説明

ロール状皮膚貼付材

【課題】
巻きズレ、巻きほどけを生じることなくロール状形態に保持できるとともに、皮膚貼付材を引き出す際に、手や指がべたつくことなく簡単に引き出すことができるロール状皮膚貼付材を提供すること。
【解決手段】
布基材、粘着剤層、および剥離ライナーがこの順で積層された皮膚貼付材を、布基材が外側になるように巻回されてなるロール状皮膚貼付材であって、剥離ライナー上には仮着層が形成された仮着領域と、把持領域が存在し、把持領域は剥離ライナーの少なくとも両端縁部に位置することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーピング治療用やスポーツテーピング用等の医療衛生分野およびスポーツ分野等に使用される皮膚貼付材を巻回してなるロール状皮膚貼付材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から医療衛生分野およびスポーツ分野等において用いられる皮膚貼付材は、人の皮膚に貼り付けられ、または巻き付けられることにより、対象部位の治療や怪我の予防等に効果を発揮するものである(非特許文献1、2参照)。
【0003】
このような皮膚貼付材には、基材の片面に粘着剤層が形成された、剥離ライナーの無い皮膚貼付材と、基材の片面に粘着剤層が形成され、さらに粘着剤層を被覆するように剥離ライナーが貼り合わされた剥離ライナーを有する皮膚貼付材の2種類があり、これらはいずれも巻芯などに巻き取られロール状の製品として提供されている。
【0004】
上記皮膚貼付材のうち、前者の剥離ライナーの無い皮膚貼付材は、基材に形成された粘着剤層が基材の粘着剤層と反対面(以下、基材背面ともいう)に接着しながら巻回することにより、巻きズレなくロール状皮膚貼付材を得ることができる。しかし、粘着剤層を被覆する剥離ライナーが無いため、使用時の皮膚貼付材を引き出す際に、粘着剤層に直接手や指等が触れて汚染したり、粘着剤層に手や指等の脂が付着して粘着力が低下するおそれがあった。また、剥離ライナーの無い皮膚貼付材は、皮膚貼付材を引き出しやすいように一般的に基材背面に剥離処理が施されているが、このような剥離処理された基材背面には、目印等を行うための筆記や印字が難しかったり、皮膚貼付材を重ね貼りすると剥がれやすくなるという課題があった。
【0005】
一方、上記のような課題を解決するために、後者のような剥離ライナーを有する皮膚貼付材が一般的に知られている。すなわち、このような剥離ライナーを有する皮膚貼付材は剥離ライナーによって粘着剤層が被覆されているため、使用に際して皮膚貼付材を引き出しても、手や指等が粘着剤層に直接触れる心配がなく汚染することはないし、粘着剤層の粘着力が低下するおそれもない。また、基材背面に剥離処理を施す必要がないので、基材背面に筆記や印字することができ、皮膚貼付材を重ね貼りしても剥がれ落ちる心配もない。しかし、剥離ライナーを有する皮膚貼付材を巻回してロール状にすると、剥離ライナーと接触する基材背面との間が滑りやすいため、巻きズレや巻きほどけ等が生じて、ロール状形態に保持することが難しいという課題があった。
【0006】
このような課題を解決するために、特許文献1に記載のような、片面剥離シートの易剥離処理を施した片面が粘着剤を介してテープ基材と接合し、当該片面剥離シートの易剥離処理が施されていない面はテープ基材に再剥離可能に貼り付く性質を有する樹脂層で形成されていることを特徴とする剥離シート付き片面粘着テープが開示されている。しかし、剥離シートには貼り付く性質を有する樹脂が存在するため、使用に際して剥離シートが手や指にくっつきやすく、使いづらいことがある。また、剥離シート全面に前記樹脂層が形成された剥離シート付き粘着テープを、剥離シートがテープ基材と接触しながら巻き取られた場合、使用に際して粘着テープを引き出そうとしても、引き出すための取っ掛かりが得られず、粘着テープを引き出しにくいという課題があった。
【0007】
また、特許文献2には、剥離材の背面に微粘着性面を設けたり、粘着剤を線状、点状に設けることが記載されている。しかし、剥離材の背面に粘着性を有する材料が形成されているので、使用時に剥離材の背面が手や指にくっつき、使いづらいという課題を有するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−53058号公報
【特許文献2】実開昭54−84356号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】http://ntmed.co.jp/taping/index.html
【非特許文献2】http://ntmed.co.jp/medical/index.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
基材に粘着剤層および剥離ライナーを積層してなる皮膚貼付材を巻回してなるロール状皮膚貼付材において、巻きズレや巻きほどけを生じることなくロール状形態に保持できるとともに、皮膚貼付材を引き出す際に、手や指がべたつくことなく簡単に引き出すことができるロール状皮膚貼付材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために鋭意検討して見出したものであり、下記に示すとおりである。
(1)布基材、粘着剤層、および剥離ライナーがこの順で積層された皮膚貼付材を、布基材が外側になるように巻回されてなるロール状皮膚貼付材であって、剥離ライナー上には仮着層が形成された仮着領域と、把持領域が存在し、把持領域は剥離ライナーの少なくとも両端縁部に位置することを特徴とするロール状皮膚貼付材、
(2)ロール状皮膚貼付材を引き出した後、露出した剥離ライナー上に存在する仮着層は、実質的に表面タックがない(1)に記載のロール状皮膚貼付材、
(3)仮着層を構成する材料がホットメルト材料である(1)に記載のロール状皮膚貼付材、
(4)仮着層の塗布形状が、ドット状、格子状、または皮膚貼付材の長手方向に沿った線状である(1)に記載のロール状皮膚貼付材、
(5)仮着層の形成領域が、剥離ライナーの幅中央を基準に実質的に線対称である(1)に記載のロール状皮膚貼付材、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、布基材、粘着剤層、剥離ライナーからなる皮膚貼付材を布基材が外側になるように巻回されてなるロール状皮膚貼付材に関するものであり、剥離ライナーの剥離処理面と反対面(以下、剥離ライナー背面ともいう)に、仮着層を有することを特徴とするものである。本発明のロール状皮膚貼付材には、仮着層を介して布基材の背面と剥離ライナー背面とが接着しながら巻き取られることによって、横滑りを抑制し巻きズレを防止するとともに、巻きほどけを防止しロール状形態に保持できる効果を有する。
【0013】
皮膚貼付材を巻き取る際の巻きズレを防止するために、上記したような仮着層を形成させることが重要である。しかし、本発明のロール状皮膚貼付材において、上記仮着層が剥離ライナー背面の全面に形成されると、剥離ライナー背面の全面に形成された仮着層が布基材背面の全面と接着するため、皮膚貼付材を引き出すための取っ掛かりを得ることができず、皮膚貼付材を手や指で掴んで引き出すことが困難になるという課題が発生する。
【0014】
このため、本発明の仮着層は、皮膚貼付材を簡単に引き出すことができるように、剥離ライナーの少なくとも両端縁部には、仮着層が形成されていない把持領域を設けることが特徴である。この仮着層が形成されていない把持領域は、本発明のロール状皮膚貼付材から皮膚貼付材を引き出す際の取っ掛かりとなり、この把持領域を手や指で掴むことによって簡単に皮膚貼付材を引き出すことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明のロール状皮膚貼付材の一形態を表す斜視図である。
【図2】図2は、本発明のロール状皮膚貼付材の一形態を表す斜視図である。
【図3】図3は、本発明のロール状皮膚貼付材から切り出した皮膚貼付材の斜視図である。なお、図はいずれも本発明の概念を分かりやすく説明するために皮膚貼付材に対して垂直方向に拡大して描画されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のロール状皮膚貼付材において、皮膚貼付材を巻回する際に巻きズレや巻きほどけを防止するために、剥離ライナー背面には仮着層が設けられた仮着領域を有するとともに、ロール状皮膚貼付材を引き出しやすいように、剥離ライナーの少なくとも両端縁部には仮着層が設けられていない把持領域を有する。
【0017】
本発明における仮着層は、ロール状皮膚貼付材から皮膚貼付材を引き出した後、実質的に表面タックがない性質を有するものである。本発明における実質的に表面タックがない性質とは、常温においていわゆる粘着剤のような粘着性がない性質のことを意味する。
【0018】
この仮着層は、常温では表面タックが無い性質を示すが、加熱によって流動性を示し、溶融変形する性質を有するものである。このような性質を有する仮着層は、剥離ライナー上に加熱溶融されて形成され、形成された後直ちに布基材背面と接着しながらロール状に巻き取られることによって、巻きズレの無い本発明のロール状皮膚貼付材を得ることができる。
【0019】
さらに、この仮着層は、使用時に剥離され廃棄される剥離ライナー上に形成されているものなので、貼付中の皮膚貼付材には仮着層が存在せず、貼付中に仮着層が脱落する等の不具合が発生するおそれはない。また、本発明のロール状皮膚貼付材において、布基材がロール状形態の外側になるように皮膚貼付材を巻き取ることによって、剥離ライナー上に形成された仮着層がロール状皮膚貼付材の外側に露出することがなく、例えば、仮着層が擦れて剥がれ落ちる等の不具合発生の心配もない。
【0020】
仮着層に用いられる材料としては、常温において表面タックが無く、加熱によって流動性を有する特性を示すとともに、剥離ライナーとの接着性が良好な特性を示すものが好適に使用される。
このような特性を示す材料としては、ホットメルト材料が挙げられるが、さらに詳細には、ゴム系、アクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリアミド系、およびエチレン−酢酸ビニル系からなる群から選ばれる1種以上からなるホットメルト材料が用いられる。中でも、ゴム系ホットメルト材料が好ましく用いられ、ゴム系ホットメルト材料には、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体及びスチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体からなる群から選ばれる1種以上を主成分とするベースポリマーからなるスチレン系ホットメルト材料が常温において実質的に表面タックがなく、加熱によって流動しやすいため、より一層好ましく用いられる。
【0021】
ホットメルト材料の軟化点としては、通常、60〜180℃、好ましくは80〜150℃である。軟化点が180℃を超えるホットメルト材料は、加熱溶融させるのに特別な加熱装置が必要になり、実用的ではない。また、軟化点が60℃未満のホットメルト材料では、常温で粘着性を有しやすくなるため、仮着層がべたつく等、使用に際して使いづらいことがある。
【0022】
剥離ライナー上に形成される仮着層の厚みは、布基材の背面への接着性と、巻きズレなく皮膚貼付材を巻き取ること等を考慮して適切な範囲に設定される。すなわち、仮着層の厚みは、好ましくは2μm〜80μmであり、より好ましくは10μm〜50μmである。仮着層の厚みが2μm未満だと布基材背面との十分な接着性が得られないため、巻きほどけが発生し、ロール状形態に保持できないおそれがある。一方、仮着層の厚みが80μmを超えると、仮着層を有する仮着領域と仮着層を有さない把持領域との間に大きな厚み差が生じるため、巻きズレが発生する可能性が高くなる。
【0023】
剥離ライナー上に形成される仮着層の幅は、剥離ライナーの少なくとも両端縁部に把持領域を有するように、適宜設定される。また、仮着層の厚みや仮着層の幅は、仮着層を構成する材料の特性によって適宜決定することができる。
【0024】
本発明のロール状皮膚貼付材には、剥離ライナーの少なくとも両端縁部に、仮着層が形成されていない把持領域を有するものである。把持領域が存在することにより、把持領域を手や指で掴んで皮膚貼付材を引き出すことができるため、格段に取扱い性が良好なものとなる。一方、皮膚貼付材を構成する剥離ライナー全面に仮着層が形成され、把持領域が存在しない場合には、仮着層を介して剥離ライナー全面が布基材背面の全面と接着するため、使用に際して皮膚貼付材を引き出そうとしても皮膚貼付材を引き出すための取っ掛かりが得られず、皮膚貼付材を容易に引き出すことが困難になる。
【0025】
皮膚貼付材を手や指等で掴むために十分な大きさの把持領域を設けるためには、少なくとも剥離ライナーの両端縁部から5mm未満の領域に仮着層が形成されていない把持領域を設定することが好ましい。剥離ライナーの両端縁部から5mm未満の領域に仮着層が形成されていると、皮膚貼付材を手や指で掴むための把持領域が狭くなるため、皮膚貼付材を引き出しにくく使いづらいものとなる。
【0026】
仮着層の塗布形状は、ドット状、格子状、または皮膚貼付材の長手方向に沿った線状であることが好ましい。線状の塗布形状とは、直線状、曲線状、波線状などの特定の幅を有する連続線、または不連続線を含む塗布形状を意味する。なお、仮着層を容易に形成できる観点から、仮着層の塗布形状は、皮膚貼付材の長手方向に沿った直線状であることがさらに好ましい。
【0027】
仮着層の形成領域は、皮膚貼付材を巻き取る時の巻きズレを防止するために、剥離ライナーの幅中央を基準に実質的に線対称であることが好ましい。仮着層の形成領域が、剥離ライナーの幅中央を基準に実質的に線対称からズレた皮膚貼付材をロール状に巻き取ると、いわゆる竹の子状に巻き取られ、巻きズレが生じるおそれがある。なお、本発明における線対称からズレている場合とは、ロール状皮膚貼付材のロール幅に対して10%以上ズレている場合を意味する。
【0028】
本発明に用いられる布基材は、織布、編布、ネット地、不織布等が含まれ、一般に通気性、伸縮性に優れるものである。さらに、本発明の布基材には、本発明の効果を損なわない程度で撥水処理が施されているものを用いることもできる。なお、通常、布基材はフィルムに比べて表面の凹凸が大きいため、仮着層との接着面積が大きくなり、布基材と仮着層との接着性は向上する。このように布基材と仮着層との接着性が向上することによって、ロール状皮膚貼付材の横滑りを抑制し巻きズレを防止する効果が発現する。
【0029】
布基材の素材としては、例えば、綿(木綿)、絹、麻などの天然繊維、ポリエステル、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成繊維、アセテート繊維などの半合成繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維などの再生繊維等を用いることができる。
【0030】
布基材のうち織布、編布、ネット地を用いる場合は、布基材の素材に特殊加工を施して、伸縮性を持たせたストレッチヤーン、テキスチャードヤーン、コンジュゲートヤーンや、伸縮性の大きい合繊糸を単独で編成した織布および編布、またはネット地、若しくはこのような合繊糸と伸縮性の小さい繊維を混合して編成した織布および編布、またはネット地等を用いることができる。また、編み方としてはトリコット編、ラッシェル編、ミラニーズ編を含むタテメリヤス及び、平型編、円形編を含むヨコメリヤス等の一般的な方法で良いが、医療衛生分野およびスポーツ分野等に使用される材料に必要な追従性や固定性の効果を良好に発揮できる弾性及び伸縮性を有するものである。
【0031】
本発明における粘着剤層に用いられる粘着剤は、医療衛生分野およびスポーツ分野等の皮膚貼付材において使用される一般的なものを適用することができる。具体的には、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤、ビニルエステル系粘着剤粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤などの粘着剤を用いることができ、これらは単独でまたは複数以上組み合わせて使用される。
【0032】
粘着剤層には上記粘着剤以外に、必要に応じて、各種添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、可塑剤、架橋剤、粘着付与剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料、染料、薬剤などが挙げられ、粘着剤層中にこれらを単独または複数以上含んでも良い。
【0033】
粘着剤層の厚みとしては、使用部位や粘着剤の種類によって適宜決定することができるが、好ましくは10μm〜300μmであり、より好ましくは20μm〜200μmである。粘着剤層の厚みが10μm未満だと皮膚面の粘着力不足により貼付中に皮膚貼付材が剥がれるおそれがある。一方、粘着剤層の厚みが300μmを超えると皮膚貼付材の端部から粘着剤がはみ出して糊汚れが生じる可能性がある。
【0034】
粘着剤層の塗布形状としては、上記基材の片面に全面に設けるか、或いは部分的に設けても良い。通気性を向上させて皮膚面の蒸れを軽減させるために粘着剤層を部分的に設ける場合は、ドット形状、または条状等の塗布形状が設けられる。粘着剤層に条間空間を設ける場合には、直線状、波状、山状、鋸歯状などのいずれの塗布形状であっても良い。一般的に塗布形状としては、条間空間の断面積の経時的な変化が少ないという理由で、波状が好ましいが、使用する粘着剤の特性や本発明の皮膚貼付材の用途によって適宜決定することができる。
【0035】
本発明に用いられる剥離ライナーは一般的に用いられるものを適用することができるが、仮着層との接着性や経済性を考慮すると紙製の剥離ライナーを用いることが好ましい。紙製の剥離ライナーとしては、例えば、上質紙、グラシン紙、パーチメント紙の表面に、シリコーン樹脂やフッ素樹脂等の剥離性能を有する剥離剤をコーティングしたもの等が挙げられる。なお、剥離ライナーに形成される仮着層は、剥離ライナーの剥離処理を施していない面に形成される。また、剥離ライナーに形成された仮着層の接着力は、皮膚貼付材を使用する際に仮着層が布基材背面に残存しないように、布基材に対する接着力よりも剥離ライナーに対する接着力が高くなるように設定される。
【0036】
本発明のロール状皮膚貼付材は、一例として次のように作製される。布基材の片面に粘着剤溶液を塗布し乾燥して粘着剤層を形成し、粘着剤層を覆うように剥離ライナーを貼り合わせた後、ロール状の原反として巻き取られる。次に、ロール状に巻き取られた原反を繰り出し、製品幅にスリットした後、剥離ライナー上に仮着層を形成し、布基材がロール状形態の外側になるように巻き取ることで、本発明のロール状皮膚貼付材を得ることができる。
【0037】
本発明における仮着層は、例えば仮着層を構成する材料を軟化点以上の温度にて加熱溶融させた後、溶融した材料を皮膚貼付材の剥離ライナー背面に塗布することによって形成される。剥離ライナー背面に仮着層を形成する方法は、一般的に用いられる塗布方法を採用することができる。例えば、スロットコーター塗工及びロールコーター塗工等のような接触塗布方法や、スプレー塗工、ドット塗工等のような非接触塗布方法が挙げられる。本発明では、塗布の簡便性の点から、スプレー塗工のような非接触方法による塗布方法が好ましく用いられる。
【0038】
剥離ライナー背面に仮着層が形成された皮膚貼付材は、仮着層を介して布基材背面と剥離ライナー背面との接着性を向上させるために、仮着層が形成された後、仮着層の温度が常温に低下するまでの間に巻き取られることが好ましい。このため、仮着層は皮膚貼付材がロール状形態に巻き取られる直前に形成されることが好ましい。
また、皮膚貼付材が巻き取られる時に皮膚貼付材が過度に変形しない程度に、適度なテンションをかけてもよい。適度なテンションをかけることによって、布基材背面の凹凸形状と仮着層が馴染み、横滑りによる巻きズレや、巻きほどけをより一層防止することができる。
【0039】
さらに、巻き取られたロール状皮膚貼付材を、ロール状形態のまま加温エージングしてもよい。すなわち、ロール状形態で皮膚貼付材を加温エージングすることによって、仮着層が布基材背面の凹凸に馴染み、巻きほどけをさらに防止することができる。加温エージングの条件は、皮膚貼付材の特性を損なわない程度に適宜調整されるが、例えば、60℃〜100℃の温度条件で行われる。
【実施例】
【0040】
以下に本発明の実施例を示し、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
【0041】
(実施例1)
2−エチルヘキシルアクリレート95重量部、及びアクリル酸5重量部の単量体混合物を、不活性ガス雰囲気下の酢酸エチル中で共重合して、アクリル系粘着剤溶液を得た。上質紙にシリコーン処理を施した剥離ライナーのシリコーン処理面に、前記アクリル系粘着剤溶液を、乾燥後の厚さが80μmとなるように塗布し、120℃で3分間乾燥させて粘着剤層を形成した。この粘着剤層の上に、布基材として、ポリエステル75デニール糸をスムーズ編で伸縮するように編み込んだ伸縮性編布を貼合せることにより、布基材/粘着剤層/剥離ライナーの構成の皮膚貼付材を得た。この皮膚貼付材を50mm幅に切断した後、剥離ライナー背面の両端縁部からそれぞれ15mmの位置に、仮着層の中心線がくるように、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合樹脂系ホットメルト材料(ニッタイトH−6789B 新田ゼラチン社製 軟化点104℃)を長手方向に沿って、塗布幅5mm、塗布厚み25μmとなるようにスプレー塗工により直線状に連続的に形成し2本の仮着層を設けた後、布基材が外側になるように巻回して、図1のような本発明のロール状皮膚貼付材を得た。
【0042】
(実施例2)
実施例1において、仮着層の形成範囲を剥離ライナー背面の一方の端縁部から25mmの位置に仮着層の中心線がくるように、塗布幅20mmとして設けた以外は実施例1と同様の方法にて、図2のような本発明のロール状皮膚貼付材を得た。
【0043】
(実施例3)
実施例1において、剥離ライナー背面の一方の端縁部から15mmおよび30mmの位置に仮着層の中心線がくるように塗布幅5mmの仮着層を設けた以外は実施例1と同様の方法にて、本発明のロール状皮膚貼付材を得た。
【0044】
(比較例1)
実施例1において、仮着層を設けなかった以外は実施例1と同様にて、ロール状皮膚貼付材を得た。
【0045】
(比較例2)
実施例1において、仮着層を剥離ライナー背面の全面に設けた以外は実施例1と同様の方法にて、ロール状皮膚貼付材を得た。
【0046】
(比較例3)
実施例1において、布基材の代わりにポリエチレンフィルム(25μm厚)を用いた以外は実施例1と同様の方法にて、ロール状皮膚貼付材を得た。
【0047】
(実験例1)巻きズレ、巻きほどけの評価
皮膚貼付材を巻き取った後のロール状皮膚貼付材の形態を目視で判定した。巻きズレの判定は、巻き取った後の皮膚貼付材が、皮膚貼付材の幅に対して0%以上5%未満ズレていた場合を○、5%以上10%未満ズレていた場合を△、10%以上ズレていた場合を×とした。また、巻きほどけの判定は、巻き取った後の皮膚貼付材の切断端部がロール状に固定され、ほどけなかった場合を○、切断端部の固定が不十分でほどけてしまった場合を×とした。評価結果を表1に示した。
【0048】
(実験例2)操作性(掴み性、接着性)、外観(仮着層の投錨破壊)の評価
ロール状皮膚貼付材から皮膚貼付材を引き出した時の操作性(掴み性、仮着層と基材との接着性)と、引き出した後の外観(仮着層の投錨破壊)を目視で判定した。操作性(掴み性)の判定は、皮膚貼付材の端縁部を、簡単に掴めた場合を○、掴むのが難しかった場合を×とした。また、操作性(接着性)の判定は、仮着層の接着力が適切であり、皮膚貼付材を容易に引き出せた場合を○、仮着層の接着力が強く、皮膚貼付材を引き出すのが困難であった場合を△、仮着層の接着力が弱く、仮着層を介して剥離ライナーが基材と十分に接着していなかった場合を×とした。
さらに、外観(仮着層の投錨破壊)の判定は、ロール状皮膚貼付材から皮膚貼付材を引き出した際に、仮着層の剥がれ(投錨破壊)が生じなかった場合を○、仮着層の剥がれ(投錨破壊)が生じ、仮着層の一部が基材背面に付着した場合を×とした。評価結果を表1に示した。なお、比較例1品は、仮着層を有さないため、操作性(接着性)、外観(投錨破壊)の評価を行わなかった。
【0049】
【表1】

【0050】
仮着層を有する実施例品と、仮着層が存在しない比較例1品との結果から、本発明品は巻きズレ、巻きほどけの点で優れたロール状皮膚貼付材であることが明らかである。また、把持領域を有する実施例品と、把持領域が存在しない比較例2品との結果から、本発明品は操作性(掴み性)の点で優れたものである。さらに、基材に布基材を用いた実施例品と、基材にフィルムを用いた比較例3品との結果から、本発明品は巻きズレ、巻きほどけおよび操作性(接着性)の点で優れた特性を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明した通り、布基材、粘着剤層、剥離ライナーからなる皮膚貼付材を巻回してなるロール状皮膚貼付材において、剥離ライナー背面には仮着層を有していることから、巻きズレや巻きほどけを生じることがなく、適切に巻き取ることができる。また、剥離ライナーには仮着層を有する仮着領域と仮着層を有さない把持領域が存在するので、把持領域を手や指で掴むことにより簡便に皮膚貼付材を引き出すことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 仮着層(仮着領域)
2 把持領域
3 剥離ライナー
4 粘着剤層
5 布基材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
布基材、粘着剤層、および剥離ライナーがこの順で積層された皮膚貼付材を、布基材が外側になるように巻回されてなるロール状皮膚貼付材であって、剥離ライナー上には仮着層が形成された仮着領域と、把持領域が存在し、把持領域は剥離ライナーの少なくとも両端縁部に位置することを特徴とするロール状皮膚貼付材。
【請求項2】
ロール状皮膚貼付材を引き出した後、露出した剥離ライナー上に存在する仮着層は、実質的に表面タックがない請求項1に記載のロール状皮膚貼付材。
【請求項3】
仮着層を構成する材料がホットメルト材料である請求項1に記載のロール状皮膚貼付材。
【請求項4】
仮着層の塗布形状が、ドット状、格子状、または皮膚貼付材の長手方向に沿った線状である請求項1に記載のロール状皮膚貼付材。
【請求項5】
仮着層の形成領域が、剥離ライナーの幅中央を基準に実質的に線対称である請求項1に記載のロール状皮膚貼付材。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−31524(P2013−31524A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168470(P2011−168470)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】