説明

ワイヤー錠

【課題】掛け金の長さが調節可能な小型のワイヤー錠の提供。
【解決手段】主に1個の錠本体1と1本のスチールワイヤー2とを含む。そのスチールワイヤーは、錠本体内に貫通して設けることができ、錠本体と共に1つの閉じた掛け金部を形成する。錠本体は、一個の錠ケースと一個のナンバーリング錠ユニット13と2個の押しボタン14と2個の押付け部材15と2個のグリップ部材16とを含み、押しボタンを押さえつけることで開錠・施錠の動作を制御できる。グリップ部材をスチールワイヤーと相互に咬み合わせると施錠状態になり、スチールワイヤーから離すと開錠状態になる。またスチールワイヤーと錠本体の間の封鎖範囲を調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤー錠に関し、特に掛け金部の長さが調節可能な小型のワイヤー錠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に使われている小型南京錠では、スチール製のカンヌキか可撓性のスチールロープかに関わりなく、その掛け金部の長さはいずれも固定された距離である。たとえば中華民国特許第93214130号の「開き易いスチールロープ式南京錠」は、スチールロープの一端を錠ケースの第一側面に固定して他端はその錠ケースの溝部及び第一出入口に挿入できる自由端をなし、また、錠ケースに設けた第一錠機構で開閉をコントロールすることにより、スチールロープと錠本体の間に閉鎖状態を形成し、もって施錠機能を提供するものである。施錠時に、自由端を施錠の目的が達成できる側の決まった位置に設置しなければならないので、スチールロープと錠本体との間で囲む範囲は、決まった距離しか提供できないスチールロープの長さに従うことになる。しかしながら一般にこの種の小型南京錠の体積は小さく、その距離には限りがある。2個以上の物品を同時に施錠する必要があったり、施錠される物品が比較的大きかったりする場合、囲む範囲が十分な収容空間を提供できないことはよくある。別の錠前を使ってそれぞれに施錠する必要があり、たとえば別の錠前を買わなければならないだけでなく、開錠・施錠時に費やす時間が無駄でもあり、使用上の困難が増加してしまう。もしこの欠点を解決するためにスチールロープの長さを長くすると、囲む範囲が大きすぎて施錠効果の低下を招くことがある。
【特許文献1】台湾特許第93214130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の南京錠の構造は、施錠時にその自由端を錠ケースの溝部及び第一出入口内にロックする必要があり、しかも他端は固定端であるために、決められた範囲を囲めるだけで、使用者の需要に応じて掛け金部の長さを調整することができず、使用範囲が限られている。これがすなわち、本発明が解決しようとする問題である。
【0004】
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、掛け金部の長さが調節可能なワイヤー錠の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のワイヤー錠は、主に1個の錠本体と1本のスチールワイヤーとを含み、その錠本体は2個の貫通する錠穴を有し、スチールワイヤーの両端部を錠本体内に貫通させて、錠本体とともに一つの閉じた掛け金部を形成することができる。錠本体は、1個の錠ケースと、1個のナンバーリング錠ユニットと、2個の押しボタンと、2個の押付け部材と2個のグリップ部材とを含む。錠ケースは、1個の上部ケースと1個の下部ケースを含み、その相対する面に設けた嵌合柱と嵌合穴を互いに嵌めることによりしっかり結合されていて、その内部にナンバーリング錠ユニットを収容できる1個の収容部を備えている。第一柱体は、2個のグリップ部材と1個のねじりばねを嵌めることができる。第二柱体は、それぞれ1個の押付け部材を嵌めることができる。錠本体を貫通する2個の錠穴は、スチールワイヤーを貫通して設けることができる。錠本体の両側に、押しボタンを備え付けることができる収容くぼみが1つずつ設けられている。その収容くぼみは、押しボタンの軌道を設置できるよう内部に通じるガイド溝を設けてある。これにより、押付け部材の旋回運動を制御し、さらにグリップ部材を連動して動かし、その一端の歯列が錠穴内に突出できるようにし、スチールワイヤーと互いに咬み合わせて施錠状態にしたり、錠穴から離してスチールワイヤーと分離させて開錠状態にする。同時に、スチールワイヤーの長さを調整する操作ができるので、最も良い掛け金部を提供する。
【0006】
ここで、「ナンバーリング錠ユニット」とは、中心軸に回転自在に軸支されかつ外周縁に番号が付され複数の円盤群である一組のナンバーリングセットを備え、この一組のナンバーリングセットが特定の数字に配列された場合にのみ、中心軸が軸方向に移動可能に構成された錠機構を意味する。
【発明の効果】
【0007】
以上述べたように、本発明の掛け金部は使用者の需要に従ってその囲む範囲を調整できるので、各種用途に適している。物品が1個か多数かに関わらず最もよい施錠状態を提供でき、従来の小型錠前の欠点を確実に解決できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の構造及び具体的な実施形態について、適当な図を示して詳細な説明をする。
【0009】
図1、図2及び図3に示すように、本発明は、1個の錠本体1と、1本のスチールワイヤー2とを備えている。スチールワイヤー2は、可撓性を備えていて、両端部21を錠本体1内に貫通して設け、閉じた掛け金部Aを形成している。錠本体1は、1個の錠ケース11と、1個のナンバーリング錠ユニット13と、2個の押しボタン14と、2個の押付け部材15と2個のグリップ部材16とを含む。錠ケース11は、互いに向かい合わせに設置している1個の上部ケース110aと1個の下部ケース110bを備え、両側に収容くぼみ111を1つずつ設けている。収容くぼみ111には、内部に通じるガイド溝119を設けている。錠ケース11の中央には、収容部112並びに一端(掛け金部A側と反対側端)に向かって延びる比較的小径の貫通孔113を設けている。収容部112に数個の貫通溝1121を設け、他端(掛け金部A側端)の近くに第一柱体114を突設し、収容部112付近の両側に1本ずつ第二柱体115を突設している。そのほか、下部ケース110bの周縁付近に数個の嵌合穴116を設け、上部ケース110aの嵌合柱117と相互に嵌めてしっかり結合できるようにしている。錠本体1の一端に2個の錠穴118を貫通して設け、スチールワイヤー2の端部を貫通させることができるようにしている。
【0010】
ナンバーリング錠ユニット13は、錠ケース11の収容部112に設置されており、1組のナンバーリングセット131と1個の押付け片132とを備えている。ナンバーリングセット131は、単一の中心軸(同軸)に回転自在に軸支されかつ外周縁に番号が付され複数の円盤群であり、この円盤群を外部から回せるよう側部周縁は錠本体1の貫通溝1121に露出している。このナンバーリングセット131は、所定位置における各円盤の数字が所定の数列になる状態でのみ、中心軸が軸方向に移動可能に構成されている。押付け片132は、ナンバーリングセット131の中心軸の一端に垂設されており、ナンバーリングセット131及びばねS1に制御されて直線運動(軸方向の直線運動)可能に構成されている。弾力片133を制御することによりナンバーリングセット131が正確な数字の配列になると、押付け片132がばねS1の弾性力によって移動可能になる。
【0011】
押しボタン14は、錠ケース11の収容くぼみ111内に相対するよう設置され、その両側にそれぞれ垂直に延びる第一ガイド部材141と第二ガイド部材142とを設けている。第一ガイド部材141の内側端部は、斜面1411をなす。第一ガイド部材141には、スチールワイヤー2が貫通できる切欠き部1412を設けている。押しボタン14の中心部分に、圧縮ばねS2を設置できる円形凹部144を設け、押しボタン14をその弾性力によって収容くぼみ111内で運動可能にしている。
【0012】
押付け部材15は、V字形をなし、第二柱体115に嵌められるよう円孔153を備えていて、両側に第一側片151と第二側片152とを設けている。第一側片151は、ナンバーリング錠ユニットの押付け片132に突き当てられている。
【0013】
グリップ部材16は、第一柱体114に嵌められるよう円孔161を備えている。グリップ部材16は、溝部163を設けて、押付け部材15の第二側片152が入りこんで押し動かすことができ、旋回運動を可能にしている。そのほかに、外側端部に、スチールワイヤー2と相互にかみ合わせられるよう歯列164を設けている。2個のグリップ部材16の間に、1個のねじりばねS3を嵌め、ねじりばねS3の両端の足はそれぞれグリップ部材16の内側面162に突き当てている。また、ねじりばねS3の拡がろうとする弾性力によって、歯列164を錠ケース11の錠穴118内に侵入させることができる。
【0014】
図4は、本発明の開錠状態の説明図である。まず、ナンバーリング錠ユニット13のナンバーリングセット131を正しい番号に回す。このときは、つまり押付け片132が可動状態で、錠ケース11の両側にある押しボタン14を押さえつけると、第一ガイド部材141と第二ガイド部材142がガイド溝119に沿って内部に移動できる。それと同時に、押付け部材15の第二側片152を突き押し、第二柱体115を軸心として旋回させる。また同時に、グリップ部材16を連動して動かし、歯列164を錠穴118の位置から離脱させる。このとき、スチールワイヤー2を錠穴118内に貫通して設けることができ、掛け金部Aを必要な長さに調整した後、押しボタン14をゆるめて圧縮ばねS2の回復する弾性力によっていつもの位置に戻すことができる。このとき、押付け部材15は、もはや第一ガイド部材141と第二ガイド部材142に突き当てられていないが、グリップ部材16は、ねじりばねS3の拡がろうとする弾性力を押し当てられ、外側面の歯列164がスチールワイヤー2にきつく咬み合って抜くことができなくなる。最後にナンバーリングセット131の数字をでたらめに並べ替えると、押付け片132は移動不可能になり、押付け部材15の第一側片151に突き当てられる。このとき、押付け部材15は、決められた位置にあって向きを変えることはできない。さらに押しボタン14も押さえつけることができないので、施錠効果が達成されるのである(図5参照)。
【0015】
上記したとおり、本発明のスチールワイヤーは使用者の需要に従ってその掛け金部の範囲を調整でき、従来の南京錠の掛け金部の長さが不足して数個の南京錠を使用する必要があることに起因する不便を確実に解決できる。また、使用するうえで、押しボタンをただ押さえつけさえすれば開錠でき、操作がかなり容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の立体的な分解説明図である。
【図2】本発明の上部ケースの内部の立体的な説明図である。
【図3】本発明の立体的な組合せ外観図である。
【図4】本発明の開錠状態の操作説明図である。
【図5】本発明の施錠状態の説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 錠本体
11 錠ケース
110a 上部ケース
110b 下部ケース
111 収容くぼみ
112 収容部
1121 貫通溝
113 貫通孔
114 第一柱体
115 第二柱体
116 嵌合穴
117 嵌合柱
118 錠穴
119 ガイド溝
13 ナンバーリング錠ユニット
131 ナンバーリングセット
132 押付け片
133 弾性片
14 押しボタン
141 第一ガイド部材
142 第二ガイド部材
1411 斜面
1412 切欠き部
144 凹部
15 押付け部材
151 第一側片
152 第二側片
153 円孔
16 グリップ部材
161 円孔
162 内側面
163 溝部
164 歯列
2 スチールワイヤー
21 端部
A 掛け金部
S1 ばね
S2 圧縮ばね
S3 ねじりばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主に1個の錠本体及び1本のスチールワイヤーを含み、当該スチールワイヤーが可撓性を有し、その両端部は錠本体を貫通して設けて、1つの閉鎖した掛け金部を形成でき、その錠本体がさらに、1個の錠ケースと、1組のナンバーリング錠ユニットと、2個の押しボタンと、2個の押付け部材と、2個のグリップ部材とを有しているとともに、
その錠ケースが、1つの上部ケースと1つの下部ケースとを有し、それらは相対するように設置され、中央部に1つの収容部が設けられ、両側縁にそれぞれ1つの収容くぼみが設けられていて、その収容くぼみにはさらに、内部に通じるガイド溝が設けられていて、錠ケースにはスチールワイヤーが貫通可能な2つの錠穴が開けられていることと、
そのナンバーリング錠ユニットが、錠ケースの収容部に設置されるもので、一組のナンバーリングセットと一つの押付け片とを備え、そのナンバーリングセットが正確な数字に配列されたときに押付け片が直線的に移動できることと、
前記押ボタンが、錠ケースの収容くぼみに相対するように設けられ、その両側に、錠ケースのガイド溝に貫入可能に垂直に延びている第一ガイド部材と第二ガイド部材とが設けられていて、その押ボタンの内側面に、圧縮バネを配置可能な凹部が設けられ、弾性力によって押ボタンを収容くぼみ内において運動可能にしていることと、
前記押付け部材が、V字形であり、第一側片と第二側片とを有し、その第一側片がナンバーリング錠ユニットの押付け片に突き当てられていることと、
前記グリップ部材が、一つの溝部を有し、押付け部材の第二側片が入り込んで押し動かして旋回運動させることができ、その外側の端部がスチールワイヤーと咬み合う歯列を有し、2個のグリップ部材の間にねじりばねが嵌められていて、そのねじりばねの2本の足がそれぞれグリップ部材の内側面に突き当てられていて、さらにねじりばねの拡がろうとする弾性力によって歯列を錠ケースの錠穴内に侵入させることができる
ことを特徴とするワイヤー錠。
【請求項2】
前記錠ケースの下部ケースが周縁部に近い位置に数個の嵌合穴を有し、前記上部ケースがその嵌合穴に対応する位置に数個の嵌合柱を有し、相互に嵌合してしっかり結合できることを特徴とする請求項1に記載のワイヤー錠。
【請求項3】
前記押しボタンの第一ガイド部材は、その内側端部が斜面をなすことを特徴とする請求項1に記載のワイヤー錠。
【請求項4】
前記押しボタンの第一ガイド部材に、スチールワイヤーが貫通可能な切欠き部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤー錠。
【請求項5】
錠本体と1本のスチールワイヤーとを備えており、
その錠本体が、錠ケースと、スチールワイヤーの両端部が貫通可能な2つの錠穴と、錠ケースに収納されるナンバーリング錠ユニットと、錠ケースに付設される押しボタンと、錠穴内に貫通されたスチールワイヤーに咬合可能に構成されるグリップ部材とを有し、
ナンバーリング錠ユニットが有する一組のナンバーリングセットが特定の数字に配列されたときにのみ、押しボタンの押圧によりグリップ部材のスチールワイヤーへの咬合状態が解除されるよう構成されているワイヤー錠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−75317(P2008−75317A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254666(P2006−254666)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(503266828)有限会社クロップス (12)