説明

ローダミン系化合物

【課題】画像のコントラストを鮮明にするために540〜600nmにある不必要な波長の光をカットでき、また表示画像の鮮明さを保つために蛍光灯などの外光による540〜560nmの光による映り込みや反射を防止することのできる耐久性に富む光学フィルター用色素の提供。
【解決手段】下記の一般式(1)で表されるローダミン系化合物。


(式中、R1〜R2は無置換又はメチル基等及びハロゲンから選ばれる置換基を有する核炭素数6〜24のアリール基である。R3は水素原子、メチル基等又はハロゲンを示し、Xはカウンターイオンを示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱、耐光性に優れる新規なローダミン系化合物に関するものである。より詳細には、本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、ブラウン管表示装置(CRT)、フィールドエミッション型ディスプレイ(FED)等の発光色の色純度を向上させるために取り付けられる光学フィルター用材料として有用なローダミン系色素、もしくは室内において通常用いられている蛍光灯の映り込みや反射を防ぐ用途のために取り付けられる光学フィルター用材料として有用なローダミン系色素に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、ブラウン管表示装置(CRT)、フィールドエミッション型ディスプレイ(FED)等のような画像表示装置は、赤、緑、青である光の三原色の組み合わせでカラー画像を表示する。しかし、これらのディスプレイでは、発光体の特性により蛍光体から発せられる光に余剰な光が含まれているため、緑色部分と赤色部分を正確に再生できずにいた。そこで、画像のコントラストを鮮明にするために540nm〜600nmにある不必要な波長の光をカットするためにその波長範囲に吸収を持つ色素を用いたフィルターが使用されている。更に、表示画像のコントラストの鮮明さを保つ為に蛍光灯などの外光による540nm〜560nmの光による映り込みや反射を防止する機能も合わせて求められている。
【0003】
この550nm付近の余剰発光波長の光を抑え、かつ540nm〜560nmの外光による映り込みや反射を防止するためには、その波長の光を選択的に吸収する色素を用いることが有効であり、特定波長帯の光線を通さない光学フィルターが下記する特許文献1、特許文献2及び特許文献3に提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの先行技術で開示されている色素は、光による劣化のために経時変化する確率が高く安定性が不十分である。また、先行技術で開示されている色素を用いた光学フィルターにおいては、その耐久性に改善の余地が残されている。
【0005】
一方、500nm〜600nmの範囲に強度の大きい吸収を示す化合物として、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン3B、ローダミンF、ローダミン101、ローダミン110、ローダミン116、ローダミン123等のローダミン系化合物が挙げられる。そして、それらの特性を活すべく構造改変されたローダミン系色素が光吸収剤や光学記録材料等の色素として広く用いられていることが下記する特許文献4に提案されている。
【0006】
【特許文献1】国際公開WO00−23829号公報
【特許文献2】特開2005−331545号公報
【特許文献3】特開2005−194509号公報
【特許文献4】特開2005−2290号公報
【0007】
ローダミン系化合物は、π共役が伸張した色素カチオンとアニオンから形成される。色素カチオンは光、酸素、オゾン等によって分解反応を受け吸収波長が変化したり色素骨格が破綻するなど、耐光性と耐熱性について十分に満足できるものではなかった。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、優れた耐光性および耐熱性を有し、溶媒、樹脂、粘着剤等に対する高い溶解性を有するローダミン系化合物を提供することを目的とする。さらに、各種ディスプレー、特にプラズマディスプレーパネルにおいて発生する540〜600nmの特定波長の光を選択的にカットするとともに、外光の映り込みや反射を抑制する為に540nm〜560nmの特定波長の光を選択的にカットするローダミン系色素を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の一般式(1)で表されるローダミン系化合物に係るものである。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R1〜R2は、各々独立に無置換又は置換基を有する核炭素数6〜24のアリール基である。ここで、核炭素数6〜24のアリール基の例としてはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ピリジル基などが挙げられる。なお、このアリール基に導入されても良い置換基についてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ハロゲン(F、Cl、Br、I)である。
なお、−CONR1R2が結合しているベンゼン環にはR1のアリール基と同様にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ハロゲンの置換基R3が導入されても良い。X−はカウンターイオンを示し、例えばハロゲンイオン,含ホウ素錯体イオン,金属錯体イオン,過酸化物イオンなどが挙げられる。具体例としては、以下に示すアニオンなどを挙げることができる。なお、Phはフェニル基を示す。)
【0012】
【化2】

【発明の効果】
【0013】
本発明のローダミン系化合物は耐光性と耐熱性に優れ、有機溶媒、樹脂、粘着剤等に高い溶解性を示すので、540nm〜600nmの光を吸収する色素としての使用に好適である。具体的には、2、6−キシリルアミノ基の導入により対光性と耐熱性を向上させ、ジアリールアミド基の導入により吸収波長を適切なλmaxに調整している。そして、本発明のローダミン系化合物をプラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、ブラウン管表示装置(CRT)、フィールドエミッション型ディスプレイ(FED)等の発光色の色純度を向上させるために取り付けられる光学フィルター用材料として、もしくは室内において通常用いられている蛍光灯の映り込みや反射を防ぐ用途のために取り付けられる光学フィルター用材料として用いた場合に、活性分子や光との反応による分解を起こすことなく優れた耐久性を示す。
【0014】
本発明によるローダミン系化合物は、赤、緑、青といった光の三原色に関する光を効率良く透過し、540nm〜600nm、特に540nm〜560nmの光を選択的にかつ効率よく吸収するので、ディスプレイ等の前面に設置される光学フィルターの色素として使用される際に、ディスプレイパネルから必要な赤、青、緑といった光の三原色の発光を妨げることなく色純度を向上することができ、また、外光の映り込みや反射も防止できるので画面を鮮明にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明を詳細に説明する。
特に好ましいローダミン系化合物の色素カチオン成分の具体例としては、例えば下記に示す化合物が挙げられる。
【0016】
【化3】

また、本発明のローダミン系化合物のアニオン成分の具体例としては、例えば下記に示すアニオン化合物が挙げられる。
【0017】
【化4】

【0018】
本発明の上記一般式(1)で表されるローダミン系化合物の製造方法は、特に限定されず、周知一般の反応を利用した方法で得ることができる。例えば、3,6−ジ(2’,6’−キシリル)ローダミンと第二級アミンとの反応により色素カチオン部を得ることができ、続いて塩化合物との反応によりアニオン交換反応が進行し、他のアニオンへと変換が可能である。たとえば下記の(2)または(3)の反応式により得ることができる。
【0019】
【化5】

【化6】

【0020】
上記の本発明のローダミン系化合物は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、ブラウン管表示装置(CRT)、フィールドエミッション型ディスプレイ(FED)等の画像表示装置に用いられる光学フィルター用の色素として使用してもよく、540nm〜600nmの範囲の光を吸収する色素としての使用に好適である。光学フィルターは、540〜600nm、特に540〜560nmの光の選択吸収性が求められるのであるが、これは緑色の画像のコントラストが不鮮明になるおそれを防ぐのと同時に、室内において通常用いられている蛍光灯の映り込みや反射を防ぐ用途のために取り付けられるものである。このため、本発明によるローダミン系化合物は、以下に詳述するが、光学フィルターに加工した場合の透過率の低下が550nmの波長近辺で起こることが好ましい。透過率の低下が上記範囲を逸脱すると、純粋な赤色光(630nm)の透過やオレンジ光側の波長に近い緑色光の透過を妨げるおそれがあり、赤色光や緑色光を十分取り出せず、十分な色純度が達成できないおそれがあり、画像を不鮮明にするおそれがあるからである。
【0021】
本発明のローダミン系色素をディスプレイ光学フィルター用色素として用いて、コントラスト向上用フィルター、映り込み防止フィルター及び反射防止フィルターを作製する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の3つの方法が利用できる。
【0022】
すなわち、(i)樹脂に、ディスプレイ光学フィルター用色素を混練し、加熱成形して樹脂板あるいはフィルムを作製する方法;(ii)ディスプレイ光学フィルター用色素を含有する塗料(液状ないしペースト状物)を作製し、透明樹脂板、透明フィルムあるいは透明ガラス板上にコーティングする方法;および(iii)ディスプレイ光学フィルター用色素を粘着剤や接着剤に含有させて、合わせ樹脂板、合わせ樹脂フィルム、合わせガラス等を作製する方法等である。
【0023】
このディスプレイ用フィルターは、540〜560nmの光をを選択的にかつ効率よく吸収し、色純度を上げ、映り込みや反射を防止するディスプレー用のフィルターとして、ディスプレーの前面に設置することができる。520〜560nm、特に530nm未満の光の選択吸収性が低いと、画像が不鮮明になるおそれがある。
【0024】
本発明のローダミン系化合物を画像表示用の光学フィルターに用いる場合、光学フィルターは、通常、独立して制御できる複数の発光部を有する発光素子の前面に配置される。用いることができる発光素子は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、ブラウン管表示装置(CRT)、フィールドエミッション型ディスプレイ(FED)等などを含む。例えば、光学フィルターを発光素子の表面に直接貼り付けてもよく、発光素子の前に前面板が設けられている場合は、前面板の表側(外側)または裏側(発光素子側)にフィルムを貼り付けて、該前面板を光学フィルターとしてもよい。
【実施例】
【0025】
(製造実施例1)ローダミン化合物Aのジフェニルアミド化によるローダミン系化合物Bの製造
3,6−ジ(2’,6’−キシリル)ローダミン8.92g、ジフェニルアミン3.77g、トリエチルアミン19.5g、トルエン145gをフラスコに仕込み、室温でオキシ塩化リン11gを滴下した。全混合物を85度まで加熱し3時間撹拌した。室温まで冷却後、反応混合物を500gの氷水に排出した。有機相を分液し水洗後脱水したところに130gのヘキサンをゆっくりと加えた。分離したタール状のアミド化体をヘキサンと混合し12時間撹拌し、析出した結晶を吸引濾過にて集め、70〜80℃で乾燥させ、塩化物イオンをカウンターアニオンに持つ、ローダミン系化合物Bを94.4%の収率で得た。
【0026】
(製造実施例2)ローダミン系化合物Cの製造
ローダミン系化合物B8.00gをメタノール135gに分散させ、メタノール28.0gに溶解させたナトリウムボラン−ビス(3,5−ジ−t−ブチルサリシラート)5.90gを10分間で滴下した。6.5時間撹拌後水1kgにゆっくりと排出し、食塩50gを加えた。析出した結晶を吸引濾過にて集め、水洗した。65℃で乾燥の後100℃でも乾燥を行い、ローダミン系化合物Cを87.1%の収率で得た。
【0027】
(実施例1、比較例1、比較例2)
ローダミン系化合物B、ローダミン系化合物C、比較化合物1(ローダミンB)、比較化合物2(シアニン化合物)の各々7mgと、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)1gをクロロベンゼン2.2g、トルエン0.87g、酢酸エチル0.90g、アセトン0.79gの混合溶媒に溶解させ塗布液を作成した。この塗布液を100ミクロン厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにバーコーター#3で塗布し、90℃において3分乾燥した。得られた試験片の透過率を測定後、試験片に20000ルックスの光源を用いて144時間の連続照射を行い、波長545〜555nmの間にある最低透過率の強度を再度測定した。途中、48時間でも測定を行った。それぞれの色素について連続照射前の545〜555nmの最低透過率の強度を100とした相対値の評価結果を、耐久性として第1表にまとめた。
【0028】
【化7】

【0029】
【表1】

【0030】
表1から分かるように、本発明のローダミン系化合物B及びCを用いた実施例1及び2は、初期においてローダミンBを用いた比較例1と同等以上の耐久性を示し、かつ比較例2よりも優れた耐久性を示した。更に時間を重ねると、ローダミンBよりも高い耐久性が持続することが明らかである。この結果は、本発明のローダミン系化合物が、優れた耐久性の実現および色素の光分解の抑制に有効であることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表されるローダミン系化合物。
【化1】

(式中、R1〜R2は、各々独立に無置換又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びハロゲンから選ばれる置換基を有する核炭素数6〜24のアリール基である。R3は水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基又はハロゲンを示し、Xはカウンターイオンを示す。)

【公開番号】特開2007−211226(P2007−211226A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61811(P2006−61811)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000179306)山田化学工業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】