説明

ロータリー圧縮機

【目的】 高速回転領域でのローラ5の公転速度を速くし、圧縮室7から吸入室6への高圧流体の漏れを低減し、容積効率を改善する。
【構成】 ローラ5の外周部筒面52にブレード8を一体的に突設し、その突出先端側を、シリンダ室1の外方に設ける支持穴15に回転自由に支持する揺動体9の受入溝91に進退自由に係合させて、ローラ5を、クランク軸3に共回りしない非自転式にすると共に、クランク軸3の軸心Oをシリンダ室1の中心Sに対し、圧縮室7が吸入室6よりも大きい低圧回転領域に偏心させる一方、ローラ5の内周部嵌合穴51の中心Xを外周部筒面52の中心Yに対し、このローラ5の公転に伴い外周部筒面52がシリンダ室1の内周面に連続的に近接する関係に偏心させた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、冷凍装置における冷媒圧縮機等として広く用いられるロータリー圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の圧縮機は、実開昭61−114093号公報等に開示され、且つ図2に示すように、円形のシリンダ室QをもつシリンダCと、クランク軸Dの偏心ピン部Eに嵌合し、シリンダ室Qの内部に公転する単一円筒から成るローラRと、該ローラRの外周面に頭部を接触させてシリンダ室Qの内部を吸入室Lと圧縮室Hとに区画するブレードBとを備え、吸入口Jから吸入する低圧ガスを圧縮して、高圧ガスを吐出口Kから吐出するようにしている。こうして、この構成では、クランク軸Dの軸心Oはシリンダ室Qの中心Sと一致させる必要があり、このため、ブレードBの位置を基準として時計方向に進めるクランク軸Dの全回転角度にわたり、ローラRの公転速度は、クランク軸Dの回転に同期した一定の値になる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、以上のものでは、ローラRの公転速度が全回転角度にわたり一定であるため、圧縮室Hが吸入室Lよりも小さくなり、これら圧縮室Hと吸入室Lとの差圧が大きくなる回転角度後半の高圧回転領域において、ローラRの外周面とシリンダ室Qの内周面との隙間を介して圧縮室Hから吸入室Lに漏れる高圧ガス量が多く、容積効率を以下させる問題がある。特に、低速回転用の圧縮機ではこの傾向が強い。
【0004】本発明では、シリンダ室に対するローラの公転機構に独特の工夫を加えることにより、漏れが問題となる高圧回転領域でのローラの公転速度を低圧回転領域に対して速くして、圧縮室から吸入室への漏れ時間を短縮し、容積効率の向上を図り得るロータリー圧縮機を提供することを主な目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】そこで、上記主目的を達成するため、図1に示すように、シリンダ室1をもつシリンダ2と、クランク軸3の偏心ピン部4に嵌合し、前記シリンダ室1の内部に公転するローラ5と、前記シリンダ室1の内部を吸入室6と圧縮室7とに区画するブレード8とを備えたロータリー圧縮機において、前記ローラ5をクランク軸3に共回りしない非自転式に構成すると共に、前記クランク軸3の軸心Oを前記シリンダ室1の中心Sに対し、前記圧縮室7が吸入室6よりも大きい低圧回転領域に偏心させる一方、前記ローラ5の内周部嵌合穴51を外周部筒面52に対し、このローラ5の公転に伴い前記外周部筒面52が前記シリンダ室1の内周面に連続的に近接する関係に偏心させた。
【0006】この場合、ローラ5の外周部筒面52にブレード8を突設すると共に、前記ブレード8の突出先端側をシリンダ室1の外方に回転自由に支持する揺動体9に進退自由に係合させて、前記ローラ5を非自転式に構成するのが好ましい。
【0007】
【作用】図1に示すように、シリンダ室1の中心Sを通り、低圧回転領域と高圧回転領域とを隔てる中心線がシリンダ室1の内周面と交わる点をF,Gとすると、ローラ5とシリンダ室1との間の近接点が低圧回転領域においてこの交点F,G間を移動するとき、クランク軸3は前記近接点の移動角よりも大きな角度θaだけ回転することを要し、逆に、ローラ5とシリンダ室1との間の近接点が高圧回転領域において前記交点G,F間を移動するとき、クランク軸3は前記近接点の移動角よりも小さな角度θbだけ回転することになる。クランク軸3は等速回転しているから、結局、高圧回転領域でのローラ5の公転速度は、低圧回転領域での公転速度に対して速くなる。又、このように、ローラ5の公転速度に差をつけるためにクランク軸3の軸心Oをシリンダ室1の中心Sに対して偏心させているにも拘らず、ローラ5を非自転式とし、かつ、該ローラ5の内周部嵌合穴51を外周部筒面52に対して偏心させているから、ローラ5の外周部筒面52がシリンダ室1の内周面に連続的に近接でき、正規の圧縮動作を行わせることができる。
【0008】こうして、高速回転領域でのローラ5の公転速度が速くなる分だけ、圧縮室7から吸入室6への漏れ時間を短縮でき、容積効率の低下を抑制できる。
【0009】又、以上の場合で、ローラ5の外周部筒面52にブレード8を突設すると共に、該ブレード8の突出先端側をシリンダ室1の外方に回転自由に支持する揺動体9に進退自由に係合させることとして、ローラ5を非自転式とする場合には、ローラ5の外周部筒面52とブレード8との隙間を介して圧縮室7から吸入室6に高圧流体が漏れるのも防止でき、容積効率の低下を一層良好に抑制できる。
【0010】
【実施例】図1に示すものは、冷媒圧縮用のロータリー圧縮機であって、円形のシリンダ室1をもつシリンダ2と、モータに連動するクランク軸3の偏心ピン部4に嵌合し、シリンダ室1の内部に公転するローラ5と、シリンダ室1の内部を吸入室6と圧縮室7とに区画するブレード8とを備え、吸入口11から取り込む低圧ガスを圧縮して、圧縮後の高圧ガスを吐出穴12を介して、シリンダ2を配設する密閉ケーシングの内部に吐出するようにしている。尚、13は吐出弁、14は弁押えであり、シリンダ室1の軸方向上下は、シリンダ2の上下面に取付けるフロント及びリアヘッドにより封鎖している。
【0011】以上の構成において、ローラ5の外周部筒面52にブレード8を一体的に突設すると共に、このブレード8の突出先端側を、シリンダ室1の外方に設ける支持穴15に回転自由に支持する揺動体9の受入溝91に進退自由に係合させて、ローラ5を、クランク軸3に共回りしない非自転式に構成する。又、クランク軸3の軸心Oをシリンダ室1の中心Sに対し、圧縮室7が吸入室6よりも大きい低圧回転領域に偏心させる。更に、ローラ5の内周部嵌合穴51の中心Xを外周部筒面52の中心Yに対し、このローラ5の公転に伴い外周部筒面52がシリンダ室1の内周面に連続的に近接する関係に偏心させる。
【0012】これにより、高圧回転領域でのローラ5の公転速度は低圧回転領域での公転速度に対して速くなり、高速回転領域でのローラ5の公転速度が速くなる分だけ、圧縮室7から吸入室6への漏れ時間を短縮でき、容積効率の低下を抑制することができる。
【0013】しかも、ローラ5の外周部筒面52にブレード8を突設し、且つ該ブレード8の突出先端側をシリンダ室1の外方に回転自由に支持する揺動体9に進退自由に係合させて、ローラ5を非自転式としているから、ローラ5の外周部筒面52とブレード8との隙間を介して圧縮室7から吸入室6に高圧流体が漏れるのも防止でき、容積効率の低下を一層良好に抑制できる。
【0014】
【発明の効果】以上、請求項1記載の発明によれば、高速回転領域でのローラ5の公転速度が速くなるため、圧縮室7から吸入室6への高圧流体の漏れを低減でき、容積効率を改善することができる。
【0015】又、請求項2記載の発明によれば、ローラ5を非自転式とする構造を利用して、ローラ5の外周部筒面52とブレード8との間の漏れをも低減でき、容積効率を一層良好に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るロータリー圧縮機の断面図。
【図2】従来のロータリー圧縮機の断面図。
【符号の説明】
1;シリンダ室、2;シリンダ、3;クランク軸、4;偏心ピン部、5;ローラ、6;吸入室、7;圧縮室、8;ブレード、9;揺動体、51;内周部嵌合穴、52;外周部筒面

【特許請求の範囲】
【請求項1】シリンダ室1をもつシリンダ2と、クランク軸3の偏心ピン部4に嵌合し、前記シリンダ室1の内部に公転するローラ5と、前記シリンダ室1の内部を吸入室6と圧縮室7とに区画するブレード8とを備えたロータリー圧縮機において、前記ローラ5をクランク軸3に共回りしない非自転式に構成すると共に、前記クランク軸3の軸心Oを前記シリンダ室1の中心Sに対し、前記圧縮室7が吸入室6よりも大きい低圧回転領域に偏心させる一方、前記ローラ5の内周部嵌合穴51を外周部筒面52に対し、このローラ5の公転に伴い前記外周部筒面52が前記シリンダ室1の内周面に連続的に近接する関係に偏心させていることを特徴とするロータリー圧縮機。
【請求項2】ローラ5の外周部筒面52にブレード8を突設すると共に、前記ブレード8の突出先端側をシリンダ室1の外方に回転自由に支持する揺動体9に進退自由に係合させて、前記ローラ5を非自転式に構成している請求項1記載のロータリー圧縮機。

【図2】
image rotate


【図1】
image rotate