説明

ロール・クリーニングブラシの造形方法とその方法により形成されたクリーニングブラシ

この発明は、金属、特にアルミニウムの熱間圧延ラインで使用するための、特に作業ロール用の、ブラシの外被(2)を備えたロール・クリーニングブラシ(1)の造形方法に関し、このブラシは、端部側を軸支された本体部(3)とその上に固定されたブラシの外被(2)とを有し、このブラシの外被を、ロール(4)に対して、調節可能な力又は規定の挿入深度で押し付けて、クリーニング作用を実現するものである。一様な押圧力を実現するために、クリーニングブラシ(1)又はブラシの外被(2)の形状を、ロール(4)の形状に適合させて、ロールとブラシの外被又はクリーニングブラシとの間に、ロールのロール面の長さ全体に渡って、出来る限り一様な押圧力が加わるようにする。また、この発明は、相応の輪郭を持つクリーニングブラシ(1)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属、特にアルミニウムの熱間圧延ラインで使用するための、特に作業ロール用の、ブラシの外被を備えたロール・クリーニングブラシの造形方法であって、このブラシは、端部側を軸支された本体部とその上に固定されたブラシの外被とを有し、このブラシの外被を、ロールに対して、調節可能な力又は規定の挿入深度で押し付けて、クリーニング作用を実現する方法、並びにこの方法にもとづき製作したクリーニングブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム熱間圧延ラインでは、圧延プロセスの間に、少なくとも作業ロールをクリーニングする必要がある。そのために、回転するブラシを作業ロールに押し付けて、乳剤の残留物、焼き付いた圧延物や酸化物の粒子などに対して、ロールを綺麗に保っている。そのような作業ロールのクリーニングは、圧延された板の満足すべき、一様な表面品質を保証するためには不可欠である。
【0003】
頻繁に用いられるブラシの形式は、スチールブラシである。この形式のブラシの外被は、比較的大きな剛性を持っており、そのためロールの輪郭に非常に不完全にしか適合させることができない。
【0004】
このスチールブラシは、支持用の本体部とその上に固定されたブラシの外被、所謂襞とから構成されている。この襞は、波形のスチール線から成るブラシの毛で構成されている。クリーニング作用を実現するために、所定の力又は規定のスチール線の挿入深度で、ブラシをロールに対して押し付ける。この場合、当然のことながら、ブラシは撓むこととなる。円筒形の作業ロールと円筒形のブラシ形状を使用する場合、ブラシの撓みのために、その周縁領域ではより大きな、中央ではより小さな押圧力が生じることとなる。
【0005】
しかし、特に作業ロールに、特殊なカット面が施されている場合、ブラシを押し付ける際に、ブラシの作業ロールの長さ全体への接触が起こる前に、先ずは作業ロールとスチールブラシの間の隙間が無いようにしなければならない。しかし、この場合に生じる押圧力は、必然的に一様ではない。押圧力が大きな領域では、ブラシの毛の磨耗がより大きくなる可能性がある。それに対して、押圧力が小さい領域では、クリーニング作用が場所的に弱くなり、接触しなくなることまで予想される。それぞれの場合において、ロール面の長さ方向及び使用時間に関する条件が一様ではなく、そのことは、多くのアルミニウム合金及びその他の非鉄金属を圧延する際に、表面品質の観点から不利となる。なぜなら、輪郭を持つロールの使用範囲が広くなり、それと関連して作業ロール面の長さ方向に関する直径の違いが大きくなるとともに、この問題又は不均一さが増大するためである。
【0006】
板を熱間圧延及び冷間圧延する主要な目的は、圧延製品に対する要求を完全に満たす外面を良好な平坦性を持つ形で形成することに有る。しかしながら、板の外面は、例えば、熱によるクラウニング、圧延による磨耗、圧延力など、多くの要因により影響を受ける。従って、必要な事は、作業ロールのクラウニングを絶えず適合させることにある。そのためには、クラウニングを連続的に変化する(Continuously Variable )ロールが、最適な調節機構であることが分かる。この場合、例えば、作業ロールは、ほぼS字形状にカット加工される。両方の作業ロールは、同じカット面を有し、上側のロールのカット面は、下側のロールに対して180°ずらされており、その結果これらのロールは、互いに補完し合って、ロールの隙間の対称的な輪郭が得られるものである。
【0007】
特許文献1は、特にアルミニウムを熱間圧延するための圧延機の中の作業ロールにおいて、ブラシロールを作動させるための装置を開示しており、その際ブラシロールは、作業ロールの回転とは逆に回転可能であり、かつ作業ロールに対して平行に並進して動くことが可能な形で、旋回可能な支持体上に両側を軸支されている。各ブラシロールの支持体の旋回位置は、作業ロールのチョックに置かれている。この支持体は、制御可能な操作部品と解除可能な保持部品の間に有る旋回レバーを備えており、その際この操作部品は、作業ロールに関するバランス用ブロック又は曲げ用ブロックに、この保持部品は、作業ロールのチョックに配置されている。
【0008】
特許文献2は、少なくとも一対の作業ロールと一対の支持ロールを有する圧延装置において、アルミニウム板を冷間圧延するための方法を記載しており、その際各支持ロールは、作業ロールと接触するように配置されている。各支持ロールに対して、クリーニングブラシが配備されており、このブラシは、支持ロールに接触させて、ブラシをかけるために、チャネル装置の開放端に配置されている。この方法は、次の更なる措置によって特徴付けられる。
【0009】
・ブラシを支持ロールとは反対の方向に回転させている。
・チャネル装置の開放端に空気を吸入しており、その際空気の吸入速度は、少なくとも5m/秒であり、かつチャネル装置は、フラップ部分と押し出し及び引き戻すための機構を備えている。
・フラップ部分の位置を調整して、チャネル装置の開放端を、支持ロールから所定の間隔を空けて直立した形で保持している。
【0010】
特許文献3は、二つの平行なアームを持つ支持部品上に回転可能な形で配置されたクリーニングロールを備えた、ロールを清掃して、磨くための装置を記載しており、これらのアームは、内側の端部と外側の端部の間に延びており、クリーニングロール上の設置位置と間隔を空けた位置との間を移動することが可能であり、回転を制御するための手段を有する。これら両方の支持アームの外側の端部は、ロールの軸に対して平行であり、それぞれ二つの一直線に並んだ固定軸受上に軸支されており、その際回転するロールは、駆動部の軸上で旋回可能な運動連鎖によって駆動される。
【0011】
特許文献4は、圧延板材の板面品質の悪化の問題及びアルミニウム板材の圧延時におけるロールコーティングの問題に関する。これらの問題を解決するために、冷間圧延機において、ブラシロールをワークロールに対して設置し、これと接触させて、それによってワークロールの表面に固着したロールコーティングを除去することを提案している。
【0012】
特許文献5は、ワークロール上へのスケールの付着を防止する課題に関する。解決法として、各ワークロールを清掃するためのブラシロールの構成を提案している。そのために、ブラシロールは、冷却液の通路となる中空部を有し、吹出口が、中空部から放射状に配置されている。
【0013】
【特許文献1】欧州特許明細書第0605833B1号
【特許文献2】欧州特許明細書第0394873B1号
【特許文献3】欧州特許公開明細書第0640412A1号
【特許文献4】特開平9−57313号公報
【特許文献5】特開平10−34210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述した従来技術を出発点として、この発明の課題は、例えば、作業ロールとクリーニングブラシとの間において、作業ロールが任意の輪郭のロール面形状を有する場合でも、ロール面の長さ方向に渡って一様な押圧力が加わるように、クリーニングブラシを構成又はカット加工することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題を解決するために、請求項1の上位概念にもとづく、金属、特にアルミニウムの熱間圧延ラインで使用するための、特に作業ロール・クリーニングブラシの造形方法において、クリーニングブラシ又はブラシの外被の形状を、ロールの形状に適合させて、ロールとクリーニングブラシとの間において、ロール面の長さ方向全体に渡って、特にロールの板幅の領域に関して、出来る限り一様な押圧力が加わるようにすることを提案する。
【0016】
この場合、この方法の実施形態は、クリーニングブラシ又はブラシの外被の形状がロールの形状に極めて適合するようにして、十分なクリーニング作用に対して、最小限の押付け力が加わることができるようにするものである。
【0017】
この場合、別の実施形態では、ブラシの外被又はクリーニングブラシの形状を、ロールの任意の幾何学的形状に応じて、例えば、放物線状のカット面、数学における任意の多項式の関数、指数関数、三角関数等にもとづくカット面に構成する措置を用いることができる。
【0018】
更に、この方法は、目的に適うこととして、経験にもとづくブラシ本体部の撓み及び経験にもとづくロールの熱によるクラウニングを、ブラシ本体部の剛性の影響を考慮に入れて、ブラシの外被の先端を適合する形で対称的に揃えることによって補償することを特徴とする。
【0019】
そして、最後に、この発明による方法は、動作中に、作業ロールを機能条件による長さ分だけ軸方向に動かす場合、クリーニングブラシも、ロール及びそのロール形状に対する相対的な長さ方向の位置を維持するために、有利には同じ長さ分だけ同様に動かすものと規定する。
【0020】
金属、特にアルミニウムの熱間圧延ラインで使用するための、特にこの発明による方法を実施するための、ブラシの外被を備えた、この発明によるクリーニングブラシは、有利には、そのブラシの外被の輪郭が、ロール、特に作業ロールの輪郭に適合するものである。
【0021】
そして、最後に、この発明によるクリーニングブラシは、その端部軸受に、その軸方向に対して動かすための手段を備えた、或いは移動可能な作業ロールと連結された形態に構成される。
【0022】
このクリーニングブラシの別の実施形態は、従属請求項に挙げられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
この発明の詳細、特徴及び利点は、以下における図面に模式的に図示した実施例の説明により明らかとなる。
【0024】
図1は、ロールの隙間で圧延板8を圧延している一対の作業ロール4,4’を図示している。ロールの隙間8から出て来る作業ロール4,4’の表面領域は、逆方向に回転するクリーニングブラシ1,1aによって掻き取られて、乳剤の残留物、焼き付いた圧延物や酸化物の粒子などの汚れを清掃される。図面は、それぞれ作業ロール4,4’とクリーニングブラシ1,1aの前側を図示している。作業ロールとクリーニングロールは、円筒形に構成されている。
【0025】
図2は、円筒形のクリーニングブラシ1と協働する作業ロール4の側面図を図示している。クリーニングブラシは、両側を押付け力FB /2で作業ロール4に押し付けられており、それによって撓みDが生じている。更に図2が示す通り、クリーニングブラシは、ブラシの外被2を備えた、有利にはスチールから成る本体部3を有する。このブラシの外被は、波形のスチール線から構成されている。
【0026】
図2aは、それぞれ作業ロール4とクリーニングブラシ1との間の押圧力が変化した場合、即ち、柔らかいブラシ1’と硬いブラシ、特にスチール線のブラシ1''とを比較した場合における撓みのグラフを示している。
【0027】
図3aのグラフは、図3において円筒形のクリーニングブラシ1とS字形状の輪郭を持つ作業ロール4と組み合わせた場合に、押圧力が高くなる領域6とそれに続く押圧力が低くなり、それに応じてクリーニング作用が弱まる領域7を図示している。
【0028】
それとは異なり、グラフ4aは、クリーニングブラシ1の長さ方向に渡って一様な押圧力を示している。
【0029】
このような最適な押圧力は、この発明にもとづき、S字形状の輪郭を持つ作業ロール4をS字形状の輪郭を持つクリーニングブラシ1と協働する形で構成することによって達成される。この場合、ブラシのカット面5,5’の形状が作業ロール4の形状に極めて適合するようにして、十分なクリーニング作用に対して、最小限の押付け力FB を選定することができるようにしている。この場合、ブラシの外被2の形状は、作業ロール4の幾何学的形状に応じて、任意選択により、放物線状のカット面、任意の多項式、指数関数、三角関数等にもとづくカット面に構成することができる。
【0030】
この場合、経験にもとづくブラシ本体部3の撓みD及び経験にもとづく作業ロール4の熱によるクラウニングを、ブラシ本体部3の剛性の影響を考慮に入れて、ブラシの外被2の先端を適合する形で対称的に揃えることによって補償することは、特に目的に適ったことである。
【0031】
動作中に、作業ロール4を機能条件による長さ分だけ軸方向に動かす場合、クリーニングブラシも、作業ロール及びそのロール形状に対して、その相対的な長さ方向の位置を維持するために、有利には同じ長さ分だけ同様に動かすか、ブラシの押圧力を変化させる、或いはこれらの両方を実施する。この金属、特にアルミニウムの熱間圧延ラインで使用するためのクリーニングブラシは、波形のスチール線から成るブラシの外被2を備えている。
【0032】
クリーニングブラシの輪郭が、初めから作業ロールの輪郭と適合しており、作業ロールが軸方向に動く各位置において、この適合が維持されるので、常に極めて一様な押圧力とそのため作業ロールの最適なクリーニングが実現されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】円筒形のクリーニングブラシと協働する二つの円筒形の作業ロールの前面図
【図2】円筒形の作業ロールと協働して使用した際の円筒形のクリーニングブラシの撓み
【図2a】図2のクリーニングブラシの押圧力のグラフ
【図3】S字の輪郭を持つ作業ロールを円筒形のブラシと協働する形で構成した場合の作業ロールとクリーニングブラシ間における押圧力の強度の違い
【図3a】図3のブラシにおいて磨耗がより大きくなる領域
【図4】作業ロールとクリーニングブラシの両方をS字形状の輪郭で構成した作業ロールとクリーニングブラシ
【図4a】図4における作用する圧力のグラフ
【符号の説明】
【0034】
1,1a クリーニングブラシ
1’ 柔らかいブラシ
1'' 硬いブラシ、特にスチール線のブラシ
2 ブラシの外被
3 ブラシの本体部
4,4’ 作業ロール
5,5’ ブラシのカット面
6 押圧力が高くなる領域
7 押圧力が低くなり、それに応じてクリーニング作用が弱まる領域
8 圧延板、ロールの隙間
D ブラシの撓み
B 押圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属、特にアルミニウムの熱間圧延ラインで使用するための、特に作業ロール用の、ブラシの外被(2)を備えたロール・クリーニングブラシ(1)の造形方法であって、このブラシは、端部側を軸支された本体部(3)とその上に固定されたブラシの外被(2)とを有し、このブラシの外被を、ロール(4)に対して、調節可能な力又は規定の挿入深度で押し付けて、クリーニング作用を実現する方法において、
ブラシの外被(2)の形状又はクリーニングブラシ(1)の形状を、ロール(4)の形状に適合させて、ロールとブラシの外被又はクリーニングブラシとの間に、ロール面の長さ方向に渡って、有利にはロールの板幅の領域に対して、極めて一様な押圧力が加わるようにすることを特徴とする方法(図4a)。
【請求項2】
ブラシの外被(2)又はクリーニングブラシ(1)の形状が、ロール(4)の形状に極めて適合するようにして、十分なクリーニング作業に対して、最小限の押付け力FB を加えることができるようにすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ブラシの外被(2)又はクリーニングブラシ(1)の形状を、ロール(4)の任意の幾何学的形状に応じて、例えば、放物線状のカット面、数学における多項式の関数、指数関数、三角関数等にもとづくカット面に構成することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
経験にもとづくブラシ本体部(3)の撓み及び経験にもとづくロール(4)の熱によるクラウニングを、ブラシ本体部(3)の剛性の影響を考慮に入れて、ブラシの外被(2)の先端を適合する形で対称的に揃えることによって補償することを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
動作中に、作業ロール(4)を機能条件による長さ分だけ軸方向に動かす場合、クリーニングブラシ(1)も、ロール及びそのロールの形状に対して、その相対的な長さ方向の位置を維持するために、有利には同じ長さ分だけ同様に動かすことを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
作業ロール(4)を軸方向に動かす場合、ブラシの押圧力を、変化したロールの実効的な幾何学的形状に適合させることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
金属、特にアルミニウムの熱間圧延ラインで使用するための、特に請求項1から6までのいずれか一つに記載の方法を実施するための、ブラシの外被(2)を備えたクリーニングブラシにおいて、
このブラシ又はこのブラシの外被(2)が、ロール、特に作業ロール(4)の輪郭に適合した輪郭を有することを特徴とするクリーニングブラシ。
【請求項8】
クリーニングブラシ(1)又はそのブラシの外被(2)が、放物線、任意の多項式、指数関数、三角関数等にもとづくブラシ形状(5)を有することを特徴とする請求項7に記載のクリーニングブラシ。
【請求項9】
当該のクリーニングブラシが、その端部軸受において、その軸方向に動かすための手段を備えているか、或いは移動可能な作業ロールと連結されていることを特徴とする請求項7又は8に記載のクリーニングブラシ。
【請求項10】
当該のクリーニングブラシを動かす手段が、ロール、特に作業ロールを動かす手段と、有利には同期する形で連結されていることを特徴とする請求項9に記載のクリーニングブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図2a】
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【図3】
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【図3a】
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【図4】
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【図4a】
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【公表番号】特表2007−533454(P2007−533454A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520691(P2006−520691)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006760
【国際公開番号】WO2005/018844
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・デマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)