説明

ワイヤーハーネス

【課題】ワイヤーハーネス26の放熱性を損なうことなく配索性を向上させる。
【解決手段】扁平な面のねじれを伴って曲げられるねじれ曲げ箇所を除いて、パワーケーブル30a,30b,30cを扁平な面に沿って並べて配置した構造とし、ねじれ曲げ箇所において、図示するように、パワーケーブル30a,30cを扁平な面に沿って並べて配置すると共にパワーケーブル30bがパワーケーブル30a,30cの扁平な面の幅Wに収まるようパワーケーブル30a,30cと扁平な面同士を向かい合わせて配置した構造とするから、ねじれ曲げ箇所におけるねじれの高さHを抑えてワイヤーハーネス26の配索に必要なスペースを小さくすることができる。また、ねじれ曲げ箇所を除いて放熱性を確保すると共にねじれ曲げ箇所において放熱性が大きく低下するのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相モータの各相に接続され断面が扁平な三本の電力ケーブルを、扁平な面に沿って並べて配置した構造のワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のワイヤーハーネスとしては、エンジンルーム内に駆動源の三相モータを搭載する車両に用いられ、三相モータに電力を供給するための三本のフラット型のパワーケーブルを束ねたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このワイヤーハーネスでは、三本のパワーケーブルを互いに重ならないように扁平な面に沿って並べることにより、表面積を大きくして放熱性を高めることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−287537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなワイヤーハーネスが用いられる車両などにおいては、モータ以外に複数の機器などが搭載されることにより、ワイヤーハーネスの配索スペースが限られたものとなることがある。ここで、上述したような並びで三本のパワーケーブルを配置した構造とすると、ワイヤーハーネスの高さを抑えることができるものの幅が広いものとなる。このため、ワイヤーハーネスが扁平な面をねじられながら曲げられる箇所においては、幅が広い分配索スペースとして大きなスペースが必要となり、配索が困難となる場合がある。
【0005】
本発明のワイヤーハーネスは、放熱性を損なうことなく配索性を向上させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のワイヤーハーネスは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のワイヤーハーネスは、
三相モータの各相に接続され断面が扁平な三本の電力ケーブルを、扁平な面に沿って並べて配置した構造のワイヤーハーネスにおいて、
扁平な面のねじれを伴って曲げられる箇所では、前記三本の電力ケーブルのうち二本は扁平な面に沿って並べて配置すると共に残りの一本は前記二本の電力ケーブルの扁平な面の幅に収まるよう該二本の電力ケーブルと扁平な面同士を向かい合わせて配置する
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明のワイヤーハーネスでは、扁平な面のねじれを伴って曲げられる箇所では、三本の電力ケーブルのうち二本は扁平な面に沿って並べて配置すると共に残りの一本は二本の電力ケーブルの扁平な面の幅に収まるよう二本の電力ケーブルと扁平な面同士を向かい合わせて配置する。これにより、扁平な面のねじれを伴って曲げられる箇所において、部分的にワイヤーハーネスの幅を小さくすることができる。ここで、そのような箇所では、ねじれにより扁平な面が傾くから、扁平な面の幅方向が高さ方向となるように曲げられることになる。このため、部分的に幅を小さくすることにより、ねじれの高さを抑えることができ、ワイヤーハーネスの配策に必要なスペースを小さくすることができる。一方で、ねじれを伴って曲げられる箇所以外は、三本の電力ケーブルを扁平な面に沿って並べて配置することで、表面積を大きくして放熱性を確保することができる。また、ねじれを伴って曲げられる箇所においても、二本の電力ケーブルは扁平な面に沿って並べて配置することで、表面積が著しく小さくなるのを抑制するから、放熱性が大きく低下するのを防止することができる。この結果、ワイヤーハーネスの放熱性を損なうことなく配索性を向上させることができる。
【0009】
こうした本発明のワイヤーハーネスにおいて、前記三本の電力ケーブルのうち両端に配置される二本を扁平な面に沿って並べて配置し、中央に配置される残りの一本を前記二本の電力ケーブルと扁平な面同士を向かい合わせて配置するものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例としてのワイヤーハーネス26が用いられるハイブリッド自動車20の外観を示す説明図である。
【図2】ワイヤーハーネス26が配索される様子を示す斜視図である。
【図3】ワイヤーハーネス26の構造の概略を示す説明図である。
【図4】ワイヤーハーネス26の部分的な構造の概略を示す説明図である。
【図5】実施例のワイヤーハーネス26のねじれ曲げ箇所の様子を示す説明図である。
【図6】比較例のワイヤーハーネス26Bのねじれ曲げ箇所の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例としてのワイヤーハーネス26が用いられるハイブリッド自動車20の外観を示す説明図である。図示するように、ハイブリッド自動車20の車両前部のエンジンルーム21内には、走行用の動力を出力可能なエンジン22と、三相の交流電動機として構成され発電機や電動機として駆動する図示しないジェネレータと三相の交流電動機として構成され走行用の動力を出力する図示しないモータとを有するモータユニット24と、モータユニット24内のモータやジェネレータを駆動する図示しない2つのインバータを有するインバータユニット28などが搭載されており、モータユニット24とインバータユニット28とは、エンジンルーム21内を配索される二本のワイヤーハーネス26により電気的に接続されている。また、車両後部の図示しないリヤシートの後方や下方などには、インバータユニット28を介してモータユニット24と電力をやり取りするバッテリ40が搭載されており、インバータユニット28とバッテリ40とは、車体下部に配策されるワイヤーハーネス42により電気的に接続されている。
【0013】
ワイヤーハーネス26が配索される様子の斜視図を図2に示す。図示するように、二本のワイヤーハーネス26は、それぞれ、一端の端子26aがインバータユニット28の図示しないインバータの三相の端子に接続されると共に他端の端子26bがモータユニット24の図示しないモータやジェネレータの三相の端子に接続されている。また、ワイヤーハーネス26は、その配策経路においてエンジン22やモータユニット24,インバータユニット28に取り付けられた図示しない固定具に固定されている。
【0014】
ここで、ワイヤーハーネス26の構造の概略を図3に示し、ワイヤーハーネス26の部分的な構造の概略を図4に示す。ワイヤーハーネス26は、図3に示すように、図示しない導線の周囲を絶縁体で被覆した断面が扁平なフラット型のパワーケーブル30(三本のパワーケーブル30a,30b,30c)と、熱伝導性を有する銅線などの金属線によりパワーケーブル30を覆って電磁的にシールドする編組線32と、この編組線32をパワーケーブル30の略全長に亘って被覆して損傷や摩耗を防止する保護部材34(例えばコルゲートチューブや網目状のシート材など)とにより構成されている。このワイヤーハーネス26は、図3に示すように、パワーケーブル30a,30b,30cが互いに重ならないよう扁平な面に沿って並べて配置した構造となっている。また、ワイヤーハーネス26は、配索経路中の一部で部分的に、図4に示す構造となっている。即ちパワーケーブル30のうち両端のパワーケーブル30a,30cを扁平な面に沿って並べて配置すると共に真ん中のパワーケーブル30bをパワーケーブル30a,30cの扁平な面の幅に収まるようパワーケーブル30a,30cと扁平な面同士を向かい合わせて重ねて配置した構造となっている。なお、図3ではワイヤーハーネス26の構造を示すために編組線32や保護部材34の一部の図示を省略し、図4では編組線32の図示を省略して保護部材34の一部の図示を省略した。
【0015】
この図4の構造とすることにより、図3の構造に比して、ワイヤーハーネス26の高さ(厚み)は高くなるが幅を約2/3に抑えることができる。本実施例では、配索経路中でワイヤーハーネス26(パワーケーブル30)が扁平な面のねじれを伴って曲げられる箇所(例えば、図2中の一点鎖線で囲んだ箇所であり、以下、ねじれ曲げ箇所と称する)で、部分的に図4の構造とし、ねじれ曲げ箇所以外では図3の構造とする。図3の構造から図4の構造へは、真ん中のパワーケーブル30bを上方にずらしながらパワーケーブル30bの下方に潜り込むようにパワーケーブル30a,30cを互いに近付けることにより、変化させることができる。また、図4の構造から図3の構造へは、パワーケーブル30a,30cを左右に離しながらパワーケーブル30bがその間に収まるように下方にずらすことにより、変化させることができる。なお、ワイヤーハーネス26を配索しながらねじれ曲げ箇所で部分的に図4の構造に変化させるものとしてもよいし、エンジンルーム21内のワイヤーハーネス26の配索経路や配索可能なスペースなどからねじれ曲げ箇所の位置(端子26aや端子26bからの距離)を把握し、把握した位置に合わせて予め部分的に図4の構造とした上で配索するものとしてもよい。
【0016】
このような構造とした実施例のワイヤーハーネス26のねじれ曲げ箇所の様子を図5に示し、比較例のワイヤーハーネス26Bのねじれ曲げ箇所の様子を図6に示す。なお、比較例として、ねじれ曲げ箇所でも図3の構造とした場合を示す。ここで、ねじれ曲げ箇所では、扁平な面が傾くから、扁平な面の幅方向が高さ方向となるように曲げられることになる。このため、ねじれ曲げ箇所におけるねじれの高さHは、ワイヤーハーネス26の高さの影響が小さなものとなり、ワイヤーハーネス26の幅Wが広いほど高いものとなる。このため、図5の実施例では、ねじれ曲げ箇所において図4の構造としてワイヤーハーネス26の幅Wを抑えるから、図6の比較例に比して、ねじれの高さHを小さくすることができる。具体的には、図4の構造は、比較例の構造の約2/3の幅Wとなるから、ねじれの高さHを比較例の約2/3に抑えることができる。これにより、ねじれ曲げ箇所において、ワイヤーハーネス26の配索に必要なスペースを小さくすることができる。一方で、ワイヤーハーネス26は、ねじれ曲げ箇所を除いて、図3の構造即ち三本のパワーケーブル30a,30b,30cが互いに重ならないよう扁平な面に沿って並べた構造とするから、表面積を大きくして放熱性を確保することができる。また、ねじれ曲げ箇所においても、パワーケーブル30a,30cを扁平な面に沿って並べて配置することで、表面積が著しく小さくなるのを抑制するから、放熱性が大きく低下するのを防止することができる。これらのことから、放熱性を損なうことなく配索性を向上させることができる。ワイヤーハーネス26を、ねじれ曲げ箇所を除いて図3の構造とし、ねじれ曲げ箇所において図4の構造とするのは、こうした理由による。
【0017】
以上説明した実施例のワイヤーハーネス26によれば、扁平な面のねじれを伴って曲げられるねじれ曲げ箇所を除いて、パワーケーブル30a,30b,30cを扁平な面に沿って並べて配置した構造とし、ねじれ曲げ箇所において、パワーケーブル30a,30cを扁平な面に沿って並べて配置すると共にパワーケーブル30bがパワーケーブル30a,30cの扁平な面の幅に収まるようパワーケーブル30a,30cと扁平な面同士を向かい合わせて配置した構造とするから、ねじれ曲げ箇所におけるねじれの高さHを抑えて配索に必要なスペースを小さくすることができ、ねじれ曲げ箇所を除いて放熱性を確保すると共にねじれ曲げ箇所において放熱性が大きく低下するのを防止することができる。この結果、ワイヤーハーネス26の放熱性を損なうことなく配索性を向上させることができる。
【0018】
実施例のワイヤーハーネス26では、図3中の真ん中のパワーケーブル30bをパワーケーブル30a,30cに重ねるものとしたが、これに限られず、図3中の左端のパワーケーブル30aをパワーケーブル30b,30cに重ねるものや図3中の右端のパワーケーブル30cをパワーケーブル30a,30bに重ねるものとしてもよい。
【0019】
実施例のワイヤーハーネス26では、保護部材34をパワーケーブル30の略全長に亘って被覆するものとしたが、これに限られず、損傷や摩耗が特に問題となる箇所だけを部分的に被覆するものなどとしてもよい。
【0020】
実施例のワイヤーハーネス26は、2つのモータ(モータとジェネレータ)とエンジンとを備えるハイブリッド自動車20に用いられるものとしたが、これに限られず、1つのモータを備えるハイブリッド自動車に用いられるものとしてもよいし、エンジンを備えない電気自動車に用いられるものなどとしてもよい。また、こうしたハイブリッド自動車や電気自動車に用いられるものに限られず、自動車以外の列車などの車両に用いられるものとしてもよいし、車両以外の移動体や移動しない設備などに組み込まれた駆動装置に用いられるものとしてもよい。
【0021】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータユニット24が「三相モータ」に相当し、インバータユニット28が「インバータ」に相当し、パワーケーブル30(30a,30b,30c)が「電力ケーブル」に相当し、ワイヤーハーネス26が「ワイヤーハーネス」に相当する。
【0022】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0023】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、自動車の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0025】
20 ハイブリッド自動車、21 エンジンルーム、22 エンジン、24 モータユニット、26,26B ワイヤーハーネス、26a,26b 端子、28 インバータユニット、30,30a,30b,30c パワーケーブル、32 編組線、34 保護部材、40 バッテリ、42 ワイヤーハーネス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相モータの各相に接続され断面が扁平な三本の電力ケーブルを、扁平な面に沿って並べて配置した構造のワイヤーハーネスにおいて、
扁平な面のねじれを伴って曲げられる箇所では、前記三本の電力ケーブルのうち二本は扁平な面に沿って並べて配置すると共に残りの一本は前記二本の電力ケーブルの扁平な面の幅に収まるよう該二本の電力ケーブルと扁平な面同士を向かい合わせて配置する
ことを特徴とするワイヤーハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−93145(P2013−93145A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233409(P2011−233409)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】