説明

ロービングチーズおよびその製造方法

【課題】ロービングパッケージを縦置きにしてその中央部の両端間に貫通した空間に内接するロービングを引き出して使用するとき、巻き取られたロービングの1層ないし数層が崩落しないロービングチーズと、そのようなロービングチーズを一般的な巻取装置によって製造する方法を提供すること。
【解決手段】k層目に巻き取ったロービングとk+2層目に巻き取ったロービングが繊維の長手方向に沿って平行に接触または重なり合った状態に巻かれたロービングチーズおよびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維を円筒形に巻き取ったガラスロービングチーズおよびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスロービングチーズ(ガラスロービング巻体とも呼ばれる)は従来から、以下に記す方法によって製造されている。まず、数百本〜数千本のガラス繊維フィラメントをブッシングから引き出し、これに集束剤を塗布して1本の束にまとめたストランドを綾振りしながら巻取チューブに高速で巻き取った後、乾燥してケーキを得る。得られた複数のケーキから複数のストランドを引き出し、これを繊維の長手方向(以下適宜、繊維長方向と言う)に沿って平行に集合させたロービングを綾振りしながら巻取主軸に巻き取り、巻き取った後巻取主軸から外し、巻取主軸の部分が貫通した空間となった円筒形状のロービングチーズを得る。得られたロービングチーズは、熱処理によってポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱収縮フィルムを外面に被着し、ロービングパッケージを得る。
【0003】
ガラスロービングチーズは、プラスチックの強度アップのための補強材として、例えば、スプレーアップ成形法、プリフォーム成形法、SMC(Sheet Molding Compounds)成形法などのガラス繊維強化プラスチック(FRP)成形分野で使われてきた。熱硬化性樹脂とガラス繊維の複合コンパウンドであるSMC成形用シートの製造においては大量のロービングを一斉に使用するため、1巻の重量が小さい従来のガラスロービングチーズは、長時間連続作業のために行う多数のロービングの終端と始端を結ぶ糸繋ぎ作業に手間がかかり、またロービングパッケージの切り替え回数が多くなるなどのために生産性を損なっていた。また糸繋ぎが多いガラスロービングは、それをカットしたチョップドストランドに分散不良が発生し、そこには樹脂が含浸されにくいため、部分的な樹脂の含浸不良などSMCシートの品質を悪化させる問題もあった。
【0004】
このような問題の解決策の一つとしてロービングの糸繋ぎを少なくするために、ガラスロービングパッケージは、その外径と巻き高さを大きくした大型ロービングパッケージへ移行してきており、昨今では重量が200kgを越えるものも多く使われている。しかし、大型ロービングパッケージは、ロービングを解舒しながら引き出して使用するときにロービングパッケージの中央部の両端間に貫通した空間に内接するロービングの崩落現象が起こりやすく、崩落したロービングが縺れ、またそれが結び目を作って作業を阻害する問題があった。
【0005】
このような問題の解決手段の一つとして、ロービングの複数をほぼ平行にして少ない重なりで同じ巻層に巻き取ったロービングパッケージが知られている(特許文献1)。
【0006】
また、大きな綾角度で巻き取った層と小さな綾角度巻き取った層とを交互に配置したロービングパッケージとその製造方法が知られている(特許文献2)。
【0007】
さらに、同一巻き取り層内(同一トラバース内)の隣り合ったロービング同士が接触もしくは重なり合うように巻き取られたガラスロービングチーズの製造法が知られている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平7−257818号公報
【特許文献2】特開平7−237820号公報
【特許文献3】特開平5−229731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に記載された手段は、複数のロービングを同時に巻き取るため、張力付与装置などの装置が複数必要である。また、張力付与装置などの装置が増加すると、ケーキからストランドを引き出してロービングに集合させる工程でストランドやロービングの送りが中断するなどのトラブルが増加することの懸念を排除しきれない。
【0009】
前記特許文献2に記載された手段は、それを実現する装置の機構が複雑になるため、巻取装置が高価になる。
【0010】
前記特許文献3に記載された手段は、ワインド数の設定が極端に大きいため (例えば、ロービングチーズの高さが1000mmのときにワインド数は285)、ロービングチーズの巻取綾角度が小さくなる。巻き始めから巻き終わりまで小さな巻取綾角度で巻き取ったロービングチーズとロービングパッケージは、特許文献2によって指摘されているように、巻取装置からの取り外し、オーブンでの熱処理、および輸送のための移動などのハンドリングによって変形する。その結果、ロービングパッケージの中央部の両端間に貫通した空間に内接するロービングを引き出すとき、その解舒性が悪い。
【0011】
本発明の目的は、ロービングパッケージを縦置きにしてその中央部の両端間に貫通した空間に内接するロービングを引き出して使用するときに巻き取られたロービングの1層ないし数層が崩落しないロービングチーズと、そのようなロービングチーズを一般的な巻取装置によって製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述の問題点を解決することを目的としてなされたものであり、ロービングが円筒状に綾巻きされて製造されるロービングチーズにおいて、綾振装置が半往復距離を1回移動する間に行ったロービングの綾巻きを1層と呼び、kを自然数として綾振装置の半往復の回数がk回目に行ったロービングの綾巻きを第k層と呼ぶことにして、k層目に巻き取ったロービングとk+2層目に巻き取ったロービングが繊維の長手方向に沿って平行に接触または重なり合った状態に巻かれたロービングチーズである。
【0013】
また本発明は、綾振装置の半往復距離がh、綾巻きされたロービングの幅が2d、ワインド数がW、nが自然数であるとして、ワインド数Wがnh/2(h+d)≦W≦nh/2(h−d)によって規定される範囲にあるロービングチーズである。
【0014】
また本発明は、前記ワインド数WがW<h/2dで規定される範囲にある上記に記載のロービングチーズである。
【0015】
さらに本発明は、ロービングが円筒状に綾巻きされて製造されるロービングチーズにおいて、綾振装置が半往復距離を1回移動する間に行ったロービングの綾巻きを1層と呼び、kを自然数として綾振装置の半往復の回数がk回目に行ったロービングの綾巻きを第k層と呼ぶことにして、k層目に巻き取ったロービングとk+2層目に巻き取ったロービングが繊維の長手方向に沿って平行に接触または重なり合った状態に巻かれたロービングチーズの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ロービングを引き出して使用するときにロービングパッケージの中央部の両端間に貫通した空間に内接するロービングの1層ないし数層が崩落を起こすことなく、崩落したロービングが縺れて結び目を作ることもない。このため本発明は特に、崩落現象が発生しやすい大型ロービングパッケージに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ロービングの綾巻きは、ロービングが巻取主軸の回転によって巻き取られるのと同時に、ロービングが綾振装置によって巻取主軸に平行に往復運動を繰り返すことによって行われる。綾振装置が巻取主軸に平行に往路を移動するときに第1層のロービングが巻き取られるとすれば、第2層のロービングは、綾振装置が復路を移動するときに巻き取られる。kを自然数として、第k層のロービングが綾振装置の往路の移動によって巻き取られると、第k+1層は、綾振装置の復路の移動によって巻き取られ、第k+2層は、綾振装置の往路の移動によって巻き取られる。したがって、第k層と第k+2層のロービングはともに、綾振装置の往路または復路の移動によって巻き取られる。ワインド数を適切に設定すれば、第k層のロービングと第k+2層のロービングは、第k+1層のロービングと交差する点を除いて繊維長方向に沿って平行に接触または重なり合った状態で巻き取ることができる。
【0018】
図1は、ロービングチーズの断面の模式図であり、ロービングチーズの中央部の両端間に貫通した空間部0に内接して1層目1があり、その外側に2層目2、2層目2の外側に3層目3があることを模式的に示す。図2は、本発明の綾巻きの特徴を示す側面図であり、1層目のロービングと3層目のロービングが繊維長方向に沿って平行に重なり合って巻取主軸4に巻き取られる様子を模式的に示している。図2には、第1層1と第2層2、第3層3だけを示したが、kを自然数として、第k層のロービングと第k+2層のロービングは、第k+1層のロービングと交差する点を除いて繊維長方向に沿って平行に重なり合った状態で巻き取られる。
【0019】
ロービングをこのように巻き取った本発明のロービングチーズは、第k層のロービングと第k+2層のロービングが第k+1層のロービングと交差する点を除いて繊維長方向に沿って平行に重なっており、その間の接触面積が大きいため、第k層のロービングと第k+2層のロービングの間には、比較的大きな摩擦力が作用する。また、第k+2層のロービングが第k+1層のロービングと交差する点を除いて第k層のロービングを支えるように作用するため、巻き取ったロービングをロービングパッケージの中央部の両端間に貫通した空間側(以下適宜、ロービングパッケージの内側と言う)から解舒しながら引き出して使用するとき、ロービングパッケージの中央部の両端間に貫通した空間に内接するロービングの1層ないし数層が崩落を起こすことがない。
【0020】
また、本発明のロービングチーズは、第k層と第k+2層のロービングが繊維長方向に沿って平行に接触または重なり合った状態で巻き取られているため、巻き取ったロービングをロービングパッケージの内側から解舒するときに現れる内側の表面(以下適宜、巻き目と言う)の凹凸が小さく、また、ロービングの充填率がわずかではあるが大きい。
【0021】
ロービングを綾巻きするときには、ロービングチーズの形を整えるためロービングチーズに図示しないタッチローラーが押し当てられる。本発明のロービングチーズは、ロービングの巻き目の凹凸が小さいため、ロービングチーズとタッチローラーとの接点が多く、そのためタッチローラーの圧力がロービングチーズに均等にかかるようになり、タッチローラーの押し圧によってロービングが傷むことがない。
【0022】
また、ロービングの充填率がわずかでも大きいことによって、本発明のロービングチーズは、同一重量でサイズ(体積)が若干コンパクトであり、また、同一体積ではより多くのロービングを巻き取ったものとなるため、輸送コストの低減やロービングパッケージの切り替え回数の低減に若干の効果がある。
【0023】
また、本発明のロービングチーズは、解舒するときに崩落を起こし難いため、ロービングチーズを熱収縮フィルムで外面を覆った後の熱処理工程における加熱時間を約半分に短縮することができた。熱処理条件は従来、例えば100℃、12時間であったが、本発明によって100℃、6時間に短縮された。該熱処理は、最外層のロービングに熱収縮フィルムを密着させて最外層の崩落を防止するとともに、ガラス繊維の表面に塗布した集束剤を軟化して互いに接触するロービング同士を接着する。この接着力が解舒して使用するときにロービングが崩落するのを防止する。熱処理時間の短縮は集束剤によるロービング同士の接着力を低下させるため、ロービングが崩落しやすくなるが、本発明の崩落防止効果は、集束剤の接着力低下による崩落促進効果に勝るものであったため、熱処理時間の短縮が実現できたのもと思われる。
【0024】
以下、本発明の特徴である、第k層のロービングと第k+2層のロービングを繊維長方向に沿って平行に接触または重なり合った状態で巻き取るためのワインド数の最適化について説明する。
【0025】
k層目に巻き取ったロービングとk+2層目に巻き取ったロービングが接触した状態で巻き取るためには、綾振装置の1往復距離に綾巻きされたロービングの幅を加算または減算した距離を綾振装置が移動する間に、巻取主軸が整数回だけ回転すればよい。綾振装置の半往復距離をh、綾巻きされたロービングの幅を2d、nを自然数とすると、綾振装置の1往復距離は2hであるから、前記本発明の綾巻きを行うためには、綾振装置が距離2h−2dから2h+2dの範囲を移動する間に巻取主軸がn回転すればよい。
【0026】
図3と図4は、本発明の綾巻きの特徴を示す側面図であり、k層目のロービングkとk+2層目のロービングk+2が繊維長方向に沿って平行に接触して巻き取られる様子が模式的に示されている。図示しない巻取主軸の回転に伴ってロービングチーズ5が回転しながら図示しない綾振装置が左から右へ移動するときに、第k層のロービングkがロービングチーズ5に綾巻きされ、次に綾振装置が折り返して右から左へ移動しながら図示しない第k+1層のロービングが綾巻きされ、さらに綾振装置が折り返して左から右へ移動しながら第k+2層のロービングk+2が綾巻きされる。
【0027】
図3は、図示しない綾振装置が点Aから移動して往復し、ロービングの幅2dだけ点Aの手前にある点Bに到達したときに、第k層のロービングkと第k+2層のロービングk+2が繊維長方向に沿って平行に接触している様子を示している。ロービングをこのように綾巻きするためには、綾振装置が距離2h−2dを移動する間に巻取主軸がn回転すればよい。
【0028】
また、図4は、綾振装置が点Aから移動して往復し、ロービングの幅2dだけ点Aを超えた点Cに到達したときに、第k層のロービングkと第k+2層のロービングk+2が繊維長方向に沿って平行に接触している様子を示している。ロービングをこのように綾巻きするためには、綾振装置が距離2h+2dを移動する間に巻取主軸がn回転すればよい。ワインド数Wは、綾振装置が半往復距離hを移動する間の巻取主軸の回転数であるから、前記本発明の綾巻きの特徴は、ワインド数Wによって次式のように規定することができる。
【0029】
nh/2(h+d)≦W≦nh/2(h−d) (1)
同一巻き取り層内で隣り合うロービング同士が接触するように綾巻きする場合、そのワインド数Wはh/2dで表される。同一巻き取り層内で隣り合うロービング同士が重なるように綾巻きする場合、そのワインド数Wはh/2dを超える。本発明では、同一巻き取り層内で隣り合うロービング同士が接触もしくは重なり合うような巻き取り方は、課題に記述した理由によって除外する。よって、ワインド数Wはh/2d未満、すなわち、
W<h/2d (2)
である。
【0030】
また、綾振装置がその1往復距離2hを移動する間に巻取主軸が整数n回回転する場合、すなわち、W=n/2の場合は、ロービングチーズにロービングのない空間が形成されるので除外してもよい。
【0031】
なお、ロービングの幅の半分dが綾振装置が半往復距離hよりもずっと小さいとみなすことができる場合には、式(1)の関係は、次式によって近似することができる。
【0032】
n/2−nd/2h≦W≦n/2+nd/2h (3)
最適なワインド数は、式(3)より半整数の近傍にあることが分かる。
【0033】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明する。表1は、実施例と比較例についてそれぞれ、綾振装置の半往復距離h、ロービングの幅2d、綾振装置がほぼ1往復する間の巻取主軸の回転数を意味する自然数n、式(1)で示されるワインド数Wの最小値nh/2(h+d)、式(1)で示されるワインド数Wの最大値nh/2(h−d)、式(2)で示されるワインド数Wの最大値h/2d、ワインド数Wの設定値、および目視にて観察したロービングの崩落の有無とロービングの巻き目の凹凸の大小を示す。
【実施例1】
【0034】
17個のケーキから引き出した17本のストランドを繊維長方向に沿って平行に合糸した幅7mmのロービングを綾振装置の半往復距離760mm、巻取速度480m/分、ワインド数4.010で巻き取り、内径180mm、外径560mm、高さ770mm、重量220kgのロービングチーズを得た。このロービングチーズは、熱収縮フィルムで外面を覆い、100℃の熱風乾燥炉で6時間熱処理してロービングパッケージを得た。第k層のロービングと第k+2層のロービングの重なりは、3〜4mmであった。ワインド数は表1に示すように、式(1)で規定される範囲にあり、また、式(2)で規定される範囲を超えていない。
このロービングパッケージは、内側からロービングを引出速度80m/分で上方へ引き出したところ、ロービングの1層または数層が崩落することはなかった。また、ロービングの巻き目の凹凸は小さかった。
【実施例2】
【0035】
ワインド数を4.511にしたこと以外は実施例1と同様にして、サイズと重量が実施例1と同じロービングパッケージを得た。第k層のロービングと第k+2層のロービングの重なりは、3〜4mmであった。ワインド数は表1に示すように、式(1)で規定される範囲にあり、また、式(2)で規定される範囲を超えていない。
【0036】
このロービングパッケージは、内側からロービングを引出速度80m/分で上方へ引き出したところ、ロービングの1層または数層が崩落することはなかった。また、ロービングの巻き目の凹凸は小さかった。
【実施例3】
【0037】
ワインド数を5.012にしたこと以外は実施例1と同様にして、サイズと重量が実施例1と同じロービングパッケージを得た。第k層のロービングと第k+2層のロービングの重なりは、3〜4mmであった。ワインド数は表1に示すように、式(1)で規定される範囲にあり、また、式(2)で規定される範囲を超えていない。
【0038】
このロービングパッケージは、内側からロービングを引出速度80m/分で上方へ引き出したところ、ロービングの1層または数層が崩落することはなかった。また、ロービングの巻き目の凹凸は小さかった。
【実施例4】
【0039】
ワインド数を5.513にしたこと以外は実施例1と同様にして、サイズと重量が実施例1と同じロービングパッケージを得た。第k層のロービングと第k+2層のロービングの重なりは、3〜4mmであった。ワインド数は表1に示すように、式(1)で規定される範囲にあり、また、式(2)で規定される範囲を超えていない。
【0040】
このロービングパッケージは、内側からロービングを引出速度80m/分で上方へ引き出したところ、ロービングの1層または数層が崩落することはなかった。また、ロービングの巻き目の凹凸は小さかった。
【実施例5】
【0041】
ワインド数を6.015にしたこと以外は実施例1と同様にして、サイズと重量が実施例1と同じロービングパッケージを得た。第k層のロービングと第k+2層のロービングの重なりは、3〜4mmであった。ワインド数は表1に示すように、式(1)で規定される範囲にあり、また、式(2)で規定される範囲を超えていない。
【0042】
このロービングパッケージは、内側からロービングを引出速度80m/分で上方へ引き出したところ、ロービングの1層または数層が崩落することはなかった。また、ロービングの巻き目の凹凸は小さかった。
【実施例6】
【0043】
ワインド数を6.516にしたこと以外は実施例1と同様にして、サイズと重量が実施例1と同じロービングパッケージを得た。第k層のロービングと第k+2層のロービングの重なりは、3〜4mmであった。ワインド数は表1に示すように、式(1)で規定される範囲にあり、また、式(2)で規定される範囲を超えていない。
【0044】
このロービングパッケージは、内側からロービングを引出速度80m/分で上方へ引き出したところ、ロービングの1層または数層が崩落することはなかった。また、ロービングの巻き目の凹凸は小さかった。
【実施例7】
【0045】
ワインド数を7.017にしたこと以外は実施例1と同様にして、サイズと重量が実施例1と同じロービングパッケージを得た。第k層のロービングと第k+2層のロービングの重なりは、3〜4mmであった。ワインド数は表1に示すように、式(1)で規定される範囲にあり、また、式(2)で規定される範囲を超えていない。
【0046】
このロービングパッケージは、内側からロービングを引出速度80m/分で上方へ引き出したところ、ロービングの1層または数層が崩落することはなかった。また、ロービングの巻き目の凹凸は小さかった。
【実施例8】
【0047】
ワインド数を7.518にしたこと以外は実施例1と同様にして、サイズと重量が実施例1と同じロービングパッケージを得た。第k層のロービングと第k+2層のロービングの重なりは、3〜4mmであった。ワインド数は表1に示すように、式(1)で規定される範囲にあり、また、式(2)で規定される範囲を超えていない。
【0048】
このロービングパッケージは、内側からロービングを引出速度80m/分で上方へ引き出したところ、ロービングの1層または数層が崩落することはなかった。また、ロービングの巻き目の凹凸は小さかった。
【実施例9】
【0049】
ワインド数を7.025にしたこと以外は実施例1と同様にして、サイズと重量が実施例1と同じロービングパッケージを得た。第k層のロービングと第k+2層のロービングの重なりは、1〜2mmであった。ワインド数は表1に示すように、式(1)で規定される範囲にあり、また、式(2)で規定される範囲を超えていない。
【0050】
このロービングパッケージは、内側からロービングを引出速度80m/分で上方へ引き出したところ、ロービングの1層または数層が崩落することはなかった。また、ロービングの巻き目の凹凸は小さかった。
【実施例10】
【0051】
ワインド数を6.477にしたこと以外は実施例1と同様にして、サイズと重量が実施例1と同じロービングパッケージを得た。第k層のロービングと第k+2層のロービングの重なりは、1〜2mmであった。ワインド数は表1に示すように、式(1)で規定される範囲にあり、また、式(2)で規定される範囲を超えていない。
【0052】
このロービングパッケージは、内側からロービングを引出速度80m/分で上方へ引き出したところ、ロービングの1層または数層が崩落することはなかった。また、ロービングの巻き目の凹凸は小さかった。
【実施例11】
【0053】
ワインド数を7.000にしたこと以外は実施例1と同様にして、サイズと重量が実施例1と同じロービングパッケージを得た。第k層のロービングと第k+2層のロービングの重なりは、7mmであった。ワインド数は表1に示すように、式(1)で規定される範囲にあり、また、式(2)で規定される範囲を超えていない。
このロービングチーズは、ロービングのない空間が形成されることを目視で確かめた。
【0054】
(比較例1)ワインド数を6.422にしたこと以外は実施例1と同様にして、サイズと重量が実施例1と同じロービングパッケージを得た。第k層のロービングと第k+2層のロービングの重なりはなかった。ワインド数は表1に示すように、式(2)で規定される範囲を超えていないが、式(1)で規定される範囲の外にある。
【0055】
このロービングパッケージは、内側からロービングを引出速度80m/分で上方へ引き出したところ、ロービングの1層または数層が崩落した。また、ロービングの巻き目の凹凸は大きかった。
【0056】
(比較例2)ワインド数を6.805にしたこと以外は実施例1と同様にして、サイズと重量が実施例1と同じロービングパッケージを得た。第k層のロービングと第k+2層のロービングの重なりはなかった。ワインド数は表1に示すように、式(2)で規定される範囲を超えていないが、式(1)で規定される範囲の外にある。
【0057】
このロービングパッケージは、内側からロービングを引出速度80m/分で上方へ引き出したところ、ロービングの1層または数層が崩落した。また、ロービングの巻き目の凹凸は大きかった。
【0058】
(比較例3)ワインド数を7.217にしたこと以外は実施例1と同様にして、サイズと重量が実施例1と同じロービングパッケージを得た。第k層のロービングと第k+2層のロービングの重なりはなかった。ワインド数は表1に示すように、式(2)で規定される範囲を超えていないが、式(1)で規定される範囲の外にある。
【0059】
このロービングパッケージは、内側からロービングを引出速度80m/分で上方へ引き出したところ、ロービングの1層または数層が崩落した。また、ロービングの巻き目の凹凸は大きかった。
【0060】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】ロービングチーズの断面の模式図。
【図2】第1層、第2層、および第3層のロービングが巻取主軸に綾巻きされた様子を模式的に示す側面図。
【図3】k+2層目のロービングがk層目のロービングの左側に接触して綾巻きされる様子を模式的に示す側面図。
【図4】k+2層目のロービングがk層目のロービングの右側に接触して綾巻きされる様子を模式的に示す側面図。
【符号の説明】
【0062】
0 ロービングチーズの中央部の両端間に貫通した空間部
1 中央部の両端間に貫通した空間部に内接したロービングチーズの1層目
2 中央部の両端間に貫通した空間部に内接したロービングチーズの2層目
3 中央部の両端間に貫通した空間部に内接したロービングチーズの3層目
4 巻取主軸
5 綾巻き途中のロービングチーズ
k k層目のロービング
k+2 k+2層目のロービング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロービングが円筒状に綾巻きされて製造されるロービングチーズにおいて、綾振装置が半往復距離を1回移動する間に行ったロービングの綾巻きを1層と呼び、kを自然数として綾振装置の半往復の回数がk回目に行ったロービングの綾巻きを第k層と呼ぶことにして、k層目に巻き取ったロービングとk+2層目に巻き取ったロービングが繊維の長手方向に沿って平行に接触または重なり合った状態に巻かれたことを特徴とするロービングチーズ。
【請求項2】
綾振装置の半往復距離がh、綾巻きされたロービングの幅が2d、ワインド数がW、nが自然数であるとして、ワインド数Wがnh/2(h+d)≦W≦nh/2(h−d)によって規定される範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のロービングチーズ。
【請求項3】
前記ワインド数WがW<h/2dで規定される範囲にあることを特徴とする請求項2に記載のロービングチーズ。
【請求項4】
ロービングが円筒状に綾巻きされて製造されるロービングチーズの製造方法において、綾振装置が半往復距離を1回移動する間に行ったロービングの綾巻きを1層と呼び、kを自然数として綾振装置の半往復の回数がk回目に行ったロービングの綾巻きを第k層と呼ぶことにして、k層目に巻き取ったロービングとk+2層目に巻き取ったロービングが繊維の長手方向に沿って平行に接触または重なり合った状態に巻くことを特徴とするロービングチーズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−264848(P2006−264848A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83959(P2005−83959)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】