説明

ワイドモノサウンドの再生方法及びシステム

【課題】 正面で狭く形成されたモノサウンドを、2チャンネルのスピーカを使用して広げるワイドモノサウンドの再生方法及び装置を提供する。
【解決手段】 入力されるモノサウンドを、非相関された複数の信号に分離する信号分離過程と、分離された各信号に対して相異なるHRTFを反映して、人間の頭の正面中央を中心に左右非対称的な仮想の位置に定位させる仮想音源の生成過程と、生成された仮想音源のクロストークをキャンセリングするクロストークキャンセリング過程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ再生システムに係り、特に、正面で狭く形成されたモノサウンドを、2チャンネルのスピーカを使用して広げるワイドモノサウンドの再生方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、モノサウンドは、シングルチャンネルを通じて再生される。最近には、モノサウンドから仮想ステレオサウンドに合成する技術が開発されている。
【0003】
モノサウンド再生システムに関連した技術が、特許文献1に開示されている。
【0004】
図1に示すように、信号Mは、左全域フィルタ102及び右全域フィルタ104に提供される。左全域フィルタ102は、+45°のリーディング位相シフトを生成する位相リ―ドフィルタである。右全域フィルタ104は、−45°のリーディング位相シフトを生成する位相リ―ドフィルタである。フィルタ102の出力は、加算器120の第1入力と、合算器122の非反転に提供される。フィルタ104の出力は、加算器120の第2入力及び加算器122の反転入力に提供される。合算器122の出力は、合算器126の非反転入力に提供される。
【0005】
また、フィルタ104の出力は、パースペクティブフィルタ124の入力に提供される。パースペクティブフィルタ324の出力は、合算器126の反転入力及び加算器128の第2入力に提供される。また、フィルタ102の出力は、合算器126の非反転入力及び加算器328の第3入力に提供される。加算器128の出力は、高域フィルタ108及び加算器106の第1入力に提供される。合算器126の出力は、高域フィルタ110及び加算器106の第2入力に提供される。加算器106の出力は、低域フィルタ109に提供される。
【0006】
高域フィルタ108の出力は、加算器112の第1入力に提供され、低域フィルタ109の出力は、加算器112の第2入力に提供される。加算器112の出力は、右チャンネル出力増幅器116の入力に提供され、増幅器116の出力は、左チャンネル出力に提供される。
【0007】
高域フィルタ110の出力は、加算器114の第1入力に提供され、低域フィルタ109の出力は、加算器114の第2入力に提供される。加算器114の出力は、右チャンネル出力増幅器118の入力に提供され、増幅器118の出力は、右チャンネル出力に提供される。
【0008】
したがって、図1のような従来のワイドモノサウンドの再生システムは、ステレオイメージを生成するために、左右入力信号から発生した差信号成分を処理する。差信号成分は、低域及び高域の可聴周波数の増幅により特徴づけられた等化を通じて処理される。その処理された差信号は、左右入力信号、そして本来の左右信号から発生した和信号と結合される。
【0009】
従来のワイドモノサウンドの再生システムは、入力されるモノサウンドに対してそれぞれ異なる周波数帯域に分離し、その分離されたサウンドに対して、適切なレベル補正を行って再結合した。したがって、従来のワイドモノサウンドの再生システムは、計算量が少ないため、具現が容易であるが、人間の音源方向の認知に重要な役割を行う頭及び耳殻に対して考慮されておらず、性能が悪いという短所があった。また、従来のワイドモノサウンドの再生システムは、モノサウンドから非相関の二つの信号を生成する過程で位相を変化させるので、音色の変化をもたらしうるという問題点がある。
【特許文献1】米国特許第6,590,983B1(1998年10月13日、APPARATUS METHOD FOR SYNTHESIZING PSEUDO−STEREOPHONIC OUTPUTS FROM A MONOPHONIC INPUT)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする技術的課題は、入力されるモノサウンドを非相関された多様な信号に分け、各信号に対して異なる頭伝達関数(Head Related Transfer Function:HRTF)を利用して形成された、複数の仮想のスピーカを通じて再生するワイドモノサウンドの再生方法及びシステムを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の技術的課題を解決するために、本発明は、ワイドモノサウンドの再生方法において、(a)入力されるモノサウンドを、非相関された複数の信号に分離する信号分離過程と、(b)前記分離された各信号に対して相異なるHRTFを反映して、人間の頭の正面中央を中心に左右非対称的な仮想の位置に定位させる仮想音源の生成過程と、(c)前記生成された仮想音源のクロストークをキャンセリングするクロストークキャンセリング過程とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、モノサウンド信号を立体サウンドで再生する方法において、(a)入力されるモノサウンドを、非相関された複数の信号に分離する信号分離過程と、(b)前記分離された各信号に対して相異なるHRTFを反映して、人間の頭の正面中央を中心に左右非対称的な仮想の位置に定位させ、前記非対称的な仮想の位置に定位された各信号のクロストークをキャンセリングするワイドニングフィルタリング過程と、(c)前記入力されるモノサウンドと、前記クロストークキャンセリングされた仮想音源との間のゲイン及びディレイを調整するダイレクトフィルタリング過程とを含み、前記ワイドニングフィルタリング過程は、
【0013】
【数3】


ここで、W11、W12、W21、W22は、ワイドニングフィルタ係数であり、C11、C12、C21、C22は、クロストークキャンセラ係数であり、B(θ)、B(θ)は、それぞれ右にθ角度で測定された左耳及び右耳のHRTFを表し、B(θ)、B(θ)は、それぞれ右にθ角度で測定された左耳及び右耳のHRTFを表すことを特徴とする。
【0014】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、ワイドモノサウンドの再生システムにおいて、入力されるモノサウンドを、非相関された複数頓着信号に分離する信号分離部と、前記信号分離部で分離された各信号に対して相異なるHRTFを反映して、人間の頭の正面中央を中心に左右非対称的な仮想の位置に定位させるバイノーラル合成部と、所定の音響伝達関数に基づいて、前記バイノーラル合成部で仮想の位置で定位された仮想音源間のクロストークをキャンセリングするクロストークキャンセラ部と、前記入力されるモノサウンドと、前記クロストークキャンセラ部でクロストークキャンセリングされた仮想音源との間の信号特性を調整するダイレクトフィルタ部と、前記ダイレクトフィルタ部から出力される信号と、前記クロストークキャンセラ部から出力される信号とを合算して、左右スピーカに出力する出力部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、本発明は、2個のスピーカの間隔の狭い製品(例えば、パソコン、TV、ノード型パソコン、携帯電話など)を利用してモノサウンドを再生する場合、ステレオサウンドステージを広げる。
【0016】
たとえ、本発明の実施形態が二つの実際のスピーカ(たとえば、280−1−280−2)を参照して記述されたとしても、本発明の一般的な発明の概念は、一つの実際のスピーカを使用して行われうる。たとえば、シングルフロントセンタースピーカを有するセルラーホンのようなさらに他のサウンド再生システムの一実施形態で、複数の非対称の仮想のスピーカは、シングルフロントスピーカの周りのワイド角度で配置されうる。
【0017】
したがって、入力されるモノサウンドに対して、HRTFを使用してサウンドステージを広げることによって、既存の左右信号の差信号を使用する方法に比べて、さらに広いサウンドステージが感じられる。また、本発明は、周波数バンドを分けて、それぞれ異なるHRTFを非対称的に通過させるので、位相を変化させて左右信号を生成する既存の方法に比べて、音色の変化が少ないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付された図面を参照して、本発明の望ましい実施形態を説明する。
【0019】
図2は、本発明に係るワイドモノサウンドの再生システムの全体ブロック図である。図2のモノサウンド再生システムは、信号分離部210、非対称バイノーラル合成部220、クロストークキャンセラ230、左ダイレクトフィルタ240及び右ダイレクトフィルタ250を備える。
【0020】
図2に示すように、信号分離部210は、入力されるモノサウンドを周波数バンド別または位相別に区分して、非相関された複数の信号に分離する。例えば、信号分離部210は、入力されるモノサウンドを低域フィルタリング及び高域フィルタリングを通じて、それぞれ低域周波数及び高域周波数成分の信号に分離する。
【0021】
非対称バイノーラル合成部220は、任意の位置に対する仮想音源を形成するために、信号分離部210で分離された各信号に対して、相異なるHRTFを反映して、人間の頭の正面中央を中心に左右非対称的に定位させる。すなわち、非対称バイノーラル合成部220は、HRTFを利用した仮想のスピーカを、人間の頭の正面中央を中心に非対称的に配置させる。
【0022】
本発明の実施形態が、たとえ聴取者の頭を参照して記述されたとしても、聴取者は、実際に聴取点に位置される必要がない。本記載は、本発明の一般的な発明の概念の範囲に限定されず、モノサウンド再生システムが使用されるとき、聞取者の頭が典型的に位置する場所を証明することのみが含まれる。
【0023】
クロストークキャンセラ部230は、非対称バイノーラル合成部220で生成された仮想音源に対して、二つの実際のスピーカと聞取者の量耳との間のクロストークをキャンセリングする。すなわち、クロストークキャンセラ部230は、左側(または右側)スピーカ280−1、280−2で再生される信号が、聞取者の右耳(または左耳)で聞こえないように、両信号のクロストークをキャンセリングする。
【0024】
左ダイレクトフィルタ部240及び右ダイレクトフィルタ部250は、ゲイン及びディレイのみからなるフィルタであって、az−bであり、入力されるモノサウンド及びクロストークキャンセラ部230でクロストークキャンセリングされた仮想音源間の信号特性を調整する。ここで、aは、出力信号レベルであり、bは、時間遅延値であり、インパルス応答や位相特性、または聴取実験を通じて求める。すなわち、左ダイレクトフィルタ240及び右ダイレクトフィルタ250は、仮想のスピーカ出力と実際のスピーカ出力間の時間遅延及び出力レベルの差を調整して、自然な声を生成する。
【0025】
最終的に、左ダイレクトフィルタ240及び右ダイレクトフィルタ250でフィルタリングされたモノサウンド信号と、クロストークキャンセラ部230でクロストークキャンセリングされた仮想音源信号とが合わせられて、それぞれ左スピーカ280−1及び右スピーカ280−2に出力される。
【0026】
図3は、図2のワイドモノサウンドの再生システムの一実施形態についての概念図である。図3に示すように、入力されるモノサウンド信号xは、信号分離部210を通じて非相関された相異なる二つの信号x、xに分離される。その分離された信号は、人間の頭の正面中央を中心に非対称的に配置された仮想のスピーカで再生される。仮想のスピーカは、点線で表示され、一実施形態で聴取者の正面中央から相異なる角度θ、θで測定された4個のHRTFを反映して4個に形成される。また、仮想のスピーカの異なる個数及び非対称配列が使用されうる。すなわち、分離された信号xは、左側に第1角度θに位置した仮想のスピーカと、右側に第2角度θに位置した仮想のスピーカとで再生され、分離された信号xは、左側に第2角度θに位置した仮想のスピーカと、右側に第1角度θに位置した仮想のスピーカとで再生される。このとき、仮想のスピーカは、人間の頭の正面中央を中心に左右対称に配置される。しかし、分離された各信号x、xは、人間の頭の正面中央を中心に左右非対称に仮想のスピーカに入力される。
【0027】
図4A及び図4Bは、図2の信号分離部210の一実施形態である。図4Aに示すように、モノサウンド信号xは、LPF 412及びHPF 414を通じて低域成分の信号x及び低域成分の信号xに分離される。
【0028】
図4Bに示すように、モノサウンド信号xは、LPF 416及び合算器418を通じて低域成分の信号xと、元来信号x及び高域成分の信号xが合算された信号xとに分離される。これらの実施形態の一つが、ワイドモノサウンドの再生システムに使用されうる。
【0029】
図5は、図2のワイドモノサウンドの再生システムの一実施形態についての詳細図である。図5に示すように、信号分離部512は、信号をバンド別に分離するLPF 512及びHPF 514を使用する。したがって、入力されるモノサウンド信号xは、LPF 512及びHPF 514を通じて二つの周波数バンドに分けられる。
【0030】
非対称バイノーラル合成部220は、聴取者の正面中央で左右に相異なる角度で測定されたHRTF B(−θ)、B(−θ)、Bθ、B(θ)、B(−θ)、B(−θ)、B(θ)、B(θ)を備え、信号分離部210で分離された各信号をHRTFとコンボリューションさせて、人間の頭の正面中央を中心に左右非対称的な仮想の位置に定位させる。ここで、B(−θ)及びB(−θ)は、聴取者の正面の左側θ角度で測定された左耳及び右耳のHRTFを表す。そして、B(θ)、B(θ)は、聴取者の正面の右側θ角度で測定された左耳及び右耳のHRTFを表す。そして、B(−θ)、B(−θ)は、聴取者の正面の左側θ角度で測定された左耳及び右耳のHRTFを表す。そして、B(θ)、B(θ)は、聴取者の正面の右側θ角度で測定された左耳及び右耳のHRTFを表す。例えば、音源をB(−θ)とコンボリューションして、左側チャンネルで再生し、B(−θ)とコンボリューションして、右側チャンネルで再生すれば、聴取者は、仮想の音源が−θ角度であるように感じられる。
【0031】
LPF512を通過した信号は、B(−θ)、B(−θ)、B(θ)、B(θ)とそれぞれコンボリューションされ、HPF 514を通過した信号は、
(−θ)、B(−θ)、B(θ)、B(θ)とそれぞれコンボリューションされる。
【0032】
このとき、B(−θ)とコンボリューションされた信号及びB(θ)とコンボリューションされた信号とが合わせられ(512)、B(−θ)とコンボリューションされた信号及びB(θ)とコンボリューションされた信号とが合わせられる(522)。また、B(−θ)とコンボリューションされた信号及びB(θ)とコンボリューションされた信号とが合わせられ(523)、B(−θ)とコンボリューションされた信号及びB(θ)とコンボリューションされた信号とが合わせられる(524)。合算部521の出力及び合算部523の出力が合わせられて(525)、左側チャンネルに出力される。そして、合算部522の出力及び合算部524の出力が合わせられて(526)、右側チャンネルに出力される。
【0033】
したがって、LPF 512を通過した信号は、聴取者の正面左側にθ角度に位置した仮想のスピーカと、右側にθ角度に位置した仮想のスピーカとで再生され、HPF 514を通過した信号は、聴取者の正面左側にθ角度に位置した仮想のスピーカと、右側にθ角度に位置した仮想のスピーカとで再生される。結局、LPF 512及びHPF 514を通過した信号は、人間の頭の正面中央を中心に左右非対称的な仮想の位置に定位される。
【0034】
クロストークキャンセラ部230は、非対称バイノーラル合成部260から出力される二つのチャンネルの信号を、クロストークキャンセレーションアルゴリズムが適用されたトランスオーラルフィルタ係数C11(Z)、C21(Z)、C12(Z)、C22(Z)を通じてデジタルフィルタリングする。
【0035】
図5のようなシステムは、分離された信号に対して非対称的にバイノーラル合成したが、図3に示すように、仮想のスピーカが全体的には対称的な形態を有している。したがって、次式のようなHRTF自体の対称性を利用し、同じ入力及び同じ出力を有するHRTFをコンボリューションする前にあらかじめ合わせれば、図6のように、構造を簡略化できる。
【0036】
(θ)=B(−θ)、B(θ)=B(−θ)、B(θ)=B(−θ)、B(θ)=B(−θ
図6に示すように、全体的に見れば、仮想のスピーカを対称的に配置して、非対称バイノーラル合成部220が対称的な構造を有するため、音相が一方向に傾く現象を防止できる。また、非対称バイノーラル合成部220に入力される二チャンネルの信号は、モノサウンド信号からそれぞれLPF 512及びHPF 514を通過した相異なる信号であるので、聞取者の正面中央にファントムイメージとして生成されない。
【0037】
ここで、非対称バイノーラル合成部220及びクロストークキャンセラ部230の係数は変わらない値であるので、相互乗算して、次のようにワイドニングフィルタ行列で形成されうる。
【0038】
【数4】


ここで、W11、W12、W21、W22は、ワイドニングフィルタ係数であり、C11、C12、C21、C22は、クロストークキャンセラ係数であり、B(θ)、B(θ)は、それぞれ右にθ角度で測定された左耳及び右耳のHRTFを表し、B(θ)、B(θ)は、それぞれ右側にθ角度で測定された左耳及び右耳のHRTFを表す。
【0039】
図7は、図6の非対称バイノーラル合成部220及びクロストークキャンセラ部230をワイドニングフィルタ行列式により最適化したブロック図である。図7に示すように、非対称バイノーラル合成部210及びクロストークキャンセラ部220を合わせて、ワイドニングフィルタ部710と定義する。ステレオサウンドが、ワイドニングフィルタ部710を通過して2個のスピーカを通じて再生されれば、前方に広く配置した仮想のスピーカを通じて音がするように感じられる。この場合、仮想のスピーカの数及び位置によって、ステレオサウンドが広くなるが、仮想のスピーカが位置していない正面中央での声が空いたように感じられるので、聴取者は、不安感と共に音色が変質した不自然な音を聞く。これを解決するために、左ダイレクトフィルタ240及び右ダイレクトフィルタ250を定義して、実際に左スピーカ280−1及び右スピーカ280−2を通じても声を出力させる。左ダイレクトフィルタ240及び右ダイレクトフィルタ250は、実際のスピーカ及び仮想のスピーカの出力の大きさ及び時間遅延を調整する。左ダイレクトフィルタ240及び右ダイレクトフィルタ250の時間遅延は、音色を変えないために、あらかじめ設計されたワイドニングフィルタ710の時間遅延と合わせる。左ダイレクトフィルタ240及び右ダイレクトフィルタ250は、実際のスピーカと仮想のスピーカとの間の出力レベルの比率を決定する。したがって、左ダイレクトフィルタ240及び右ダイレクトフィルタ250は、ステレオサウンドが分離される程度を調整できる。極端な場合に、左ダイレクトフィルタ240及び右ダイレクトフィルタ250の大きさが0に近ければ、仮想のスピーカのみを通じて声が再生されるので、ステレオサウンドステージが広くなる一方、真中での声が空き、左ダイレクトフィルタ240及び右ダイレクトフィルタ250の大きさが非常に大きければ、実際のスピーカのみを通じて声が再生されるので、ワイドステレオ効果がなくなる。したがって、数多くの聴取実験を通じてダイレクトフィルタの大きさを決定せねばならない。図7に示すように、ワイドニングフィルタ710は、二つのチャンネルに入力される信号を仮想音源に形成して、仮想のスピーカに出力させ、左ダイレクトフィルタ(A(z))240及び右ダイレクトフィルタ(A(z))250は、入力される二チャンネルの信号及び仮想音源の信号の特性を調節して、実際のスピーカに出力させる。
【0040】
また、本発明は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体にコンピュータで読み取り可能なコードとして具現することが可能である。コンピュータで読み取り可能な記録媒体は、コンピュータシステムによって読み取られうるデータが保存されるあらゆる種類の記録装置を含む。コンピュータで読み取り可能な記録媒体の例としては、ROM、RAM、CD−ROM、磁気テープ、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、フラッシュメモリ、光データ記録装置などがあり、またキャリアウェーブ(例えば、インターネットを介した伝送)の形態で具現されるものも含む。また、コンピュータで読み取り可能な記録媒体は、ネットワークに連結されたコンピュータシステムに分散されて、分散方式でコンピュータで読み取り可能なコードとして保存かつ実行されうる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、ワイドモノサウンドの再生方法及びシステムに係り、一般的に、パソコン、TV、ノート型パソコン、携帯電話などに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】従来のモノサウンド再生システムのブロック図である。
【図2】本発明に係るワイドモノサウンドの再生システムの全体ブロック図である。
【図3】図2のワイドモノサウンドの再生システムで、ワイドモノサウンドで再生する方法の概念図である。
【図4A】図2の信号分離部の一実施形態を示す図である。
【図4B】図2の信号分離部の一実施形態を示す図である。
【図5】図2のワイドモノサウンドの再生システムの詳細図である。
【図6】図5のワイドモノサウンドの再生システムを簡略化したブロック図である。
【図7】図6のワイドモノサウンドの再生システムを最適化したブロック図である。
【符号の説明】
【0043】
210 信号分離部
、x 信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイドモノサウンドの再生方法において、
(a)入力されるモノサウンドを、非相関された複数の信号に分離する信号分離過程と、
(b)前記分離された各信号に対して相異なる頭伝達関数を反映して、人間の頭の正面中央を中心に左右非対称的な仮想の位置に定位させる仮想音源の生成過程と、
(c)前記生成された仮想音源のクロストークをキャンセリングするクロストークキャンセリング過程とを含むワイドモノサウンドの再生方法。
【請求項2】
前記入力されるモノサウンドと前記クロストークキャンセリングされた仮想音源との間の信号特性を調整するダイレクトフィルタリング過程をさらに含む請求項1に記載のワイドモノサウンドの再生方法。
【請求項3】
前記ダイレクトフィルタリング過程は、クロストークキャンセリングされた仮想音源の出力レベル及び時間遅延によって信号特性が決定されることを特徴とする請求項2に記載のモノサウンド再生方法。
【請求項4】
前記信号分離過程は、入力されるモノサウンドを周波数バンド別に分離することを特徴とする請求項1に記載のワイドモノサウンドの再生方法。
【請求項5】
前記信号分離過程は、入力されるモノサウンドを位相別に分離することを特徴とする請求項1に記載のワイドモノサウンドの再生方法。
【請求項6】
前記仮想音源の生成過程は、前記分離された第1信号を左右の異なる仮想の位置に定位させ、前記分離された第2信号を左右の異なる仮想の位置に定位されるが、前記第1信号が定位された仮想の位置と対称的な仮想の位置に定位させることを特徴とする請求項1に記載のモノサウンド再生方法。
【請求項7】
前記仮想音源の生成過程は、分離された第1信号は、左側に第1角度に位置した仮想のスピーカと、右側に第1角度より大きな第2角度に位置した仮想のスピーカとで再生され、分離された第2信号は、左側に前記第2角度に位置した仮想のスピーカと、右側に第1角度θに位置した仮想のスピーカとで再生されることを特徴とする請求項1に記載のモノサウンド再生方法。
【請求項8】
ワイドモノサウンドの再生方法において、
(a)入力されるモノサウンドを、非相関された複数の信号に分離する信号分離過程と、
(b)前記分離された各信号に対して相異なる頭伝達関数を反映して、人間の頭の正面中央を中心に左右非対称的な仮想の位置に定位させ、前記非対称的な仮想の位置に定位された各信号のクロストークをキャンセリングするワイドニングフィルタリング過程と、
(c)前記入力されるモノサウンドと、前記クロストークキャンセリングされた仮想音源との間のゲイン及びディレイを調整するダイレクトフィルタリング過程とを含むことを特徴とするワイドモノサウンドの再生方法。
【請求項9】
前記ワイドニングフィルタリング過程は、
【数1】


ここで、W11、W12、W21、W22は、ワイドニングフィルタ係数であり、C11、C12、C21、C22は、クロストークキャンセラ係数であり、B(θ)、B(θ)は、それぞれ右にθ角度で測定された左耳及び右耳の頭伝達関数を表し、B(θ)、B(θ)は、それぞれ右にθ角度で測定された左耳及び右耳の頭伝達関数を表すことを特徴とする請求項8に記載のワイドモノサウンドの再生方法。
【請求項10】
前記ワイドニングフィルタリング過程は、
第1セットの所定の頭伝達関数を、複数の非相関信号の一つに適用して、聴取点に対して少なくとも二つ以上の非対称点に第1非相関信号を定位させる過程と、
第2セットの所定の頭伝達関数を、第2複数の非相関信号の他の一つに適用して、聴取点に対して少なくとも他の二つ以上の非対称点に第1非相関信号を定位させる過程と、
前記適用された前記第1セットの所定の頭伝達関数から出力された右耳成分と、前記適用された前記第2セットの所定の頭伝達関数から出力された左耳成分とを合算して、右耳成分信号を生成する過程と、
前記適用された前記第1セットの所定の頭伝達関数から出力された左耳成分と、前記適用された前記第2セットの所定の頭伝達関数から出力された右耳成分とを合算して、左耳成分信号を生成する過程と、
所定のクロストークキャンセレーション係数のマトリックスを使用して、前記右耳成分信号と左耳成分信号との間にクロストークをキャンセリングする過程とを含むことを特徴とする請求項8に記載のワイドモノサウンドの再生方法。
【請求項11】
前記第1セットの所定の頭伝達関数は、
第1聴取点上の第1角度に、第1非相関信号の一部分を定位させるための左耳及び右耳の第1頭伝達関数及び第2頭伝達関数と、
第2聴取点上の第1角度と異なる第2角度に、第1非相関信号の他の部分を定位させるための左耳及び右耳の第3頭伝達関数及び第4頭伝達関数とを備えることを特徴とする請求項10に記載のワイドモノサウンドの再生方法。
【請求項12】
ワイドモノサウンドの再生システムにおいて、
入力されるモノサウンドを、非相関された複数頓着信号に分離する信号分離部と、
前記信号分離部で分離された各信号に対して相異なる頭伝達関数を反映して、人間の頭の正面中央を中心に左右非対称的な仮想の位置に定位させるバイノーラル合成部と、
所定の音響伝達関数に基づいて、前記バイノーラル合成部で仮想の位置で定位された仮想音源間のクロストークをキャンセリングするクロストークキャンセラ部と、
前記入力されるモノサウンドと、前記クロストークキャンセラ部でクロストークキャンセリングされた仮想音源との間の信号特性を調整するダイレクトフィルタ部と、
前記ダイレクトフィルタ部から出力される信号と、前記クロストークキャンセラ部から出力される信号とを合算して、左右スピーカに出力する出力部とを備えることを特徴とするワイドモノサウンドの再生システム。
【請求項13】
前記信号分離部は、
入力されるモノサウンドの低域成分をフィルタリングする低域フィルタと、
入力されるモノサウンドの高域成分をフィルタリングする高域フィルタとを備えることを特徴とする請求項12に記載のワイドモノサウンドの再生システム。
【請求項14】
前記バイノーラル合成部の頭伝達関数係数行列と、前記クロストークキャンセラ部のフィルタ係数行列とをコンボリューションして、ワイドニングフィルタ係数行列から構成し、そのワイドニングフィルタ係数行列は、
【数2】


ここで、W11、W12、W21、W22は、ワイドニングフィルタ係数であり、C11、C12、C21、C22は、クロストークキャンセラ係数であり、B(θ)、B(θ)は、それぞれ右にθ角度で測定された左耳及び右耳の頭伝達関数を表し、B(θ)及びB(θ)は、それぞれ右側にθ角度で測定された左耳及び右耳の頭伝達関数を表すことを特徴とする請求項12に記載のワイドモノサウンドシステム。
【請求項15】
前記ダイレクトフィルタ部は、ゲイン及びディレイからなるフィルタであることを特徴とする請求項12に記載のワイドモノサウンドシステム。
【請求項16】
前記ダイレクトフィルタ部は、前記入力されるモノサウンド信号をゲイン及びディレイを調整して、それぞれ左右に分離して出力する左右フィルタを備えることを特徴とする請求項12に記載のワイドモノサウンドシステム。
【請求項17】
モノサウンドシステムにおいて、
第1スピーカ及び第2スピーカのうち少なくとも何れか一つに対応するシングルチャンネルサウンド信号を発生させ、前記シングルチャンネルサウンド信号から第1信号及び第2信号を決定し、前記システムの聴取点に対してワイド角度で第1信号及び第2信号のそれぞれに出力するために、複数の非対称の仮想のスピーカを発生させる仮想サウンドソース発生部を備えることを特徴とするモノサウンドシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−28624(P2007−28624A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193043(P2006−193043)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】