説明

ロール状シート等の繰り出し装置に使用する緩み止め具及び該緩み止め具を備えたロール状シート等の保持構造

【課題】包装作業時に高速且つ間欠的にロールの回転停止及び再回転を繰り返しても、ロールが固定位置から動くのを防止し、また、使用済みロールの交換が容易に行うことができる、ロールの繰り出し装置に用いる緩み止め具、及び該緩み止め具を用いてシートの繰り出しを安定させるロールの保持構造を提供する。
【解決手段】ロール保持装置1は、中空円筒の装着体21、装着体21に挿通された軸体220、装着体21に設けられロールを固定する拡縮機構3を備え、ロール9に挿通する保持体2と、保持体2端部に向け次第に小径となる可撓性を有する突出部412と、その間に軸線方向に向け所要間隔で所要数の溝又は隙間が形成された緊締ナット41と、突出部412に向けて次第に径大となり、突出部412外面に被着し押圧して縮径するための押圧部が形成された押圧ナット42を有する緩み止め具4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯管に巻き取られてロール状になっているシート又はフィルム(以下「ロール」という。)の繰り出し装置に使用する緩み止め具及び該緩み止め具を備えたロールの保持構造に関する。更に詳しくは、自動包装機による包装作業時において、高速且つ間欠的にロールの回転停止及び再回転を繰り返しても、ロールを固定する手段(以下「ロール固定手段」という。)が固定位置から動くのを防止し、また、使用済みロールの交換を容易に行うことができるようにする、ロールの繰り出し装置に使用する緩み止め具、及び自動包装機による包装作業時において、保持されたロールからのシートの繰り出しを安定させるロールの保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、合成樹脂製シート又はフィルムのロールを間欠的に繰り出して物品を包装する包装機は既に使用されており、包装機におけるロールの保持機構としては、例えば、特許文献1に記載されたシートロール(本発明のロールに相当する。)巻心脱着装置が挙げられる。
【0003】
特許文献1に示すシートロール巻心脱着装置は、装着軸に螺着している固定ナットを締めることによりスライダをベース側へ前進させ、前進したスライダがクランパを拡大し、拡大したクランパがロール状シート巻心の内面側から押圧して固定する構造である。
【0004】
前記構造を備えることによりロールが装着軸に固定され、固定状態でロールからシートを間欠的に繰り出したとしてもロールが空転しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−302306号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1にかかるシートロール巻心脱着装置を備えた自動包装機を使用して包装作業を行うときには、包装に必要な分のシートを繰り出し、繰り出し後はシートロールの回転が止まるという動作が、高速且つ間欠的に行われる。
【0007】
前記のように、シートロールを回転停止及び再回転させてシートを繰り出す動作を行うと、シートロールにシートロール自身の重みによる軸周方向への慣性力(回転モーメント)が働き、シートロールと接するスライダにも該慣性力が伝わってスライダが追従するように回転し、回転するスライダと固定ナットとの接触面に摩擦が起きる。
【0008】
繰り返し摩擦が起きると、固定ナットの締め付けが徐々に緩んで位置が後退していく。
固定ナットの位置が後退すると、それに伴って、ロール固定手段であるクランパを拡大させ固定状態を保つためのスライダも後退して固定状態を維持できなくなる。
【0009】
この結果、シートロールへのクランパの固定力が弱まってシートロールが空転し、シートのテンションが緩んで、包装のために必要な長さのシートの繰り出しが行われないことがある。また、シートロールへのクランパの固定力が弱まると、シートロールがシートロール巻心脱着装置の軸線方向にずれ、シートの繰り出し位置がずれることもある。前記のような状態では、被包装物を正しく包装することができず、包装後の製品に不良品が混じることになる。
【0010】
前記のような問題発生を防止するためには、作業者は一定の動作回数又は一定時間の経過後ごとに作業を中断し、固定ナットを締め直すか又は緩んでいないかを確認する必要があるが、当該確認作業を頻繁に行うことは煩雑であるばかりか、作業効率の低下を招くという課題がある。
【0011】
(発明の目的)
本発明の目的は、自動包装機による包装作業時において、高速且つ間欠的にロールの回転停止及び再回転を繰り返しても、ロール固定手段が固定位置から動くのを防止し、また、使用済みロールの交換が容易に行うことをできるようにする、ロールの繰り出し装置に使用する緩み止め具を提供することにある。
本発明の他の目的は、自動包装機による包装作業時において、保持されたロールからのシートの繰り出しを安定させる、ロールの保持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。
本発明は、シート又はフィルムを巻いて形成され、中心に両端面を貫通する中空部を備えた芯管又は貫通孔を有するロールの前記中空部内に当該ロールを保持する保持体を通し、当該保持体の端部からナットを締め込んで当該保持体に設けられているロールの固定手段を作動または機能させ、前記保持体にロールを固定するシート又はフィルムの繰り出し装置に使用する緩み止め具であって、緊締ナットと押圧ナットを備え、前記緊締ナットは、保持体の端部に向けて次第に小径となる可撓性を有する突出部を有し、当該突出部には軸線方向に向けて所要間隔で所要数の溝又は隙間が形成されており、前記押圧ナットは、前記突出部に向けて次第に径大となる押圧部が形成されており、前記緊締ナットの突出部の外面に、前記押圧ナットの押圧部の内面を被着させ前記突出部を押圧して縮径する、緩み止め具である。
【0013】
本発明は、シート又はフィルムを巻いて形成され、中心に両端面を貫通する中空部を備えた芯管又は貫通孔を有するロールの前記中空部内に当該ロールを保持する保持体を通し、当該保持体の端部からナットを締め込んで当該保持体に設けられているロールの固定手段を作動または機能させ、前記保持体にロールを固定する自動包装機に用いるロールの装着構造であって、前記装着構造は、ロールの芯管又は貫通孔の内径よりも径小であって、先端が自由端である棒状体であり、ロールの芯管又は貫通孔内へ挿通させて保持する保持体と、保持体の先端側に取着する前記緩み止め具と、を備えており、保持体は、保持体の先端側近傍に設けられ、緩み止め具を取着可能に形成された雄ネジと、保持体の長さ方向中央近傍に設けられ、拡大した拡縮部がロールの芯管又は貫通孔を内側から押圧又は当接して固定する構造のロール固定手段と、を備えており、ロール固定手段は、前記雄ネジと拡縮体の間に配置され、保持体の長手方向にスライド可能に設けられ、スライドすることにより拡縮部の拡縮を調節する拡縮作動体を備えており、ロールの芯管又は貫通孔内の中空部へ保持体を通し、緊締ナットを締めて拡縮作動体をスライドさせて拡縮部を芯管又は貫通孔内で拡大させることによって、保持体にロールを固定した後に、緊締ナットの突出部の外面に、押圧ナットの押圧部の内面を被着させ前記突出部を押圧して縮径させ、突出部を保持体に圧着させるようにした、ロールの装着構造である。
【0014】
前記の緩み止め具又はロールの装着構造では、緊締ナットの全部または突出部の全部あるいは突出部のうち装着軸側と接する面側のいずれかが、可撓性又は弾性を有する合成樹脂で形成されていてもよい。
【0015】
「シート又はフィルム」は、例えば、合成樹脂製のものが挙げられるが、これに限定するものではなく、紙、アルミ箔等の金属、不織布等の包装部材であってもよい。
【0016】
「縮径」の用語は、突出部の内径及び外径が(押圧により)縮小する概念として使用している。
【0017】
「突出部」は、全体が円環状に繋がっていてもよいし、分離した複数の部分が円環状に配置されていてもよい。また、突出部の全体が円環状に繋がっているものについて形成されているものは「溝」であり、突出部が分離した複数の部分が円環状に配置されているものについて形成されているものは「隙間」である。
【0018】
「可撓性又は弾性を有する合成樹脂」としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられ、これらを単独で、または組み合わせて使用することもできる。
【0019】
本発明の作用は以下の通りである。
(1)保持体をロールの芯管又は貫通孔内の中空部へ挿通させ、ロールを保持させる。
【0020】
(2)ロールを保持させた後、保持体の雄ネジに螺着された緊締ナットを締め込む。緊締ナットは保持体基端側に前進しながら保持体に設けられた拡縮作動体を押圧する。
【0021】
(3)押圧された拡縮作動体は、保持体基端側に前進しながらスライドし、ロール固定手段の拡縮部を拡大させる。前記拡大した拡縮部がロールの芯管又は貫通孔内面を押圧するか又は当接し、ロールと保持体が固定状態となる。
【0022】
(4)保持体の雄ネジに螺着された押圧ナットを、緊締ナット側へ締め込む。すると、押圧ナットの嵌合部と緊締ナットの突出部が嵌合し(外嵌めされ)、突出部が(雄ネジの方向へ撓み、かつ、突出部に形成された溝又は隙間の間隔を閉じるようにして)縮径され、保持体の雄ネジを圧接する。圧接した突出部の雄ネジと接する面側と雄ネジの間には摩擦抵抗が生じる状態となる。
【0023】
(5)包装作業を行う。このとき、高速且つ間欠的にロールの回転停止及び再回転させてシートを繰り出す動作が行われる。前記動作が行われると、ロールの重みによる軸周方向への慣性力(回転モーメント)が働き、拡縮作動体へ直接又は間接的に慣性力が加わって拡縮作動体にロールに追従して回ろうとする力が加わることがある。
【0024】
しかし、突出部と雄ネジの間に生じた摩擦抵抗により回り止めがなされ、拡縮作動体の位置を固定するための緊締ナットが緩まないか又は緩みにくい。この結果、拡縮作動体の位置がほぼ固定され、ロールを固定する拡縮体の固定状態がが保持され、ロールへの固定力が弱まることがないか又は弱まりにくいので、ロールが空転しないか又は空転しにくくなり、保持されたロールからのシートの繰り出しが安定する。
【0025】
(6)ロールの交換時には、押圧ナット及び緊締ナットを逆回しして後退させれば、上記作用と逆の作用又は概ね逆の作用によって、ロールが固定状態から解放される。
【0026】
(7)緊締ナットの全部または突出部の全部あるいは突出部のうち装着軸側と接する面側のいずれかが、可撓性又は弾性を有する合成樹脂で形成されている場合は、緊締ナットで芯管を保持体に固定した後に、押圧ナットを突出部に嵌合させ前進させて突出部を縮径させると、突出部は保持体又は雄ネジとより密接に圧接し、突出部と保持体又は雄ネジの間に生じる摩擦抵抗がより大きくなり、更に高い回り止め力が生じる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、次の効果を奏する。
(1)緩み止め具によれば、包装作業時において高速且つ間欠的にロールを回転停止及び再回転させてシートを繰り出す動作を行った場合でも、緊締ナットに生じた回り止め効果によってロールが空転しないか又は空転しにくく、ロールからのシートの繰り出しが安定する。また、従来のように、作業者が一定時間毎に緊締ナットを締め直す手間も省くことができる。
【0028】
(2)ロールの装着構造によれば、包装作業時において高速且つ間欠的にロールを回転停止及び再回転させてシートを繰り出す動作を行った場合でも、緊締ナットに生じた回り止め効果によってロールが空転しないか又は空転しにくく、ロールからのシートの繰り出しが安定する。また、従来のように、作業者が一定時間毎に緊締ナットを締め直す手間も省くことができる。
【0029】
(3)更に、前記の緩み止め具又はロールの装着構造において、緊締ナットの全部または突出部の全部あるいは突出部のうち装着軸側と接する面側のいずれかが、可撓性又は弾性を有する合成樹脂で形成されたものである場合には、更に高い回り止め効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るロール保持装置の斜視説明図。
【図2】図1に示すロール保持装置の縦断面図。
【図3】図1に示すロール保持装置の緩み止め具の一部を切り欠いた斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態を図1乃至図3に基づき更に詳細に説明する。
ロール保持装置1は、ロール9の芯91内に挿通させて保持する保持体2と、保持体2の先端側(自由端側)に取着する緩み止め具4を備えている。
【0032】
保持体2は、中空円筒の装着体21と、装着体21の内部に回転可能に挿通された棒状の軸体220と、装着体21の長さ方向中央近傍に設けられたロール固定手段である拡縮機構3と、を備えている。なお、拡縮機構3を含む保持体2は、その外径がロール9の芯91の内径よりも径小に設けられている。
【0033】
装着体21の長手方向略中央部から基部側にかけての箇所には、先端側よりも径大である装着体径大部212が形成されている。また、装着体21の長手方向基部側において装着体径大部212よりも更に径大であるプーリー部214が形成されている。装着体21の先端側周面には、緩み止め具4を取着可能な外径の雄ネジ210が形成されている。
【0034】
軸体220は装着体21よりも長く形成されており、軸体220の両端は装着体21の両端から所要長さ突出している。
【0035】
装着体21から突出している軸体220先端側は、径小部が形成され、該径小部にハンドル222が固着されている。また、軸体220基端側は、プーリー部214内に位置する箇所を含めて、自動包装機本体(図示省略)へ螺着するための雄ネジ224が形成されている。
【0036】
なお、軸体220は、装着体21の先端側及び装着体径大部212内において、軸受(符号省略)により回転可能に支持されている(図2参照)。
【0037】
保持体2の基端側(図1で左側)には、着脱可能なスペーサー110が配置されている。
スペーサー110は、装着体21の装着体径大部212周面及びロール9の芯91の内径よりも径大に形成された筒状体であって、ロール9が直接プーリー部214に接しないよう所要の高さに形成されている(図1及び図2参照)。
【0038】
また、スペーサー110は、拡縮機構3がその固定機能を発揮できる取付位置へロール9の芯91を位置させるためのものであり、保持するロール9の幅(芯91の長さ)に応じて、異なる幅に形成された他のスペーサー(図示省略)と適宜交換することができる。
【0039】
装着体21の外周面には拡縮機構3が設けられている。
拡縮機構3は、装着体21外周面より径大に形成された筒状の拡縮基体310と、基端側が拡縮基体310に取着された拡縮部である複数の棒状の拡縮体320と、装着体21の先端側に取着されスライドする拡縮作動体350と、拡縮作動体350と拡縮基体310の間に配置された圧縮コイルバネ340と、拡縮体320の基端側外周面に取着された弾性リング330と、を備えている。
【0040】
各拡縮体320は、四角の棒体であって、その長手方向が保持体2の長手方向軸線と同方向になるよう配置されており、拡縮基体310の外周面に等間隔で4箇所に設けられている。
【0041】
各拡縮体320は、拡縮基体310へ取着ピン322及び弾性リング330によって取着されており、後述する拡縮作動体350の前進によって、各拡縮体320の先端側が装着体21の外周面から離れるように(即ち、ハンドル222方向から見て、拡縮体320先端側が保持体2の中心軸と反対側へ向かって放射状に開くように)構成されている。
【0042】
取着ピン322による取着箇所は2箇所であり、各拡縮体320の長手方向略中央部と拡縮基体310の先端側を取着する箇所と、各拡縮体320の長手方向基端部と拡縮基体310の基端側を取着する箇所である。
弾性リング330は、環状の結束ゴムであって、各拡縮体320外周の前記2箇所の取着ピン322取着箇所の間に、等間隔で3箇所に配置されている。
【0043】
拡縮作動体350は、装着体21外周面に沿って保持体2の長手方向へ前後にスライド可能な筒状体であって、外周面が保持体2先端側から各拡縮体320側に向かって徐々に外径が窄まった形状(テーパー状)に形成されている。
【0044】
圧縮コイルバネ340の中空部分には装着体21が挿通されており、拡縮作動体350の基端側(即ち、窄まった末端部)と拡縮基体310の先端側の間に巻着状態で配置されている。
【0045】
図3を参照する。
緩み止め具4は、装着体21の雄ネジ210に取着されるものであって、拡縮作動体350側に配置される緊締ナット41と、雄ネジ210の先端側に配置される押圧ナット42と、を備えている。
【0046】
緊締ナット41には、ネジ孔開口部の周囲にネジ孔410側とは反対側へ突設された突出部である、複数の締付片412が形成されている。隣り合う締付片412の間には、雄ネジ210中心軸と同一の軸線方向へ、所要幅の隙間(スリット)が設けられている。
【0047】
各締付片412は、その外周面側が基端側から先端側に向かって厚さが薄くなる形状(テーパ状)に形成されており、その内周面にはネジ孔410から連続するネジ溝部414が設けられている。なお、前記のネジ溝部414のネジのピッチは、雄ネジ210のネジ溝と噛み合うように同じピッチに形成されている。
【0048】
押圧ナット42には、内径がネジ孔よりも径大であって、緊締ナット41側の開放端から奥側(図2においてハンドル222側)に向かって窄まった形状(テーパ状)の開口空間部であって締付片412群に外嵌めされる、嵌合部422が形成されている。なお、嵌合部422の内面部は、締付片412群に外嵌めした際に押圧して縮径させるべく、各締付片の外周面の周径よりもやや狭く形成されている。
【0049】
本実施の形態においては、前記拡縮体は4箇所に設けられているが、設けられる拡縮体の数は当該数に限定されるものではなく、1以上3以下であってもよいし、5以上であってもよい。
【0050】
また、本実施の形態においては、前記弾性リングは3箇所に配置されているが、設けられる弾性リングの数は当該数に限定されるものではなく、1又は2であってもよいし、4以上であってもよい。また、図面では弾性リングは環状の結束ゴムであるが、幅広の帯状であってもよい。
【0051】
本実施の形態において、前記ロール保持装置1は、硬質の合成樹脂で形成されたスペーサー110、ハンドル222及び拡縮作動体350と、ゴム製の弾性リング330を除き、各構成部品は金属製であるが、これに限定するものではなく、例えば、スペーサー、ハンドル及び拡縮作動体を金属その他の公知素材で形成しても良いし、スペーサー、ハンドル及び拡縮作動体以外の他の構成部品を合成樹脂その他の公知素材で形成してもよい。
【0052】
また、本実施の形態において、前記緩み止め具4は、緊締ナット41、押圧ナット41共に金属製であるが、これに限定するものではなく、例えば、緩み止め具の緊締ナットの全部、または、締付片の全部、あるいは、締付片のネジ孔側の面若しくは設けられたネジ溝が、可撓性又は弾性を有する合成樹脂で形成されたものであっても良い。
【0053】
(作 用)
図1乃至図3を参照してロール保持装置1の作用を説明する。
(1)ロール保持装置1の保持体2へスペーサー110を取着し、その後に保持体2にロール9の芯91内へ挿通させて、ロール9を保持させる。
【0054】
(2)ロール9を保持させた後、まず、拡縮作動体350を嵌着し、緩み止め具4の緊締ナット41を装着体21の先部側の雄ネジ210に螺着する。緊締ナット41を締め込むと、緊締ナット41は装着体21基端側に前進しながら装着体21に設けられた拡縮作動体350を押圧する。
【0055】
(3)押圧された拡縮作動体350は基端側へ押し込まれ、装着体21に沿って装着体21基端側にスライド(前進)する。更に拡縮作動体350が前進すると、拡縮体320側の拡縮作動体350端部と拡縮体320の先端に接触する。
【0056】
接触した前記拡縮作動体350端部は、拡縮体320先端の下側に潜り込むようにして前進し、拡縮体320先端は、スライドする拡縮作動体350の基端側である窄まった箇所である傾斜面(テーパー面)に沿うようにして保持体2の中心軸線と反対方向に(即ち、装着体21の外方に向かって放射状に)持ち上げられ、徐々に押し拡げられる。
【0057】
押し拡げられた拡縮体320は、ロール9の芯91を内側から押圧し、ロール9と装着体21が固定状態となる。この結果、装着体21に、ロール9が空転しないか又は空転しにくいように装着される。
【0058】
(4)押圧ナット42を装着体21の先部側の雄ネジ210に螺着し、緊締ナット41側へ締め込む。すると、緊締ナット41に設けられた各締付片412は、押圧ナット42の嵌合部422によって外嵌めされて縮径して雄ネジ210側に撓み、各締付片412のネジ孔側に設けられたネジ溝部414は、雄ネジ210のネジ溝を圧接し、圧接した締付片412の雄ネジ210と接する面側と雄ネジ210の間には、摩擦抵抗が生じる状態となる。
【0059】
(5)ロール保持装置1を自動包装機本体(図示省略)に取着する。具体的には、雄ネジ224を自動包装機本体の取着ネジ孔に挿入し、ハンドル222を回すと、軸体220を介して雄ネジ224が回転し、ロール保持装置1が自動包装機本体に螺着する。このとき、プーリー部214へ自動包装機本体の駆動ベルトを回しかけ、動力が伝達できるようにする(図示省略)。
【0060】
(6)ロール保持装置1を取着した自動包装機本体を用いて、包装作業を行う。このとき、高速且つ間欠的にロール9の回転停止及び再回転させてシートを繰り出す動作が行われる。
【0061】
前記動作が行われると、ロール9の重みによる軸周方向への慣性力(回転モーメント)が働き、拡縮体320に前記慣性力が加わる。拡縮体320はその先端部が拡縮作動体350と接しており、その接触部分を介し摺動して拡縮作動体350にも慣性力が加わる。この結果、拡縮作動体350に、ロール9に追従して回ろうとする力が加わる。
【0062】
しかし、ロール保持装置1では、各締付片412に設けられたネジ溝部414と雄ネジ210のネジ溝とが噛み合う箇所において生じている摩擦抵抗によって回り止め効果が加わっているため、拡縮作動体350の位置を固定するための緊締ナット41が緩まないか又は緩みにくく、拡縮作動体350の位置がほぼ固定され、ロール9を固定する拡縮体320の固定状態が保たれる。
【0063】
この結果、ロール9に加わる固定状態が保持され、ロール9への固定力が弱まることがないか又は弱まりにくいので、ロール9が空転しないか又は空転しにくくなり、保持されたロール9からのシートの繰り出しが安定する。更に、押圧ナット42の作用により、従来のような作業者が一定時間毎に緊締ナット41を締め直す手間も省ける。
【0064】
(7)ロール9の交換時には、押圧ナット42及び緊締ナット41を逆回しして後退させれば、上記作用と逆の作用又は概ね逆の作用によって、固定状態から解放される。
【0065】
即ち、拡縮作動体350が圧縮コイルバネ340によって押し戻されて装着体21の長手方向先端側に後退(スライド)し、拡縮体320に取着された弾性リング330の収縮力によって拡縮体320が保持体2の中心軸方向へ押圧されるので、装着体21の外方に向かって開いた拡縮体320は閉じ(元の状態へ戻り)、ロール9の芯91を内方から押圧し固定した状態が解かれる。
【0066】
(8)なお、前記のように、緩み止め具4の緊締ナット41の全部、または、各締付片412の全部、あるいは、各締付片412の雄ネジ孔側の面(締付片のネジ孔側の面に設けられたネジ溝部414を含む)のいずれかが、可撓性又は弾性を有する摩擦力が大きい合成樹脂で形成されたものであれば、各締付片412の雄ネジ孔側の面(ネジ溝部414)と、雄ネジ210のネジ溝とが圧接し又は噛み合ったときに、摩擦抵抗がより大きくなるため、更に高い回り止め効果が期待できる。
【0067】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0068】
1 ロール保持装置
110 スペーサー
2 保持体
21 装着体
210 雄ネジ
212 装着体径大部
214 プーリー部
220 軸体
222 ハンドル
224 雄ネジ
3 拡縮機構
310 拡縮基部
320 拡縮体
322 取着ピン
330 弾性リング
340 圧縮コイルバネ
350 拡縮作動体
4 緩み止め具
41 緊締ナット
410 ネジ孔
412 締付片
414 ネジ溝部
42 押圧ナット
422 嵌合部
9 ロール
91 芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート又はフィルムを巻いて形成され、中心に両端面を貫通する中空部を備えた芯管(91)又は貫通孔を有するロール(9)の前記中空部内に当該ロール(9)を保持する保持体(2)を通し、当該保持体(2)の端部からナットを締め込んで当該保持体(2)に設けられているロール(2)の固定手段(3)を作動または機能させ、前記保持体(2)にロール(9)を固定するシート又はフィルムの繰り出し装置に使用する緩み止め具であって、
緊締ナット(41)と押圧ナット(42)を備え、
前記緊締ナット(41)は、保持体(2)の端部に向けて次第に小径となる可撓性を有する突出部(412)を有し、当該突出部(412)には軸線方向に向けて所要間隔で所要数の溝又は隙間が形成されており、
前記押圧ナット(42)は、前記突出部(412)に向けて次第に径大となる押圧部(422)が形成されており、
前記緊締ナット(41)の突出部(412)の外面に、前記押圧ナット(42)の押圧部(422)の内面を被着させ前記突出部(412)を押圧して縮径する、
緩み止め具。
【請求項2】
緊締ナット(41)の全部または突出部(412)の全部あるいは突出部(412)のうち保持体と接する面(414)側のいずれかが、可撓性又は弾性を有する合成樹脂で形成されている、
請求項1記載の緩み止め具。
【請求項3】
シート又はフィルムを巻いて形成され、中心に両端面を貫通する中空部を備えた芯管(91)又は貫通孔を有するロール(9)の前記中空部内に当該ロール(9)を保持する保持体(2)を通し、当該保持体(2)の端部からナットを締め込んで当該保持体(2)に設けられているロール(2)の固定手段(3)を作動または機能させ、前記保持体(2)にロール(9)を固定する自動包装機に用いるロール(9)の装着構造(1)であって、
前記装着構造(1)は、ロールの芯管(91)又は貫通孔の内径よりも径小であって、先端が自由端である棒状体であり、ロールの芯管(91)又は貫通孔内へ挿通させて保持する保持体(2)と、保持体(2)の先端側に取着する請求項1または2記載の緩み止め具(4)と、を備えており、
保持体(2)は、
保持体(2)の先端側近傍に設けられ、緩み止め具(4)を取着可能に形成された雄ネジ(210)と、
保持体(2)の長さ方向中央近傍に設けられ、拡大した拡縮部(320)がロールの芯管(91)又は貫通孔を内側から押圧又は当接して固定する構造のロール固定手段(3)と、を備えており、
ロール固定手段(3)は、前記雄ネジ(210)と拡縮体(3)の間に配置され、保持体(2)の長手方向にスライド可能に設けられ、スライドすることにより拡縮部(320)の拡縮を調節する拡縮作動体(350)を備えており、
ロール(9)の芯管(91)又は貫通孔内の中空部へ保持体(2)を通し、緊締ナット(41)を締めて拡縮作動体(350)をスライドさせて拡縮部(320)を芯管(91)又は貫通孔内で拡大させることによって、保持体(2)にロール(9)を固定した後に、緊締ナット(41)の突出部(412)の外面に、押圧ナット(42)の押圧部(422)の内面を被着させ前記突出部(412)を押圧して縮径させ、突出部(412)を保持体(2)に圧着させるようにした、
ロールの装着構造。
【請求項4】
緊締ナット(41)の全部または突出部(412)の全部あるいは突出部(412)のうち装着軸側と接する面(414)側のいずれかが、可撓性又は弾性を有する合成樹脂で形成された、
請求項3記載のロールの装着構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−46477(P2011−46477A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196100(P2009−196100)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(508126996)九州包装機有限会社 (2)
【Fターム(参考)】