説明

ワイパ装置

【課題】部品点数を減少させて製造コストを抑えつつ小型化を図ることができるワイパ装置を提供する。
【解決手段】バイモルフ型圧電素子を振動させて駆動体を回転軸を中心にして回動させる駆動装置51を備えたワイパ装置1であって、駆動装置51は、監視カメラ41によって撮像された画像に基づいてレンズ(カバーガラス)に異物や水滴が付着しているか否かの判断を行う画像処理装置57と、画像処理装置57の判断に基づいてバイモルフ型圧電素子に電圧を供給する圧電ワイパ駆動回路55とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧電素子を利用してカメラのカバーガラスを払拭するワイパ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路の路肩に監視カメラを設置し、監視カメラによって撮像された画像を犯罪の有力な証拠情報として用いたり、自動車などの車両に監視カメラを搭載し、運転席からでは見え難い箇所の障害物を車内に搭載した監視モニタなどを用いて運転者が容易に認識できるようにしたりする技術が知られている。
この種の監視カメラは、大気にさらされた状態になる場合が多い。このような場合、監視カメラのカバーガラスに異物や水滴が付着しやすく、監視カメラの視野が狭くなったり、撮像された画像がぼやけてしまったりする。
【0003】
ここで、監視カメラのカバーガラスに付着した異物や水滴を払拭することを考えると、作業者が目視によって画像の鮮明度を確認し、人為的にカバーガラスを払拭していたのでは作業が煩わしいばかりか、常に鮮明な画像を得難い。このため、カバーガラスの異物や水滴の付着を自動的に検出し、この検出結果に基づいて自動的にワイパを駆動させてカバーガラスを払拭するさまざまな技術が提案されている。
【0004】
例えば、カバーガラス(板状部材)の内部に光を出射する発光素子と、この発光素子から出射された光を受光する受光素子とをカバーガラスを挟んで対向配置した技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1によれば、カバーガラスに何ら付着していない場合、発光素子から出射された光は、カバーガラスと空気層との境界で全反射を繰り返しながら殆ど光の量が減少せずに受光素子に到達する。これに対し、カバーガラスに異物や水滴が付着している場合、発光素子から出射された光は、異物や水滴に吸収されるか、または乱反射してしまう。このため、受光素子に到達する光の量が減少するので、カバーガラスの異物や水滴の付着を自動的に検出することができる。
【特許文献1】特開平2−281132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、監視カメラに発光素子や受光素子を設ける必要があり、部品点数が増えるばかりかコストが嵩んでしまうという課題がある。
とりわけ、監視カメラとして小型カメラを用いる場合にあっては、異物や水滴を検出する装置を含む装置全体が大型化してしまうという課題がある。
【0006】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、部品点数を減少させて製造コストを抑えつつ小型化を図ることができるワイパ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、回転軸と、前記回転軸に一端が取り付けられ、圧電素子が設けられた駆動体と、前記駆動体に設けられ、オートフォーカス機能を有するカメラのカバーガラスを払拭するワイパブレードと、前記回転軸に形成された接触面に当接する軸受け面を有する本体部と、前記軸受け面に前記接触面を押接させ、これら軸受け面と接触面との摩擦抵抗によって前記回転軸に回転抵抗力を付与する抵抗付与部材と、前記圧電素子に接続され、前記圧電素子を振動させて前記駆動体を前記回転軸を中心にして回動させる駆動装置とを備えたワイパ装置であって、前記駆動装置は、前記カメラによって撮像された画像に基づいて前記カバーガラスに異物や水滴が付着しているか否かの判断を行う画像処理装置と、前記画像処理装置の判断に基づいて前記圧電素子に電圧を供給する駆動回路とを備えていることを特徴とする。
このように構成することで、カメラによって撮像された画像を用いてカバーガラスに異物や水滴が付着しているか否かの判断を行うことができるので、部品点数が増加することなく、製造コストの低減化、およびワイパ装置の小型化を図ることができる。
また、ワイパブレードを駆動させる駆動源として、例えば、電動モータなどに代わって圧電素子を用いることで、さらにワイパ装置を小型化することができる。
【0008】
請求項2に記載した発明は、前記本体部に前記駆動体の回動範囲を規制する一対の規制部を設けると共に、前記駆動体を前記一対の規制部の間を往復運動するように構成し、前記駆動装置に、前記駆動回路から出力される電圧値から前記駆動体が前記一対の規制部に当接したことを検出し、この検出結果に基づいて反転位置検出信号を出力する反転制御手段を設け、前記画像処理装置は、前記反転制御手段の前記反転位置検出信号が出力されたとき、前記カバーガラスに異物や水滴が付着しているか否かの判断を行うことを特徴とする。
このように構成することで、確実にワイパブレードが撮像されていないときの画像を用いてカバーガラスの異物や水滴の付着を判断することができる。このため、ワイパ装置の誤作動を確実に防止することができる。
【0009】
請求項3に記載した発明は、前記画像処置装置は、前記カメラの焦点距離を計測する焦点距離計測部と、所定の焦点距離を閾値として設定可能なメモリ部と、前記焦点距離計測部によって計測した焦点距離と前記メモリ部に設定されている閾値とを比較し、前記カバーガラスに異物や水滴が付着しているか否かの判断を行う焦点距離比較手段とを備えていることを特徴とする。
このように構成することで、例えば、カメラとカバーガラスとの間の距離を閾値として設定しておけば、カバーガラスに異物や水滴が付着していることが確認できるので、ワイパ装置の複雑化を抑制することができる。
【0010】
請求項4に記載した発明は、前記画像処置装置は、前記カメラによって撮像された画像内の物体の輪郭抽出を行う輪郭抽出部と、所定の輪郭の大きさを閾値として設定可能なメモリ部と、前記輪郭抽出部によって抽出された前記物体の輪郭の大きさと前記メモリ部に設定されている閾値とを比較すると共に、前記輪郭抽出部によって前記物体の輪郭抽出を行えたか否かの判断を行い、前記カバーガラスに異物や水滴が付着しているか否かの判断を行う輪郭比較手段とを備えていることを特徴とする。
このように構成することで、予め異物や水滴の輪郭を閾値として設定しておけば、カメラによって撮像された画像に基づいて、カバーガラスに異物や水滴が付着しているか否かの判断を容易に行うことができる。また、カメラによって撮像された画像から物体の輪郭を抽出できない場合、カバーガラスに異物や水滴が付着することによってカメラの焦点が合わないと判断することができる。
【0011】
請求項5に記載した発明は、前記画像処置装置は、前記カメラによって撮像された画像のコントラストを検出するコントラスト検出部と、所定のコントラストを閾値として設定可能なメモリ部と、前記コントラスト検出部によって検出されたコントラストと前記メモリ部に設定されている閾値とを比較し、前記カバーガラスに異物や水滴が付着しているか否かの判断を行うコントラスト比較手段とを備えていることを特徴とする。
このように構成することで、カメラによって撮像された画像のコントラストを評価することでカバーガラスに異物や水滴が付着しているか否かの判断を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カメラによって撮像された画像を用いてカバーガラスに異物や水滴が付着しているか否かの判断を行うことができるので、部品点数が増加することなく、製造コストの低減化、およびワイパ装置の小型化を図ることができる。
また、ワイパブレードを駆動させる駆動源として、例えば、電動モータなどに代わって圧電素子を用いることで、さらにワイパ装置を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、この発明の第一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
図1、図2に示すように、ワイパ装置1は、例えば、自動車のリヤガラス、サイドバンパー、フロントグリル内などに配設される監視カメラ41のレンズカバー(不図示)に取り付けられている。
監視カメラ41としては、例えば、CCD(CCD;Charge Coupled Device)カメラなどのオートフォーカス機能を有するものが用いられる。監視カメラ41には、撮像された画像を出力する監視モニタ45が接続されている。監視モニタ45は車内などに取り付けられ、運転者などが監視カメラ41によって撮像された画像を監視することができるようになっている。
【0014】
ワイパ装置1は、圧電ワイパ2と、この圧電ワイパ2を駆動させるための駆動装置51とを備えている。
圧電ワイパ2は、略円環状のレンズホルダ3と、この一側に設けられたアクチュエータ部4とを備え、このアクチュエータ部4に駆動装置51が接続された状態になっている。
レンズホルダ3は、ステンレス材(例えば、SUS304L)で形成されたものであって、内周面5にはレンズホルダ3に対応するレンズ6が内嵌固定されている。このレンズ6は、監視カメラ41のレンズカバー(不図示)の前面を覆うように配置される。すなわち、レンズ6は、監視カメラ41のカバーガラスとして機能している。
【0015】
アクチュエータ部4は、レンズホルダ3と一体成形されている平面視略長方形状のベースプレート7と、このベースプレート7に回転自在に支持された回転軸8と、回転軸8に取付けられた駆動体27とを備えている。
駆動体27は、回転軸8の外周面8aから径方向外側に向かって延出形成されている。駆動体27には、電気−機械変換素子の1つであるバイモルフ型圧電素子10が使用されている。
【0016】
バイモルフ型圧電素子10は、薄い金属板の中心電極両面に圧電セラミックスを貼り合わせた構造となっている。バイモルフ型圧電素子10は、この全体の大部分がゴム製のブレードラバー12で被覆された状態になっている。
駆動体27の下側、つまり、レンズ6側には、駆動体27の長さに対応するゴム製のワイパブレード11が設けられている。このワイパブレード11は、レンズ6を払拭するためのものであって、ブレードラバー12と一体成形されている。
【0017】
回転軸8は、コプナ樹脂等の熱硬化性樹脂(例えば、株式会社大西ライト工業所製「SKレジン(商品名)」等)で形成されたものである。回転軸8の下端8b(図2における下側)には、段差によって縮径された縮径部14が一体成形されている。
【0018】
ベースプレート7のベース面7aには、回転軸8の縮径部14に対応する部位に、この縮径部14が内嵌される平面視略円環状の凸部15が立ち上がり形成されている。凸部15の内周面に回転軸8の縮径部14が内嵌されることにより、回転軸8は、ベースプレート7に回転自在に支持された状態になる。また、ベースプレート7に形成されている凸部15の端面15aと、回転軸8の下端8bとが互いに摺接した状態になっている。
【0019】
さらに、ベースプレート7のベース面7aには、一対の支柱31,31が回転軸8を中心にしてベースプレート7の長手方向に振り分け配置されている。一対の支柱31,31には、それぞれ軸方向に貫通する貫通孔34が形成されている。また、一対の支柱31,31の上端31a,31aには、両者31a,31aに跨るようにプレート32が設けられている。
【0020】
プレート32には、各支柱31,31の貫通孔34,34に対応する部位に、段付き状のボルト孔33,33が形成されている。一方、ベースプレート7には、支柱31の貫通孔34に対応する部位に、雌ネジ部25が刻設されている。支柱31、およびプレート32は、貫通孔34、およびボルト孔33にボルト35が挿通され、このボルト35がベースプレート7の雌ネジ部25に螺入されることによって、ベースプレート7に締結固定される。
【0021】
プレート32の長手方向略中央には、バネホルダ挿通孔36が形成されており、ここにバネホルダ37が圧入固定されている。バネホルダ37は有底筒状に形成されたものであって、エンド部(底部)37aを軸方向外側に向けた状態で配置されている。バネホルダ37の内側には、コイルバネ38が設けられている。コイルバネ38は、一端がバネホルダ37のエンド部37aに当接するように配置されている。
【0022】
コイルバネ38の他端には、スチールボール39が設けられている。スチールボール39は、コイルバネ38によって回転軸8側へと付勢されている。ここで、回転軸8の上端8cとバネホルダ37との間には僅かに間隙が形成されるようになっており、回転軸8の上端8cはスチールボール39にのみ当接した状態になっている。回転軸8の上端8cにおいて、スチールボール39のみが当接することにより、回転抵抗を減少させることができる。
【0023】
一方、コイルバネ38、およびスチールボール39によって押圧された回転軸8とベースプレート7との間には摩擦力が発生し、回転軸8とベースプレート7の間に回転抵抗力が生じるようになっている。
すなわち、回転軸8の下端8bは、ベースプレート7に接触する接触面としての機能を有すると共に、回転軸8の下端8bを受けるベースプレート7の凸部15の端面15aは軸受け面としての機能を有する。
【0024】
ここで、回転軸8は、内部が中空状に形成されており、ここに駆動体27、つまり、バイモルフ型圧電素子10に対して電圧を印加するためのリード線52が配線されている。このリード線52の一端は、駆動体27に接続されている。一方、リード線52の他端は、駆動装置51に接続されている。
【0025】
図3に示すように、駆動装置51は、圧電ワイパ2を駆動させるか否かの判断を行う画像処理システム53と、画像処理システム53による判断結果に基づいて圧電ワイパ2を駆動させる指令信号を出力するワイパ駆動指令部54と、ワイパ駆動指令部54からの指令信号に基づいて圧電ワイパ2の駆動体27に電圧を印加する圧電ワイパ駆動回路55と、圧電ワイパ駆動回路55から出力される電圧値を検出する出力電圧検出回路56とを備えている。
【0026】
画像処理システム53は、監視カメラ41によって撮像された画像に基づいて圧電ワイパ2のレンズ6に異物や水滴が付着しているか否かの判断を行う画像処理装置57と、出力電圧検出回路56の検出結果に基づいて圧電ワイパ2の駆動体27の制御を行う反転制御手段58と、反転制御手段58の制御信号に基づいて画像処理装置57を動作させる指令信号を出力する画像処理指令手段59とを備えている。
【0027】
監視カメラ41によって撮像された画像は、監視モニタ45に出力されると共に、画像処理システム53の画像処理装置57に出力される。
画像処理装置57は、焦点距離計測部61と、メモリ62と、焦点距離比較手段63と、汚れ・雨滴付着判定部64とを有しており、焦点距離計測部61に監視カメラ41の画像が入力される。
【0028】
焦点距離計測部61は、監視カメラ41によって撮像された画像に基づいて被写体までの焦点距離を計測する。
メモリ62は、予め所定の焦点距離、例えば、監視カメラ41とレンズ6との間の距離をレンズに異物や水滴などが付着したか否かの閾値として設定し、記憶させておくことができるようになっている。ここで、例えば、圧電ワイパ2のレンズ6に異物や水滴などが付着した場合、監視カメラ41は異物や水滴に焦点を合わせるので、焦点距離は監視カメラ41とレンズ6との間の距離ということになる。このため、この距離を閾値としてメモリ62に予め設定しておくことで、この閾値よりも焦点距離が短い場合には圧電ワイパ2のレンズ6に異物や水滴が付着していると判断することができる。
【0029】
焦点距離比較手段63は、焦点距離計測部61によって計測された焦点距離とメモリ62に記憶されている閾値とを比較する。そして、比較結果の信号を汚れ・雨滴付着判定部64に出力する。汚れ・雨滴付着判定部64は、比較結果の信号に基づいて圧電ワイパ2のレンズ6に異物や水滴が付着しているか否かの判断を行い、判断結果の信号をワイパ駆動指令部54に出力する。
具体的には、焦点距離が閾値よりも長ければレンズ6に異物や水滴が付着していないと判断する。これに対し、焦点距離が閾値以下であればレンズ6に異物や水滴が付着していると判断する。
【0030】
ワイパ駆動指令部54は、汚れ・雨滴付着判定部64によりレンズ6に異物や水滴が付着していると判断されたとき、圧電ワイパ駆動回路55に圧電ワイパ2を駆動させる指令信号を出力する。
圧電ワイパ駆動回路55は、ワイパ駆動指令部54からの指令信号に基づいて所定の電圧を圧電ワイパ2の駆動体27に印加する。
【0031】
ここで、図4に基づいて、圧電ワイパ駆動回路55から駆動体27に印加される電圧波形の一例と、この電圧波形に基づく駆動体27の挙動について説明する。
図4は、縦軸を電圧(V)とし、横軸を時間(s)とした場合の駆動体27の駆動体27に印加される電圧の入力波形αを示し、この下方に駆動体27の挙動を示した説明図である。なお、この実施形態において、駆動体27はプラス電圧のときには回転軸8を中心にして紙面右方向に変位し、マイナス電圧のときには紙面左方向に変位するものとする。
【0032】
同図に示すように、まず、駆動体27にマイナス電圧を印加させた状態では、駆動体27は回転軸8を中心にして左方向に変位した状態にある(図4におけるX1)。
次に、電圧をマイナスからプラスにゆっくり変化させると駆動体27もそれに応じてゆっくりと右方向に変位する(図4におけるX2)。
【0033】
続いて、電圧をプラスからマイナスに変化させる(X3→X5)。このとき、電圧変化を(X1→X2)のときよりも急激にする。すると、(X3→X5)では、駆動体27が(X1→X2)のときよりも急激に変形する(曲がる)。つまり、電圧変化がゆっくりである場合と急激である場合とでは、駆動体27の変形速度に差が生じる。
【0034】
駆動体27が急激に変位すると、駆動体27にはその重量によってその場に残ろうとする慣性力が発生する。そして、駆動体27の変形速度差から(X1→X2)のときの慣性力よりも(X3→X5)のときの慣性力の方が大きくなる。
この慣性力に対しては、回転軸8に付与される回転抵抗力が作用する。すなわち、駆動体27の変形に伴い慣性力と摩擦力とが対抗する形となる。アクチュエータ部4では、回転抵抗力Frが(X1→X2)のときの慣性力F12よりも大きく、(X3→X5)のときの慣性力F35よりも小さくなるように設定されている(F12<Fr<F35)。
【0035】
したがって、(X1→X2)の場合の慣性力F12は、回転抵抗力Frによって打ち消される形となり、駆動体27は電圧値に応じた角度だけゆっくりと変位するが、回転軸8は回転しない。これに対して、(X3→X5)の場合には、慣性力F35は、回転抵抗力Frによって打ち消されない。このため、駆動体27が電圧変化に伴い急激に反対方向へ変位するに伴い、慣性力F35によって回転軸8が駆動体27の変形方向と逆の方向(図4においては反時計回り)に回転する。
【0036】
そして、これを順次繰り返し行うことによって、駆動体27は、ゆっくりと曲げたときの変位側に自走する。なお、電圧変化を図4とは逆に、ゆっくりとマイナス側へと変化させ、急激にプラス側へと変化させると、駆動体27は図4において右方向(時計回り)に回転する。つまり、アクチュエータ部4では、この電圧変化パターンの切り換えにより駆動体27を適宜往復運動させることができる。
【0037】
また、電圧変化の周波数を変化させることにより駆動体27の移動速度も制御できる。
このように(X1→X2)では静摩擦トルクが、(X3→X5)では動摩擦トルクが駆動体27の挙動に影響し、これら静摩擦トルクと動摩擦トルクとの差を利用して駆動体27が回転軸8を中心に所定方向に回動するようになっている。
【0038】
さらに、バイモルフ型圧電素子10への印加電圧(波形α)では、鋸歯波形の上下に電圧を一体に保持した休止時間t1,t2が設定されている。
ここで、鋸歯波形に休止時間を設けることなく電圧印加方向を即座に急転させると、急転時に駆動体27が駆動方向とは逆方向にすべり、このすべり発生により駆動速度が低下する場合がある。そこで、鋸歯波形に休止時間t1,t2を設定し、印加電圧を台形波形とすると、駆動方向に反する逆すべりが減少し、駆動速度低下を抑制することができる。
【0039】
ここで、図5に示すように、駆動体27の回動範囲は、圧電ワイパ2のベースプレート7に設けられている一対の支柱31,31によって決定する。すなわち、一対の支柱31,31が回転軸8を中心にしてベースプレート7の長手方向に振り分け配置されていることから、これら支柱31,31が駆動体27の回動範囲を規制する規制部として機能する。このため、駆動体27は、一対の支柱31,31の間を往復移動するように駆動装置51によって制御される。
【0040】
図3、図5に示すように、支柱31に駆動体27が当接すると駆動装置51の圧電ワイパ駆動回路55から出力される電圧に変化が生じる。この駆動体27が支柱31に当接することによる電圧の変化は、圧電ワイパ駆動回路55に出力電圧検出回路56を介して接続されている反転制御手段58によって検出される。
出力電圧検出回路56は、圧電ワイパ駆動回路55から出力される電圧を検出し、検出した電圧値(電位)を反転制御手段58に出力する。
【0041】
反転制御手段58は、A/D変換器65と、メモリ66と、電圧比較手段67と、反転位置検出部68とを備えており、A/D変換器65に出力電圧検出回路56が接続されている。
A/D変換器65は、出力電圧検出回路56による検出された電圧値をデジタル信号に変換し、電圧比較手段67に出力する。
メモリ66には、予め所定の電圧値が閾値として記憶されている。
【0042】
電圧比較手段67は、A/D変換器65から入力されるデジタル信号(電圧値)とメモリ66に記憶されている閾値とを比較する。そして、A/D変換器65から入力される電圧値がメモリ66に記憶されている閾値よりも低い場合、この比較結果を示す信号(比較信号)を反転位置検出部68に出力する。
【0043】
反転位置検出部68は、電圧比較手段67から入力される信号に基づいて、駆動体27が時計回り、および反時計回りに交互に動作するように電圧変化パターンを変化させる信号(反転位置信号)を画像処理指令手段59に出力する。すなわち、反転位置検出部68から電圧変化パターンを変化させる信号が出力されたとき、駆動体27は支柱31に当接した状態にあるということになる。
【0044】
画像処理指令手段59は、反転位置検出部68から信号出力されたとき、画像処理装置57に指令信号を出力する。
ここで、画像処理装置57は、画像処理指令手段59からの指令信号に基づいて駆動するようになっている。すなわち、画像処理装置57は、圧電ワイパ2の駆動体27が一対の支柱31,31に当接する箇所に位置しているとき、監視カメラ41によって撮像された画像に基づいて圧電ワイパ2のレンズ6に異物や水滴が付着しているか否かの判断を行う。このように構成することで、監視カメラ41の焦点距離が圧電ワイパ2の駆動体27を撮像することによって短くなったとき、これを画像処理装置57がレンズ6に異物や水滴が付着していると誤判断してしまうことを防止できるようになっている。
【0045】
次に、図3、図6に基づいて、ワイパ装置1の動作について説明する。
まず、監視カメラ41の電源をONにする(ST1)。ここで、監視カメラ41の電源は常にONにしておく。
次に、監視カメラ41のオートフォーカスを開始する(ST2)。
続いて、監視カメラ41によって撮像された画像に基づいて、画像処理システム53の画像処理装置57によって焦点距離を計測し、この計測結果とメモリ62に記憶されている閾値との比較を行う(ST3)。
【0046】
焦点距離が所定の閾値以下である場合、つまり、焦点距離が圧電ワイパ2のレンズ6面になっている、または焦点が合わない場合、圧電ワイパ2のレンズ6に異物、または水滴が付着していると判断する(ST4)。
そして、ワイパ駆動指令部54から指令信号が出力される(ST5)。
次に、圧電ワイパ駆動回路55から圧電ワイパ2の駆動体27に電圧が印加され、圧電ワイパ2が駆動する(ST6)。
【0047】
続いて、圧電ワイパ駆動回路55から出力される電圧値に基づいて、駆動体27が反転位置であるか否か、つまり、駆動体27が支柱31に当接しているか否かを反転制御手段58によって検出する(ST7)。
反転制御手段58の反転位置検出部68により反転位置信号が出力された場合、つまり、駆動体27が支柱31に当接している場合(ST8の場合)、再びST3に戻り、焦点距離を計測し、閾値との比較を行う。
【0048】
一方、反転制御手段58の反転位置検出部68により反転位置信号が出力されていない場合、つまり、駆動体27が支柱31に当接していない場合(ST9の場合)、再びST5に戻り、ワイパ駆動指令部54から指令信号を出力する。
【0049】
また、ST3における比較判断によって、焦点距離が所定の閾値よりも長いと判断された場合、圧電ワイパ2のレンズ6に異物、または水滴が付着していないと判断する(ST10)。
このような判断の場合、ワイパ駆動指令部54から指令信号が出力されない(ST11)。
そして、圧電ワイパ2の駆動体27は、支柱31に当接した状態で停止する(ST12)。
【0050】
したがって、上述の第一実施形態によれば、監視カメラ41によって撮像された画像を用いてレンズ6に異物や水滴が付着しているか否かの判断を行うことができるので、部品点数が増加することなく、製造コストの低減化、およびワイパ装置1の小型化を図ることができる。
また、ワイパブレード11を駆動させる駆動源として、例えば、電動モータなどに代わってバイモルフ型圧電素子10を用いることで、さらにワイパ装置1を小型化することができる。
【0051】
さらに、画像処理装置57は、圧電ワイパ2の駆動体27が一対の支柱31,31に当接する箇所に位置しているとき、監視カメラ41によって撮像された画像に基づいて圧電ワイパ2のレンズ6に異物や水滴が付着しているか否かの判断を行う。このため、確実にワイパブレード11が撮像されていないときの画像を用いてレンズ6の異物や水滴の付着を判断することができる。このため、ワイパ装置1の誤作動を確実に防止することができる。
【0052】
そして、レンズ6に異物や水滴が付着しているか否かの判断を行うにあたって、監視カメラ41としてオートフォーカス機能を有するものを用い、画像処理装置57に予め所定の焦点距離を閾値として設定し、かつ焦点距離計測部61によって計測された焦点距離とメモリ62に記憶されている閾値とを焦点距離比較手段63で比較するようにしている。このため、駆動装置51を複雑化することなく、適宜ワイパ装置1を駆動させることができる。
【0053】
次に、この発明の第二実施形態を図7に基づいて説明する。なお、第一実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する(以下の実施形態でも同様)。
この第二実施形態において、ワイパ装置101は、例えば、自動車のリヤガラス、サイドバンパー、フロントグリル内などに配設される監視カメラ41のレンズカバー(不図示)に取り付けられている点、監視カメラ41はオートフォーカス機能を有している点、ワイパ装置101は、略円環状のレンズホルダ3と、この一側に設けられたアクチュエータ部4とを備えた圧電ワイパ2と、圧電ワイパ2のアクチュエータ部4に、これを駆動させるための駆動装置151とで構成されている点、駆動装置151は、画像処理システム153と、ワイパ駆動指令部54と、圧電ワイパ駆動回路55と、出力電圧検出回路56とを備えている点、画像処理システム153は、反転制御手段58と、画像処理指令手段59とを備えている点等の基本的構成は上述の第一実施形態と同様である(以下の実施形態でも同様)。
【0054】
ここで、第一実施形態と第二実施形態の相違点は、第一実施形態の画像処理装置57と第二実施形態の画像処理装置157との構成が違うという点にある。
すなわち、第二実施形態の画像処理システム153に設けられている画像処理装置157は、輪郭抽出部71と、メモリ72と、輪郭比較手段73と、汚れ・雨滴付着判定部74とを有している。
【0055】
輪郭抽出部71は、監視カメラ41によって撮像された物体の輪郭を抽出する。
メモリ72には、予め所定の輪郭の大きさ、例えば、レンズ6に付着すると予測される異物の輪郭の大きさが閾値として記憶されている。また、付着すると予測される水滴の輪郭の大きさが閾値として記憶されている。
輪郭比較手段73は、輪郭抽出部71によって抽出された物体の輪郭とメモリ72に記憶されている閾値とを比較する。そして、比較結果の信号を汚れ・雨滴付着判定部74に出力する。
【0056】
具体的には、輪郭抽出部71によって抽出された物体の輪郭の大きさがメモリ72に記憶されている閾値よりも大きい場合、レンズ6に異物や水滴が付着していないと判断する。これに対し、物体の輪郭の大きさがメモリ72に記憶されている閾値以下であればレンズ6に異物や水滴が付着していると判断する。
また、例えば、圧電ワイパ2のレンズ6に異物や水滴などが付着した場合、監視カメラ41は無理に異物や水滴に焦点を合わそうとしたり、焦点が何れの物体にも合わなくなったりしてしまう。このため、画像がぼやけて物体の輪郭が抽出できなくなる。この場合にもレンズ6に異物や水滴が付着していると判断する。
【0057】
汚れ・雨滴付着判定部74は、比較結果の信号に基づいて圧電ワイパ2のレンズ6に異物や水滴が付着しているか否かの判断を行い、判断結果の信号をワイパ駆動指令部54に出力する。
【0058】
したがって、上述の第二実施形態によれば、画像処理装置157に予め異物や水滴の輪郭を閾値として設定しておくことで、監視カメラ41によって撮像された画像に基づいて、レンズ6に異物や水滴が付着しているか否かの判断を容易に行うことができる。
また、監視カメラ41によって撮像された画像から物体の輪郭を抽出できない場合、レンズ6に異物や水滴が付着することによって監視カメラ41の焦点が合わないと判断することができる。
【0059】
次に、この発明の第三実施形態を図8に基づいて説明する。
ここで、第三実施形態の画像処理システム253に設けられている画像処理装置257は、コントラスト計測部81と、メモリ82と、コントラスト比較手段83と、汚れ・雨滴付着判定部84とを有している。
【0060】
コントラスト計測部81は、監視カメラ41によって撮像された画像のコントラストを計測する。
メモリ82には、予め所定のコントラスト設定し、これを閾値として記憶されるようになっている。ここで、例えば、圧電ワイパ2のレンズ6に異物や水滴などが付着した場合、監視カメラ41は無理に異物や水滴に焦点を合わそうとしたり、焦点が何れの物体にも合わなくなったりしてしまう。このため、画像がぼやけてコントラストが低下する。よって、所定のコントラストを閾値としてメモリ82に予め設定しておくことで、この閾値よりもコントラストが低い場合には、圧電ワイパ2のレンズ6に異物や水滴が付着していると判断することができる。
【0061】
コントラスト比較手段83は、コントラスト計測部81によって計測されたコントラストとメモリ82に記憶されている閾値とを比較する。そして、比較結果の信号を汚れ・雨滴付着判定部84に出力する。
汚れ・雨滴付着判定部84は、比較結果の信号に基づいて圧電ワイパ2のレンズ6に異物や水滴が付着しているか否かの判断を行い、判断結果の信号をワイパ駆動指令部54に出力する。
【0062】
したがって、上述の第三実施形態によれば、監視カメラ41によって撮像された画像のコントラストを評価することでレンズ6に異物や水滴が付着しているか否かの判断を容易に行うことができる。
【0063】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
また、上述の実施形態では、圧電ワイパ2のプレート32にコイルバネ38を設け、このコイルバネ38によって、回転軸8がベースプレート7側に向かって押接されて回転軸8とベースプレート7の間に回転抵抗力が生じる場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、回転軸8がベースプレート7側に向かって押接され、回転軸8とベースプレート7の間に回転抵抗力が生じるように構成されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第一実施形態におけるワイパ装置の斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】本発明の第一実施形態におけるワイパ装置の機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施形態における電圧の出力波形、および駆動体の挙動を示す説明図である。
【図5】本発明の第実施形態における駆動体の回動範囲を示す説明図である。
【図6】本発明の第一実施形態におけるワイパ装置の動作のフローチャートである。
【図7】本発明の第二実施形態におけるワイパ装置の機能ブロック図である。
【図8】本発明の第三実施形態におけるワイパ装置の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0065】
1,101 ワイパ装置
2 圧電ワイパ
3 レンズホルダ
4 アクチュエータ部
5 回転軸
6 レンズ(カバーガラス)
7 ベースプレート(本体部)
8 回転軸
8b 下端(接触面)
10 バイモルフ型圧電素子(圧電素子)
11 ワイパブレード
15 凸部
15a 端面(軸受け面)
27 駆動体
31 支柱(規制部)
38 コイルバネ(抵抗付与部材)
39 スチールボール
41 監視カメラ(カメラ)
51,151 駆動装置
53,153,253 画像処理システム
55 圧電ワイパ駆動回路(駆動回路)
57,157,257 画像処理装置
58 反転制御手段
61 焦点距離計測部
62,72,82 メモリ
63 焦点距離比較手段
64,74,84 汚れ・雨滴付着判定部
71 輪郭抽出部
73 輪郭比較手段
81 コントラスト計測部
83 コントラスト比較手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸に一端が取り付けられ、圧電素子が設けられた駆動体と、
前記駆動体に設けられ、オートフォーカス機能を有するカメラのカバーガラスを払拭するワイパブレードと、
前記回転軸に形成された接触面に当接する軸受け面を有する本体部と、
前記軸受け面に前記接触面を押接させ、これら軸受け面と接触面との摩擦抵抗によって前記回転軸に回転抵抗力を付与する抵抗付与部材と、
前記圧電素子に接続され、前記圧電素子を振動させて前記駆動体を前記回転軸を中心にして回動させる駆動装置とを備えたワイパ装置であって、
前記駆動装置は、
前記カメラによって撮像された画像に基づいて前記カバーガラスに異物や水滴が付着しているか否かの判断を行う画像処理装置と、
前記画像処理装置の判断に基づいて前記圧電素子に電圧を供給する駆動回路とを備えていることを特徴とするワイパ装置。
【請求項2】
前記本体部に前記駆動体の回動範囲を規制する一対の規制部を設けると共に、前記駆動体を前記一対の規制部の間を往復運動するように構成し、
前記駆動装置に、前記駆動回路から出力される電圧値から前記駆動体が前記一対の規制部に当接したことを検出し、この検出結果に基づいて反転位置検出信号を出力する反転制御手段を設け、
前記画像処理装置は、前記反転制御手段の前記反転位置検出信号が出力されたとき、前記カバーガラスに異物や水滴が付着しているか否かの判断を行うことを特徴とする請求項1に記載のワイパ装置。
【請求項3】
前記画像処置装置は、
前記カメラの焦点距離を計測する焦点距離計測部と、
所定の焦点距離を閾値として設定可能なメモリ部と、
前記焦点距離計測部によって計測した焦点距離と前記メモリ部に設定されている閾値とを比較し、前記カバーガラスに異物や水滴が付着しているか否かの判断を行う焦点距離比較手段とを備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイパ装置。
【請求項4】
前記画像処置装置は、
前記カメラによって撮像された画像内の物体の輪郭抽出を行う輪郭抽出部と、
所定の輪郭の大きさを閾値として設定可能なメモリ部と、
前記輪郭抽出部によって抽出された前記物体の輪郭の大きさと前記メモリ部に設定されている閾値とを比較すると共に、前記輪郭抽出部によって前記物体の輪郭抽出を行えたか否かの判断を行い、前記カバーガラスに異物や水滴が付着しているか否かの判断を行う輪郭比較手段とを備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイパ装置。
【請求項5】
前記画像処置装置は、
前記カメラによって撮像された画像のコントラストを検出するコントラスト検出部と、
所定のコントラストを閾値として設定可能なメモリ部と、
前記コントラスト検出部によって検出されたコントラストと前記メモリ部に設定されている閾値とを比較し、前記カバーガラスに異物や水滴が付着しているか否かの判断を行うコントラスト比較手段とを備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイパ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−81273(P2010−81273A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247047(P2008−247047)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】