説明

ロール用メッキ装置

【課題】被メッキ物であるロール周面へのメッキの際の不メッキの発生を低減することができるロール用メッキ装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、被メッキロールの両端をチャックし、この被メッキロールを陰極として通電させ、軸中心に回転可能に構成される一対のロールチャックと、メッキ液を貯留し、このメッキ液に被メッキロールを浸漬させるメッキ槽と、上記メッキ槽内に設けられる陽極と、上記メッキ槽内において、被メッキロールの周面に平行に当接し、この被メッキロールの回転と共に回転可能に設けられる1又は複数の非導電性ロールとを備えるロール用メッキ装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール用メッキ装置に関し、詳細には、ロール周面へのメッキの際の不メッキの発生を低減することができるロール用メッキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷は、グラビア印刷用のロール(グラビアシリンダー等とも言われる。)を用いて行われている。通常、このグラビア印刷用のロールは、円筒状の金属ロールに、ニッケル、銅等のメッキ処理を施し、その後、研磨を施すことによって仕上げられる。
【0003】
このようなメッキ処理においては、金属ロール(被メッキロール)の表面に、メッキが被覆しない、又は十分な厚みにメッキが被覆しない部分である不メッキが発生する場合がある。このような不メッキが生じた場合は、この被メッキロールを再度メッキ処理を施す必要などがあり、この不メッキの発生がメッキ処理の生産性を低下させる原因となっている。
【0004】
このような不メッキ発生は、含燐銅ボール等の溶性の陽極に含まれる不溶性のアノードスラッジ等の不純物が原因の一つとされている。つまり、メッキ処理の際に、含燐銅ボールが電気分解によって溶け、このとき、アノードスラッジ等がメッキ液中を浮遊し、被メッキ物の表面に付着することで不メッキが発生することとなる。すなわち、表面に付着したアノードスラッジ等の部分にはメッキがされず、逆に、この付着部分の周辺はメッキの厚みが増すこととなるため、不メッキの発生とともに、メッキ厚の不均一かが生じることとなる。
【0005】
このような中、不メッキ発生の要因となるアノードスラッジ等を取り除く手段を備えるメッキ装置が提案されている。このようなメッキ装置としては、アノードスラッジをフィルターで除去したメッキ液を供給することができるメッキ装置(特開2005−133139号公報参照)や、陽極を囲うように設けられるアノードバッグを備えるメッキ装置(例えば、特開平7−286299号公報等参照)が提案されている。
【0006】
しかしながら、これらのフィルターやアノードバッグ等、アノードスラッジ等のメッキ液中への浮遊を防止する手段によっても、完全にはアノードスラッジ等を捉えきることができない。このため、これらの装置においては、被メッキ物へのアノードスラッジ等の付着を十分に抑えることができず、不メッキ低減には限度がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−133139号公報
【特許文献2】特開平7−286299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、被メッキ物であるロール周面へのメッキの際の不メッキの発生を低減することができるロール用メッキ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、
被メッキロールの両端をチャックし、この被メッキロールを陰極として通電させ、軸中心に回転可能に構成される一対のロールチャックと、
メッキ液を貯留し、このメッキ液に被メッキロールを浸漬させるメッキ槽と、
上記メッキ槽内に設けられる陽極と、
上記メッキ槽内において、被メッキロールの周面に平行に当接し、この被メッキロールの回転と共に回転可能に設けられる1又は複数の非導電性ロールと
を備えるロール用メッキ装置である。
【0010】
当該ロール用メッキ装置は、被メッキロールと平行に、つまり軸方向が被メッキロールと同一方向に、かつ、この被メッキロールと周面同士が当接するように設けられる1又は複数の非導電性ロールを備えている。また、この非導電性ロールは、被メッキロールの回転と共に回転するように設けられている。従って、当該ロール用メッキ装置によれば、被メッキロールを回転させながら行うメッキ処理の際に、非導電性ロールが被メッキロールの周面を掃拭することで、ロール周面に付着したアノードスラッジ等の不純物を非導電性ロールによって取り除くことができる。このため、当該ロール用メッキ装置によれば、被メッキロールの周面へのメッキの際の不メッキの発生を低減することができる。
【0011】
当該ロール用メッキ装置において、上記1又は複数の非導電性ロールが被メッキロールの周面の下側を当接するように、かつ、各非導電性ロールをメッキ液に浮揚可能に支持する支持部材をさらに備えるとよい。当該ロール用メッキ装置によれば、メッキ液中において各非導電性ロールを被メッキロールの周面の下側に当接させることで、非導電性ロールが浮揚する方向に働く力によって、適度な圧力で被メッキロールと接することができる。このため、当該ロール用メッキ装置によれば、メッキ処理速度に影響を与えることなく、より効率的な固着物の除去を行うことができる。
【0012】
上記1又は複数の非導電性ロールの比重が1以下であり、この各非導電性ロールが、中空なロール本体と、このロール本体の周面を被覆するメッシュ状部材とを有するとよい。非導電性ロールの比重を1以下とすることで、非導電性ロールを容易にメッキ液に対して浮揚させることができる。さらに、非導電性ロールが中空なロール本体を有することで、非導電性ロールをより容易にメッキ液に対して浮揚させることができる。また、非導電性ロールが、ロール本体の周面を被覆するメッシュ状部材を有することで、被メッキロールの周面に付着したアノードスラッジなどの不純物を効率的に取り除くことができる。
【0013】
当該ロール用メッキ装置が複数の上記非導電性ロールを備え、この複数の非導電性ロールが被メッキロールの軸に対して左右交互に設けられることが好ましい。当該ロール用メッキ装置によれば、複数の非導電性ロールを被メッキロールの軸に対して左右交互に設けることで、この非導電性ロールの存在によるメッキ槽中の電流密度の左右の不均一化を抑えることができ、より不メッキの発生を抑えることができると共に、均一な厚みのメッキ処理を施すことができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明のロール用メッキ装置は、被メッキロールを回転させながら行うメッキ処理の際に、ロール周面に付着したアノードスラッジ等の不純物を非導電性ロールによって取り除くことができる。このため、当該ロール用メッキ装置によれば、被メッキロールの周面へのメッキの際の不メッキの発生を低減することができ、メッキ処理の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るロール用メッキ装置を示す模式的断面図である。
【図2】図1のロール用メッキ装置のA−A線矢視模式的断面図である。
【図3】図1のロール用メッキ装置の使用状態を示すA−A線矢視模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明のロール用メッキ装置の実施形態を詳説する。
【0017】
図1のロール用メッキ装置1は、一対のロールチャック2、メッキ槽3、陽極4及び複数の非導電性ロール5を主に備えている。
【0018】
ロールチャック2は、略円柱形状を有している。また、このロールチャック2は、円柱形状のスピンドル6と、スピンドル6の先端に付設される通電部7とを有し、軸中心に回転可能に構成されている。
【0019】
スピンドル6は、一対のうちの少なくとも一方のスピンドル6に設けられる図示しないモータ等によって所定回転数によって回転することができる。このスピンドル6の回転数は、被メッキロールRやメッキの種類によって、適宜調整される。
【0020】
通電部7は、金属製であり、陰極として通電されている。また、この通電部7によって被メッキロールRを両端から支持することができる。この通電部7のサイズなど種類としては、被メッキロールRのサイズ等に応じ適宜選定されるが、公知のものを用いることができる。
【0021】
このロールチャック2は、被メッキロールRの両端面に設けられる円錐穴を一対の通電部7によって両端をチャックすることによって、この被メッキロールRを回転可能に支持することができる。また、当該ロールチャック2によれば、被メッキロールRの両端面と通電部7とが接触していることにより、被メッキロールRを陰極として通電することができ、モータを回転させることにより、被メッキロールRを回転させることができる。
【0022】
なお、このロールチャック2は、スピンドル6の先端の通電部7の周りに被嵌された防液キャップ8を有している。この防液キャップ8によって、被メッキロールRの端面に当接して通電を行う通電部7へのメッキ液Lの進入を防止することができる。
【0023】
メッキ槽3は、メッキ液Lを貯留し、被メッキロールR及び上記一対のロールチャック2をメッキ液Lに浸漬させるものである。当該メッキ槽3のサイズとしては、被メッキロールRのサイズに応じて適宜選択することができるが、例えば、直径約300mm×長さ約1500mmの大きさの印刷用ロールから、直径約100mm×長さ約750mmの大きさの印刷用ロールに対応できる汎用性のある公知のものなどが用いられる。
【0024】
メッキ槽3は、被メッキロールR及び一対のロールチャック2をメッキ液Lに浸漬させるため、一対のロールチャック2に対して相対的に上下方向に移動することができる。この相対的な移動においてはメッキ槽3が上下に移動してもよいし、一対のロールチャック2が上下方向に移動してもよく、また、両方が移動してもよい。メッキ槽3には、図示しないメッキ液補給槽が連結されている。このメッキ液補給槽によれば、メッキ槽3内のメッキ液Lの量や濃度を一定に保つように、メッキ槽3内のメッキ液Lの変化に応じて、適宜メッキ液Lを供給することができる。
【0025】
当該メッキ槽3内に貯留されるメッキ液Lとしては、一般的な印刷用の被メッキロールRをメッキするための公知のものが適宜使用され、銅メッキ、ニッケルメッキ、クロムメッキ等を行うことができる。このメッキ液Lの濃度等は、メッキの種類や、被メッキロールの種類、メッキ装置1にかける電圧、電流の大きさ等に応じて適宜設定される。
【0026】
陽極4としては、特に限定されず公知のものを用いることができるが、例えば、銅メッキの際は溶性の含燐銅ボール等を好適に用いることができる。なお、この陽極4である含燐銅ボール等は、メッキ槽3内の両側面(ロールチャック2及び被メッキロールRの回転軸と平行な両面)に設けられるチタン製の格子枠9とメッキ槽3内の側面との間に入れられて用いられる。なお、格子枠9は、縦横それぞれ等間隔に設けられる複数のフレームから形成されている。
【0027】
このように陽極4として溶性陽極を用いた場合は、電気分解によるメッキ処理の際に、溶性陽極に含有される不純物が溶け出し、一般的にスライム状態でメッキ液L中に浮遊することとなる。通常これらの不純物が、被メッキ物である被メッキロールRに付着することで、不メッキの原因となる。
【0028】
しかしながら、当該ロール用メッキ装置1によれば、後に詳述するように、非導電性ロール5を備えることで、これらの不純物による不メッキの発生を抑制することができる。なお、メッキ液L中に浮遊し、被メッキロールRの周面に付着する不純物は、溶性陽極に由来するもの以外も存在するため、当該ロール用メッキ装置1は、陽極4として不溶性電極を用いる場合にも効果的である。
【0029】
複数の非導電性ロール5は、メッキ槽3内において被メッキロールRにメッキ処理を施す際に、被メッキロールRの周面に平行に当接し、この被メッキロールRの回転とともに回転するように支持部材10を介してメッキ槽3内の側面に連結されている。このような複数の非導電性ロール5を備える当該ロール用メッキ装置1によれば、被メッキロールRを回転させながら行うメッキ処理の際に、非導電性ロール5が被メッキロールRの周面を掃拭することで、ロール周面に付着したアノードスラッジ等の不純物を非導電性ロール5によって取り除くことができる。このため、当該ロール用メッキ装置1によれば、被メッキロールRの周面へのメッキの際の不メッキの発生を低減することができる。非導電性ロール5の数は、被メッキロールRや非導電性ロール5の長さ等に応じて適宜設定され、例えば4以上12以下とすることができる。
【0030】
また、複数の非導電性ロール5は、それぞれ支持部材10によって、メッキ液Lに浮揚可能に支持されている。つまり、各支持部材10は、被メッキロールRをメッキ槽3内に配置してメッキ処理を施す際に、複数の非導電性ロール5が被メッキロールRの周面(好ましくは周面の下側)に平行に当接するように、かつ各非導電性ロール5をメッキ液Lに浮揚可能に支持している。
【0031】
それぞれの支持部材10は、格子枠9を形成する隣り合う2本の縦フレーム9aの下方にそれぞれ取り付けられる一対の固定部11と、この一対の固定部11の両外側に、一端が回転可能に、かつ互いに平行に取り付けられる一対のアーム12とを主に備えている。一対のアーム12の他端間には、非導電性ロール5が回転可能に取り付けられている。また複数の支持部材10は、それぞれが同じ高さになるように設けられている。この支持部材10は、このように格子枠9を形成する縦フレーム9aの隣り合う2本毎に設けられている。従って、複数の非導電性ロール5は、一の格子枠9(メッキ槽3内の側面)において等間隔に配置されることとなる。
【0032】
一方、被メッキロールRを挟んで対面する他の格子枠(メッキ槽3内の側面)に設けられる支持部材も、同様に、格子枠を形成する縦フレームの隣り合う2本毎に設けられている。ここで、メッキ槽3内の両側面に設けられる各非導電性ロールが互いに正面に位置しないように、他方の格子枠(メッキ槽3内の側面)に設けられる各支持部材は、一方の格子枠に設けられる各支持部材とずらした縦フレーム間に位置するように設けられる。
【0033】
つまり、それぞれのメッキ槽3内の側面(格子枠)に設けられる支持部材10は、被メッキロールRの軸に対して左右交互になるように設けられている。当該ロール用メッキ装置1によれば、このように複数の非導電性ロール5を被メッキロールRの軸に対して左右交互に設けることで、この非導電性ロール5の存在によるメッキ槽3中の電流密度の左右の不均一性を抑えることができ、より不メッキの発生を抑えることができると共に、均一な厚みのメッキ処理を施すことができる。
【0034】
アーム12は、固定部11に対して、公知の手段、例えばナットとボルトとによって回転可能に取り付けられている。この固定部11に対するアーム12の取り付けは、アーム12の他端に取り付けられた非導電性ロール5がメッキ液Lに浮揚できるように、強くは締め付けられずなされている。従って、メッキ液Lがメッキ槽3中に貯留されていない場合は、アーム12は非導電性ロール5の重量によって、垂れ下がっている(下向き)状態となっている(図1及び図2参照)。
【0035】
また、非導電性ロール5は、一対のアーム12に挟まれるように、両底面においてボルト等によって回転可能に取り付けられている。この非導電性ロール5の取り付けも、非導電性ロール5が小さな力で回転可能なように、強くは締め付けられずなされている。
【0036】
固定部11の取り付けられている位置は、縦フレーム9aの下方であるが、より具体的には、メッキ液L中に浸漬された状態の被メッキロールRの位置(メッキ処理の際のロールチャック2の位置)より低く、かつ含燐銅ボール等の陽極4の下端位置と同程度又はそれよりも低い位置に設けられていることが好ましい。固定部11をこのように、メッキ槽3内において低い位置に設けることで、メッキ処理の際、陽極4と陰極(被メッキロールR)との間に支持部材10が位置することを避けることができる(図3参照)。その結果当該ロールようメッキ装置1によれば、陽極と陰極間とを流れるメッキ電流に対する支持部材10の影響を低減させることができ、被メッキロールRに対してより均質なメッキを施すことができる。
【0037】
固定部11の材質としては、特に限定されず、金属又は非金属の素材を用いることができるが、メッキ処理の影響を受けず、かつ、長期間の使用によっても腐食しにくい合成樹脂等の非金属が好ましい。
【0038】
アーム12は、棒状形状を有している。アーム12の長さは、メッキ液Lが充填され、被メッキロールRをこのメッキ液L中に沈めた際に、非導電性ロール5が浮き上がって、被メッキロールRの周面の下側に当接するような長さとなっている。このアーム12の具体的な長さは、メッキ槽3の幅や、被メッキロールの半径等に対応して適宜設定するとよい。
【0039】
アーム12の材質としては、特に限定されず、金属又は非金属の素材を用いることができるが、メッキ処理の影響を受けず、かつ、長期間の使用によっても腐食しにくい合成樹脂等の非金属が好ましい。また、アーム12の材質としては、金属素材として、チタンを用いることも好ましい。なお、アーム12は、非導電性ロール5をメッキ液Lに浮揚可能に支持しているため、比重の小さい材質、好ましくは、比重が1以下、さらに好ましくは、0.9以下の材質を用いるとよい。なお、アーム12として比重が1を超える材質を用いた場合においても、非導電性ロール5の比重を調整することで、非導電性ロール5はメッキ液Lに対して浮揚することができる。
【0040】
なお、固定部11とアーム12とを、又、アーム12と非導電性ロール5とを回転可能に連結するボルトやナット等の部材も、メッキ処理の影響を受けない金属又は非金属素材から形成されているものが好ましい。
【0041】
これらの非導電性ロール5は、上述のような支持部材10によってロール用メッキ装置1に取り付けられているため、メッキ槽3にメッキ液Lを貯留するとともに浮揚し、このメッキ液Lに被メッキロールRを浸漬すると、この被メッキロールRの周面の下側に平行(被メッキロールRの軸方向と各非導電性ロール5の軸方向とが平行)に当接することとなる(図3参照)。
【0042】
図3に示すように、当該ロール用メッキ装置1によれば、メッキ液Lをメッキ槽を貯留し、メッキ液中に被メッキロールRを浸漬させた際に、この非導電性ロール5が被メッキロールRの周面の下側に当接する。このとき、非導電性ロール5は、この浮力によって、適度な圧力で被メッキロールRと接することができる。このような状態の非導電性ロール5は、被メッキロールRの回転とともに回転することができるため、メッキ処理速度に影響を与えることなく、効率的な固着物の除去を行うことができる。また、当該ロール用メッキ装置1においては、非導電性ロール5を被メッキロールRの周面の下側から当接させている。被メッキロールRの下側(メッキ槽3の底部分)は、メッキ液Lの流動が少ないため、当該ロール用メッキ装置1によれば、メッキ液Lの流れの影響を受けにくく、常に当接した状態で互いに回転し、非導電性ロール5が被メッキロールRの周面を掃拭することができる。また、被メッキロールRが多少上下するような環境においても、当該ロール用メッキ装置1によれば、非導電性ロール5が支持部材10と共に上下し、被メッキロールRの周面に当接することができる。
【0043】
非導電性ロール5は、中空なロール本体と、このロール本体の周面を被覆するメッシュ状部材とを有している。非導電性ロール5が、このように中空なロール本体を有することで、非導電性ロール5自体を容易にメッキ液Lに対して浮揚させることができる。また、非導電性ロール5が、ロール本体の周面を被覆するメッシュ状部材を有することで、被メッキロールの周面に付着したアノードスラッジなどの不純物を効率的に取り除くことができる。
【0044】
ロール本体は筒状部と、この筒状部の両端面を覆う上底部及び下底部を備えている。ロール本体のサイズとしては、特に限定されないが、軸方向の長さとしては、例えば上述したサイズの被メッキロールRに用いる場合としては、10cm以上20cm以下が好ましい。このロール本体の軸方向の長さは、本実施形態においては、ほぼ格子枠9を形成する縦フレーム9a間の間隔となる。また、ロール本体の直径としては、例えば3cm以上8cm以下程度である。
【0045】
ロール本体の材質としては、非導電性の素材であれば特に限定されず、木材や合成樹脂等を用いることができるが、耐腐食性、加工成形性、比重等を考慮すると、合成樹脂が好ましい。この合成樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂など、弾性を有するものが好ましく、ポリ塩化ビニル樹脂がさらに好ましい。
【0046】
メッシュ状部材は、筒状形状を有し、ロール本体の周面の略全面を被覆している。このメッシュ状部材の材質としては、ロール本体の周面を被覆することができ、かつ非導電性の素材で形成されているものであれば特に限定されない。メッシュ状部材の具体的な素材としては、例えば、上述した合成樹脂等を用いて網状に成形したものや、ストッキング、タイツ、タオル生地、スポンジ等の日用品を利用したものを用いることができる。これらのメッシュ状部材の中でも、耐熱性、耐酸性及びスライム状不純物との親和性(吸着性)の点からポリ塩化ビニル樹脂製が好ましい。また、メッシュ状部材の厚みとしては特に限定されないが、例えば、1mm以上5mm以下が好ましい。
【0047】
このように非導電性ロール5がメッシュ状部材を有することで、メッキ液Lがこのメッシュ状部材に染み込みやすくなる。このように表面のメッシュ状部材にメッキ液が染み込んだ状態の非導電性ロール5によれば、被メッキロールRの周面と当接した際に、ロールRの周面に固着した一般的にスライム状の不純物の掃拭をより容易に行うことができる。
【0048】
なお、非導電性ロール5としては、中空なロール本体とメッシュ状部材とが、例えば筒状かつスポンジ状の合成樹脂(ポリ塩化ビニル等)等の単一の素材から一体成形されていてもよい。
【0049】
非導電性ロール5全体の比重としては、1以下であり、1未満が好ましく、0.9以下がさらに好ましい。非導電性ロール5は、中空なロール本体を有することで、比重をこのように小さくすることができ、メッキ液Lをメッキ槽3に貯留した際に、メッキ液Lに対して支持部材10の回転とともに浮揚することができる。なお、非導電性ロール5の比重が1である場合も、メッキ液Lの比重は1よりもやや大きいため、非導電性ロール5はメッキ液Lに対して浮揚可能である。
【0050】
このように当該ロール用メッキ装置1は、被メッキロールRを回転させながら行うメッキ処理の際に、ロールR周面に付着したアノードスラッジ等の不純物を非導電性ロール5によって取り除くことができる。このため、当該ロール用メッキ装置1によれば、被メッキロールRの周面へのメッキの際の不メッキの発生を低減することができ、メッキ処理の生産性を高めることができる。
【0051】
なお、本発明のロール用メッキ装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、非導電性ロールとして、中空構造ではないロール本体を用いてもよい。このような非導電性ロールとして、例えば、発泡スチロール製の非導電性ロールを用いても、メッキ液に対して浮揚可能であり、同様の作用効果を発揮させることができる。
【0052】
また、非導電性ロールとして、比重が1より大きいものを用いて、被メッキロールの周面の上側に平行に当接するように構成されたロール用メッキ装置であってもよい。また、被メッキロールと略等しい幅を有する一つの非導電性ロールを備えるロール用メッキ装置であってもよい。これらいずれのロール用メッキ装置においても、被メッキロールを回転させながら行うメッキ処理の際に、非導電性ロールが被メッキロールの周面を掃拭することで、ロール周面に付着したアノードスラッジ等の不純物を非導電性ロールによって取り除くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明のロール用メッキ装置は、被メッキロールの周面へのメッキの際に不メッキの発生を抑制することができるメッキ装置として有用である。具体的には、本発明のロール用メッキ装置は、印刷用のロール、特にグラビア印刷用のロールをメッキする装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 ロール用メッキ装置
2 ロールチャック
3 メッキ槽
4 陽極
5 非導電性ロール
6 スピンドル
7 通電部
8 防液キャップ
9 格子枠
9a 縦フレーム
10 支持部材
11 固定部
12 アーム
R 被メッキロール
L メッキ液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被メッキロールの両端をチャックし、この被メッキロールを陰極として通電させ、軸中心に回転可能に構成される一対のロールチャックと、
メッキ液を貯留し、このメッキ液に被メッキロールを浸漬させるメッキ槽と、
上記メッキ槽内に設けられる陽極と、
上記メッキ槽内において、被メッキロールの周面に平行に当接し、この被メッキロールの回転と共に回転可能に設けられる1又は複数の非導電性ロールと
を備えるロール用メッキ装置。
【請求項2】
上記1又は複数の非導電性ロールが被メッキロールの周面の下側を当接するように、かつ、各非導電性ロールをメッキ液に浮揚可能に支持する支持部材をさらに備える請求項1に記載のロール用メッキ装置。
【請求項3】
上記1又は複数の非導電性ロールの比重が1以下であり、この各非導電性ロールが、中空なロール本体と、このロール本体の周面を被覆するメッシュ状部材とを有する請求項2に記載のロール用メッキ装置。
【請求項4】
複数の上記非導電性ロールを備え、
この複数の非導電性ロールが被メッキロールの軸に対して左右交互に設けられる請求項1、請求項2又は請求項3に記載のロール用メッキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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