ローリングカッター用の刃体の製造装置及び製造方法
【課題】ローリングカッター用の刃体をよりコストダウンして製造することのできる製造装置及び製造方法を提供すること。
【解決手段】横断面形状が円形をなす鋼管Wをチャック装置3によって保持し、第1のモータ装置6によって鋼管Wをその周方向に回動させる。回動と同時に鋼管Wの前方から後方に向かって鋼管Wの軸方向に沿ってバーナーのノズル27を移動させる。ノズル27先端からは高熱の燃焼ガスを照射させて鋼管Wを切断していく。これによって鋼管Wに所定のカッティングラインを形成することができる。複数のカッティングラインを形成させることによって特殊形状のローリングカッター用の刃体を得ることができる。
【解決手段】横断面形状が円形をなす鋼管Wをチャック装置3によって保持し、第1のモータ装置6によって鋼管Wをその周方向に回動させる。回動と同時に鋼管Wの前方から後方に向かって鋼管Wの軸方向に沿ってバーナーのノズル27を移動させる。ノズル27先端からは高熱の燃焼ガスを照射させて鋼管Wを切断していく。これによって鋼管Wに所定のカッティングラインを形成することができる。複数のカッティングラインを形成させることによって特殊形状のローリングカッター用の刃体を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種繊維製品を裁断するための裁断装置であるローリングカッター用の刃体の製造装置及び製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から古着、不要な布等の各種繊維製品を裁断するための裁断装置としてローリングカッターが提供されている。ローリングカッターは投入口から繊維製品を投入し、外周に刃体を取り付けた回転フレーム体を回転させることで投入された繊維製品を裁断する装置である。このような回転フレーム体の一例について特許文献1及び2を挙げる。
例えば、引用文献2の平面図、左右側面図及びA−A断面図等に示すように、ローリングカッター用の回転フレーム体に取り付けられる刃体は、
1)回転フレーム体の幅方向に長く、かつ回転フレーム体の回転軸方向に対して斜状に形成された板状の外形形状を有している。
2)回転フレーム体の回転軸方向に直線で、回転方向に沿って外方に凸となる湾曲した外周面を有している。
3)回転フレーム体の幅方向に外周面と回転方向の前方に形成された斜状面とのなす断面鋭角の切れ刃を有している。
というように独自の特殊形状とされている。
このような形状の刃体は、一般に長尺の直方体形状の鋼材を用意し、これを金型でプレスして上記のような刃体の形状に成形し、刃先を研磨するようにして製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭50−33757号公報
【特許文献2】意匠登録第471884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、プレス成型でこのような形状の刃体を成形するには大型のプレス装置が必要であり、その設備費用が大きい。また、プレス用の金型はプレス時の負荷が非常に大きいため、使用回数に限界がある。そのため、従来ではローリングカッター用の刃体の製造コストが非常に大きいものになっており、刃体製造のための低コスト化が望まれていた。
本発明は、上記課題を解決するためのものである。その目的は、ローリングカッター用の刃体をよりコストダウンして製造することのできる製造装置及び製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために請求項1の発明では、ローリングカッター用の刃体の製造装置において、横断面形状が円形をなす鋼管を保持する保持手段と、前記保持手段に保持させた前記鋼管をその周方向に回動させる回動手段と、前記鋼管の外周位置に前記鋼管に対して所定の切断軸方向で配置され、前記鋼管との関係において前記鋼管の軸線方向に沿って相対的に移動する切断手段とを備え、前記回動手段によって前記鋼管を回動させる際に所定の回動周期内において前記切断手段によって前記鋼管の一端から他端側に向かってカッティングラインを形成する切断工程を実行させるようにしたことをその要旨とする。
また、請求項2の発明では請求項1に記載の発明の構成に加え、前記保持手段は前記鋼管の一方の端部寄りを把持し、前記切断手段は前記回動手段による前記鋼管の回動に同期して開放端側から前記保持手段方向に向かって切断することをその要旨とする。
また、請求項3の発明では請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記切断手段の切断軸方向は任意に変更可能であることをその要旨とする。
【0006】
また、請求項4の発明では、横断面形状が円形をなす鋼管を保持する保持手段と、前記保持手段に保持させた状態の前記鋼管を周方向に回動させる回動手段と、前記鋼管の外周位置に所定の切断軸方向で配置され前記鋼管の軸線方向に沿って相対的に移動する切断手段とを備えた製造装置によるローリングカッター用の刃体の製造方法であって、前記鋼管を前記回動手段によって回動させながら前記鋼管の軸方向に沿って前記鋼管との関係において相対的に移動する前記切断手段によって切断することで前記鋼管の軸線方向に対して平行とはならないカッティングラインを形成するとともに、前記鋼管に対して前記切断手段を所定の位相ごとにずらして切断した複数の前記カッティングラインを形成し、隣接した前記カッティングラインで挟まれた領域を刃体として得るようにしたことをその要旨とする。
また、請求項5の発明では請求項4に記載の発明の構成に加え、複数の前記カッティングラインは同じ軌跡に形成されることをその要旨とする。
また、請求項6の発明では請求項4又は5に記載の発明の構成に加え前記保持手段によって前記鋼管の一方の端部寄りを把持した状態で、前記切断手段によって開放端側から前記保持手段方向に向かって切断して複数の前記カッティングラインを形成し、その後前記カッティングラインの前記保持手段側の端部に交差するように前記鋼管の周方向を切断して刃体を得るようにしたことをその要旨とする。
【0007】
このような構成では、横断面形状が円形をなす(つまり円筒形状)鋼管を保持手段によって保持させた状態で回動手段によって回動させながら鋼管の軸線方向に沿って切断手段を鋼管との関係において相対的に移動させ鋼管の一端側から他端側に向かって切断することとなる。ここに「鋼管との関係において相対的」とは切断手段を移動させても鋼管側を移動させてもどちらでもよいということである。この際に切断手段によってカットされる鋼管に対するカッティングラインは鋼管の軸線方向に対して平行とはならず、斜めとなったカッティングラインとされる。軸線方向に対するカッティングラインの角度は回動手段の回転量に応じて設定されるものである。つまり、切断手段の切断始点から終点までに対する鋼管の所定の回動周期に依存する。その値を変更することでカッティングラインの角度を適宜変更することが可能である。また、回動手段の回転速度や切断手段の移動速度が一定でないとカッティングラインの直線性は担保されない。カッティングラインとして直線以外のライン形状を形成する場合には適宜回動手段の回転速度や切断手段の移動速度を変更させることが可能である。
切断手段で切断する際には鋼管に対する周方向における所定の位相ごとにずらして実行し、隣接したカッティングラインで挟まれた領域を刃体として得るようにする。カッティングラインは相互に同じ軌跡に形成されることが同形状の刃体を得るために無駄のないカッティング方法であるが、必ずしも同じ軌跡でなくとも構わない。少なくとも鋼管の軸線方向に対して同方向に変位させるように斜めのカッティングラインであればよい。
このような構成とすることによって従来のようなプレス成形に頼らずにローリングカッター用の刃体を作成できるため、ローリングカッター用の刃体の製造コストが軽減されることとなる。
【0008】
ここに、鋼管を保持する際には保持手段によって鋼管の一方の端部寄りを把持させ、鋼管の回動に同期させて開放端側から保持手段方向に向かって切断手段によって切断するような加工が好ましい。このような加工工程であれば回動手段や切断手段の制御が一方向のみになって、安定的な加工が可能となる。また、このような切断によって形成されるカッティングラインは保持手段によって把持させた一端側はカットされないため、複数のカッティングラインを先に形成し、その後カッティングラインの保持手段側の端部に交差するように鋼管の周方向を切断して刃体を得るようすることが効率的な刃体製造のためには好ましい。
また、切断手段としては鋼管を切断できる一般的な手段、例えばアセチレンバーナー等によるガス溶断、レーザー加工、ウォータージェット加工等を用いることができる。切断手段は鋼管に対する所定の切断軸方向で鋼管の外周位置に配置されるが、切断軸方向は任意に変更可能である。これによって切れ刃角を任意に変更することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
上記各請求項の発明のように構成すれば、ローリングカッター用の特殊形状の刃体をプレス成形によらずに製造することができ、従来に比べて製造コストが軽減されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態のローリングカッター用の刃体製造装置を模式的に表現した正面図。
【図2】同じローリングカッター用の刃体製造装置の側面図。
【図3】同じローリングカッター用の刃体製造装置の背面図。
【図4】同じローリングカッター用の刃体製造装置においてベースとテーブルの断面図。
【図5】同じローリングカッター用の刃体製造装置において(a)は正面方向からのノズル周辺を説明する説明図、(b)は同じく右側面方向からのノズル周辺を説明する説明図。
【図6】(a)は鋼管全周にカッティングラインを形成した状態の斜視図、(b)は同じ鋼管においてカッティングライン終端を周方向にカットした状態の斜視図、(c)はカッティングラインによって切り出された刃体の斜視図、(d)は刃体に取り付け用耳部を形成させた状態の斜視図。
【図7】鋼管の正面と左右側面に現れるカッティングラインと鋼管の軸船方向の関係を説明する説明図。
【図8】ローリングカッター用の刃体製造装置の構成の概略を説明する説明図。
【図9】鋼管に対するノズルの切断軸方向を説明する説明図。
【図10】鋼管に対するノズルのカッティングラインを説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のローリングカッター用の刃体製造装置を具体化した一例としての実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、ローリングカッター用の刃体製造装置(以下、刃体製造装置)1はベッド2を備え、ベッド2上に保持手段としてのチャック装置3が配設されている。本実施の形態では図1における右方向を後方とし、左方向を前方とする。チャック装置3は円盤状の本体3aの前面に3本のチャック爪3bを備えている。チャック爪3bは併設された図示しない操作ダイヤルによって直径方向に進退可能とされている。チャック装置3の回動軸4は軸受け5に支持され、更に第1のモータ装置6の駆動軸7に連結されている。第1のモータ装置6は減速機とサーボモータから構成されている。チャック装置3のの回動軸4の軸心は駆動軸7の軸心と一致する。回動手段としての第1のモータ装置6が駆動されることによってチャック装置3は本体3aの周方向に回動させられる。チャック装置3の前方のベッド2上の空間はワークとしての鋼管Wが配設される作業領域Sとされる。
ベッド2の背後にはフェンスプレート8が立設されフェンスプレート8を挟んだ奥位置にはテーブル9が配設されている。図4に示すように、テーブル9はベース10側のレール11に対してプーリ12によって支持され、前後方向にスライド移動可能とされている。テーブル9の移動方向は駆動軸7の軸方向と平行とされている。ベース10内には第2のモータ装置13が配設されている。第2のモータ装置13は減速機とサーボモータから構成されている。第2のモータ装置13の上部には減速機を介して駆動伝達されるピニオン14が突設されており、テーブル9裏面の前後方向に沿って形成されているラック15と噛合されている。その結果、テーブル移動手段としての第2のモータ装置13の駆動によってテーブル9は前後方向(駆動軸7に平行な方向)に進退させられる。
第1のモータ装置6に隣接した位置には後述するコントローラ31等の電気的構成が収容された制御ボックス16が配設されている。
【0012】
テーブル9の上面には支柱17が立設されている。図5(a)及び(b)に示すように、支柱17の上部位置からフェンスプレート8の上方を交差してベッド2の作業領域Sに面した位置に向かってビーム18が水平に延出形成されている。ビーム18には第1のホルダー19がビーム18に沿って進退可能に取着されている。第1のホルダー19は蝶ボルト20によってビーム18上の所定位置に固定されるようになっている。第1のホルダー19からロッド21が垂直に下垂されており、ロッド21には第2のホルダー22がロッド21に沿って進退可能に取着されている。第2のホルダー22は蝶ボルト23によってロッド21上の所定位置に固定されるようになっている。第2のホルダー22から後方に向かって小ロッド24が延出されており、小ロッド24の先端には第3のホルダー25が取着されている。第3のホルダー25は小ロッド24に対してその周方向に回動可能に軸支されており、蝶ボルト26によって所定の回動位置に固定されるようになっている。第3のホルダー25には切断手段としてのアセチレン溶断用バーナーのノズル27が取着されている。ノズル27の基部には図示しないアセチレン及び酸素制御操作部から延出される複数のホース28が接続されている。
図5(a)及び(b)に示すように、ビーム18に対する第1のホルダー19の位置を矢印pのように水平に進退させ、第2のホルダー22を矢印qのように上下に進退させることでノズル27を鋼管Wに対して接離させることが可能となる。更に、第3のホルダー25を矢印rのように回動(揺動)させることによって鋼管Wに対するノズル27先端の向きを変移させることが可能となる。本実施の形態ではノズル27先端を鋼管Wから数ミリ離間させて鋼管Wの開放端位置に配置させるように調整する。
【0013】
次に、このような構成の刃体製造装置1の電気的構成について簡単に説明する。本発明とは直接関係のない構成については省略する。図8に示すように、コントローラ31には第1及び第2のモータ装置6,13のサーボモータがアンプ32を介して接続されている。コントローラ31は周知のCPU等からなる刃体製造装置1のNC制御を実行する本体部分であって、メモリとしてROM33及びRAM34が接続されている。また、コントローラ31にはスイッチやキーボード等から構成される入力操作部35が接続されている。ROM33には刃体製造装置1のシステムプログラム、NC加工プログラム、OS(Operation System)等の各種プログラムが記憶されている。RAM34には第1及び第2のモータ装置6,13の回転を制御するための加工条件データが記憶されている。加工条件データとしては、チャック装置3の回転量に応じた所定タイミングでの第1のモータ装置6の制御データであり、また第1のモータ装置6の制御に伴って制御する第2のモータ装置13の制御データである。これら加工条件データは入力操作部35から直接入力しても、別途作成したデータを取り込むようにしてもよい。
【0014】
次に、このように構成される刃体製造装置1による鋼管Wから刃体を製造する製造工程の一例について具体的に説明する。
チャック装置3に対して鋼管Wの一端側を把持させ、回動軸4の軸心と鋼管Wの軸心を一致させる。鋼管Wは横断面形状円形の合金製の円筒体である。鋼管Wは図1のように作業領域Sに片持ち梁状に配置されることとなる。この際に、図9に示すように、ノズル27先端は鋼管Wの開放端に配置させるが、切断軸C方向は軸心(直径)方向の線分Rに対して切れ刃角を作るために若干(本実施の形態では20度)偏心させて配置する。
作業者は入力操作部35を操作して刃体製造装置1を駆動させるとともに、アセチレン及び酸素制御操作部を操作してアセチレンガスと酸素をノズル27に供給し、ノズル27の火口に着火してノズル27から高熱の燃焼ガスの照射させる。コントローラ31は作業者の入力操作部35への操作(入力)に従って第1のモータ装置6を等速で駆動させ、第1のモータ装置6の駆動に同期させて第2のモータ装置13を等速で駆動させる。その結果、鋼管Wはチャック装置3とともに周方向に等速で回動し、同時にテーブル9は鋼管Wの長手方向に沿って前方位置から後方に向かって等速でスライド移動することとなる。
このような各部材の動作に伴うノズル27視点でのカッティングラインCLを説明する。図10に示すように、ノズル27はテーブル9の移動に伴って鋼管Wとの一定の離間距離を保ちながら切断開始位置s1−1から切断終了位置s1−2まで移動して鋼管Wを厚み方向で切断することとなる。この1回目のカッティングラインCL−1は鋼管Wの周方向への回動距離L1と、開放端位置からチャック装置3のチャック爪3bの手前位置までの直線距離L2とを合成したライン形状とされる。
尚、第1及び第2のモータ装置6,13の駆動速度はバーナーの能力と鋼管Wの厚みに応じて経験的に設定される。そして、適宜変更可能である。例えば、バーナーの能力が高ければより切断能力が高いので第1及び第2のモータ装置6,13の駆動速度を早めに設定することが可能である。また、鋼管Wの厚みが薄ければそれだけ切断速度は速く、逆に厚ければ遅く設定する。
【0015】
さて、1回目の切断(1回目のカッティングラインCL−1の形成)が完了すると、作業者は一旦アセチレン及び酸素制御操作部を操作して酸素やアセチレン燃料の供給を遮断してノズル27からの燃焼ガスの照射を停止させる。一方、コントローラ31は1回目の切断が完了したため、2回目の切断開始位置s2−1にノズル27を配置させるように制御する。具体的にはコントローラ31は第1のモータ装置6を駆動させて刃体の幅分だけ鋼管Wを回動させるとともに、第1のモータ装置6の駆動に同期させて第2のモータ装置13を逆方向に駆動させて鋼管Wの開放端位置にノズル27を復帰させる。
これをノズル27視点で説明すると、図10に示すように1回目の切断終了位置s1−2に至ったノズル27が復帰ラインRLの軌跡で2回目の切断開始位置s2−1に移動することとなる。この復帰ラインRLは鋼管Wの周方向への回動距離L3と、チャック爪3bの手前位置から開放端位置までの直線距離L2とを合成したライン形状とされる。
次いで、上記と同様の工程で2回目の切断(2回目のカッティングラインCL−2の形成)が実行される。図10は2回目の切断の途中までを図示している。この繰り返しで3回目以降の切断を鋼管Wの全周囲に実行する。尚、本実施の形態における鋼管WとカッティングラインCLの関係は図7の通りである。各カッティングラインCLは鋼管Wの軸線方向に対して本実施の形態ではわずかに2.17度変位させている。従って、本実施の形態では実際にはカッティングラインCLの切断の際の第1のモータ装置6の駆動量はごくわずかである。
【0016】
このようにして全周にカッティングラインCLを形成すると図6(a)のようにチャック装置3で把持された基端側が端まで完全に切断されておらず、チャック装置3によって把持した側はカッティングラインCLが及んでいない状態で得られることとなる。コントローラ31はn回目の最後の切断を完了すると、第1のモータ装置6を駆動させ、切断終了位置sn−2を始点として鋼管Wの全周を切断する(図6(b)の状態)。本実施の形態では若干の余りが生じているが、刃体41の幅によっては余りが生じないような設定も可能である。これによって各刃体はばらけて図6(c)のような形状の長尺の刃体41が得られる。そして、この刃体41の両端にローリングカッター用の回転フレーム体に取り付けるための取り付け用耳部42を例えば溶接によって形成することで刃体41が完成する。
【0017】
上記のように構成することにより本実施例のローリングカッター用の刃体製造装置1及び製造方法は以下のような効果を奏する。
(1)ローリングカッター用の特殊形状の刃体41をプレス成形によらずに鋼管Wを切断加工して得ることができ、従来に比べて製造コストが軽減されることとなる。
(2)鋼管Wを少しずつ周方向に位相を変位させながら長手方向に切断するだけで、ローリングカッター用の特殊な形状の刃体41を得ることができるので、切断加工のための特殊な加工装置を必要とせず、製造コストの軽減に貢献する。
(3)開放端から切断する際に各カッティングラインCLは完全に他端にまで及ばずに端を残すような加工制御をしており、最後に切り離すようにしているため、加工途中で刃体41がばらけてしまい、加工に支障をきたすようなことがない。
(4)バーナーの能力や鋼管Wの厚みに応じて切断速度を任意に変更できるため、種々のサイズの刃体41にも対応できる。
【0018】
なお、この発明は前記実施例に限定されるものではなく、次のように変更して具体化することも可能である。
・上記実施の形態の刃体製造装置1は一例であって、他の構成で実施することも自由である。
・刃体41の幅、つまりどのくらい第1のモータ装置6を駆動させて鋼管Wを回動させて次の回の切断開始位置sn−1を設定するかは適宜設定可能である。また、上記ではカッティングラインCLは鋼管Wの軸線方向に対して本実施の形態では2.17度変位させるような設定であったが、これは一例であって、適宜鋼管Wの軸線方向との角度を変更することも自由である。
・切断終了位置sn−2をどこに設定するかも自由である。
・切れ刃角を設けるためのノズル27先端を鋼管Wの開放端に軸心(直径)方向の線分Rに対して偏心させる偏心量(偏心角度)は変更可能である。
・上記では第1及び第2のモータ装置6,13の駆動速度は等速に設定されていたが、カッティングラインCLの形状を直線以外の形状とする場合には適宜第1及び第2のモータ装置6,13の駆動速度を変更するように設定してもよい。
・上記実施の形態ではバーナーの操作は刃体製造装置1のコントローラ31による制御とは別に作業者が適宜アセチレン及び酸素制御操作部を操作していたが、他の切断手段によっては切断動作もコントローラのような制御手段で自動的な切断動作をさせるような構成も可能である。
・上記では鋼管Wをチャック装置3に片持ち梁状に支持させたが、例えばベッド2上に鋼管Wの先端寄りを支持するような補助支持部材を設置するようにしてもよい。
・上記実施の形態ではテーブル9はラック・ピニオン関係でスライド移動させるようにしたが、他の手段、例えばねじ棒とねじ棒に螺合されたコマ部材による関係でスライド移動させるようにしてもよい。
・上記実施の形態では取り付け用耳部42を溶接によって形成するようにしたが、他の手段、例えば切削加工によって取り付け用耳部を形成するようにしてもよい。
・その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更した態様で実施することは自由である。
【符号の説明】
【0019】
1…ローリングカッター用の刃体の製造装置、3…保持手段としてのチャック装置、6…回動手段としての第1のモータ装置、27…切断手段としてのバーナーのノズル、CL…カッティングライン、W…鋼管。
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種繊維製品を裁断するための裁断装置であるローリングカッター用の刃体の製造装置及び製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から古着、不要な布等の各種繊維製品を裁断するための裁断装置としてローリングカッターが提供されている。ローリングカッターは投入口から繊維製品を投入し、外周に刃体を取り付けた回転フレーム体を回転させることで投入された繊維製品を裁断する装置である。このような回転フレーム体の一例について特許文献1及び2を挙げる。
例えば、引用文献2の平面図、左右側面図及びA−A断面図等に示すように、ローリングカッター用の回転フレーム体に取り付けられる刃体は、
1)回転フレーム体の幅方向に長く、かつ回転フレーム体の回転軸方向に対して斜状に形成された板状の外形形状を有している。
2)回転フレーム体の回転軸方向に直線で、回転方向に沿って外方に凸となる湾曲した外周面を有している。
3)回転フレーム体の幅方向に外周面と回転方向の前方に形成された斜状面とのなす断面鋭角の切れ刃を有している。
というように独自の特殊形状とされている。
このような形状の刃体は、一般に長尺の直方体形状の鋼材を用意し、これを金型でプレスして上記のような刃体の形状に成形し、刃先を研磨するようにして製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭50−33757号公報
【特許文献2】意匠登録第471884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、プレス成型でこのような形状の刃体を成形するには大型のプレス装置が必要であり、その設備費用が大きい。また、プレス用の金型はプレス時の負荷が非常に大きいため、使用回数に限界がある。そのため、従来ではローリングカッター用の刃体の製造コストが非常に大きいものになっており、刃体製造のための低コスト化が望まれていた。
本発明は、上記課題を解決するためのものである。その目的は、ローリングカッター用の刃体をよりコストダウンして製造することのできる製造装置及び製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために請求項1の発明では、ローリングカッター用の刃体の製造装置において、横断面形状が円形をなす鋼管を保持する保持手段と、前記保持手段に保持させた前記鋼管をその周方向に回動させる回動手段と、前記鋼管の外周位置に前記鋼管に対して所定の切断軸方向で配置され、前記鋼管との関係において前記鋼管の軸線方向に沿って相対的に移動する切断手段とを備え、前記回動手段によって前記鋼管を回動させる際に所定の回動周期内において前記切断手段によって前記鋼管の一端から他端側に向かってカッティングラインを形成する切断工程を実行させるようにしたことをその要旨とする。
また、請求項2の発明では請求項1に記載の発明の構成に加え、前記保持手段は前記鋼管の一方の端部寄りを把持し、前記切断手段は前記回動手段による前記鋼管の回動に同期して開放端側から前記保持手段方向に向かって切断することをその要旨とする。
また、請求項3の発明では請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記切断手段の切断軸方向は任意に変更可能であることをその要旨とする。
【0006】
また、請求項4の発明では、横断面形状が円形をなす鋼管を保持する保持手段と、前記保持手段に保持させた状態の前記鋼管を周方向に回動させる回動手段と、前記鋼管の外周位置に所定の切断軸方向で配置され前記鋼管の軸線方向に沿って相対的に移動する切断手段とを備えた製造装置によるローリングカッター用の刃体の製造方法であって、前記鋼管を前記回動手段によって回動させながら前記鋼管の軸方向に沿って前記鋼管との関係において相対的に移動する前記切断手段によって切断することで前記鋼管の軸線方向に対して平行とはならないカッティングラインを形成するとともに、前記鋼管に対して前記切断手段を所定の位相ごとにずらして切断した複数の前記カッティングラインを形成し、隣接した前記カッティングラインで挟まれた領域を刃体として得るようにしたことをその要旨とする。
また、請求項5の発明では請求項4に記載の発明の構成に加え、複数の前記カッティングラインは同じ軌跡に形成されることをその要旨とする。
また、請求項6の発明では請求項4又は5に記載の発明の構成に加え前記保持手段によって前記鋼管の一方の端部寄りを把持した状態で、前記切断手段によって開放端側から前記保持手段方向に向かって切断して複数の前記カッティングラインを形成し、その後前記カッティングラインの前記保持手段側の端部に交差するように前記鋼管の周方向を切断して刃体を得るようにしたことをその要旨とする。
【0007】
このような構成では、横断面形状が円形をなす(つまり円筒形状)鋼管を保持手段によって保持させた状態で回動手段によって回動させながら鋼管の軸線方向に沿って切断手段を鋼管との関係において相対的に移動させ鋼管の一端側から他端側に向かって切断することとなる。ここに「鋼管との関係において相対的」とは切断手段を移動させても鋼管側を移動させてもどちらでもよいということである。この際に切断手段によってカットされる鋼管に対するカッティングラインは鋼管の軸線方向に対して平行とはならず、斜めとなったカッティングラインとされる。軸線方向に対するカッティングラインの角度は回動手段の回転量に応じて設定されるものである。つまり、切断手段の切断始点から終点までに対する鋼管の所定の回動周期に依存する。その値を変更することでカッティングラインの角度を適宜変更することが可能である。また、回動手段の回転速度や切断手段の移動速度が一定でないとカッティングラインの直線性は担保されない。カッティングラインとして直線以外のライン形状を形成する場合には適宜回動手段の回転速度や切断手段の移動速度を変更させることが可能である。
切断手段で切断する際には鋼管に対する周方向における所定の位相ごとにずらして実行し、隣接したカッティングラインで挟まれた領域を刃体として得るようにする。カッティングラインは相互に同じ軌跡に形成されることが同形状の刃体を得るために無駄のないカッティング方法であるが、必ずしも同じ軌跡でなくとも構わない。少なくとも鋼管の軸線方向に対して同方向に変位させるように斜めのカッティングラインであればよい。
このような構成とすることによって従来のようなプレス成形に頼らずにローリングカッター用の刃体を作成できるため、ローリングカッター用の刃体の製造コストが軽減されることとなる。
【0008】
ここに、鋼管を保持する際には保持手段によって鋼管の一方の端部寄りを把持させ、鋼管の回動に同期させて開放端側から保持手段方向に向かって切断手段によって切断するような加工が好ましい。このような加工工程であれば回動手段や切断手段の制御が一方向のみになって、安定的な加工が可能となる。また、このような切断によって形成されるカッティングラインは保持手段によって把持させた一端側はカットされないため、複数のカッティングラインを先に形成し、その後カッティングラインの保持手段側の端部に交差するように鋼管の周方向を切断して刃体を得るようすることが効率的な刃体製造のためには好ましい。
また、切断手段としては鋼管を切断できる一般的な手段、例えばアセチレンバーナー等によるガス溶断、レーザー加工、ウォータージェット加工等を用いることができる。切断手段は鋼管に対する所定の切断軸方向で鋼管の外周位置に配置されるが、切断軸方向は任意に変更可能である。これによって切れ刃角を任意に変更することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
上記各請求項の発明のように構成すれば、ローリングカッター用の特殊形状の刃体をプレス成形によらずに製造することができ、従来に比べて製造コストが軽減されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態のローリングカッター用の刃体製造装置を模式的に表現した正面図。
【図2】同じローリングカッター用の刃体製造装置の側面図。
【図3】同じローリングカッター用の刃体製造装置の背面図。
【図4】同じローリングカッター用の刃体製造装置においてベースとテーブルの断面図。
【図5】同じローリングカッター用の刃体製造装置において(a)は正面方向からのノズル周辺を説明する説明図、(b)は同じく右側面方向からのノズル周辺を説明する説明図。
【図6】(a)は鋼管全周にカッティングラインを形成した状態の斜視図、(b)は同じ鋼管においてカッティングライン終端を周方向にカットした状態の斜視図、(c)はカッティングラインによって切り出された刃体の斜視図、(d)は刃体に取り付け用耳部を形成させた状態の斜視図。
【図7】鋼管の正面と左右側面に現れるカッティングラインと鋼管の軸船方向の関係を説明する説明図。
【図8】ローリングカッター用の刃体製造装置の構成の概略を説明する説明図。
【図9】鋼管に対するノズルの切断軸方向を説明する説明図。
【図10】鋼管に対するノズルのカッティングラインを説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のローリングカッター用の刃体製造装置を具体化した一例としての実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、ローリングカッター用の刃体製造装置(以下、刃体製造装置)1はベッド2を備え、ベッド2上に保持手段としてのチャック装置3が配設されている。本実施の形態では図1における右方向を後方とし、左方向を前方とする。チャック装置3は円盤状の本体3aの前面に3本のチャック爪3bを備えている。チャック爪3bは併設された図示しない操作ダイヤルによって直径方向に進退可能とされている。チャック装置3の回動軸4は軸受け5に支持され、更に第1のモータ装置6の駆動軸7に連結されている。第1のモータ装置6は減速機とサーボモータから構成されている。チャック装置3のの回動軸4の軸心は駆動軸7の軸心と一致する。回動手段としての第1のモータ装置6が駆動されることによってチャック装置3は本体3aの周方向に回動させられる。チャック装置3の前方のベッド2上の空間はワークとしての鋼管Wが配設される作業領域Sとされる。
ベッド2の背後にはフェンスプレート8が立設されフェンスプレート8を挟んだ奥位置にはテーブル9が配設されている。図4に示すように、テーブル9はベース10側のレール11に対してプーリ12によって支持され、前後方向にスライド移動可能とされている。テーブル9の移動方向は駆動軸7の軸方向と平行とされている。ベース10内には第2のモータ装置13が配設されている。第2のモータ装置13は減速機とサーボモータから構成されている。第2のモータ装置13の上部には減速機を介して駆動伝達されるピニオン14が突設されており、テーブル9裏面の前後方向に沿って形成されているラック15と噛合されている。その結果、テーブル移動手段としての第2のモータ装置13の駆動によってテーブル9は前後方向(駆動軸7に平行な方向)に進退させられる。
第1のモータ装置6に隣接した位置には後述するコントローラ31等の電気的構成が収容された制御ボックス16が配設されている。
【0012】
テーブル9の上面には支柱17が立設されている。図5(a)及び(b)に示すように、支柱17の上部位置からフェンスプレート8の上方を交差してベッド2の作業領域Sに面した位置に向かってビーム18が水平に延出形成されている。ビーム18には第1のホルダー19がビーム18に沿って進退可能に取着されている。第1のホルダー19は蝶ボルト20によってビーム18上の所定位置に固定されるようになっている。第1のホルダー19からロッド21が垂直に下垂されており、ロッド21には第2のホルダー22がロッド21に沿って進退可能に取着されている。第2のホルダー22は蝶ボルト23によってロッド21上の所定位置に固定されるようになっている。第2のホルダー22から後方に向かって小ロッド24が延出されており、小ロッド24の先端には第3のホルダー25が取着されている。第3のホルダー25は小ロッド24に対してその周方向に回動可能に軸支されており、蝶ボルト26によって所定の回動位置に固定されるようになっている。第3のホルダー25には切断手段としてのアセチレン溶断用バーナーのノズル27が取着されている。ノズル27の基部には図示しないアセチレン及び酸素制御操作部から延出される複数のホース28が接続されている。
図5(a)及び(b)に示すように、ビーム18に対する第1のホルダー19の位置を矢印pのように水平に進退させ、第2のホルダー22を矢印qのように上下に進退させることでノズル27を鋼管Wに対して接離させることが可能となる。更に、第3のホルダー25を矢印rのように回動(揺動)させることによって鋼管Wに対するノズル27先端の向きを変移させることが可能となる。本実施の形態ではノズル27先端を鋼管Wから数ミリ離間させて鋼管Wの開放端位置に配置させるように調整する。
【0013】
次に、このような構成の刃体製造装置1の電気的構成について簡単に説明する。本発明とは直接関係のない構成については省略する。図8に示すように、コントローラ31には第1及び第2のモータ装置6,13のサーボモータがアンプ32を介して接続されている。コントローラ31は周知のCPU等からなる刃体製造装置1のNC制御を実行する本体部分であって、メモリとしてROM33及びRAM34が接続されている。また、コントローラ31にはスイッチやキーボード等から構成される入力操作部35が接続されている。ROM33には刃体製造装置1のシステムプログラム、NC加工プログラム、OS(Operation System)等の各種プログラムが記憶されている。RAM34には第1及び第2のモータ装置6,13の回転を制御するための加工条件データが記憶されている。加工条件データとしては、チャック装置3の回転量に応じた所定タイミングでの第1のモータ装置6の制御データであり、また第1のモータ装置6の制御に伴って制御する第2のモータ装置13の制御データである。これら加工条件データは入力操作部35から直接入力しても、別途作成したデータを取り込むようにしてもよい。
【0014】
次に、このように構成される刃体製造装置1による鋼管Wから刃体を製造する製造工程の一例について具体的に説明する。
チャック装置3に対して鋼管Wの一端側を把持させ、回動軸4の軸心と鋼管Wの軸心を一致させる。鋼管Wは横断面形状円形の合金製の円筒体である。鋼管Wは図1のように作業領域Sに片持ち梁状に配置されることとなる。この際に、図9に示すように、ノズル27先端は鋼管Wの開放端に配置させるが、切断軸C方向は軸心(直径)方向の線分Rに対して切れ刃角を作るために若干(本実施の形態では20度)偏心させて配置する。
作業者は入力操作部35を操作して刃体製造装置1を駆動させるとともに、アセチレン及び酸素制御操作部を操作してアセチレンガスと酸素をノズル27に供給し、ノズル27の火口に着火してノズル27から高熱の燃焼ガスの照射させる。コントローラ31は作業者の入力操作部35への操作(入力)に従って第1のモータ装置6を等速で駆動させ、第1のモータ装置6の駆動に同期させて第2のモータ装置13を等速で駆動させる。その結果、鋼管Wはチャック装置3とともに周方向に等速で回動し、同時にテーブル9は鋼管Wの長手方向に沿って前方位置から後方に向かって等速でスライド移動することとなる。
このような各部材の動作に伴うノズル27視点でのカッティングラインCLを説明する。図10に示すように、ノズル27はテーブル9の移動に伴って鋼管Wとの一定の離間距離を保ちながら切断開始位置s1−1から切断終了位置s1−2まで移動して鋼管Wを厚み方向で切断することとなる。この1回目のカッティングラインCL−1は鋼管Wの周方向への回動距離L1と、開放端位置からチャック装置3のチャック爪3bの手前位置までの直線距離L2とを合成したライン形状とされる。
尚、第1及び第2のモータ装置6,13の駆動速度はバーナーの能力と鋼管Wの厚みに応じて経験的に設定される。そして、適宜変更可能である。例えば、バーナーの能力が高ければより切断能力が高いので第1及び第2のモータ装置6,13の駆動速度を早めに設定することが可能である。また、鋼管Wの厚みが薄ければそれだけ切断速度は速く、逆に厚ければ遅く設定する。
【0015】
さて、1回目の切断(1回目のカッティングラインCL−1の形成)が完了すると、作業者は一旦アセチレン及び酸素制御操作部を操作して酸素やアセチレン燃料の供給を遮断してノズル27からの燃焼ガスの照射を停止させる。一方、コントローラ31は1回目の切断が完了したため、2回目の切断開始位置s2−1にノズル27を配置させるように制御する。具体的にはコントローラ31は第1のモータ装置6を駆動させて刃体の幅分だけ鋼管Wを回動させるとともに、第1のモータ装置6の駆動に同期させて第2のモータ装置13を逆方向に駆動させて鋼管Wの開放端位置にノズル27を復帰させる。
これをノズル27視点で説明すると、図10に示すように1回目の切断終了位置s1−2に至ったノズル27が復帰ラインRLの軌跡で2回目の切断開始位置s2−1に移動することとなる。この復帰ラインRLは鋼管Wの周方向への回動距離L3と、チャック爪3bの手前位置から開放端位置までの直線距離L2とを合成したライン形状とされる。
次いで、上記と同様の工程で2回目の切断(2回目のカッティングラインCL−2の形成)が実行される。図10は2回目の切断の途中までを図示している。この繰り返しで3回目以降の切断を鋼管Wの全周囲に実行する。尚、本実施の形態における鋼管WとカッティングラインCLの関係は図7の通りである。各カッティングラインCLは鋼管Wの軸線方向に対して本実施の形態ではわずかに2.17度変位させている。従って、本実施の形態では実際にはカッティングラインCLの切断の際の第1のモータ装置6の駆動量はごくわずかである。
【0016】
このようにして全周にカッティングラインCLを形成すると図6(a)のようにチャック装置3で把持された基端側が端まで完全に切断されておらず、チャック装置3によって把持した側はカッティングラインCLが及んでいない状態で得られることとなる。コントローラ31はn回目の最後の切断を完了すると、第1のモータ装置6を駆動させ、切断終了位置sn−2を始点として鋼管Wの全周を切断する(図6(b)の状態)。本実施の形態では若干の余りが生じているが、刃体41の幅によっては余りが生じないような設定も可能である。これによって各刃体はばらけて図6(c)のような形状の長尺の刃体41が得られる。そして、この刃体41の両端にローリングカッター用の回転フレーム体に取り付けるための取り付け用耳部42を例えば溶接によって形成することで刃体41が完成する。
【0017】
上記のように構成することにより本実施例のローリングカッター用の刃体製造装置1及び製造方法は以下のような効果を奏する。
(1)ローリングカッター用の特殊形状の刃体41をプレス成形によらずに鋼管Wを切断加工して得ることができ、従来に比べて製造コストが軽減されることとなる。
(2)鋼管Wを少しずつ周方向に位相を変位させながら長手方向に切断するだけで、ローリングカッター用の特殊な形状の刃体41を得ることができるので、切断加工のための特殊な加工装置を必要とせず、製造コストの軽減に貢献する。
(3)開放端から切断する際に各カッティングラインCLは完全に他端にまで及ばずに端を残すような加工制御をしており、最後に切り離すようにしているため、加工途中で刃体41がばらけてしまい、加工に支障をきたすようなことがない。
(4)バーナーの能力や鋼管Wの厚みに応じて切断速度を任意に変更できるため、種々のサイズの刃体41にも対応できる。
【0018】
なお、この発明は前記実施例に限定されるものではなく、次のように変更して具体化することも可能である。
・上記実施の形態の刃体製造装置1は一例であって、他の構成で実施することも自由である。
・刃体41の幅、つまりどのくらい第1のモータ装置6を駆動させて鋼管Wを回動させて次の回の切断開始位置sn−1を設定するかは適宜設定可能である。また、上記ではカッティングラインCLは鋼管Wの軸線方向に対して本実施の形態では2.17度変位させるような設定であったが、これは一例であって、適宜鋼管Wの軸線方向との角度を変更することも自由である。
・切断終了位置sn−2をどこに設定するかも自由である。
・切れ刃角を設けるためのノズル27先端を鋼管Wの開放端に軸心(直径)方向の線分Rに対して偏心させる偏心量(偏心角度)は変更可能である。
・上記では第1及び第2のモータ装置6,13の駆動速度は等速に設定されていたが、カッティングラインCLの形状を直線以外の形状とする場合には適宜第1及び第2のモータ装置6,13の駆動速度を変更するように設定してもよい。
・上記実施の形態ではバーナーの操作は刃体製造装置1のコントローラ31による制御とは別に作業者が適宜アセチレン及び酸素制御操作部を操作していたが、他の切断手段によっては切断動作もコントローラのような制御手段で自動的な切断動作をさせるような構成も可能である。
・上記では鋼管Wをチャック装置3に片持ち梁状に支持させたが、例えばベッド2上に鋼管Wの先端寄りを支持するような補助支持部材を設置するようにしてもよい。
・上記実施の形態ではテーブル9はラック・ピニオン関係でスライド移動させるようにしたが、他の手段、例えばねじ棒とねじ棒に螺合されたコマ部材による関係でスライド移動させるようにしてもよい。
・上記実施の形態では取り付け用耳部42を溶接によって形成するようにしたが、他の手段、例えば切削加工によって取り付け用耳部を形成するようにしてもよい。
・その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更した態様で実施することは自由である。
【符号の説明】
【0019】
1…ローリングカッター用の刃体の製造装置、3…保持手段としてのチャック装置、6…回動手段としての第1のモータ装置、27…切断手段としてのバーナーのノズル、CL…カッティングライン、W…鋼管。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローリングカッター用の刃体の製造装置において、
横断面形状が円形をなす鋼管を保持する保持手段と、
前記保持手段に保持させた前記鋼管をその周方向に回動させる回動手段と、
前記鋼管の外周位置に前記鋼管に対して所定の切断軸方向で配置され、前記鋼管との関係において前記鋼管の軸線方向に沿って相対的に移動する切断手段とを備え、
前記回動手段によって前記鋼管を回動させる際に所定の回動周期内において前記切断手段によって前記鋼管の一端側から他端側に向かってカッティングラインを形成する切断工程を実行させるようにしたことを特徴とするローリングカッター用の刃体の製造装置。
【請求項2】
前記保持手段は前記鋼管の一方の端部寄りを把持し、前記切断手段は前記回動手段による前記鋼管の回動に同期して開放端側から前記保持手段方向に向かって切断することを特徴とする請求項1に記載のローリングカッター用の刃体の製造装置。
【請求項3】
前記切断手段の切断軸方向は任意に変更可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のローリングカッター用の刃体の製造装置。
【請求項4】
横断面形状が円形をなす鋼管を保持する保持手段と、前記保持手段に保持させた状態の前記鋼管を周方向に回動させる回動手段と、前記鋼管の外周位置に所定の切断軸方向で配置され前記鋼管の軸線方向に沿って相対的に移動する切断手段とを備えた製造装置によるローリングカッター用の刃体の製造方法であって、
前記鋼管を前記回動手段によって回動させながら前記鋼管の軸方向に沿って前記鋼管との関係において相対的に移動する前記切断手段によって切断することで前記鋼管の軸線方向に対して平行とはならないカッティングラインを形成するとともに、前記鋼管に対して前記切断手段を所定の位相ごとにずらして切断した複数の前記カッティングラインを形成し、隣接した前記カッティングラインで挟まれた領域を刃体として得るようにしたことを特徴とするローリングカッター用の刃体の製造方法。
【請求項5】
複数の前記カッティングラインは同じ軌跡に形成されることを特徴とする請求項4に記載のローリングカッター用の刃体の製造方法。
【請求項6】
前記保持手段によって前記鋼管の一方の端部寄りを把持した状態で、前記切断手段によって開放端側から前記保持手段方向に向かって切断して複数の前記カッティングラインを形成し、その後前記カッティングラインの前記保持手段側の端部に交差するように前記鋼管の周方向を切断して刃体を得るようにしたことを特徴とする請求項4又は5に記載のローリングカッター用の刃体の製造方法
【請求項1】
ローリングカッター用の刃体の製造装置において、
横断面形状が円形をなす鋼管を保持する保持手段と、
前記保持手段に保持させた前記鋼管をその周方向に回動させる回動手段と、
前記鋼管の外周位置に前記鋼管に対して所定の切断軸方向で配置され、前記鋼管との関係において前記鋼管の軸線方向に沿って相対的に移動する切断手段とを備え、
前記回動手段によって前記鋼管を回動させる際に所定の回動周期内において前記切断手段によって前記鋼管の一端側から他端側に向かってカッティングラインを形成する切断工程を実行させるようにしたことを特徴とするローリングカッター用の刃体の製造装置。
【請求項2】
前記保持手段は前記鋼管の一方の端部寄りを把持し、前記切断手段は前記回動手段による前記鋼管の回動に同期して開放端側から前記保持手段方向に向かって切断することを特徴とする請求項1に記載のローリングカッター用の刃体の製造装置。
【請求項3】
前記切断手段の切断軸方向は任意に変更可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のローリングカッター用の刃体の製造装置。
【請求項4】
横断面形状が円形をなす鋼管を保持する保持手段と、前記保持手段に保持させた状態の前記鋼管を周方向に回動させる回動手段と、前記鋼管の外周位置に所定の切断軸方向で配置され前記鋼管の軸線方向に沿って相対的に移動する切断手段とを備えた製造装置によるローリングカッター用の刃体の製造方法であって、
前記鋼管を前記回動手段によって回動させながら前記鋼管の軸方向に沿って前記鋼管との関係において相対的に移動する前記切断手段によって切断することで前記鋼管の軸線方向に対して平行とはならないカッティングラインを形成するとともに、前記鋼管に対して前記切断手段を所定の位相ごとにずらして切断した複数の前記カッティングラインを形成し、隣接した前記カッティングラインで挟まれた領域を刃体として得るようにしたことを特徴とするローリングカッター用の刃体の製造方法。
【請求項5】
複数の前記カッティングラインは同じ軌跡に形成されることを特徴とする請求項4に記載のローリングカッター用の刃体の製造方法。
【請求項6】
前記保持手段によって前記鋼管の一方の端部寄りを把持した状態で、前記切断手段によって開放端側から前記保持手段方向に向かって切断して複数の前記カッティングラインを形成し、その後前記カッティングラインの前記保持手段側の端部に交差するように前記鋼管の周方向を切断して刃体を得るようにしたことを特徴とする請求項4又は5に記載のローリングカッター用の刃体の製造方法
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−196744(P2012−196744A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63495(P2011−63495)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(511074110)有限会社 岡崎鉄工 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(511074110)有限会社 岡崎鉄工 (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]