説明

ロータリ耕耘装置

【課題】耕耘爪の土壌中への過剰な喰い込みを抑える構成を、軽量且つ低コストの装備で実現すること。
【解決手段】複数の耕耘爪8と、回転駆動するロータリ軸10と、ロータリ軸10の回転に伴って土壌を押圧することにより耕耘爪8の土壌中への過剰な喰い込みを抑える防止板9とを備えるロータリ耕耘装置7であって、防止板9が、耕耘爪8の一部を折り曲げることによって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の耕耘爪と、回転駆動するロータリ軸と、該ロータリ軸の回転に伴って土壌を押圧することにより該耕耘爪の土壌中への過剰な喰い込みを抑える防止板とを備えるロータリ耕耘装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリ耕耘装置を用いて圃場の耕耘作業を実施する際、軟らかい土では耕耘爪が土壌中に喰い込み過ぎて、装置本体が土壌中に沈んで推進力がなくなる場合がある。これを防止するための構成を備えるものとして、例えば、特許文献1及び2に示す従来の構成を備えるロータリ耕耘装置や、図5に示すロータリ耕耘装置(本発明の改良前の構造)がある。
【0003】
特許文献1に記載のロータリ耕耘装置では、ロータリ軸の形状を断面多角形に構成している。また、特許文献2に記載のロータリ耕耘装置では、複数の耕耘爪の基部にわたるように、ロータリ軸の軸心方向に沿う翼板を設けてある。
【0004】
図5に示すロータリ耕耘装置は、圃場を耕耘する耕耘爪16と、図示しない伝動ケースに回転駆動可能に支持されるロータリ軸10と、筒状の爪軸11と、耕耘爪16を固定するブラケット17とを備えて構成されている。ブラケット17は爪軸11の外周面に溶接によって固定されており、ブラケット17には、複数の耕耘爪16がボルトとナットで締結固定されている。ブラケット17には、ロータリ軸10の回転方向に対して後退角を持つように、図6の点線Lに沿って折り曲げられている折曲部分18が設けられている。
【0005】
上記特許文献1のロータリ軸、特許文献2の翼板、及び図5及び図6の折曲部分18は、ロータリ軸の回転に伴って土壌を押圧するように構成されている。この押圧力は、ロータリ軸を上方に押し上げ、且つロータリ軸を前進させる推進力として作用し、これにより耕耘爪の土壌中への過剰な喰い込みを抑えると同時に、装置本体の推進を補助する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭53−21901号公報(第1図)
【特許文献2】特公昭33−10552号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のロータリ耕耘装置では、ロータリ軸として、大型のドラムを使用する必要があるため、重量が重くなり、製造コストも高い。
特許文献2のロータリ耕耘装置の翼板は、複数の耕耘爪の基部にわたるように横長に形成してあるため、重量が重くなり、製造コストも高い。
図5及び図6に示すブラケット17は、構造が複雑で製造コストが高くなる。さらに、折曲部分18が磨耗してブラケット17を交換する必要がある場合、ブラケット17が爪軸11の外周面に溶接されているため交換作業(メンテナンス)が困難である。
【0008】
本発明の目的は、耕耘爪の土壌中への過剰な喰い込みを抑える構成を、軽量且つ低コストの装備で実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のロータリ耕耘装置の第1特徴構成は、複数の耕耘爪と、回転駆動するロータリ軸と、該ロータリ軸の回転に伴って土壌を押圧することにより該耕耘爪の土壌中への過剰な喰い込みを抑える防止板とを備えるロータリ耕耘装置であって、前記防止板が、前記耕耘爪の一部を折り曲げることによって形成されている点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
本構成のごとく、耕耘爪の土壌中への過剰な喰い込みを抑える防止板を、耕耘爪の一部を折り曲げることによって形成すれば、従来のように防止板を別部材として設ける必要がないため、防止板の軽量且つ低コスト化が図れる。
さらに、磨耗した耕耘爪を交換する際に防止板も同時に交換されることになるため、メンテナンスが容易なものとなる。
【0011】
第2特徴構成は、前記防止板が、前記耕耘爪の基部における前記ロータリ軸の回転方向下手側部分において前記ロータリ軸の回転方向に対して後退角を持つように、前記耕耘爪に沿って曲げられている点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
本構成のごとく、防止板を、耕耘爪の基部におけるロータリ軸の回転方向下手側部分に設けることによって、防止板が、回転する耕耘爪に対して早期に土壌に接地して土壌を押圧してロータリ軸を上方に押し上げるため、耕耘爪の土壌中への過剰な喰い込みをより確実に抑えることができる。さらに、防止板が、ロータリ軸の回転方向に対して後退角を持つように、耕耘爪に沿って曲げられているため、防止板自身が土壌に食い込むことが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】歩行型作業機の全体側面図である。
【図2】ロータリ耕耘装置の横断面図である。
【図3】ロータリ耕耘装置の側面図である。
【図4】耕耘爪の展開図である。
【図5】従来のロータリ耕耘装置の側面図である。
【図6】従来のロータリ耕耘装置で使用されるブラケットの展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態〕
以下に、図1〜図4に基づいて、本発明に係るロータリ耕耘装置7を歩行型作業機1に適用した実施形態について説明する。
【0015】
図1に示すように、歩行型作業機1は、本体2、エンジン3、操縦ハンドル4、伝動ケース5、抵抗棒6、ロータリ耕耘装置7を備えて構成されている。
【0016】
本体2の上側にエンジン3が搭載されており、本体2の後端部から斜め後方に操縦ハンドル4が延設され、本体2の後端部に抵抗棒6が設けられている。また、本体2の下側に伝動ケース5が垂設されて、伝動ケース5の下端にロータリ耕耘装置7が連結されている。
【0017】
図2に示すように、ロータリ耕耘装置7は、圃場を耕耘する耕耘爪8と、伝動ケース5に回転駆動可能に支持されるロータリ軸10と、筒状の爪軸11と、耕耘爪8を固定するブラケット12とを備えて構成されている。
【0018】
伝動ケース5の中には、ウオームギア20と、ウオームギア20と噛合うウオームホイール21とが備えられている。ウオームホイール21はロータリ軸10の長手方向中心に固定されている。エンジンからの駆動力によってウオームギア20がその軸心周りに回転すると、これと噛合うウオームホイール21が回転するため、ロータリ軸10がその軸心周りに回転駆動することとなる。
【0019】
ロータリ軸10は、伝動ケース5の右側及び左側に亘るように設けられており、その両端に筒状の爪軸11が外嵌されてピン13で固定されている。
【0020】
爪軸11の外周には、長手方向に沿って複数のブラケット12が固着されており、各ブラケット12には、複数の耕耘爪8が固定されている。
【0021】
本実施形態では、左右の爪軸11のそれぞれに2つずつブラケット12が設けられており、各ブラケット12に対して、3枚の耕耘爪8がロータリ軸10の軸心周りに120度の間隔で放射状にボルトB及びナットNによって締結固定されている。耕耘爪8を交換する際は、ボルトB及びナットNを取り外すことによって耕耘爪8を交換することができる。
【0022】
そして、爪軸11の伝動ケース5側の端部に設けてあるブラケット12に対しては、伝動ケース5側に湾曲する耕耘爪8aを2枚及び横外側に湾曲する耕耘爪8bを1枚設けており、爪軸11の横外側の端部に設けてあるブラケット12に対しては、伝動ケース5側に湾曲する耕耘爪8aを1枚及び横外側に湾曲する耕耘爪8bを2枚設けてある。
【0023】
耕耘爪8は、縦長の平板が、図2に示すように伝動ケース5側又は横外側に湾曲し、且つ、図3に示すように側面視において爪軸11の回転方向Xに対して後退角を持つように湾曲した形状を有する。尚、耕耘爪8の後退角の大きさは、後述する防止板9の後退角αと略同じ大きさに設定されている。
【0024】
耕耘爪8は、ロータリ軸10の回転に伴って土壌を押圧することによりその耕耘爪8の土壌中への過剰な喰い込みを抑える防止板9を有しており、この防止板9は、耕耘爪8の一部を折り曲げることによって形成されている。
【0025】
本実施形態における防止板9は、耕耘爪8の基部から耕耘爪8の長手方向に沿って一体的に延出された縦長の部分を、図4に示す2本の点線L1,L2に沿って折り曲げることによって形成されている。
【0026】
即ち、図3に示すように、防止板9は、図4の第1点線L1(耕耘爪8の基部におけるロータリ軸10の回転方向下手側の部分)において、耕耘爪8の基部の面と直交し、且つ図2において耕耘爪8が湾曲する方向に折り曲げられ、さらに、図4の第2点線L2において爪軸11の回転方向X(ロータリ軸10の回転方向X)に対して後退角αを持つように、耕耘爪8のロータリ軸10の回転方向下手側の縁(図2の直線部Sの縁)に沿うように、頂部が湾曲する側面視でくの字状に曲げられている。尚、図4の第2点線L2において頂部が屈曲する側面視でくの字状に曲げ成形しても良い。
【0027】
図2に示すように、防止板9は、耕耘爪8の直線部S(耕耘爪8の基部から、耕耘爪8が伝動ケース5側又は横外側に湾曲し始める位置までの部分)に沿って延出しているが、耕耘爪8の湾曲部Cまでは達していない。さらに、防止板9の幅W1は耕耘爪8の先端から基部までの距離W2よりも短く設定されている。尚、図4に示す折り曲げ前において、耕耘爪8の回転方側下手側の縁と防止板9との間には切欠き部Kが形成され、図2及び図3に示す折り曲げ後において、防止板9と耕耘爪8の直線部Sとの間に所定の隙間Aが形成されるように構成されている。
【0028】
上記構成の歩行型作業機1によって耕耘作業を実施する際、防止板9が、耕耘爪8の基部におけるロータリ軸10の回転方向下手側部分に設けられているため、防止板9が、回転する耕耘爪8に対して早期に土壌に接地して土壌を押圧してロータリ軸10を上方に押し上げる。これにより、耕耘爪8の土壌中への過剰な喰い込みが抑えられる。さらに、防止板9が、ロータリ軸10の回転方向に対して後退角を持つように、耕耘爪8に沿って曲げられているため、防止板9自身が土壌に食い込むことが少ない。従って、軟らかな土壌で耕耘作業を実施する場合も、ロータリ耕耘装置7が土壌に沈むことはなく、歩行型作業機1をスムーズに移動させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、走行用の車輪を備えていない歩行型作業機だけでなく、走行用の車輪を備える歩行型作業機や、乗用型のトラクタに装備されるロータリ耕耘装置にも適している。
【符号の説明】
【0030】
7 ロータリ耕耘装置
8 耕耘爪
9 防止板
10 ロータリ軸
X ロータリ軸の回転方向
α 後退角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の耕耘爪と、回転駆動するロータリ軸と、該ロータリ軸の回転に伴って土壌を押圧することにより該耕耘爪の土壌中への過剰な喰い込みを抑える防止板とを備えるロータリ耕耘装置であって、
前記防止板が、前記耕耘爪の一部を折り曲げることによって形成されているロータリ耕耘装置。
【請求項2】
前記防止板が、前記耕耘爪の基部における前記ロータリ軸の回転方向下手側部分において前記ロータリ軸の回転方向に対して後退角を持つように、前記耕耘爪に沿って曲げられている請求項1に記載のロータリ耕耘装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−191872(P2012−191872A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56900(P2011−56900)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】