説明

ロール状巻回体

【課題】凹凸の無い長尺のロール状巻回体を提供する。
【解決手段】長尺の光学フィルムと、長尺の光学フィルムから剥離可能な長尺の保護フィルムとを備える長尺の複層フィルムをロール状に巻回してなるロール状巻回体において、長尺の光学フィルムの幅方向における膜厚の変動が幅方向における膜厚の平均値の±0.3%〜±3.0%の範囲であり、長尺の保護フィルムの長尺の光学フィルム側の面とは反対側の面の三次元中心線平均粗さを0.2μm以上3.0μm以下にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺な光学フィルムを巻回したロール状巻回体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置等の表示装置においては、位相差フィルム、偏光フィルム、輝度向上フィルム等の光学フィルムを設けることが知られている。このような光学フィルムは、製造効率の観点から、ある程度の量をまとめて長尺状に製造し、この長尺のフィルムをロール状巻回体として保存する。一定期間保存後にロール状巻回体から長尺フィルムを引き出し、必要に応じて他の長尺フィルムとロールトゥロール法等により貼り合わせ、その後、打ち抜き等の成型を施した後で液晶表示装置等に組み込んで利用されている。
【0003】
長尺の光学フィルムを巻回する際、光学フィルムの保護やハンドリング性の向上のため、光学フィルムに保護フィルムを積層する技術が知られている(特許文献1参照)。光学フィルムに保護フィルムを積層して複層フィルムとし、この複層フィルムを巻回してロール状巻回体とすることにより、巻回及び引き出しの際の取り扱い性を向上させたり、フィルムの貼り付き等による破損を防止したり、粉塵等から光学フィルムを保護したりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−125659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、光学フィルムには位置による膜厚の差が小さいこと、すなわち厚みムラ(変動)がなく均一であることが一般的には要求される。このため、光学フィルムの膜厚は一般に高いレベルで均一である。しかし、膜厚が高いレベルで均一な光学フィルムであっても、ロール状巻回体とした場合には光学フィルムが巻き重なることにより膜厚の差が増幅され、長尺のロール状巻回体の一部が突出したり凹んだりして凹凸が生じることがある。また、巻回した直後には凹凸が無くても、時間の経過と共に変形が生じて凹凸が生じることもある。ロール状巻回体にこのような凹凸が生じると、当該凹凸が光学フィルムに転写されて光学欠陥が生じるおそれがある。また、ロール状巻回体に凹凸が生じるとロール状巻回体の外観が損なわれるため、現実の商取引においては例え性能上の損失が無くても当該外観を理由として製品価値を低く評価されることがある。
また、ある程度の厚みムラがあっても、光学特性に優れる場合には、製品として許容され得るため、この場合には、このような厚みムラのある光学フィルムを巻回した場合であっても、ロール状巻回体とした際に、表面に凹凸の無い状態とすることが求められている。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであって、凹凸の無いロール状巻回体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上述した課題を解決して目的を達成するために鋭意検討したところ、光学フィルムの表面に凹み部分が存在する場合には、当該光学フィルムを巻回した際に、その凹み部分が段々と大きくなる傾向があり、そうして得られたロール状巻回体によれば、当該凹み部分に空気が滞留し、この空気の排出が困難になるおそれがあることを見い出した。そこで、本発明者が検討した結果、光学フィルムに積層する保護フィルムとして、表面をある程度の粗面とすることにより、光学フィルムを巻回した際に巻き込んだ空気を適宜排出できるため、ロール状巻回体の外観を綺麗にできることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔4〕を要旨とする。
【0008】
〔1〕 長尺の光学フィルムと、前記長尺の光学フィルムから剥離可能な長尺の保護フィルムとを備える長尺の複層フィルムをロール状に巻回してなるロール状巻回体であって、
前記長尺の光学フィルムの幅方向における膜厚の変動が前記幅方向における膜厚の平均値の±0.3%〜±3.0%の範囲にあり、
前記長尺の保護フィルムは、前記長尺の光学フィルム側の面とは反対側の面の三次元中心線平均粗さが0.2μm以上3.0μm以下であるロール状巻回体。
〔2〕 前記長尺の保護フィルムの長手方向の引張弾性率が100MPa以上400MPa以下である、〔1〕に記載のロール状巻回体。
〔3〕 前記長尺の光学フィルムは、b層/a層/b層からなる多層フィルムであり、
前記a層は、ポリスチレン系重合体により構成され、
前記b層は、ポリメチルメタクリレート系重合体により構成された、〔1〕または〔2〕に記載のロール状巻回体。
〔4〕 前記長尺の保護フィルムは、前記光学フィルムに粘着する粘着層と、この粘着層における前記光学フィルムとは反対側に位置し、前記光学フィルムとは粘着しない背面層と、を備える、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のロール状巻回体。
【発明の効果】
【0009】
本発明のロール状巻回体によれば、当該ロール状巻回体に凹凸が生じることを抑制できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0011】
〔1.概要〕
本発明のロール状巻回体は、ある程度の厚みムラのある長尺の光学フィルムと、前記長尺の光学フィルムから剥離可能な長尺の保護フィルムとを備える長尺の複層フィルムをロール状に巻回してなるロール状巻回体であって、前記長尺の保護フィルムとして、その表面に所定の粗さを有する粗面を有する軟質の保護フィルムを備えるものである。これにより、巻回時に巻き込む空気を排出できるので、光学フィルムと保護フィルムとを備える複層フィルムをロール状に巻回したロール状巻回体における凹凸の発生を抑制し、ロール状巻回体の外観を綺麗に保つことができる。
【0012】
〔2.光学フィルム〕
光学フィルムとしては、長尺の光学フィルムを用いる。ここで、長尺とは、フィルムの幅に対して、少なくとも200倍程度以上の長さを有するものをいい、好ましくは300倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻回されて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。
【0013】
光学フィルムが有する厚みムラは、その幅方向における膜厚の変動が、その幅方向における膜厚の平均値の±0.3%〜±3.0%の範囲に収まる程度である。詳細には、光学フィルムの幅方向における膜厚の最大値をTmax、最小値をTmin、平均値をTaveとした場合に、膜厚の最大値Tmax及び最小値Tminの少なくとも一方が下記(a)又は(b)の範囲に収まり、好ましくは膜厚の最大値Tmax及び最小値Tminの両方が下記(a)及び(b)の範囲に収まることをいう。
(a)膜厚の最大値Tmaxは、通常Tave+0.3%以上であり、通常Tave+3.0%以下、好ましくはTave+2.0%以下、より好ましくはTave+1.0%以下である。
(b)膜厚の最大値Tminは、通常Tave−0.3%以下であり、通常Tave−3.0%以上、好ましくはTave−2.0%以上、より好ましくはTave−1.0%以上である。
【0014】
なお、前記の(a)及び(b)において、「Tave+k%」(kは正の数)との記載はTaveよりもk%大きい膜厚を意味し、「Tave−k%」(kは正の数)との記載はTaveよりもk%小さい膜厚を意味する。したがって、例えば「Tave+0.3%」との記載はTaveの1.003倍(即ち、100.3%)の膜厚を表し、例えば「Tave−0.3%」との記載はTaveの0.997倍(即ち、99.7%)の膜厚を表す。
【0015】
厚みムラが無い光学フィルム及び厚みムラが非常に小さい光学フィルムは、従来の技術によってロール状巻回体とした場合でもロール状巻回体に凹凸が生じず、本発明の効果が発揮されにくい。したがって、本発明の効果を有効に発揮させる観点から、本発明に係る光学フィルムとしては、その幅方向における膜厚の変動の程度が上述した程度に大きいものを用いることが好ましい。
一方、厚みムラが過大である光学フィルムは、本発明に係る保護フィルムと組み合わせることによりロール状巻回体の凹凸を小さくすることはできるものの、現実の商取引における評価に耐えうる程度にまで凹凸を無くすことができない可能性がある。また、光学フィルムの厚みムラが過大であると光学フィルムに所望の光学活性が発現しない可能性もある。このため、発明に係る光学フィルムとしては、その幅方向における膜厚の変動の程度が上述した程度に小さいものを用いることが好ましい。
【0016】
光学フィルムの前記膜厚の平均値Taveは、その光学フィルムの種類及び用途に応じて様々であるが、通常10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上であり、通常700μm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下である。
【0017】
なお、光学フィルムの膜厚は、オンライン赤外線膜厚計(クラボウ社製、商品名RX−200)を用い、搬送中の光学フィルムを、幅方向2mm間隔で、搬送速度は10m/分で、フィルム幅方向に少なくとも10回以上測定した全測定結果の平均値からフィルム幅方向の平均厚みを算出し、その平均厚みからの変動幅の割合としてフィルム幅方向の厚みムラを算出すればよい。なお、光学フィルムの巻き取りを開始する前と、巻取りが終了した後で、サンプリングし、オフライン測定を行い、オンライン膜厚計の絶対値(平均値)の補正を行う。オフライン測定は、光学フィルムをエポキシ樹脂に包埋したのち、ミクロトーム[大和光機工業(株)、RUB−2100]を用いて0.05μm厚にスライスし、透過型電子顕微鏡を用いて断面を観察し、測定すればよい。測定は流れ方向に100mm間隔で、長さ1000mmに亘って行い、全測定結果の平均値からフィルム幅方向の平均厚みを算出し、オンライン平均厚みがオフライン平均厚みに合うように補正する。
【0018】
光学フィルムとしては、保護フィルムよりも硬いものを用い得る。光学フィルムの厚みムラを保護フィルムの変形により吸収させるようにする観点から、光学フィルムよりも保護フィルムの方を軟質にするためである。光学フィルムの具体的な硬さは光学フィルムの用途などに応じて設定すれば良いが、光学フィルムの長手方向(MD方向)の引張弾性率(ヤング率)は、通常800MPa以上、好ましくは1200MPa以上、より好ましくは1600MPa以上であり、通常3700MPa以下、好ましくは3300MPa以下、より好ましくは2900MPa以下である。なお、引張弾性率はJIS K 7113に則り、引張試験機(インストロン社製、5564型デジタル材料試験機)により測定できる。
【0019】
光学フィルムは、1層のみからなる単層構造のフィルムを用いてもよく、2層以上の層を備える積層構造のフィルムを用いてもよい。
光学フィルムの例を挙げると、位相差フィルム、偏光フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルム、集光フィルム、反射フィルム等が挙げられる。
【0020】
光学フィルムの材料としては、通常は樹脂を用い、好ましくは熱可塑性樹脂を用いる。樹脂に含まれる重合体の例を挙げると、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル重合体、ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド重合体、ポリビニルアルコール重合体、ポリカーボネート重合体、ポリアリレート重合体、セルロースエステル重合体、ポリエーテルスルホン重合体、ポリスルホン重合体、ポリアリルサルホン重合体、ポリ塩化ビニル重合体、ノルボルネン重合体、棒状液晶ポリマー、スチレン又はスチレン誘導体の単独重合体または他のモノマーとの共重合体を含むポリスチレン系重合体、ポリアクリロニトリル重合体、ポリメチルメタクリレート重合体、あるいはこれらの多元共重合ポリマーなどが挙げられる。また、樹脂には必要に応じて添加剤を含有させることもできる。なお、光学フィルムの材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0021】
特に好適な光学フィルムの例を挙げると、b層/a層/b層からなる多層フィルムであって、前記a層がポリスチレン系重合体により構成され、前記b層がポリメチルメタクリレート系重合体により構成されたものが挙げられる。
【0022】
光学フィルムの製造方法に特に制限は無く、例えば、溶融成形法、溶液流延法のいずれを用いることもできる。溶融成形法は、さらに詳細に、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの方法の中でも、機械強度、表面精度等に優れた光学フィルムを得るために、押出成形法、インフレーション成形法又はプレス成形法が好ましく、中でも位相差の発現をより確実に抑制しながらも効率よく簡単に光学フィルムを製造できる観点から、押出成形法が特に好ましい。
【0023】
また、光学フィルムを積層フィルムとして製造する場合、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出成形方法;ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形方法;ある層に対してそれ以外の層を構成する樹脂溶液をコーティングするようなコーティング成形方法などの公知の方法が適宜利用され得る。中でも、製造効率が良く、光学フィルム中に溶剤などの揮発性成分を残留させないという観点から、共押出成形方法が好ましい。共押出成形法の中でも、共押出Tダイ法が好ましい。さらに共押出Tダイ法にはフィードブロック方式、マルチマニホールド方式が挙げられるが、層の厚さのばらつきを少なくできる点でマルチマニホールド方式がさらに好ましい。
【0024】
さらに、光学フィルムの製造方法においては、必要に応じて、フィルムを延伸する延伸工程などを行うようにしてもよい。
【0025】
〔3.保護フィルム〕
保護フィルムとしては、光学フィルムから剥離可能な長尺の保護フィルムを用いる。保護フィルムは前記の長尺の光学フィルムの少なくとも片面に積層されるものであり、保護フィルムと積層された複層フィルムの状態で光学フィルムは保管又は運搬されるものである。しかし、光学フィルムの使用時には、保護フィルムは光学フィルムから剥離されることになるため、保護フィルムとしては光学フィルムから剥離可能なものを用いる。
【0026】
保護フィルムの長手方向(MD方向)の引張弾性率は、通常100MPa以上、好ましくは120MPa以上、より好ましくは140MPa以上であり、通常400MPa以下、好ましくは340MPa以下、より好ましくは280MPa以下である。このように小さい引張弾性率を有する軟質の保護フィルムを用いることにより、保護フィルムがクッションとして機能するため、保護フィルムの変形により光学フィルムの厚みムラを吸収してロール状巻回体における凹凸の発生を抑制し、ロール状巻回体の外観を綺麗に保つことができる。また、引張弾性率が小さい保護フィルムは、例えば光学フィルムとの貼り合わせ時において皺または弛みなどが生じても、保護フィルムを比較的弱い力で引っ張ることで皺及び弛みを無くすことができる。
【0027】
これに対して、保護フィルムの引張弾性率が高すぎると、保護フィルムの搬送時に、搬送に用いるロール(例えば、金属ロール、ゴムロール等)との擦過により保護フィルムから樹脂が脱離して、脱離した樹脂が白粉となってロールに付着する可能性がある。ロールに白粉が付着すると、前記の白粉が保護フィルムに再付着したり、ロールの表面に付着した白粉の形状が保護フィルムに転写されたりする可能性もある。また、保護フィルムに付着した白紛が光学フィルムに付着したり、保護フィルムに転写された白粉の形状が更に光学フィルムに転写されたりすることにより、光学フィルムへの汚染、傷つけ、凹み発生等を生じる可能性がある。
【0028】
一方、保護フィルムの引張弾性率が低すぎると、複層フィルムの巻回時に空気を巻き込み、その空気の巻き込みによりロール状巻回体の外観に凹凸が生じることがある。また、前記の巻き込んだ空気が経時的に抜けることによっても、ロール状巻回体の外観に凹凸が生じることがある。さらに、保護フィルムの引張弾性率が低すぎると、保護フィルムの滑り特性及びハンドリング性が悪化する傾向がある。また、光学フィルムと保護フィルムとを貼り合わせて複層フィルムを製造する際には保護フィルムにある程度張力(繰り出し張力)を与えて貼り合わせるようにすることがあるが、保護フィルムの引張弾性率が低すぎると、保護フィルムの繰り出し時に保護フィルムの伸びが大きくなり、光学フィルムとの貼り合せ後に保護フィルムの収縮によって複層フィルムに反り及びカールが生じることがある。特に、カールの程度が大きいものは、複層フィルムの長手方向端部が丸まることもある。
【0029】
保護フィルムの引張弾性率を上述した範囲に収めるようにするためには、例えば、保護フィルムに含まれる重合体の重合度を調整したり、保護フィルムに含まれる高分子と低分子との比率を調整したりすればよい。
【0030】
また、保護フィルムにおける長尺の光学フィルム側とは反対側の面(以下、適宜「背面」という。)は、所定の粗さを有する粗面となっている。前記粗面の具体的な粗さは、三次元中心線平均粗さRaで、通常0.2μm以上、好ましくは0.4μm以上、より好ましくは0.6μm以上であり、通常3.0μm以下、好ましくは2.4μm以下、より好ましくは1.8μm以下である。また、前記粗面の粗さは、凹凸の平均間隔Smで、通常0.2μm以上、好ましくは0.4μm以上、より好ましくは0.6μm以上であり、通常10000μm以下、好ましくは5000μm以下、より好ましくは2500μm以下である。なお、三次元中心線平均粗さRaおよび凹凸の平均間隔Smは、表面粗さ計(ミツトヨ社製、製品名「SJ400」)を用い、JIS B 0601:1994に基づき測定できる。
【0031】
このような範囲の粗さを有することにより、複層フィルムを巻回する際の空気の巻き込みによる凹凸発生を防止できる。すなわち、保護フィルムに前記の粗面を形成しないと、巻き込み空気の排出が不十分となり、上述したように、経時的に巻き込み空気が抜けた後にロール状巻回体の外観に凹みが発生する傾向があり、巻回速度の増加に伴い前記の凹みは大きくなる傾向がある。しかし、保護フィルムが前記の粗面を有すると、巻回時に粗面部分より巻き込み空気の排出が十分に行われるため、巻き込み空気に起因したロール状巻回体の凹み発生を防止できる。また、前記の粗面によれば滑り性を向上させて、フィルムの取り扱い性を向上させることもできる。また、当該フィルムを巻回する際の空気の巻き込みに起因する巻きズレを防止できる。さらに、前記の粗面によれば、粗面に塵埃等の異物が付着したり、保護フィルム内部もしくは光学フィルム内部に異物が混在したとしても、その異物が粗面の凹部に収まるため、光学フィルムに異物の形状が転写されることを防止できる。
【0032】
ところで、前記の巻き込み空気に起因したロール状巻回体の凹み発生等を防止することは、光学フィルムと保護フィルムとを貼り合わせて複層フィルムを製造する際の製造条件を制御することによっても実現できる。例えば、光学フィルム及び保護フィルムの巻き取り速度を遅くしたり、貼り合わせ時に光学フィルム及び保護フィルムを挟み込むロール(ニップロール及び巻き取りロール)の挟み込み圧力を強くしたり、光学フィルム及び保護フィルムの張力を強くしたりすればよい。しかし、巻き取り速度を遅くすると、製造効率が低下する。また、挟み込み圧力を強くしたり張力を強くしたりすると、得られる複層フィルムにおいて内部応力(ロール状巻回体の半径方向の圧縮応力)が大きくなる傾向がある。内部応力が大きくなると、光学フィルムと保護フィルムとが比較的強い粘着力で圧着されるため、光学フィルムと保護フィルムとがブロッキングし易くなるので、光学フィルムの使用時に複層フィルムから保護フィルムを剥がすことが困難になるおそれがある。また、内部応力が大きくなると、保護フィルムに内部異物(フィッシュアイなど)が存在したり、貼り合わせ時に光学フィルムと保護フィルムとの間に環境異物が混入したりした場合に、光学フィルムに異物が転写して打痕になりやすく、光学欠陥の原因となるおそれがある。これに対し、保護フィルムが前記の粗面を有すると、上述したような製造条件の制御を行なわなくても、巻き込み空気に起因したロール状巻回体の凹み発生を防止できる。
【0033】
また、保護フィルムは通常、ロール状の巻回体として保存、運搬され、使用時には巻回体から引き出して使用される。この際、保護フィルムが前記の粗面を有すると、巻回体からの保護フィルムの引き出しが容易である。これは、背面が粗面となっていることにより、保護フィルムの粘着層(後述する。)と背面とが接着しにくくなるためである。仮に背面と粘着層とが接着すると、保護フィルムから粘着層が剥がれたり粘着力が低下したりするおそれ、並びに、剥離帯電が大きくなるおそれがある。
【0034】
光学フィルムと保護フィルムとの剥離のし易さの程度は任意に設定すればよいが、光学フィルムと保護フィルムとの剥離力は、通常0.25g/cm以上であり、通常25g/cm以下、好ましくは約1g/cm以下とする。剥離が容易であるほど好ましいが、あまり容易に剥離できると複層フィルムの巻回時及び引き出し時の剥離を起こすおそれがあるからである。なお、光学フィルムと保護フィルムとの粘着力は、通常は光学フィルムの表面粗さに左右され、一般に光学フィルムの表面粗さが粗いほど、密着力は低下し得る。
【0035】
保護フィルムの厚みは、光学フィルムの厚み及び光学フィルムの要求品質レベルにより異なるが、成形性及びハンドリング性の観点から、通常は20μm〜100μmである。
また、保護フィルムの長さ及び幅は、通常、光学フィルムと同様にする。
【0036】
保護フィルムは、1層のみからなる単層構造のフィルムであってもよいが、通常は2層以上の層を備える積層構造のフィルムである。保護フィルムの好適な例を挙げると、粘着層及び背面層を備えるフィルム、粘着層、中間層及び背面層をこの順で備えるフィルムなどが挙げられる。以下、保護フィルムの好適な例について説明する。
【0037】
・粘着層
粘着層は保護フィルムの光学フィルム側の表面に位置し、光学フィルムに粘着する層である。粘着層は粘着剤を含んで形成され、粘着剤による粘着力によって保護フィルムが光学フィルムに対して固定されるようになっている。
粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などを挙げることができる。なお、粘着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0038】
粘着剤の中でも、一般式A−B−Aもしくは一般式A−Bで表されるブロック共重合体(但し、これらの式中、Aはスチレン系重合体ブロックを表し、Bはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、及びこれらを水素添加して得られるオレフィン重合体ブロックからなる群より選ばれる重合体ブロックを表す。)を含有するゴム系粘着剤;アクリル系粘着剤が好ましい。
【0039】
前記の一般式A−B−Aもしくは一般式A−Bで表されるブロック共重合体において、スチレン系重合体ブロックAは、重量平均分子量が12,000〜100,000、ガラス転移点が20℃以上のものが好ましい。また、ブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、及びこれらを水素添加して得られるオレフィン重合体ブロックからなる群より選ばれる重合体ブロックBは、重量平均分子量が10,000〜300,000、ガラス転移点が−20℃以下のものが好ましい。さらに、上記A成分とB成分の重量比としては、好ましくはA/B=5/95〜50/50であり、より好ましくはA/B=10/90〜30/70である。
【0040】
上記一般式A−B−Aで表されるブロック共重合体の例としては、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン、およびそれらの水素添加体を挙げることができ、一般式A−Bで表されるブロック共重合体の例としては、スチレン−エチレン/プロピレン、およびスチレン−エチレン/ブチレンおよびそれらの水素添加体を挙げることができる。
【0041】
アクリル系粘着剤の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ビニルアセテート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、スチレン、アクリロニトリル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルアルキルエーテル類、等の単独重合体もしくは共重合体などを挙げることができる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートのことを意味し、(メタ)アクリルとはアクリル及びメタクリルのことを意味する。
【0042】
アクリル系粘着剤には、好ましくは官能基を有するアクリル系単量体が共重合されて用いられる。官能基を有するアクリル系単量体の例としては、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和酸類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸などを挙げることができる。なお、官能基を有するアクリル系単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0043】
アクリル系粘着剤には、必要に応じて架橋剤を含ませることができる。前記の架橋剤は、共重合体に存在する官能基と熱架橋反応し、最終的には三次元網状構造を有する粘着層とするための化合物である。架橋剤を含ませることにより、粘着層と保護フィルムにおいて接する他の層(中間層、背面層等)との密着性、保護フィルムの強靱性、耐溶剤性、耐水性等を向上させることができる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系化合物、メラミン系化合物、尿素系化合物、エポキシ系化合物、アミノ系化合物、アミド系化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、シランカップリング剤等、また、それらの変性体を適宜使用することができる。なお、架橋剤は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0044】
粘着層の架橋性及び強靱性等の観点から、架橋剤としては、イソシアネート系化合物およびその変性体を使用することが好ましい。イソシアネート系化合物とは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物であり、芳香族系と脂肪族系の化合物に大別される。芳香族系のイソシアネート系化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。また、脂肪族系のイソシアネート系化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。さらに、これらのイソシアネート系化合物の変性体としては、例えば、イソシアネート系化合物のビゥレット体、イソシアヌレート体、トリメチロールプロパンアダクト体等が挙げられる。
【0045】
架橋剤を使用する場合、架橋反応を促進させるために、例えば、ジブチルスズラウレート等の架橋触媒を、粘着剤に含ませるようにしてもよい。
【0046】
粘着層には、必要に応じて、粘着付与性重合体を含ませてもよい。粘着付与性重合体としては、例えば、芳香族炭化水素重合体、脂肪族炭化水素重合体、テルペン重合体、テルペンフェノール重合体、芳香族炭化水素変性テルペン重合体、クロマン・インデン重合体、スチレン系重合体、ロジン系重合体、フェノール系重合体、キシレン重合体等が挙げられ、中でも低密度ポリエチレン等の脂肪族炭化水素重合体が好ましい。ただし、具体的な粘着付与性重合体の種類は、前記のブロック共重合体との相溶性、樹脂の融点、および粘着層の粘着力の点から、適宜選択される。また、粘着付与性重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0047】
粘着付与性重合体の量としては、例えば前記のブロック共重合体100重量部に対しては、好ましくは5重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下である。粘着付与性重合体の量が少なすぎると光学フィルムと貼り合わせた場合に保護フィルムの浮きや剥がれが発生する可能性があり、量が多すぎると繰り出し張力が高くなり、光学フィルムとの貼り合わせの際にしわや傷が生じたり、粘着付与重合体のブリードアウトが発生して粘着力が低下しやすくなったりする可能性がある。
【0048】
粘着層には、必要に応じて、軟化剤、老化防止剤、充填剤、着色剤(染料または顔料など)などの添加剤を含ませてもよい。なお、添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、液状ゴム、可塑剤などが挙げられる。
充填剤としては、例えば、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、シリカ、および酸化チタンなどが挙げられる。
【0049】
粘着層の粘着力は、保護フィルムにおいて接する他の層(中間層、背面層等)に対して、40g/cm以上が好ましく、60g/cm以上がより好ましく、600g/cm以下が好ましく、400g/cm以下がより好ましい。粘着力が低すぎると光学フィルムに貼り合わせた際に保護フィルムの浮きや剥がれが発生する可能性があり、粘着力が高すぎると繰り出し張力が高くなり、光学フィルムとの貼り合わせの際にしわや傷が生じやすくなる可能性がある。
【0050】
粘着層の厚みは、通常1.0μm以上、好ましくは2.0μm以上であり、通常50μm以下、好ましくは30μm以下である。粘着層が薄すぎると粘着力が低くなって保護フィルムの浮きや剥がれが発生する可能性がある。また、粘着層が厚すぎると粘着力が過度に高くなって繰り出し張力が高くなり、光学フィルムとの貼り合わせの際にしわや傷が生じやすくなる可能性がある。また、保護フィルムのコシが強くなって取り扱い性が悪くなる可能性がある。
【0051】
・背面層
背面層は、粘着層における光学フィルムとは反対側に位置し、通常は保護フィルムの光学フィルムとは反対側の表面(すなわち、背面)に位置する層であり、光学フィルムとは粘着しない層である。通常、背面層は樹脂により形成される。
背面層を形成する樹脂に含まれる重合体は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。好適な例を挙げると、ポリオレフィン系重合体が挙げられる。
【0052】
ポリオレフィン系重合体の例を挙げると、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−n−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。ここで、ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどが挙げられる。また、エチレン−プロピレン共重合体としては、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。さらに、α−オレフィンとしては、例えば、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、ペンテン−1、ヘプテン−1等が挙げられる。
【0053】
上述したポリオレフィン系重合体の中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体からなる群より選ばれる重合体が好ましく、プロピレン系共重合体がより好ましく、エチレン−プロピレン共重合体が特に好ましい。
【0054】
上述した重合体は、1種類を単独で用いてもよいが、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、エチレン−プロピレン共重合体等のプロピレン系共重合体と、低密度ポリエチレンとを組み合わせて用いることが好ましい。この際、プロピレン系共重合体60〜90重量%、低密度ポリエチレン40〜10重量%の比率で組み合わせることが特に好ましい。エチレン含有量が多くなる程、エチレン−プロピレン共重合体の融点を低下させることができる。このため、共押出の容易さ、及び、低温押出を可能にする観点から、コモノマであるエチレン含有量としては3〜7モル%の範囲が好ましい。なお、背面層に耐熱性を付加したい場合は、エチレン含有量を少なくし、所望の耐熱性を得られるよう適宜選定することもできる。
【0055】
プロピレン系共重合体の230℃におけるメルトフローレート(以下、適宜「MFR」という。)は5〜40g/10分の範囲が好ましい。特に、MFRが20〜40g/10分の範囲のものは、低温押出が可能であり、低密度ポリエチレンと組み合わせることで背面を粗面化し易いことから、より好ましい。
【0056】
また、背面層を構成する低密度ポリエチレンは、190℃におけるMFRが0.5〜5g/10分であることが好ましい。
さらに、低密度ポリエチレンは、密度が0.910〜0.929g/cmであることが好ましい。低密度ポリエチレンの密度が高すぎると搬送に用いるロール(例えば、金属ロール、ゴムロール等)との擦過により保護フィルムから樹脂が脱離して白粉発生の要因となる可能性がある。また、低密度ポリエチレンの密度が低すぎると、背面を粗面にすることが難しくなる可能性がある。
【0057】
背面層に含まれる重合体(例えば、プロピレン系共重合体及び低密度ポリエチレン)は、粘着層に含まれる重合体と異なるものであってもよいが、同一の重合体を用いることが好ましい。
【0058】
なお、背面層を形成する樹脂には、本発明の効果を著しく損なわない限り、例えば、タルク、ステアリン酸アミド、ステアリン酸カルシウム等の充填剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、核剤などの添加剤を含ませてもよい。なお、添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0059】
背面層の厚さは、粘着層の厚さとの比(粘着層/背面層)で、通常1/40以上、好ましくは1/20以上であり、通常1/1以下、好ましくは1/2以下である。背面層の厚さが粘着層に比較して薄すぎると成膜性が悪くなってフィッシュアイが多く生じる可能性があり、厚すぎると繰り出し張力が高くなり、保護フィルムを光学フィルムと貼り合わせる際にしわや傷が生じやすくなる可能性がある。
【0060】
・中間層
粘着層と背面層との間には、必要に応じて中間層を設けてもよい。中間層は通常は樹脂により形成されるが、中でも、ポリオレフィン系重合体を含む樹脂によって形成することが好ましい。
【0061】
中間層に含まれるポリオレフィン系重合体としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体(ランダム共重合体及び/又はブロック共重合体)、α−オレフィン−プロピレン共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−n−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。なお、ポリオレフィン系重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。ただし、中間層に含まれるポリオレフィン系重合体は、前記粘着層及び背面層に含まれる重合体とは異なる種類のポリオレフィン系重合体であることが好ましい。
【0062】
中間層には、必要に応じて、粘着層を形成する材料、及び、背面層を形成する材料を含ませてもよい。通常、共押出成形法で保護フィルムを製造した場合には、端部の厚み不均一な部分はスリット工程等でスリットされ、除却されるが、このようにして除去された部分を中間層の原料として用いることで、使用原料の量を低減できる。
【0063】
中間層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、例えば、タルク、ステアリン酸アミド、ステアリン酸カルシウム等の充填剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、造核剤等の添加剤を含ませてもよい。なお、添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0064】
中間層の厚みは、通常13μm〜70μmである。
【0065】
・保護フィルムの製造方法
保護フィルムの製造方法に制限はなく、上述した保護フィルムが得られる限り任意の方法を採用できる。保護フィルムの製造方法の例を挙げると、(i)粘着層の材料及び背面層の材料、並びに必要に応じて中間層の材料を共押し出しする方法、(ii)背面層又は中間層を用意し、用意した層に粘着剤を塗布して粘着層を形成する方法、などが挙げられる。また、(iii)粘着層及び背面層、並びに必要に応じて中間層を別々に用意し、用意した各層を貼り合わせて一体化する方法、を採用してもよい。
【0066】
例示した製造方法のうち、共押出成形法による製造方法(i)は、粘着層と背面層又は中間層とが強固に密着しており、光学フィルムへの糊残り(保護フィルムの剥離後に光学フィルムに粘着剤が残留する現象)が起こり難い点、製造工程が簡素化されるためにコストが安価である点、などの利点を有し、特に好ましい。製造方法(i)により製造される保護フィルムでは、背面層として、分岐状低密度ポリエチレン、ポリプレピレン等のポリオレフィン重合体が用いられることが多い。一方粘着層には、通常は、酢酸ビニル、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン直鎖状低密度ポリエチレンなどが使用される。中でも、糊残り及び経時での密着力の増加などを避ける観点からは、酢酸ビニル系よりも直鎖状低密度ポリエチレン系の粘着剤を使用する場合が多い。
【0067】
また、塗布法による製造方法(ii)により製造される保護フィルムでは、背面層として、通常、ポリエチレンテレフタレート及びポリオレフィン重合体が用いられることが多く、粘着層にはゴム系粘着剤及びアクリル系粘着剤が用いられることが多い。中でも、保護フィルム中の異物を懸念する場合には背面層にポリオレフィン重合体よりもポリエチレンテレフタレートを使用することが好ましい。また、製造方法(ii)では、クリーンルームで製造を行なうと異物の無い高品質の保護フィルムが得られる。
【0068】
背面が粗面となっている保護フィルムを製造するには、背面層の表面を変形させることにより、所定の粗さを有する凹凸を背面に形成するようにすればよい。例えば、凹凸を有する賦型ロールを用いて、共押出成形法において得られた押出直後の保護フィルムを押圧して背面に凹凸を転写するニップ成形法;保護フィルムを、凹凸を有する離型フィルムで挟圧して離型フィルムの凹凸を転写した後、離型フィルムを剥離する方法;保護フィルムの背面に微粒子を噴射して保護フィルムの背面を切削する方法;などが挙げられる。また、背面層の表面を変形させる工程は、背面層と粘着層とを貼り合わせる前でもよく、後でもよい。
さらに、背面層の組成を調整することで背面に凹凸を形成することも可能である。例えば、背面層に所定の粒径の微粒子を含有させて背面に凹凸を形成させる方法;背面層を形成する樹脂等の材料の配合比を調整して背面層に凹凸を形成させる方法、などが挙げられる。
【0069】
上述した中でも、凹凸の転写ムラのない保護フィルムを広幅で得られる事から、凹凸を有する賦型ロールを用いたニップ形成法が好ましく、鏡面ロールと凹凸を有する賦型ロールとを用いて保護フィルムを挟圧する方法が特に好ましい。
それぞれの鏡面ロール及び賦型ロールの表面材質は、例えば、金属、ゴム、樹脂などが挙げられる。これらは保護フィルムの背面に目的とする凹凸形状が転写できるように適宜選ばれる。ただし、賦型ロールの硬さは、鏡面ロールの硬さ以上であることが好ましい。また、例えば、鏡面ロールと同等の表面性を持ち、賦型ロールより軟らかい樹脂フィルムなどを介して保護フィルムを狭圧させてもよい。
【0070】
鏡面ロール及び賦型ロールは、それぞれ独立に温度調節ができるものが好ましい。鏡面ロールの温度は、40℃以上160℃以下あることが好ましく、かつ、凹凸を有する賦型ロールの温度は、60℃以上200℃以下であることが好ましい。鏡面ロールの温度は、60℃以上130℃以下がさらに好ましく、凹凸を有する賦型ロールの温度は、80℃以上180℃以下がさらに好ましい。鏡面ロールまたは賦形ロールの温度が前記範囲の上限温度を越えると保護フィルムが鏡面ロールまたは賦形ロールに巻きつくおそれがある。また、鏡面ロールまたは賦形ロールの温度が前記範囲の下限温度を下回ると保護フィルムの背面で凹凸の転写ムラが生じる傾向がある。
【0071】
ニップ形成法において、保護フィルムの粗面の粗さは、挟圧時における保護フィルム、鏡面ロール及び賦型ロールの温度、ロール速度、保護フィルムを挟圧する際の圧力、並びに鏡面ロール及び賦型ロールの表面の材質を、保護フィルムを形成する材料の特性に合わせて、適宜選定することで調整することができる。通常、鏡面ロールおよび賦形ロール温度は、背面層を形成する樹脂のガラス転移温度(Tg)に対して、(Tg−60)〜(Tg+20)℃とするのが好ましい。
【0072】
例えば、アクリル樹脂で形成された背面層を備える保護フィルムの場合、好ましい圧力は、5kN/m〜13kN/mである。保護フィルムに加える圧力が上記範囲の上限値を超えると、保護フィルムが破断するおそれがある。保護フィルムに加える圧力が上記範囲の下限値を下回ると、保護フィルムの幅方向において凹凸の転写ムラが発生する傾向がある。
【0073】
鏡面ロール及び賦形ロールのロール速度は20m/分以下であることが好ましい。ロール速度がこれ以上であると、保護フィルムの背面で凹凸の転写ムラが生じる傾向がある。
【0074】
保護フィルムに形成される粗面の凹凸の平均間隔Sm(JIS B0601:1994)は、賦形ロールを所定の凹凸周期を有する賦形ロールに交換する事で調整することができる。
【0075】
保護フィルムの背面には、必要に応じて、表面改質処理を施してもよい。表面改質処理としては、例えば、エネルギー線照射処理や薬品処理などが挙げられる。
また、保護フィルムの背面には、必要に応じ印刷を行なってもよい。
【0076】
〔4.複層フィルム〕
本発明に係る長尺の複層フィルムは、上述した長尺の光学フィルムと長尺の保護フィルムとを備えるフィルムである。この複層フィルムにおいて、光学フィルムの少なくとも片面に保護フィルムを備えていればよいため、光学フィルムの両面に保護フィルムを備えていてもよい。
また、複層フィルムは前記の光学フィルム及び保護フィルムの一方又は両方を2層以上有する合計3層以上の層を備えた複層フィルムであってもよい。ただし、通常は、本発明に係る複層フィルムは、光学フィルム及び保護フィルムをそれぞれ1層有する、合計2層の層を備えた複層フィルムである。
【0077】
本発明に係る複層フィルムは、本発明の効果を著しく損なわない限り、光学フィルム及び保護フィルム以外にその他の層を有していてもよい。なお、その他の層は、1層でもよく、2層以上であってもよい。また、各層は同じでもよく、異なる層であってもよい。また、その他の層の位置は任意に設定できる。
【0078】
複層フィルムの製造方法に制限は無いが、通常、別々に用意した光学フィルムと保護フィルムとを貼り合わせて複層フィルムを製造する。貼り合わせ時には、通常、光学フィルム及び保護フィルムの皺及び弛みをなくすため、所定の大きさの張力を光学フィルム及び保護フィルムにかけながら貼り合わせを行なう。
【0079】
〔5.長尺のロール状巻回体〕
本発明のロール状巻回体は、前記の長尺の複層フィルムをロール状に巻回してなるものである。
本発明のロール状巻回体においては、保護フィルムの長尺の光学フィルムとは反対側の面が粗面となっているので、巻回時の空気の巻き込みによる凹凸の発生を抑制することが可能である。また、上記のように保護フィルムがクッションとして機能する場合、光学フィルムの厚みムラによりロール状巻回体に凹凸が生じることを抑制でき、その外観を綺麗に維持することができる。
【0080】
また、本発明のロール状巻回体においては、経時的な凹凸の発生も抑制できる。
【0081】
ロール状巻回体の巻回数に制限は無いが、通常40回以上、好ましくは60回以上であり、通常27000回以下、好ましくは13000回以下である。
また、ロール状巻回体の外径に制限はないが、通常160mm以上、好ましくは190mm以上であり、通常2300mm以下、好ましくは1200mm以下である。
【0082】
本発明のロール状巻回体は、複層フィルムをロール状に巻回することにより製造される。巻回に際しては必要に応じて適切な巻き芯を用いてもよく、当該巻き芯に複層フィルムを巻回することによりロール状巻回体を製造するようにしてもよい。
巻回速度に制限はないが、巻回速度が速すぎると空気の巻き込みを生じやすくなり、また巻回速度が遅すぎると製造効率が低下するため、通常5m/分以上、好ましくは10m/分以上であり、通常50m/分以下、好ましくは45m/分以下、より好ましくは40m/分以下である。
【実施例】
【0083】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0084】
〔評価方法〕
(1)フィルムの厚みの測定方法
光学フィルムの膜厚は、オンライン赤外線膜厚計(クラボウ社製、商品名RX−200)を用い、搬送中の光学フィルムを、幅方向2mm間隔で、搬送速度は10m/分で、フィルム幅方向に少なくとも10回以上測定した全測定結果の平均値からフィルム幅方向の平均厚みを算出し、その平均厚みからの変動幅の割合としてフィルム幅方向の厚みムラを算出した。なお、光学フィルムの巻き取りを開始する前と、巻取りが終了した後で、サンプリングし、オフライン測定を行い、オンライン膜厚計の絶対値(平均値)の補正を行った。オフライン測定は、光学フィルムをエポキシ樹脂に包埋したのち、ミクロトーム[大和光機工業(株)、RUB−2100]を用いて0.05μm厚にスライスし、透過型電子顕微鏡を用いて断面を観察し、測定した。測定は流れ方向に100mm間隔で、長さ1000mmに亘って行い、全測定結果の平均値からフィルム幅方向の平均厚みを算出し、オンライン平均厚みがオフライン平均厚みに合うように補正した。
【0085】
(2)フィルムの引張弾性率の測定方法
フィルムの引張弾性率は、JIS K7113に則り、引張試験機(インストロン社製、5564型デジタル材料試験機)にて、長手方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)それぞれのフィルムの引張弾性率を測定した。測定条件は、引張速度を5m/分、試験回数を5回、室温を23℃、湿度を50%RHとした。なお、ひずみ測定は、試験片中央部に50mmの間隔をあけ点を打ち、2点の間隔をビデオ伸び計(インストロン社製)にて測定した。
【0086】
(3)背面粗さの測定方法
保護フィルムの背面の三次元中心線平均粗さRa及び凹凸の平均間隔Smは、表面粗さ計(ミツトヨ社製、製品名「SJ400」)を用い、JIS B 0601:1994に基づき測定を行った。Sm(凹凸の平均間隔)とは、測定される断面曲線から、カットオフ値λcの高域フィルタによって長波長成分を遮断して得られた輪郭曲線(粗さ曲線)を求め、粗さ曲線の平均線に対して基準長さ(L)を抜き取り、基準長さ上の隣り合う山と谷の長さ(Xsi)の平均値のことである。Ra(算術平均粗さ)とは、前記したような方法で粗さ曲線を求め、その曲線の基準長さにおける高さ(平均線から測定曲線までの距離)の絶対値の平均値のことである。
【0087】
(4)貼り合わせ状態の評価
保護フィルムと光学フィルムとを貼り合わせた複層フィルムから、長手方向に250mm、幅方向に250mmの正方形の試験片を切り出し、光学フィルムと保護フィルムとの間に混在する気泡を目視評価した。
【0088】
(5)外観の評価
ロール状巻回体の外観を目視観察し、凹みの有無を評価した。
【0089】
(6)保護フィルムの巻き戻しの評価
製造した保護フィルムを巻き取って巻回体とした後、巻回体の巻末から保護フィルムを引き出して、幅方向に3個、試験片を切り取る。試験片の大きさは、幅25mm、長さ100mm以上とする。切り取った試験片を180°ピール状態にし、この試験片の粘着層と背面層とを200mm/分で剥離したときの剥離力を3回測定し、その平均値をもって巻き戻し力とする。この際、巻き戻し力が0.1N/25mm以下であれば巻き戻しが小さくハンドリング性が良好であるとし、巻き戻し力が0.1N/25mmを超えると巻き戻しが大きくハンドリング性が不良であるものとする。なお、前記の180°ピール状態とは、保護フィルムから切り取った試験片の粘着層と背面層とを反対側に引っ張り、粘着層の引っ張り方向と背面層の引っ張り方向とが180°の角度をなすようにする状態のことをいう。
【0090】
〔実施例1〕
(1)保護フィルムの製造
オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶 ブロックポリマー(CEBC)[JSR社製 商品名「DYNARON(登録商標)6200P」を80重量%と、エチレン−プロピレン・コポリマ[230℃以下MFR30g/10分、エチレン含有量5重量%]を16重量%と、低密度ポリエチレン[190℃以下MFR2g/10分、密度0.92g/cm]を4重量%とを、ヘンシェルミキサーにより均一に混合し、粘着層の材料として粘着層樹脂を用意した。
【0091】
エチレン−プロピレン・コポリマ[230℃以下MFR30g/10分、エチレン含有量5重量%]を75重量%と、低密度ポリエチレン[190℃以下MFR2g/10分、密度0.92g/cm]を2重量%と、水添スチレンブタジエンラバー(HSBR)[JSR社製 商品名「DYNARONTM1320P」を23重量%とを、ヘンシェルミキサーにより均一に混合し、背面層の材料として背面層樹脂を用意した。
【0092】
2種2層の多層共押出装置を使用して、粘着層樹脂と背面層樹脂とを押出温度230℃で、それぞれ、3.8kg/時間及び3.8kg/時間の押出量でT型ダイスより吐出させてフィルムを成形した。このフィルムを、ダイスから吐出直後に、表面に凹凸が形成された賦型ロールと表面が鏡面に形成された鏡面ロールとで、賦型ロールが背面層側となるようにニップし、賦型ロールの凹凸をフィルムに転写した後、冷却を行い、長さ2300m、幅1550mmの2層構成の保護フィルムを得た。ニップ時の条件は、線圧12kN/m、ロール速度20m/分、賦型ロールの表面温度70℃、鏡面ロールの表面温度70℃とした。また、賦型ロールの表面の凹凸の平均間隔Smは80μmであった。
なお、ニップに使用した前記の鏡面ロールは、対向する一対の鏡面ロールを用いて前記と同様の条件でニップして成膜した場合に、背面層の三次元中心線平均粗さRaが0.22μmとなるものである。
【0093】
得られた保護フィルムを構成する各層の厚みは、凹凸が形成された側の背面層の厚みが15μm、凹凸が形成されていない側の粘着層の厚みが15μmであり、保護フィルムの総厚は30μmであった。
得られた保護フィルムの凹凸が形成された背面の三次元中心線平均粗さRa、凹凸の平均間隔Sm、並びに、保護フィルムの凹凸が形成されていない粘着層側の面のRaを測定した。結果を表1に示す。
さらに、得られた保護フィルムの引張弾性率をMD方向及びTD方向において測定した。結果を表2に示す。
また、保護フィルムについて巻き戻しの評価を行なったところ、結果は良好であった。
【0094】
(2)光学フィルムの製造
固有複屈折値が負の樹脂であるスチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂(ノヴァケミカルジャパン社製、品名ダイラークD332)からなるa層と、ゴム粒子を含むメタクリル樹脂組成物からなるb層とを、b層/a層/b層の順に有する未延伸の積層体cを、前記の樹脂を共押出成形することにより用意した。この際、前記のb層/a層/b層の厚さがそれぞれと55μm/30μm/55μmとなるようにした。
【0095】
得られた未延伸の積層体cを、延伸温度135℃で、MD方向に延伸倍率1.8倍及びTD方向に延伸倍率1.3倍に同時二軸延伸し、総厚が60μmの光学フィルムを得た。
得られた光学フィルムについて、上述した要領で、平均厚み及び厚みムラを測定した。結果を表3に示す。
【0096】
(3)保護フィルムと光学フィルムとの貼り合わせ
用意した保護フィルムの粘着層側の面と光学フィルムとを、保護フィルムの繰り出し張力20N、光学フィルムの搬送時の張力150Nとして貼り合わせて複層フィルムを得た。得られた複層フィルムは、長さ2000m、幅1490mmであった。なおロール状巻回体の巻回数は、2089回であった。この複層フィルムを、巻き取り張力120N〜140N、巻き取り速度10m/分でロール状に巻回し、保護フィルム及び光学フィルムを備える複層フィルムのロール状巻回体を得た。得られた複層フィルムの貼り合わせ状態、及び、ロール状巻回体の外観を、それぞれ上述した要領で評価した。結果を表5に示す。
【0097】
〔実施例2〕
(1)保護フィルムの製造
背面層樹脂に含ませるエチレン−プロピレン・コポリマの量を82重量%にし、水添スチレンブタジエンラバーの量を16重量%としたこと、並びに、保護フィルムをニップする賦型ロールとして表面の凹凸の平均間隔Smが540μmの賦型ロールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルムを得た。
得られた保護フィルムの凹凸が形成された背面のRa、Sm、並びに、保護フィルムの凹凸が形成されていない粘着層側の面のRaを測定した。結果を表1に示す。
さらに、得られた保護フィルムの引張弾性率をMD方向及びTD方向において測定した。結果を表2に示す。
また、保護フィルムについて巻き戻しの評価を行なったところ、結果は良好であった。
【0098】
(2)光学フィルムの製造
延伸を行う炉内に遠赤外線パネルヒーターを設置し幅方向に適当な温度分布を形成した以外は実施例1と同様にして、光学フィルムを得た。温度分布は、延伸温度135℃〜140℃の範囲となるように調整した。得られた光学フィルムについて、上述した要領で、平均厚み及び厚みムラを測定した。結果を表3に示す。
【0099】
(3)保護フィルムと光学フィルムとの貼り合わせ
用意した保護フィルム及び光学フィルムを用いて、保護フィルムの繰り出し張力を40Nにしたこと以外は実施例1と同様にして、複層フィルムを製造し、さらにこの複層フィルムのロール状巻回体を得た。得られた複層フィルムの貼り合わせ状態、及び、ロール状巻回体の外観を、それぞれ上述した要領で評価した。結果を表5に示す。
【0100】
〔実施例3〕
(1)保護フィルムの製造
背面層樹脂に含ませるエチレン−プロピレン・コポリマの量を95重量%にし、水添スチレンブタジエンラバーの量を3重量%としたこと、並びに、保護フィルムをニップする賦型ロールとして表面の凹凸の平均間隔Smが1100μmの賦型ロールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルムを得た。
得られた保護フィルムの凹凸が形成された背面のRa、Sm、並びに、保護フィルムの凹凸が形成されていない粘着層側の面のRaを測定した。結果を表1に示す。
さらに、得られた保護フィルムの引張弾性率をMD方向及びTD方向において測定した。結果を表2に示す。
また、保護フィルムについて巻き戻しの評価を行なったところ、結果は良好であった。
【0101】
(2)光学フィルムの製造
延伸を行う炉内に遠赤外線パネルヒーターを設置し幅方向に適当な温度分布を形成した以外は実施例1と同様にして、光学フィルムを得た。温度分布は、延伸温度135℃〜142℃の範囲となるように調整した。得られた光学フィルムについて、上述した要領で、平均厚み及び厚みムラを測定した。結果を表3に示す。
【0102】
(3)保護フィルムと光学フィルムとの貼り合わせ
用意した保護フィルム及び光学フィルムを用いて、保護フィルムの繰り出し張力を80Nにしたこと以外は実施例1と同様にして、複層フィルムを製造し、さらにこの複層フィルムのロール状巻回体を得た。得られた複層フィルムの貼り合わせ状態、及び、ロール状巻回体の外観を、それぞれ上述した要領で評価した。結果を表5に示す。
【0103】
〔比較例1〕
(1)保護フィルムの製造
背面層樹脂に含ませるエチレン−プロピレン・コポリマの量を98重量%にし、水添スチレンブタジエンラバーを用いなかったこと、並びに、保護フィルムをニップする際に賦型ロールに代えて鏡面ロールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルムを得た。
得られた保護フィルムの凹凸が形成された背面のRa、Sm、並びに、保護フィルムの凹凸が形成されていない粘着層側の面のRaを測定した。結果を表1に示す。
さらに、得られた保護フィルムの引張弾性率をMD方向及びTD方向において測定した。結果を表2に示す。
また、保護フィルムについて巻き戻しの評価を行なったところ、結果は良好であった。
【0104】
(2)光学フィルムの製造
実施例1と同様にして、光学フィルムを得た。得られた光学フィルムについて、上述した要領で、平均厚み及び厚みムラを測定した。結果を表3に示す。
【0105】
(3)保護フィルムと光学フィルムとの貼り合わせ
用意した保護フィルム及び光学フィルムを用いて、保護フィルムの繰り出し張力を90Nにしたこと以外は実施例1と同様にして、複層フィルムを製造し、さらにこの複層フィルムのロール状巻回体を得た。得られた複層フィルムの貼り合わせ状態、及び、ロール状巻回体の外観を、それぞれ上述した要領で評価した。結果を表5に示す。
【0106】
〔比較例2〕
(1)保護フィルムの製造
背面層樹脂に含ませるエチレン−プロピレン・コポリマの量を95重量%にし、水添スチレンブタジエンラバーの量を3重量%としたこと、並びに、保護フィルムをニップする際に賦型ロールに代えて鏡面ロールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルムを得た。
得られた保護フィルムの凹凸が形成された背面のRa、Sm、並びに、保護フィルムの凹凸が形成されていない粘着層側の面のRaを測定した。結果を表1に示す。
さらに、得られた保護フィルムの引張弾性率をMD方向及びTD方向において測定した。結果を表2に示す。
また、保護フィルムについて巻き戻しの評価を行なったところ、結果は良好であった。
【0107】
(2)光学フィルムの製造
延伸を行う炉内に遠赤外線パネルヒーターを設置し幅方向に適当な温度分布を形成した以外は実施例1と同様にして、光学フィルムを得た。温度分布は、延伸温度135℃〜140℃の範囲となるように調整した。得られた光学フィルムについて、上述した要領で、平均厚み及び厚みムラを測定した。結果を表3に示す。
【0108】
(3)保護フィルムと光学フィルムとの貼り合わせ
用意した保護フィルム及び光学フィルムを用いて、保護フィルムの繰り出し張力を80Nにしたこと以外は実施例1と同様にして、複層フィルムを製造し、さらにこの複層フィルムのロール状巻回体を得た。得られた複層フィルムの貼り合わせ状態、及び、ロール状巻回体の外観を、それぞれ上述した要領で評価した。結果を表5に示す。
【0109】
〔比較例3〕
(1)保護フィルムの製造
背面層樹脂に含ませるエチレン−プロピレン・コポリマの量を98重量%にし、水添スチレンブタジエンラバーを用いなかったこと、並びに、保護フィルムをニップする賦型ロールとして表面の凹凸の平均間隔Smが1160μmの賦型ロールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルムを得た。
得られた保護フィルムの凹凸が形成された背面のRa、Sm、並びに、保護フィルムの凹凸が形成されていない粘着層側の面のRaを測定した。結果を表1に示す。
さらに、得られた保護フィルムの引張弾性率をMD方向及びTD方向において測定した。結果を表2に示す。
また、保護フィルムについて巻き戻しの評価を行なったところ、結果は良好であった。
【0110】
(2)光学フィルムの製造
延伸を行う炉内に遠赤外線パネルヒーターを設置し幅方向に適当な温度分布を形成した以外は実施例1と同様にして、光学フィルムを得た。温度分布は、延伸温度135℃〜143℃の範囲となるように調整した。得られた光学フィルムについて、上述した要領で、平均厚み及び厚みムラを測定した。結果を表3に示す。
【0111】
(3)保護フィルムと光学フィルムとの貼り合わせ
用意した保護フィルム及び光学フィルムを用いて、保護フィルムの繰り出し張力を90Nにしたこと以外は実施例1と同様にして、複層フィルムを製造し、さらにこの複層フィルムのロール状巻回体を得た。得られた複層フィルムの貼り合わせ状態、及び、ロール状巻回体の外観を、それぞれ上述した要領で評価した。結果を表5に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【0114】
【表3】

【0115】
【表4】

【0116】
【表5】

【0117】
〔まとめ〕
表5から、実施例1〜3のロール状巻回体は凹みが無いが、比較例1〜3のロール状巻回体はいずれも凹みを生じていることが分かる。このことから、実施例1〜3のロール状巻回体では、保護フィルムが所定の粗さの粗面を有することで空気の巻き込みを防止でき、また、保護フィルムの引張弾性率が低いことで保護フィルムが変形して光学フィルムの厚みムラを吸収できるので、ロール状巻回体における凹凸の発生を抑制できることが確認された。
また、表5から、実施例1〜3では貼り合わせられた光学フィルムと保護フィルムとの間に気泡がない。一般に、保護フィルムの粘着層側の表面が荒れると前記の気泡が多くなる傾向があるが、実施例1〜3の保護フィルムでは背面に適切な粗さの粗面が形成されているため、貼り合わせ時に空気が良好に抜けて、気泡の発生が防止されたものと考えられる。これに対し、比較例3では光学フィルムと保護フィルムとの間に気泡が存在している。これは、比較例3の保護フィルムは背面の粗さの程度が大きすぎるため、保護フィルムの巻取り状態(硬巻き、軟巻き)、材質及び粗さ形状の影響によって粘着層側の表面の粗さが過度に大きくなり、貼り合わせ時に空気が抜けて気泡発生を防止する作用よりも、凹凸によって気泡が生じやすくなる作用の方が大きく発現したものと推察される。比較例3のような気泡は、多くなると貼り合わせ状態が不良となり、見た目が白く濁り外観を損なう可能性がある。また、前記の気泡が光学フィルムに転写されると光学フィルムの光学特性が変化し、光学フィルムの性能が損なわれるおそれがある。
【0118】
〔参考例;保護フィルムの皺及び弛みを消失させる張力と引張弾性率との関係〕
〔参考例1〕
実施例2の「(1)保護フィルムの製造」と同様にして、背面層の厚みが15μm、粘着層の厚みが15μm、総厚が30μmの保護フィルムを製造した。得られた保護フィルムの引張張力は、MD方向では206MPa、TD方向では269MPaであった。
得られた保護フィルムをMD方向に繰り出し張力をかけながら引っ張り、保護フィルムから皺及び弛みが消失する繰り出し張力の値を測定した。結果を表6に示す。
【0119】
〔参考例2〕
比較例3の「(1)保護フィルムの製造」と同様にして、背面層の厚みが15μm、粘着層の厚みが15μm、総厚が30μmの保護フィルムを製造した。得られた保護フィルムの引張張力は、MD方向では446MPa、TD方向では543MPaであった。
得られた保護フィルムをMD方向に繰り出し張力をかけながら引っ張り、保護フィルムから皺及び弛みが消失する繰り出し張力の値を測定した。結果を表6に示す。
【0120】
【表6】

【0121】
表6から、引張弾性率が高い参考例2の保護フィルムは相対的に大きい繰り出し張力で引っ張らなければ皺及び弛みが消失しないが、引張弾性率が低い参考例1の保護フィルムは相対的に小さい繰り出し張力で引っ張れば皺及び弛みを消失させることができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の長尺のロール状巻回体は、例えば位相差フィルム、偏光フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルム、集光フィルム、反射フィルム等の任意の光学フィルムに対して適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の光学フィルムと、前記長尺の光学フィルムから剥離可能な長尺の保護フィルムとを備える長尺の複層フィルムをロール状に巻回してなるロール状巻回体であって、
前記長尺の光学フィルムの幅方向における膜厚の変動が前記幅方向における膜厚の平均値の±0.3%〜±3.0%の範囲にあり、
前記長尺の保護フィルムは、前記長尺の光学フィルム側の面とは反対側の面の三次元中心線平均粗さが0.2μm以上3.0μm以下であるロール状巻回体。
【請求項2】
前記長尺の保護フィルムの長手方向の引張弾性率が100MPa以上400MPa以下である、請求項1に記載のロール状巻回体。
【請求項3】
前記長尺の光学フィルムは、b層/a層/b層からなる多層フィルムであり、
前記a層は、ポリスチレン系重合体により構成され、
前記b層は、ポリメチルメタクリレート系重合体により構成された、請求項1または2に記載のロール状巻回体。
【請求項4】
前記長尺の保護フィルムは、前記光学フィルムに粘着する粘着層と、この粘着層における前記光学フィルムとは反対側に位置し、前記光学フィルムとは粘着しない背面層と、を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載のロール状巻回体。

【公開番号】特開2011−112945(P2011−112945A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270413(P2009−270413)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】