説明

ワクチンとして有用な自己会合ペプチドナノ粒子

T細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープを取り込んでいる自己会合ペプチドナノ粒子(SAPN)を記載する。本発明のナノ粒子は、リンカーセグメントによって接続された2つのオリゴマー化ドメインを含む連続ペプチド鎖の集合体からなり、ここで、一方または両方のオリゴマー化ドメインが、そのペプチド配列内にT細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープを取り込む。これらのナノ粒子は、ワクチンおよびアジュバントとして有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、B細胞エピトープおよび/またはT細胞エピトープを取り込んでいる自己会合ペプチドナノ粒子に関する。さらに、本発明は、ワクチン接種のためのこのようなナノ粒子の使用にも関する。
【0002】
発明の背景
適応免疫系は、体液性免疫応答および細胞性免疫応答の2つの異なる応答を有する。最初のものは、これらの抗体が病原体の表面エピトープに結合するという抗体応答によって特徴づけられ、一方で後者は、すでに感染した細胞を殺滅する細胞傷害性Tリンパ球(CTLs)によって特徴づけられる。どちらの免疫応答も、特異的な病原体結合抗体を産生するB細胞、または感染細胞に対して指向されるT細胞のいずれかを活性化するヘルパーT細胞によってさらに刺激される。
【0003】
B細胞によって産生される抗体と病原体の間の相互作用の特異性は、病原体の表面構造、いわゆるB細胞エピトープによって決定され、一方、感染した標的細胞とCTLの相互作用の特異性は、標的細胞の表面分子上に提示されるT細胞エピトープ、いわゆる主要組織適合性複合体クラスI分子(MHCI)による。このタイプのT細胞エピトープ(CTLエピトープ)は、感染細胞によって産生される病原体由来のタンパク質の断片である。最後に、ヘルパーT細胞とそれぞれB細胞またはCTLとの相互作用の特異性は、ヘルパーT細胞のレセプター分子の、B細胞またはCTL細胞上のMHCクラスII分子(MHCII)によって提示される他のタイプのT細胞エピトープ(HTLエピトープ)への結合によって決定される。
【0004】
B細胞エピトープへの抗体の結合は、B細胞エピトープが特定の3次元構造をとることを必要とし、この3次元構造は、B細胞エピトープがその天然環境において有するのと同じ構造、すなわちそれが病原体の表面上にある場合と同じ構造である。B細胞エピトープは、1より多いペプチド鎖からなっていてもよく、そしてタンパク質の骨格によって3次元構造において組織化されている。
【0005】
しかしながら、T細胞エピトープは特定の3次元構造を必要とせず、むしろそれらは、非常に特異的な様式でそれぞれのMHCIまたはMHCII分子によって結合される。CTLエピトープは、MHCI分子によって最適に提示されるために9アミノ酸長のサイズに整えられているが、一方、HTLエピトープは、MHCII分子と類似した相互作用を起こすが、ちょうど9アミノ酸よりは長くてもよい。本発明の脈絡において重要なのは、MHC分子へのエピトープの結合は非常に特有の法則に従い、すなわち、特定の特徴を有するペプチドのみがそれぞれのMHC分子に結合でき、従ってエピトープとして有用であることである。これらの特徴は綿密に調査され、公知の豊富なエピトープから、MHC分子に結合できるエピトープを高い精度で予測できる予測プログラムが開発された。直鎖状ペプチド鎖中のいくつかのこのようなT細胞エピトープからなるペプチド連結鎖は、現在、ワクチン候補として工学設計されている。
【0006】
一般に、効果的なワクチンは、強い体液性免疫応答並びに強い細胞性免疫応答を誘起すべきである。B細胞エピトープの反復抗原提示によって、強い体液性免疫応答を達成できることが示された。ウイルス様粒子(VLPs)を効果的なツールとして使用することにより、規則的に反復的に強固にB細胞エピトープを提示することができ、従って、VLPは、現在、ワクチン設計のために広く使用されている。反復抗原提示のための別のアプローチが、特許EP1594469B1に記載されている。この特許において、その表面上にB細胞エピトープを反復提示する三量体および五量体タンパク質オリゴマー化ドメインからなる自己会合ペプチドナノ粒子(SAPN)が工学設計されている。B細胞が、複数のコピーでナノ粒子の表面に提示されることを保証するために、B細胞エピトープを、オリゴマー化ドメインの末端に付着させた。最も頻繁に遭遇するタンパク質オリゴマー化モチーフの1つはコイルドコイル構造モチーフであり、このモチーフをこれらのSAPNの設計に効果的に使用することができる。
【0007】
発明の要約
本発明は、T細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープを取り込んでいる自己会合ペプチドナノ粒子(SAPN)に関する。特に、本発明のナノ粒子は、リンカーセグメントによって接続された2つのオリゴマー化ドメインを含む連続ペプチド鎖の集合体からなり、ここで、一方または両方のオリゴマー化ドメインが、そのペプチド配列内にT細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープを取り込むコイルドコイルである。本発明はさらに、T細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープを取り込んでいるこのような自己会合ペプチドナノ粒子を使用して、ヒトまたはヒトではない動物をワクチン接種する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】I−AdのためのHTLエピトープであるオボアルブミンペプチド(OVA323−339)に共有結合したマウスMHCII分子I−Adの構造。MHCIIタンパク質は、上から灰色のα炭素トレースで示されている。エピトープ結合部位の壁を形成している2つのヘリックスが、結合ペプチドにフランキングしている。ペプチドは、黒の全原子球棒モデルで示されている。その結合形態のペプチドHTLエピトープは、図の下にあるペプチドのみの構造によってより明瞭に分かるように、伸長したコンフォメーションである。
【図2】それぞれ、三量体および五量体オリゴマー化ドメイン[左側、A)]並びに三量体および四量体オリゴマー化ドメイン[右側、B)]のための「均一ユニット(even unit)」の図面。単量体(構築ブロック)の数は、構築ブロックの2つのオリゴマー化ドメインD1およびD2のオリゴマー化状態の最小公倍数(LCM)によって定められる。均一ユニットにおいて、全ての構築ブロックのリンカーセグメントは、互いにできるだけ近接して、すなわち、ペプチドナノ粒子の中心にできる限り近接してアレンジされ、従って、均一ユニットは、球状ナノ粒子へと自己会合するであろう。
【図3】十二面体/二十面体の内部対称要素。回転対照軸(2回、3回、および5回)は、2、3、および5のマークを付けられた線として表示される。A)では、オリゴマー化ドメインD1(左、3回対称を有するコイルドコイルドメイン)、リンカーセグメントL(下部)、およびオリゴマー化ドメインD2(右;5回対称を有するコイルドコイルドメイン)からなる単量体構築ブロックが、オリゴマー化ドメインD1およびD2の内部対称要素が多面体の対称要素上に重ねられるように表示される。B)では、完全なコイルドコイルドメインD1およびD2が表示される。多面体の3回および5回回転対称要素により発生された追加の対称物体は、シリンダーとして示されているが、元来の分子は、A)におけると同じくヘリックスとして表示される。
【図4】実施例1の配列番号8の配列を有するペプチドから形成された自己会合ペプチドナノ粒子の動的光散乱(DLS、A)および透過型電子顕微鏡観察(TEM、B)。DLS分析は、平均粒子直径32.01nmおよび多分散指数12.9%を有するサイズ分布を示す(A)。TEM写真(B)は、DLSによって決定されたのと同じサイズのナノ粒子を示す。
【図5】実施例2の配列番号10の配列を有するペプチドから形成された自己会合ペプチドナノ粒子の透過型電子顕微鏡観察(TEM)。TEM写真は、約25nmの同サイズのナノ粒子を示す。
【図6】実施例3の配列番号12の配列を有するペプチドから形成された自己会合ナノ粒子の透過型電子顕微鏡観察(TEM)。TEM写真は、約20〜30nmのサイズのナノ粒子を示す。
【図7】それぞれヒトおよびニワトリのインフルエンザワクチンのための、配列番号37の配列(パネルA)および配列番号38の配列(パネルB)を有するペプチドから形成された自己会合ペプチドナノ粒子の透過型電子顕微鏡観察(TEM)(実施例9)。TEM写真は、約25nmのサイズのナノ粒子を示す。
【図8】実施例11の配列番号41の配列を有するペプチドから形成された自己会合ペプチドナノ粒子の透過型電子顕微鏡観察(TEM)。TEM写真は、約25nmのサイズのナノ粒子を示す。
【0009】
発明の詳細な説明
単量体構築ブロック
自己会合ペプチドナノ粒子(SAPN)は、ペプチドオリゴマー化ドメインD1、リンカーセグメントL、およびペプチドオリゴマー化ドメインD2を含む連続鎖からなる式(I)
D1−L−D2 (I)
(式中、
D1が、m個のサブユニットD1のオリゴマー(D1)を形成する傾向を有する合成または天然ペプチドであり、D2が、n個のサブユニットD2のオリゴマー(D2)を形成する傾向を有する合成または天然ペプチドであり、mおよびnが各々2〜10の数字であり、ただし、mはnに等しくはなくそしてnの倍数ではなく、そしてnはmの倍数ではなく、Lが、場合により置換された炭素原子、場合により置換された窒素原子、酸素原子、硫黄原子、およびその組合せから選択された結合または短いリンカー鎖であり、D1もしくはD2のいずれかまたはD1およびD2の両方が、オリゴマー化ドメイン内に1つ以上のT細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープを取り込むコイルドコイルであり、そしてD1、D2およびLは場合によりさらに置換されている)
の多数の単量体構築ブロックから形成される。
【0010】
ペプチド(またはポリペプチド)は、アミド結合によって共有結合されたアミノ酸の鎖または配列である。ペプチドは、天然、修飾された天然、部分合成、または完全合成であり得る。修飾された天然、部分合成、または完全合成は、天然に存在しないことを意味すると理解される。アミノ酸という用語は、20の必須の天然α−L−アミノ酸から選択される天然に存在するアミノ酸、合成アミノ酸、例えばα−D−アミノ酸、6−アミノヘキサン酸、ノルロイシン、ホモシステイン等、並びに電荷のようなある種の特性を変えるために何らかの方法で修飾された天然に存在するアミノ酸、例えば、ホスホセリンまたはホスホチロシン等の両方を包含する。アミノ酸の誘導体においては、アミド結合を形成するアミノ基はアルキル化されているか、あるいは側鎖アミノ、ヒドロキシまたはチオ官能基はアルキル化またはアシル化されており、あるいは側鎖カルボキシ官能基はアミド化またはエステル化されている。
【0011】
短いリンカー鎖Lは、鎖中に好ましくは1〜60個の原子、特に1〜20個の原子を有する、場合により置換されている炭素原子、場合により置換されている窒素原子、酸素原子、硫黄原子、およびその組合せから選択される。このような短いリンカー鎖は、例えば、ポリエチレンオキシ鎖、糖鎖、または好ましくはペプチド鎖、例えば1〜20個のアミノ酸、特に1〜6個のアミノ酸からなるペプチド鎖である。
【0012】
mおよびnは各々2〜10の数字であり、ただし、mはnに等しくはなくそしてnの倍数ではなく、そしてnはmの倍数ではない。nおよびmの好ましい組合せは、mが2でありnが5であるか、またはmが3でありnが4もしくは5であるか、またはmが4でありnが5である組合せである。同様にnおよびmの好ましい組合せは、mが5でありnが2であるか、またはmが4もしくは5でありnが3であるか、またはmが5でありnが4である組合せである。最も好ましいのはmまたはnが5である組合せである。
【0013】
コイルドコイルは、3および4残基の間隔を置いて配置された主に疎水性残基の連続パターンを有するペプチド配列であり、これは、本明細書で以下においてより詳細に説明するように、会合されてヘリックスの多量体束(multimeric bundle)を形成する。
【0014】
「T細胞および/またはB細胞エピトープを取り込むコイルドコイル」とは、エピトープのN末端およびC末端におけるアミノ酸配列が、エピトープ含有オリゴマー化ドメインのオリゴマー化特性に従って依然としてコイルドコイルであるコンフォメーションにエピトープを順応させるように、対応するエピトープがオリゴマー化ドメイン内に含まれることを意味する。特に「取り込む」は、エピトープがコイルドコイルオリゴマー化ドメインのいずれかの末端で付着する場合を除く。
【0015】
この文書の脈絡において、T細胞エピトープという用語は、CTLおよびHTLエピトープの両方を言及するために使用される。
【0016】
T細胞エピトープは、伸長したコンフォメーションでMHC分子に結合する(図1)。それ故、T細胞エピトープをα−ヘリックスコイルドコイルに取り込むことは(図3Aと図1を比較)タンパク質工学の取るに足りない課題ではない。本発明において、それぞれのMHC分子に結合した場合に伸長したコンフォメーションを有するこれらのペプチド配列をどのように、α−ヘリックスコイルドコイルオリゴマー化ドメインに取り込むことができるかが実証される。
【0017】
D1、D2およびLの場合による置換基は、例えば、B細胞エピトープ、標的化実体、またはナノ粒子のアジュバント特性を補強する置換基、例えば免疫刺激性核酸、好ましくはデオキシイノシンを含むオリゴデオキシヌクレオチド、デオキシウリジンを含むオリゴデオキシヌクレオチド、CGモチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチド、またはイノシンおよびシチジンを含む核酸分子である。ナノ粒子のアジュバント特性を補強する他の置換基は、抗微生物ペプチド、例えば、適応免疫応答を促進および/または向上することができる免疫刺激性の正に帯電した分子に属するクラスである、カチオン性ペプチドである。免疫強化特性を有するこのようなペプチドの一例は、プライムブースト免疫化の後に強力なタンパク質特異的な2型駆動適合免疫を誘導する、正に帯電した人工抗微生物ペプチドKLKLLLLLKLK(配列番号63)である。置換基として考えられる特定の標的化実体は、ER標的化シグナル、すなわち、小胞体(ER)へのタンパク質またはペプチドの輸送を誘導するシグナルペプチドである。他の場合による置換基は、例えば、カルボキシアミド官能基を与えるような、遊離アミノ基に、特にN末端アミノ酸に結合した、アシル基、例えばアセチル、またはC末端アミノ酸の遊離カルボキシ基に結合したアミノである。
【0018】
場合による置換基、例えば本明細書で前記したそのような場合による置換基は、オリゴマー化ドメインD1および/またはD2の遊離末端に近接した適切なアミノ酸に好ましくは接続されている。その後、ペプチドナノ粒子の自己会合時に、このような置換基はSAPNの表面に提示されるだろう。
【0019】
最も好ましい態様において、置換基は、S1−D1−L−D2、D1−L−D2−S2、またはS1−D1−L−D2−S2のいずれかの形態の合体した単一ペプチド配列を生じるような、一方の末端または両末端におけるペプチド鎖D1−L−D2の単純な伸長を示す、別のペプチド配列S1および/またはS2であり、ここで、S1およびS2は、本明細書で以前および以後に定義するようなペプチド置換基である。置換基S1および/またはS2は、SAPNのコア配列D1−L−D2を伸長すると言われる。任意のこのようなペプチド配列S1−D1−L−D2、D1−L−D2−S2、またはS1−D1−L−D2−S2は、1つの単一分子として組換えタンパク質発現系において発現され得る。
【0020】
好ましい置換基S1および/またはS2はB細胞エピトープである。考えられる他のB細胞エピトープは、同様にオリゴマー化ドメインD1および/またはD2の末端に付着するハプテン分子、例えば炭水化物またはニコチンであり、従って、SAPNの表面に提示されるだろう。
【0021】
明らかに、1より多い置換基をオリゴマー化ドメインD1および/またはD2に付着させることも可能である。例えば、ペプチド配列S1−D1−L−D2−S2を考えると、別の置換基を、それに、好ましくはリンカーセグメントLとは離れた位置に、D1および/またはD2の末端の近くに、あるいは置換基S1および/またはS2の中のいずれかの場所に共有結合的に付着させ得る。
【0022】
また、置換基をリンカーセグメントLに付着することも可能である。このような場合、SAPNの再折り畳み時に、置換基は、SAPNの内部キャビティー(cavity)に位置するだろう。
【0023】
オリゴマーを形成する傾向とは、このようなペプチドが条件に依存してオリゴマーを形成することができること、例えば、変性条件下ではそれらは単量体であるが、生理的条件下ではそれらは例えば三量体を形成することができることを意味する。所定の条件下では、それらはナノ粒子形成に必要な1つの単一オリゴマー化状態をとる。しかしながら、そのオリゴマー化状態は、条件が変化すると変化することができ、例えば塩濃度を増加させると二量体から三量体に変わることができ(Burkhard P. et al., Protein Science 2000, 9:2294-2301)、またはpHを低下させると五量体から単量体へと変わることができることを意味する。
【0024】
式(I)に従う構築ブロック構造は、明らかにウイルスカプシドタンパク質とは異なる。ウイルスカプシドは、例えば、B型肝炎ウイルス粒子(EP1262555、EP0201416)のように60またはその倍数のオリゴマーを形成する1つの単一タンパク質からなるか、または共会合されてウイルスカプシド構造(該ウイルスカプシド構造はウイルスのタイプに依存して二十面体とは別の他の形状をとることもできる(Fender P. et al., Nature Biotechnology 1997, 15:52-56))を形成する1つより多くのタンパク質のいずれかからなる。本発明の自己会合ペプチドナノ粒子(SAPN)はまた、ウイルス様粒子とは明らかに異なる。なぜなら、それらは(a)ウイルスカプシドタンパク質以外のものから構成されており、そして(b)ナノ粒子の真中のキャビティーは、全ウイルスゲノムのDNA/RNAを受け入れるにはあまりにも小さすぎるからである。
【0025】
ペプチドオリゴマー化ドメインは周知されている(Burkhard P. et al, Trends Cell Biok 2001, 11:82-88)。最も簡単なオリゴマー化ドメインは、多分コイルドコイル折り畳みモチーフ(coiled-coil folding motif)である。このオリゴマー化モチーフは、二量体、三量体、四量体および五量体として存在することが示された。いくつかの例は、GCN4ロイシンジッパー、フィブリチン(fibritin)、テトラブラチオン(tetrabrachion)およびCOMPであり、これはそれぞれ二量体、三量体、四量体および五量体コイルドコイルを示す。
【0026】
オリゴマー化ドメインD1およびD2の一方または両方は、互いに独立に、コイルドコイルドメインである。コイルドコイルは、会合(折り畳み)されてヘリックスの多量体束を形成する、通常7個のアミノ酸(ヘプタッド反復)または11個のアミノ酸(ウンデカッド反復)の配列において3および4残基の間隔を置いて配置された主として疎水性の残基の連続パターンを有するペプチド配列である。3および4残基の間隔のいくつかの不規則な分布を含む配列を有するコイルドコイルも包含される。疎水性残基は、特に、疎水性アミノ酸Val、Ile、Leu、Met、Tyr、PheおよびTrpである。主として疎水性とは、残基の少なくとも50%が、記載の疎水性アミノ酸から選択されなければならないことを意味する。
【0027】
例えば、式(I)の好ましい単量体構築ブロックにおいて、D1および/またはD2は、式
【表1】


(式中、aaはアミノ酸またはその誘導体を意味し、aa(a)、aa(b)、aa(c)、aa(d)、aa(e)、aa(f)およびaa(g)は、同じもしくは異なるアミノ酸またはその誘導体であり、好ましくはaa(a)およびaa(d)は同じもしくは異なる疎水性アミノ酸またはその誘導体であり;そしてXは2〜20、好ましくは3、4、5または6の数字である)
のいずれかのペプチドである。
【0028】
疎水性アミノ酸は、Val、Ile、Leu、Met、Tyr、PheおよびTrpである。
【0029】
ヘプタッドは、式aa(a)−aa(b)−aa(c)−aa(d)−aa(e)−aa(f)−aa(g)(IIa)または式(IIb)〜(IIg)のその並べ替え体のいずれかで示されるヘプタペプチドである。
【0030】
好ましいのは、ペプチドオリゴマー化ドメインD1またはD2の1つまたは両方が、
(1)Xが3であり、そしてaa(a)およびaa(d)が、これらの6つのアミノ酸について表1からのスコアの和が少なくとも14であるように20の天然α−L−アミノ酸から選択される式(IIa)〜(IIg)のいずれかのペプチド(このようなペプチドは17個までのさらなるヘプタッドを含む)、あるいは
(2)Xが3であり、そしてaa(a)およびaa(d)がこれらの6つのアミノ酸について表1からのスコアの和が少なくとも12であるように20の天然α−L−アミノ酸から選択され、ただし、1つのアミノ酸aa(a)は隣接ヘプタッドのアミノ酸aa(d)もしくはaa(g)へのヘリックス間塩橋を形成することができる帯電アミノ酸であるか、または、1つのアミノ酸aa(d)は隣接ヘプタッドのアミノ酸aa(a)もしくはaa(e)へのヘリックス間塩橋を形成することができる帯電アミノ酸であるものとする、式(IIa)〜(IIg)のいずれかのペプチド(このようなペプチドは2個までのさらなるヘプタッドを含む)
である式(I)の単量体構築ブロックである。隣接ヘプタッドのアミノ酸へのヘリックス間塩橋を形成することができる帯電アミノ酸は、例えば、もし他のアミノ酸がLys、ArgもしくはHisであるならば、AspもしくはGluであり、またはその逆も成り立つ。
【表2】

【0031】
ペプチドオリゴマー化ドメインD1またはD2の1つまたは両方が、下記の好ましいペプチド:
(11)aa(a)がVal、Ile、LeuおよびMetおよびその誘導体から選択され、そしてaa(d)がLeu、MetおよびIleおよびその誘導体から選択される式(IIa)〜(IIg)のいずれかのペプチド、
(12)1つのaa(a)がAsnであり、そして他方のaa(a)がAsn、IleおよびLeuから選択され、そしてaa(d)がLeuである式(IIa)〜(IIg)のいずれかのペプチド(このようなペプチドは、通常、二量体化ドメインである(mまたはn=2))、
(13)aa(a)およびaa(d)が両方ともLeuであるかまたは両方ともIleである式(IIa)〜(IIg)のいずれかのペプチド(このようなペプチドは、通常、三量体化ドメインである(mまたはn=3))、
(14)aa(a)およびaa(d)が両方ともTrpである式(IIa)〜(IIg)のいずれかのペプチド(このようなペプチドは、通常、五量体化ドメインである(mまたはn=5))、
(15)aa(a)およびaa(d)が両方ともPheである式(IIa)〜(IIg)のいずれかのペプチド(このようなペプチドは、通常、五量体化または四量体化ドメインである(mまたはn=4または5))、
(16)aa(a)およびaa(d)が両方ともTrpまたはPheのいずれかである式(IIa)〜(IIg)のいずれかのペプチド(このようなペプチドは、通常、五量体化ドメインである(mまたはn=5))、
(17)aa(a)がLeuもしくはIleのいずれかであり、そして1つのaa(d)がGlnであり、他方のaa(d)がGln、LeuおよびMetから選択される式(IIa)〜(IIg)のいずれかのペプチド(このようなペプチドは、五量体化ドメインである潜在力を有する(mまたはn=5))
から選択される、式(I)で示される単量体構築ブロックも好ましい。
【0032】
他の好ましいペプチドは、本明細書で以前に定義したようなペプチド(1)、(2)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)および(17)であって、さらに
(21)少なくとも1つのaa(g)がAspおよびGluから選択され、そして次のヘプタッドにおけるaa(e)がLys、ArgまたはHisであり;および/または
(22)少なくとも1つのaa(g)がLys、ArgおよびHisから選択され、そして次のヘプタッドにおけるaa(e)がAspまたはGluであり;および/または
(23)少なくとも1つのaa(a〜g)がLys、ArgおよびHisから選択され、そして配列において3もしくは4アミノ酸離れているaa(a〜g)がAspまたはGluである。このようなアミノ酸aa(a〜g)の対は、例えば、aa(b)およびaa(e)またはaa(f)である。
【0033】
COILS(http://www.ch.embnet.org/software/COILS_form.html; Gruber M. et al., J. Struct. Biol. 2006, 155(2):140-5)またはMULTICOIL(http://groups.csail.mit.edu/cb/multicoil/cgi-bin/multicoil.cgi)のようなコイルドコイル予測プログラムは、コイルドコイル形成ペプチド配列を予測できる。それ故、式(I)の好ましい単量体構築ブロックにおいて、D1および/またはD2は、コイルドコイル予測プログラムCOILSによって、ウィンドウサイズ14、21または28の少なくとも1つを用いて全てのそのアミノ酸について0.9より高い確率でコイルドコイルを形成すると予測される、2つのヘプタッド反復長の少なくとも1つの配列を含むペプチドである。
【0034】
式(I)のより好ましい単量体構築ブロックにおいて、D1および/またはD2は、コイルドコイル予測プログラムCOILSによって、ウィンドウサイズ14、21または28の少なくとも1つを用いて全てのそのアミノ酸について0.9より高い確率でコイルドコイルを形成すると予測される、3つのヘプタッド反復長の少なくとも1つの配列を含むペプチドである。
【0035】
式(I)の別のより好ましい単量体構築ブロックにおいて、D1および/またはD2は、コイルドコイル予測プログラムCOILSによって、ウィンドウサイズ14、21または28の少なくとも1つを用いて全てのそのアミノ酸について0.9より高い確率でコイルドコイルを形成すると予測される、2つのヘプタッド反復長の少なくとも2つの別々の配列を含むペプチドである。
【0036】
別の好ましい態様において、1つのオリゴマー化ドメインD1またはD2は、COMP(Malashkevich V.N. et al., Science 1996, 274:761-765)の五量体化ドメイン(mまたはn=5)またはその誘導体である。この五量体化ドメインは、配列(LAPQMLRELQETNAALQDVRELLRQQVKQITFLKNTVMECDACG)(配列番号1)を有する。このドメインの小さな修飾も意図される。このような修飾は、隣接ドメイン間のジスルフィド橋の形成のための、例えば、五量体の外側でのaa(b)、aa(c)またはaa(f)の位置、好ましくはaa(f)の位置におけるアミノ酸をCysによって置換することであり得る。このドメインの表面アミノ酸の他の修飾は、隣接オリゴマー化ドメイン間の界面における相互作用、例えば疎水性、親水性もしくはイオン性相互作用またはジスルフィド橋のような共有結合を最適化するための、アミノ酸の置換を含むことができる。例えばC末端CDACGモチーフ(システインがこの五量体化ドメインのC末端において分子間ジスルフィド橋を形成している)を欠失している、このドメインのより短い構築物も意図される。このドメインのオリゴマー化状態に影響を及ぼすアミノ酸の修飾、例えば五量体から四量体への移行をもたらす修飾も意図される。このドメインの表面アミノ酸のさらに他の修飾は、官能基の付着部位を発生させるための、アミノ酸の置換(例えばシステインまたはリジンによって)も含むことができる。
【0037】
別の好ましい態様において、1つのオリゴマー化ドメインD1またはD2は、トリプトファンジッパー(Liu J et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2004; 101(46):16156-61)の五量体化ドメイン(mまたはn=5)またはその誘導体である。この五量体化ドメインは、配列(SSNAKWDQWSSDWQTWNAKWDQWSNDWNAWRSDWQAWKDDWARWNQRWDNWAT)(配列番号2)を有する。このドメインの小さな修飾も意図される。このような修飾は、隣接するドメイン間のジスルフィド橋の形成のための、例えば、五量体の外側でのaa(b)、aa(c)またはaa(f)の位置、好ましくはaa(f)の位置におけるアミノ酸をCysによって置換することであり得る。このドメインの表面アミノ酸の他の修飾は、隣接オリゴマー化ドメイン間の界面における相互作用、例えば疎水性、親水性もしくはイオン性相互作用またはジスルフィド橋のような共有結合を最適化するためのアミノ酸の置換を含むことができる。このドメインのより短い構築物も意図される。このドメインのオリゴマー化状態に影響を及ぼすアミノ酸の修飾、例えば、コア残基TrpをPheによって交換する五量体化ドメインから四量体化ドメインへの移行をもたらす修飾も意図される。実施例10のような他のコア残基突然変異も考えられるが、コア位置aa(a)およびaa(d)の少なくとも70%がTrpまたは別の芳香族アミノ酸のいずれかでなければならない。このドメインの表面アミノ酸のさらに他の修飾は、官能基の付着部位を発生させるためのアミノ酸の置換(例えばシステインまたはリジンによって)を含むことができる。
【0038】
別の好ましい態様において、1つのオリゴマー化ドメインD1またはD2は、テトラブラチオン(Stetefeld J. et al., Nature Structural Biology, 2000; 7(9):772-776)のコイルドコイルドメインの四量体ドメイン(mまたはn=4)またはその誘導体である。この四量体化ドメインは、配列(IINETADDIVYRLTVIIDDRYESLKNLITLRADRLMIINDNVSTILASG)(配列番号64)を有する。コイルドコイルの配列は、3,4−疎水性残基反復を有する7残基のヘプタッド反復によって特徴づけられる。残基が少数のターンの後に準等価な位置をとることができる次の周期は、3回ターンまたは11残基である。11残基反復の存在に基づいて、超好熱性古細菌Staphylothermus marinus由来の表層糖タンパク質テトラブラチオンのC末端は、右巻きコイルドコイル構造を形成する。それは、そのC末端において細胞膜にアンカリング(anchor)する70nm長の四量体α−ヘリックスコイルドコイルストーク(stalk)を形成する。この四量体コイルドコイルは、一連のHTLエピトープを含み(実施例9)、従って、自己会合ペプチドナノ粒子(SAPN)のコアオリゴマーとして理想的に適している。
【0039】
さらに別の好ましい態様において、1つのオリゴマー化ドメインD1またはD2は、バクテリオファージT4タンパク質フィブリチン(Tao, Y. et al., Structure 1997, 5:789-798)の三量体化ドメイン(フォルドン)またはその誘導体である。この三量体化ドメイン(mまたはn=3)は、配列(GYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL)(配列番号3)を有する。このドメインの小さな修飾も意図される。このような修飾は、隣接ドメイン間のジスルフィド橋の形成のための、CysによるAsp9の置換であり得る。このドメインの表面アミノ酸の他の修飾は、隣接オリゴマー化ドメイン間の界面における相互作用、例えば疎水性、親水性もしくはイオン性相互作用またはジスルフィド橋のような共有結合を最適化するための、残基の置換を含むことができる。このドメインの表面アミノ酸のさらに他の修飾は、官能基の付着部位を発生させるためのアミノ酸の置換(例えばシステインまたはリジンによって)を含むことができる。
【0040】
最も好ましいのは、実施例に記載のコイルドコイル配列および単量体構築ブロックである。
【0041】
自己会合ペプチドナノ粒子:均一ユニット
自己会合ペプチドナノ粒子(SAPN)は、式(I)の単量体構築ブロックから形成される。このような構築ブロックが会合すれば、それらはいわゆる「均一ユニット」を形成するだろう。このような均一なユニットへと会合する単量体構築ブロックの数は、最小公倍数(LCM)によって定められるだろう。従って、例えば単量体構築ブロックのオリゴマー化ドメインが三量体(D1)(m=3)および五量体(D2)(n=5)を形成する場合、15の単量体が均一ユニットを形成するだろう(図2A)。リンカーセグメントLが適切な長さを有している場合、この均一ユニットは、球状ペプチドナノ粒子の形態で会合し得る。同様に、単量体構築ブロックのオリゴマー化ドメインD1およびD2が三量体(D1)(m=3)および四量体(D2)(n=4)を形成する場合、均一ユニットを形成するのに必要とされる単量体の数は、12であろう(図2B)。
【0042】
mおよびnは等しくはあり得ず、または互いの倍数ではあり得ないので、最小公倍数(LCM)は、mおよびnよりも常に大きい。
【0043】
自己会合ペプチドナノ粒子(SAPN)は、唯1つまたは1より多い均一ユニットの会合によって形成され得る(表2)。このようなSAPNは、トポロジー的に閉じた構造を示す。
【表3】

【0044】
正多面体
5つの正多面体、四面体、立方体、八面体、十二面体、および二十面体が存在する。それらは種々の内部回転対称要素を有する。四面体は2回軸および2つの3回軸を有し、立方体および八面体は2回、3回および4回回転対称軸を有し、そして十二面体および二十面体は2回、3回および5回回転対称軸を有する。立方体においては、これらの軸の空間方位は、八面体と正確に同じであり、そして十二面体および二十面体においても、お互いに対するこれらの軸の空間方位は、正確に同じである。従って、本発明のSAPNの目的には、立方体および八面体、そして同様に十二面体および二十面体は同一であると考えることができる。立方体/八面体は、24個の同じ3次元構築ブロックから構築されるが、十二面体/二十面体は、60個の同じ3次元構築ブロックから構築される(表2)。これらの構築ブロックは、多面体の非対称ユニット(asymmetric units)(AUs)である。それらは、トリピラミッド(tri-pyramids)であり、そしてピラミッド稜の各々は回転対称軸の1つに相当し、故にこれらのAUsは、多面体のタイプに依存してそれらの稜に2回、3回および4回または5回対称要素を有するであろう。これらの対称要素をペプチドオリゴマー化ドメインから発生させるならば、このようなAUsは前記した単量体構築ブロックから構成される。それは、2つのオリゴマー化ドメインD1およびD2をAUの対称軸の2つに沿ってアラインメントさせるのに十分である(図3)。これらの2つのオリゴマー化ドメインが安定なオリゴマーを形成するならば、第3対称軸に沿った対称界面が自動的に発生させられ、そしてそれは、この界面に沿った相互作用、例えば、疎水性、親水性もしくはイオン性相互作用またはジスルフィド橋のような共有結合を最適化することによって安定化され得る。
【0045】
正多面体対称を有する自己会合ペプチドナノ粒子(SAPN)の会合
均一な形状(regular geometry)(十二面体、立方体)を有する自己会合ペプチドナノ粒子(SAPN)を作製するために、1つより多くの均一ユニットが必要である。例えば、三量体および五量体オリゴマー化ドメインを含む単量体から十二面体を形成するために、各々15個の単量体構築ブロックからなる4個の均一ユニットが必要であり、すなわち、均一な形状を有するペプチドナノ粒子は、60個の単量体構築ブロックからなるであろう。必要な2つのオリゴマー化ドメインのオリゴマー化状態と、正多面体のいずれをも形成するための均一ユニットの数との組合せは、表2に列挙されている。
【0046】
均一ユニットがさらに会合して1つより多くの均一ユニットからなる正多面体を形成するかどうかは、2つのオリゴマー化ドメインD1およびD2のお互いに対する幾何学的アラインメント、特に2つのオリゴマー化ドメインの回転対称軸間の角度に依存する。これは、i)ナノ粒子における隣接ドメイン間の界面における相互作用、ii)リンカーセグメントLの長さ、iii)個々のオリゴマー化ドメインの形状によって支配される。この角度は、正多面体におけるアレンジメントに比べて均一ユニットにおいてより大きい。またこの角度も正多面体とは反対に単量体構築ブロックにおいて同一ではない。もしこの角度が正多面体のより小さな値に制限され(疎水性、親水性もしくはイオン性相互作用または共有結合ジスルフィド橋によって)そしてリンカーセグメントLが十分に短いならば、各々規定された数の単量体構築ブロックを含む与えられた数のトポロジー的に閉じた均一ユニットがさらにアニールして正多面体を形成するか(表2)、またはより多くの単量体構築ブロックを囲って多面体の厳密な内部対称を欠いているナノ粒子を形成するであろう。
【0047】
2つのオリゴマー化ドメイン間の角度が十分に小さいならば(二十面体対称を有する正多面体におけるよりもさらに小さいならば)、多数(数百)のペプチド鎖がペプチドナノ粒子へと会合することができる。これは、Raman S. et al., Nanomedicine: Nanotechnology, Biology, and Medicine 2006, 2:95-102の最初の設計にあるような、2つのヘリックス間の界面に位置し、そして2つのヘリックス間でジスルフィド橋を形成している2つのシステイン残基を、配列番号33の配列にあるような小さな残基であるアラニンによって置換することによって達成することができる。2つのヘリックス間の角度はより小さくなることができ、そして結果として、60を超えるペプチド鎖がSAPNへと会合することができる。このような設計において、SAPNは、約330ペプチド鎖に相当する約4MDの分子量を有する(実施例6)。
【0048】
T細胞エピトープおよびB細胞エピトープ
T細胞エピトープは、B細胞エピトープとは反対に、免疫化を引き起こすために担体の表面に提示される必要はないので、それらをSAPNのコア骨格へと、すなわち、オリゴマー化ドメインのコイルドコイル配列へと取り込むことができる。本発明において、MHCへの結合に対して伸長したコンフォメーションを必要とするT細胞エピトープのMHCへの結合の特徴と(図1)、コイルドコイルコンフォメーションのためのα−ヘリックス構造を必要とするコイルドコイル形成の特徴とをどのように合わせて、これらのエピトープが、SAPNのコイルドコイル骨格の一部となり得、かつ、それぞれのMHC分子に結合できるようにするかが示されている。全てのコイルドコイル配列がMHC分子に結合できるわけではなく、全てのT細胞エピトープをコイルドコイル構造に取り込むことができるわけではないことを注記すべきである。本発明は、適切なT細胞エピトープをどのように選択するかの一般的な原則を提供し、これらのペプチドがSAPNを形成するように特定のコイルドコイルオリゴマー化ドメインに前記T細胞エピトープをどのように取り込むかを記載する。これらの原則を使用することにより、多種多様なT細胞エピトープを、SAPNのコイルドコイル骨格に取り込むことができる。
【0049】
本発明のさらなる局面において、コイルドコイルではないB細胞エピトープを、コイルドコイルセグメントの2本の伸長鎖の間に挿入することによって、SAPNオリゴマー化ドメインのコイルドコイル配列に取り込み、これにより、この全配列が、単一のオリゴマー化ドメインとして作用する。これは、コイルドコイル骨格が、B細胞エピトープのコンフォメーションをその天然コンフォメーションとほぼ同一なコンフォメーションに制限する手段を提供できるため特に関心が高い。
【0050】
T細胞エピトープの供給源
T細胞エピトープをオリゴマー化ドメイン(最終的には自己会合ペプチドナノ粒子(SAPN)となる)に取り込むために、T細胞エピトープを、様々な供給源から選択することができる:例えば、T細胞エピトープは実験的な方法によって決定できるか、それらは文献から公知であるか、それらは特定の病原体の既存のタンパク質配列に基づいた予測アルゴリズムによって予測できるか、あるいは、新規に設計されたペプチドまたはその組合せであり得る。
【0051】
科学的文献において入手可能である様々な公知のT細胞エピトープがある。これらのT細胞エピトープは、特定の病原体から(例えば実施例12、13および14のような)、癌特異的ペプチド配列から(例えば実施例14のような)選択することができるか、または、それらは特定の特徴を有する新規に設計されたペプチド、例えば、多くの異なるMHCII分子に結合する(このことから、乱雑なT細胞エピトープとされている(例えば実施例1のような))PADREペプチド(US Patent 5,736,142)であり得る。数千の異なるT細胞エピトープを含む一般にアクセス可能なデータベース、例えば、MHCデータベース「MHCBN VERSION 4.0」(http://www. imtech.res.in/raghava/mhcbn/index.html)またはPDBデータベース「Protein Data Bank」(http://www.rcsb.org/pdb)等が存在する。
【0052】
HTLエピトープを他の免疫原性ではないペプチド配列に取り込むこと、またはそれをペプチド性ではない抗原に付着させることは、それらをはるかにより免疫原性とし得ることが周知であり十分に文書化されている。PanDR結合ペプチドHTLエピトープPADREは、マラリア、アルツハイマーおよび多くの他のワクチンのためのワクチン設計において広く使用されている。
【0053】
MHCBNデータベース(前記)の定義によれば、T細胞エピトープは、対応するMHC分子に対して50,000nM未満の結合親和性(IC50値)を有するペプチドである。このようなペプチドは、MHC結合物質と考えられる。この定義によれば、2006年8月現在、MHCBNデータベースのバージョン4.0において、以下のデータが入手可能である:20717個のMHC結合物質および4022個のMHC非結合物質。
【0054】
適切なT細胞エピトープを、予測アルゴリズムを使用することによっても得ることができる。これらの予測アルゴリズムは、推定T細胞エピトープについて病原体由来の既存のタンパク質配列を走査することができるか、または、それらは、新規に設計されたペプチドが特定のMHC分子に結合するかどうかを予測することができる。多くのこのような予測アルゴリズムはインターネット上で一般にアクセス可能である。例は、MHCII結合分子についてはSVRMHCdb(http://svrmhc.umn.edu/SVRMHCdb; J. Wan et al., BMC Bioinformatics 2006, 7:463)、SYFPEITHI(http://www.syfpeithi.de)、MHCPred(http://www.jenner.ac.uk/MHCPred)、モチーフスキャナー(http://hcv.lanl.gov/content/immuno/motif_scan/motif_scan)またはNetMHCIIpan(http://www.cbs.dtu.dk/services/NetMHCIIpan)、およびMHCI結合エピトープについてはNetMHCpan(http://www.cbs.dtu.dk/services/NetMHCpan)である。
【0055】
本明細書に記載のような設計に好ましいHTLエピトープは、500nMよりも良好な結合親和性(IC50値)でもってMHCII分子のいずれかに結合すると、生物物理学的方法によって測定されるかまたはNetMHCIIpanによって予測されるペプチド配列である。これらは、弱い結合物質であると考えられる。優先的には、これらのエピトープは、50nMよりも良好なIC50値でもってMHCII分子に結合すると、生物物理学的方法によってまたはNetMHCIIpanによって予測される。これらは強い結合物質と考えられる。
【0056】
本明細書に記載のような設計に好ましいCTLエピトープは、500nMよりも良好な結合親和性(IC50値)でもってMHCI分子のいずれかに結合すると、生物物理学的方法によって測定されるかまたはNetMHCpanによって予測されるペプチド配列である。これらは、弱い結合物質であると考えられる。優先的には、これらのエピトープは、50nMよりも良好なIC50値でもってMHCI分子に結合すると、生物物理学的方法によって測定されるかまたはNetMHCpanによって予測される。これらは強い結合物質と考えられる。
【0057】
T細胞エピトープのための場所
T細胞エピトープを、コイルドコイルオリゴマー化ドメインD1およびD2のペプチド配列内のいくつかの場所に取り込むことができる。これを達成するために、T細胞エピトープを有する特定の配列は、コイルドコイル形成の原則、並びに、MHC結合の原則に従わなければならない。コイルドコイル形成の原則は、前記に詳細に概略が示されている。MHC分子への結合の原則は、複雑なアルゴリズムを使用するMHC結合予測プログラムに取り込まれ、これによりMHC結合ペプチドを予測する。
【0058】
多くの異なるHLA分子が存在し、それらの各々が、最善にそれに結合するであろう限られたアミノ酸をその配列中に有する。結合モチーフを表3に要約する。この表において、モチーフは、あらゆるアミノ酸を有することのできる位置についてのxを示し、角括弧には結合モチーフの特定の位置にしか存在し得ないアミノ酸(のリスト)を示す。
【表4】














1)アンカー残基は、角括弧で示されている。アンカー位置において好ましいが優位ではないアミノ酸は括弧で示されている。例えば、モチーフx-[VTILF]-x-x-x-x-x-x-[YF(ML)]は、2番目の位置およびC末端の位置がアンカー位置であることを意味する。2番目の位置における優位なアミノ酸は、V、T、I、L、Fであり、C末端アンカー位置において優位なアミノ酸は、YおよびFであり、一方MおよびLは好ましいが優位ではない。
2) Marsh2000: Marsh S.G.E., Parham P. and Barber L.D., The HLA Factsbook. Academic Press, San Diego, 2000. URL: http://www.anthonynolan.com/HIG/.
SYFPEITHI: The SYFPEITHI Database of MHC Ligands, Peptide Motifs and Epitope Prediction. Jan. 2003. URL: http://www.syfpeithi.de.
Luscher2001: Luscher M.A. et al., Immunogenetics. 2001, 53(1):10-14.
Yusim2004: Yusim K. et al., Appl Bioinformatics 2005, 4(4):217-225.
【0059】
MHC分子の多くは、非常に類似した結合モチーフを有しており、従って、これらはいわゆるHLAスーパータイプに分類されることができる。これらのスーパータイプの結合モチーフを表4に要約する。
【表5】

【0060】
T細胞エピトープの特定の位置においての特定のアミノ酸の発生頻度も要約することができる。MHC結合では、T細胞エピトープにおける1、4、6および9の位置が最も重要な位置である。これらの位置における最も好ましい残基が表5に列挙されているが、これらの位置における特定のアミノ酸の優先度は、様々なMHC分子間で大きく異なる。それ故、前記したように、MHC分子への特定のアミノ酸配列の結合は、前記に列挙した予測プログラムによってはるかにより正確に予測することができる。
【表6】

【0061】
この表5から、例えば、1位および4位において最も頻繁に遭遇するアミノ酸は、コイルドコイルヘプタッド反復のコア位置(下線によって示す)において見られるものである。1位および4位は、ヘプタッド反復の位置aa(a)およびaa(d)上に重ね合わせることができる。それ故、1位にアミノ酸Lおよび4位にアミノ酸Vを有するT細胞エピトープは、ヘプタッド反復のコア位置aa(a)およびaa(d)において同じアミノ酸を有するコイルドコイルペプチドと完全に一致する。それ故、ペプチド配列が、T細胞結合モチーフの制約並びにコイルドコイルヘプタッド反復モチーフの制約の両方に従うならば、それをSAPNのコイルドコイルオリゴマー化ドメインに取り込むことができる。これは、T細胞結合モチーフがコイルドコイル形成モチーフと重なるように、ペプチド配列のアラインメントを調整することによって、多くのT細胞エピトープについて達成することができる。
【0062】
T細胞エピトープをコイルドコイルへと工学設計
SAPNのコイルドコイルオリゴマー化ドメインにT細胞エピトープを取り込むSAPNを工学設計するために、3つのステップをとらなければならない。最初のステップにおいて、候補T細胞エピトープを、文献からもしくはデータベースからの公知のT細胞エピトープ、または、適切なエピトープ予測プログラムを使用することによる予測T細胞エピトープを使用することによって選択しなければならない。第2のステップにおいて、CTLエピトープのC末端にプロテアソーム開裂部位を挿入しなければならない。これは、プロテアソーム開裂部位PAProcのための予測プログラム(http://www.paproc2.de/paproc1/paproc1.html; Hadeler K.P. et al., Math. Biosci. 2004, 188:63-79)を使用し、そして、所望の開裂部位のすぐ後の残基を修飾することによって行なうことができる。この2番目のステップは、HTLエピトープには必要とされない。第3番目の最も重要なステップにおいて、T細胞エピトープの配列を、前記に概略を示したようなコイルドコイル形成の原則と最善に適合するように、コイルドコイル配列とアライン(align)させなければならない。取り込まれたT細胞エピトープを有する配列が、実際に、コイルドコイルを形成するかどうかを予測でき、T細胞エピトープ配列とコイルドコイル反復配列の間の最善のアラインメントを、コイルドコイル予測プログラム、例えばCOILS(http://www.ch.embnet.org/software/COILS_form.html; Gruber M. et al., J. Struct. Biol. 2006, 155(2):140-5)またはMULTICOIL(http://groups.csail.mit.edu/cb/multicoil/cgi-bin/multicoil.cgi)(これらは、インターネット上で入手できる)を使用することによって最適化することができる。
【0063】
適切なアラインメントを見つけることができなくても(おそらく、T細胞エピトープは、コイルドコイル構造と適合性ではないグリシンまたはさらにはプロリンを含んでいるため)、T細胞エピトープをオリゴマー化ドメインに取り込み得る(実施例3参照)。この場合、T細胞エピトープは、同じオリゴマー化状態の強力なコイルドコイル形成配列によってフランキング(flank)されていなければならない。これは、コイルドコイル構造を十分な程度まで安定化させるか、または代替的にはこのコイルドコイルオリゴマー化ドメイン内にループ構造を生じさせることができる。これは、B細胞エピトープをSAPNのコイルドコイルコア配列に取り込むための次の章に記載したのと実質的に同じ手順である。
【0064】
B細胞エピトープをコイルドコイルコアへと工学設計
本発明の特定の局面において、α−ヘリックスではない小さいB細胞エピトープの、SAPNのコイルドコイルコアへの取り込みが意図される。これは、コイルドコイル構造と適合性ではないT細胞エピトープについて前記に概略を示したのと同じ手順によって達成することができる。T4フィブリチンの構造(http://www.rcsb.org/pdb/におけるpdbアクセッションコード1aa0)は、そのコイルドコイル内に2つのループ構造を含む。ループが、コイルドコイルのヘリックス構造を妨害しないように2つのヘリックスターン間のコイルドコイルヘリックスから突出している。
【0065】
フィブリチンでは、ループがコイルドコイルのaa(b)位置においてヘリックスから出て、コイルドコイル配列のaa(c)位置においてヘリックスに再び入る。ループの一方は、短いβ−ターンであるが、他方はより不規則なループ構造である。コイルドコイル中の残基aa(b)とaa(c)の間の空間は、逆平行β−ターンペプチドのアンカー点として作用するに理想的に適している。残基aa(b)もしくはaa(c)またはその両方がグリシン残基である場合、これは、コイルドコイルのα−ヘリックスを出て再び入るために必要とされるタンパク質二次構造の柔軟性を可能とする。
【表7】

【0066】
前記のフィブリチン配列において、ループ構造がイタリック体で示され、aa(b)およびaa(c)位置における残基(2つのループがヘリックスから出て再び入る)が下線によって示されている。これらの4つの中の3つの残基が、グリシン残基である。これを鋳型として考えると、逆平行β−ターンコンフォメーションを有するB細胞エピトープを、ここで、SAPNのコイルドコイルコアに取り込むことができる。コイルドコイル構造は、このようなループ構造の取り込みを可能とするに十分なほど安定でなければならず、従って、ループの両側においてコイルドコイルを形成できなければならない。これまでに記載された最小の自動的に折り畳まれるコイルドコイル配列は、2つのヘプタッド反復長である。以下の配列において、逆平行β−ターンペプチドである、HIVのタンパク質gp120由来のV3エピトープの先端が、両側に2つを超えるヘプタッド反復のフランキングヘリックスを有する設計された安定なコイルドコイルのコイルドコイルに取り込まれる。これらは、Burkhard P. et al., J Mol Biol 2002, 318:901-910から得られた非常に安定なコイルドコイル断片である。
【表8】

【0067】
これは、コイルドコイル内のV3ループのコンフォメーションを、タンパク質上のこのペプチドの天然コンフォメーションに対応する逆平行β−ターンコンフォメーションに制限するだろう。
【0068】
好ましい設計
所与の特定の適用のための最善の免疫学的プロファイルを有するSAPNを工学設計するために、以下の考察を考慮に入れなければならない:
CTLエピトープは、そのC末端においてプロテアソーム開裂部位を必要とする。エピトープは、自己免疫応答を回避するためにヒト配列と類似すべきではない(ヒトペプチドに対する免疫応答を誘起する目標である場合を除く)。可能な例は、実施例4の癌特異的CTLエピトープである。
【0069】
従って、T細胞エピトープの少なくとも1つがCTLエピトープであり、特に、配列がさらにCTLエピトープの後にプロテアソーム開裂部位を含む、SAPNが好ましい。
【0070】
同様に好ましいのは、T細胞エピトープの少なくとも1つがHTLエピトープ、特にpan−DR結合HTLエピトープである、SAPNである。このようなpan−DR結合HTLエピトープは、表3の下部に列挙したようなMHCクラスII分子の多くに結合し、それ故、大半の健康個体において認識され、これは良好なワクチンにとって重要である。
【0071】
また好ましいのは、D1またはD2が三量体(実施例7および8)、四量体(実施例9)または五量体(実施例10)であるならば、配列D1−L−D2が一連の重複しているT細胞エピトープを含む、SAPNである。
【0072】
B細胞エピトープは、SAPNの表面に提示される必要がある。それらは、コイルドコイル配列の一部であってもそうでなくてもよく、すなわち、コイルドコイルの部分が表面に近づくことができるかどうかに応じて、コイルドコイルそれ自体が部分的にB細胞エピトープであり得る。例えば、エンベロープを有するウイルスの表面タンパク質の三量体コイルドコイルからなるB細胞エピトープを、SAPNの表面に提示することができ、そして同時にコイルドコイル配列の一部であり得る。このような設計の一例が、Raman S. et al., Nanomedicine: Nanotechnology, Biology, and Medicine 2006; 2:95-102に提示されている。一般にあらゆるオリゴマー化状態のコイルドコイルが、SAPNによってコンフォメーション特異的に提示されるうえで例外的に良好に適している。コイルドコイルは、エンベロープを有するウイルス表面タンパク質においてだけでなく、例えば、マラリア病原体の熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)(Villard V. et al., PLoS ONE 2007; 2(7):e645)のゲノムにおいても豊富である。
【0073】
しかしながら、一般的に、B細胞エピトープは、コイルドコイルオリゴマー化ドメインの一部ではないか、あるいは、それらは、コイルドコイルと、コイルドコイルではない追加の部分、例えば、コイルドコイルストークおよび球状頭部ドメインを有する細菌の三量体自己輸送体アドヘシン(TAA)、例えば髄膜炎菌(N. meningitidis)のTAAとからなり得る。
【0074】
B細胞エピトープとして特に関心が高いのは、それ自体がオリゴマーであるタンパク質、例えば三量体ヘマグルチニン、およびインフルエンザの四量体シアリダーゼまたはM2表面タンパク質である。
【0075】
病原体に対するワクチンの設計についての考察
このようなワクチンは、好ましくは、3タイプ全てのエピトープ、B細胞エピトープ、HTLエピトープおよびCTLエピトープを含む。(1)好ましくは、唯1つの(または非常に僅かな)B細胞エピトープが、ペプチド鎖のどちらかの末端に配置されるべきである。これは、反復性抗原提示でSAPNの表面上にB細胞エピトープを配置させるだろう。(2)HTLエピトープは、できるだけ乱雑であるべきである。それらは必ずしも病原体に由来する必要はないが、強いヘルパーT細胞免疫応答を誘起するペプチドであり得る。一例は、PADREペプチドであろう。好ましくは、これらは、SAPNのD1−L−D2コア配列に取り込まれるT細胞エピトープである。(3)CTLエピトープは、病原体特異的である必要があり、それらはC末端プロテアソーム開裂部位を有する必要がある。T細胞エピトープは反復性抗原提示を必要としないので、いくつかの異なるT細胞エピトープを、全て同じナノ粒子形成D1−L−D2コアを有するが、コア形成配列の一部ではなく従ってコイルドコイル配列には取り込まれないであろう様々なT細胞エピトープを有する、様々なペプチド鎖の共会合によって1つの単一SAPNに取り込むことができる。
【0076】
同じように、ER標的化シグナル、すなわち小胞体(ER)へのタンパク質またはペプチドの輸送を誘導するシグナルペプチドを有するペプチド鎖を、同じSAPN中に共会合することにより、MHCI分子による適切な提示のためにCTLエピトープをERに運ぶことができる。なぜなら、交差提示は、ヒトにおいてはあまり効果的ではないからである。しかしながら、ER標的化シグナルは、別々のペプチド鎖上にある必要はなく、CTLエピトープと同じペプチド内にあってもよい。適切なERシグナルペプチドは例えばER標的化シグナル(E3/19K)MRYMILGLLALAAVCSA(配列番号6)であろう。
【0077】
強い抗体応答を発生させることを目的とした治療ワクチン
強い抗体応答を発生させることを目的とした治療ワクチンは、特に、アルツハイマー、高血圧、肥満、薬物耽溺、または炎症の処置に有用である。このようなワクチンのために、好ましくは唯1つのB細胞エピトープが使用される。1つ以上の乱雑なHTLエピトープをSAPNに含めることによって、反復性抗原提示に起因する強い体液性免疫応答をさらに増強することができる。好ましくは、これらは、SAPNのD1−L−D2コア配列に取り込まれるT細胞エピトープである。さらに、自己免疫応答を回避するために、ヒトペプチドに対してできるだけ少なくかつ弱く結合するCTLエピトープ、特にヒトペプチドに対して結合しないCTLエピトープであるべきである。
【0078】
CTL応答、例えば癌に対するCTL応答を誘導するための治療ワクチン
この場合、全くB細胞エピトープを使用しなくてもよい。特定のCTLエピトープ(例えば、MAGE−1,2,3;MART−1,2,3;またはHer−2/neu、実施例4も参照)に対する免疫応答は、1つ以上の乱雑なHTLエピトープをSAPNに含めることによってさらに増強される。
【0079】
アジュバントとしての自己会合ペプチドナノ粒子(SAPN)
多くのHTLエピトープからなるSAPNは、強力なヘルパーT細胞免疫応答を誘導するだろう(実施例2参照)。同じ用量で任意の他のワクチン製剤と共に投与されると、免疫応答が刺激されるだろう。このようなSAPNは、全くCTLエピトープまたはB細胞エピトープの必要がないアジュバントであろう。しかしながら、B細胞エピトープおよびCTLエピトープを、このようなアジュバントSAPNと合わせることができる。さらに、特定のアジュバント分子を、SAPNに、置換基として、オリゴマー化ドメインD1またはD2に共有結合することにより、SAPNのアジュバント効果をさらに刺激することができる。特に関心が高いのは、免疫刺激性核酸、好ましくはデオキシイノシンを含むオリゴデオキシヌクレオチド、デオキシウリジンを含むオリゴデオキシヌクレオチド、CGモチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチド、イノシンおよびシチジンを含む核酸分子である。他の免疫刺激性分子は、例えば、抗微生物ペプチド、例えば、適応免疫応答を促進および/または向上することができる免疫刺激性の正に帯電した分子に属するクラスである、カチオン性ペプチドである。免疫強化特性を有するこのようなペプチドの一例は、プライムブースト(prime-boost)免疫化の後に強力なタンパク質特異的な2型駆動適合免疫を誘導する、正に帯電した人工抗微生物ペプチドKLKLLLLLKLK(配列番号63)である。
【0080】
好ましくは、本発明の抗原は、(a)癌細胞に対する免疫応答を誘起するのに適したタンパク質;(b)感染症に対する免疫応答を誘起するのに適したタンパク質または炭水化物;(c)アレルゲンに対する免疫応答を誘起するのに適したタンパク質;(d)ヒト疾病の処置のための免疫応答を誘起するのに適したペプチドホルモン;および(e)耽溺または他の疾患を処置するための免疫応答を誘起するのに適したハプテン分子、からなる群より選択される。このようなタンパク質、そのペプチド断片、ペプチド、炭水化物、またはハプテンを含むペプチドナノ粒子は、ヒト、または家畜およびペットにおいても免疫応答を誘起するのに適し得る。
【0081】
本発明の1つの好ましい態様において、抗原または抗原決定基は、感染症の予防に有用なものである。このような処置は、多種多様な宿主、例えばヒトまたはヒトではない動物、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、他の哺乳動物種、および同様に哺乳動物ではない種にも罹患する多種多様な感染症を予防するのに有用であろう。
【0082】
特に、本発明は、以下の抗原の1つを含むSAPNに関する:
(a)細菌に対する免疫応答を誘起するのに適した抗原;
(b)ウイルスに対する免疫応答を誘起するのに適した抗原;
(c)寄生虫に対する免疫応答を誘起するのに適した抗原;
(d)癌細胞に対する免疫応答を誘起するのに適した抗原;
(e)アレルゲンに対する免疫応答を誘起するのに適した抗原;
(f)耽溺に対する免疫応答を誘起するのに適した抗原;
(g)疾病および代謝疾患に対する免疫応答を誘起するのに適した抗原;
(h)家畜において免疫応答を誘起するのに適した抗原;
(i)ペットにおいて免疫応答を誘起するのに適した抗原。
【0083】
処置可能な感染症は、当業者には周知である。例は、ウイルス、細菌、または寄生虫が病因の感染、例えば以下の疾病:アメーバ症、炭疸病、カンピロバクター感染、水疱瘡(Chickenpox)、コレラ、デング熱、ジフテリア、脳炎、エボラ、インフルエンザ、日本脳炎、リーシュマニア症、マラリア、麻疹、髄膜炎菌性疾病、ムンプス、院内感染症、百日咳、肺炎球菌感染症、ポリオ(灰白髄炎)、風疹、帯状疱疹、住血吸虫病、破傷風、ダニ媒介脳炎、トリコモナス症、トリパノソーマ症、結核、腸チフス、水疱瘡(Varicella)、および黄熱病を含む。
【0084】
特に、本発明は、以下の寄生虫に由来する以下の抗原の1つを含むSAPNに関する:カンピロバクター、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、FMDV、ヘモフィルス・インフルエンザエb型、ヘリコバクター・ピロリ、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、呼吸器合胞体ウイルス、ロタウイルス、回虫、鉤虫、およびウエストナイルウイルス。
【0085】
本発明の好ましい局面において、マラリアの予防および処置のための組成物が意図される(実施例11)。マラリア寄生虫の生活環は、妨害すると感染プロセスを停止させることができるいくつかのいくつかの段階を与える。マラリア寄生虫の生活環において、ヒトは、雌のAnopheles属の蚊の咬傷からマラリアに感染する。この蚊は宿主にそのプローブを挿入し、その際に蚊の唾液中に存在するスポロゾイト(sporozoite)形態の熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)(または三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax))を注入する。ペプチドワクチンの設計のために適当な可能なタンパク質およびペプチド配列は、下記のマラリア原虫タンパク質:MSP−1(寄生虫細胞表面に発現された大きい多形タンパク質)、MSA1(主要なメロゾイト表面抗原1)、CSタンパク質(ネイティブサーカムスポロゾイト(circumsporozoite))、米国特許第4,735,799号に従う35KDタンパク質または55KDタンパク質または195KDタンパク質、AMA−1(尖端膜抗原1)(apical membrane antigen 1)、またはLSA(肝臓期抗原)からの配列を含有することができる。
【0086】
好ましい設計において、B細胞エピトープの1つは、サーカムスポロゾイト(CS)タンパク質のB細胞エピトープを構成する8〜約48残基の配列である。このB細胞エピトープは、熱帯熱マラリア原虫におけるアミノ酸配列NANPの冗長な反復領域である。好ましいSAPNの設計において、このB細胞エピトープは、アミノ酸残基配列NANPあるいはその並べ替え体のANPN、NPNA、およびPNANの2〜約5回の反復を含む。三日熱マラリア原虫における対応する反復領域は、以下の高度に類似した配列のいずれかからなる。
【表9】

【0087】
好ましい設計において、B細胞エピトープの1つは、これらの配列のいずれかからなる8〜約48残基の配列である。
【0088】
マラリア処置のためのSAPNを設計するための具体的なペプチド配列が、B細胞エピトープ、HTLエピトープおよびCTLエピトープについて以下の3つの表に列挙されている。
【0089】
以下の表7は、好ましい熱帯熱マラリア原虫のコイルドコイルB細胞エピトープを列挙する(Villard V. et al., PLoS ONE 2007, 2(7):e645 and Agak G.W., Vaccine (2008) 26, 1963-1971)。B細胞エピトープでは表面に近づける残基だけが、B細胞レセプターとの相互作用および抗体の産生のために非常に重要であるので、表面に露出していないaa(a)およびaa(d)の位置におけるコイルドコイルコア残基を、免疫原の中和抗体誘起能を変化させることなく、ある程度まで修飾することができる。例えば、aa(a)位置におけるバリンをイソロイシンに変更することは、コイルドコイルB細胞エピトープの一般的な免疫学的特性に影響を及ぼさないだろう。それ故、これらのコイルドコイル配列は、その免疫学的潜在力を消失させることなく、最善のコイルドコイル形成および安定性のためにコア残基を最適化することによって人工的に安定化させることができる(実施例13)。従って、前記に詳細に概略を示したようにコイルドコイル形成性向に従ってaa(a)および/またはaa(d)におけるそのコア残基の1つ以上においてこれらのペプチドB細胞エピトープを修飾することも、これらのB細胞エピトープについて意図される。
【0090】
従って、好ましい設計において、そのコア位置の1つ以上が修飾されたコイルドコイルB細胞エピトープは、ウィンドウサイズ14、21または28の少なくとも1つを用いて全てのそのアミノ酸に対して0.9より高い確率でコイルドコイルを形成すると、コイルドコイル予測プログラムCOILSによって予測される、2つのヘプタッド反復長である少なくとも1つの配列を含むペプチドである。
【0091】
より好ましい設計において、そのコア位置の1つ以上が修飾されたコイルドコイルB細胞エピトープは、ウィンドウサイズ14、21または28の少なくとも1つを用いて全てのそのアミノ酸に対して0.9より高い確率でコイルドコイルを形成すると、コイルドコイル予測プログラムCOILSによって予測される、3つのヘプタッド反復長の少なくとも1つの配列を含むペプチドである。
【0092】
別のより好ましい設計において、そのコア位置の1つ以上が修飾されたコイルドコイルB細胞エピトープは、ウィンドウサイズ14、21または28の少なくとも1つを用いて全てのそのアミノ酸に対して0.9より高い確率でコイルドコイルを形成すると、コイルドコイル予測プログラムCOILSによって予測される、2つのヘプタッド反復長の少なくとも2つの別々の配列を含むペプチドである。
【0093】
【表10】

【0094】
以下の表8は、好ましい熱帯熱マラリア原虫を列挙する(Doolan, D.L., The Journal of Immunology, 2000, 165: 1123-1137; US patent 5,114,713)。
【表11】

【0095】
以下の表9は、好ましい熱帯熱マラリア原虫CTLエピトープを列挙する(US patents 5,028,425, 5,972,351, 6,663,871)。
【表12】

【0096】
本発明の別の好ましい局面において、HIVの予防および処置のための組成物が考えられる(実施例5および12)。抗HIVワクチンの調製のために、HIV特異的抗体を誘起することができる合成ペプチドを使用することができ、該合成ペプチドは、免疫応答を与えるためのHIV−1のエンベロープまたはgagタンパク質またはgp120またはgp41の機能的T細胞エピトープまたはB細胞エピトープのアミノ酸配列を有する。特に関心が高いのは、公知の抗体2F5および4E10のように融合プロセスを妨害することのできるコンフォメーション特異的中和抗体を誘導できるgp41もしくはgp120内の配列、またはgp41もしくはgp120のV3ループに由来する配列である。このような配列は、HR1およびHR2並びにクラスターIおよびクラスターIIの中およびその周辺に主に局在している。例えばgp41のコイルドコイル三量体に結合し、そしてこのコイルドコイル三量体を取り込んでいる本発明のペプチドナノ粒子によって誘起される抗体は、ヘアピン形成を阻害し、これによりウイルス融合を阻害するだろう。同様に、類似の融合プロセスを有するエボラまたは別のウイルスの三量体コイルドコイルに対して生じる抗体は、これらのウイルスのウイルス侵入を阻害するだろう。
【0097】
Letourneau S. et al., PLoS ONE 2007, 10:e984に記載の高度に保存されたHIVタンパク質配列を使用して、CTLエピトープを、SVRMHCdb (http://svrmhc.umn.edu/SVRMHCdb; Wan J. et al., BMC Bioinformatics 2006, 7:463)を使用して予測した。これらの保存されたタンパク質配列は、表10に列挙されたようなHLA分子に結合すると予測されたCTLエピトープを含み、そしてSAPN−HIVワクチンの設計に好ましいCTLエピトープである。これらのペプチドエピトープは、1つの単一の連続的なペプチド連結鎖中に複数のCTLエピトープを有するより長いペプチド配列へと合体させることができる大きく重複している配列を含む。
【表13】




【表14】

【0098】
本発明の別の好ましい局面において、インフルエンザの予防および処置のための組成物が考えられる。インフルエンザAは、膜内在性タンパク質であるM2をコードし、これはホモ四量体であり、そのサブユニットは、23アミノ酸残基の小さな外部ドメイン(M2e)を有する。天然M2タンパク質は、ウイルス粒子内に数コピーで存在するが、かさ高い他の2つの表面タンパク質であるヘマグルチニンおよびシアリダーゼによって免疫系から隠れている。他方で、それは、ウイルス感染細胞の膜表面上には豊富に存在する。M2eの配列は高度に保存されている。キメラGNC4−M2eタンパク質において四量体として免疫系に提示されるM2eは、高度に特異的かつ保護的な体液性免疫応答を生じる(DeFilette M. et al., J Biol Chem 2008; 283(17):11382-11387)。
【0099】
M2e四量体は、ヒトおよびトリの両方に特異的なインフルエンザ株における高度に保存されたB細胞エピトープである(表12および13)。本発明の好ましい態様において、それは、SAPNのテトラブラチオン由来の四量体コイルドコイルまたは任意の他の四量体コイルドコイルのN末端に付着させた場合、その天然の四量体コンフォメーションで提示されることができる。
【表15】


【表16】

【0100】
インフルエンザヘマグルチニン(HA)は、前駆体タンパク質が2つの別々のペプチド鎖に開裂することによって活性化される(Steinauer D.S. et al., Virology 1999; 258:1-20)。HA前駆体分子HA0の開裂は、ウイルス感染性を活性化するために必要とされ、そして宿主における活性化プロテアーゼの分布は、指向性、例えば病原性の決定基の1つである。哺乳動物および非病原性のトリウイルスのHAsは、細胞外で開裂され、これにより、適切なプロテアーゼに遭遇する宿主の組織へのその拡散が制限される。他方で、病原性ウイルスのHAsは、遍在的に存在するプロテアーゼによって細胞内で開裂され、それ故、様々な細胞型に感染し、全身感染を引き起こす力を有する。
【0101】
M2e配列とは対照的に、開裂ペプチドのN末端部分は高度に保存されていない(開裂ペプチドのC末端部分は、事実、高度に保存されている)。HA前駆体タンパク質において開裂ペプチドは表面に露出し、そして開裂部位の周囲の6個の残基(開裂部位の各々の側面上の3つの残基)が、このペプチド配列に最も特徴的である(表14に太字で強調)。好ましいSAPN設計において、これらの6個の残基が、ペプチドへ結合した際にHA前駆体タンパク質が開裂されるのを保護することのできる抗体を誘導できる、B細胞エピトープを示す。
【0102】
SAPNは、同一のSAPN形成コアD1−L−D2を有するがそれに付着した異なったB細胞エピトープを有するペプチドを共会合することによって(実施例15)、様々なHAタイプに特異的な多数の異なる開裂配列を提示するのに理想的に適している(表14)。
【表17】

【0103】
例えば、配列をより可溶性にし塩基性を低くするために挿入されたアスパルテートアミノ酸と共にH1、H2、およびH3開裂部位の配列を含む、ヘマグルチニンB細胞エピトープ連結鎖は、このようであろう:SIQSRGLFGDIESRGLFGERQTRGIFG(配列番号227)。
【0104】
同じコア配列を有するが異なるB細胞エピトープもしくはエピトープ連結鎖を有するペプチドを、単一のSAPNに共会合させて、表14の全てまたは最も重要な(ヒトワクチンのためのH1、H2、H3、H5、H7およびH9)配列をおそらく含む、多価SAPN免疫原を発生させることができる。
【0105】
類似のアプローチにおいて、同一のコアおよび同一のN末端B細胞エピトープM2e並びにC末端において約20個のCTLエピトープ(各ペプチド鎖あたり3または4個)を有する6つのペプチド鎖からなるインフルエンザワクチンSAPNを、単一のSAPNへと共会合することができる(実施例14)。表15において、Parida R. et al., Vaccine 2007, 25:7530-7539の好ましい保存CTLエピトープが列挙されている。これらの6つのペプチド鎖のコアは同一であるので、これらの6つのペプチド鎖を1つの単一SAPNへと共会合することは、約20個の異なるCTLエピトープを1つの単一SAPNに取り込むことを可能とする。
【表18】

【0106】
別の好ましい態様において、本発明の組成物は、代謝疾患および疾病または耽溺の処置に使用され得る免疫治療薬である。最も好ましいのは、アルツハイマー病、高血圧、肥満、ニコチンおよびコカイン耽溺の処置のための免疫治療薬である。
【表19】

【0107】
Aβ断片(Aβ)は、42アミノ酸長のペプチドである(Aβ1−42)。全42残基長のペプチド配列はまた、自己免疫反応を引き起こす可能性のあるCTLエピトープも含んでいるので、ワクチン設計には、Aβ1−12のようなこのペプチドのより短い断片だけを、またはさらにはAβ1−6のようなこのような短いペプチドを使用することが望ましい(US Patent 7,279,165)。
【0108】
同様に、免疫原としての全長TNFαタンパク質は、いくつかの制限を有する。炎症誘発性サイトカインTNFαの局所的過剰産生は、関節リウマチ、乾癬およびクローン病を含むいくつかの慢性的な炎症疾患の病因に非常に関与している。モノクローナル抗体(mAbs、インフリキシマブ、アダリムマブ)またはキメラ可溶性レセプター(エタネルセプト)によるTNFαの中和が、これらの症状の処置に効果的であるが、いくつかの潜在的な欠点も有する。それは、アロタイプまたはId特異的抗体を誘導し得、これは、多くの患者において長期の効力を制限する可能性がある。さらに、処置患者の数が増加するにつれて、TNFαアンタゴニスト、特にmAbsを用いての処置は、日和見感染、特に結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、またはHistoplasma capsulatumのような細胞内病原体によって引き起こされる感染のリスクを増加させることが次第に明らかになっている。4〜23残基のみを含むより短いTNFα断片を用いての免疫化は、これらの中のいくつかの問題を回避することが示された(G. Spohn et al., The Journal of Immunology, 2007, 178: 7450 -7457)。それ故、TNFα4〜23を用いての免疫化は、関節リウマチおよび他の自己免疫疾患のための新規で効果的な治療法であり、これは、既存の抗TNFα療法に新しい安全性水準を付与する。可溶性形態のTNFαのみを選択的に標的化し、膜貫通形態は残しておくことによって、TNFαの病原性作用がワクチンによって中和され、一方で細胞内病原体に対する宿主応答の重要な機能はそのままに留まる。
【0109】
ニコチンおよびコカイン以外に、以下の化合物も、耽溺用のB細胞SAPNワクチンの設計におけるハプテンとして使用し得る:アヘン、マリファナ、アンフェタミン、バルビツレート、グルテチミド、メチプリロン、抱水クロラール、メタカロン、ベンゾジアゼピン、LSD、抗コリン作用薬、抗精神病薬、トリプタミン、他の精神病様薬物、鎮静薬、フェンシクリジン、サイロシビン、揮発性亜硝酸塩、並びに身体的依存および/または心理的依存を誘発する他の薬物。
【0110】
別の好ましい態様において、本発明の組成物は、アレルギーの処置に使用され得る免疫治療薬である。アレルギーのための組成物および処置法のための抗原または抗原決定基の選択は、このような疾患を処置する医学分野の技術者には公知であろう。このタイプの抗原または抗原決定基の代表例は、ハチ毒ホスホリパーゼA2、BetvI(カバノキ花粉アレルゲン)、5DolmV(ホワイトフェースト(white-faced)スズメバチ毒アレルゲン)、およびDerpI(チリダニアレルゲン)を含む。
【0111】
別の好ましい態様において、本発明の組成物は、癌の処置に使用され得る免疫治療薬である。標的化ワクチン設計のための主要な癌は、以下である:脳癌、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、食道癌、神経膠芽腫、白血病(急性骨髄性および慢性骨髄性)、肝癌、肺癌(非小細胞肺癌、小細胞肺癌)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)、メラノーマ、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌。
【0112】
癌のための組成物および処置法のための抗原または抗原決定基の選択は、このような疾患を処置する医学分野の技術者には公知であろう。このタイプの抗原または抗原決定基の代表例は以下を含む:HER2/neu(乳癌)、GD2(神経芽細胞腫)、EGF−R(悪性神経膠芽腫)、CEA(甲状腺髄様癌)、CD52(白血病)、MUC1(血液系悪性疾患に発現)、gp100タンパク質、または腫瘍抑制遺伝子WT1の産物。表17において、対象となる癌特異的T細胞エピトープが、起源の関連タンパク質およびMHC制限と共に示されている。
【表20】



【0113】
最も好ましいのは、実施例に記載されたコイルドコイル配列、B細胞エピトープ、HTLエピトープおよびCTLエピトープ、単量体構築ブロック、SAPN、およびワクチン設計である。
【0114】
実施例
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために有用であり、決して本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0115】
実施例1:PADRE(P5c−8−Mal)
配列AKFVAAWTLKAAA(配列番号296)を有するpan−DRエピトープPADREを、以下の設計基準を使用することによってSAPNの三量体コイルドコイルに取り込む:アラニン(A)残基は、α−ヘリックスを形成する強い傾向を有する。コイルドコイルコア位置とのアラインメントは、バリン、トリプトファンおよびアラニンの残基が、ヘプタッド反復パターンのaa(a)、aa(d)および再度aa(a)の位置になるようにする。三量体コイルドコイルN末端およびC末端からHTLエピトープまでの残りの部分は、非常に強力なコイルドコイルを形成すると予測されている。
【表21】

【0116】
このペプチドの配列(配列番号7)は、予測プログラムCOILSによってコイルドコイルを形成すると予測されている。コイルドコイル形成確率は、コイルドコイル予測のための21アミノ酸のウィンドウを使用すると、配列中の全ての残基について95%を超える(以下の表18参照)。従って、これは、T細胞エピトープも含むと予測されるコイルドコイルである。
【0117】
ウィンドウが14アミノ酸しか含まないならば、コイルドコイル予測は、T細胞エピトープ配列内で2%未満の確率という非常に低い数値まで下降することを認識することは非常に重要である。配列全体を通じてその高く予測されたコイルドコイル特性を有する21アミノ酸のより大きなウィンドウサイズは、T細胞エピトープのN末端およびC末端におけるフランキング領域の効果を示す。これらがコイルドコイル形成を強く好む配列であれば、T細胞エピトープのあまり好まないコイルドコイル特性を補完し得、そしてT細胞エピトープが非常に好ましいコイルドコイル配列を含んでいなくても、全配列がコイルドコイルを形成するように誘導されるだろう。
【表22】

【0118】
その後、配列番号7のこの三量体コイルドコイルを、以下の配列番号8のSAPN配列(これは、Hisタグ、COMPの五量体コイルドコイル、PADRE T−細胞エピトープを含む配列番号7の配列からなる三量体コイルドコイル、およびネズミマラリア原虫(Plasmodium berghei)のCSタンパク質由来のB細胞エピトープからなる)に含めた。
【表23】

【0119】
この配列を有するペプチドをE.coliで発現させ、ニッケルアフィニティカラムで標準的な生物工学手順によって精製した。再折り畳みを、Raman S. et al., Nanomedicine: Nanotechnology, Biology, and Medicine 2 (2006) 95-102に従って行なった。再度折り畳まれたSAPNを、ナノ粒子形成について、動的光散乱(DLS)技術および透過型電子顕微鏡観察(TEM)によって分析した。DLS分析は、平均粒子直径32.01nmおよび多分散指数12.9%の素晴らしいサイズ分布を示した(図4A)。TEM写真(図4B)は、DLSによって決定したのと同じサイズのナノ粒子を示す。
【0120】
実施例2:P5c−6−一般
このコイルドコイル配列は、それぞれ6.122、8.067、6.682および6.950の予測結合親和性(pIC50値)でもって、それぞれ異なるMHCII分子であるDQA1*0501、DRB1*0501、DRB5*0101およびDRB1*0401に結合するとアルゴリズムSVRMHCによって予測される、LEELERSIW、IWMLQQAAA、WMLQQAAAR、およびMLQQAAARLの配列を有する4つの重複しているHTLエピトープを含む。これらのHTLエピトープは、非常に強力なコイルドコイルを形成すると予測されるので、コイルドコイルヘプタッド反復とアラインさせる。コイルドコイルのaa(a)およびaa(d)コア位置は、Leu、Leu、Ile、Leu、AlaおよびLeuによって占有され、その殆どは、高いコイルドコイル形成性向のために非常に良好な残基であり、Alaだけが幾分あまり好ましくない。
【表24】

【0121】
結果として、前記ペプチド配列は、予測プログラムCOILSによってコイルドコイルを形成すると予測される。コイルドコイル形成確率は、配列中のHTLエピトープの全ての残基について99%より高い(表19)。コイルドコイル予測のために小および大のウィンドウサイズの比較は、再度、コイルドコイル安定性のためのフランキング配列の影響を示す。28アミノ酸のウィンドウサイズでは、全配列が100%の確率でコイルドコイルを形成すると予測され、一方、14アミノ酸のより小さなウィンドウサイズは、コイルドコイル形成についてより低い予測値を有する、N末端におけるT細胞エピトープのより低いコイルドコイル性向の作用を示す。従って、全配列についてこのペプチドは、4つの異なるHTLエピトープを含む安定なコイルドコイルを形成すると予測される。
【表25】

【0122】
その後、この三量体コイルドコイルを、以下の配列番号10のSAPN配列(Hisタグ、COMPの五量体コイルドコイル、配列番号9の三量体コイルドコイル、およびネズミマラリア原虫のCSタンパク質由来のB細胞エピトープからなる)に含めた。
【表26】

【0123】
この配列を有するペプチドをE.coliで発現させ、ニッケルアフィニティカラムで標準的な生物工学手順によって精製した。再折り畳みを、Raman S. et al., Nanomedicine(前記)に従って行なった。再度折り畳まれたSAPNを、ナノ粒子形成について、動的光散乱(DLS)技術および透過型電子顕微鏡観察(TEM)によって分析した。DLS分析は、平均粒子直径46.96nmおよび非常に低い多分散指数8.7%の素晴らしいサイズ分布を示した。TEM写真(図5)は約30nmのサイズのナノ粒子を示す。
【0124】
実施例3:T1c−7−インフルエンザ
このコイルドコイル配列は、それぞれインフルエンザAウイルスのタンパク質M1およびノイラミニダーゼ由来の配列IRHENRMVLおよびYKIFKIEKGを有する2つの連続的なHTLエピトープを含む。コンピューターアルゴリズムSVRMHCによって、それらは、それぞれ8.250および6.985の予測結合親和性(IC50値)でMHCII分子DRB1*0405およびDRB1*0401に強く結合すると予測される。さらに、Parida R. et al., Vaccine 2007, 25:7530-7539によると、最初のT細胞エピトープIRHENRMVLは、例えばB14、B1510、B2705、B2706、B3909、DP9、DR11、DR12、DR17、DR53、およびDRB1のような多くの他のHLA分子にも同様に結合すると予測され、すなわち、それは予測される乱雑なエピトープである。
【0125】
コイルドコイルヘプタッド反復とこれらのHTLエピトープの最善のアラインメントが以下に示されている(配列番号11)。しかしながら、これらのエピトープの2番目の配列は、一般にヘリックス破壊残基として作用する好ましくないグリシン残基を含む。コイルドコイル三量体のフランキング部分は、比較的短い配列であるが、強力なコイルドコイル形成性向を有する。コイルドコイル予測プログラムCOILSにおいて14アミノ酸の小さいウィンドウを使用した場合、コイルドコイル構造は、T細胞エピトープの両側について予測されることが見てとれる(以下の表20参照)。従って、全配列がここでも単一の折り畳みユニットとして作用し、三量体オリゴマー化状態を有する安定なコイルドコイルを形成するだろう。
【表27】


【表28】



【0126】
その後、この三量体コイルドコイルを、以下の配列番号12のSAPN配列(Hisタグ、五量体Trp−ジッパーコイルドコイル、前記したような三量体コイルドコイル、およびネズミマラリア原虫のCSタンパク質由来のB細胞エピトープからなる)に含めた。
【表29】

【0127】
この配列を有するペプチドをE.coliで発現させ、ニッケルアフィニティカラムで標準的な生物工学手順によって精製した。再折り畳みを、Raman S. et al., Nanomedicine(前記)に従って行なった。再度折り畳まれたSAPNを、ナノ粒子形成について、動的光散乱(DLS)技術および透過型電子顕微鏡観察(TEM)によって分析した。DLS分析は、平均粒子直径57.70nmおよび多分散指数21.6%の幾分より広いサイズ分布を示した。TEM写真(図6)は約30〜50nmのサイズのナノ粒子を示す。そのいくらかは、一緒に粘着する傾向を有し、再折り畳み条件は幾分より改善を必要とするだろう。
【0128】
実施例4:癌CTLエピトープについてのコイルドコイルの予測
以下の実施例において、癌特異的T細胞エピトープをどのようにSANP形成ペプチドに含めることができるかが示されている。19個の異なるT細胞エピトープを、SAPNの三量体コイルドコイルの中へと工学設計し、対応するコイルドコイル性向を、これらの配列の最初の10個について計算する。T細胞エピトープについてのコイルドコイル性向はかなり低いが、非常に高いコイルドコイル性向を有するフランキング配列が、前記の実施例1〜3について示されたのと同じように全配列にわたってコイルドコイル形成を補完し誘導するだろうことが素晴らしく見てとれる。
【表30】


【表31】



【0129】
以下の配列は、同様に高いコイルドコイル性向を示し、T細胞エピトープについてのコイルドコイル性向はかなり低いが、非常に高いコイルドコイル性向を有するフランキング配列が、全配列にわたってコイルドコイル形成を補完し誘導するだろう。
【表32】

【0130】
実施例5:HIV−V3
このコイルドコイル配列は、逆平行β−ターンペプチドを含み、これは、HIV由来のgp120のV3ループの先端である。このペプチドは、HIVの周知のB細胞エピトープである。それは、コイルドコイルのaa(b)およびaa(c)の位置に、2つのグリシン残基によってコイルドコイルヘプタッド反復に挿入される。
【0131】
コイルドコイル三量体のフランキング部分は比較的短い配列であるが、強力なコイルドコイル形成性向を有する。コイルドコイル予測プログラムCOILSにおいて14アミノ酸の小さいウィンドウを使用した場合、コイルドコイル構造は、B細胞エピトープの両側について予測されることが見てとれる(以下の表22参照)。従って、全配列が単一の折り畳みユニットとして作用し、突出したβ−ターンペプチドを有する三量体オリゴマー化状態を有する安定なコイルドコイルを形成するだろう。
【表33】


【表34】



【0132】
実施例6:P5cの分析的超遠心分離
以下の配列(配列番号33)のペプチドをHisタグアフィニティ精製スキームを使用して標準的なE.coli発現系において組換え発現させる:
【表35】

【0133】
この配列は、実施例1および2(配列番号8および配列番号10)の配列に関連しているが、C末端B細胞エピトープは含まない。形成されたSAPNは、2つのヘリックス間にジスルフィド橋を有さず(下線の残基55および64、Raman S. et al., Nanomedicine: Nanotechnology, Biology, and Medicine 2006; 2:95-102の元来の設計と比較して2つのシステインがアラニンによって置換)、むしろその代わりにより小さいアミノ酸であるアラニンを有し、これにより2つのヘリックス間でより小さな角度が可能となり、従って、60より多くのペプチド鎖がSAPNに取り込まれる。
【0134】
単量体構築ブロック配列番号33からのナノ粒子の会合について3つの条件を試験した。SAPNの分子量(MW)を、分析的超遠心分離によって評価した:ペプチドを、0.42mg/ml、0.34mg/ml、および0.21mg/mlで、150mM NaCl、20mMTris、pH7.5中に溶解した。測定されたMWは、約330個のモノマーからなるSAPN、すなわち、60の非対称ユニットを有する正多面体に必要とされるよりも多いモノマーを有するナノ粒子に相当する(表23)。2つのオリゴマー化ドメインの2つのヘリックスは、ジスルフィド橋によって互いにその相対的な方位に固定されておらず、より小さなアミノ酸のアラニンが、2つのヘリックスがより近接することを可能とし、従って、それらの間の角度がより小さくなることを可能とする。
【表36】

【0135】
実施例7:一連の重複している測定されたHTLエピトープ(pan3m)を有する三量体コイルドコイル
以下は、様々なMHCII分子に対するその結合親和性が測定された(Mizukoshi E. et al., J Immunol 2004, 173:5863-5871)、B型肝炎ウイルスポリメラーゼ由来のペプチドエピトープを含む、三量体コイルドコイル設計の一例である。これらのペプチドの中の2つは、本文書に概略を示した原則に従って三量体コイルドコイルへと連続的に設計された。
【表37】

【0136】
様々なMHCII分子に対する、B型肝炎ウイルスポリメラーゼ由来の配列LQSLTNLLSSNLSWLSLDVSAAFに含まれるペプチドの測定された結合親和性は、以下の通りである(括弧内に結合親和性nM):
【表38】

【0137】
ペプチド配列は、予測プログラムCOILSによってコイルドコイルを形成すると予測される。コイルドコイル形成確率は、配列中の全ての残基について98%を超え(表24)、それ故、全配列が完全に折り畳まれたコイルドコイルを形成すると予測される。
【表39】



【0138】
実施例8:一連の重複している予測されたHTLエピトープ(pan3p)を有する三量体コイルドコイル
以下は、PADRE HTLエピトープ配列の小区分である配列と組み合わせて、(Mizukoshi E. et al., J Immunol 2004, 173:5863-5871)からの配列番号34からのHTLエピトープの小区分を含む、三量体コイルドコイル設計の一例である。
【表40】

【0139】
以下は、次のように(括弧内に結合親和性nM)アルゴリズムNetMHCIIによって予測された、様々なMHCII分子に対する、ARFVAAWTLKVREVERELSWLSLDVSAAFの配列に含まれるエピトープの結合親和性である:
【表41】


この配列は、いくつかの部分において、pan3m配列(配列番号34)と同じエピトープを含み、これは、実際にNetMHCIIプログラムによって予測されたよりもさらに強力なMHCII分子への結合を示した(Mizukoshi E. et al., J Immunol 2004, 173:5863-5871)。
【0140】
ペプチド配列は、予測プログラムCOILSによってコイルドコイルを形成すると予測される。コイルドコイル形成確率は、最後の8残基を除いて配列中の全ての残基について80%を超え(表25)、それ故、前記配列は、C末端が少し離れてほつれている(これは、N末端における配列の大半が、コイルドコイルを形成しているのでSAPNの形成を妨害しないだろう)完全に折り畳まれたコイルドコイルを形成すると予測される。
【表42】


【0141】
実施例9:一連の部分的に重複している予測されたHTLエピトープ(BN5c−M2eN)を有する四量体コイルドコイル
テトラブラチオン由来の四量体コイルドコイル配列(Stetefeld J. et al., Nature Structural Biology 2000, 7(9):772-776)は、ヘプタッド反復ではなくむしろ、ウンデカッドコイルドコイル反復によって特徴づけられる。以下は、この四量体コイルドコイルに由来する僅かに修飾された配列である。
【表43】

【0142】
この四量体コイルドコイルは、一連の重複している予測されたHTLエピトープを含んでいるので、SAPNのコアコイルドコイルとして特に良く適している。エピトープ配列YRLTVIIDD、LKNLITLRA、LITLRADRL、IINDNVSTLR、INDNVSTLRA、およびVSTLRALLMは、アルゴリズムNetMHCIIによって、それぞれ3、48、78、162、243、478、12、および420の予測結合親和性(nM)でもって、様々なMHCII分子DRB1*0101、DRB1*0401、DRB1*0404、DRB1*0405、DRB1*0701、DRB1*1101、DRB1*1302、およびDRB1*1501に結合すると予測されている。
【0143】
四量体コイルドコイルはまた、インフルエンザ由来のM2eペプチドなどの四量体B細胞エピトープを提示するのに良く適しており、これは、配列(配列番号37)を用いたヒトワクチンのための以下のSAPNの設計において行なわれた:
【表44】

【0144】
ペプチド(配列番号37)は、N末端から順に:Hisタグ、ヒト特異的インフルエンザ株由来のM2eB細胞エピトープ、HTLエピトープを有する四量体コイルドコイル、リンカー、および三量体コイルドコイルを含む。この配列を用いて、それをE.coliにおいて発現させ、ニッケルアフィニティカラムで標準的な生物工学手順によって精製した。再折り畳みは、Raman S. et al., Nanomedicine: Nanotechnology, Biology, and Medicine 2006; 2:95-102に従って行なった。再折り畳みされたSAPNを、ナノ粒子形成について、透過型電子顕微鏡観察(TEM)によって分析した。TEM写真(図7A)は、約30nmの同ナノ粒子を示す。
【0145】
また、インフルエンザ由来のニワトリ特異的M2eペプチドを、テトラブラチオンの四量体コイルドコイル上に、四量体としてその天然オリゴマー化状態およびコンフォメーションで提示でき、これは、配列(配列番号38)を用いた動物ワクチンのための以下のSAPNの設計において行なわれた:
【表45】

【0146】
この配列(配列番号38)を有するペプチドをE.coliで発現させ、ニッケルアフィニティカラムで標準的な生物工学手順によって精製した。それは、N末端から順に:Hisタグ、ニワトリ特異的インフルエンザ株由来のM2eB細胞エピトープ、HTLエピトープを有する四量体コイルドコイル、リンカー、および三量体コイルドコイルを含む。再折り畳みは、Raman S. et al., Nanomedicine: Nanotechnology, Biology, and Medicine 2006; 2:95-102に従って20mM Tris-HCl pH7.5、150mM NaClおよび5%グリセロールの緩衝液を用いて行なった。再折り畳みされたSAPNを、ナノ粒子形成について、動的光散乱(DLS)技術および透過型電子顕微鏡観察(TEM)によって分析した。DLS分析は、平均粒子直径45nmおよび多分散指数8.9%のサイズ分布を示した(図4A)。TEM写真(図7B)は、約30nmの同じサイズのナノ粒子を示す。
【0147】
実施例10:一連の重複している予測されたHTLエピトープを有する五量体コイルドコイル
この配列は、二次構造予測プログラムPSIPRED(http://bioinf.cs.ucl.ac.uk/psipred/ - The PSIPRED Protein Structure Prediction Server)に従って高い確率(大部分において、最高のスコアは9)でα−ヘリックス(H)を形成すると予測される。コイルドコイルのヘプタッド反復のコア位置aa(a)およびaa(d)は、殆どがトリプトファン残基であるので、この配列は、五量体コイルドコイルを形成すると予測される(Liu J et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2004; 101(46):16156-61)。
【表46】

【0148】
この五量体コイルドコイル配列は、アルゴリズムNetMHCIIによって、それぞれ24、73、13、120、42、596、396、6、および13の予測結合親和性(nM)でもって、それぞれ様々なMHCII分子DRB1*0101、DRB1*0401、DRB1*0405、DRB1*0701、DRB1*0801、DRB1*0901、DRB1*1101、DRB1*1501、およびDRB5*0101に結合すると予測される、配列FVAAWTLKV、WKIWKSLWKおよびKSLWKAWRLを有する一部重複しているHTLエピトープを含む。
【0149】
実施例11:熱帯熱マラリア原虫HTLエピトープ(t811c−9−pf)を有する三量体コイルドコイル
以下は、熱帯熱マラリア原虫由来のpanDR結合エピトープを含む三量体コイルドコイル設計の一例である。配列は、2つのシステインがアラニンによって置換された17C末端アミノ酸に対応し、これはまた、サーカムスポロゾイトタンパク質CS由来のCS.T3ペプチド(配列番号40)としても知られる。
【表47】


【0150】
細胞増殖アッセイにおいて、このCS.T3ペプチドは、panDR活性を有し、そしてDR1、DR2、DR4、DR5、DRw6、DR7およびDR9分子(U.S. Patent 5,114,713)に対して刺激性であることが示された。
【0151】
ペプチド配列は、予測プログラムCOILSによってコイルドコイルを形成すると予測される。コイルドコイル形成確率は、最後の2つのアミノ酸を除いて、配列中の全ての残基について99%より高い(表26)。それ故、全配列が、完全に折り畳まれたコイルドコイルを形成すると予測される。
【表48】



【0152】
このコイルドコイル(配列番号40)は、以下の配列(配列番号41)を用いたSAPNの設計に使用された。
【表49】

【0153】
この配列(配列番号41)は、hisタグ、五量体コイルドコイルトリプトファンジッパー、リンカー、三量体コイルドコイル配列番号40、および熱帯熱マラリア原虫B細胞エピトープ(これは、同サーカムスポロゾイトタンパク質CSの反復配列の4回反復(NANP)である)を含む。
【0154】
この配列を有するペプチドをE.coliで発現させ、ニッケルアフィニティカラムで標準的な生物工学手順によって精製した。再折り畳みを、Raman S. et al., Nanomedicine(前記)に従って行なった。再度折り畳まれたSAPNを、ナノ粒子形成について、動的光散乱(DLS)技術および透過型電子顕微鏡観察(TEM)によって分析した。DLS分析は、pH6.5において、平均粒子直径44.6nmおよび多分散指数19.6%のサイズ分布を示した。TEM写真(図8)は、約30nmのサイズのナノ粒子を示す。
【0155】
実施例12:HIVワクチン:HTL、CTL、B細胞の共会合
以下は、HIVワクチン設計の一例である。これらの保存されたタンパク質配列は、表10に列挙したようなHLA分子に結合すると予測されるCTLエピトープを含む。
【表50】

【0156】
表10の最初の7つのCTLペプチド連結鎖を、同一コアおよび同一N末端B細胞エピトープを有する6つのペプチド鎖のC末端において工学設計し、これにより単一SAPNに共会合させる。
【0157】
コアは、PADRE HTLエピトープを含むTrp−ジッパー五量体コイルドコイルに連結した、乱雑な熱帯熱マラリア原虫HTLエピトープを有する実施例11と同じ三量体を含む。
【0158】
B細胞エピトープは、GP41の膜近位領域であり、これは、モノクローナル中和抗体2F5および4E10の結合によって証明されたように中和能を有する。このエピトープは、溶液中でα−ヘリックスであり、五量体コイルドコイルへと部分的に工学設計されることによってα−ヘリックスコンフォメーションに保たれる。この設計において、表面に近づける残基(すなわち、コイルドコイルコア残基ではない残基)は、抗体4E10と結合する残基である。
【0159】
実施例13:マラリアワクチン:HTL−CTL−B細胞コア、B細胞、CTLの共会合
以下は、単一SAPNへと共会合された同一コアおよび同一C末端Bエピトープ並びにN末端において約18個のCTLエピトープ(各ペプチド鎖あたり3個)からなる、マラリアワクチンSAPNの一例である。
【表51】

【0160】
コア(下線)は、CTLエピトープMEKLKELEKおよび修飾されたB細胞エピトープKLRNLEEELHSLRKNLNILNEELEELT(Villard V. et al., PLoS ONE 2007, 2(7):e645における配列27)を含む三量体コイルドコイルと、優れたpanDR結合特性を有する実施例10で示された五量体との組合せである。C末端において、6つ全てのペプチド鎖が同一のB細胞エピトープ(これは、熱帯熱マラリア原虫由来のサーカムスポロゾイトタンパク質CSの反復配列の4回反復(NANP)である)を有する。N末端には、約18個の異なる熱帯熱マラリア原虫CTLエピトープ(US patents 5,028,425, 5,972,351, 6,663,871)が存在し、1本の鎖につき3つの異なるエピトープが存在する。CTLエピトープは、最適化されたプロテアソーム開裂部位(http://www.paproc2.de/paproc1/paproc1.html; Hadeler K.P. et al., Math. Biosci. 2004, 188:63-79)によって分離されている。これらの6つのペプチド鎖のコアは同一であるので、これら6つのペプチド鎖を1つの単一SAPNに共会合することは、約18個の異なるCTLエピトープを1つの単一SAPNに取り込むことを可能とする。
【0161】
実施例14:インフルエンザワクチン:HTLコア、B細胞四量体、CTLの共会合
以下は、単一SAPNへと共会合された同一コアおよび同一N末端B細胞エピトープM2e並びにC末端において約20個のCTLエピトープ(各ペプチド鎖あたり3または4個)からなる、インフルエンザワクチンSAPNの一例である。コア(下線)は、実施例7の三量体と、優れたpanDR結合特性を有する実施例9の四量体の組合せである。四量体N末端B細胞エピトープは、実施例9と同じである。C末端において、Parida R. et al., Vaccine 2007, 25:7530-7539からの保存されたCTLエピトープ(表15)が配置される。これらの6つのペプチド鎖のコアは同一であるので、これら6つのペプチド鎖を1つの単一SAPNに共会合することは、約20個の異なるCTLエピトープを1つの単一SAPNに取り込むことを可能とする。
【表52】

【0162】
実施例15:インフルエンザワクチン:HTLコア、B細胞四量体、開裂ペプチドの共会合
以下は、単一SAPNへと共会合された同一コアおよび同一N末端B細胞エピトープM2e並びにC末端において9個のB細胞エピトープ(各ペプチド鎖あたり3個)からなるインフルエンザワクチンSAPNの一例である。
【表53】

【0163】
コア(下線)は、実施例8の三量体と、優れたpanDR結合特性を有する実施例9の四量体の組合せである。四量体N末端B細胞エピトープは、実施例9と同じである。C末端B細胞エピトープは、表8から、H1、H2、H3、H5コンセンサス1、H5コンセンサス2、H7コンセンサス1、H7コンセンサス2、H7コンセンサス3、H9のために、エピトープ間の負の電荷でもって、B細胞エピトープ連結鎖がより低い正電荷を持つようにさせるためである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドオリゴマー化ドメインD1、リンカーセグメントL、およびペプチドオリゴマー化ドメインD2を含む連続鎖からなる式(I)
D1−L−D2 (I)
(式中、
D1が、m個のサブユニットD1のオリゴマー(D1)を形成する傾向を有するペプチドであり、D2が、n個のサブユニットD2のオリゴマー(D2)を形成する傾向を有するペプチドであり、mおよびnが各々2〜10の数字であり、ただし、mはnに等しくはなくそしてnの倍数ではなく、そしてnはmの倍数ではなく、Lが結合または短いリンカーセグメントであり、D1もしくはD2のいずれかまたはD1およびD2の両方が、オリゴマー化ドメイン内に1つ以上のT細胞および/またはB細胞エピトープを取り込むコイルドコイルであり、そしてD1、D2およびLは場合によりさらに置換されている)
の複数の構築ブロックの集合体からなる自己会合ペプチドナノ粒子。
【請求項2】
コイルドコイルオリゴマー化ドメインが、ヘプタッドおよび/またはウンデカッド反復からなる、請求項1記載のペプチドナノ粒子。
【請求項3】
そのN末端におけるD1のペプチド鎖および/またはそのC末端におけるD2のペプチド鎖が、1つ以上の追加的なB細胞エピトープおよび/またはT細胞エピトープ、1つ以上の他の機能的なペプチドまたはタンパク質、あるいは1つ以上の追加的なハプテンまたは他の機能的な分子によって置換されている、請求項1または2記載のペプチドナノ粒子。
【請求項4】
式S1−D1−L−D2、D1−L−D2−S2、またはS1−D1−L−D2−S2(式中、S1およびS2はペプチド置換基である)で示される、請求項3記載のペプチドナノ粒子。
【請求項5】
同一構築ブロックの少なくとも1つが、D1のN末端および/またはD2のC末端において1つ以上の異なる置換基を有している、同一構築ブロックD1−L−D2からなる、請求項1〜4のいずれか記載のペプチドナノ粒子。
【請求項6】
オリゴマー化ドメインD1およびD2の1つが、トリプトファンジッパーの五量体化ドメインまたはその誘導体である、請求項1〜5のいずれか記載のペプチドナノ粒子。
【請求項7】
オリゴマー化ドメインD1およびD2の1つが、テトラブラチオンの四量体化ドメインまたはその誘導体である、請求項1〜6のいずれか記載のペプチドナノ粒子。
【請求項8】
エピトープの少なくとも1つがCTLエピトープである、請求項1〜7のいずれか記載のペプチドナノ粒子。
【請求項9】
エピトープの少なくとも1つがHTLエピトープである、請求項1〜7のいずれか記載のペプチドナノ粒子。
【請求項10】
エピトープの少なくとも1つがB細胞エピトープである、請求項1〜7のいずれか記載のペプチドナノ粒子。
【請求項11】
配列D1−L−D2が、一連の場合により重複しているT細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープを含む、請求項8〜10のいずれか記載のペプチドナノ粒子。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか記載のペプチドナノ粒子を含む組成物。
【請求項13】
B細胞エピトープまたはT細胞エピトープの少なくとも1つが、
(a)細菌に対する免疫応答を誘起するのに適した抗原;
(b)ウイルスに対する免疫応答を誘起するのに適した抗原;
(c)寄生虫に対する免疫応答を誘起するのに適した抗原;
(d)癌細胞に対する免疫応答を誘起するのに適した抗原;
(e)アレルゲンに対する免疫応答を誘起するのに適した抗原;
(f)耽溺に対する免疫応答を誘起するのに適した抗原;
(g)疾病および代謝疾患に対する免疫応答を誘起するのに適した抗原;
(h)家畜において免疫応答を誘起するのに適した抗原;および
(i)ペットにおいて免疫応答を誘起するのに適した抗原
からなる群より選択される、請求項12の組成物。
【請求項14】
B細胞エピトープまたはT細胞エピトープの少なくとも1つが、アメーバ症、炭疸病、カンピロバクター感染、水疱瘡、コレラ、デング熱、ジフテリア、脳炎、エボラ、インフルエンザ、日本脳炎、リーシュマニア症、マラリア、麻疹、髄膜炎菌性疾病、ムンプス、院内感染症、百日咳、肺炎球菌感染症、ポリオ(灰白髄炎)、風疹、帯状疱疹、住血吸虫病、破傷風、ダニ媒介脳炎、トリコモナス症、トリパノソーマ症、結核、腸チフス、水疱瘡、および黄熱病からなる群より選択される疾病を引き起こす病原体のタンパク質から選択される、請求項12の組成物。
【請求項15】
B細胞エピトープまたはT細胞エピトープの少なくとも1つが、カンピロバクター、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、FMDV、ヘモフィルス・インフルエンザエb型、ヘリコバクター・ピロリ、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、髄膜炎菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、呼吸器合胞体ウイルス、ロタウイルス、回虫、鉤虫、およびウエストナイルウイルスからなる群より選択される疾病を引き起こす病原体のタンパク質から選択される、請求項12の組成物。
【請求項16】
B細胞エピトープまたはT細胞エピトープの少なくとも1つが、インフルエンザタンパク質のヘマグルチニンおよび/またはM2から選択される、請求項12の組成物。
【請求項17】
M2のB細胞エピトープが、四量体コイルドコイルオリゴマー化ドメインD1のN末端に付着したこのタンパク質の四量体形の細胞外部分M2eである、請求項16の組成物。
【請求項18】
四量体オリゴマー化ドメインD1が、テトラブラチオンの四量体コイルドコイルドメインまたはその誘導体である、請求項17の組成物。
【請求項19】
T細胞エピトープの少なくとも1つが、
【表54】


で示されるインフルエンザペプチドの群から選択される、請求項12〜18のいずれかの組成物。
【請求項20】
B細胞エピトープの少なくとも1つが、
【表55】


からなるインフルエンザペプチド、および配列番号211〜226の第三のアミノ酸から始まる少なくとも6アミノ酸の配列を含むその断片の群から選択される、請求項12〜19のいずれかの組成物。
【請求項21】
B細胞エピトープの少なくとも1つが、熱帯熱マラリア原虫サーカムスポロゾイド(CS)タンパク質のB細胞エピトープを構成する8〜48残基の配列であり、前記B細胞エピトープは、アミノ酸配列Asn−Ala−Asn−Proまたはその並べ替え体が2〜約12回反復されたものからなる、請求項12の組成物。
【請求項22】
B細胞エピトープの少なくとも1つが、三日熱マラリア原虫サーカムスポロゾイド(CS)タンパク質のB細胞エピトープを構成する8〜48残基の配列であり、前記B細胞エピトープは、
【表56】


からなるアミノ酸残基配列のいずれかが1〜約6回反復されたものからなる、請求項12の組成物。
【請求項23】
B細胞エピトープの少なくとも1つが、
【表57】


あるいは、そのコア位置aa(a)および/またはaa(d)の1つ以上における修飾体からなるマラリアペプチド群から選択される、請求項12の組成物。
【請求項24】
HTLエピトープの少なくとも1つが、
【表58】


からなるマラリアペプチド群から選択される、請求項12の組成物。
【請求項25】
CTLエピトープの少なくとも1つが、
【表59】


からなるマラリアペプチド群から選択される、請求項12の組成物。
【請求項26】
B細胞エピトープの少なくとも1つが、タンパク質gp41、gp120またはgp160から選択されるHIVタンパク質である、請求項12の組成物。
【請求項27】
B細胞エピトープの少なくとも1つが、gp41の中和抗体2F5および/または4E10の結合部位から選択されるHIVペプチドである、請求項12の組成物。
【請求項28】
B細胞エピトープの少なくとも1つが、HIVのgp120のV3ループから選択されるHIVペプチドである、請求項12の組成物。
【請求項29】
T細胞エピトープの少なくとも1つが、
【表60】


からなるHIVペプチド群から選択される、請求項12の組成物。
【請求項30】
T細胞エピトープの少なくとも1つが、
【表61】






からなるHIVペプチド群から選択される、請求項12の組成物。
【請求項31】
B細胞エピトープが、アヘン、マリファナ、アンフェタミン、コカイン、バルビツレート、グルテチミド、メチプリロン、抱水クロラール、メタカロン、ベンゾジアゼピン、LSD、ニコチン、抗コリン作用薬、抗精神病薬、トリプタミン、他の精神病様薬物、鎮静薬、フェンシクリジン、サイロシビン、揮発性亜硝酸塩、並びに身体的依存および/または心理的依存を誘発する他の薬物からなる群より選択される耽溺に対する免疫応答を誘起するに適した抗原である、請求項12の組成物。
【請求項32】
B細胞エピトープの少なくとも1つがニコチンである、請求項12の組成物。
【請求項33】
B細胞エピトープの少なくとも1つがコカインである、請求項12の組成物。
【請求項34】
B細胞エピトープまたはT細胞エピトープの少なくとも1つが、脳癌、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、食道癌、神経膠芽腫、白血病(急性骨髄性および慢性骨髄性)、肝癌、肺癌(非小細胞肺癌、小細胞肺癌)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)、メラノーマ、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、および腎臓癌から選択されるタイプの癌の癌細胞に対する免疫応答を誘起するに適した抗原から選択される、請求項12の組成物。
【請求項35】
【表62】




からなる群より選択される配列を含む、請求項12の組成物。
【請求項36】
B細胞エピトープまたはT細胞エピトープの少なくとも1つが、
【表63】


からなる抗原群より選択される、請求項12の組成物。
【請求項37】
B細胞エピトープの少なくとも1つが、Aβペプチド、またはN末端アミノ酸から始まる少なくとも6アミノ酸の配列を含むその断片である、請求項12の組成物。
【請求項38】
B細胞エピトープの少なくとも1つが、アンギオテンシンIまたはアンギオテンシンIIである、請求項12の組成物。
【請求項39】
B細胞エピトープの少なくとも1つがグレリンである、請求項12の組成物。
【請求項40】
B細胞エピトープの少なくとも1つが、TNFα、またはTNFαの第4のN末端アミノ酸から始まる少なくとも20アミノ酸の配列を含むその断片である、請求項12の組成物。
【請求項41】
請求項1〜11のいずれか記載のペプチドナノ粒子または請求項12〜39のいずれか記載の組成物の有効量を、このようなワクチン接種を必要とする被験体に投与することを含む、ヒトまたはヒトではない動物にワクチン接種する方法。
【請求項42】
ペプチドオリゴマー化ドメインD1、リンカーセグメントL、およびペプチドオリゴマー化ドメインD2を含む連続鎖からなる式(I)
D1−L−D2 (I)
(式中、
D1が、m個のサブユニットD1のオリゴマー(D1)を形成する傾向を有するペプチドであり、D2が、n個のサブユニットD2のオリゴマー(D2)を形成する傾向を有するペプチドであり、mおよびnが各々2〜10の数字であり、ただし、mはnに等しくはなくそしてnの倍数ではなく、そしてnはmの倍数ではなく、Lが結合または短いリンカーセグメントであり、D1もしくはD2のいずれかまたはD1およびD2の両方が、オリゴマー化ドメイン内に1つ以上のT細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープを取り込むコイルドコイルであり、そしてD1、D2およびLは場合によりさらに置換されている)
で示される単量体の構築ブロック。

【図1】
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【図2A)】
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【図2B)】
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【図3A)】
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【図3B)】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−511773(P2011−511773A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544697(P2010−544697)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050996
【国際公開番号】WO2009/109428
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(510208527)アルファ−オー・ペプチドズ・アーゲー (1)
【氏名又は名称原語表記】ALPHA−O PEPTIDES AG
【Fターム(参考)】