説明

ロールの巻径検出方法、ロール制御方法及びロール制御装置

【課題】送り出しロールが低速で回転するときであっても、送り出しロールの巻径を正確に演算し、送り出しロールを所望巻径にて正確に停止させる。
【解決手段】巻径及び残径補正量演算部93は、逐次最小二乗法を適用することにより、巻径同定ウエイトを用いて巻径偏差を算出して巻径同定値r2_HAT(n)を演算する。また、逐次最小二乗法を適用することにより、ウエブ厚同定値δ_HAT(n)を演算し、最大ライン速度VLmaxから所定時間taにて速度ゼロになるように残径補正量Δrを演算する。周速指令演算部94は、残径r0に残径補正量Δrを加えた残径送り出し径Rと巻径同定値r2_HAT(n)とに基づいて、残径r0にてライン速度Vがゼロになるように正規化周速指令V_BAR*を演算する。搬送ロール制御装置66は、この正規化周速指令V_BAR*によりライン速度Vを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールの巻径検出方法、ロール制御方法及びロール制御装置に関し、特に、ウエブを送り出す装置により送り出しロールの巻径を検出するロールの巻径検出方法、送り出しロールを所望巻径で停止するように制御するロール制御方法及びロール制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート材(ウエブに相当する。)を送出して搬送するロール制御装置として、特許公報1に記載のものが知られている。このロール制御装置は、図12に示すように、搬送ロール駆動装置9の負荷量設定値を予め定める許容変化量設定回路16及び負荷量設定値と負荷量実測値とを比較し許容変化量以上の負荷変動値に対応した補正信号を出力する比較回路17を有する負荷変動検出回路15と、補正信号によって張力制御回路7からの張力制御信号を補正する張力補正回路18とを備えたことを特徴とする。詳しく説明すると、図12において、送り出しロール2は、シート材1を送り出すロールであり、送り出されたシート材1は、搬送ロール8によって次工程に搬送される。張力設定器5は、シート材1に働く張力を予め定める装置であり、張力検出器6は、シート材1に働く張力を検出する装置である。
【0003】
張力制御回路7は、張力設定器5及び張力検出器6に接続されて、張力検出器6で検出した張力検出値と張力設定器5で設定した張力設定値とを比較して張力制御信号を出力する回路である。
【0004】
負荷検出回路14は、搬送ロール8を駆動する搬送ロール駆動装置9の負荷量実測値に対応した信号を出力する装置であり、搬送ロール駆動装置9を制御する搬送ロール制御装置10は、搬送ロール駆動装置9の回転速度を検出する速度検出器12からの速度信号と速度設定器11からの速度設定値とを比較して速度制御信号を出力する速度制御回路13によって制御される。
【0005】
負荷変動検出回路15は、許容変化量設定回路16と比較回路17とから構成され、許容変化量設定回路16は、搬送ロール駆動装置9の負荷量設定値を予め定める回路であり、比較回路17は、許容変化量設定回路16と負荷検出回路14とに接続され、許容変化量設定回路16から出力される負荷量設定値と負荷検出回路14から出力される負荷量実測値とを比較し、許容変化量以上の負荷変動量に対応した補正信号を出力する回路である。
【0006】
張力補正回路18は、張力制御回路7と負荷変動検出回路15とに接続され、負荷変動検出回路15の比較回路17から出力される補正信号によって張力制御回路7から出力される張力制御信号を補正する回路である。そして、送り出しロール駆動装置3は、送り出しロール制御装置4を介して張力補正回路18から出力される張力補正信号によって、送り出しロール2を駆動する。なお、送り出しロール駆動装置3は、送り出しロール2に機械的に連結され、送り出しロール2を回動する装置である。そして、送り出しロール制御装置4は、送り出しロール駆動装置3の回動を制御することにより、送り出すシート材1の張力を制御する装置である。
【0007】
すなわち、図12に示すロール制御装置は、負荷検出回路14が、搬送ロール8の負荷変動を検出して、その負荷に対応した信号を出力し、負荷変動検出回路15が、負荷検出回路14の出力信号を受けて、予め定められた許容変化量以上の負荷変動値に対応した補正信号を次段の張力補正回路18に出力し、張力補正回路18が、負荷変動検出回路15からの補正信号と、張力制御回路7からの張力制御信号すなわち送り出しロール2の張力基準信号とを突き合わせ、この送り出しロール2の張力基準信号を搬送ロール8の負荷変動量に対応して補正する。ここで、送り出しロール2の張力基準信号は、張力設定器5の設定信号と張力検出器6の出力信号とを張力制御回路7により比較演算された信号である。そして、張力補正回路18が、張力制御回路7からの張力基準信号を負荷変動検出回路15からの補正信号によって補正し、張力補正信号を送り出しロール制御装置4に出力する。このようにして、送り出しロール制御装置4は、張力補正回路18からの張力補正信号によって送り出しロール駆動装置3の回動を制御することにより、送り出しロール2により送り出されるシート材1の張力を、張力設定器5で定めた送り出し張力に制御する。
【0008】
また、送り出しロールの巻径を同定するロールの巻径検出方法として、特許文献2に記載のものが知られている。このロールの巻径検出方法は、図13に示すように、第1の回転検出手段21が、マスタロール(搬送ロールに相当する。)31の回転数を検出し、第2の回転検出手段22が、巻き戻しロール(送り出しロールに相当する。)32の回転数を検出するものである。
【0009】
ロール径算出手段23は、これら第1及び第2の回転検出手段21,22で得られる回転数データから、巻き戻しロール32のロール径データd(n)を算出する。帰還手段24は、出力側の出力ロール径データD(n)を入力側に帰還する。差分算出手段25は、ロール径算出手段23により算出される各サンプリング時刻のロール径データd(n)と、帰還手段24により帰還される出力ロール径データD(n)との間の差分を算出する。平均値算出手段26は、差分算出手段25で得られる各々のサンプリング時刻における差分データΔd(n)の平均値Δd(av)を求める。出力ロール径算出手段27は、平均値算出手段26により算出される差分データΔd(n)の平均値Δd(av)が所定値以下となるような出力ロール径データD(n)を算出する。これにより、各サンプル値に含まれる誤差成分を除去した出力ロール径データD(n)を得ることができる。
【0010】
【特許文献1】特開平9−309652号公報
【特許文献2】特開平4−66465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、図12に示した従来のロール制御装置は、搬送ロール8側の負荷変動を検出し、送り出しロール2側の張力補正を直接行うことが可能である。しかしながら、このロール制御装置は、送り出しロール2の巻径を同定し、送り出しロール2を所望巻径にて停止させることを目的とするものではなく、また、特許文献1にはこのような技術に関する記載がない。
【0012】
また、図13に示した従来のロールの巻径検出方法は、搬送ロール及び送り出しロールの回転数に基づいて、送り出しロールの巻径を同定することが可能である。しかしながら、このロールの巻径検出方法は、送り出しロールの回転速度が低速であるとき、送り出しロールの巻径を演算処理する際の信号に対するノイズの比率が高くなるため、ロールの巻径誤差が生じ易くなるという問題が生じる虞がある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、送り出しロールが低速で回転するときであっても、送り出しロールの巻径を正確に演算し、送り出しロールを所望巻径にて正確に停止させることが可能なロールの巻径検出方法、ロール制御方法及びロール制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、第1の発明として、長尺状のウエブを円筒状に巻いた送り出しロールに連結する送出用電動機と、送り出しロールから送出したウエブを次工程に搬送する搬送ロールに連結する搬送用電動機とを駆動し、ウエブのライン速度及びウエブにかかる張力を制御するロール制御装置における送り出しロールの巻径検出方法において、(n−1)(nは正の整数とする)時点における送り出しロールの巻径同定値を演算する第1のステップと、逐次最小二乗法を適用し、(n−1)時点における巻径同定値とn時点における巻径同定値との間の巻径偏差を演算する第2のステップと、(n−1)時点における送り出しロールの巻径同定値に巻径偏差を加算し、n時点における送り出しロールの巻径同定値を求める第3のステップと、を備えることを特徴とする。
【0015】
さらに、好適には、第2の発明として、前記第2のステップは、送り出しロールの巻径を同定演算し始めてから収束するまでの収束速度を定める巻径同定ゲイン定数を設定するステップと、0時点における送り出しロールの巻径同定値を、初期径として設定するステップと、n時点における送り出しロールの回転速度を検出するステップと、巻径同定ゲイン定数とn時点における送り出しロールの回転速度とに基づいて、巻径同定ウエイトを演算するステップと、n時点におけるウエブのライン速度を検出するステップと、(n−1)時点における送り出しロールの巻径同定値にn時点における送り出しロールの回転速度を乗算し、仮想ライン速度を求め、当該仮想ライン速度をn時点におけるウエブのライン速度から減算し、ライン速度差を求めるステップと、ライン速度差に巻径同定ウエイトを乗算し、巻径偏差を求めるステップと、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、第3の発明として、さらに、(n−1)時点におけるウエブ厚同定値を演算する第4のステップと、逐次最小二乗法を適用し、(n−1)時点におけるウエブ厚同定値とn時点におけるウエブ厚同定値との間の偏差を、n時点におけるウエブ厚偏差として演算する第5のステップと、(n−1)時点におけるウエブ厚同定値にウエブ厚偏差を加算し、n時点におけるウエブ厚同定値を求める第6のステップと、を備えることを特徴とする。
【0017】
さらに、好適には、第4の発明として、前記第5のステップは、0時点におけるウエブ厚同定値を初期ウエブ厚として設定するステップと、n時点における送り出しロールの回転速度に基づいて、送り出しロールの回転量を演算するステップと、ウエブ厚を同定演算し始めてから収束するまでの収束速度を定めるウエブ厚同定ゲイン定数を設定するステップと、ウエブ厚同定ゲイン定数とn時点における送り出しロールの回転量とに基づいてウエブ厚同定ウエイトを演算するステップと、(n−1)時点におけるウエブ厚同定値に、n時点における送り出しロールの回転量を乗算して仮想ウエブ厚を求め、初期径からn時点における巻径同定値を減算して厚さを求め、前記厚さから仮想ウエブ厚を減算してウエブ厚差を求めるステップと、ウエブ厚差にウエブ厚同定ウエイトを乗算し、ウエブ厚偏差を求めるステップと、を備えることを特徴とする。
【0018】
また、第5の発明として、さらに、送り出しロールを停止させる巻径位置である残径を設定する第7のステップと、ウエブの最大ライン速度と最大ライン速度から減速し停止するまでに要する時間である残径送り出し時間とに基づいて、残径送り出し量を演算する第8のステップと、残径、残径送り出し量及びn時点におけるウエブ厚同定値に基づいて、残径補正量を演算する第9のステップと、を備えることを特徴とする。
【0019】
また、第6の発明として、長尺状のウエブを円筒状に巻いた送り出しロールに連結する送出用電動機と、送り出しロールから送出したウエブを次工程に搬送する搬送ロールに連結する搬送用電動機とを駆動し、ウエブのライン速度及びウエブにかかる張力を制御するロール制御方法において、前記第7のステップにより設定した残径に、第8のステップにより演算した残径補正量を加算し、残径送り出し径を求めるステップと、残径送り出し径と、前記第3のステップにより求めたn時点における送り出しロールの巻径同定値である現在径とを比較し、現在径が残径送り出し径に等しいときに、搬送用電動機及び送出用電動機を減速させ、かつ、現在径が残径に等しいときに搬送用電動機及び送出用電動機を停止させるように、ウエブのライン速度及びウエブにかかる張力を制御するステップと、を備えることを特徴とする。
【0020】
また、第7の発明として、長尺状のウエブを円筒状に巻いた送り出しロールに連結する送出用電動機と、送り出しロールから送出したウエブを次工程に搬送する搬送ロールに連結する搬送用電動機とを駆動し、ウエブのライン速度及びウエブにかかる張力を制御するロール制御装置において、(n−1)時点における送り出しロールの巻径同定値とn時点における送り出しロールの巻径偏差とに基づいて、n時点における送り出しロールの巻径同定値を演算する巻径同定演算手段と、前記巻径同定演算手段により演算されたn時点における送り出しロールの巻径同定値、0時点における送り出しロールの巻径同定値である初期径、0時点におけるウエブ厚同定値である初期ウエブ厚、n時点における送り出しロールの回転速度に基づいて演算した送り出しロール回転量、及び、ウエブ厚を同定演算し始めてから収束するまでの収束速度を定めるウエブ厚同定ゲイン定数に基づいて、ウエブ厚同定値を演算するウエブ厚同定値演算手段と、ウエブの最大ライン速度と当該最大ライン速度から減速し停止するまでに要する時間である残径送り出し時間とに基づいて残径送り出し量を演算し、当該残径送り出し量、送り出しロールを停止させる巻径位置である残径、及び、前記ウエブ厚同定値演算手段により演算されたウエブ厚同定値に基づいて、送り出しロールの残径に対する残径補正量を演算する残径補正量演算手段と、前記残径と残径補正量演算手段により演算された残径補正量とを加算し、残径送り出し径を求める加算手段と、前記加算手段により求められた残径送り出し径と、前記巻径同定演算手段により演算されたn時点における送り出しロールの巻径同定値である現在径とを比較し、現在径が残径送り出し径に比べて大きいとき、リセット信号をオンし、現在径が残径送り出し径に比べて等しいとき、又は小さいとき、リセット信号をオフする比較手段と、前記比較手段によりリセット信号がオンのとき、残径送り出し量を最大ライン速度で正規化した正規化残径送り出し量を初期値とし、当該初期値に対応するライン速度基準を搬送ロールの周速指令信号として出力し、前記リセット信号がオフのとき、前記正規化残径送り出し量から正規化ライン速度に基づく距離信号を減算して差信号を求め、当該差信号に基づいて、送り出しロールの現在径が残径に到達したときに搬送ロールが停止するように、前記搬送ロールを減速するための周速指令信号を出力する周速指令生成手段と、前記周速指令生成手段により出力された周速指令信号及び前記搬送用電動機の実速度信号を入力し、前記周速指令信号に基づいて搬送用電動機の回転速度に対応する換算速度指令信号を生成し、前記換算速度指令信号から実速度信号を減算して速度偏差を求め、当該速度偏差に予め設定された速度ゲイン定数を乗算し、トルク指令を出力する速度制御手段と、前記速度制御手段により出力されたトルク指令及び前記搬送用電動機の巻線に流れる実電流信号を入力し、前記トルク指令に見合う電流指令信号から実電流信号を減算し、電流偏差を出力する電流制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0021】
さらに、好適には、第8の発明として、前記周速指令生成手段は、前記正規化残径送り出し量を設定する正規化残径送り出し量設定手段と、前記リセット信号がオンのとき、前記正規化残径送り出し量を初期値として出力し、前記リセット信号がオフのとき、正規化ライン速度に基づく長さ相当値を入力し、初期値である正規化残径送り出し量から前記長さ相当値を減算し、第1の値として出力するカウンタと、前記カウンタにより出力された第1の値に前記正規化残径送り出し量の逆数を乗算し、第2の値として出力する乗除算器と、前記乗除算器により出力された第2の値に応じて非線形状に変化する非線形信号を出力する非線形関数器と、前記非線形関数器により出力された非線形信号及び予め設定されたライン速度基準信号を入力し、前記非線形信号の値がライン速度基準信号の値に比べて等しいとき、又は大きいとき、正規化ライン速度信号としてライン速度基準信号を出力し、前記非線形信号の値がライン速度基準信号の値に比べて小さいとき、正規化ライン速度信号として非線形信号を出力するリミッタと、前記リミッタにより出力された正規化ライン速度信号を入力し、前記正規化ライン速度信号として非線形信号を入力してから前記残径送り出し時間だけ経過すると、最大ライン速度からゼロのライン速度まで変化する正規化周速指令信号を出力するランプ関数器と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、送り出しロールの回転速度を検出し、かつ、逐次最小二乗法を適用することにより、送り出しロールの巻径を同定することができる。これによって、送り出しロールの速度が低速で回転するときでも、送り出しロールの巻径を自動的に同定し、かつ、送り出しロールの巻径を演算する処理を滑らかに中止することができる。つまり、本発明によれば、送り出しロールの速度が低速で回転するときでも、送り出しロールの巻径を正確に演算することができ、送り出しロールを所望巻径にて正確に停止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
〔ロール制御装置の構成〕
まず、本発明に係るロール制御装置の構成について説明する。図1は、本発明に係るロール制御装置を送り出し装置に適用した場合の概念図である。送り出し装置61は、図1に示すように、送り出しロール2、送出用電動機98、パルスジェネレータ63、搬送ロール8、搬送用電動機97、パルスジェネレータ65、ピンチロール62、張力検出器6、負荷検出回路(電流検出器に相当する。)14、ロール制御装置64、駆動回路99及び駆動回路100を備える。ここで、V1及びV2は搬送ロール8及び送り出しロール2の出口側におけるウエブ1のライン速度(V1=V2=Vとする。)、r1は搬送ロール8の半径、r2は送り出しロール2の巻半径(以下、送り出しロール2の巻径という。)、ω1及びω2は搬送ロール8及び送り出しロール2の回転速度をそれぞれ示す。なお、送り出しロール2、搬送ロール8、張力検出器6及び負荷検出回路14は、前述したので説明を省略する。以下、説明を簡単にするため、両ロール2,8と各電動機97,98との間の減速比を1とする。
【0024】
送出用電動機98は、送り出しロール2を駆動する電動機である。パルスジェネレータ63は、送出用電動機98の回転数を検出する検出器であり、送出用電動機98の回転軸に継手を介し、機械的に結合する。搬送用電動機97は、搬送ロール8を駆動する電動機である。パルスジェネレータ65は、パルスジェネレータ63と同様に、搬送用電動機97の回転数を検出する検出器であり、搬送用電動機97の回転軸に継手を介し、機械的に結合する。ピンチロール62は、ウエブ1を搬送ロール8に圧接させるロールであり、ウエブ1を搬送するための駆動力をウエブ1に与えるロールである。
【0025】
ロール制御装置64は、張力設定器5、張力制御部67、CPU(中央処理装置)68及び搬送ロール制御装置66を備える。張力設定器5は、前述したので説明を省略する。張力制御部67は、送出用電動機98の回動を制御するために、送り出しロール2と搬送ロール8との間にあるウエブ1にかかる張力を制御する制御信号C2を駆動回路100に出力する。つまり、張力制御部67は、例えば、減算器(図示せず)及び張力制御器(図示せず)を備えている。減算器(図示せず)は、基本的に張力設定器5により設定された張力設定値と張力検出器6により検出された張力検出値とを入力し、張力設定値から張力検出値を減算し、演算の結果により、得られる張力偏差を張力制御器(図示せず)に出力する。張力制御器(図示せず)は、張力偏差を入力し、張力偏差に基づく制御信号C2を駆動回路100に出力する。
【0026】
CPU68は、巻径及び残径補正量演算部93及び周速指令演算部94を備える。図2は、送り出しロールにおけるウエブ厚、残径、残径補正量、残径送り出し径及び初期径の関係を示す図である。ここで、δはウエブ厚、rmaxは送り出しロール2の最大巻半径(以下、初期径という。)、r0は残径(送り出しロール2の目標停止位置における巻径に相当する)、Δrは後述する残径補正量、Rは残径送り出し径(残径r0に後述する残径補正量Δrを加算し、得られる半径に相当する。)をそれぞれ示す。
【0027】
図3は、本発明に係るロール制御装置におけるCPUを構成する巻径及び残径補正量演算部を示す制御ブロック図である。巻径及び残径補正量演算部93は、図3に示すように、巻径同定ゲイン定数設定器(図示せず)、巻径同定ウエイト演算器78、初期径設定器80、巻径同定演算器81、初期ウエブ厚設定器82、ウエブ厚同定ゲイン定数設定器(図示せず)、ウエブ厚同定ウエイト演算器101、ウエブ厚同定演算器83、残径送り出し時間設定器84、最大ライン速度設定器85、残径設定器86及び残径補正量演算器87を備える。
【0028】
巻径同定ゲイン定数設定器(図示せず)は、後述する巻径同定ゲイン定数Pr(0)を設定する設定器である。巻径同定ウエイト演算器78は、パルスジェネレータ63による送出用電動機98の回転速度ωm2に基づくn時点における送り出しロール2の回転速度ω2(n)と巻径同定ゲイン定数Pr(0)とを入力し、送り出しロール2の回転速度ω2(n)と巻径同定ゲイン定数Pr(0)とを後述する式(1)のB/Cに代入し、演算の結果により、得られる巻径同定ウエイト(B/C)を巻径同定演算器81に出力する。初期径設定器80は、図2に示す初期径rmaxを設定する設定器であり、初期径rmaxを巻径同定演算器81及びウエブ厚同定演算器83に出力する。
【0029】
巻径同定演算器81は、n時点におけるライン速度V(n)と、送り出しロール2の回転速度ω2(n)と、初期径rmaxと巻径同定ウエイトとを入力し、n時点におけるライン速度V(n)と、送り出しロール2の回転速度ω2(n)と、初期径rmaxと、巻径同定ウエイトとを後述する式(1)に代入し、演算の結果により、得られるn時点における送り出しロール2の巻径r2の推定値(以下、巻径同定値という。)r2_HAT(n)をウエブ厚同定演算器83に出力する。但し、nは正の整数である。ここで、n=1であるとき、A=r2_HAT(0)=rmaxとする。つまり、n=1のとき、送り出しロール2の巻径同定値を初期径rmaxとする。また、ライン速度V(n)は、搬送ロール8の半径r1に搬送ロール8の回転速度ω1(n)を乗算し、演算の結果により、得られる値とする。
【0030】
初期ウエブ厚設定器82は、送り出しロール2の初期径rmaxにおけるウエブ厚(初期ウエブ厚δi)を設定する設定器であり、初期ウエブ厚δiをウエブ厚同定演算器83に出力する。初期ウエブ厚δiを設定するのはウエブ1の材料の種類によってウエブ厚が一様でないからである。ウエブ厚同定ゲイン定数設定器(図示せず)は、後述するウエブ厚同定ゲイン定数Pδ(0)を設定する設定器である。
【0031】
ウエブ厚同定ウエイト演算器101は、n時点における送り出しロール2の回転速度ω2(n)とウエブ厚同定ゲイン定数Pδ(0)とを入力し、送り出しロール2の回転速度ω2(n)に基づく後述する回転量演算部95による回転量θ/2πとウエブ厚同定ゲイン定数Pδ(0)とを式(7)のF/Gに代入し、演算の結果により、得られるウエブ厚同定ウエイトをウエブ厚同定演算器83に出力する。
【0032】
ウエブ厚同定演算器83は、送り出しロール2の巻径を同定する場合と同様に、ウエブ厚同定ウエイト演算器101によるウエブ厚同定ウエイトと、パルスジェネレータ63に基づくn時点における送り出しロール2の回転速度ω2(n)と、n時点における巻径同定演算器81による送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)と、初期径設定器80による初期径rmaxと、初期ウエブ厚設定器82による初期ウエブ厚δiとを入力し、ウエブ厚同定ウエイトと、送り出しロール2の回転速度ω2(n)と、送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)と、初期径rmaxと、初期ウエブ厚δiとを後述する式(7)及び式(8)に代入し、演算の結果により、得られるn時点におけるウエブ厚δの推定値(以下、ウエブ厚同定値という。)δ_HAT(n)を残径補正量演算器87に出力する。
【0033】
残径送り出し時間設定器84は、後述する図9に示す残径送り出し時間taを設定する設定器であり、残径送り出し時間taを残径補正量演算器87に出力する。最大ライン速度設定器85は、後述するウエブ1の最大ライン速度VLmaxを設定する設定器であり、最大ライン速度VLmaxを残径補正量演算器87に出力する。残径設定器86は、残径r0を設定する設定器であり、残径r0を残径補正量演算器87に出力する。
【0034】
残径補正量演算器87は、ウエブ厚同定演算器83によるウエブ厚同定値δ_HAT(n)と、残径送り出し時間設定器84による残径送り出し時間taと、最大ライン速度設定器85による最大ライン速度VLmaxと、残径設定器86による残径r0とを入力し、先ず、最大ライン速度VLmaxと残径送り出し時間taとを後述する式(9)に代入し、残径送り出し量POを演算する。次に、残径補正量演算器87は、残径送り出し量POと、ウエブ厚δの代わりにウエブ厚同定値δ_HAT(n)と、残径r0とを後述する式(13)に代入し、演算の結果により、得られる残径補正量Δrを加算器(図示せず)に出力する。そして、加算器(図示せず)は、残径補正量演算器87による残径補正量Δrと残径設定器86による残径r0とを加算し、演算の結果により、得られる残径送り出し径Rを、後述する図4に示す周速指令演算部94の比較器72に出力する。
【0035】
このように、巻径及び残径補正量演算部93は、巻径同定演算器81により演算された巻径同定値r2_HAT(n)(送り出しロール2の現在径r2に相当する。)、及び加算器(図示せず)により加算された残径送り出し径Rを周速指令演算部94に出力する。
【0036】
図4は、本発明に係るロール制御装置におけるCPUを構成する周速指令演算部を示す制御ブロック図である。ここで、比較器72の出力端子に表示したGTRは、比較器72が送り出しロール2の現在径r2と残径送り出し径Rとを比べて、現在径r2が残径送り出し径Rより大きいときにオン動作してリセット信号を出力することを示し、リミッタ76の入力端子であるLPは、リミッタ76の上限値の信号を入力する端子であり、リミッタ76の入力端子であるINは、リミッタ76の制限を受ける信号を入力する端子である。
【0037】
周速指令演算部94は、図4に示すように、比較器72、カウンタ73、演算器74、非線形関数器75、リミッタ76及びランプ関数器77を備える。比較器72は、残径送り出し径Rと送り出しロール2の現在径r2とを入力し、現在径r2が残径送り出し径Rに比べて大きいとき、カウンタ73に出力するリセット信号をオンする。また、現在径r2が残径送り出し径Rに比べて等しいとき、又は小さいとき、リセット信号をオフする。
【0038】
カウンタ73は、比較器72からの出力信号であるリセット信号がオンのとき、正規化残径送り出し量PO_BARであるta/2(以下、正規化残径送り出し量ta/2という。)を初期値として入力し、正規化残径送り出し量ta/2を演算器74に出力する。ここで、正規化残径送り出し量ta/2は、後述する式(9)に示すように、残径送り出し量POを最大ライン速度VLmaxで除算した値である。また、比較器72からの出力信号であるリセット信号がオフのとき、最大ライン速度VLmaxで回転する送り出しロール2を残径r0で停止させるため、正規化周速設定信号V_BAR_ZEROとする“0”信号と正規化ライン速度V_BAR_Lに基づく長さ相当値とを入力し、初期値である正規化残径送り出し量ta/2から正規化ライン速度V_BAR_Lに基づく長さ相当値を減算し、演算の結果により、得られる第1の値を演算器74に出力する。ここで、カウンタ73により出力される第1の値は、そのスキャン毎の減算処理により、徐々に減少する。また、正規化ライン速度V_BAR_Lは、ライン速度Vを最大ライン速度VLmaxで除算した値である。
【0039】
演算器74は、カウンタ73から第1の値を入力し、この第1の値に2/taを乗算し、演算の結果により、得られる第2の値を非線形関数器75に出力する。非線形関数器75は、演算器74から第2の値を入力し、この第2の値を非線形関数によって変換し、演算の結果により、得られる非線形信号をリミッタ76の上限値に出力する。
【0040】
リミッタ76は、非線形関数器75から非線形信号を入力し、ライン速度基準値Vrefを入力し、前記非線形信号をリミッタ76のリミッタ上限値として、リミッタ上限値がライン速度基準値Vrefに比べて大きいとき、ライン速度基準値Vrefを正規化ライン速度指令V_BAR_Lとしてランプ関数器77及びカウンタ73に出力する。また、リミッタ上限値がライン速度基準値Vrefに比べて等しいとき、又は小さいとき、前記非線形信号を正規化ライン速度指令V_BAR_Lとしてランプ関数器77及びカウンタ73に出力する。
【0041】
ランプ関数器77は、リミッタ76から正規化ライン速度指令V_BAR_Lを入力し、入力信号である正規化ライン速度指令V_BAR_Lのレベル変化に対応して、出力信号である正規化周速指令V_BAR*が新しい入力信号の値の方向に傾斜するように、正規化周速指令V_BAR*を、後述する図5に示す搬送ロール制御装置66の速度変換器96に出力する。例えば、ランプ関数器77は、ステップ状に変化する正規化ライン速度指令V_BAR_Lを入力すると、ランプ状に傾斜する正規化周速指令V_BAR*を出力する。
【0042】
図5は、本発明に係るロール制御装置における搬送ロール制御装置を示す制御ブロック図である。搬送ロール制御装置66は、一般的に知られている制御装置であるので概略を説明する。搬送ロール制御装置66は、図5に示すように、速度変換器96、減算器88、速度制御器89、減算器90及び電流制御器91を備える。搬送ロール制御装置66は、送り出しロール2が、図2に示した初期径rmaxの位置状態から回転し始め、残径r0で停止することができるように、搬送用電動機97を速度及びトルク制御する。つまり、搬送ロール制御装置66は、図1に示したパルスジェネレータ65による搬送用電動機97の回転数を微分器(図示せず)によって時間微分し、演算の結果により、得られる搬送用電動機97の実回転速度である速度帰還信号ωm1を後述する速度指令ωm1*に一致するように、搬送用電動機97を速度制御及びトルク制御する。
【0043】
速度変換器96は、周速指令演算部94から正規化周速指令V_BAR*を入力し、正規化周速指令V_BAR*を搬送用ロール径r1及び最大ライン速度VLmaxに基づいて搬送用電動機97の回転速度に換算し、換算結果である速度指令ωm1*を減算器88に出力する。ここで、正規化周速指令V_BAR*は、搬送ロール8の周速指令V*を最大ライン速度VLmaxで除算した値である。
【0044】
減算器88は、速度変換器96からの速度指令ωm1*と搬送用電動機97の速度帰還信号ωm1とを入力し、速度指令ωm1*から速度帰還信号ωm1を減算し、演算の結果により、得られる速度偏差Δωm1を速度制御器89に出力する。速度制御器89は、減算器88から速度偏差Δωm1を入力し、速度偏差Δωm1に例えば、速度ゲイン定数Kvを乗算し、演算の結果により、得られるトルク指令信号に見合う電流指令信号i*を減算器90に出力する。
【0045】
減算器90は、速度制御器89からの電流指令信号i*と搬送用電動機97の巻線に配設された電流検出器14に流れる電流帰還信号iとを入力し、電流指令信号i*から電流帰還信号iを減算し、演算の結果により、得られる電流偏差Δiを電流制御器91に出力する。電流制御器91は、減算器90から電流偏差Δiを入力し、電流偏差Δiに例えば、電流ゲイン定数を乗算し、得られる制御信号C1を駆動回路99に出力する。
【0046】
駆動回路99は、搬送ロール制御装置66から制御信号C1を入力し、制御信号C1に基づいて搬送用電動機97を駆動する駆動電圧信号を出力する回路である。尚、図1における駆動回路100は、張力制御部67から制御信号C2を入力し、制御信号C2に基づいて送出用電動機98を駆動する駆動電圧信号を出力する回路である。
【0047】
〔ロール制御装置の動作〕
次に、図1に示したロール制御装置64の動作について説明する。ロール制御装置64は、送り出しロール2の巻径を同定し、さらに、搬送ロール8の周速指令を定める正規化周速指令V_BAR*を生成するCPU68と、搬送用電動機97の速度及びトルクを制御する搬送ロール制御装置66と、ウエブ1に係る張力を制御する張力制御部67と、その目標とする張力を設定する張力設定器5とを備える。
【0048】
初期径rmaxと、初期ウエブ厚δiと、残径r0と、巻径同定ゲイン定数Pr(0)と、ウエブ厚同定ゲイン定数Pδ(0)と、残径送り出し時間taと、最大ライン速度VLmaxと、ライン速度基準値Vrefと、搬送ロール8の半径r1と、搬送用電動機97の実際の回転速度ωm1と、送出用電動機98の実際の回転速度ωm2と、正規化周速設定信号V_BAR_ZEROとがCPU68に入力すると、CPU68によって、搬送ロール8の正規化周速指令V_BAR*を生成し、正規化周速指令V_BAR*を搬送ロール制御装置66に出力する。
【0049】
正規化周速指令V_BAR*と、パルスジェネレータ65に基づく搬送用電動機97の実際の回転速度ωm1と、搬送用電動機97の巻線に流れる実際の電流信号である電流帰還信号iとが搬送ロール制御装置66に入力すると、搬送ロール制御装置66によって、搬送用電動機97の速度及びトルクを制御するための制御信号C1を生成し、制御信号C1を駆動回路99に出力する。制御信号C1が駆動回路99に入力すると、駆動回路99によって、駆動用電圧信号を生成する。この駆動用電圧信号が搬送用電動機97に印加すると、搬送用電動機97の速度及びトルクがそれぞれの目標値になるように制御され、搬送ロール8の回転速度ω1を目標速度に一致させることができる。つまり、ロール制御装置64は、CPU68及び搬送ロール制御装置66により、ウエブ1のライン速度Vを正規化周速指令V_BAR*なる目標値に一致させることができる。
【0050】
一方、張力設定器5による張力設定値と、張力検出器6による張力検出値とが張力制御部67に入力すると、張力制御部67によって、張力設定値から張力検出値を減算し、演算の結果により、得られる張力偏差に張力ゲイン定数を乗算し、演算の結果により、得られる信号に基づいて制御信号C2を生成し、制御信号C2を駆動回路100に出力する。制御信号C2が駆動回路100に入力すると、駆動回路100によって、駆動用電圧信号を生成する。この駆動用電圧信号が送出用電動機98に印加すると、送出用電動機98のトルクが制御され、ウエブ1の張力検出値を張力設定値に一致させることができる。つまり、ロール制御装置64は、張力設定器5及び張力制御部67により、ウエブ1の張力検出値を張力設定値に一致させることができる。
【0051】
(巻径及びウエブ厚同定演算部の動作)
次に、ロール制御装置64のCPU68を構成する巻径及び残径補正量演算部93の動作について説明する。図3に示すように、巻径同定ゲイン定数Pr(0)とパルスジェネレータ63に基づく送り出しロール2の回転速度ω2(n)とが巻径同定ウエイト演算器78に入力すると、巻径同定ウエイト演算器78によって、巻径同定ゲイン定数Pr(0)と回転速度ω2とを後述する式(1)のB/Cに代入し、演算の結果により、得られる巻径同定ウエイトを巻径同定演算器81に出力する。
【0052】
巻径同定ウエイトと、n時点におけるウエブ1のライン速度V(n)と、送り出しロール2の回転速度ω2(n)と、初期径rmaxとが巻径同定演算器81に入力すると、巻径同定演算器81によって、巻径同定ウエイトと、ウエブ1のライン速度V(n)と、送り出しロール2の回転速度ω2(n)と、初期径rmaxとを式(1)に代入し、演算の結果により、得られる送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)をウエブ厚同定演算器83に出力する。これにより、送り出しロール2の回転速度ω2(n)を検出することによって、送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)を求めることができる。
【0053】
ウエブ厚同定ゲイン定数Pδ(0)とパルスジェネレータ63に基づく送り出しロール2の回転速度ω2(n)とがウエブ厚同定ウエイト演算器101に入力すると、ウエブ厚同定ウエイト演算器101によって、ウエブ厚同定ゲイン定数Pδ(0)と回転速度ω2(n)に基づく後述するθ(n)/2πとを後述する式(7)のF/Gに代入し、演算の結果により、得られるウエブ厚同定ウエイトをウエブ厚同定演算器83に出力する。
【0054】
ウエブ厚同定ウエイトと、送り出しロールの回転速度ω2(n)と、送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)と、初期径rmaxと、初期ウエブ厚δiとがウエブ厚同定演算器83に入力すると、ウエブ厚同定演算器83によって、ウエブ厚同定ウエイトと、送り出しロール2の回転速度ω2(n)と、送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)と、初期径rmaxと、初期ウエブ厚δiとを後述する式(8)に代入し、演算の結果により、得られるウエブ厚同定値δ_HAT(n)を残径補正量演算器87に出力する。これにより、送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)と送り出しロール2の回転速度ω2(n)に基づく回転量を検出することによって、ウエブ厚同定値δ_HAT(n)を求めることができる。
【0055】
ウエブ厚同定値δ_HAT(n)と、残径送り出し時間taと、残径r0と、最大ライン速度VLmaxとが残径補正量演算器87に入力すると、残径補正量演算器87によって、ウエブ厚同定値δ_HAT(n)と、残径送り出し時間taと、残径r0と、最大ライン速度VLmaxとを用いて、式(9)及び式(13)の演算の結果により、得られる残径補正量Δrを加算器(図示せず)に出力する。残径補正量Δrと残径r0とが加算器(図示せず)に入力すると、加算器(図示せず)によって、残径r0に残径補正量Δrを加算し、得られる残径送り出し径Rを周速指令演算部94に出力する。これにより、ウエブ厚同定値δ_HAT(n)を検出することによって、残径補正量Δrを求めることができる。
【0056】
(周速指令演算部の動作)
次に、ロール制御装置64のCPU68を構成する周速指令演算部94の動作について説明する。図1及び図4に示すように、送り出しロール2の巻径r2と、加算器(図示せず)による残径送り出し径Rと、送り出しロール2の正規化周速設定信号V_BAR_ZEROとする“0”と、残径送り出し時間taと、ライン速度基準値Vrefとが周速指令演算部94に入力すると、周速指令演算部94によって、搬送ロール8の周速指令である正規化周速指令V_BAR*を生成し、搬送ロール制御装置66に出力する。
【0057】
具体的に説明すると、送り出しロール2の巻径r2と残径送り出し径Rとが比較器72に入力すると、比較器72によって、送り出しロール2の巻径r2と残径巻き出し径Rとを比較し、演算の結果により、巻径r2が残径送り出し径Rに比べて大きいとき、カウンタ73に出力するリセット信号をオンし、巻径r2が残径送り出し径Rに比べて等しいとき、又は小さいとき、カウンタ73に出力するリセット信号をオフする。
【0058】
リセット信号と、送り出しロール2の正規化周速設定信号V_BAR_ZEROとする“0”と、正規化残径送り出し量ta/2と、正規化ライン速度V_BAR_Lとがカウンタ73に入力すると、カウンタ73によって、リセット信号がオンのとき、正規化残径送り出し量ta/2を演算器74に出力する。また、リセット信号がオフのとき、最大ライン速度VLmaxで回転する送り出しロール2を残径r0で停止させるため、送り出しロール2の正規化周速設定信号V_BAR_ZEROとする“0”と正規化ライン速度V_BAR_Lとにより、カウンタ73の初期値である正規化残径送り出し量ta/2から正規化ライン速度V_BAR_Lを減算し、演算の結果により、得られる第1の値を演算器74に出力する。ここで、カウンタ73により出力される第1の値は、そのスキャン毎の減算処理により、徐々に減少する。
【0059】
第1の値が演算器74に入力すると、演算器74によって、第1の値に正規化残径送り出し量ta/2を乗算し、演算の結果により、得られる第2の値を非線形関数器75に出力する。第2の値が非線形関数器75に入力すると、非線形関数器75によって、第2の値を非線形関数によって変換し、演算の結果により、得られる非線形信号をリミッタ76の上限値に出力する。これにより、送り出しロール2を一定の減速レートに従って残径r0で停止させることができる。
【0060】
非線形信号とライン速度基準値Vrefとがリミッタ76に入力すると、リミッタ76によって、非線形信号をリミッタ76のリミッタ上限値とし、リミッタ上限値が入力信号であるライン速度基準値Vrefに比べて大きいとき、ライン速度基準値Vrefを正規化ライン速度指令V_BAR_Lとしてランプ関数器77及びカウンタ73に出力し、また、リミッタ上限値がライン速度基準値Vrefに比べて等しいとき、又は小さいとき、非線形信号を正規化ライン速度指令V_BAR_Lとしてランプ関数器77及びカウンタ73に出力する。
【0061】
正規化ライン速度指令V_BAR_Lがランプ関数器77に入力すると、ランプ関数器77によって、入力信号である正規化ライン速度指令V_BAR_Lのレベル変化に対応して、出力信号である正規化周速指令V_BAR*が新しい入力信号の値の方向に傾斜するように、正規化周速指令V_BAR*を搬送ロール制御装置66の速度変換器96に出力する。
【0062】
以上の説明により、ロール制御装置64のCPU68を構成する巻径及び残径補正量演算部93が、現在径r2とするn時点における送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)、ウエブ厚同定値δ_HAT(n)及び残径補正量Δrを演算し、残径送り出し径Rを演算する。また、周速指令演算部94が、巻径及び残径補正量演算部93により演算された巻径同定値r2_HAT(n)である現在径r2及び残径送り出し径R等を用いて、送り出しロール2を残径r0で停止させるための搬送ロール8の正規化周速指令V_BAR*を生成する。さらに、搬送ロール制御装置66が、周速指令演算部94により演算された正規化周速指令V_BAR*等を用いて、搬送用電動機97の速度及びトルクを制御する。これにより、搬送ロール8の速度帰還信号ωm1を正規化周速指令V_BAR*に基づく速度指令ωm1*に一致させることができる。一方、ロール制御装置64の張力制御部67が、張力検出器6による張力検出値を張力設定器5による張力設定値に一致させるように、送出用電動機98のトルクを制御することにより、ウエブ1にかかる所望張力を与える。
【0063】
つまり、ロール制御装置64は、ウエブ1に所望張力を与え、かつ、送り出しロール2の巻径r2が残径送り出し径Rに到達したとき、ウエブ1の送り出しを最大ライン速度VLmaxから徐々に減速させ、そして、送り出しロール2の巻径r2が残径r0に到達したとき、ウエブ1の送り出しを停止させることができる。すなわち、送り出しロール2を停止させることができる。
【0064】
〔送り出しロールの巻径を同定する方法〕
次に、送り出しロール2の巻径を同定する方法について説明する。図6は、本発明に係るロール制御装置における送り出しロールの巻径を同定するための手順を示すフローチャートである。送り出しロール2の巻径r2を同定する手順は、図6に示すように、先ず、初期径rmaxを設定し(ステップS−1)、n時点におけるウエブ1のライン速度V(n)を設定する。この場合、ライン速度V(n)は、搬送ロール8の半径r1に搬送ロール8の回転速度ω1を乗算し、演算の結果により、得られる値である。ここで、搬送ロール8の回転速度ω1は、パルスジェネレータ65による回転数から微分器(図示せず)を介して得られる搬送用電動機97の回転速度ωm1に基づいて求める(ステップS−2)。
【0065】
そして、送り出しロール2の巻径を同定演算し始めから収束するまでの収束速度を定める巻径同定ゲイン定数Pr(0)を設定し(ステップS−3)、パルスジェネレータ63に基づく送り出しロール2の回転速度ω2を検出する(ステップS−4)。そして、初期径rmaxと、n時点におけるウエブ1のライン速度V(n)と、巻径同定ゲイン定数Pr(0)と、パルスジェネレータ63に基づく送り出しロール2の回転速度ω2(n)とに基づいて、送り出しロールの巻径を同定する方法に逐次最小二乗法を適用する(ステップS−5)。
【0066】
初期径rmaxと、n時点におけるウエブ1のライン速度V(n)と、巻径同定ゲイン定数Pr(0)と、パルスジェネレータ63に基づく送り出しロール2の回転速度ω2(n)とに基づいて、“1,2,3,・・・,(n−1),n”の各時点における送り出しロール2の巻径偏差を演算し(ステップS−6)、初期径rmaxに“1,2,3,・・・,(n−1),n”の各時点における送り出しロール2の巻径偏差を加算する(ステップS−7)。そして、(n−1)時点における送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n−1)を演算し(ステップS−8)、(n−1)時点における送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n−1)とn時点における送り出しロール2の巻径偏差とを加算し、n時点における送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)を得る(ステップS−9)。
【0067】
以下、送り出しロール2の巻径r2を同定する方法についてさらに詳細に説明する。送り出しロール2の巻径r2を同定する方法は、逐次最小二乗法による同定アルゴリズムを適用し、送り出しロール2の巻径を統計的に処理し、n時点における送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)を算出するものである。
【0068】
巻径同定演算器81は、n時点における送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)を、次式(1)により求める。
r2_HAT(n)=A+(B×D)/C (1)
ここで、B/C及びDは、送り出しロール2の巻径の同定ウエイト値及び特徴量をそれぞれ示す。すなわち、
A=r2_HAT(n−1)
B=Pr(0)・ω2(n)
C=1+Pr(0)・{ω2(n)}
D=V1(n)−r2_HAT(n−1)・ω2(n)
とする。ここで、ω2(n)はn時点における送り出しロール2の回転速度、V1(n)はn時点におけるウエブ1のライン速度V(n)をそれぞれ示す。
【0069】
前式(1)により、n時点における送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)は、(n−1)時点における送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n−1)に巻径偏差((B×D)/Cに相当する。)を加算した値であることがわかる。ここで、巻径同定ウエイトB/Cは、巻径同定ゲイン定数Pr(0)とn時点における送り出しロール2の回転速度ω2(n)とに基づいて定まり、巻径偏差は、この巻径同定ウエイトB/Cに、後述するライン速度差Dを乗算することにより得られる。つまり、(n−1)時点における送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n−1)に、n時点における送り出しロール2の回転速度ω2(n)を乗算し、演算の結果により、得られる仮想ライン速度をn時点におけるウエブ1のライン速度V1(n)から減算し、演算の結果により、ライン速度差Dを得る。そして、このライン速度差Dに巻径同定ウエイトB/Cを乗算することにより、巻径偏差を得ることができる。
【0070】
ところで、前式(1)において、特に、Pr(0)・{ω2(n)}>>1である場合、前式(1)は、次式(2)に書き換えることができる。すなわち、n時点における送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)は、
r2_HAT(n)=r2_HAT(n−1)+{V(n)−r2_HAT(n−1)・ω2(n)}/ω2(n) (2)
となる。これにより、巻径同定演算器81は、ウエブ1のライン速度V(n)、送り出しロール2の回転速度ω2(n)及び初期径rmax(r2_HAT(n−1)において、n=1であるとき、A=r2_HAT(0)=rmaxとする)に基づいて、n時点における送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)を求めることができる。
【0071】
また、前式(1)において、Pr(0)・{ω2(n)}<<1である場合、Pr(0)・{ω2(n)}が“0”に収束するから、ω(n)が“0”に収束する。したがって、r2_HAT(n)は、前式(1)により、
r2_HAT(n)=r2_HAT(n−1) (3)
となる。つまり、Pr(0)・{ω2(n)}<<1である場合、n時点における送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)は、同定を進めることができない。言い換えると、送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)は、送り出しロール2が自動的に停止するから、変化しなくなる。
【0072】
以上説明した巻径同定ゲイン定数Pr(0)を大きい値に設定すると、逐次的に同定するまでの収束時間が短くなるが、n時点における送り出しロール2の回転速度ω2(n)に含まれる巻径の検出誤差、ノイズあるいは量子化誤差等の悪影響を受け易くなる。結局、巻径同定ゲイン定数Pr(0)を大きい値に設定すると、送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)が安定性を欠く。また、逆に、巻径同定ゲイン定数Pr(0)を小さい値に設定すると、送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)が安定性を保つが、逐次的に同定するまでの収束時間が長くなる。したがって、逐次的に同定するまでの収束時間と同定の安定性とが二律背反の関係にあるため、巻径同定ゲイン定数Pr(0)は調整要素となり得る。
【0073】
このように、巻径同定演算器81は、初期径rmaxと、n時点におけるライン速度V(n)と、巻径同定ウエイト及び送り出しロール2の回転速度ω2(n)とに基づいて、送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)を演算することができる。また、送り出しロール2が微速又は停止状態であったとしても、すなわち、送り出しロール2の回転速度ω2(n)が0に近づいたとしても、前式(1)における巻径偏差の分母は1に近づくから前式(1)の演算を行うことができる。したがって、送り出しロール2が停止状態に近づくに従い、送り出しロール2の巻径を演算する処理を滑らかに、かつ巻径の演算精度を劣化させることなく中止することができ、送り出しロール2を滑らかにかつ自動的に停止させることができる。したがって、送り出しロール2が微速又は停止状態であっても、送り出しロール2の巻径誤差を抑制することができる。
【0074】
〔ウエブ厚を同定する方法〕
次に、ウエブ厚を同定する方法について説明する。図7は、本発明に係るロール制御装置におけるウエブ厚を同定するための手順を示すフローチャートである。ウエブ厚を同定する手順は、図7に示すように、先ず、初期ウエブ厚δiを設定し(ステップS−10)、ウエブ厚同定ゲイン定数Pδ(0)を設定し、(ステップS−11)、送り出しロール2の回転速度ω2に基づいて回転量を演算する(ステップS−12)。
【0075】
そして、初期ウエブ厚δiと、ウエブ厚同定ゲイン定数Pδ(0)と、送り出しロール2の回転速度ω2に基づく回転量と、初期径rmaxと、n時点における送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)とに基づいて、ウエブ厚δを同定する方法に逐次最小二乗法を適用する(ステップS−13)。初期ウエブ厚δiと、ウエブ厚同定ゲイン定数Pδ(0)と、送り出しロール2の回転速度ω2に基づく回転量と、初期径rmaxと、n時点における送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)とに基づいて、後述する式(7)及び(8)により、“1,2,3,・・・,(n−1),(n)”の各時点におけるウエブ厚偏差を演算する。(ステップS−14)。
【0076】
そして、初期ウエブ厚δiに“1,2,3,・・・,(n−1)”の各時点におけるウエブ厚偏差を加算し(ステップS−15)、(n−1)時点におけるウエブ厚同定値δ_HAT(n−1)を演算する(ステップS−16)。また、(n−1)時点におけるウエブ厚同定値δ_HAT(n−1)にn時点におけるウエブ厚偏差を加算し、n時点におけるウエブ厚同定値δ_HAT(n)を得る(ステップS−17)。
【0077】
以下、送り出しロール2のウエブ厚δを同定する方法についてさらに詳細に説明する。送り出しロール2のウエブ厚δを同定する方法は、逐次最小二乗法による同定アルゴリズムを適用し、送り出しロール2のウエブ厚を統計的に処理し、n時点における送り出しロール2のウエブ厚同定値δ_HAT(n)を算出するものである。
【0078】
先ず、ウエブ長Lは、一般に次式(4)により求めることができる。すなわち、
L=∫r(θ)ωdt (4)
である。ここで、tは経過時間、r(θ)は送り出しロール2の累積回転角θにおける送り出しロールの巻径(半径)、ωは送り出しロール2の回転速度、θは初期径rmax上のウエブ1の接点と送り出しロール2の回転中心とを結ぶ線を回転角“0”である基線とした場合の、送り出しロール2の回転に伴う基線の累積回転角をそれぞれ示す。
【0079】
一方、巻径r(θ)は次式(5)により求めることができる。すなわち、
r(θ)=rmax−δθ/(2π) (5)
である。ウエブ1のライン速度Vは、前式(5)を用いて、次式(6)により求めることができる。すなわち、ウエブ1のライン速度Vは、
V=r(θ)×ω={rmax−δθ/(2π)}×ω (6)
となる。
【0080】
ところで、n時点におけるウエブ厚δを同定する方法は、送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)の場合と同様に、逐次最小二乗法を適用し、ウエブ厚を統計的に処理し、n時点におけるウエブ厚同定値δ_HAT(n)を算出するものである。つまり、ウエブ厚同定演算器83は、ウエブ厚同定値δ_HAT(n)を、次式(7)により求める。
δ_HAT(n)=E+(F×H)/G (7)
ここで、
E=δ_HAT(n−1)
F=Pδ(0)・θ(n)/(2π)
G=1+Pδ(0)・{θ(n)/(2π)}
H={r(0)−r(n)}−δ_HAT(n−1)・θ(n)/(2π)
とする。ここで、δ_HAT(n−1)は(n−1)時点におけるウエブ厚同定値、Pδ(0)はウエブ厚ゲイン定数、θ(n)はn時点における送り出しロール2の累積回転角、r_(0)は送り出しロール2の最大径(初期径に相当する)をそれぞれ示す。
【0081】
前式(7)により、n時点におけるウエブ厚同定値δ_HAT(n)は、(n−1)時点におけるウエブ厚同定値δ_HAT(n−1)にウエブ厚偏差((F×H)/Gに相当する。)を加算した値であることがわかる。ここで、ウエブ厚同定ウエイトF/Gは、ウエブ厚同定ゲイン定数Pδ(0)とn時点における送り出しロール2の累積回転角θ(n)とに基づいて定まり、ウエブ厚偏差は、このウエブ厚同定ウエイトF/Gに後述するウエブ厚差Hを乗算することにより得られる。つまり、(n−1)時点における送り出しロール2のウエブ厚同定値δ_HAT(n−1)に、n時点における送り出しロール2の回転量θn/(2π)を乗算し、演算の結果により、得られる仮想ウエブ厚を初期径r(0)から減算し、さらに、n時点における巻径r(n)を減算し、演算の結果により、ウエブ厚差Hを得る。そして、このウエブ厚差にウエブ厚同定ウエイトF/Gを乗算することにより、ウエブ厚偏差を得ることができる。
【0082】
次に、送り出しロール2の巻径r(n)として巻径同定値r_HAT(n)を用いると、ウエブ厚同定演算器83は、ウエブ厚同定値δ_HAT(n)を次式(8)により求める。すなわち、ウエブ厚同定値δ_HAT(n)は、前式(7)における“H”の代わりに後述する“J”を代入し、
δ_HAT(n)=E+(F×J)/G (8)
J={r_HAT(0)−r_HAT(n)}−δ_HAT(n−1)・θ(n)/(2π)
となる。
【0083】
図8は、本発明に係るロール制御装置における回転量演算部を示す制御ブロック図である。以下、前式(7)及び(8)により送り出しロール2のθ(n)/(2π)を演算する方法について説明する。回転量演算部95は、図3に示したウエブ厚同定演算器83に備えられ、図8に示すように、演算器69及び積分器70を備える。演算器69は、n時点における送り出しロール2の回転速度ω2(n)を入力し、ω2(n)に“1/2π”を乗算し、演算の結果により、得られる“ω2(n)/2π”を積分器70に出力する。積分器70は、“ω2(n)/2π”を入力し、“ω2(n)/2π”を時間積分し、演算の結果により、得られるn時点における送り出しロール2の回転量θ(n)/2πを出力する。これにより、回転量演算部95は、n時点における送り出しロール2の回転速度ω2(n)により、n時点における送り出しロール2の回転量(回転回数に相当する)θ(n)/2πを演算することができる。
【0084】
このように、ウエブ厚同定演算器83は、初期ウエブ厚δiと、初期径rmaxと、n時点における巻径同定値r2_HAT(n)と、ウエブ厚同定ゲイン定数Pδ(0)と、n時点における送り出しロール2の回転速度ω2(n)による回転量θ(n)/(2π)とに基づいて、ウエブ厚同定値δ_HAT(n)を演算することができる。
【0085】
〔送り出しロールの巻径補正量を演算する方法〕
次に、送り出しロール2の残径補正量を演算する方法について説明する。図9は、送り出し装置の最大ライン速度と、残径送り出し量と、残径送り出し時間との関係の一例を示す図である。図9において、縦軸Vがライン速度、横軸tが経過時間をそれぞれ示す。また、POは影線を施した面積に相当する残径送り出し量(長さ)、taは残径送り出し時間、VLmaxは最大ライン速度をそれぞれ示す。図9によれば、ウエブ1のライン速度Vは、台形状の速度分布である。つまり、ウエブ1は、時刻ゼロにおいて速度ゼロから徐々に加速し、最大ライン速度VLmaxに達した後、所定時間だけ最大ライン速度VLmaxを維持し、その後減速し始め、残径送り出し時間ta後に速度ゼロとなり、停止する。
【0086】
図10は、本発明に係るロール制御装置における送り出しロールの残径補正量を同定するための手順を示すフローチャートである。送り出しロール2の残径補正量Δrを同定する手順は、図10に示すように、先ず、最大ライン速度VLmaxを設定し(ステップS−18)、残径送り出し時間taを設定する(ステップS−19)。そして、最大ライン速度VLmaxと残径送り出し時間taとに基づいて、残径送り出し量(長さ)POを演算する(ステップS−20)。また、残径r0を設定し(ステップS−21)、残径r0と、残径送り出し量(長さ)POと、n時点におけるウエブ厚同定値δ_HAT(n)とに基づいて、残径補正量Δrを演算する(ステップS−22)。
【0087】
以下、送り出しロール2の送り出しロール2の残径補正量Δrを同定する方法についてさらに詳細に説明する。ウエブ1が残径送り出し時間taの間に送り出される長さである残径送り出し量POは、次式(9)により求めることができる。すなわち、残径送り出し量POは、
PO=VLmax×ta/2 (9)
となる。また、残径送り出し量POは、次式(10)により求めることができる。すなわち、残径送り出し量POは、
PO=(r0+Δr)φ−δφ/4π (10)
となる。ここで、φは累積回転角を示す。つまり、φは、図2に示した残径送り出し径R上のウエブ1の接点と送り出しロール2の回転中心とを結ぶ線を回転角“0”である基線とした場合に、送り出しロール2の回転に伴う基線の累積回転角を示す。
【0088】
次に、累積回転角φは、前式(10)から次式(11)のようになる。
φ=[2π(r0+Δr)-√{4π・(r0+Δr)-4π・PO・δ}]/δ (11)
となる。
【0089】
一方、残径補正量Δrは、次式(12)により求めることができる。すなわち、
Δr=δ・φ/2π (12)
となる。残径補正量Δrは、式(12)における累積回転角φに式(11)の累積回転角φを代入し、残径補正量Δrについて整理して2次方程式を解くと、次式(13)のようになる。すなわち、
Δr=−r0+√(r0+PO・δ/π) (13)
となる。
【0090】
これにより、残径補正量演算器87は、残径r0、最大ライン速度VLmax、残径送り出し時間ta及びウエブ厚δに基づいて、残径補正量Δrを求めることができる。つまり、残径r0と、残径送り出し量POと、ウエブ厚δの代わりに適用したウエブ厚同定値δ_HAT(n)とに基づいて、残径補正量Δrを求めることができる。
【0091】
〔送り出しロールの残径停止制御方法〕
次に、送り出しロール2の残径停止制御方法について説明する。図11は、本発明に係るロール制御装置における残径停止制御するための概略的な手順を示すフローチャートである。残径停止制御方法は、図11に示すように、先ず、残径r0に残径補正量Δrを加算し、残径送り出し径Rを得る(ステップS−101)。残径送り出し径Rとn時点における現在径r2(n時点における送り出しロール2の巻径同定値r2_HAT(n)に相当する)とを比較し、演算の結果により、現在径r2が残径送り出し径Rに等しいとき、又は小さいとき、残径停止モードに入る。つまり、搬送ロール制御装置66は、図4に示した周速指令演算部94による正規化周速指令V_BAR*と、パルスジェネレータ65による搬送用電動機97の回転速度ωm1と、負荷検出回路14による電流帰還信号iとを入力し、搬送用電動機97の速度及びトルクを制御し、また、張力制御部67は、張力設定器5による張力設定値と張力検出器6による張力検出値とを入力し、送出用電動機98のトルクを制御し、送り出しロール2の巻径が残径送り出し径Rになったときに搬送用電動機97を減速し、残径r0で停止させるように、残径停止制御モードに入り(S−102)、残径停止制御する(S−103)。
【0092】
ライン速度Vがゼロになったとき、残径停止制御を停止する(S−104)。これにより、現在径r2が残径送り出し径Rに比べて等しいとき、又は小さいとき、送り出しロール2を残径r0の位置において、精度よく停止させることができる。
【0093】
以上のように、本発明に係るロール制御装置64によれば、送り出しロール2の回転速度ωm2を検出し、かつ、逐次最小二乗法を適用することにより、送り出しロール2の巻径r2を統計的に演算することができる。これによって、送り出しロール2が低速で回転するときでも、送り出しロール2の巻径r2を自動的に同定することができ、かつ、送り出しロール2の巻径r2の演算を滑らかに中止することができる。つまり、本発明によれば、送り出しロール2が低速で回転するときでも、送り出しロール2の回転速度ωm2に含まれる巻径の検出誤差、ノイズあるいは量子化誤差等の影響を抑制した送り出しロール2の巻径r2を精度よく演算することができる。さらに、送り出しロール2を所望の巻径である残径r0において確実にかつ精度よく停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係るロール制御装置を送り出し装置に適用した場合の概念図である。
【図2】送り出しロールにおけるウエブ厚、残径、残径補正量、残径送り出し径及び初期径の関係を示す図である。
【図3】本発明に係るロール制御装置におけるCPUを構成する巻径及び残径補正量演算部を示す制御ブロック図である。
【図4】本発明に係るロール制御装置におけるCPUを構成する周速指令演算部を示す制御ブロック図である。
【図5】本発明に係るロール制御装置における搬送ロール制御装置を示す制御ブロック図である。
【図6】本発明に係るロール制御装置における送り出しロールの巻径を同定するための手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係るロール制御装置におけるウエブ厚を同定するための手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係るロール制御装置における回転量演算部を示す制御ブロック図である。
【図9】送り出し装置の最大ライン速度と残径送り出し量と残径送り出し時間との関係の一例を示す図である。
【図10】本発明に係るロール制御装置における送り出しロールの残径補正量を同定するための手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明に係るロール制御装置における残径停止制御の概略的な手順を示すフローチャートである。
【図12】従来のロール制御装置を説明する制御ブロック図である。
【図13】従来のロール巻径制御方法を説明する制御ブロック図である。
【符号の説明】
【0095】
1 シート材(ウエブ)
2 送り出しロール
3 送り出しロール駆動装置
4 送り出しロール制御装置
5 張力設定器
6 張力検出器
7 張力制御回路
8 搬送ロール
9 搬送ロール駆動装置
10,66 搬送ロール制御装置
11 速度設定器
12 速度検出器
13 速度制御回路
14 負荷検出回路
15 負荷変動検出回路
16 許容変化量設定回路
17 比較回路
18 張力補正回路
21 第1の回転検出手段
22 第2の回転検出手段
23 ロール径算出手段
24 帰還手段
25 差分算出手段
26 平均値算出手段
27 出力ロール径算出手段
31 マスタロール
32 巻戻しロール
61 送り出し装置
62 ピンチロール
63,65 パルスジェネレータ
64 ロール制御装置
67 張力制御部
68 CPU
69 演算器
70 積分器
71 減算器
72 比較器
73 カウンタ
74 演算器(除乗算器)
75 非線形関数器
76 リミッタ
77 ランプ関数器
78 巻径同定ウエイト演算器
79 ライン速度設定器
80 ロール最大径設定器
81 巻径同定演算器
82 初期ウエブ厚設定器
83 ウエブ厚同定演算器
84 残径巻出し時間設定器
85 最大ライン速度設定器
86 残径設定器
87 残径補正量演算器
88,90 減算器
89 速度制御器
91 電流制御器
93 巻径及び残径補正量演算部
94 周速指令演算部
95 回転量演算部
96 速度変換器
97 搬送ロール用電動機(搬送用電動機)
98 送り出しロール用電動機(送出用電動機)
99 駆動回路
100 駆動回路
101 ウエブ厚同定ウエイト演算器
V1 搬送ロール側ライン速度
V,V(n) ライン速度
r1 搬送ロールの半径、
r2 送り出しロールの現在径
ω1 搬送ロールの回転速度
ω2 送り出しロールの回転速度
δ ウエブ厚
δi 初期ウエブ厚
r0 残径
Δr 残径補正量
R 残径送り出し径
rmax 初期径
ωm1 搬送用電動機の実速度(速度帰還信号)
ωm1* 搬送用電動機の速度指令
Δωm1 搬送用電動機の速度偏差
V_BAR* 正規化周速指令
Kv 速度ゲイン定数
i* 電流指令信号
i 電流帰還信号
Δi 電流偏差
V_BAR_L 正規化ライン速度
V_BAR* 正規化周速指令
ta 残径送り出し時間
Vref ライン速度基準値
V_BAR_ZERO 正規化周速設定信号
r2_HAT(n) n時点における送り出しロールの巻径同定値
δ_HAT(n) n時点におけるウエブ厚同定値
Pr(0) 巻径同定ゲイン定数
Pδ(0) ウエブ厚同定ゲイン定数
t 経過時間
θ 累積回転角(原点が初期径上)
φ 累積回転角(原点が残径送り出し径上)
r(θ) 累積回転角θにおける送り出しロールの巻径
VLmax ウエブの最大ライン速度
PO 残径送り出し量
PO_BAR 正規化残径送り出し量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のウエブを円筒状に巻いた送り出しロールに連結する送出用電動機と、送り出しロールから送出したウエブを次工程に搬送する搬送ロールに連結する搬送用電動機とを駆動し、ウエブのライン速度及びウエブにかかる張力を制御するロール制御装置における送り出しロールの巻径検出方法において、
(n−1)(nは正の整数とする)時点における送り出しロールの巻径同定値を演算する第1のステップと、
逐次最小二乗法を適用し、(n−1)時点における送り出しロールの巻径同定値とn時点における送り出しロールの巻径同定値との間の巻径偏差を演算する第2のステップと、
(n−1)時点における送り出しロールの巻径同定値に巻径偏差を加算し、n時点における送り出しロールの巻径同定値を求める第3のステップと、
を備えることを特徴とする送り出しロールの巻径検出方法。
【請求項2】
前記第2のステップは、
送り出しロールの巻径を同定演算し始めてから収束するまでの収束速度を定める巻径同定ゲイン定数を設定するステップと、
0時点における送り出しロールの巻径同定値を、初期径として設定するステップと、
n時点における送り出しロールの回転速度を検出するステップと、
巻径同定ゲイン定数とn時点における送り出しロールの回転速度とに基づいて、巻径同定ウエイトを演算するステップと、
n時点におけるウエブのライン速度を検出するステップと、
(n−1)時点における送り出しロールの巻径同定値にn時点における送り出しロールの回転速度を乗算し、仮想ライン速度を求め、当該仮想ライン速度をn時点におけるウエブのライン速度から減算し、ライン速度差を求めるステップと、
ライン速度差に巻径同定ウエイトを乗算し、巻径偏差を求めるステップと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の送り出しロールの巻径検出方法。
【請求項3】
さらに、(n−1)時点におけるウエブ厚同定値を演算する第4のステップと、
逐次最小二乗法を適用し、(n−1)時点におけるウエブ厚同定値とn時点におけるウエブ厚同定値との間のウエブ厚偏差を演算する第5のステップと、
(n−1)時点におけるウエブ厚同定値にウエブ厚偏差を加算し、n時点におけるウエブ厚同定値を求める第6のステップと、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の送り出しロールの巻径検出方法。
【請求項4】
前記第5のステップは、
0時点におけるウエブ厚同定値を、初期ウエブ厚として設定するステップと、
n時点における送り出しロールの回転速度に基づいて、送り出しロールの回転量を演算するステップと、
ウエブ厚を同定演算し始めてから収束するまでの収束速度を定めるウエブ厚同定ゲイン定数を設定するステップと、
ウエブ厚同定ゲイン定数とn時点における送り出しロールの回転量とに基づいてウエブ厚同定ウエイトを演算するステップと、
(n−1)時点におけるウエブ厚同定値に、n時点における送り出しロールの回転量を乗算して仮想ウエブ厚を求め、初期径からn時点における巻径同定値を減算して厚さを求め、前記厚さから仮想ウエブ厚を減算してウエブ厚差を求めるステップと、
ウエブ厚差にウエブ厚同定ウエイトを乗算し、ウエブ厚偏差を求めるステップと、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の送り出しロールの巻径検出方法。
【請求項5】
さらに、送り出しロールを停止させる巻径位置である残径を設定する第7のステップと、
ウエブの最大ライン速度と、当該最大ライン速度から減速して停止するまでに要する時間である残径送り出し時間とに基づいて、残径送り出し量を演算する第8のステップと、
残径、残径送り出し量及びn時点におけるウエブ厚同定値に基づいて、残径補正量を演算する第9のステップと、
を備えることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の送り出しロールの巻径検出方法。
【請求項6】
長尺状のウエブを円筒状に巻いた送り出しロールに連結する送出用電動機と、送り出しロールから送出したウエブを次工程に搬送する搬送ロールに連結する搬送用電動機とを駆動し、ウエブのライン速度及びウエブにかかる張力を制御するロール制御方法において、
請求項5の第7のステップにより設定した残径に、第8のステップにより演算した残径補正量を加算し、残径送り出し径を求めるステップと、
残径送り出し径と、請求項1の第3のステップにより求めたn時点における送り出しロールの巻径同定値である現在径とを比較し、現在径が残径送り出し径に等しいときに、搬送用電動機及び送出用電動機を減速させ、かつ、現在径が残径に等しいときに搬送用電動機及び送出用電動機を停止させるように、ウエブのライン速度及びウエブにかかる張力を制御するステップと、
を備えることを特徴とするロール制御方法。
【請求項7】
長尺状のウエブを円筒状に巻いた送り出しロールに連結する送出用電動機と、送り出しロールから送出したウエブを次工程に搬送する搬送ロールに連結する搬送用電動機とを駆動し、ウエブのライン速度及びウエブにかかる張力を制御するロール制御装置において、
(n−1)時点における送り出しロールの巻径同定値とn時点における送り出しロールの巻径偏差とに基づいて、n時点における送り出しロールの巻径同定値を演算する巻径同定演算手段と、
前記巻径同定演算手段により演算されたn時点における送り出しロールの巻径同定値、0時点における送り出しロールの巻径同定値である初期径、0時点におけるウエブ厚同定値である初期ウエブ厚、n時点における送り出しロールの回転速度に基づいて演算した送り出しロール回転量、及び、ウエブ厚を同定演算し始めてから収束するまでの収束速度を定めるウエブ厚同定ゲイン定数に基づいて、ウエブ厚同定値を演算するウエブ厚同定値演算手段と、
ウエブの最大ライン速度と当該最大ライン速度から減速し停止するまでに要する時間である残径送り出し時間とに基づいて残径送り出し量を演算し、当該残径送り出し量、送り出しロールを停止させる巻径位置である残径、及び、前記ウエブ厚同定値演算手段により演算されたウエブ厚同定値に基づいて、送り出しロールの残径に対する残径補正量を演算する残径補正量演算手段と、
前記残径と残径補正量演算手段により演算された残径補正量とを加算し、残径送り出し径を求める加算手段と、
前記加算手段により求められた残径送り出し径と、前記巻径同定演算手段により演算されたn時点における送り出しロールの巻径同定値である現在径とを比較し、現在径が残径送り出し径に比べて大きいとき、リセット信号をオンし、現在径が残径送り出し径に比べて等しいとき、又は小さいとき、リセット信号をオフする比較手段と、
前記比較手段によりリセット信号がオンのとき、残径送り出し量を最大ライン速度で正規化した正規化残径送り出し量を初期値とし、当該初期値に対応するライン速度基準を搬送ロールの周速指令信号として出力し、前記リセット信号がオフのとき、前記正規化残径送り出し量から正規化ライン速度に基づく距離信号を減算して差信号を求め、当該差信号に基づいて、送り出しロールの現在径が残径に到達したときに搬送ロールが停止するように、前記搬送ロールを減速するための周速指令信号を出力する周速指令生成手段と、
前記周速指令生成手段により出力された周速指令信号及び前記搬送用電動機の実速度信号を入力し、前記周速指令信号に基づいて搬送用電動機の回転速度に対応する換算速度指令信号を生成し、前記換算速度指令信号から実速度信号を減算して速度偏差を求め、当該速度偏差に予め設定された速度ゲイン定数を乗算し、トルク指令を出力する速度制御手段と、
前記速度制御手段により出力されたトルク指令及び前記搬送用電動機の巻線に流れる実電流信号を入力し、前記トルク指令に見合う電流指令信号から実電流信号を減算し、電流偏差を出力する電流制御手段と、
を備えることを特徴とするロール制御装置。
【請求項8】
前記周速指令生成手段は、
前記正規化残径送り出し量を設定する正規化残径送り出し量設定手段と、
前記リセット信号がオンのとき、前記正規化残径送り出し量を初期値として出力し、前記リセット信号がオフのとき、正規化ライン速度に基づく長さ相当値を入力し、初期値である正規化残径送り出し量から前記長さ相当値を減算し、第1の値として出力するカウンタと、
前記カウンタにより出力された第1の値に前記正規化残径送り出し量の逆数を乗算し、第2の値として出力する乗除算器と、
前記乗除算器により出力された第2の値に応じて非線形状に変化する非線形信号を出力する非線形関数器と、
前記非線形関数器により出力された非線形信号及び予め設定されたライン速度基準信号を入力し、前記非線形信号の値がライン速度基準信号の値に比べて等しいとき、又は大きいとき、正規化ライン速度信号としてライン速度基準信号を出力し、前記非線形信号の値がライン速度基準信号の値に比べて小さいとき、正規化ライン速度信号として非線形信号を出力するリミッタと、
前記リミッタにより出力された正規化ライン速度信号を入力し、前記正規化ライン速度信号として非線形信号を入力してから前記残径送り出し時間だけ経過すると、最大ライン速度からゼロのライン速度まで変化する正規化周速指令信号を出力するランプ関数器と、
を備えることを特徴とする請求項7に記載のロール制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−67577(P2009−67577A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240436(P2007−240436)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(390014384)日本リライアンス株式会社 (58)
【Fターム(参考)】