説明

ロータリ耕耘装置

【課題】走行機体と耕耘軸との間隔を調節することができ、圃場端での未耕耘作業地を小さくできるロータリ耕耘装置の提供。
【解決手段】走行機体により牽引されるロータリ耕耘装置1において、耕耘爪33a・・・が周囲に移植された耕耘爪軸33と、該耕耘爪軸33の左右一側を回動可能に支持するサイドケース31と、耕耘爪軸の左右他側を回動自在に支持するサイドサポート32と、により構成される耕耘爪軸仕組3と、前記サイドケース31と、前記サイドサポート32と、に接続されるメインビーム22・23と、前記耕耘爪軸仕組3と前記メインビーム22・23との間に設けられ、前記メインビーム22・23に対して前記耕耘爪軸仕組3を回動可能とする回動装置と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリ耕耘装置の技術、特にロータリ耕耘装置のロータリ(耕耘爪軸仕組)とこのロータリ耕耘装置を牽引する走行機体との間隔を調節することができるロータリ耕耘装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータリ耕耘装置は、当該ロータリ耕耘装置を牽引するトラクタ等の走行機体に連結されて圃場の耕耘作業を行っている。
例えば、特許文献1に示すロータリ耕耘装置では、ギアボックスと、走行機体の3点リンクとに連結されるヒッチ部との位置が固定され、3点リンクが上下移動することでロータリ耕耘装置の耕耘軸も連動して上下移動し、圃場に対する耕深を調節する。また、走行機体のPTO軸の駆動力は、ユニバーサルジョイントを介して耕耘装置(ロータリ耕耘装置)の入力軸へと伝達される。そのユニバーサルジョイントにより動力をスムーズに入力軸に伝達するには、制限角度以上耕耘装置を傾斜させることはできない。つまり、耕耘装置(ロータリ耕耘装置)の耕耘軸を走行機体側に接近させることはできず、ある程度の間隔をあけなくてはならない。そのため、トラクタが圃場端まで作業を行ったときに、圃場端における、未耕耘作業地(枕地)を小さくするには限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−24538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、走行機体と耕耘軸との間隔を調節することができ、圃場端での未耕耘作業地を小さくできるロータリ耕耘装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、走行機体により牽引されるロータリ耕耘装置において、耕耘爪が周囲に移植された耕耘爪軸と、該耕耘爪軸の左右一側を回動可能に支持するサイドケースと、耕耘爪軸の左右他側を回動自在に支持するサイドサポートと、により構成される耕耘爪軸仕組と、前記サイドケースと、前記サイドサポートと、に接続されるメインビームと、前記耕耘爪軸仕組と前記メインビームとの間に設けられ、前記メインビームに対して前記耕耘爪軸仕組を回動可能とする回動装置と、を備えるものである。
【0007】
請求項2においては、前記回動装置は、アクチュエータを有し、該アクチュエータは、前記走行機体の運転部からの操作により作動するとともに、当該操作により前記メインビームに対して前記耕耘爪軸仕組を回動させるものである。
【0008】
請求項3においては、前記回動装置は、回動規制機構を有し、該回動規制機構は、前記メインビームに対する前記耕耘爪軸仕組の位置を固定するものである。
【0009】
請求項4においては、前記回動規制機構は、前記耕耘爪軸仕組に設けられる第一係合部と、前記メインビームに相対回転不能に、且つ前記第一係合部側に摺動可能に設けられる第二係合部と、を備え、前記第一係合部と前記第二係合部が嵌合するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、耕耘爪軸仕組は、メインビームに対して回動可能となり、走行機体と耕耘軸仕組の一部である耕耘軸との間隔を縮めることができるため、圃場端での未耕耘作業地を小さくすることができる。
【0012】
請求項2においては、請求項1の効果に加えて、運転部よりアクチュエータを作動させることで、前記メインビームに対して前記耕耘爪軸仕組を容易に回動させて、走行機体と耕耘軸の位置を変更することができる。
【0013】
請求項3においては、請求項1及び請求項2の効果に加えて、耕耘爪軸仕組をメインビームに対して確実に固定できる。
【0014】
請求項4においては、請求項3の効果に加えて、第一係合部と第二係合部が嵌合することで、第一係合部、第二係合部が設けられた耕耘爪軸仕組とメインビームとが確実に固定される。さらに、第二係合部が第一係合部側に摺動可能にメインビームが設けられているので、第一係合部を移動させることで、第一係合部と第二係合部とが嵌合する状態と嵌合しない状態を容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るロータリ耕耘装置及びそれを接続したトラクタの構成を示す側面図。
【図2】連結部を除いた耕耘装置の構成を示す後方部分断面図。
【図3】耕耘装置の構成を示す簡略平面図。
【図4】耕耘爪軸仕組の位置変更を示す側面図、(a)耕耘爪軸仕組と走行機体との間隔を短くした状態を示す側面図、(b)耕耘爪軸仕組と走行機体との間隔を長くした状態を示す側面図。
【図5】ロック状態のロック機構を示す後方部分断面図。
【図6】ロック解除状態のロック機構を示す後方部分断面図。
【図7】操作具及び一部が分解されたロック機構を示す斜視図。
【図8】ロック機構を示す斜視図、(a)ロック状態のロック機構を示す斜視図、(b)ロック解除状態のロック機構を示す斜視図。
【図9】回動規制機構の別実施形態のデテント機構を示す後方部分断面図。
【図10】一部が分解されたデテント機構を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0017】
本実施形態のロータリ耕耘装置1は、図1に示すように、走行機体であるトラクタ100に作業機装着装置を介して連結されて、牽引されながら圃場を耕耘するものであって、トラクタ100の後側の車輪101・101との間隔を変更可能に構成される。
【0018】
先ず、図1から図3を用いて、本実施形態のロータリ耕耘装置1の全体構成について説明する。
【0019】
ロータリ耕耘装置1は、支持部、支持部に接続される耕耘爪軸仕組3、耕耘カバー部、トラクタ100からの耕耘動力を伝達する動力伝達部、及び、回動装置によって、主に構成される。
【0020】
支持部は、ロータリ耕耘装置1の骨格となるものであって、センターケース21、メインビーム22・23、ロアリンクブラケット24・25、及び、マスト26によって、主に構成される。
【0021】
センターケース21は、ロータリ耕耘装置1の前部左右中央に設けられ、入力軸51や伝動軸52の一端を支持するとともに、ベベルギア51a・52aを収納して、トラクタ100のPTO軸からの駆動力を伝動軸52やチェーン55等を介して耕耘爪軸仕組3に伝達する。センターケース21の左右側面には、一対の筒状のメインビーム22・23が左右外方へと延設される。
【0022】
左右のメインビーム22・23には、一対のロアリンクブラケット24・25がそれぞれ固設される。ロアリンクブラケット24・25の前端部には、左右のロアリンク102・102に連結するための左右一対のロアリンクヒッチピン24a・25aがそれぞれに突設される。
【0023】
センターケース21の上面には、マスト26が立設される。マスト26の前上部には、トラクタ100のトップリンク103に連結するためのトップリンク取付部26aが形成される。作業機装着装置はトップリンク103、ロアリンク102・102、リフトロッド等より構成される。
【0024】
耕耘爪軸仕組3は、前記支持部に対して前後回動可能に接続される部分である。耕耘爪軸仕組3は、サイドケース31、サイドサポート32、耕耘爪33a・・・を稙設した耕耘爪軸33によって、主に構成される。
サイドケース31は、伝動軸52の他端(左側)に固設した上部スプロケット53、耕耘爪軸33の他端(左側)に固設した下部スプロケット54、上部スプロケット53と下部スプロケット54とに巻回するチェーン55を収納する。サイドケース31の上部側面にメインビーム22の外側(左側)が後述する回動装置の一部を介して回動可能に支持される。サイドケース31の下部側面に耕耘爪軸33の他端(左側)が回動自在に支持される。
【0025】
サイドサポート32は板状に構成され、上部側面にメインビーム23の外側(右側)が後述する回動装置の一部を介して回動可能に支持され、サイドサポート32の下部側面に耕耘爪軸33の一端(右側)が回転自在に支持される。つまり、サイドケース31の下部とサイドサポート32の下部との間には、耕耘爪軸33が回動自在に軸支される。
【0026】
こうして、サイドケース31、サイドサポート32、耕耘爪33a・・・を有した耕耘爪軸33によって、耕耘爪軸仕組3が形成される。
【0027】
耕耘カバー部は、アッパーカバー41、リアカバー42によって、主に構成される。
【0028】
アッパーカバー41は、耕耘爪軸33に前後回動可能に支持され、アッパーカバー41と支持部との間に図示しない調節機構が配設されて、耕耘カバー部を前後位置調節可能に構成されている。アッパーカバー41は、耕耘爪33a・・・の上方及び上部側方を覆う位置に配設され、耕耘爪33a・33a・・・により耕耘された圃場の土が周囲に飛散しないようにしている。さらに、アッパーカバー41の後端には、リアカバー42の上端が回動支点42aにて回動可能に支持される。
【0029】
リアカバー42は、耕耘爪33a・・・により耕耘された圃場の土が周囲に飛散しないように覆うとともに、耕耘爪33a・・・の圃場への耕耘深さ(耕深)を検知する機能を兼ねている。アッパーカバー41の上面に突設されたブラケット43・43とリアカバー42の上面に形成された枢着部44・44との間には、ハンガーロッド45・45が介装される。該ハンガーロッド45・45は伸縮可能であり、かつ図示しない捻りバネ等の付勢部材が外嵌される。従って、リアカバー42は、回動支点42aを中心として下方に回動し、リアカバー42の下端が圃場表面に接触するよう付勢される。
【0030】
動力伝達部は、図2に示すように、センターケース21とメインビーム22とサイドケース31の内部に設けられ、PTO軸から入力軸51に伝えられた動力を耕耘爪軸33へと伝達させるものである。動力伝達部は、入力軸51、伝動軸52、上部スプロケット53、下部スプロケット54、チェーン55によって、主に構成される。
【0031】
トラクタ100のPTO軸からの駆動力は、図1に示すユニバーサルジョイント104を介して図2に示す入力軸51へと伝達される。入力軸51は、センターケース21の前面に回動可能に支持されるとともに、センターケース21の開口から前方に向けて突出される。入力軸51には、センターケース21内においてベベルギア51aが固設される。
【0032】
他方、メインビーム22内には、伝動軸52が配置され、その伝動軸52の一端部(右端部)は、センターケース21に回動可能に支持される。さらに、伝動軸52の右端部には、センターケース21内に配設したベベルギア52aが固設され、ベベルギア51aとベベルギア52aが歯合されている。つまり、入力軸51と伝動軸52は、ベベルギア51a・52aを介して連動連結され、PTO軸からの駆動力の伝達方向を変えている。
【0033】
伝動軸52の他端部は、サイドケース31に回動可能に支持されるとともに、上部スプロケット53が固設される。他方、耕耘爪軸33の他端部(左端部)には、下部スプロケット54が固設され、上部スプロケット53と下部スプロケット54には、チェーン55が巻回される。
【0034】
従って、動力伝達部では、トラクタ100のPTO軸から駆動力が、入力軸51、センターケース21内のベベルギア51a・52a、伝動軸52、サイドケース31内の伝動機構(上部スプロケット53、チェーン55、下部スプロケット54)、耕耘爪軸33の順に伝達され、耕耘爪軸33を回動させ、耕耘爪33a・・・により圃場を耕耘するようにしている。
【0035】
次に、回動装置について、図1から図4を用いて説明する。
【0036】
回動装置は、耕耘爪軸仕組3とメインビーム22・23との間に設けられ、メインビーム22・23に対する耕耘爪軸仕組3の位置を変更して、走行機体であるトラクタ100と耕耘爪軸33との間隔を変更(調節)するためのものである。
【0037】
回動装置は、回動支持フランジ61・62、アクチュエータである油圧シリンダ63、連結部、及び回動規制機構であるロック機構7によって、主に構成される。
【0038】
前述のように、サイドケース31及びサイドサポート32は、メインビーム22・23に対して回動可能に接続され、詳しくは、サイドケース31に回動支持フランジ61を、サイドサポート32に回動支持フランジ62を設けることで、回動可能に支持され、ロック機構7によって回動が規制される。
【0039】
回動支持フランジ61は、メインビーム22の外周よりも若干大きな内径を有する筒部と、筒部の外側にリング状に形成される縁部を有し、縁部がサイドケース31のメインビーム22側(右側)に固設される。さらに、回動支持フランジ61の筒部の内部にベアリング61a・61aが設けられ、このベアリング61a・61aを介して、メインビーム22に対してサイドケース31が回動自在に支持される。
【0040】
回動支持フランジ62は、メインビーム23の外周よりも若干大きな内径を有する筒部と、筒部の外側にリング状に形成される縁部を有し、縁部がサイドサポート32のメインビーム23側(左側)に固設される。さらに、回動支持フランジ62の筒部の内部にベアリング62aが設けられ、このベアリング62aを介して、メインビーム23に対してサイドサポート32が回動自在に支持される。なお、メインビーム23右方のサイドサポート32の右側面は蓋体68により覆われ、ベアリング68aを介してメインビーム23の右端が回動自在に支持される。
【0041】
こうして、サイドケース31及びサイドサポート32を含む耕耘爪軸仕組3は、回動支持フランジ61・62を介して、メインビーム22・23に回動可能に接続される。
【0042】
連結部6は、メインビーム22・23に対して回動可能に設けられた耕耘爪軸仕組3を補強する、特にサイドケース31及びサイドサポート32間を連結して補強するものである。連結部6は、図1及び図3に示すように、連結バー64、上部支持フレーム65、及び下部支持フレーム66によって、主に構成される。
【0043】
連結バー64は、左右方向を長手方向として、耕耘カバー部(アッパーカバー41、リアカバー42)の後上方に配設され、連結バー64の両端には、下部支持フレーム66・66の後端部が固設される。下部支持フレーム66・66の前端部は、サイドケース31及びサイドサポート32の下部に固定されている。
【0044】
左側の上部支持フレーム65の前端はサイドケース31の上部に固定され、後端は連結バー64の左寄りに固定される。右側の上部支持フレーム65の前端はサイドサポート32の上部に固定され、後端は連結バー64の右寄りに固定される。
【0045】
さらに、連結バー64の左右中央には、油圧シリンダ63の下端部が回動可能に連続される。油圧シリンダ63の上端部は、マスト26の後端に設けられたシリンダ取付部26bに回動可能に支持される。
【0046】
アクチュエータとしての油圧シリンダ63は、トラクタ100の運転部105の図示しない操作具を作業者が操作することで、伸縮するように構成される。つまり、油圧シリンダ63を伸縮させる切換バルブの操作具が運転部105に配設され、連結部6を含む回動装置は、運転部105にある操作具を操作することで作動される。アクチュエータは油圧シリンダに限定するものではなく電動シリンダ等で構成することもできる。
【0047】
次に、この回動装置を操作することで、耕耘爪軸仕組3を車輪101・101に近づける作動について説明する。ここで説明を容易とするため、図1に示す耕耘爪軸仕組3の耕耘爪軸33の位置をニュートラル(従来の耕耘爪軸33の位置)とする。
【0048】
作業者は、運転部105にある操作具を操作することで、油圧シリンダ63を伸張させる。すると、図1に示す状態から図4の(a)に示す状態へと、連結部6及び耕耘爪軸仕組3がメインビーム22・23を中心として前方へと回動する。
【0049】
つまり、油圧シリンダ63の伸張に伴って、油圧シリンダ63に連設された連結部6(連結バー64、上部支持フレーム65・65及び下部支持フレーム66・66)が、前方へと移動する。すると、連結部6の上部支持フレーム65・65及び下部支持フレーム66・66が回動可能に連設されたサイドケース31及びサイドサポート32が前方へと押圧される。ここで、サイドケース31及びサイドサポート32を含む耕耘爪軸仕組3は、メインビーム22・23に対して回動支持フランジ61・62(蓋体68)に設けられたベアリング61a・61a・62a・68a(図2参照)によって回動可能に支持されるため、メインビーム22・23を回動軸として前方へと回動する。したがって、耕耘爪軸33とトラクタ100の後側の車輪101・101との間隔は、ニュートラルの状態よりも短くすることができる。
【0050】
次に、回動装置を操作することで、耕耘爪軸仕組3を車輪101・101から遠ざける作動について説明する。
【0051】
作業者は、運転部105にある操作具を操作することで、油圧シリンダ63を縮小させる。すると、図1に示す状態から図4の(b)に示す状態へと、連結部6及び耕耘爪軸仕組3がメインビーム22・23を中心として後方へと回動する。
【0052】
つまり、油圧シリンダ63の縮みに伴って、油圧シリンダ63に連設された連結部6(連結バー64、上部支持フレーム65・65及び下部支持フレーム66・66)が、後方へと移動する。
【0053】
すると、連結部6の上部支持フレーム65・65及び下部支持フレーム66・66が回動可能に連設されたサイドケース31及びサイドサポート32が後方へと引っ張られる。ここで、サイドケース31及びサイドサポート32を含む耕耘爪軸仕組3は、メインビーム22・23に対して回動支持フランジ61・62(蓋体68)に設けられたベアリング61a・61a・62a・68a(図2参照)によって回動可能に接続されるため、メインビーム22・23を回動軸として後方へと回動する。したがって、耕耘爪軸33とトラクタ100の後側の車輪101・101との間隔は、ニュートラルの状態よりも長くすることができる。
【0054】
このようにロータリ耕耘装置1を構成することによって、ロータリ耕耘装置1全体を後方の車輪101・101に近づけるのではなく、耕耘爪軸仕組3をメインビーム22・23に対して回動させることで、耕耘爪軸33を前後移動させることができる。つまり、既存のロータリ耕耘装置の構造の大きく変えることなく、耕耘爪軸33を前後方向に自在に動かすことができる。
【0055】
また、トラクタ100からの駆動力を受ける入力軸51の傾きとは無関係に、メインビーム22・23にベアリング61a・61a・62a・68aを有する回動支持フランジ61・62(蓋体68)を介して接続された耕耘爪軸仕組3全体が回動することができる。そして、本実施形態のロータリ耕耘装置1は、耕耘爪軸仕組3にアッパーカバー41を介して回動可能に支持されるリアカバー42を備えることで、細土性能の変化を最小限に抑えることができ、耕深制御時のリアカバー42の位置も適正位置に調節できる。
【0056】
さらに、PTO軸(ユニバーサルジョイント104)及びセンターケース21の位置を変えることなく、耕耘爪33a・・・が周囲に移植された耕耘爪軸33をトラクタ100の後方の車輪101・101の直後まで近づけることができる。つまり、既存の三点リンク機構では限界であったトラクタ100の後方の車輪101・101の近くまで耕耘爪軸33を近接させることができ、圃場端における旋回用の枕地(未耕耘作業地)を小さくすることができる。
【0057】
次に、回動規制機構としてのロック機構7の構成について図2、図5から図8を用いて説明する。
【0058】
ロック機構7は、前記の回動装置の構造によって、メインビーム22・23に対して回動し、トラクタ100に対する間隔を調節したのちの耕耘爪軸仕組3をメインビーム22・23に対してより強固に固定させるためのものである。ロック機構7は、メインビーム22と回動支持フランジ61の間、及び、メインビーム23と回動支持フランジ62との間に配設される。
尚、ロック機構7は、左右対称に構成されるため、右側のロック機構7について説明し、左側のロック機構7の説明を省略する。
【0059】
ロック機構7は、第一係合部71と第二係合部72からなるドッグクラッチによって構成される。
【0060】
第一係合部71は、回動支持フランジ62のセンターケース21側(左側)に一体的に形成される。第一係合部71は、センターケース21側に噛合面を有している。
【0061】
第二係合部72は、メインビーム23上に軸心方向に摺動自在、かつ、相対回転不能に外嵌されたスライダー75の右側面に設けられ、第一係合部71と第二係合部72が対向するように配設される。つまり、メインビーム23の右側外周にはスプライン溝23aが形成され、スライダー75の内周にはスプラインボス75eが形成されて嵌合され、スライダー75は、メインビーム23に対して円周方向に回動することなく、メインビーム23に対して左右方向の摺動のみが可能となっている。
前記スライダー75の左側のメインビーム23上には、固定部73が外嵌固定され、固定部73とスライダー75の間に付勢スプリング74が配設される。
【0062】
固定部73は、一側(右側)がスライダー75の左側に設ける筒状の被覆部75aよりも縮径した筒状部とし、他端部(左端部)は貫通孔を有する底面が形成され、貫通孔にメインビーム23の外周面が接触して固設される。前記筒状部の内径は、メインビーム23の外周よりも大きく形成される。
【0063】
付勢スプリング74は、コイルバネにより構成され、メインビーム23に外嵌されるとともに、固定部73の筒状部の内側に収容される。付勢スプリング74の他端(左側)は、固定部73の内側に接触するよう設けられる。
【0064】
スライダー75は、筒状の部材であって、その他端部である被覆部75aが前記固定部73の筒状部を外嵌するとともに、固定部73と第一係合部71の間のメインビーム23上に挿入された状態で設けられる。
【0065】
スライダー75の右側には、第一係合部71に嵌合する第二係合部72が形成される。スライダー75の第二係合部72と筒状部の間の外周には、掛合部75cが形成される。この掛合部75cは、被覆部75a及び第二係合部72よりも大きな直径を有する環状の操作溝75dが形成される。さらに、前記筒状部以外の内周面には、メインビーム23の外周面に形成されたスプライン溝23aに嵌合するスプラインボス75eが形成される。
【0066】
上記のようにロック機構7を構成することで、第一係合部71とスライダー75の第二係合部72を係合させることで、相対回転しないように保持することができる。
【0067】
つまり、付勢スプリング74の一端(左端)が、固定部73の一端内に当接して、センターケース21側に移動できない。そのため、付勢スプリング74は、スライダー75を第一係合部71側へと、常に付勢している。
【0068】
次に、このロック機構7をロック状態からロック解除状態へと操作する方法について説明する。
【0069】
スライダー75の掛合部75cに形成された操作溝75dには、図6から図8の(a)に示す操作具76が係合されている。操作具76を図6の太矢印方向に移動操作することで、スライダー75は、付勢スプリング74の付勢力に抗して、固定部73側へと摺動する。このとき、メインビーム23のスプライン溝23aとスライダー75のスプラインボス75eが嵌合しているため、スライダー75は、メインビーム23に対して回動することなく、メインビーム23の長手方向(左右方向)にスムーズに移動することができる。この移動によって、スライダー75の第二係合部72と、回動支持フランジ62側に設けた第一係合部71との嵌合状態が解除される。
【0070】
このロック機構7の嵌合状態(ロック状態)が解除された状態において、前述のように回動装置のアクチュエータである油圧シリンダ63を作動させて、耕耘爪軸仕組3を作業者の所望の位置に移動させる。(メインビーム22を回動軸として図6の両矢印のどちらか一方に耕耘爪軸仕組3を回動させる。)
【0071】
その後、操作具76の操作を解除すると、ロック機構7の付勢スプリング74の付勢力によって、スライダー75は第一係合部71側に移動し、図5、図8の(b)に示すように、第一係合部71とスライダー75の第二係合部72とが嵌合して、メインビーム22・23に対する耕耘爪軸仕組3のより確実な固定を行うことができる。
【0072】
尚、本実施形態のロック機構7は、操作具76を手動で、ロック状態及びロック状態の解除操作を行っているが、アクチュエータを用いてもよい。例えば、油圧シリンダまたは電動シリンダのピストンロッドを操作具76に固定し、シリンダをメインビーム23に固定することにより、運転部に設けるスイッチ等の操作で、アクチュエータを伸縮作動させ、ロック機構のロック及びロック解除を行うことができる。また、運転部105から耕耘爪軸仕組3のメインビーム22・23に対する位置変更の操作もできる。
【0073】
また、このロック機構7を有する回動装置は、アクチュエータである油圧シリンダ63を操作する操作具が、運転部105だけでなくロータリ耕耘装置1にも設けられてもよく、運転部105に設けずにロータリ耕耘装置1のみ設けられてもよい。
【0074】
以下に、回動規制機構として上記のロック機構7に代えてデテント機構8を設けた別実施形態について説明する。
【0075】
デテント機構8は、ロータリ耕耘装置200(図1参照)の圃場耕耘時に、回動支持フランジ61・62に過剰な負荷が係った場合、その力を逃がすように構成されたものである。以下に、デテント機構8の具体的な構成について図9及び図10を用いて説明する。尚、説明を容易とするため、ロック機構7と同様のものについては、同じ符号を用い説明は省略する。
【0076】
デテント機構8は、回動支持フランジ62に一体的に設けられた第一係合部81と、スライダー83に設けられた第二係合部82とを有する。
【0077】
第一係合部81は、回動支持フランジ62の左側面に設けられ、側面からみて同心円上(図10参照)に所定の間隔をあけて挿入穴が形成される。この挿入穴には、スプリング81a・81a・・・と鋼球からなる球状体81b・81b・・・が順に挿入される。こうして、スプリング81a・81a・・・によって、球状体81b・81b・・・は、常に左側へと付勢される。
【0078】
他方、スライダー83の第二係合部82は、球状体81b・81b・・・と対向する面(右側の面)に、球状体81b・81b・・・と係合する凹部83a・83a・・・が形成された部分である。凹部83a・83a・・・は、球状体81b・81b・・・の形状及び数に合わせて半球状に窪んで形成され、図10に示すように、凹部83a・83a・・・は、スライダー83の右側面に、同心円上に等間隔に形成される。但し、凹部83a・83a・・・と球状体81b・81b・・・の数は限定するものではない。
また、スライダー83は、操作具76で操作することがないため、スライダー75に設けられている操作溝75dを有した掛合部75cが形成されていない。
【0079】
上記のようにデテント機構8を構成することで、図9に示すように、付勢スプリング74が、スライダー83を第一係合部81側へと常に付勢し、さらに、スプリング81a・81a・・・が、球状体81b・81b・・・をスライダー75側へと常に付勢しているため、球状体81bが、第二係合部82の凹部83aに係合される。
【0080】
こうして、ロータリ耕耘装置200による圃場の耕耘作業中に、耕耘爪軸仕組3を後方へ回動させる過剰な負荷が係った場合、その負荷により回動支持フランジ62が回動すると、球状体81b・81b・・・が第一係合部81の凹部83a・83a・・・に押圧され、スプリング81a・81a・・・は縮小される。そして、耕耘爪軸仕組3がメインビーム22・23に対して回動し、球状体81b・81b・・・がそれぞれ別の凹部83a・83a・・・と係合し、保持状態とされる。その後、負荷が軽減されると(通常の負荷に戻ると)、油圧シリンダ63の油圧により伸長し、元の位置に戻る。
【0081】
このようにデテント機構8が構成されることで、耕耘爪軸仕組3に過負荷が係った場合であっても、回動装置の破損はもとより、耕耘爪軸仕組3の破損を防止することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 ロータリ耕耘装置
3 耕耘爪軸仕組
7 ロック機構(回動規制機構)
8 デテント機構(回動規制機構)
22 メインビーム
23 メインビーム
31 サイドケース
32 サイドサポート
33 耕耘爪軸
33a 耕耘爪
63 油圧シリンダ(アクチュエータ)
71 第一係合部
72 第二係合部
81 第一係合部
82 第二係合部
100 トラクタ(走行機体)
105 運転部
200 ロータリ耕耘装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体により牽引されるロータリ耕耘装置において、
耕耘爪が周囲に移植された耕耘爪軸と、該耕耘爪軸の左右一側を回動可能に支持するサイドケースと、耕耘爪軸の左右他側を回動自在に支持するサイドサポートと、により構成される耕耘爪軸仕組と、
前記サイドケースと、前記サイドサポートと、に接続されるメインビームと、
前記耕耘爪軸仕組と前記メインビームとの間に設けられ、前記メインビームに対して前記耕耘爪軸仕組を回動可能とする回動装置と、を備えることを特徴とするロータリ耕耘装置。
【請求項2】
前記回動装置は、アクチュエータを有し、
該アクチュエータは、前記走行機体の運転部からの操作により作動するとともに、当該操作により前記メインビームに対して前記耕耘爪軸仕組を回動させることを特徴とする請求項1に記載のロータリ耕耘装置。
【請求項3】
前記回動装置は、回動規制機構を有し、
該回動規制機構は、前記メインビームに対する前記耕耘爪軸仕組の位置を固定する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロータリ耕耘装置。
【請求項4】
前記回動規制機構は、
前記耕耘爪軸仕組に設けられる第一係合部と、
前記メインビームに相対回転不能に、且つ前記第一係合部側に摺動可能に設けられる第二係合部と、を備え、
前記第一係合部と前記第二係合部が嵌合する、ことを特徴とする請求項3に記載のロータリ耕耘装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−90577(P2013−90577A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232870(P2011−232870)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】