説明

ローラヘミング加工装置

【課題】加工対象となるパネルに汚れ、キズが発生することを抑制可能なローラヘミング加工装置を提供する。
【解決手段】ローラ11と、ヘッド12と、制御装置と、を備え、前記制御装置の制御により、ローラ11の加工面11aをアウタパネル1の周縁部1aに押し付けた状態で、ヘッド12をアウタパネル1の周縁部1aに沿って移動することで、ローラ11をアウタパネル1の周縁部1a上を転動させ、これによりアウタパネル1の周縁部1aをインナパネル2側へ折り曲げ、アウタパネル1とインナパネル2とを一体化するローラヘミング加工装置100であって、不純物除去機構13を備え、不純物除去機構13における加工面11aに当接する部分が、加工面11aに対し、ローラ11の回転軸方向の一側端部から他側端部にわたって存在し、ローラ11の転動時に加工面11aに対して相対的に摺動して、ローラ11の加工面に付着した不純物を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアパネルやフードパネル等の周縁部をヘミング加工するローラヘミング加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のドアパネルやフードパネル等の周縁部をヘミング加工するローラヘミング加工装置の技術は公知となっている(例えば、特許文献1)。
【0003】
従来のローラヘミング加工装置によってヘミング加工を行う際には、一般的に、インナパネルとアウタパネルの間にアドヒーシブを代表とする固形剤を塗布し、ローラをアウタパネルの周縁部上で転動させ、ヘミング加工後にインナパネルとアウタパネルとを結合させていた。
しかし、前記固形剤の塗布量のバラツキ、塗布位置のバラツキ等により、ヘミング加工時(ローラの転動時)に固形剤がパネル間からはみ出し、上記ローラの加工面に付着する場合があった。ヘミング加工時に固形剤や切粉等の不純物がローラの加工面に一旦付着すると、加工面に不純物が付着したままの状態でローラが転動され続け、これにより、ローラの一回転毎に、ローラの加工面に付着した不純物により、パネルに汚れ、キズが発生していた。その結果ヘミング加工後、手直し修正に大きな工数を要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−314054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、加工対象となるパネルに汚れ、キズが発生することを抑制可能なローラヘミング加工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のローラヘミング加工装置は、
円環状の加工面を有するローラと、
前記ローラが取り付けられ、前記ローラを前記加工面の円周方向に回転可能に支持するヘッドと、
前記ヘッドの動作を制御する制御装置と、を備え、
周縁部が起立するアウタパネルと前記アウタパネルに重ね合わされたインナパネルに関して、前記制御装置の制御により、前記ローラの加工面を前記アウタパネルの周縁部に押し付けた状態で、前記ヘッドを前記アウタパネルの周縁部に沿って移動することで、前記ローラを前記アウタパネルの周縁部上を転動させ、これにより前記アウタパネルの周縁部を前記インナパネル側へ折り曲げ、前記アウタパネルとインナパネルとを一体化するローラヘミング加工装置であって、
前記ヘッドに取り付けられ、前記ローラの加工面に当接する不純物除去機構を備え、
前記不純物除去機構における前記加工面に当接する部分が、前記加工面に対し、前記ローラの回転軸方向の一側端部から他側端部にわたって存在し、前記ローラの転動時に前記加工面に対して相対的に摺動して、前記ローラの加工面に付着した不純物を除去することを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載のローラヘミング加工装置においては、
前記不純物除去機構は、前記ローラの加工面に当接し、前記加工面の円周方向一側に配置される端部と、前記ローラの加工面に当接し、前記加工面の円周方向他側に配置される端部とを備え、
前記円周方向一側に配置される端部と、前記円周方向他側に配置される端部とは、互いに傾斜方向が反対となり、前記ローラの回転軸方向の一側から他側に向かうにしたがって互いに近接するように配置されて、前記加工面に付着した不純物を掻き出し可能であり、
前記制御装置は、前記アウタパネルの周縁部を前記インナパネル側へ折り曲げる際に、前記ローラの加工面を前記アウタパネルの周縁部に押し付け、かつ、前記不純物除去機構の端部における互いに近接する側が前記アウタパネルの周縁部における折り曲げ支点側にくるように前記ローラを配置した状態で、前記ヘッドを前記アウタパネルの周縁部に沿って移動させて、前記ローラを前記アウタパネルの周縁部上を転動させることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載のローラヘミング加工装置においては、
前記不純物除去機構における前記加工面に当接する部分は、前記加工面に押し当てられており、前記加工面に付着した不純物を拭き取り可能であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に記載のローラヘミング加工装置においては、
前記不純物除去機構における前記加工面に当接する部分には、前記ローラの加工面と前記不純物の粘着力を低減可能な溶剤が含浸されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5に記載のローラヘミング加工装置においては、
前記不純物除去機構は、前記加工面の円周方向に並べられ、前記円周方向一側に配置される第一掻出部と、前記円周方向他側に配置される第二掻出部と、前記第一掻出部と第二掻出部との間に配置される拭取部と、を有し、
前記第一掻出部および第二掻出部は、それぞれ前記ローラの加工面に当接する端部を有し、
前記第一掻出部の端部と第二掻出部の端部とは、互いに傾斜方向が反対となり、前記ローラの回転軸方向の一側から他側に向かうにしたがって互いに近接するように配置されて、前記加工面に付着した不純物を掻き出し可能であり、
前記拭取部における前記加工面に当接する部分は、前記加工面に押し当てられており、前記加工面に付着した不純物を拭き取り可能であり、
前記制御装置は、前記アウタパネルの周縁部を前記インナパネル側へ折り曲げる際に、前記ローラの加工面を前記アウタパネルの周縁部に押し付け、かつ、前記第一掻出部と第二掻出部の端部における互いに近接する側が前記アウタパネルの周縁部における折り曲げ支点側にくるように前記ローラを配置した状態で、前記ヘッドを前記アウタパネルの周縁部に沿って移動させて、前記ローラを前記アウタパネルの周縁部上を転動させることを特徴とするものである。
【0011】
請求項6に記載のローラヘミング加工装置においては、
前記拭取部における前記加工面に当接する部分には、前記ローラの加工面と前記不純物の粘着力を低減可能な溶剤が含浸されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項7に記載のローラヘミング加工装置においては、
前記不純物除去機構は、前記ローラに対して所定の角度で傾斜している傾斜部を有しており、
前記傾斜部については、その先端部が前記ローラの加工面に当接しており、前記先端部で前記加工面に付着した不純物を掻き出し可能であり、かつ、前記先端部で掻き出した不純物が前記傾斜部に滞留可能な角度に傾斜していることを特徴とするものである。
【0013】
請求項8に記載のローラヘミング加工装置においては、
円環状の加工面を有するローラと、
前記ローラが取り付けられ、前記ローラを前記加工面の円周方向に回転可能に支持するヘッドと、
前記ヘッドの動作を制御する制御装置と、を備え、
周縁部が起立するアウタパネルと前記アウタパネルに重ね合わされたインナパネルに関して、前記制御装置の制御により、前記ローラの加工面を前記アウタパネルの周縁部に押し付けた状態で、前記ヘッドを前記アウタパネルの周縁部に沿って移動することで、前記ローラを前記アウタパネルの周縁部上を転動させ、これにより前記アウタパネルの周縁部を前記インナパネル側へ折り曲げ、前記アウタパネルとインナパネルとを一体化するローラヘミング加工装置であって、
前記ローラの加工面には、クロス形状に形成され、前記ローラの加工面に付着した不純物が入り込むことが可能な溝が形成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加工対象となるパネルに汚れ、キズが発生することを抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明に係るローラヘミング加工装置の第一実施形態であるローラヘミング加工装置の概略構成図であり、(b)はローラの加工面を上方からみた図である。
【図2】図1(a)に示すローラヘミング加工装置の側面図である。
【図3】(a)はアウタパネルとインナパネルを示す図であり、(b)は(a)に示すアウタパネルの周縁部をローラヘミング加工装置によりヘミング加工をしている状態を示す図であり、(c)はヘミング加工時に掻出部の端部により不純物がパネル外側に押し出されている状態を示す図である。
【図4】不純物除去機構の別実施形態を示す図である。
【図5】本発明に係るローラヘミング加工装置の第二実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第一実施形態]
以下に、本発明に係るローラヘミング加工装置の第一実施形態であるローラヘミング加工装置100について、図面を参照して説明する。
なお、図1〜図5において、矢印Aはローラ11の加工面11aの円周方向一側(ローラ11の回転方向一側)を示し、矢印Bはローラ11の加工面11aの円周方向他側(ローラ11の回転方向他側)を示し、矢印Cはローラ11の回転軸方向の一側を示し、Dはローラ11の回転軸方向の他側を示している。
【0017】
ローラヘミング加工装置100は、車両のドアパネルやフードパネル等の周縁部をヘミング加工するものである。
図1(a)および図2に示すように、ローラヘミング加工装置100は、ローラ11、ヘッド12、ロボットハンド(不図示)、制御装置(不図示)、および不純物除去機構13を備えている。
【0018】
ローラ11は、円筒形状を有しており、円環状の外周面(加工面)11aを有している。ローラ11における円筒形状の軸中心部には回転軸14が挿通されている。
【0019】
ヘッド12の下端部には、回転軸14を介してローラ11が取り付けられている。ヘッド12は、ローラ11を回転軸14の軸回りに回転可能に支持しており、すなわちローラ11を加工面11aの円周方向に回転可能に支持している。
また、ヘッド12には、前記ロボットハンドが取り付けられている。前記ロボットハンドは、前記制御装置に接続されている。前記制御装置は、前記ロボットハンドに信号を送信することによって、前記ロボットハンドを介してヘッド12の動作を制御する。
【0020】
本実施形態では、ローラヘミング加工装置100によりアウタパネル1の周縁部1aのヘミング加工を行い、アウタパネル1とインナパネル2とを一体化することとする。
【0021】
図3(a)に示すように、アウタパネル1は、ローラヘミング加工装置100の下型15上に載置されている。アウタパネル1は、その周縁部1aが起立しており、略90°に折り曲げられている。インナパネル2は、アウタパネル1に対して一回り小さく形成されている。インナパネル2は、アウタパネル1に重ね合わされた状態(載置された状態)で、アウタパネル1の周縁部1aの近傍部1bに、インナパネル2の周縁部2aが接触するように形成されている。インナパネル2の周縁部2aとアウタパネル1の近傍部1bの間には、接着剤(アドヒーシブ等の固形剤)3が塗布されている。
【0022】
ローラヘミング加工装置100によるアウタパネル1とインナパネル2との一体化は、前記制御装置が、ローラ11の加工面11aをアウタパネル1の周縁部1aに押し付けた状態(押圧力を付与した状態)で、ヘッド12をアウタパネル1の周縁部1aに沿って移動することで、ローラ11をアウタパネル1の周縁部1a上を転動させることによって行われる。なお、ローラ11は前記転動時に、加工面11aの円周方向に回転しながらヘッド12と共に移動している状態にある。
図3(b)に示すように、これにより、ローラ11の加工面11aからの押圧力でアウタパネル1の周縁部1aがインナパネル2の周縁部2a側へ折り曲げられ、インナパネル2の周縁部2aがアウタパネル1の周縁部1aと近傍部1bで挟持された状態になり、アウタパネル1とインナパネル2とが一体化される。
【0023】
ローラヘミング加工装置100によりアウタパネル1の周縁部1aのヘミング加工を行う際、ローラ11がアウタパネル1の周縁部1a上を転動しているときに、ローラ11の加工面11aには、パネル1・2間からはみ出した固形剤3や切粉等の不純物が付着することがある。
【0024】
以下では、ローラ11の加工面11aに付着した不純物を除去するための機構である不純物除去機構13について説明する。
図1(a)および図2に示すように、不純物除去機構13は、支持部16と、第一掻出部17と、第二掻出部18と、拭取部19と、を有している。
【0025】
支持部16は、門形状を有しており、水平に延在する中央部16aと、中央部16aの一側端部に設けられ下方に突出している第一突出部16bと、中央部16aの他側端部に設けられ下方に突出している第二突出部16cと、を有している。支持部16は、ボルト20でヘッド12に固定されている。支持部16は、上部側加工面11aの上方に配置されている。支持部16においては、中央部16aがローラ11の加工面11aの中央部上方に配置されており、第一突出部16bが加工面11aの円周方向一側に配置されており、第二突出部16cが加工面11aの円周方向他側に配置されている。
中央部16aの中央にはボルト孔が形成されており、前記ボルト孔にはボルト21が螺合されている。ボルト21は、前記ボルト孔を貫通しており、ボルト21の下端が中央部16aの下方に存在している。
【0026】
掻出部17・18は、ヘラ形状を有している。掻出部17・18は、金属や樹脂等の固形物で構成されており、ローラ11の加工面11aに付着した不純物を掻き出し可能な部材である。
【0027】
掻出部17・18のうち、第一掻出部17は支持部16の第一突出部16bの下端に固定されており、第二掻出部18は第二突出部16cの下端に固定されている。これにより、掻出部17・18が、支持部16を介してヘッド12に取り付けられており、ヘッド12と共に移動可能に構成されている。また、第一掻出部17が前記円周方向一側に配置されており、第二掻出部18が前記円周方向他側に配置されている。掻出部17・18はローラ11の加工面11aに当接している。
図1(b)はローラ11の加工面11aを上方からみた図であり、Xは加工面11aに対する第一掻出部17の当接面を示しており、Yは加工面11aに対する第二掻出部18の当接面を示している。ローラ11の加工面11aには、第一掻出部17における前記円周方向一側(A)の端部17aと、第二掻出部18における前記円周方向他側(B)の端部18aと、が当接している。加工面11aに当接している第一掻出部17の端部17aと、第二掻出部18の端部18aは、加工面11aに対し、ローラ11の回転軸方向の一側(C)端部から他側(D)端部にわたって存在している。また、第一掻出部17の端部17aと、第二掻出部18の端部18aは、ローラ11の回転軸方向の一側(C)から他側(D)に向かうにしたがってハの字状に狭くなるように傾斜している。
つまり、端部17aと端部18aとは、互いに傾斜方向が反対となるように、ローラ11の回転軸方向に対して傾斜しており、ローラ11の回転軸方向の一側(C)から他側(D)に向かうにしたがって互いに近接するように配置されている。
【0028】
掻出部17・18は支持部16を介してヘッド12に位置固定されており、ローラ11はヘッド12に対して回転軸14を中心に回転可能に構成されているので、ローラ11の回転時(転動時)には、掻出部17・18の端部17a・18aが、ローラ11の加工面11aに対して相対的に摺動することとなる。
このように、掻出部17・18の端部17a・18aが加工面11aを摺動する際に、加工面11aに付着した不純物を掻き出す。ローラ11が前記回転方向他側(B)に回転するときは、第一掻出部17の端部17aが、加工面11aに付着した不純物を掻き出し、ローラ11が前記回転方向一側(A)に回転するときは、第二掻出部18の端部18aが、加工面11aに付着した不純物を掻き出す。詳細には、第一掻出部17の端部17aは、ローラ11が回転方向他側(B)に回転している際に、ローラ11の回転方向一側(A)の面で不純物を掻き出し、第二掻出部18の端部18aは、ローラ11が回転方向一側(A)に回転している際に、ローラ11の回転方向他側(B)の面で不純物を掻き出す。
したがって、掻出部17・18は、ローラ11の回転方向(ヘッド12の移動方向)に影響されず、ローラ11の加工面11aに付着した不純物を掻き出し可能な構成を有している。
【0029】
図1(a)および図2に示すように、拭取部19は、布やスポンジやゴム等の材質で構成されており、ローラ11の加工面11aに付着した不純物を拭き取り可能な部材である。拭取部19は、ローラ11の加工面11aの円周方向における第一掻出部17と第二掻出部18との間に配置されている。拭取部19はローラ11の加工面11aに当接している。
【0030】
拭取部19の上端には金属製の押さえ部22が固定されている。押さえ部22における拭取部19が固定されている面(下端面)は、加工面11aに沿った円弧形状に形成されている。押さえ部22の上端には、有底リング状の係合部22aが形成されている。係合部22aには、支持部16(中央部16a)に螺合しているボルト21の下端が挿入されている。ボルト21の下端は押さえ部22(係合部22aの底部)に当接しており、ボルト21は押さえ部22を介して拭取部19に押し当て力(圧力)を付与している。拭取部19は、押し当て力を付与されることによって、加工面11aに押し当てられ、加工面11aに形状がなじむように変形し、加工面11aとの接触面積が増大している。これにより、拭取部19が、押さえ部22、ボルト21および支持部16を介してヘッド12に取り付けられており、ヘッド12と共に移動可能に構成されている。なお、拭取部19に付与される押し当て力の大きさについては、ボルト21の締める量を変更することで、調整可能に構成されている。
図1(b)はローラ11の加工面11aを上方からみた図であり、Zは加工面11aに対する拭取部19の当接面を示している。拭取部19の当接面Zは、加工面11aに対し、ローラ11の回転軸方向の一側(C)端部から他側(D)端部にわたって存在している。
【0031】
拭取部19は、押さえ部22、ボルト21および支持部16を介してヘッド12に位置固定されており、ローラ11はヘッド12に対して回転軸14を中心に回転可能に構成されているので、ローラ11の回転時(転動時)には、ローラ11の加工面11aに対して相対的に摺動することとなる。このように、拭取部19が加工面11aを摺動する際に、加工面11aに付着した不純物を拭き取る。
【0032】
また、拭取部19における加工面11aと当接する部分には、加工面11aと不純物(固形剤3)の粘着力を低減な溶剤、例えばアセトンやエタノール等の揮発性有機溶剤が含浸されている。
【0033】
かかる不純物除去機構13を備えたローラヘミング加工装置100によりアウタパネル1の周縁部1aのヘミング加工を行い、アウタパネル1とインナパネル2とを一体化するときの手順について説明する。
【0034】
(1)まず、アウタパネル1とアウタパネル1に重ね合わされたインナパネル2に関して(図3(a)参照)、前記制御装置は、ヘッド12の動作(位置)を制御して、ローラ11の加工面11aをアウタパネル1の周縁部1aに押し付ける。このとき、前記制御装置は、掻出部17・18の端部17a・18aにおけるハの字状に狭くなる側がアウタパネル1の周縁部1aにおける折り曲げ支点側にくるようにローラ11を配置する。
【0035】
(2)次に、前記制御装置は、ローラ11の加工面11aをアウタパネル1の周縁部1aに押し付け、かつ、掻出部17・18の端部17a・18aにおけるハの字状に狭くなる側がアウタパネル1の周縁部1aにおける折り曲げ支点側にくるようにローラ11を配置した状態で、ヘッド12をアウタパネル1の周縁部1aに沿って移動することで、ローラ11をアウタパネル1の周縁部1a上を転動させる。これにより、ローラ11の加工面11aからの押圧力でアウタパネル1の周縁部1aがインナパネル2の周縁部2a側へ折り曲げられ、アウタパネル1とインナパネル2とが一体化される(図3(b)参照)。
【0036】
上記(2)においてローラ11をアウタパネル1の周縁部1a上を転動させる際に、掻出部17・18の端部17a・18aと拭取部19は、ローラ11の加工面11aを相対的に摺動している。
このとき、端部17a・18aは、加工面11aを摺動する際に、ローラ11の加工面11aに付着した不純物(比較的大きな不純物)を掻き出している。詳細には、ローラ11が前記回転方向他側(B)に回転しているときは、第一掻出部17の端部17aが、加工面11aに付着した不純物を掻き出しており、ローラ11が前記回転方向一側(A)に回転しているときは、第二掻出部18の端部18aが、加工面11aに付着した不純物を掻き出している。また、このとき、拭取部19は、加工面11aを摺動する際に、ローラ11の加工面11aに付着した不純物(比較的小さな不純物)を拭き取っている。
また、このとき、不純物除去機構13については、端部17a・18aが比較的大きな不純物を掻き出した後に、拭取部19が比較的小さな不純物を拭き取るように構成されている。つまり、拭取部19は、掻出部17・18により掻き出しきれなかった不純物を拭き取って除去するように構成されている。
このように、上記(2)において、ローラ11をアウタパネル1の周縁部1a上を転動させる際に、加工面11aに付着した不純物が不純物除去機構13(掻出部17・18および拭取部19)によって除去されるので、加工面11aに不純物が付着したままの状態でローラ11が転動され続けることを防止できる。これにより、パネル1・2に汚れ、キズが発生することを抑制可能である。
また、拭取部19には上記したような溶剤が含浸されているので、拭取部19はより確実に不純物を拭き取ることが可能である。
【0037】
また、上記したように掻出部17・18の端部17a・18aが、ローラ11の回転軸14方向に対して傾斜していてハの字状に配置されており、加工面11aに対し、ローラ11の回転軸方向の一側(C)端部から他側(D)端部にわたって存在しており、かつ、上記(1)、(2)に示すヘミング加工が行われる際に、掻出部17・18の端部17a・18aにおけるハの字状に狭くなる側がアウタパネル1の周縁部1aにおける折り曲げ支点側にくるようにローラ11が配置されている。
これにより、上記(2)において、ローラ11をアウタパネル1の周縁部1a上を転動させる際に、掻出部17・18の端部17a・18aによって掻き出された不純物を、端部17a・18aに沿って、アウタパネル1の周縁部1aにおける折り曲げ支点側(パネル外側)に押し出すことが可能となり、端部17a・18aによって掻き出された不純物がパネル1・2上(パネル内側)に排出されることを防止できる(図3(b)および図3(c)参照)。したがって、パネル1・2に汚れが発生することを抑制可能である。
【0038】
なお、本実施形態の不純物除去機構13は、掻出部17・18と拭取部19とを両方有するが、掻出部17・18または拭取部19のうちのいずれか一方を有するように構成してもよい。
このように構成しても、上記(2)において、ローラ11をアウタパネル1の周縁部1a上を転動させる際に、加工面11aに付着した不純物を掻出部17・18または拭取部19によって除去できるので、加工面11aに不純物が付着した状態でローラ11が転動され続けることを防止できる。これにより、パネル1・2に汚れ、キズが発生することを抑制可能である。また、不純物除去機構13を掻出部17・18のみで構成する場合、掻出部17・18を一体的に構成してもよい。
【0039】
なお、本実施形態のように不純物除去機構13が掻出部17・18と拭取部19との両方を有するように構成することで、掻出部17・18または拭取部19のうちのいずれか一方を有するときよりも、加工面11aに付着した不純物をより確実に除去可能であり、パネル1・2に汚れ、キズが発生することをより確実に抑制可能である。
【0040】
また、不純物除去機構13においては、掻出部17・18および拭取部19にかえて掻出部23を用いてもよい。
【0041】
図4に示すように、掻出部23は、長尺形状を有しており、金属や樹脂等の固形物で構成されており、ローラ11の加工面11aに付着した不純物を掻き出し可能な部材である。掻出部23は、支持部16に固定されている。これにより、掻出部23が、支持部16を介してヘッド12に取り付けられており、ヘッド12と共に移動可能に構成されている。
【0042】
掻出部23は、ローラ11に対して所定の角度で傾斜している傾斜部23aを有している。傾斜部23aの先端部23bは、ローラ11の加工面11aに当接しており、かつ、加工面11aに対し、ローラ11の回転軸方向の一側(C)端部から他側(D)端部にわたって存在している。
【0043】
掻出部23は支持部16を介してヘッド12に位置固定されており、ローラ11はヘッド12に対して回転軸14を中心に回転可能に構成されているので、ローラ11の回転時(転動時)には、傾斜部23aの先端部23bが、ローラ11の加工面11aに対して相対的に摺動するように構成されている。
このように、傾斜部23aの先端部23bが加工面11aを摺動する際に、加工面11aに付着した不純物を掻き出す。傾斜部23aは、先端部23bで掻き出した不純物が滞留可能な角度に傾斜している。
【0044】
かかる構成の掻出部23によると、上記(2)に示すように、ローラ11をアウタパネル1の周縁部1a上を転動させる際に、加工面11aに付着した不純物が掻出部23(傾斜部23aの先端部23b)によって掻き出されるので、加工面11aに不純物が付着したままの状態でローラ11が転動され続けることを防止できる。これにより、パネル1・2に汚れ、キズが発生することを抑制可能である。
また、掻出部23によると、上記(2)に示すように、ローラ11をアウタパネル1の周縁部1a上を転動させる際に、先端部23bで掻き出した不純物を傾斜部23aに滞留させることができ、先端部23bで掻き出した不純物がパネル1・2上(パネル内側)に排出されることを防止できる。したがって、パネル1・2に汚れが発生することを抑制可能である。
【0045】
なお、不純物除去機構13においては、掻出部23と拭取部19を併用してもよい。
【0046】
[第二実施形態]
以下に、本発明に係るローラヘミング加工装置100の第二実施形態であるローラヘミング加工装置200について、図面を参照して説明する。
なお、ローラヘミング加工装置200について、ローラヘミング加工装置100と同様の部材に対しては同一符号を付し、詳細な説明およびそれに付随する効果等の記載は省略する。
【0047】
図5(a)および図5(b)に示すように、ローラヘミング加工装置200は、ローラ11、ヘッド12、ロボットハンド(不図示)、および制御装置(不図示)を備えている。
上記第一実施形態と同様に、ローラ11は回転軸14を介してヘッド12に取り付けられている。また、ヘッド12には、前記ロボットハンドが取り付けられている。前記ロボットハンドは、前記制御装置に接続されている。前記制御装置は、前記ロボットハンドに信号を送信することによって、前記ロボットハンドを介してヘッド12の動作を制御する。
【0048】
ローラ11の加工面11aには、その全体にわたってクロス形状(加工面11aの周方向に対して傾斜した格子形状)の溝11bが形成されている。溝11bの幅は、上記第一実施形態の(2)において、ローラ11をアウタパネル1の周縁部1a上を転動させる際に、周縁部1aに溝11bの形状が転写されない程度の大きさに構成されている(例えば、1mm以下)。
このようにローラ11の加工面11aに溝11bを形成することによって、上記第一実施形態の(2)に示すように、ローラ11をアウタパネル1の周縁部1a上を転動させる際に、パネル1・2間からはみ出した上記固形剤3(固形剤3に含まれる0.3mm程度のガラスビーズ)や切粉等の不純物が、ローラ11の加工面11aに付着するが、付着した不純物は溝11bに入り込むこととなる。これにより、パネル1・2に汚れ、キズが発生することを抑制可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 アウタパネル
1a 周縁部
2 インナパネル
11 ローラ
11a 加工面
12 ヘッド
13 不純物除去機構
17 第一掻出部
18 第二掻出部
19 拭取部
100 ローラヘミング加工装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状の加工面を有するローラと、
前記ローラが取り付けられ、前記ローラを前記加工面の円周方向に回転可能に支持するヘッドと、
前記ヘッドの動作を制御する制御装置と、を備え、
周縁部が起立するアウタパネルと前記アウタパネルに重ね合わされたインナパネルに関して、前記制御装置の制御により、前記ローラの加工面を前記アウタパネルの周縁部に押し付けた状態で、前記ヘッドを前記アウタパネルの周縁部に沿って移動することで、前記ローラを前記アウタパネルの周縁部上を転動させ、これにより前記アウタパネルの周縁部を前記インナパネル側へ折り曲げ、前記アウタパネルとインナパネルとを一体化するローラヘミング加工装置であって、
前記ヘッドに取り付けられ、前記ローラの加工面に当接する不純物除去機構を備え、
前記不純物除去機構における前記加工面に当接する部分が、前記加工面に対し、前記ローラの回転軸方向の一側端部から他側端部にわたって存在し、前記ローラの転動時に前記加工面に対して相対的に摺動して、前記ローラの加工面に付着した不純物を除去することを特徴とするローラヘミング加工装置。
【請求項2】
前記不純物除去機構は、前記ローラの加工面に当接し、前記加工面の円周方向一側に配置される端部と、前記ローラの加工面に当接し、前記加工面の円周方向他側に配置される端部とを備え、
前記円周方向一側に配置される端部と、前記円周方向他側に配置される端部とは、互いに傾斜方向が反対となり、前記ローラの回転軸方向の一側から他側に向かうにしたがって互いに近接するように配置されて、前記加工面に付着した不純物を掻き出し可能であり、
前記制御装置は、前記アウタパネルの周縁部を前記インナパネル側へ折り曲げる際に、前記ローラの加工面を前記アウタパネルの周縁部に押し付け、かつ、前記不純物除去機構の端部における互いに近接する側が前記アウタパネルの周縁部における折り曲げ支点側にくるように前記ローラを配置した状態で、前記ヘッドを前記アウタパネルの周縁部に沿って移動させて、前記ローラを前記アウタパネルの周縁部上を転動させることを特徴とする請求項1に記載のローラヘミング加工装置。
【請求項3】
前記不純物除去機構における前記加工面に当接する部分は、前記加工面に押し当てられており、前記加工面に付着した不純物を拭き取り可能であることを特徴とする請求項1に記載のローラヘミング加工装置。
【請求項4】
前記不純物除去機構における前記加工面に当接する部分には、前記ローラの加工面と前記不純物の粘着力を低減可能な溶剤が含浸されていることを特徴とする請求項3に記載のローラヘミング加工装置。
【請求項5】
前記不純物除去機構は、前記加工面の円周方向に並べられ、前記円周方向一側に配置される第一掻出部と、前記円周方向他側に配置される第二掻出部と、前記第一掻出部と第二掻出部との間に配置される拭取部と、を有し、
前記第一掻出部および第二掻出部は、それぞれ前記ローラの加工面に当接する端部を有し、
前記第一掻出部の端部と第二掻出部の端部とは、互いに傾斜方向が反対となり、前記ローラの回転軸方向の一側から他側に向かうにしたがって互いに近接するように配置されて、前記加工面に付着した不純物を掻き出し可能であり、
前記拭取部における前記加工面に当接する部分は、前記加工面に押し当てられており、前記加工面に付着した不純物を拭き取り可能であり、
前記制御装置は、前記アウタパネルの周縁部を前記インナパネル側へ折り曲げる際に、前記ローラの加工面を前記アウタパネルの周縁部に押し付け、かつ、前記第一掻出部と第二掻出部の端部における互いに近接する側が前記アウタパネルの周縁部における折り曲げ支点側にくるように前記ローラを配置した状態で、前記ヘッドを前記アウタパネルの周縁部に沿って移動させて、前記ローラを前記アウタパネルの周縁部上を転動させることを特徴とする請求項1に記載のローラヘミング加工装置。
【請求項6】
前記拭取部における前記加工面に当接する部分には、前記ローラの加工面と前記不純物の粘着力を低減可能な溶剤が含浸されていることを特徴とする請求項5に記載のローラヘミング加工装置。
【請求項7】
前記不純物除去機構は、前記ローラに対して所定の角度で傾斜している傾斜部を有しており、
前記傾斜部については、その先端部が前記ローラの加工面に当接しており、前記先端部で前記加工面に付着した不純物を掻き出し可能であり、かつ、前記先端部で掻き出した不純物が前記傾斜部に滞留可能な角度に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のローラヘミング加工装置。
【請求項8】
円環状の加工面を有するローラと、
前記ローラが取り付けられ、前記ローラを前記加工面の円周方向に回転可能に支持するヘッドと、
前記ヘッドの動作を制御する制御装置と、を備え、
周縁部が起立するアウタパネルと前記アウタパネルに重ね合わされたインナパネルに関して、前記制御装置の制御により、前記ローラの加工面を前記アウタパネルの周縁部に押し付けた状態で、前記ヘッドを前記アウタパネルの周縁部に沿って移動することで、前記ローラを前記アウタパネルの周縁部上を転動させ、これにより前記アウタパネルの周縁部を前記インナパネル側へ折り曲げ、前記アウタパネルとインナパネルとを一体化するローラヘミング加工装置であって、
前記ローラの加工面には、クロス形状に形成され、前記ローラの加工面に付着した不純物が入り込むことが可能な溝が形成されることを特徴とするローラヘミング加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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