説明

ロールコーティング設備における塗料攪拌装置

【課題】塗料が比重差の大きい複数種類の金属粉末の混合物を含む場合であっても、鋼帯等の帯状材料に形成する塗装皮膜の成分を均一化することが可能な、ロールコーティング設備における塗料攪拌装置を提供する。
【解決手段】塗料収容パン2に収容された塗料4中に配置されるブレード部6と、塗料4中に少なくとも一部が浸漬するピックアップロール12の軸方向に沿ってブレード部6を往復運動させるブレード部往復運動手段8を備えた塗料攪拌装置1であって、ブレード部6に取り付けられるとともに、塗料4中において塗料収容パン2の底面と近接または接触する位置に配置された攪拌部材10を備えており、この攪拌部材10は、複数の開口部を有する平板状の部材であるとともに、塗料収容パン2の底面に沿って配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼帯等の帯状材料にロールを介して塗料を塗装するロールコーティング設備において、塗料収容パンに収容した塗料を攪拌するための塗料攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、連続的に搬送される鋼帯等の帯状材料に、塗料を塗装する設備としては、例えば、帯状材料の表面に塗装する塗料を収容する塗料収容パンと、塗料収容パンに収容された塗料に一部が浸漬するピックアップロールを備えている、ロールコーティング設備がある。
このようなロールコーティング設備で行う塗料の塗装では、目標とする乾燥後の皮膜厚や、塗装後の外観等に応じたコーティング条件で処理を行っている。ここで、コーティング条件とは、例えば、ロールの回転速度である周速、ロールコーティング設備に複数備えられたロール間のニップ圧、鋼帯を塗装する処理速度、塗料濃度等である。
【0003】
また、上記のような塗装に用いる塗料は、塗料の濃度や粘度を調整するために、水や有機溶剤で適宜希釈して用いることが一般的である。このような塗料では、顔料等粒径を有する成分が水や有機溶剤に溶解しない状態で添加される場合がある。このような場合には、顔料等の比重が塗料比重に比較して大きいほど、沈降しやすい問題がある。例えば、金属粉末等は、塗料の比重と比較して比重が大きい場合が多く、塗料収容パン内で沈降する問題が発生しやすい。
【0004】
このように、塗料の比重と比較して顔料等の比重が大きい場合、塗料を塗料収容パンに入れる前に旋回式の攪拌や循環式の攪拌を行っていても、塗料収容パン内において比重の大きい顔料等が沈殿することとなる。例えば、比重1.05の塗料中にニッケル粉末(Ni比重8.9程度)を含有している場合、塗料収容パン内で攪拌を行わずに放置すると、塗料収容パンの底面には、ニッケルによる沈殿層が短時間で形成される。
【0005】
このため、このような状態のままで塗装を行うと、ニッケル粉末等が時間経過とともに少なくなるため、ニッケル粉末等の沈殿した成分が少ない塗料が塗装されることになり、設計した塗料配合での塗装ができないという問題が発生する。
この問題に対し、塗料収容パン内に収容した塗料を攪拌する技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が提案されている。
【0006】
特許文献1に記載の技術は、ピックアップロールの回転軸方向両端部に、塗料収容パン内に収容した塗料を攪拌するためのフィンを複数取り付けたものである。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、フィンの周辺とフィンから離れた位置とでは、攪拌の度合いが異なるため、フィンからの位置によって塗装される塗料の成分が偏ってしまうという問題が発生する。
この問題に対し、塗料収容パン内に収容した塗料を攪拌するとともに、塗料収容パン内における塗料の成分の偏りを抑制する技術として、例えば、特許文献2及び3に記載の技術が提案されている。
【0007】
特許文献2に記載の技術は、ピックアップロールの軸方向に往復動する棒状の基体と、この基体に取り付けられた複数本の攪拌棒を備えた装置であり、各攪拌棒は、基体の横に取り付けられた丸棒と、この丸棒の下部に取り付けられて塗料内に配置される攪拌プレートから形成されている。
また、特許文献3に記載の技術は、ピックアップロールの軸方向に往復動する支持フレームと、この支持フレームに取り付けられた、塗料収容パンの略幅一杯に延びる複数本の細長い攪拌部材を備えた装置であり、各攪拌部材は、塗料収容パン内に収容された塗料内に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9‐239304号公報
【特許文献2】特開平5‐212333号公報
【特許文献3】実公平3‐28944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
確かに、特許文献2及び3に記載の装置によれば、フィンによる攪拌よりは塗料攪拌時の場所による不均一が改善されるものの、顔料等の比重と塗料の比重との差が大きく沈降しやすい場合は、攪拌が不十分である問題が残っている。したがって、塗料収容パンの底面へ広範囲に堆積した塗料と比重差の大きい顔料等を含む塗料を均一に撹拌することが困難である。
【0010】
このため、特許文献2及び3に記載の装置であっても、塗料中に塗料と比重差の大きい顔料等を含む場合、鋼帯等の帯状材料に対して、成分の均一な塗装皮膜を形成することが困難であるという問題が生じるおそれがある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、塗料中に塗料と比重差の大きい顔料等を含む場合であっても、鋼帯等の帯状材料に形成する塗装皮膜の成分を均一化することが可能な、ロールコーティング設備における塗料攪拌装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、塗料収容パンに収容された塗料中に配置されるブレード部と、
前記塗料中に少なくとも一部が浸漬するピックアップロールの軸方向に沿って前記ブレード部を往復運動させるブレード部往復運動手段と、を備えたロールコーティング設備における塗料攪拌装置であって、
前記ブレード部に取り付けられ、前記塗料中において前記塗料収容パンの底面と近接または接触する位置に配置された攪拌部材を備え、
前記攪拌部材は、複数の開口部を有する平板状の部材であり且つ前記塗料収容パンの底面に沿って配置されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明によると、塗料中において塗料収容パンの底面と近接または接触する位置に配置され、複数の開口部を有する平板状の部材である攪拌部材を、ブレード部と共に、ピックアップロールの軸方向に沿って往復運動させることが可能となる。
このため、攪拌部材により、塗料収容パンに収容された塗料を、塗料収容パンの底面と近接または接触する位置において攪拌することが可能となるため、塗料収容パンの底面に沈殿している粉末等を、塗料中へ均一に拡散させることが可能となる。
ここで、攪拌部材及びブレード部を往復運動させる方向は、ピックアップロールの軸方向に平行な方向であってもよく、また、ピックアップロールの軸方向に対して傾斜した方向であってもよい。
【0013】
次に、本発明のうち、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明であって、前記攪拌部材は、金属製または樹脂製の網形状部材であることを特徴とするものである。
本発明によると、攪拌部材が金属製または樹脂製の網形状部材であるため、網形状部材の線材部分により、塗料収容パンの底面に沈殿している粉末等を塗料中へ巻き上げるとともに、この巻き上げた粉末等が網形状部材の開口部を通過するため、塗料を効率的に攪拌することが可能となる。
【0014】
次に、本発明のうち、請求項3に記載した発明は、請求項1または請求項2に記載した発明であって、前記ブレード部及び前記攪拌部材のうち少なくとも攪拌部材は、上下方向から見て前記ピックアップロールと重なっていることを特徴とするものである。
本発明によると、ブレード部及び攪拌部材のうち少なくとも一方が、上下方向から見てピックアップロールと重なっているため、塗料収容パンに収容された塗料のうちピックアップロールの下方に存在する塗料を、少なくとも攪拌部材により効率的に攪拌することが可能となる。
このため、ピックアップロールにより塗料収容パンから持ち上げられる塗料を、塗料収容パンの底面に沈殿している粉末等が均一に拡散している塗料とすることが可能となる。
【0015】
次に、本発明のうち、請求項4に記載した発明は、請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記ブレード部及び前記攪拌部材は、前記ピックアップロールの軸方向と直交または略直交する方向に延在し、
前記ブレード部及び前記攪拌部材の前記延在方向への長さは、前記塗料収容パンの前記ピックアップロールの軸方向と直交する方向への長さに対して50%以上の長さであることを特徴とするものである。
【0016】
本発明によると、ブレード部及び攪拌部材の延在方向への長さを、塗料収容パンのピックアップロールの軸方向と直交する方向への長さに対して、50[%]以上の長さとしている。
このため、ピックアップロールの軸方向に沿って往復運動するブレード部及び攪拌部材により、塗料収容パンに収容された塗料の50[%]以上を、直接的に攪拌することが可能となる。
ここで、塗料収容パンのピックアップロールの軸方向と直交する方向への長さに対する、ブレード部及び攪拌部材の延在方向への長さの上限値は、100[%]未満の長さとすることにより、塗料収容パンとブレード部及び攪拌部材との接触を防止する。
【0017】
次に、本発明のうち、請求項5に記載した発明は、請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記攪拌部材は、前記ブレード部の下方に配置され、
前記塗料収容パンに収容された前記塗料の液面と前記ブレード部との距離は、前記塗料収容パンに収容された前記塗料の深さに対して70%以上の距離であることを特徴とするものである。
本発明によると、攪拌部材をブレード部の下方に配置し、さらに、塗料収容パンに収容された塗料の液面とブレード部との距離を、塗料収容パンに収容された塗料の深さに対して、70[%]以上の距離としている。
【0018】
このため、塗料収容パンに収容された塗料中において、ブレード部及び攪拌部材が配置される位置を、塗料の液面から離れた位置とすることが可能となり、塗料の攪拌時において発生する液面の荒れを、抑制することが可能となる。
ここで、塗料収容パンに収容された塗料の深さに対する、塗料収容パンに収容された塗料の液面とブレード部との距離の上限値は、ブレード部及び攪拌部材の、塗料の深さと平行な方向への長さに応じて設定する。これは、例えば、攪拌部材が塗料収容パンの底面を押圧しない値とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、塗料収容パンの底面に沈殿している粉末等を、塗料中へ均一に拡散させることが可能となるため、塗料中に塗料と比重差の大きい顔料等を含む場合であっても、鋼帯等の帯状材料に形成する塗装皮膜の成分を均一化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の塗料攪拌装置の概略構成を示す上面図である。
【図2】図1のII線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態のロールコーティング設備における塗料攪拌装置(以下、「塗料攪拌装置」と記載する)の構成を説明する。
図1は、本実施形態の塗料攪拌装置1の概略構成を示す上面図であり、図2は、図1のII線矢視図である。
図1及び図2中に示すように、本実施形態の塗料攪拌装置1は、塗料収容パン2に収容された塗料4を攪拌するための装置であり、ブレード部6と、ブレード部往復運動手段8と、攪拌部材10を備えている。
【0022】
ブレード部6は、塗料収容パン2に収容された塗料4中に配置されており、ピックアップロール12の軸方向と直交または略直交する方向に延在している。
ここで、ピックアップロール12及び関連する構成について説明する。
ピックアップロール12は、金属材料を用いて形成された円柱形状または円筒形状の部材(ロール)であり、図外の支持部材によって、回転可能に支持されている。
【0023】
また、ピックアップロール12は、塗料収容パン2に収容された塗料4中に、その一部、具体的には、少なくとも周面の下部が浸漬するように配置されており、塗料収容パン2に収容された塗料4を塗料収容パン2から持ち上げて、アプリケーターロール14に転写する。
アプリケーターロール14は、ピックアップロール12の周面及び帯状材料(図示せず)の表面(塗装面)と接する円柱形状または円筒形状の部材(ロール)であり、図外の支持部材によって、回転可能に支持されている。したがって、アプリケーターロール14の周面には、ピックアップロール12が塗料収容パン2から持ち上げた塗料4が転写され、この転写された塗料4は、帯状材料の表面に塗装されて塗装皮膜を形成する。
なお、本実施形態では、めっき及び下地処理済みの冷延鋼板に、沈殿しやすい成分としてNi(ニッケル)の金属粉末を含有する塗料の塗布を行った。
【0024】
以下、塗料攪拌装置1の構成の説明に復帰する。
ブレード部6の延在方向(ピックアップロール12の軸方向と直交または略直交する方向)への長さLbは、塗料収容パン2の、ピックアップロール12の軸方向と直交する方向への長さLpに対して、50%以上の長さとなっている。すなわち、ブレード部6の延在方向への長さLbと、塗料収容パン2の、ピックアップロール12の軸方向と直交する方向への長さLpとの間には、Lb≧0.5Lpの関係式が成立している。
ここで、塗料収容パン2の、ピックアップロール12の軸方向と直交する方向への長さLpに対する、ブレード部6の延在方向への長さLbの上限値は、100[%]未満の長さとなっている。これにより、塗料収容パン2とブレード部6との接触を防止している。
【0025】
また、塗料収容パン2に収容された塗料4の液面とブレード部6との距離Rbは、塗料収容パン2に収容された塗料4の深さDに対して、70[%]以上の距離となっている。すなわち、塗料収容パン2に収容された塗料4の液面とブレード部6との距離Rbと、塗料収容パン2に収容された塗料4の深さDとの間には、Rb≧0.7Dの関係式が成立している。
ここで、塗料収容パン2に収容された塗料4の深さDに対する、塗料収容パン2に収容された塗料4の液面とブレード部6との距離Rbとの距離の上限値は、ブレード部6及び攪拌部材10の、塗料4の深さと平行な方向(図2中の上下方向)への長さに応じて設定する。これは、例えば、攪拌部材10が塗料収容パン2の底面を押圧しない値とする。
【0026】
また、ブレード部6は、上下方向から見てピックアップロール12と重なっている。
ブレード部往復運動手段8は、ブレード支持部16と、ブレード駆動部18を備えている。
ブレード支持部16は、上部がブレード駆動部18に連結されるとともに、下部が塗料収容パン2に収容された塗料4内に配置される板状の部材であり、厚さ方向をピックアップロール12の軸方向と平行に向けた状態で、ブレード部6を上方から支持している。
ここで、本実施形態では、図1中に示すように、ブレード支持部16が、五つのブレード部6をそれぞれ支持する、五つのブレード支持部16a〜16eから構成されている場合について説明する。
【0027】
また、ブレード支持部16は、ピックアップロール12の軸方向に貫通する貫通孔20を有している。ここで、貫通孔20の形状は、ブレード支持部16のうち、塗料収容パン2に収容された塗料4内に配置される部分の形状に対応した形状とする。
なお、ブレード支持部16の構成を、貫通孔20を有していない構成としてもよい。
ブレード駆動部18は、例えば、駆動源としてエアシリンダー等を備えて形成されており、駆動源を駆動させることにより、ピックアップロール12の軸方向に沿って、各ブレード支持部16を往復運動させる。なお、駆動源としては、エアシリンダー以外に、モータ等を用いてもよい。
【0028】
ピックアップロール12の軸方向に沿って、各ブレード支持部16を往復運動させると、攪拌部材10及びブレード部6が、ピックアップロール12の軸方向に沿って往復運動する。
ここで、攪拌部材10及びブレード部6を往復運動させる方向は、ピックアップロール12の軸方向に平行な方向であってもよく、また、ピックアップロール12の軸方向に対して傾斜した方向であってもよい。
【0029】
また、ブレード駆動部18は、駆動源を駆動させることにより各ブレード支持部16を往復運動させる際に、変位方向の両端側に配置されたブレード支持部16a及びブレード支持部16eが、それぞれ、塗料収容パン2の壁面と近接する位置まで移動するように、駆動源を駆動させる。これにより、各ブレード支持部16a〜16eが往復運動する幅を、ピックアップロール12の幅方向長さ以上として、五つのブレード部6が往復運動する幅を、ピックアップロール12の幅方向長さ以上としている。
攪拌部材10は、ブレード部6の下方に配置されてブレード部6に取り付けられており、塗料4中において、塗料収容パン2の底面と近接または接触する位置に配置されている。なお、ブレード部6に攪拌部材10を取り付ける手段としては、特に限定するものではないが、例えば、溶接や接着等による固着や、針金やボルト等による固定等を用いる。
【0030】
また、攪拌部材10は、複数の開口部を有する平板状の部材であり、塗料収容パン2の底面に沿って配置されている。
なお、攪拌部材10としては、複数の開口部を有する平板状の部材であればよい。開口部の大きさは特に限定するものではないが、開口部が小さすぎると攪拌能力が不足したり、攪拌部材の下部に沈殿が堆積したりする場合があるため、開口部面積が50%以上であることが好ましい。これは、金属製または樹脂製の網形状部材の場合は、特に好適である。本実施形態では、攪拌部材10として、SUS等の金属材料を用いて形成された金網(各開口部の形状が正方形であり、また、各開口部を形成する一辺の長さ10[mm]である金網)を用いた。攪拌部材10の材質は特に限定するものではないが、塗料に対しての耐薬品性と摩耗に耐える部材が好ましく、金属製や樹脂製が例示される。
【0031】
また、攪拌部材10は、ブレード部6と同様、ピックアップロール12の軸方向と直交または略直交する方向に延在しており、攪拌部材10の延在方向(ピックアップロール12の軸方向と直交または略直交する方向)への長さLnは、塗料収容パン2の、ピックアップロール12の軸方向と直交する方向への長さLpに対して、50%以上の長さとなっている。すなわち、ブレード部6と同様、攪拌部材10の延在方向への長さLnと、塗料収容パン2の、ピックアップロール12の軸方向と直交する方向への長さLpとの間には、Ln≧0.5Lpの関係式が成立している。
【0032】
ここで、塗料収容パン2の、ピックアップロール12の軸方向と直交する方向への長さLpに対する、攪拌部材10の延在方向への長さLnの上限値は、100[%]未満の長さとなっている。これにより、塗料収容パン2と攪拌部材10との接触を防止している。
また、攪拌部材10は、ブレード部6と同様、上下方向から見てピックアップロール12と重なっている。
【0033】
(動作)
以下、図1及び図2を参照し、本実施形態の塗料攪拌装置1を用いて、塗料収容パン2に収容された塗料4を攪拌する際の動作について説明する。
塗料攪拌装置1を用いて、塗料収容パン2に収容された塗料4を攪拌する際には、各ブレード部6及び攪拌部材10を塗料収容パン2に収容された塗料4内に配置した状態で、ブレード駆動部18が備える駆動源を駆動させて、各ブレード支持部16a〜16eを、ピックアップロール12の軸方向に沿って往復運動させる。これにより、各ブレード部6及び攪拌部材10を、ピックアップロール12の軸方向に沿って往復運動させる。
【0034】
このとき、ブレード駆動部18は、ブレード支持部16a及びブレード支持部16eが、それぞれ、塗料収容パン2の壁面と近接する位置まで移動するように、駆動源を駆動させて、五つのブレード部6が往復運動する幅を、ピックアップロール12の幅方向長さ以上とする。
また、攪拌部材10は、複数の開口部を有する平板状の部材である金網であり、塗料収容パン2の底面と面同士が対向しているとともに、塗料4中において、塗料収容パン2の底面に沿って配置されている。
【0035】
このため、例えば、塗料4が塗料収容パン2に収容されてから数時間経過している状態等、塗料4が含む比重の大きい顔料(本実施形態では、ニッケル)が、塗料収容パン2に沈殿している状態において、この沈殿している比重の大きい顔料を、攪拌部材10及び各ブレード部6、特に攪拌部材10により、ピックアップロール12の幅方向長さ以上の幅で攪拌することとなる。
【0036】
塗料収容パン2に沈殿している比重の大きい顔料を、攪拌部材10及び各ブレード部6により攪拌すると、塗料収容パン2に沈殿している比重の大きい顔料が塗料4中に巻き上げられて、塗料4中へ均一に拡散する。
塗料収容パン2に沈殿している比重の大きい顔料が、塗料4中へ均一に拡散すると、塗料4中において、塗料成分が均一に混合される。すなわち、塗料収容パン2に収容された塗料4を攪拌部材10及び各ブレード部6により攪拌することにより、塗料4中における、ニッケルの沈殿を抑制することが可能となる。
このため、帯状材料に塗料4を塗装する際には、アプリケーターロール14の周面には、成分が均一に混合された塗料4が転写されるため、形成される塗装皮膜は、成分が均一化された塗装皮膜となる。
【0037】
(第一実施形態の効果)
以下、本実施形態の効果を列挙する。
(1)本実施形態の塗料攪拌装置1では、塗料4中において塗料収容パン2の底面と近接または接触する位置に配置され、複数の開口部を有する平板状の部材である攪拌部材10を、ブレード部6と共に、ピックアップロール12の軸方向に沿って往復運動させることが可能となる。
【0038】
このため、攪拌部材10により、塗料収容パン2に収容された塗料4を、塗料収容パン2の底面と近接または接触する位置において攪拌することが可能となるため、塗料収容パン2の底面に沈殿している金属粉末を、塗料4中へ均一に拡散させることが可能となる。
その結果、塗料4が、比重の大きい顔料等を含む場合であっても、帯状材料に形成する塗装皮膜の成分を、均一化することが可能となる。
【0039】
(2)本実施形態の塗料攪拌装置1では、攪拌部材10を金網とすることで、金網の線材部分により、塗料収容パン2の底面に沈殿している金属粉末等の比重の大きい顔料を、塗料4中へ巻き上げることが可能となる。これに加え、塗料収容パン2の底面から巻き上げた金属粉末等の比重の大きい顔料が、金網の開口部を通過するため、塗料4を効率的に攪拌することが可能となる。
その結果、複数の開口部を有する平板状の部材である攪拌部材10を、一般的な構成である金網を用いて、容易に形成可能となるとともに、塗料4が、ニッケル等や、比重の大きい金属粉末等、比重の大きい顔料を含む場合であっても、帯状材料に形成する塗装皮膜の成分を、均一化することが可能となる。
【0040】
(3)本実施形態の塗料攪拌装置1では、ブレード部6及び攪拌部材10が、上下方向から見てピックアップロール12と重なった構造とすることにより、塗料収容パン2に収容された塗料4のうち、ピックアップロール12の下方に存在する塗料4を、ブレード部6及び攪拌部材10により、効率的に攪拌することが可能となる。
その結果、ピックアップロール12により塗料収容パン2から持ち上げられる塗料4を、塗料収容パン2の底面に沈殿しやすい金属粉末等の比重の大きい顔料が均一に拡散している塗料4とすることが可能となる。
【0041】
(4)本実施形態の塗料攪拌装置1では、ブレード部6及び攪拌部材10の延在方向への長さ(Lb、Ln)を、塗料収容パン2のピックアップロール12の軸方向と直交する方向への長さ(Lp)に対して、50[%]以上の長さとしている。
このため、ピックアップロール12の軸方向に沿って往復運動するブレード部6及び攪拌部材10により、塗料収容パン2に収容された塗料4の50[%]以上を、直接的に攪拌することが可能となる。
その結果、塗料収容パン2に収容された塗料4の50[%]以上を、ブレード部6及び攪拌部材10により、効率的に攪拌することが可能となる。
【0042】
(5)本実施形態の塗料攪拌装置1では、攪拌部材10をブレード部6の下方に配置し、さらに、塗料収容パン2に収容された塗料4の液面とブレード部6との距離(Rb)を、塗料収容パン2に収容された塗料4の深さ(D)に対して、70[%]以上の距離としている。
その結果、塗料収容パン2に収容された塗料4中において、ブレード部6及び攪拌部材10が配置される位置を、塗料4の液面から離れた位置とすることが可能となり、塗料4の攪拌時において発生する液面の荒れを、抑制することが可能となる。これは、ブレード支持部16が有する貫通孔20によっても、発揮される効果である。
【0043】
(応用例)
以下、本実施形態の応用例を列挙する。
(1)本実施形態の塗料攪拌装置1では、攪拌部材10を金網で形成したが、これに限定するものではなく、攪拌部材10を、例えば、パンチングメタル等の多孔板で形成してもよい。
(2)本実施形態の塗料攪拌装置1では、ブレード部6及び攪拌部材10が、上下方向から見てピックアップロール12と重なっている構成としたが、これに限定するものではなく、ブレード部6及び攪拌部材10が、上下方向から見てピックアップロール12と重なっていない構成としてもよい。
【0044】
(3)本実施形態の塗料攪拌装置1では、ブレード部6及び攪拌部材10の延在方向への長さ(Lb、Ln)を、塗料収容パン2のピックアップロール12の軸方向と直交する方向への長さ(Lp)に対して、50[%]以上の長さとしたが、これに限定するものではない。すなわち、ブレード部6及び攪拌部材10の延在方向への長さ(Lb、Ln)を、塗料収容パン2のピックアップロール12の軸方向と直交する方向への長さ(Lp)に対して、50[%]未満の長さとしてもよい。
【0045】
(4)本実施形態の塗料攪拌装置1では、塗料収容パン2に収容された塗料4の液面とブレード部6との距離(Rb)を、塗料収容パン2に収容された塗料4の深さ(D)に対して、70[%]以上の距離としたが、これに限定するものではない。すなわち、塗料収容パン2に収容された塗料4の液面とブレード部6との距離(Rb)を、塗料収容パン2に収容された塗料4の深さ(D)に対して、70[%]未満の距離としてもよい。
【0046】
(実施例)
以下、図1及び図2を参照して、本発明例の塗料攪拌装置1が奏する効果を検証した結果について説明する。
なお、本実施例では、上述した第一実施形態と同様、上述した第一実施形態と同様、塗料を、ニッケル粉末を含む塗料とした。
本発明例の塗料攪拌装置1は、その構成を、上述した第一実施形態と同様の構成とした。
一方、比較例の塗料攪拌装置は、その構成を、攪拌部材10を備えていない点を除き、上述した第一実施形態と同様の構成とした。
【0047】
そして、本発明例及び比較例の塗料攪拌装置を用いて、それぞれ、塗料収容パン2に収容された塗料4を攪拌し、この攪拌した塗料4を上述した帯状材料に塗装する作業を行った。
その結果、比較例の塗料攪拌装置を用いた作業では、塗装皮膜の成分が均一化されていないことにより、製品として出荷できない塗装鋼板が、約1.6%発生した(塗装後の皮膜で、皮膜成分中に含有するべきニッケル量を100としたときに80未満となっている場所がある場合に製品として出荷できないと判断した)。
【0048】
これに対し、本発明例の塗料攪拌装置1を用いた作業では、塗装皮膜の成分が均一化されていないことにより、製品として出荷できない塗装鋼板が、約0.21%発生した。
したがって、本発明例の塗料攪拌装置1では、比較例の塗料攪拌装置と比較して、製品として出荷できない塗装鋼板の発生率を、減少させることが可能であることが確認された。
これにより、本発明例の塗料攪拌装置1では、比較例の塗料攪拌装置と比較して、製造効率の向上、製造コストの低減、資源の節約が可能となることが確認された。
【符号の説明】
【0049】
1 塗料攪拌装置
2 塗料収容パン
4 塗料
6 ブレード部
8 ブレード部往復運動手段
10 攪拌部材
12 ピックアップロール
14 アプリケーターロール
16 ブレード支持部
18 ブレード駆動部
20 貫通孔
Lb ブレード部6の延在方向への長さ
Lp 塗料収容パン2の、ピックアップロール12の軸方向と直交する方向への長さ
Rb 塗料収容パン2に収容された塗料4の液面とブレード部6との距離
D 塗料収容パン2に収容された塗料4の深さ
Ln 攪拌部材10の延在方向への長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料収容パンに収容された塗料中に配置されるブレード部と、
前記塗料中に少なくとも一部が浸漬するピックアップロールの軸方向に沿って前記ブレード部を往復運動させるブレード部往復運動手段と、を備えたロールコーティング設備における塗料攪拌装置であって、
前記ブレード部に取り付けられ、前記塗料中において前記塗料収容パンの底面と近接または接触する位置に配置された攪拌部材を備え、
前記攪拌部材は、複数の開口部を有する平板状の部材であり且つ前記塗料収容パンの底面に沿って配置されていることを特徴とするロールコーティング設備における塗料攪拌装置。
【請求項2】
前記攪拌部材は、金属製または樹脂製の網形状部材であることを特徴とする請求項1に記載したロールコーティング設備における塗料攪拌装置。
【請求項3】
前記ブレード部及び前記攪拌部材のうち少なくとも攪拌部材は、上下方向から見て前記ピックアップロールと重なっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載したロールコーティング設備における塗料攪拌装置。
【請求項4】
前記ブレード部及び前記攪拌部材は、前記ピックアップロールの軸方向と直交または略直交する方向に延在し、
前記ブレード部及び前記攪拌部材の前記延在方向への長さは、前記塗料収容パンの前記ピックアップロールの軸方向と直交する方向への長さに対して50%以上の長さであることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載したロールコーティング設備における塗料攪拌装置。
【請求項5】
前記攪拌部材は、前記ブレード部の下方に配置され、
前記塗料収容パンに収容された前記塗料の液面と前記ブレード部との距離は、前記塗料収容パンに収容された前記塗料の深さに対して70%以上の距離であることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載したロールコーティング設備における塗料攪拌装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−115723(P2012−115723A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265229(P2010−265229)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】