説明

ワイヤーハーネスの配索方法及びワイヤーハーネスの配索構造

【課題】フラット配索ができ、しかも、電線束の配索作業性が良いワイヤーハーネスの配索方法及び配索構造を提供する。
【解決手段】ブラケット1には、電線配索面1aより所定の高さ位置で、且つ、電線配索の幅方向に配置された電線仮固定ガイド部2が設けられ、電線仮固定ガイド部2の支持部3が折り曲げによって切断可能に設けられ、ブラケット1の電線配索面1a上に、電線仮固定ガイド部2の高さ規制を受けた状態で電線束Wを配置し、その後、電線仮固定ガイド部2が設けられた位置とは異なる位置で、電線束Wを電線配索部材1と一体に封止する封止樹脂部5をモールド樹脂成形で形成し、その後、電線仮固定ガイド部2の支持部3を折り曲げ切断して電線仮固定ガイド部2を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスを電線配索部材に沿って配索するワイヤーハーネスの配索方法及び配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両に配索されるワイヤーハーネスは、電線配索部材に沿って高さを低くして配索(以下、フラット配索という)することが要求される場合がある。例えば、トランスミッション内部に組み込まれるワイヤーハーネスは、トランスミッションケースやソレノイド等の周辺部品とのクリアランス制約が厳しいため、フラット配索が要求される。特に、近年のトランスミッションの小型化、部品高密度化によってワイヤーハーネスのフラット化の要求が高くなっている。図5には、従来のワイヤーハーネスの配索構造が示されている。
【0003】
図5において、ワイヤーハーネスWHは、その電線束Wがブラケット50の電線配索面50aに載置されている。電線配索面50aに載置された電線束Wは、電線配索方向の複数箇所で、ブラケット50と共にタイラップバンド51で共締めされることによってブラケット50に固定されている。
【0004】
また、特許文献1には、フラット形状のプロテクタ内にワイヤーハーネスの電線束を収容するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−178425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前者の従来例では、電線配索面50a上に電線束Wをフラットに配置すれば良いため、配索作業性が良い。しかし、フラットに配置した電線束Wは、図5及び図6に示すように、タイラップバンド51を締結する際にその締結力を受けて山形状に集束するため、電線束Wの高さH2(図6に示す)が高くなる。その上、電線束Wの上面よりタイラップバンド51が突出するため、その分の高さh2だけ高くなる。これによって、ワイヤーハーネスWHをフラット配索することができないという問題がある。
【0007】
後者の従来例では、電線束それ自体はフラットに配索することができるが、プロテクタの厚み分だけ高くなり、これによって、所望高さのフラット配索ができない。又、プロテクタ内に電線束をフラットに配索する作業が面倒であり、配索作業性が悪いという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、フラット配索ができ、しかも、電線束の配索作業性が良いワイヤーハーネスの配索方法及び配索構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、電線配索部材には、電線配索面より所定の高さ位置で、且つ、電線配索の全幅に亘って配置された電線仮固定ガイド部が設けられ、前記電線仮固定ガイド部の根本箇所は、折り曲げによって切断可能に設けられ、前記電線配索部材の前記電線載置面上に、前記電線仮固定ガイド部の高さ規制を受けた状態で電線束を配置し、その後、前記電線仮固定ガイド部が設けられた位置とは異なる位置で、前記電線束を前記電線配索部材と一体に封止する封止樹脂部をモールド樹脂成形で形成し、その後、前記電線仮固定ガイド部を折り曲げ切断して除去することを特徴とするワイヤーハーネスの配索方法である。
【0010】
請求項2の発明は、電線配索部材に沿って配索されるワイヤーハーネスの配索構造であって、前記電線配索部材の電線配索面より所定の高さ位置で、電線配索の全幅に亘って配置された電線仮固定ガイド部によって高さ規制を受けた状態で、前記電線配索面に電線束が配置され、前記電線仮固定ガイド部の根本箇所が折れ曲げ切断されて前記電線仮固定ガイド部が除去され、前記電線仮固定ガイド部が設けられた位置とは異なる位置で、前記電線束が前記電線配索部材と共に封止樹脂部によって一体に封止されたことを特徴とするワイヤーハーネスの配索構造である。
【0011】
請求項3は、請求項2記載のワイヤーハーネスの配索構造であって、前記電線仮固定ガイド部は、前記電線配索面の電線配索の幅方向の一方側にのみ設けられたことを特徴とするワイヤーハーネスの配索構造である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1及び請求項2の発明によれば、電線配索面に配置される電線束は、電線仮固定ガイド部の高さ規制を受けつつ電線配索面に配置されるため、電線束自体が確実にフラットに配索される。そして、電線束より上方に位置する電線仮固定ガイド部は、電線束が電線配索部材に封止樹脂部で一体に封止された後に除去されるため、ワイヤーハーネスの配索高さが電線束の高さとほぼ同程度の高さになる。又、電線束を単に電線仮固定ガイド部の高さ規制を受けつつ電線載置面上に配置すれば、電線束自体が電線載置面上に確実にフラット配索される。以上より、ワイヤーハーネスをフラット配索でき、しかも、電線束の配索作業性が良い。
【0013】
請求項3の発明によれば、電線仮固定ガイド部は片持ち状態で支持され、容易に折り曲げて切断できるため、電線配索作業性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示し、(a)はワイヤーハーネスの電線束をブラケットの電線配索面に配置する前の状態を示す斜視図、(b)はワイヤーハーネスの電線束をブラケットの電線配索面に配置する前の状態を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、(a)はワイヤーハーネスの電線束をブラケットの電線配索面に配置した状態を示す斜視図、(b)はワイヤーハーネスの電線束をブラケットの電線配索面に配置した状態を示す正面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、(a)は電線束をブラケットと一体に封止する封止樹脂部を設けた状態を示す斜視図、(b)は電線束をブラケットと一体に封止する封止樹脂部を設けた状態を示す正面図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、(a)はワイヤーハーネスの配索構造を示す斜視図、(b)はワイヤーハーネスの配索構造を示す正面図である。
【図5】従来例のワイヤーハーネスの配索構造を示す斜視図である。
【図6】従来例のワイヤーハーネスの配索構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1〜図4は本発明の一実施形態を示し、図1(a)はワイヤーハーネスWHの電線束Wをブラケット1の電線配索面1aに配置する前の状態を示す斜視図、図1(b)はワイヤーハーネスWHの電線束Wをブラケット1の電線配索面1aに配置する前の状態を示す正面図、図2(a)はワイヤーハーネスWHの電線束Wをブラケット1の電線配索面1aに配置した状態を示す斜視図、図2(b)はワイヤーハーネスWHの電線束Wをブラケット1の電線配索面1aに配置した状態を示す正面図、図3(a)は電線束Wをブラケット1と一体に封止する封止樹脂部5を設けた状態を示す斜視図、図3(b)は電線束Wをブラケット1と一体に封止する封止樹脂部5を設けた状態を示す正面図、図4(a)はワイヤーハーネスWHの配索構造を示す斜視図、図4(b)はワイヤーハーネスWHの配索構造を示す正面図である。
【0017】
図1(a),(b)において、ワイヤーハーネスWHは、複数の電線w1を有する。この複数の電線w1から成る電線束Wは、電線配索部材であるブラケット1に沿ってフラット配索される。先ず、ワイヤーハーネスWHのフラット配索を行うブラケット1の構成を説明し、次に、ワイヤーハーネスWHの配索手順を説明する。
【0018】
ブラケット1は、金属製や合成樹脂製であり、例えばトランスミッション内部に使用されるものである。ブラケット1には、ワイヤーハーネスWHの配索経路に沿って電線配索面1aが形成されている。電線配索面1aの電線配索方向には、間隔を置いて電線仮固定ガイド部2が複数設けられている。電線仮固定ガイド部2は、ブラケット1の側面より立設された支持部3と、この支持部3の上端より電線配索面1aの電線配索の幅方向に延びる高さ規制ロッド部4とから構成されている。つまり、電線仮固定ガイド部2は、片持ち状態でブラケット1に支持されている。電線配索面1aの他方側は、開放されている。
【0019】
高さ規制ロッド部4は、電線配索面1aより所定の高さ位置で、電線配索の全幅に亘って配置されている。所定の高さは、この実施形態では、下記する積層状態で上下2段の電線束Wをほとんど隙間なく配置できる最小限の高さである。支持部3には、その中間箇所に薄肉部3aが形成されている。折れ曲げによって容易に薄肉部3aの位置で切断できるようになっている。
【0020】
次に、ワイヤーハーネスWHの配索手順を説明する。先ず、図1(a)、(b)に示すように、電線束Wを電線仮固定ガイド部2の開放側より電線配索面1a上に挿入する。
【0021】
次に、図2(a)、(b)に示すように、挿入した電線束Wは、電線仮固定ガイド部2の高さ規制ロッド部4の高さ規制を受けてフラットな状態で電線配索面1aに配置される。又、電線仮固定ガイド部2の支持部3は、電線束Wの幅方向を整列させるガイドとして機能する。電線束Wは、上下2段に規則正しく整列され、且つ、上段の各電線w1が下段の電線w1間の間に位置する状態で配列される。つまり、電線束Wは、上下2段の積層状態で、且つ、最も低い高さH1(図4(b)に示す)で集束される状態で配列される。
【0022】
次に、図3(a)、(b)に示すように、2箇所の電線仮固定ガイド部2の間の位置で、電線束Wをブラケット1と一体にモールド樹脂成形し、封止樹脂部5を形成する。この封止樹脂部5によって、電線束Wはブラケット1と共に一体に封止される。つまり、ブラケット1に配索された電線束Wは、フラットな配索状態でブラケット1に固定される。
【0023】
次に、図3(a)、(b)のB矢印で示す方向に電線仮固定ガイド部2を折り曲げ、電線仮固定ガイド部2をその支持部3の薄肉部3aの箇所で切断する。これにより、図4(a)、(b)に示すように、電線束Wの上方に位置する高さ規制ロッド部4が除去される。ブラケット1の側面には、電線仮固定ガイド部2の支持部3の残余部のみが残ることになる。以上で、ワイヤーハーネスWHの配索作業が完了する。
【0024】
以上、説明したように、ワイヤーハーネスWHの配索方法及びこれによって配索されたワイヤーハーネスWHの配索構造では、電線配索面1aに配置される電線束Wは、電線仮固定ガイド部2の高さ規制を受けつつ電線配索面1aに配置されるため、電線束W自体が確実にフラット(高さがH1)に配索される。そして、電線束Wより上方に位置する電線仮固定ガイド部2は、電線束Wがブラケット1に封止樹脂部5で一体に封止された後に除去されるため、ワイヤーハーネスWHを電線束Wの高さH1とほぼ同程度の高さにフラット配索できる。この実施形態では、図4(b)に示すように、封止樹脂部5は、電線束Wの上面より微小高さh1だけ突出しているが、この突出量h1をほとんどゼロにするよう封止樹脂部5を形成することもできる。
【0025】
又、電線束Wを単に電線仮固定ガイド部2の高さ規制を受けつつ電線配索面1a上に配置すれば、電線束W自体が電線配索面1a上に確実にフラット配索される。
【0026】
以上より、ワイヤーハーネスWHをフラット配索でき、しかも、電線束Wの配索作業性が良い。
【0027】
電線束Wは、封止樹脂部5によってブラケット1に一体に固定されているので、電線束Wが位置ずれしたり、異物が発生したりすることがない。つまり、従来例のようにタイラップバンドを用いる場合には、タイラップバンドの緩み等によって電線束Wが位置ずれしたり、タイラップバンドの脱落によってタイラップバンドが異物となることがあるが、本発明ではこのような不具合が発生しない。
【0028】
電線仮固定ガイド部2は、電線配索面1aの電線配索の幅方向の一方側にのみ設けられている。従って、電線仮固定ガイド部2は片持ち状態でブラケット1に支持され、容易に折り曲げて切断できるため、この点でも電線配索作業性が良い。
【0029】
この実施形態では、電線束Wを2段に積層したが、3段以上に積層しても良いことはもちろんである。この場合には、電線仮固定ガイド部2の高さ規制ロッド部4の高さは、所望段数の電線束Wの最小限高さに設定する。
【0030】
この実施形態では、電線配索部材はブラケット1であるが、電線配索部材は、ワイヤーハーネスWHを配索する部材であればブラケット1以外の部材でも良いことはもちろんである。
【符号の説明】
【0031】
WH ワイヤーハーネス
W 電線束
1 ブラケット(電線配索部材)
1a 電線配索面
2 電線仮固定ガイド部
3 支持部
4 高さ規制ロッド部
5 封止樹脂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線配索部材には、電線配索面より所定の高さ位置で、且つ、電線配索の全幅に亘って配置された電線仮固定ガイド部が設けられ、前記電線仮固定ガイド部の根本箇所が折り曲げによって切断可能に設けられ、
前記電線配索部材の前記電線配索面上に、前記電線仮固定ガイド部の高さ規制を受けた状態で電線束を配置し、
その後、前記電線仮固定ガイド部が設けられた位置とは異なる位置で、前記電線束を前記電線配索部材と一体に封止する封止樹脂部をモールド樹脂成形で形成し、
その後、前記電線仮固定ガイド部を折り曲げ切断して除去することを特徴とするワイヤーハーネスの配索方法。
【請求項2】
電線配索部材に沿って配索されるワイヤーハーネスの配索構造であって、
前記電線配索部材の電線配索面より所定の高さ位置で、電線配索の全幅に亘って配置された電線仮固定ガイド部によって高さ規制を受けた状態で、前記電線配索面に電線束が配置され、前記電線仮固定ガイド部の根本箇所が折れ曲げ切断されて前記電線仮固定ガイド部が除去され、
前記電線仮固定ガイド部が設けられた位置とは異なる位置で、前記電線束が前記電線配索部材と共に封止樹脂部によって一体に封止されたことを特徴とするワイヤーハーネスの配索構造。
【請求項3】
請求項2記載のワイヤーハーネスの配索構造であって、
前記電線仮固定ガイド部は、前記電線配索面の電線配索の幅方向の一方側にのみ設けられたことを特徴とするワイヤーハーネスの配索構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−172412(P2011−172412A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34822(P2010−34822)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】