a 頭部
15 蝶ナット
17 固定台
17a 背面
18 保持体
18a 貫通孔
19 固定部
19a 角部
19b 角部
20 ボールベアリング
20a 内輪
20b 外輪
20c 溝
20d 凸部
21 弾性体
22 第1溝
23 第2溝
24 ゴムパッキン
24a 凹部
24b 背面側端
25 基準位置
26 目盛り
27 目盛り
28 指針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンブレードの翼根部を収納するロータディスクの翼溝部に生じる応力腐食割れを、超音波探傷プローブを前記ロータディスクの側部に接触させて検出するロータディスクの翼溝部の探傷装置であって、
超音波探傷プローブと、
前記超音波探傷プローブを内方に保持する空間を有し、外形が円形状である保持体と、
前記保持体の外周を支持して前記保持体を回動自在に支持する回動手段と、
内周が前記回動手段の外周に接しており、前記回動手段を保持する固定部と、
上下方向に沿って形成された開口を内部に有しており、当該開口内に前記固定部を収容する支持台と、
前記固定部に接続されており、前記開口に沿って前記固定部を上下方向に移動させる移動手段と、を備えることを特徴とするロータディスクの翼溝部の探傷装置。
【請求項2】
前記超音波探傷プローブと前記空間の外周面との間に介在する弾性体を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のロータディスクの翼溝部の探傷装置。
【請求項3】
前記ロータディスクの側面と前記超音波探傷プローブとの間に検査油を保持する空隙を形成するパッキンを、前記ロータディスクの前記側面と対向する前記回動手段又は前記固定部の側面に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のロータディスクの翼溝部の探傷装置。
【請求項4】
前記回動手段は、前記保持体の回動角度を調整する角度位置決め手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のうち何れか一項に記載のロータディスクの翼溝部の探傷装置。
【請求項5】
上方から供給される前記検査油を前記空隙に導く導入路が、前記超音波探傷プローブの上方で、且つ前記固定部の前記側面にすり鉢状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のロータディスクの翼溝部の探傷装置。
【請求項6】
前記支持台は、前記ロータディスクの前記側面に対向する位置に配置される探傷部と、当該探傷部の上方に延設するように設けられ、前記探傷部に対して所定角度に屈曲されて前記ロータディスクの肩部に当接する屈曲部と、から構成されており、
前記ロータディスクの前記肩部の角部を基準として、前記角部から下方へ離間する方向に向かって前記探傷部の表面に目盛りが記されていることを特徴とする請求項1〜5のうち何れか一項に記載のロータディスクの翼溝部の探傷装置。
【請求項7】
前記移動手段を介して前記固定部の位置決めをする固定手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜6のうち何れか一項に記載のロータディスクの翼溝部の探傷装置。
【請求項8】
前記支持台には、前記開口に沿ってガイド溝が形成されており、
前記固定手段は、前記ロータディスクの前記側面と対向する前記支持台の側面側から前記ガイド溝内に挿入されて、前記支持台及び前記移動手段を貫通するボルトと、前記ボルトに手動で締め付け可能な蝶ナットと、から構成されていることを特徴とする請求項7に記載のロータディスクの翼溝部の探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−68504(P2013−68504A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206986(P2011−206986)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】