説明

ローラポンプ

【課題】輸液装置等に取付ける際に、装置本体外側面での取付けスペースを小さくし、かつ、チューブをロータの外周から外れないようにセットできるローラポンプを提供する。
【解決手段】このローラポンプ20は、ハウジングと、ハウジング内に回転可能に装着されたロータ30と、このロータ30外周に支持された複数のローラ36と、ハウジングに開閉可能に取付けられたカバー部材22とを備え、ロータ30の回転によりローラ36がチューブ19を圧閉しつつ、チューブ19の長さ方向にしごかれて送液するもので、ロータ30がハウジングの前面(21)に対してほぼ平行な回転軸26で支持され、その外周一部が前面16からアーチ状に露出して配置され、カバー部材22内面の湾曲した凹部49にチューブ19を収容して、ロータ30外周との間でチューブ19を押圧するように、ハウジングに取付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば血液、透析液、薬品等の液体を循環又は供給するのに用いられるローラポンプに関し、特に医療用輸液装置又は血液処理用装置に好適に用いられるローラポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
血液、透析液、薬品等の液体を循環又は供給するのに用いられるポンプとして、ローラポンプが知られている。ローラポンプは、外周に二個以上のローラが取付けられたロータを有しており、このロータとハウジング内周との間に、輸液に用いられるチューブを挟持させ、ロータの回転に伴ってローラがチューブを圧閉しつつ、該チューブの長さ方向にしごくことにより、該チューブ内の流体を送液するように構成されている。
【0003】
ローラポンプは、医療用輸液装置、血液処理用装置等の送液手段として汎用されており、医療用輸液装置、血液処理用装置等の外側面には、上記ローラポンプが複数台配設されている。そして、チューブ回路が上記ローラポンプに連結されて、血液、透析液、薬品等の液体を送液するようになっている。
【0004】
このようなローラポンプとして、下記特許文献1には、チューブの案内部となる円弧内周面を有するケーシングが、カバーの開閉動作に伴ってスライドするようにし、カバーを閉じるときにはチューブをロータに向けて押圧するようにスライドし、カバーを開くときにはチューブを開放するようにスライドするものが開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、ロータのフランジに切欠きを設け、この切欠きを通してチューブをフランジの内側に取り込むようにし、チューブの脱着時にロータを回転させることによって、チューブがロータの外周に自動的に装着され又は取り外されるようにしたものが開示されている。
【0006】
更に、下記特許文献3には、装置本体の前面に、上記のようなローラポンプが複数台設置された血液浄化システムが開示されている。
【特許文献1】特開2005−105862号公報
【特許文献2】特開2005−188360号公報
【特許文献3】特開2006−314458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載されたローラポンプは、チューブの脱着をロータの回転軸方向から行うようになっており、これを医療用輸液装置、血液処理用装置等に取付ける場合には、上記特許文献3に示されるように、装置本体の前面に対して、ロータの回転軸が垂直方向になるように配設される。その結果、少なくともロータの円形分に相当する取付けスペースが要求され、装置本体の前面のスペースを狭めてしまい、他の装置を設置するスペースが十分にとれなくなることがあった。
【0008】
また、上記特許文献1,2に記載されたローラポンプは、チューブの脱着をロータの回転軸方向から行うようになっているため、ロータの円周に沿ってチューブが配置されているかどうかは確認しやすいが、ロータの軸方向においてチューブが正しい位置に配置されているかどうかは確認しにくいという欠点があり、チューブがロータの背面側に落ち込んでロータの外周から外れているのを見逃してしまう可能性があった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、医療用輸液装置又は血液処理用装置に取付ける場合に、装置本体の外側面における取付けスペースを小さくすることができ、かつ、チューブをロータの外周から外れないように確実にセットできるようにしたローラポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のローラポンプは、医療用輸液装置又は血液処理用装置の外側面に取付けられるローラポンプにおいて、
ポンプ本体部を収容するハウジングと、
このハウジング内に回転可能に装着され、該ハウジングの前面に少なくとも一部が露出したロータと、
このロータの外周に該ロータの回転軸と平行な支軸を介して支持された少なくとも二つのローラと、
前記ハウジングに開閉可能に取付けられ、前記ロータの外周に沿って配設される弾性を有するチューブを保持するカバー部材とを備え、
前記ロータの回転に伴って前記ローラが前記チューブを圧閉しつつ、該チューブの長さ方向にしごくことにより、該チューブ内の流体を送液するように構成されており、
前記ロータが前記ハウジングの前面に対してほぼ平行な回転軸によって支持されて、その外周の一部が前記前面からアーチ状に露出するように配置されており、
前記カバー部材は、その内面に湾曲した凹部を有し、前記チューブをこの凹部に収容して、前記ロータの外周との間で該チューブを押圧するように、前記ハウジングに取付けられており、
前記ハウジングは、前記医療用輸液装置又は血液処理用装置の外側面に前面が位置すると共に、前記ロータの前面から露出する外周部分が上下に配設されるように、前記医療用輸液装置又は血液処理用装置に取付けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明のローラポンプによれば、ハウジングの前面からアーチ状に露出したロータの外周と、カバー部材の湾曲した凹部内面との間に、チューブを挟持して押圧させ、その状態でロータを回転させることにより、ローラがチューブを圧閉しつつ、チューブの長さ方向にしごくので、チューブ内の流体を送液することができる。
【0012】
そして、本発明のローラポンプでは、ロータの回転軸に対してほぼ直交する方向から、ハウジングの前面からアーチ状に露出したロータの外周に整合するようにチューブを装着することになるので、チューブがロータの外周から外れていないかどうかを確認しやすくなり、チューブを確実にセットすることができる。
【0013】
また、医療用輸液装置又は血液処理用装置の外側面にハウジングの前面が位置するように取付けられ、ロータがハウジングの前面に対して横方向(外周面を前面側に向けた方向)に配置されているので、上記各種装置の外側面における取付けスペースが小さくなり、外側面に装着できる装置の数を多くすることができる。
【0014】
更に、前記外側面に取付けられた状態で、ロータのハウジングの前面から露出する外周部分が上下に配設されるように設置されているので、チューブを上下に配設することになり、チューブのセット時にロータが軸方向にずれにくくなり、チューブのセットミスをより確実に防止することができる。
【0015】
本発明のローラポンプにおいて、前記カバー部材は、前記チューブを前記凹部に収容し、前記ハウジングに取付けられた状態で、前記チューブを前記ロータに向けて押圧する付勢手段を有していることが好ましい。これによれば、カバー部材をハウジングに取付けると、カバー部材が上記付勢手段によってチューブをロータに向けて押圧するので、ロータのローラによるチューブの圧閉をより確実に行わせることができる。
【0016】
本発明の一態様においては、前記カバー部材は、その一側を前記ハウジングに回動可能に取付けられ、前記ハウジングに対して回動することにより、前記ハウジングの前面から露出する前記ロータの外周を覆うように装着されることが好ましい。これによれば、チューブをロータとカバー部材の凹部との間に配設して、カバー部材を閉じることによりチューブを装着でき、また、カバー部材を開くことによりチューブを取出すことができる。
【0017】
本発明の別の態様においては、前記カバー部材は、前記ハウジングとは別体に構成され、前記チューブを前記凹部に収容した状態でユニット化されており、前記ハウジングと前記カバー部材との間には、前記カバー部材を前記ハウジングに対して着脱可能に固定するロック手段が設けられていることが好ましい。これによれば、ユニット化されたカバー部材とチューブとを、ハウジングに取付けるだけで、チューブをセットすることができるので、作業性を更に良好にすることができ、セットミスも更に少なくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のローラポンプによれば、ロータの回転軸に対してほぼ直交する方向から、ハウジングの前面からアーチ状に露出したロータの外周に整合するようにチューブを装着させることができるので、チューブがロータの外周から外れていないかどうかを確認しやすくなり、チューブを確実にセットすることができる。
【0019】
また、医療用輸液装置又は血液処理用装置の外側面にハウジングの前面が位置するように取付けられ、ロータがハウジングの前面に対して横方向(外周面を前面側に向けた方向)に配置されているので、上記各種装置の外側面における取付けスペースが小さくなり、外側面に装着できる装置の数を多くすることができる。
【0020】
更に、前記外側面に取付けられた状態で、ロータのハウジングの前面から露出する外周部分が上下に配設されるように設置されているので、チューブを上下に配設することになり、チューブのセット時にロータが軸方向にずれにくくなり、チューブのセットミスをより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明において、血液処理用装置としては、例えば(持続緩除式)血液ろ過透析装置、(持続的)血液ろ過装置、(持続的)血液透析装置、体外限外ろ過装置、血漿吸着装置、血漿交換装置、免疫吸着装置などが挙げられる。
【0022】
次に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0023】
図1〜6には、本発明によるローラポンプの一実施形態が示されている。このローラポンプは、図1に示されるような血液処理用装置10等に適用される。すなわち、血液処理用装置10は、車輪11を有する脚部12によって支持された装置本体13を有している。装置本体13の上面には操作パネル14が設けられ、更に、操作パネル14上にディスプレイ15が取付けられている。装置本体13の前面16及び側面17,18には、チューブ19の回路と、本発明によるローラポンプ20とが取付けられている。
【0024】
ローラポンプ20は、装置本体13に取付けられた基板21と、この基板21に対して開閉可能に取付けられたカバー部材22とを有している。そして、チューブ19を、この基板21とカバー部材22との間に挟み込んで、ロータ30を回転させることにより、チューブ19内の血液を所定の速度で送液するようになっている。なお、装置本体13の前面16又は側面17,18に上記基板21を取付けることにより、ローポンプ20の本体部(駆動部等)は、装置本体13内に収容されることになる。したがって、この実施形態の場合、装置本体13が本発明におけるハウジングをなし、基板21の表面が本発明におけるハウジングの前面をなしている。
【0025】
図2に示すように、基板21の裏面側には枠体21aが取付けられている。この枠体21aにはモータ23が取付けられ、その駆動軸24にはタイミングプーリ25が装着されている。モータ23としては、回転制御が可能なステッピングモータが好ましく用いられる。更に、枠体21aには、前記モータ23の駆動軸24と平行に回転軸26が支持されており、この回転軸26の一端にはタイミングプーリ27が装着されている。そして、駆動軸24に装着されたタイミングプーリ25と、回転軸26に装着されたタイミングプーリ27との間に、タイミングベルト29が張設されており、モータ23の回転によって回転軸26が回転するようになっている。回転軸26の他端には、ロータ30が取付けられている。回転軸26の他端は、更に枠体21aの外側面に突出し、そこに回転板39が装着されている。この回転板39の外周には、所定間隔をおいて放射状に配置されたマーク39aが付されている。そして、枠体21aの外側面には、この回転板39の外周を挟むような形状をなすセンサ40が取付けられている。したがって、回転軸26の回転と一緒に、回転板39が回転すると、センサ40がマーク39aの移動を検出して、回転数や回転速度を算出できるようになっている。
【0026】
図3に示すように、ロータ30は、中心に配置された筒軸31と、この筒軸31の両端面に取付けられた円板32,33とを有している。各円板32,33の外周には、所定角度ごとに配列された複数の孔38がそれぞれ設けられている。円板32,33の間には、それらの周縁に沿ってローラ36と、ガイド37とが交互に配列されている。ローラ36は、軸36aを有し、一対の円板32,33の前記孔38に、その両端部を挿入されて回転可能に支持されている。ガイド37は、軸方向中間部が縮径して鼓形状をなしており、その中心に配置された軸37aの両端部が、前記ローラ36と同様に、円板32,33の孔38に挿入されて回転可能に支持されている。前述したように、ローラ36とガイド37は交互に配列されて、この実施形態の場合は、全周にそれぞれ6個ずつ配置されている。但し、ガイド37は必ずしも必要なものではなく、また、ローラ36の数は、少なくとも2つ以上あればよい。
【0027】
再び図2を参照すると、カバー部材22は、この実施形態の場合は箱形をなし、その内面中央部に、支持台41と、可動板42と、押え部材48とが取付けられている。図4を併せて参照すると、支持台41の4隅には、孔43が形成され、この孔43の支持台41の裏面側における端部には、凹部46が設けられている。また、孔43の支持台41の表面側における端部には、スプリング収容凹部47が形成されている。そして、支持台41の背面側から、孔43にボルト44が挿入され、ボルト44の頭部は凹部46内に収容されている。更に、ボルト44の支持台41の表面側への挿出部分外周には、スプリング45が装着され、このスプリング45の一端は、スプリング収容凹部47内に収容されて支持されている。更に、ボルト44の先端部は、可動板42に螺着されて固定され、スプリング45の他端は可動板42に当接支持されている。スプリング45は、その状態で圧縮され、可動板42を押出すように弾性付勢している。
【0028】
そして、可動板42の表面側には、押え部材48がネジ止めされて固着されている。押え部材48は、その表面側の中央部に縦長のチューブ収容凹部49を有している。チューブ収容凹部49は、図4(b)に示すように、円弧状の湾曲した内面を有し、この内面はロータ30の外周に適合する形状をなしている。更に、チューブ収容凹部49の上下端部には、断面V字状をなすガイド溝50がそれぞれ形成されている。チューブ19はガイド溝50を通り、チューブ収容凹部49に収容されて、ロータ30の外周面に押圧されるようにして取付けられることになる。
【0029】
図2に示すように、カバー部材22は、基板21にヒンジ28を介して開閉可能に取付けられており、カバー部材22の一側面に設けた留め具51と、基板21の対応する側面に設けたフック52とによって、閉じた状態をロックできるようになっている。留め具51は、フック52に引掛けられる引掛け部51aと、レバー51bとを有している。
【0030】
基板21は、血液処理用装置10の装置本体13の、例えば前面16に固定配置される。この場合、ロータ30は、その外周の一部が基板21に設けられた開口部35から、アーチ状に突出した状態になる。そして、ロータ30の側面(外周面)が、装置本体13に対して上下方向となるように、ローラポンプ20は配置されている。
【0031】
図5は、チューブ19を挟んで、カバー部材22を閉じた状態を示している。この図に示されるように、カバー部材22の外側面中央には、窓部53が形成されている。この窓部53は抜き孔になっているか、若しくは、透明なパネルを装着して構成されており、内部が視認できるようになっている。また、図4(b)に示すように、支持台41の中央部には、抜け孔56が形成されており、前記窓部53及びこの抜け孔56を通して、押え部材48の背面側が外部から見えるようになっている。そして、押え部材48は、透明又は半透明な樹脂材料で構成されており、図5に示すように、チューブ19及びロータ30がカバー部材22の外側から透けて見えるようになっている。
【0032】
図6は、チューブ19を挟んで、カバー部材22を閉じた状態を示す断面図である。この図に示されるように、チューブ19は、カバー部材22の押え部材48のチューブ収容凹部49に収容された状態で、ロータ30のローラ36によって押圧され、その部分が、血液が通過できない圧閉部54をなしている。この場合、ロータ30がどのような回転角度にあっても、チューブ収容凹部49に少なくとも2つのローラ36が位置するようになっている。したがって、チューブ19は、チューブ収容凹部49内において、少なくとも2つのローラ36によって圧閉され、その間の空間が封入部55となる。そして、ロータ30の回転により、この封入部55が移動して、チューブ19内の血液がロータ30の回転量に応じて、送液されるようになっている。なお、ボルト44の外周に装着されたスプリング45は、可動板42を介して押え部材48を、ロータ30に押し付けるようになっている。
【0033】
次に、ローラポンプ20の使用方法について説明する。
【0034】
血液処理用装置10の前面16及び側面17に配設されたチューブ19を、ローラポンプ20に接続して、血液を送液する操作は、次のようにして行うことができる。
【0035】
まず、ローラポンプ20のカバー部材22を開き、基板21の開口部35から露出しているロータ30の外周面に、チューブ19を整合させる。その状態で、カバー部材22を閉じていき、ロータ30の外周面に載ったチューブ19が、押え部材48のチューブ収容凹部49に入るように位置合わせして、カバー部材22を閉じる。そして、留め具51の引掛け部51aを、フック52に引掛け、レバー51bを倒すことによって、カバー部材22を基板21に閉じた状態にロックする。
【0036】
すると、図6に示すように、スプリング45の付勢力によって、押え部材48がロータ30に向けて押圧され、ロータ30と押え部材48との間に挟まれたチューブ19が、ローラ36が配置された部分で押し潰されて、圧閉部54が形成される。この状態で、モータ23を動作させ、駆動軸24、タイミングプーリ25、タイミングベルト29、タイミングプーリ27、回転軸26を介して、ロータ30を回転させると、前述したように、圧閉部54で挟まれた封入部55がチューブ19をしごくように移動して、チューブ19内を流れる血液を送液することができる。
【0037】
ロータ30の回転は、図2に示す回転板39及びセンサ40によって検出され、モータ23を制御することによって、チューブ19内を流れる血液の流速を、任意の値に設定することができる。
【0038】
そして、このローラポンプ20においては、図5に示したように、カバー部材22を閉じた状態で、カバー部材22の窓部53を通して、チューブ19及びロータ30を透かして見ることができるため、チューブ19がロータ30のローラ36上に、正しく重なっているかどうかを確認することができる。したがって、チューブ19のセッティングミスを防止し、送液を確実に行わせることができる。
【0039】
また、図1に示すように、ロータ30はその外周面を、取付面となる前面16又は側面17からアーチ状に露出するように配設されているので、ローラポンプ20の設置スペースを比較的小さくすることができ、チューブ19の回路の取付スペースを広く確保できると共に、ローラポンプ20をより多く設置するこが可能となる。更に、ロータ30の外周が、装置本体13に対して、上下方向になるように配置されているので、チューブ19をロータ30の外周にあてがう際に、チューブ19を重力によって垂らした状態で、作業を行うことができ、作業性を向上させることができる。なお、本発明のローラポンプ20は、上記実施形態に示したような、血液処理用装置10に限らず、各種の医療用輸液装置に適用することもできる。
【0040】
図7には、本発明によるローラポンプの他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付して、その説明を省略することにする。
【0041】
この実施形態におけるローラポンプ20aは、カバー部材60が、蓋板62と、ガイドピン61とを有している。ガイドピン61は、蓋板62の内面の四隅に立設されており、血液処理用装置10の前面16に取付けられた基板21のガイド孔63に挿入されるようになっている。また、押え部材48のチューブ収容凹部49の上下に形成されたガイド溝50aは、断面が円弧状であって、かつ、開口部が内部の内径よりも狭い蟻溝状をなしており、チューブ19を弾性的に嵌合させることによって、チューブ19に予めカバー部材60を装着できるようになっている。
【0042】
このように、この実施形態では、カバー部材60が、基板21側に設けられた本体部とは別体に構成され、チューブ19を予め取付けてユニット化されている。
【0043】
そして、使用時においては、蓋板62に立設されたガイドピン61を、基板21のガイド孔63に差し込むことによって、チューブ19は押え部材48のチューブ収容凹部49に挿入保持された状態で、基板21の開口部35から露出するロータ30の外周に整合するようにあてがわれ、チューブ19が位置ズレすることなくセットされる。
【0044】
一方、血液処理用装置10の前面16には、前記実施形態と同様な留め具51が取付けられており、また、蓋板62には、この留め具51に係合するフック52が固着されている。したがって、蓋板62のガイドピン61を、基板21のガイド孔63に挿入し、セットした状態で、留め具51の引掛け部51aを、フック52に引掛け、レバー51bを倒すことによって、カバー部材60を被せた状態で固定することができる。したがって、この実施形態では、チューブ19のローラポンプ20aへのセッティングを容易に、かつ、確実に行うことができる。
【0045】
なお、この実施形態では、上記留め具51及びフック52が、本発明におけるロック手段を構成しているが、ロック手段としては、上記構成に限らず、当業者が適宜採用し得る各種のロック機構を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明によるローラポンプを装着した血液処理用装置の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明によるローラポンプの一実施形態を示し、カバー部材を開いた状態を示す斜視図である。
【図3】同ローラポンプにおけるロータを示し、(a)は分解斜視図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図4】同ローラポンプのカバー部材側に設けられる押え部材等を示し、(a)は正面図、(b)は側断面図、(c)は平面図である。
【図5】同ローラポンプのカバー部材を閉じた状態を示す正面図である。
【図6】同ローラポンプのカバー部材を閉じた状態における側断面図である。
【図7】本発明によるローラポンプの他の実施形態を示す、カバー部材を取外した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
10 血液処理用装置
13 装置本体
16 前面
19 チューブ
20,20a ローラポンプ
21 基板
21a 枠体
22,60 カバー部材
26 回転軸
30 ロータ
36 ローラ
36a 軸
45 スプリング
49 チューブ収容凹部
54 圧閉部
55 封入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用輸液装置又は血液処理用装置の外側面に取付けられるローラポンプにおいて、
ポンプ本体部を収容するハウジングと、
このハウジング内に回転可能に装着され、該ハウジングの前面に少なくとも一部が露出したロータと、
このロータの外周に該ロータの回転軸と平行な支軸を介して支持された少なくとも二つのローラと、
前記ハウジングに開閉可能に取付けられ、前記ロータの外周に沿って配設される弾性を有するチューブを保持するカバー部材とを備え、
前記ロータの回転に伴って前記ローラが前記チューブを圧閉しつつ、該チューブの長さ方向にしごくことにより、該チューブ内の流体を送液するように構成されており、
前記ロータが前記ハウジングの前面に対してほぼ平行な回転軸によって支持されて、その外周の一部が前記前面からアーチ状に露出するように配置されており、
前記カバー部材は、その内面に湾曲した凹部を有し、前記チューブをこの凹部に収容して、前記ロータの外周との間で該チューブを押圧するように、前記ハウジングに取付けられており、
前記ハウジングは、前記医療用輸液装置又は血液処理用装置の外側面に前面が位置すると共に、前記ロータの前面から露出する外周部分が上下に配設されるように、前記医療用輸液装置又は血液処理用装置に取付けられていることを特徴とするローラポンプ。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記チューブを前記凹部に収容し、前記ハウジングに取付けられた状態で、前記チューブを前記ロータに向けて押圧する付勢手段を有している請求項1記載のローラポンプ。
【請求項3】
前記カバー部材は、その一側を前記ハウジングに回動可能に取付けられ、前記ハウジングに対して回動することにより、前記ハウジングの前面から露出する前記ロータの外周を覆うように装着される請求項1又は2に記載のローラポンプ。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記ハウジングとは別体に構成され、前記チューブを前記凹部に収容した状態でユニット化されており、前記ハウジングと前記カバー部材との間には、前記カバー部材を前記ハウジングに対して着脱可能に固定するロック手段が設けられている請求項1又は2に記載のローラポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate