説明

ローラクランプ用カバー

【課題】 ローラクランプが取り付けられた医療用チューブ内を流れる液体の流量を設定量に保つことのできるローラクランプ用カバーを提供すること。
【解決手段】 チューブT内を流れる液体の流量を調整するローラクランプ10を、ローラクランプ用カバー20内に収容するようにした。そして、ローラクランプ用カバー20を、ヒンジ連結部23を中心として互いに進退する方向に回転することにより、両側からチューブTを突出させた状態でローラクランプ10を収容できる収容部24と、収容部24内にローラクランプ10を収容したときに、チューブTの外周面に圧接することによりローラクランプ10がチューブTから位置ずれすることを防止する位置ずれ防止部25a,25b等とで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用チューブ内を流れる医療用の液体の流量を調整するためのローラクランプに取付けられるローラクランプ用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者に対して薬液や血液等の液体を、医療用チューブを備えた輸液ラインまたは輸血ラインを用いて供給することが行われている。このような場合に、医療用チューブ内を流れる液体や血液の流量を適正量に調整するための流量調整器が用いられており、この流量調整器の中に、ローラクランプがある。このローラクランプは、細長い板状の底部の長手方向に沿った両側に設けた一対の側壁部の対向面にそれぞれガイド溝を設け、この両ガイド溝に軸部を掛け渡した状態でローラが底部の長手方向に沿って移動可能になっている。また、底部の表面とガイド溝との間の高さが、底部の長手方向に沿って一方から他方に向って徐々に変わるようにしている。
【0003】
そして、底部とローラとの間に医療用チューブを設置した状態で、底部に対するローラの位置を変更することにより医療用チューブを徐々に押圧したりその押圧を徐々に解除したりすることにより医療用チューブ内を流れる液体の流量を調整できるようにしている。しかしながら、このようなローラクランプでは、患者がローラを回転操作したり、寝返り等により不意に医療用チューブを引っ張ったりすると、ローラの位置が変動して医療用チューブ内を流れる液体の流量に変化が生じる。このため、内部にローラクランプを収容することにより、ローラの操作をできなくしたローラクランプ用カバーも開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このローラクランプ用カバー(ローラクランプのカバー体)は、筐体と蓋体とを連結部で連結して構成されており、対向する面にそれぞれ医療用チューブ(送液管)を挿通させるための挿通口が設けられている。また、ローラクランプ用カバーの内部には、医療用チューブを閉塞する位置にローラを位置させたときにローラが閉塞位置から外れることを防止する係止部が設けられている。このため、医療用チューブを閉塞する位置にローラを位置させた状態で、ローラクランプをローラクランプ用カバーの内部に収容すると、ローラは閉塞位置から移動することができず、医療用チューブは閉塞状態に維持される。
【特許文献1】実開平6―48676号公報
【発明の開示】
【0005】
前述した従来のローラクランプでは、ローラクランプがローラクランプ用カバー内に収容されるため、患者等がローラを回転操作してローラの位置が変動することはない。また、係止部によってローラが医療用チューブを閉塞させる位置から医療用チューブ内に液体を通過させる位置に移動することも防止される。しかしながら、ローラクランプをこのようなローラクランプ用カバー内に収容しても、患者に薬液等を供給しているときに、患者が寝返りをうったり、医療用チューブに物や人が接触したりして、医療用チューブが突発的に引っ張られると、ローラの位置が変動して医療用チューブ内を流れる液体の流量に変化が生じることがある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、その目的は、ローラクランプが取り付けられた医療用チューブ内を流れる液体の流量を設定量に保つことのできるローラクランプ用カバーを提供することにある。
【0007】
前述した目的を達成するため、本発明に係るローラクランプ用カバーの構成上の特徴は、医療用チューブにおけるチューブ設置部に設置された部分を流量調節ローラで押圧することにより、医療用チューブ内を流れる液体の流量を調整するローラクランプを収容するローラクランプ用カバーであって、ヒンジ連結部を中心として互いに進退する方向に回転することにより開閉する略箱状の部材からなり医療用チューブを両側から突出させた状態でローラクランプを収容できる収容部と、収容部内にローラクランプを収容して収容部を閉じたときに、医療用チューブの外周面に圧接することによりローラクランプが医療用チューブから位置ずれすることを防止する位置ずれ防止部とを備えたことにある。
【0008】
前述したように構成した本発明に係るローラクランプ用カバーは、ローラクランプを収容できる収容部と、収容部内にローラクランプを収容したときに医療用チューブの外周面に圧接する位置ずれ防止部とを備えている。したがって、ローラクランプを収容部に収容してローラ部の操作をできなくするだけでなく、位置ずれ防止部を医療用チューブの外周面に圧接させてローラクランプが医療用チューブから位置ずれしないようにすることができる。すなわち、位置ずれ防止部を医療用チューブの外周面に圧接させることにより、医療用チューブが外力により引っ張られても、医療用チューブは位置ずれ防止部を介して収容部とともに移動するだけで、ローラクランプとの間の位置関係に変化は生じない。
【0009】
このため、たとえ、医療用チューブが不意に引っ張られるようなことが生じても、医療用チューブ内を流れる液体の流量を設定量に保つことができる。また、この場合のローラクランプとしては、チューブ設置部を、一方から他方に延びその長手方向に沿って医療用チューブが設置される底部と、底部の長手方向に沿った両縁部に設けられた一対の側壁部と、一対の側壁部における対向面にそれぞれ形成され、底部との間の高さを一方から他方に向って変化させながら延びるガイド溝とで構成するとともに、流量調整ローラを、両端部が一対の側壁部のガイド溝に移動可能に係合する軸部と、軸部に支持されたローラ部とで構成したものを用いることができる。
【0010】
これによると、流量調整ローラを軸部を中心として回転させながら両ガイド溝に沿って移動させることによりチューブ設置部に設置される医療用チューブをローラ部で底部に押圧して、医療用チューブ内を流れる液体の流量を調整するようにすることができる。また、このローラクランプに、流量調整ローラをチューブ設置部における所定の位置に固定するための固定手段を設けておくことがより好ましい。この固定手段としては、ローラクランプの内部に医療用チューブを巻き付けて医療用チューブが引っ張られることを防止するための棒状部を設けること等によって構成することができる。
【0011】
また、本発明に係るローラクランプ用カバーの他の構成上の特徴は、収容部の両側の医療用チューブを突出させる部分を、開閉する略箱状の部材のそれぞれの合せ面に形成した一対の凹部で構成し、位置ずれ防止部を、一対の凹部の内面に取り付けた弾性部材で構成したことにある。この場合、一対の凹部を、例えば半円状の凹部で構成し、収容部を閉じたときに、円形の穴部を形成するようにすることができる。そして、弾性部材としては、例えば、ゴム、スポンジおよびシリコーンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム等の合成ゴムや熱可塑性エラストマーからなる円弧状の一対の部材で構成することができる。これによると、収容部における医療用チューブを突出させる部分や位置ずれ防止部を簡単に形成することができる。なお、開閉する略箱状の部材とは、組み合わせることにより略箱状になる一対の箱状体または箱状体と板状体であり、その合せ面とは、閉じたときに互いに接触する面である。
【0012】
また、本発明に係るローラクランプ用カバーのさらに他の構成上の特徴は、収容部を一体成形により形成し、ヒンジ連結部を他の部分よりも薄肉にした薄肉部で構成したことにある。これによると、収容部を簡単に形成することができる。
【0013】
また、本発明に係るローラクランプ用カバーのさらに他の構成上の特徴は、流量調整ローラを固定するための固定手段を備えたことにある。これによると、より確実にローラ部を停止させることができ、医療用チューブ内を流れる液体の流量を設定量に保つことができる。また、この場合の固定手段としては、例えば、流量調整ローラの上部をチューブ設置部から突出させるとともに、収容部の両合せ面の近傍に弾性部材を設けて、この弾性部材で流量調整ローラの上部を挟持固定できるようにする手段等を用いることができる。この弾性部材としても、ゴム、スポンジおよびシリコーンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム等の合成ゴムや熱可塑性エラストマーを用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係るローラクランプ用カバーを図面を用いて詳しく説明する。図1ないし図5は、同実施形態に係るローラクランプ用カバー20(図8および図9参照)内に収容されるローラクランプ10を示しており、このローラクランプ10は本発明に係る医療用チューブとしてのチューブT(図7参照)内を流れる薬液や血液等の液体の流量を調整するために用いられる。すなわち、ローラクランプ10は、略樋状に形成されたチューブ設置部11と、チューブ設置部11の底部12にチューブTを押圧してチューブT内を流れる液体の流量を調整する流量調整ローラ19とで構成されている。
【0015】
チューブ設置部11は、細長い板状の底部12の長手方向に沿った両縁部から側壁部13,14をそれぞれ立ち上げて略樋状に形成されている。底部12は、図3に示したように底面側から見ると、略一定の幅で一端側(図1ないし図3の右側に位置する正面側で、以下、図1ないし図3の右側を一端側、左側の裏面側を他端側として説明する。)から他端側に細長く延びている。また、底部12は、図2に示したように、側面側から見ると、一端から底部12の長手方向の長さの2/3程度他端側にいったところまでは水平方向に延びる水平部12aで構成され、その水平部12aの他端から、底部12の他端近傍までの間は下方に向って傾斜する傾斜部12bで構成されている。
【0016】
そして、底部12の他端近傍部分は長さの短い水平部12cで構成されている。また、底部12の幅方向の中央には、底部12の一端側から他端側に延びるチューブ設置溝15が形成されている。このチューブ設置溝15は、内部側底面15aが幅の小さな平面に形成され、その内部側底面15aの長手方向に沿った両縁部から上方に行くほど互いの間隔が広くなった対向する傾斜面からなる壁面15b,15cが形成されて断面形状がV形になった溝で構成されている。
【0017】
そして、壁面15b,15cの上縁部(底部12の上面)は、図6に示したように、水平に延び内部側底面15aが一端側から他端側に向かって下方に傾斜して延びている。このため、チューブ設置溝15は、一端側から他端側に向かって上下方向の長さ(壁面15b,15cの高さ)が徐々に大きくなっている。そして、内部側底面15aの他端は、傾斜部12bの上面に連なっている。また、壁面15b,15cの上縁部の他端側部分は、傾斜部12bの上面と同一面に位置する傾斜部で構成されている。
【0018】
側壁部13,14は、底部12を挟んで左右対称に形成された壁部で構成されている。側壁部13,14の下端縁部は底部12の水平部12a、傾斜部12bおよび水平部12cの縁部に沿った曲線状に形成され、側壁部13,14の上端縁部は一端からチューブ設置溝15の他端上方に対応する部分までが略水平に延び、それよりも他端側部分が一端側部分よりも上方に位置する段違い状に形成されている。また、側壁部13,14の上下方向の略中央には、側壁部13,14の下端縁部と平行する段部13a,14aが形成されており、この段部13a,14aを設けることによって、側壁部13,14の上部側部分は、下部側部分よりも外側に突出している。
【0019】
そして、側壁部13,14の上部側部分の一端部間は、図4に示したように、前壁部16で接続されており、前壁部16の下端縁部、側壁部13,14の下部側部分の一端部および底部12の一端部とで囲まれる部分にチューブTを通すための挿通用開口16aが形成されている。また、側壁部13,14の他端部には、外側に向って僅かに突出する枠状部17が形成されており、この枠状部17の上部によって側壁部13,14の上部側部分の他端部間は接続されている。この枠状部17の内部には、チューブTを通すための挿通用開口17aが形成されている。
【0020】
そして、側壁部13,14の上端縁部と、前壁部16の上端縁部とに、内部側に向かって突出する枠状の突出部18が形成されており、この突出部18の内側に細長いガイド孔18aが形成されている。突出部18における側壁部13,14に沿った部分の内側縁部は、平面視で、側壁部13,14の下部側部分の内面に対応する部分まで延びている。すなわち、このチューブ設置部11は、一端から中央部よりもやや他端側にかけての部分が、高さ方向の長さがやや短く設定された細長い略樋状に形成され、他端側部分が高さ方向の長さが一端側部分の高さよりも長く設定され底部が下方に突出するとともに上部が上方に突出した長さの短い傾斜樋状に形成されている。
【0021】
そして、側壁部13,14の対向する内面には、図5および図6に示したようにガイド溝13b,14bが形成されている。このガイド溝13b,14bは、側壁部13,14に段部13a,14aを形成して側壁部13,14の上部側部分を下部側部分よりも外側に突出させるとともに、側壁部13,14の上端縁部に突出部18を設けることによって形成されている。前述したように、突出部18の内部側縁部は、側壁部13,14の下部側部分の内面に対応する部分まで延びている。
【0022】
このため、突出部18の下面と、段部13a,14aの内面側の段部の上面との間には、対向する平行面が形成されるようになり、この対向する平行面と、側壁部13,14の上部側部分の内面とで、ガイド溝13b,14bが形成される。このように、底部12に形成されたチューブ設置溝15の内部側底面15aは、一端から他端に向って下り傾斜になり、ガイド溝13b,14bは水平に形成されている。このため、ガイド溝13b,14bとチューブ設置溝15の内部側底面15aとの間の長さは、他端側ほど大きく、一端側に近づくにしたがって徐々に小さくなる。
【0023】
流量調整ローラ19は、軸方向の厚みがガイド孔18aの幅(側壁部13,14の下部側部分間の間隔)よりもやや小さな円板状のローラ部19aと、ローラ部19aの中心に沿って延び両端部がローラ部19aの両側から突出した軸部19bとで構成されている。そして、ローラ部19aの周面には、滑り止め用の複数の突条19cが形成されている。突条19cは、ローラ部19aの軸方向に延びており、ローラ部19aの円周方向に沿って一定間隔で形成されることにより各ローラ部19a間に溝部が形成されている。
【0024】
また、軸部19bの直径は、ガイド溝13b,14bの上下方向の幅よりもやや小さく設定されている。このように構成された流量調整ローラ19は、軸部19bの両端部をガイド溝13b,14b内に移動可能に位置させた状態でチューブ設置部11内に組み込まれている。また、流量調整ローラ19は、チューブ設置部11内で多少の幅で上下移動可能な状態でチューブ設置部11の一端側と他端側との間を移動することができる。このように構成されたローラクランプ10は、図7に示したようにして、チューブTに取付けられる。
【0025】
この場合、チューブTは、外周面の下部側部分をチューブ設置溝15内に位置させた状態で、挿通用開口16aから挿通用開口17aを挿通し、外周面の上部側部分をローラ部19aの下面側に位置させている。このため、流量調整ローラ19が、チューブ設置部11の他端側に位置しているときには、チューブTは流量調整ローラ19から押圧されず、その位置から流量調整ローラ19が、チューブ設置部11の一端側に移動していくと、チューブTは流量調整ローラ19から徐々に押圧されていき、内部の流路を狭めていく。
【0026】
図8および図9は、ローラクランプ用カバー20を示している。ローラクランプ用カバー20は、ローラクランプ10を内部に収容できる大きさの略箱状の部材で構成されており、ローラクランプ10の左右の半分をそれぞれ覆うことのできる一対の開閉蓋21,22をヒンジ連結部23で開閉可能に連結して形成される収容部24を備えている。開閉蓋21,22は、互いの本体部分が左右対称に形成されており、閉じたときの状態が、ローラクランプ10の形状に沿うように、一端(図8および図9の左側部分)から中央部よりもやや他端側にかけての部分が、高さ方向の長さが短く設定された細長い略箱状に形成されている。
【0027】
そして、開閉蓋21,22が閉じたときの他端側部分の高さ方向の長さは、一端側部分の高さ方向の長さよりも長く設定され底部が下方に傾斜して突出した長さの短い箱状に形成されている。収容部24は、一体成形により形成されており、ヒンジ連結部23は、薄肉に形成されることにより可撓性が備わった連結部で構成されている。そして、開閉蓋21,22の前面部21a,22aにおける合せ面の下部側、すなわち、ローラクランプ用カバー20内に、図7に示した状態のローラクランプ10を収容したときに、チューブTが位置する部分に、それぞれ半円状の凹部21b,22bが形成されている。そして、その凹部21b,22bに、ゴム等の弾性材料からなる円弧状の位置ずれ防止部25a,25bが取り付けられている。
【0028】
この位置ずれ防止部25a,25bは、開閉蓋21,22を閉じたときにリング状になり、そのとき内部に形成される穴部の直径は、チューブTの外径よりも小さくなるように設定されている。このため、位置ずれ防止部25a,25bでチューブTを締め付け固定することができる。また、図示していないが、開閉蓋21,22の後面部における合せ面の下部側にもそれぞれ半円状の凹部が形成され、その凹部に、ゴム等の弾性材料からなる円弧状の位置ずれ防止部が取り付けられている。すなわち、位置ずれ防止部25a,25bと、後面部に設けられた位置ずれ防止部とで、ローラクランプ用カバー20の前後から突出するチューブTを締め付けることにより、ローラクランプ用カバー20をチューブTに固定することができる。
【0029】
また、開閉蓋21の上面部21cにおける合せ面側の前後方向の両側に一対の係合爪26a,26bが形成され、開閉蓋22の上面部22cにおける合せ面側の前後方向の両側に一対の係合爪26a,26bと係合可能な係合凹部27a,27bが形成されている。係合爪26a,26bは板体の先端下面に前後に延びる突部を形成して構成されており、開閉蓋21,22を閉じたときに先端の突部が係合凹部27a,27b内に入り込んで係合することにより、開閉蓋21,22を閉じた状態を維持する。また、その状態で、上面部22cにおける係合凹部27a,27bの近傍部分を下方に押えることにより、係合爪26a,26bと係合凹部27a,27bとの係合を解除することができる。
【0030】
このように構成されたローラクランプ10およびローラクランプ用カバー20を使用する場合には、まず、チューブTにローラクランプ10を取り付け、薬液が収容された容器にそのチューブTの上流端を接続し、患者の体に穿刺して留置する留置針等の穿刺部材にチューブTの下流端を接続する。つぎに、容器からチューブT内に薬液を流し、チューブT内の空気を外部に放出させたのちに、流量調整ローラ19をチューブ設置部11の一端側に位置させて薬液の流れを停止させる。その状態で、患者の体における所定の部位に穿刺部材を穿刺して、流量調整ローラ19をチューブ設置部11の他端側に徐々に移動させて、チューブT内を流れる薬液の流量が適正量になるようにする。
【0031】
この場合、流量調整ローラ19の回転操作を停止することにより、流量調整ローラ19はその位置に静止した状態を維持する。そして、ローラクランプ10をローラクランプ用カバー20で被覆して、図10の状態にする。この操作は、図9の状態のローラクランプ用カバー20のヒンジ連結部23側をローラクランプ10の下部側に当て、位置ずれ防止部25a,25bおよび後面部に設けられた位置ずれ防止部にそれぞれチューブTを位置させて開閉蓋21,22を互いに接近させて閉じることによって行う。これによって、係合爪26a,26bと係合凹部27a,27bとが係合して、ローラクランプ10はローラクランプ用カバー20に被覆される。
【0032】
また、チューブTにおける前面部21a,22aおよび後面部から突出した部分は、位置ずれ防止部25a,25bおよび後面部に設けられた位置ずれ防止部の圧接により締め付けられて、ローラクランプ用カバー20は、チューブTに対して固定された状態になる。この場合、チューブTにおける位置ずれ防止部25a,25b等で挟まれた部分の流路は多少狭くなるが、ローラクランプ10によって絞られた部分の流路よりも広くなっていれば、薬液の流量に影響は生じない。これによって、容器から患者の体内に、設定された一定流量の薬液が供給される。
【0033】
この患者への薬液の供給の際、患者が不用意に移動してチューブTが引っ張られたり、チューブTに物が接触して引っ張られたりしても、チューブTを引っ張る力はローラクランプ用カバー20に伝達されるだけで、ローラクランプ用カバー20の内部のローラクランプ10には届かない。また、チューブT内を流れる薬液の流量を変更する場合には、ローラクランプ用カバー20を一旦ローラクランプ10から外して流量調整ローラ19の位置を調整することにより行う。そして、調整後は、再度ローラクランプ10をローラクランプ用カバー20で被覆する。
【0034】
以上のように、本実施形態に係るローラクランプ用カバー20は、ローラクランプ10を収容する収容部24と、収容部24内にローラクランプ10を収容したときにチューブTの外周面に圧接する位置ずれ防止部25a,25b等とを備えている。したがって、ローラクランプ10を収容部24内に収容することによって、患者の体内に薬液を供給する際に、流量調整ローラ19の操作ができなくなるとともに、チューブTが外力により引っ張られても、チューブTとローラクランプ10との間に位置ずれが生じることはない。
【0035】
このため、たとえ、チューブTが不意に引っ張られるようなことが生じても、チューブT内を流れる液体の流量を設定量に保つことができる。また、ローラ部19aの周面に突条19cが形成されているため、ローラ部19aがチューブTに適度に係合し、チューブTに対して流量調整ローラ19が位置ずれすることを防止できる。さらに、収容部24を一体成形により形成し、ヒンジ連結部23を収容部24の他の部分よりも薄肉にすることにより形成したため、収容部24を簡単に構成することができる。
【0036】
また、本発明においては、開閉蓋21,22の上面部21c,22cの内面側に、ゴムやスポンジからなる弾性部材を設けて、開閉蓋21,22を閉じたときに、ローラ部19aの側面の上部側部分をこの弾性部材で両側から挟むことにより、固定できるようにすることができる。これによると、チューブTとローラクランプ10との間に位置ずれが生じることをさらに確実に防止できる。さらに、本発明においては、ローラクランプ10の内部にチューブTを巻き付けるための棒状部を設け、ローラクランプ10内で、棒状部にチューブTを1回ないし複数回巻き付けることにより、チューブTをローラクランプ10に固定することもできる。これによると、さらに、確実に、チューブTに対してローラクランプ10が位置ずれすることを防止できる。
【0037】
また、収容部を箱状の部材と板状の蓋部材で構成するか、または、幅の異なる一対の箱状の部材で構成して、収容部の上面における流量調整ローラ19の移動範囲に対応する部分に開閉可能な窓部を設けることもできる。これによると、チューブT内を流れる薬液の流量を変更する場合に、ローラクランプ用カバー20をローラクランプ10から外すことなく、窓部を開けて流量調整ローラ19の位置を調整することができる。この場合の開閉可能な窓部としては、収容部の本体側に窓穴を設けるとともに、この窓穴の一方の縁部側にヒンジ連結部を介して回転可能になった蓋を設けたり、窓穴の対向する縁部にスライド係合部を設けてこのスライド係合部に板状の蓋をスライド可能に取り付けたりしたもので構成することができる。また、蓋と収容部の本体側との間には、例えば、凹部と突部とからなる着脱可能な係合部を設けておくことが好ましい。
【0038】
また、本発明に係るローラクランプ用カバーは、前述した実施形態に限定するものでなく、適宜変更して実施することができる。例えば、前述した実施形態では、位置ずれ防止部25a,25b等を、開閉蓋21,22の前面部21a,22aおよび後面部における合せ面に設けているが、収容部の前面部および後面部の所定部分にチューブTを挿通させる挿通穴を形成し、開閉蓋21,22を閉じたときに、開閉蓋21,22の所定部分でチューブTが押圧されることによって固定されるようにしてもよい。また、開閉蓋21,22は左右対称の形状に限らず、種々の形状にすることができる。
【0039】
さらに、前述した実施形態では、ローラクランプ10およびローラクランプ用カバー20を患者の体に薬液を供給する際に使用するようにしているが、このローラクランプ10およびローラクランプ用カバー20は、薬液だけでなく、患者に輸血する場合にも使用することができる。また、患者の体から排液を排出する場合や血液を取り出す場合等にも使用することができる。すなわち、本発明に係るローラクランプ用カバーは、ローラクランプを用いて医療用チューブ内に液体を通す場合であれば、その液体が何であってもローラクランプに取り付けて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態で用いられるローラクランプを示した平面図である。
【図2】ローラクランプの側面図である。
【図3】ローラクランプの底面図である。
【図4】ローラクランプの正面図である。
【図5】ローラクランプの裏面図である。
【図6】図1の6−6断面図である。
【図7】チューブにローラクランプを取り付けた状態を示した斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るローラクランプ用カバーを閉じた状態を示した斜視図である。
【図9】ローラクランプ用カバーを開いた状態を示した斜視図である。
【図10】ローラクランプ用カバーをローラクランプに取り付けた状態を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
10…ローラクランプ、11…チューブ設置部、12…底部、13,14…側壁部、13b,14b…ガイド溝、19…流量調整ローラ、19a…ローラ部、19b…軸部、19c…突条、20…ローラクランプ用カバー、21,22…開閉蓋、21b,22b…凹部、23…ヒンジ連結部、24…収容部、25a,25b…位置ずれ防止部、T…チューブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用チューブにおけるチューブ設置部に設置された部分を流量調節ローラで押圧することにより、前記医療用チューブ内を流れる液体の流量を調整するローラクランプを収容するローラクランプ用カバーであって、
ヒンジ連結部を中心として互いに進退する方向に回転することにより開閉する略箱状の部材からなり前記医療用チューブを両側から突出させた状態で前記ローラクランプを収容できる収容部と、前記収容部内に前記ローラクランプを収容して前記収容部を閉じたときに、前記医療用チューブの外周面に圧接することにより前記ローラクランプが前記医療用チューブから位置ずれすることを防止する位置ずれ防止部とを備えたことを特徴とするローラクランプ用カバー。
【請求項2】
前記収容部の両側の前記医療用チューブを突出させる部分を、前記開閉する略箱状の部材のそれぞれの合せ面に形成した一対の凹部で構成し、前記位置ずれ防止部を、前記一対の凹部の内面に取り付けた弾性部材で構成した請求項1に記載のローラクランプ用カバー。
【請求項3】
前記収容部を一体成形により形成し、前記ヒンジ連結部を他の部分よりも薄肉にした薄肉部で構成した請求項1または2に記載のローラクランプ用カバー。
【請求項4】
前記流量調整ローラを固定するための固定手段を備えた請求項1ないし3のうちのいずれか一つに記載のローラクランプ用カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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