説明

ロータリー圧縮機

【目的】 ブレード6を揺動式にしてローラ3の外周部を介したガス漏れを低減しながら、ブレード6と揺動体8の受入溝7との間の隙間を介したガス漏れ並びにこの漏れガスの再膨張を低減し、容積効率を良好に向上させる。
【構成】 ブレード6の長さ及び揺動体8の半径を、ローラ3が上死点に位置されて圧縮行程が終了し、ブレード6の先端部が受入溝7の最深部に突入するときであっても、ブレード6の先端部が揺動体8の回転中心Oを越えない関係に設定し、圧縮行程の進行に伴うローラ3及びブレード6の変位に拘らず、ブレード6と受入溝7とを、ブレード右先端部eと溝左端部gとを介して互いに突っ張り合わせ、エッヂ接触状態を保って、圧縮室5を吸入室4に対して良好にシールすると共に、圧縮室5から受入溝7の底部に高圧ガスが流入するのを抑制して、この受入溝7の底部に溜る残留ガスが再膨張するのを防止した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、冷凍装置における冷媒圧縮機等として広く用いられ、公転するローラの外周部にブレードを突設して、このブレードを回転自由な揺動体に進退自由に受入れさせた所謂揺動式ブレード構造をもつロータリー圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】通常のロータリー圧縮機は、実開昭61−114082号公報等で知られているように、ローラの外周部に該ローラとは別体に形成するブレードの頭部を当接させて、シリンダ室内を吸入室と圧縮室とに区画しているが、ローラとブレードとの当接部を介して圧縮室から吸入室に漏れが起こり易い等の欠点を有する。
【0003】こうしたことから、本出願人が先に提案し(特願平3−242933号)且つ図5及び図6に示したように、ローラRの外周部にブレードBを一体に設けると共に、シリンダCにおけるシリンダ室Qの径方向外方部位に揺動体Sを回転自由に支持して、該揺動体Sに、その回転中心Oを越える比較的長いスパンにわたってブレードBの突出先端側を受入れる受入溝Mを形成し、クランクピンPの偏心回転によるローラRの公転に伴い、ブレードBを受入溝Mに進退させると共に、揺動体Sを揺動させ、吸入室Lに取込む低圧ガスを圧縮室Hで圧縮するようにしている。こうして、ブレードBとローラRとを一体化し、両者の当接を廃止したことにより、漏れを低減して容積効率を改善できるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、以上のものでは、図5に示すように、圧縮行程途中で、ローラR及びブレードBが左矢印で示す向きに変位しているときには、ブレードBと受入溝Mとはブレード右先端部eと溝左端部gとを介して互いに突っ張り合い、これら端部e,gでのエッヂ接触により、圧縮室Hは吸入室Lに対して良好にシールできるが、図6に示すように、圧縮行程終了間際で、ローラR及びブレードBが右矢印で示す向きにその変位を変えた場合であって且つブレードBの先端部が揺動体Sの回転中心Oを越えたときには、溝左端部gとブレードBとが離れて前記端部e,gを介した突っ張り合いが無くなり、ブレードBの右側面が受入溝Mに当接して、ブレードBの左側面と受入溝Mとの間に微小隙間が空き、この隙間を介して、圧縮室Hから受入溝Mの底部に高圧ガスが流入して、吸入室Lへの漏れが起こり易くなると共に圧縮行程終了時に受入溝Mの底部に溜る残留ガスが再膨張し、容積効率をやはり低下させる問題がある。
【0005】本発明の目的は、揺動式ブレード構造によるローラ外周部を介したガス漏れの低減を図りながら、ブレードと受入溝との隙間を介したガス漏れ並びにこの漏れガスの再膨張を低減し、一層良好に容積効率を向上することができるロータリー圧縮機を提供する点にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】そこで、上記目的を達成するため、第一に、図1及び図2に示すように、シリンダ室1をもつシリンダ2と、前記シリンダ室1の内部に公転するローラ3と、該ローラ3の外周部に突設し、前記シリンダ室1の内部を吸入室4と圧縮室5とに区画するブレード6と、該ブレード6の突出先端側を進退自由に受入れる受入溝7をもち且つ前記シリンダ室1の径方向外方部位に回転自由に支持する揺動体8とを備えたロータリー圧縮機であって、前記ブレード6の長さ及び揺動体8の半径を、前記ブレード6の先端部が前記受入溝7の最深部に突入したとき、前記ブレード6の先端部が前記揺動体8の回転中心を越えない関係に設定した。
【0007】又、同様な目的を達成するため、第二に、図3又は図4に示すように、シリンダ室1をもつシリンダ2と、前記シリンダ室1の内部に公転するローラ3と、該ローラ3の外周部に突設し、前記シリンダ室1の内部を吸入室4と圧縮室5とに区画するブレード6と、該ブレード6の突出先端側を進退自由に受入れる受入溝7をもち且つ前記シリンダ室1の径方向外方部位に回転自由に支持する揺動体8とを備えたロータリー圧縮機であって、前記揺動体8の中心部に、該揺動体8の軸方向において前記受入溝7に連通し、前記ブレード6の先端部が前記受入溝7の最深部に突入したとき、前記ブレード6の先端側と前記受入溝7との間の接触端部が前記揺動体8の回転中心を越えない大きさのカット穴70を設けた。
【0008】
【作用】上記第一の手段では、図1に示すように、ローラ3及びブレード6が左矢印で示す向きに変位しているとき、ブレード6と受入溝7とはブレード右先端部eと溝左端部gとを介して互いに突っ張り合い、これら端部e,gでのエッヂ接触により、圧縮室5は吸入室4に対して良好にシールすることができるのは勿論のこと、図2R>2に示すように、圧縮行程が進行していってローラ3及びブレード6が右矢印で示す向きに変位しても、ブレード6の先端部は揺動体8の回転中心Oを越えることがなく、ブレード6と受入溝7とはブレード右先端部eと溝左端部gとを介して互いに突っ張り合い、これら二つの端部e,gを介したエッヂ接触状態が保たれて、圧縮室5は吸入室4に対して良好にシールすることができる。
【0009】上記第二の手段でも、図3又は図4に示すように、カット穴70を設けたことにより、ブレード6の先端側と受入溝7との間の接触端部fが揺動体8の回転中心Oを越えることがなく、ブレード6と受入溝7とは前記接触端部fと溝左端部gとを介して互いに突っ張り合い、これら二つの端部f,gを介したエッヂ接触状態が保たれて、圧縮室5は吸入室4に対して良好にシールすることができる。又、この第二の手段では、カット穴70によりブレード6の先端側と受入溝7との接触端部fが揺動体8の回転中心Oを越えることがないようにしているため、上記第一の手段に比べ、揺動体8の半径を大きくする必要がなく、従って、該揺動体8まわりの構成を小形化することもできる。
【0010】
【実施例】図1及び図2に示すものは、冷媒圧縮用のロータリー圧縮機であって、円形のシリンダ室1をもつシリンダ2と、シリンダ室1の内部に公転するローラ3と、該ローラ3の外周部に一体に突設し、シリンダ室1の内部を吸入室4と圧縮室5とに区画する板状のブレード6と、該ブレード6の突出先端側を進退自由に受入れる受入溝7をもち且つシリンダ室1の径方向外方部位に設ける保持穴10の内部に回動自由に支持する円柱形の揺動体8とを備え、モータに連動する駆動軸9の回転並びにこれに一体したクランクピン90の偏心回動により、ローラ3をシリンダ室1の内部で時計方向に公転させ、吸入穴11から取り込む低圧ガスを圧縮して、高圧ガスを吐出穴12から吐出弁13を介して密閉ケーシング内に吐出するようにしている。尚、14は弁押え、91は潤滑油を運ぶ給油穴であり、又、シリンダ室1の軸方向上下は図示していないがフロント及びリアヘッドにより封鎖している。
【0011】以上の構成で、ブレード6の長さ及び揺動体8の半径を、ローラ3が図1から図2に示すように圧縮行程の進行に伴い順次時計方向に公転していって遂にローラ3が上死点に辿り着いて圧縮行程が終了し、ブレード6の先端部が受入溝7の最深部に突入するときであっても、ブレード6の先端部が揺動体8の回転中心Oを越えない関係に設定する。
【0012】これにより、図1に示すように、ローラ3及びブレード6が左矢印で示す向きに変位しているとき、ブレード6と受入溝7とは、ブレード右先端部eと溝左端部gとを介して互いに突っ張り合い、これら端部e,gでのエッヂ接触により圧縮室5は吸入室4に対して良好にシールすることができるのは勿論のこと、図2に示すように、圧縮行程が進行していってローラ3及びブレード6が右矢印で示す向きに変位しても、ブレード6の先端部は揺動体8の回転中心Oを越えることがなく、ブレード6と受入溝7とはブレード右先端部eと溝左端部gとを介して互いに突っ張り合い、これら二つの端部e,gを介したエッヂ接触状態が保たれて、圧縮室5は吸入室4に対して良好にシールすることができる。
【0013】従って、ブレード6の左側面と受入溝7との間に微小隙間が空いて圧縮室5から受入溝7の底部に高圧ガスが流入するのを抑制でき、受入溝7を介した吸入室4側への漏れを低減できると共に、圧縮行程終了時にこの受入溝7の底部に溜る残留ガスが再膨張するのを防止できるのであり、ブレード6をローラ3の外周部に突設して揺動式としたことと相俟ち容積効率を良好に向上できるのである。
【0014】又、図3に示すように、揺動体8の中心部に、該揺動体8の軸方向において受入溝7と連通し、ブレード6の先端部が受入溝7の最深部に突入したとき、ブレード6の先端側と前記受入溝7との間の接触端部fが揺動体8の回転中心Oを越えない大きさの円形穴71から成るカット穴70や、あるいは、図4に示すように、半円形穴72から成るカット穴70を設けてもよい。
【0015】この場合にも、図3又は図4に示すように、ブレード6の先端側と受入溝7との接触端部fが揺動体8の回転中心Oを越えることがなく、ブレード6と受入溝7とは前記接触端部fと溝左端部gとを介して互いに突っ張り合い、これら二つの端部f,gを介したエッヂ接触状態が保たれて、圧縮室5は吸入室4に対して良好にシールすることができる。又、この場合には、円形穴71あるいは半円形穴72から成るカット穴70によりブレード6の先端側と受入溝7との接触端部fが揺動体8の回転中心Oを越えることがないようにしているため、図1及図2に示した実施例に比べて、揺動体8の小さくでき、該揺動体8まわりの構成を小形化することもできる。
【0016】
【発明の効果】以上のように、請求項1記載の発明によれば、ブレード6の長さ及び揺動体8の半径を、ブレード6の先端部が受入溝7の最深部に突入したとき、ブレード6の先端部が揺動体8の回転中心を越えない関係に設定したから、ブレード6と受入溝7との間に微小隙間が空いて圧縮室5から受入溝7の底部に高圧ガスが流入するのを抑制でき、受入溝7を介した吸入室4側へのガス漏れを低減できると共に、圧縮行程終了時にこの受入溝7の底部に溜る残留ガスが再膨張するのを防止でき、ブレード6をローラ3の外周部に突設して揺動式としたことと相俟って、容積効率を良好に向上することができるのである。
【0017】又、請求項2記載の発明によれば、上記同様に容積効率を良好に向上できると共に、カット穴70によりブレード6の先端側と受入溝7との接触端部が揺動体8の回転中心を越えることがないようにしているため、揺動体8まわりの構成を小形化することもできるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明ロータリー圧縮機の第一実施例に係る圧縮行程途中の断面図。
【図2】同第一実施例に係る圧縮行程終了間際の断面図。
【図3】同第二実施例に係る圧縮行程終了間際の部分断面図。
【図4】同第三実施例に係る圧縮行程終了間際の部分断面図。
【図5】先行技術のロータリー圧縮機に係る圧縮行程途中の部分断面図。
【図6】同圧縮行程終了間際の部分断面図。
【符号の説明】
1;シリンダ室、2;シリンダ、3;ローラ、4;吸入室、5;圧縮室、6;ブレード、7;受入溝、8;揺動体、9;駆動軸、90;クランクピン、91;給油穴、10;保持穴、11;吸入穴、12;吐出穴、13;吐出弁、14;弁押え、70;カット穴、71;円形穴、72;半円形穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】シリンダ室1をもつシリンダ2と、前記シリンダ室1の内部に公転するローラ3と、該ローラ3の外周部に突設し、前記シリンダ室1の内部を吸入室4と圧縮室5とに区画するブレード6と、該ブレード6の突出先端側を進退自由に受入れる受入溝7をもち且つ前記シリンダ室1の径方向外方部位に回転自由に支持する揺動体8とを備えたロータリー圧縮機であって、前記ブレード6の長さ及び揺動体8の半径を、前記ブレード6の先端部が前記受入溝7の最深部に突入したとき、前記ブレード6の先端部が前記揺動体8の回転中心を越えない関係に設定していることを特徴とするロータリー圧縮機。
【請求項2】シリンダ室1をもつシリンダ2と、前記シリンダ室1の内部に公転するローラ3と、該ローラ3の外周部に突設し、前記シリンダ室1の内部を吸入室4と圧縮室5とに区画するブレード6と、該ブレード6の突出先端側を進退自由に受入れる受入溝7をもち且つ前記シリンダ室1の径方向外方部位に回転自由に支持する揺動体8とを備えたロータリー圧縮機であって、前記揺動体8の中心部に、該揺動体8の軸方向において前記受入溝7に連通し、前記ブレード6の先端部が前記受入溝7の最深部に突入したとき、前記ブレード6の先端側と前記受入溝7との間の接触端部が前記揺動体8の回転中心を越えない大きさのカット穴70を設けていることを特徴とするロータリー圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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