説明

ロールオーバーバルブ

【目的】 バルブの開弁、閉弁時の作動応答性を高める。
【構成】 燃料タンクの壁面に穿設された孔内に取り付けられるとともに、内部に燃料タンク内外を連通する流路7を有するハウジング2と、流路7内に移動可能に設けられるとともに、流路7内を燃料タンクの内から外方向に移動して流路を開放し、外から内方向に移動して流路7を閉塞するバルブ9と、このバルブ9に一体に連結されるとともに、満タン時等に端部が燃料内に没入するフロート10と、フロート10をバルブ9が閉弁する方向に付勢するスプリング11とを具えたものであって、流路7の流入側と流出側との間の圧力に差が生じた場合、その差圧がバルブ9の開弁方向に作用するようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は自動車等の燃料タンク等に装着されるロールオーバーバルブに関し、特に、応答性に優れるロールオーバーバルブに関するものである。
【0002】
【従来技術およびその問題点】一般に、自動車等の燃料タンクに装着されて、通常時は燃料タンク内のベーパーやエアー抜きを行って燃料タンクの内圧の上昇を防止し、傾斜時又は満タン時には燃料タンク内を閉塞して燃料がキャニスター側に流出するのを防止しているロールオーバーバルブにあっては、種々のタイプのものが提案されており、例えば、図3および図4に示すようなものが既に知られている。
【0003】すなわち、図3に示すものは、燃料タンクの壁面に穿設された孔内に取り付けられるとともに、内部に燃料タンク内外を連通する流路27を有する樹脂製のハウジング22と、このハウジング22内に設けられるとともに、上端に前記流路27の一部を開閉し得る突起30aを有する樹脂製の弁体30と、この弁体30内に設けられるとともに、ハウジング22に設けられるボトムプレート25上を転動可能なボール24とを具えたものである。
【0004】そして、燃料タンク内には燃料が貯溜されているため、弁体30は、それ自身の重量と浮力との平衡によって上下動し、通常は突起30aが流路27を開放することにより、燃料タンク内のガソリンベーパーやエアー抜きを行うとともに、転倒時や傾斜時には、ボール24による重量が加わって平行状態が壊されることにより突起30aが流路27を閉塞し、燃料がキャニスター側に流出するのを防止するようになっている。
【0005】また、図4に示すものは、燃料タンクの壁面に穿設された孔内に取り付けられるとともに、内部に燃料タンク内外を連通する流路37を有する樹脂製のハウジング32と、このハウジング32内に設けられるとともに、上端に前記流路37の一部を開閉し得る突起40aを有する樹脂製の弁体40と、この弁体40と前記ハウジング32との間に介装されるスプリング35とを具えたものである。
【0006】そして、燃料タンク内には燃料が貯溜されているため、弁体40は、それ自身の重量と浮力とスプリング35の付勢力との平衡によって上下動し、通常は突起40aが流路37を開放することにより、燃料タンク内のガソリンベーパーやエアー抜きを行うとともに、転倒時や傾斜時には、平衡状態が壊されることによって突起40aが流路37を閉塞し、燃料がキャニスター側に流出するのを防止するようになっている。これと同様にスプリングの付勢力を利用したものとして、実公平5−41929号公報、実開平3−59465号公報に開示されたロールオーバーバルブ等が知られている。
【0007】上記のように構成される従来のロールオーバーバルブにあっては、燃料のオーバーフロー等を防止するため、燃料が満タンになった時又は車両の傾斜角度が所定角度以上になった時に、できるだけ速く弁体30、40を作動させて流路27、37を閉塞し、燃料のキャニスター側への流出を最小限に抑える必要があり、このため弁体30、40の重量をできるだけ軽くする必要がある。
【0008】しかしながら、弁体30、40の重量を軽くすると、弁体30、40が流路27、37を閉塞する際の作動応答性は向上するが、満タン状態から燃料が減少した時や車両の傾斜角度が通常状態に戻った時等の弁体30、40の再開弁時に、流路27、37の流入側と流出側との圧力の差により応答性が悪くなり、ガソリンベーパーやエアー抜きが妨げられることになる。
【0009】この発明は前記のような従来のもののもつ問題点を解決したものであって、弁体の開弁時、閉弁時の作動応答性、特に、再開弁時における作動応答性を向上させることのできるロールオーバーバルブを提供することを目的とするものである。
【0010】
【問題点を解決するための手段】上記の問題点を解決するためにこの発明は、燃料タンクの壁面に穿設された孔内に取り付けられるとともに、内部に燃料タンク内外を連通する流路を有するハウジングと、前記流路内に移動可能に設けられるとともに、流路内を燃料タンクの外から内方向に移動して流路を閉塞し、内から外方向に移動して流路を開放するバルブと、該バルブに連結されるとともに、燃料タンクの満タン時又は傾斜時に端部が燃料内に没入し得るフロートと、該フロートと前記ハウジングとの間に介装され、前記フロートを前記バルブが前記流路を閉塞する方向に付勢する付勢部材とを具えた手段を採用したものである。
【0011】
【作用】この発明は前記のような手段を採用したことにより、通常状態では、バルブは、それ自体の重量とフロートの重量とフロートに作用する浮力と付勢部材の付勢力との平衡により上下動して流路を開放し、燃料タンク内のガソリンベーパーやエアー抜きを行い、満タン時又は傾斜時には、フロートの端部が燃料内に没入することによりそれらの平衡状態が壊され、バルブは流路内を燃料タンクの外から内方向に移動して流路を閉塞し、燃料がキャニスター側に流出するのを防止する。一方、満タン状態から燃料が減少した場合や車両が通常の傾斜角度に戻った場合等には、バルブは流路内を燃料タンクの内から外方向に移動して流路を開放し、この時流路の流入側と流出側との圧力に差があっても、その差圧はバルブが流路を開弁する方向に作用することになるので、バルブの開弁が妨げられることはない。
【0012】
【実施例】以下、図面に示すこの発明の実施例について説明する。図1および図2には、この発明によるロールオーバーバルブの一実施例が示されていて、この実施例に示すロールーオーバーバルブ1は、燃料タンクの壁面に穿設された孔内に取り付けられるとともに、内部に燃料タンク内外を連通する流路7を有する樹脂製のハウジング2と、前記流路7内に移動可能に設けられるとともに、流路7内を燃料タンクの外から内方向に移動して流路7を閉塞し、内から外方向に移動して流路7を開放するバルブ9と、このバルブ9に一体に取り付けられるとともに、満タン時又は車両が所定の角度以上に傾斜した時に、端部が燃料内に没入し得る樹脂製のフロート10と、このフロート10とハウジング2との間に介装され、フロート10をバルブ9の閉弁方向に付勢する付勢部材であるスプリング11とを具えている。
【0013】ハウジング2は、内部に大径空所4aが形成される筒状の下半部4と、この下半部4の上端開口部にそこを閉塞するように下端開口部が一体に連結されるとともに、内部に大径空所4aに連通する小径空所5aが形成され、かつ、周面に水平方向に貫通する小径空所5a内外を連通する一対の通気口5b、5b、が穿設される前記下半部4よりも小径の上端が閉塞された筒状をなす上半部5とからなる本体部3と、下半部4の周面に一体に連結されるとともに、内部に一端が大径空所4a内に開口し、他端が上半部5の上端よりも上方に開口する通孔6aが穿設されるL型状の管部6とからなり、下半部4の下端開口部は樹脂製のキャップ12で閉塞されるようになっている。
【0014】したがって、小径空所5a、大径空所4aおよび通孔6aによってハウジング2内には、一端が通気口5b、5bを介して上半部5の周面側に開口し、他端が通孔6aの他端開口部を介して上半部5の上端よりも上方に開口する一連の流路7が形成されることになる。
【0015】小径空所5aと大径空所4aとの境界部は全周に渡って面取りされていて、その部分に図中下方にいくほど大径となる環状の弁座7aが形成され、この弁座7aに後述するバルブ9の弁部9aが当接又は離間することで流路7の一部が閉塞又は開放されるようになっている。
【0016】また、上半部5の閉塞されている部分の中心部には、上下方向に貫通する貫通孔5cが穿設されていて、この貫通孔5c内に後述するバルブ9のロッド部9bがスライド可能に挿着されるようになっている。
【0017】バルブ9は、上面周縁部が全周に渡ってアール面に形成される円板状の弁部9aと、この弁部9aの上面中央部に立設される棒状のロッド部9bとからなり、ロッド部9bを本体部3の上半部5の貫通孔5c内に挿通させた状態で弁部9aは大径空所4a内に位置するようになっている。
【0018】フロート10は、上端が閉塞された筒状をなすものであって、ハウジング2の本体部3をほぼ被包し得る大きさに形成されるとともに、下端開口部には全周に渡って肉厚のウェイト部10aが一体に形成され、燃料の満タン時又は車両の傾斜時にウェイト部10aが燃料タンク内の燃料内に没入することによりフロート10に浮力が作用するようになっている。
【0019】また、フロート10の閉塞されている上端中央部には、上下方向に貫通する貫通孔10bが穿設されていて、この貫通孔10b内にバルブ9のロッド部9bの上端を嵌合させることで、バルブ9とフロート10とが一体に連結されるようになっている。
【0020】スプリング11は、本体部3の上半部5の周面側に装着されていて、下端を上半部5と下半部4との間の外周面側に形成されている環状の段部3aに当接させ、上端を前記フロート10の内部上面に当接させるようになっており、フロート10をハウジング2の本体部3から離間させる方向に付勢するようになっている。
【0021】そして、通常状態ではフロート10自体の重量とバルブ9の重量がスプリング11の付勢力に打ち勝ち、フロート10の内部上面が本体部3の上半部5の上端に当接し、これにより、フロート10と一体をなしているバルブ9の弁部9aが弁座7aから離間して流路7を開放し、燃料タンク内のベーパーやエアーを流路7を介して燃料タンク外に排出し、燃料タンクの内圧が一定に保たれる。
【0022】一方、燃料タンクが満タン状態になった時又は車両が所定の角度以上に傾斜した時には、前記フロート10の下端のウェイト部10aが燃料タンク内の燃料内に没入することによりフロート10に浮力が作用し、スプリング11の付勢力がフロート10自体の重量とバルブ9の重量に打ち勝ってフロート10を押し上げ、これにより、フロート10と一体をなしているバルブ9の弁部9aが弁座7aに当接して流路7を閉塞し、燃料タンク内の燃料が流路7を介してキャニスター側に流出するのが防止される。
【0023】上記のように構成したこの実施例によるロールオーバーバルブ1にあっては、燃料タンク内外を連通する流路7は、流路7内をバルブ9が燃料タンクの内から外方向に移動することにより開放され、外から内方向に移動することにより閉塞されることになるので、満タン状態又は傾斜状態から通常の状態に戻った場合に、燃料タンクの内圧が上昇して流路7の流入側と流出側との圧力に差が生じたとしても、その差圧はバルブ9の弁部9aが弁座7aから離間する方向に作用し、バルブ9の開弁を助長することになる。
【0024】したがって、バルブ9の作動応答性を高めるためにバルブ9の重量を軽くしたとしても、閉弁状態から開弁状態に切り替わる際にバルブ9の作動応答性が鈍るようなことは全くなく、開弁時においても閉弁時においてもバルブ9の作動応答性を高めることができることになる。
【0025】
【発明の効果】この発明は、燃料タンクの壁面に穿設された孔内に取り付けられるとともに、内部に燃料タンク内外を連通する流路を有するハウジングと、前記流路内に移動可能に設けられるとともに、流路内を燃料タンクの外から内方向に移動して流路を閉塞し、内から外方向に移動して流路を開放するバルブと、該バルブに連結されるとともに、燃料タンクの満タン時又は傾斜時に端部が燃料内に没入し得るフロートと、該フロートと前記ハウジングとの間に介装され、前記フロートを前記バルブが前記流路を閉塞する方向に付勢する付勢部材とを具えたことにより、以下のような効果を奏することになる。
【0026】すなわち、バルブは、通常状態ではそれ自体の重量とフロートの重量とフロートに作用する浮力と付勢部材の付勢力との平衡により上下動して流路を開放し、燃料の満タン時又は車両が所定の角度以上に傾斜した時には、フロートの端部が燃料内に没入することによりそれらの平衡状態が壊されて流路を閉塞することになる。
【0027】この場合、バルブは、流路内を燃料タンクの内から外方向に移動して流路を開放し、外から内方向に移動して流路を閉塞することになるので、車両が傾斜状態から通常状態に戻った場合等に、燃料タンクの内圧が上昇して流路の流入側と流出側との間の圧力に差が生じても、その差圧はバルブが流路を開放する方向に作用し、バルブの開弁を助長することになる。
【0028】したがって、バルブの応答性を高めるためにバルブの重量を軽くしたとしても、閉弁状態から開弁状態に切り替わる際の応答性が悪くなるようなことはなく、閉弁、開弁の両方において良好な作動応答性が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるロールオーバーバルブの一実施例の開弁状態を示した縦断面図である。
【図2】図1に示すものの閉弁状態を示した縦断面図である。
【図3】従来のロールオーバーバルブの一例を示した縦断面図である。
【図4】従来のロールオーバーバルブの他の例を示した縦断面図である。
【符号の説明】
1……ロールオーバーバルブ
2、22、32……ハウジング
3……本体部
3a……段部
4……下半部
4a……大径空所
5……上半部
5a……小径空所
5b……通気口
5c……貫通孔
6……管部
6a……通孔
7、27、37……流路
7a……弁座
9……バルブ
9a……弁部
9b……ロッド部
10……フロート
10a……ウェイト部
10b……貫通孔
11……付勢部材(スプリング)
12……キャップ
24……ボール
25……ボトムプレート
30、40……弁体
30a、40a……突起
35……スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】 燃料タンクの壁面に穿設された孔内に取り付けられるとともに、内部に燃料タンク内外を連通する流路(7)を有するハウジング(2)と、前記流路(7)内に移動可能に設けられるとともに、流路(7)内を燃料タンクの外から内方向に移動して流路(7)を閉塞し、内から外方向に移動して流路(7)を開放するバルブ(9)と、該バルブ(9)に連結されるとともに、燃料タンクの満タン時又は傾斜時に端部が燃料内に没入し得るフロート(10)と、該フロート(10)と前記ハウジング(2)との間に介装され、前記フロート(10)を前記バルブ(9)が前記流路(7)を閉塞する方向に付勢する付勢部材(11)とを具えたことを特徴とするロールオーバーバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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