説明

ワクチン組成物

本発明は、ナイセリア属ワクチン組成物、それらの製造方法、および医療における前記組成物の使用の分野に関する。さらに特定すると、本発明は、LOS免疫型に関して相変異性がより低い新規な遺伝子操作された髄膜炎菌株を作製する方法に関し、前記菌株から新規なLOSサブユニットワクチンまたは髄膜炎菌性外膜小胞(またはブレブ)ワクチンを誘導することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナイセリア属ワクチン組成物、それらの製造方法、および医療における該組成物の使用の分野に関する。より特定的には、本発明は、LOS免疫型に関して相変異性がより低い新規な遺伝子操作された髄膜炎菌株の作製方法に関し、該菌株から新規なLOSサブユニットワクチンまたは髄膜炎菌性外膜小胞(またはブレブ)ワクチンを誘導することができる。
【背景技術】
【0002】
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)(meningococcus)は、ヒトの上気道より単離されることの多いグラム陰性細菌である。この細菌は菌血症や髄膜炎などの重篤な侵襲性細菌疾患を引き起こす。髄膜炎菌性疾患の発症率は、地理的、季節的および年毎に相違する(Schwartz, B., Moore, P.S., Broome, C.V.; Clin. Microbiol. Rev. 2 (Supplement), S18-S24, 1989)。この細菌は一般にその莢膜多糖体の血清群に従って分類されている。
【0003】
温帯の国々における疾患は大部分が血清群Bの菌株に起因し、発症率は1〜10/100,000/年(総人口)で変動し、それより高い値に達する場合もある(Kaczmarski, E.B. (1997), Commun. Dis. Rep. Rev. 7: R55-9, 1995、Scholten, R.J.P.M., Bijlmer, H.A., Poolman, J.T.ら Clin. Infect. Dis. 16:237-246, 1993、Cruz, C., Pavez, G., Aguilar, E.,ら Epidemiol. Infect. 105:119-126, 1990)。
【0004】
血清群A髄膜炎菌に起因する流行病は、ほとんど中央アフリカで発生しているが、1000/100,000/年の発症レベルにまで達することがある(Schwartz, B., Moore, P.S., Broome, C.V.; Clin. Microbiol. Rev. 2 (Supplement), S18-S24, 1989)。全体として、髄膜炎菌性疾患のほとんど全ての症例が血清群A、B、C、W-135およびY髄膜炎菌によって引き起こされており、4価のA、C、W-135、Y莢膜多糖体ワクチンが利用されている(Armand, J., Arminjon, F., Mynard, M.C., Lafaix, C. J. Biol. Stand. 10:335-339, 1982)。
【0005】
多くのヨーロッパ諸国では、ここ2,30年の間に髄膜炎菌感染症が頻繁に起こっている。これは、社会活動(例えば、スイミングプール、映画館など)の増加により伝播が拡大したためであると考えられる。標準的な抗生物質に対して感受性が低いまたは耐性である髄膜炎菌株を分離することは、もはや珍しいことではなくなっている。こうした現象は、この生物のための新しい抗菌剤、ワクチン、薬物スクリーニング法、および診断試験に対する医学的必要性・要求を生み出している。
【0006】
利用可能な多糖体ワクチンは現在、それらを担体タンパク質に化学的にコンジュゲートさせる方法により改良されている(Lieberman, J.M., Chiu, S.S., Wong, V.K.,ら JAMA 275:1499-1503, 1996)。
【0007】
しかしながら、血清群Bワクチンは利用することができない。血清群B莢膜多糖体が免疫原性をもたないことは知られている。それは、おそらく、血清群B莢膜多糖体が宿主の成分と構造的に類似しているためである(Wyle, F.A., Artenstein, M.S., Brandt, M.L.ら J. Infect. Dis. 126:514-522, 1972、Finne, J.M., Leinonen, M., Makela, P.M. Lancet ii.: 355-357, 1983)。したがって、血清群Bワクチンを外膜小胞(もしくはブレブ)またはそれから精製されたタンパク質成分から開発しようとして、鋭意努力がなされている。
【0008】
ワクチン開発のための髄膜炎菌の代替抗原は、髄膜炎菌性リポオリゴ糖(LOS)である。これは外膜に結合した糖脂質であり、O側鎖がないことで腸内細菌のリポ多糖体(LPS)と相違しているものの、LPSの形態におおむね似ている(Griffissら Rev Infect Dis 1988; 10: S287-295)。LOSのオリゴ糖内の異質性のため、様々な髄膜炎菌株の間で構造および抗原の多様性が生じる (Griffissら Inf. Immun. 1987; 55: 1792-1800)。これは当該菌株を12の免疫型に細分するのに使用されている (Scholtanら J Med Microbiol 1994, 41:236-243)。免疫型L3、L7およびL9は、免疫学的に同一で、構造も類似している(または同じでさえある)ため、L3,7,9(または、本明細書中では包括的に「L3」)と称されている。髄膜炎菌性LOS L3,7,9 (L3)、L2およびL5は、シアリル化により、またはシチジン5'-モノホスフェート-N-アセチルノイラミン酸の付加により、修飾され得る。L2、L4およびL6 LOSは免疫学的に区別することができるが、構造は類似しており、本明細書中でL2について言及する場合は、L4またはL6のいずれかと本発明の範囲内で任意に置き換えることができる。LOSに対する抗体は、実験ラットにおいて感染から防御し、また、髄膜炎菌に感染した子供において殺菌作用に寄与することが示されている (Griffissら J Infect Dis 1984; 150: 71-79)。
【0009】
しかし、髄膜炎菌ワクチンにLOSを使うことに伴う問題点はその毒性(そのリピドA成分による)にある。
【0010】
LOSは髄膜炎菌ブレブの表面にも存在している。長年にわたり、髄膜炎菌の外膜小胞(またはブレブ)に基づくワクチンを開発することに努力が払われてきた (de Moraes, J.C., Perkins, B., Camargo, M.C.ら Lancet 340: 1074-1078, 1992; Bjune, G., Hoiby, E.A. Gronnesby, J.K.ら 338: 1093-1096, 1991)。このようなワクチンは、いくつかの内在性外膜タンパク質を適正に折りたたまれたコンフォメーションで含み、宿主に投与したとき、防御免疫応答を引き出すことができるという利点を有する。さらに、ナイセリア属菌株(髄膜炎菌血清群B - menBを含む)は、十分な量の外膜ブレブを排出するため、工業規模でのその製造が可能である。しかし、多くの場合には、細菌細胞の0.5%界面活性剤(例えば、デオキシコール酸塩)抽出を含む方法によりブレブを調製している(例えば、欧州特許第11243号)。これは上記のようにLOSの毒性(内毒素とも呼ばれる)のために望ましいことではあるが、LOS抗原の大部分をワクチンから取り除く作用も有している。
【0011】
ヒトのワクチンの抗原としてLOS(LPSまたはリポ多糖体としても知られる)を使うことには別の問題が存在し、つまり、LOSはヒトの糖構造(例えば、ヒト赤血球上にあるもの)に類似した糖構造を有しており、そのため、それらの使用に伴う安全性の問題を提起する。しかし、LOS構造を変えることは、LOS抗原の殺菌有効性の構造的感受性のために、問題がある。
【0012】
ワクチン抗原としてLOSを使用することの更なる問題点は、12のLPS免疫型が存在して、糖鎖構造が多岐にわたっていることである (M. P. Jenningsら, Microbiology 1999, 145, 3013-3021; Mol Microbiol 2002, 43:931-43)。ある免疫型に対して生成された抗体は別の免疫型を認識することができない。LOS免疫型のオリゴ糖部分のジェネリックな「コア」領域を取得することに努力が集中しているが(例えば、国際公開WO 94/08021)、改変型LOSに対して生成された抗体の殺菌活性は失われてしまう。したがって、ワクチンが有効であるためには、様々な免疫型の多くのLOS成分を含む必要がある。
【0013】
たとえ2,3の免疫型を選択するとしても、依然として問題が存在する。特定の免疫型のLOS(またはLOSを含むブレブ)を調製するには、髄膜炎菌株を培養する必要がある。髄膜炎菌性LOSの特徴は、末端LOS構造体の発現が可逆的かつ高頻度に切り替わること(相変異)である (M. P. Jenningsら, Microbiology 1999, 145, 3013-3021)。LOSが示す相変異は、防御抗原としてLOSを使用することに基づいた交差防御OMVまたはサブユニットワクチンの開発の妨げとなっている。例えば、MenBのH44/76株の場合、L3免疫型からL2免疫型へ(またはその逆に)切り替わる割合は、1000〜5000のうち1つと推定される。L3構造体に対して生起された抗体はL2免疫型を認識することができず、また、その逆もそうであった。したがって、一定した均質なLOS免疫型を有するLOSまたはブレブ産生菌株を維持することは極めて難しいことである。
【0014】
本発明は、上記問題の1以上を改善するための方法を提供し、また、防御抗原としての髄膜炎菌性LOS(特に、外膜小胞上に提示される場合)に基づいた新規ワクチンを製造するための方法を提供する。
【発明の開示】
【0015】
発明の概要
本発明は、ナイセリア属(好ましくは、髄膜炎菌性)の疾患を効果的に予防または治療するためのワクチン組成物の製造方法に関する。本発明の方法は、固定されたまたはロックされたLOS免疫型を有する遺伝子操作された髄膜炎菌株を作製することを含む。特に、L2およびL3 LOS免疫型を固定させる方法が開示される。さらに、そのような遺伝子操作菌株からLOSまたはブレブ(bleb)を調製するための方法、ならびに、前記LOSまたはブレブを調製して、製薬上許容される賦形剤と混合するステップを含んでなる免疫原性組成物の製造方法も包含される。
【0016】
発明の説明
本明細書中に記載する刊行物および特許または特許出願の主題ならびにその中に開示された情報は、参照により本明細書中に組み入れるものとする。
【0017】
「リポオリゴ糖」(すなわち「LOS」)への言及は「リポ多糖」すなわち「LPS」を指すこともある。
【0018】
本明細書中で用いる「含む」および「含んでなる」という用語は、全ての場合において、「からなる」という用語と任意に置き換え可能であることを、本発明者らは意図している。
【0019】
種々のlgt遺伝子を含む遺伝子座は、末端LOS構造体の生合成に必要とされるものである (その配列は当技術分野で知られている; M.P. Jenningsら, Microbiology 1999, 145, 3013-3021およびそこに引用された参考文献; J. Exp. Med. 180:2181-2190 [1994]; WO 96/10086を参照されたい)。髄膜炎菌は、これらの遺伝子のいくつかの相変異性発現の機構を介して、発現されるLOSの免疫型を変えることができる。L3型menB株(例えば、MC58、H44/76)におけるLOSの相変異性発現は、lgtAのホモポリマーGトラクト領域における高頻度の突然変異により起こる。L2免疫型とL3(または他の)免疫型との主な相違点は、第2のヘプトース上にグルコース残基が有るか無いかである(図1[グレーの矢印が相変異を示す]および図2を参照のこと)。この残基の付加はlgtG遺伝子産物により触媒されるが、これも相変異性発現を示す。他の菌株(例えば、126E)は、追加のガラクトースの伸長を触媒する第3の相変異性lgtC遺伝子の発現を介して、そのLOS糖構造をL3免疫型からL1免疫型に切り替えることができる (図1および図3) (M.P. Jenningsら, Microbiology 1999, 145, 3013-3021)。
【0020】
本発明者らは、この問題を、LOS免疫型が固定されている(すなわち、相変異性でない)ナイセリア属ワクチン産生株を作製する方法を開発することにより解決した。したがって、第1の態様において、本発明は、遺伝子操作されたナイセリア属(好ましくは髄膜炎菌、最も好ましくは血清群B)菌株を作製する方法を提供し、この方法は、相変異性LOS合成を有するナイセリア属(好ましくは髄膜炎菌)菌株を遺伝子操作して、LOS発現をより低い相変異性にする(好ましくは、非相変異性にする、つまり固定させる)ステップを含んでなる。LOS免疫型に関して「低下した相変異性」または「より低い相変異性」とは、LOS免疫型または関連したLOS免疫型の合成に関与する1以上(好ましくは全部)の相変異性遺伝子がより低い相変異性になるか、または固定され、その結果として免疫型間で切り替わる割合が低下する(好ましくは、2、3、5、10もしくは50分の1またはそれ以下に低下する)ことを意味する。LOS免疫型に関して「固定される」または「非相変異性」とは、LOS免疫型または関連したLOS免疫型の合成に関与する1以上(好ましくは全部)の相変異性遺伝子が固定されるか、または非相変異性になることを意味する。LOS生合成遺伝子の発現に関して「低下した相変異性」または「より低い相変異性」とは、機能性遺伝子の発現をオンとオフの間で切り替えるチャンスが低下する(好ましくは、2、3、5、10もしくは50分の1またはそれ以下に低下する)ことを意味し、また、LOS生合成遺伝子の発現に関して「固定される」または「非相変異性」とは、これまで相変異を受けやすい遺伝子が、機能性遺伝子の発現の非部位特異的スイッチオンまたはオフのバックグラウンドチャンスを越えて相変異を受けにくくなることを意味する。
【0021】
具体的な実施形態において、前記方法は、L2免疫型を(好ましくは、排他的に)有する低下した(好ましくは、非)相変異性LOS(最も好ましくは、構成的に合成されたLOS)をもたらす。これはどのような免疫型の菌株を用いても(全ての適切な遺伝子をスイッチオンおよびオフすることにより)達成することができるが、本発明の方法を行うためにはL2菌株を使用することが好適である。
【0022】
好ましくは、かかる方法は、lgtAおよび/またはlgtG遺伝子産物の発現の相変異性を低下させる(好ましくは、該発現を固定させる)(すなわち、全長の機能性遺伝子産物の発現が相変異によりスイッチオフされないように固定させる−いずれか一方または両方の遺伝子産物を構成的に発現させる)ことを含む遺伝子操作ステップを含んでなる。
【0023】
lgtAおよびlgtG遺伝子のいずれか一方が用いるナイセリア属菌株においてもともと固定状態にある場合は、まだ相変異性である遺伝子のみを操作すればよいことは明白である。
【0024】
本発明において、固定は構成的に発現される遺伝子の一方または両方の余剰のコピーを菌株に挿入する(と同時に、好ましくは、野生型コピーを不活性化する)ことにより行うことができるが、この方法は前記遺伝子の野生型コピーを単に遺伝子操作することよりも複雑な方法である。
【0025】
好ましくは、lgtAおよびlgtG遺伝子産物の一方または両方の発現は、前記遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、各遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーヌクレオチドトラクト(Jenningsら Microbiology 1999 145:3013参照)の長さを短縮することで相変異性が低下される(好ましくは、固定される)。
【0026】
lgtAオープンリーディングフレーム中のホモポリマーGトラクトについては、該トラクトを8個、より好ましくは2個、最も好ましくは5個連続したGヌクレオチドにまで短縮することが好適である。驚いたことに、5個連続したGヌクレオチドを有する前記遺伝子は、トラクトの長さの短縮ならびにLgtA酵素機能の保持に関して最適であった。したがって、好適な実施形態は、該トラクトの5ヌクレオチドへの短縮を、以下で説明するような該トラクト内のコドン使用頻度の変更と組み合わせることである。
【0027】
lgtGオープンリーディングフレーム中のホモポリマーCトラクトについては、該トラクトを8個、5個、または2個連続したCヌクレオチドにまで短縮することが好適である。
【0028】
このようなトラクトの短縮は、一般的に、短縮されたトラクトを含むプラスミド構築物で菌株を形質転換した後、変更すべき菌株のゲノムDNAと該プラスミドとの間の相同組換え(WO 01/09350参照)を用いて容易に行うことができる。
【0029】
これとは別に(またはこれに加えて)、lgtA遺伝子産物の発現は、該遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、lgtA遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーヌクレオチドトラクトの配列を以下のように変えることにより、相変異性を低下させる(好ましくは、固定させる)ことができる。すなわち、グリシンをコードする1つ以上のGGGコドンが、グリシンをコードする他の任意のコドン(GGA、GGCまたはGGT)もしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、および/またはセリンをコードするTCGコドン(最後のGが該トラクトの一部である)が、セリンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるようにする。例えば、5Gホモポリマートラクトは、1つのGGGグリシンコドンをヌクレオチド配列GGG(A/C/T)Gに突然変異させることが有利でありうる。
【0030】
さらに、lgtG遺伝子産物の発現は、該遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、lgtG遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーヌクレオチドトラクトの配列を以下のように変えることにより、択一的にまたは追加的に相変異性を低下させる(好ましくは、固定させる)ことができる。すなわち、プロリンをコードする1つ以上のCCCコドンが、プロリンをコードする他の任意のコドン(CCA、CCGまたはCCT)もしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、および/またはアラニンをコードするGCCコドン(最後のCC対が該トラクトの一部である)が、アラニンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるようにする。
【0031】
上記の事例においては、コドンを、同一アミノ酸をコードするコドンで置換することが好ましいが、保存的突然変異を用いる場合には、1)該トラクトを構成する種類の2個または(好ましくは)それより少ないヌクレオチドを含むコドンを選択すること、および2)新しいコード化アミノ酸が保存的突然変異であること、が好適である。保存的突然変異は、当技術分野の当業者に理解されているが、好ましい置換を以下の表に示す。
【表1】

【0032】
このような場合には、ホモポリマートラクト中の2、3、または好ましくは4つのコドンを変更することが好ましく、同一のアミノ酸をコードするように変更することが最も好ましい。
【0033】
本発明の上記方法の組合せ(トラクトの長さの短縮およびトラクトのコドン使用頻度の変更)を用いると、lgtAおよび/またはlgtG遺伝子を固定することができる。例えば、lgtAトラクトを5G残基に短縮することと、グリシンをコードするGGGコドンの1つをグリシンをコードする他の3つのコドンの1つに置換すること[GGG(A/C/T)Gの最終トラクトヌクレオチド配列をもたらす]の両方を行う。
【0034】
有利な実施形態において、lgtA遺伝子産物の発現は、該遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、lgtA遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーGヌクレオチドトラクトの長さを2個または5個連続したGヌクレオチドに短縮することにより固定され、かつlgtG遺伝子産物の発現は、該遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、lgtG遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーヌクレオチドトラクトの配列を、プロリンをコードする1、2または3つのCCCコドンがプロリンをコードする他の任意のコドン(CCA、CCGまたはCCT)もしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、および/またはアラニンをコードするGCCコドンがアラニンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように変えることにより固定される。
【0035】
さらに具体的な実施形態では、本発明の方法は、L3免疫型を(好ましくは、排他的に)有する低下した(好ましくは、非)相変異性LOS(最も好ましくは、構成的に合成されたLOS)をもたらす。これはどのような免疫型の菌株を用いても(全ての適切な遺伝子をスイッチオンおよびオフすることにより)達成することができるが、本発明の方法を行うためにはL3菌株を使用することが好適である。
【0036】
上述したように、本明細書において、「L3」への言及はすべて、同一の(または免疫学的に区別できない)糖鎖構造を有する「L3,7,9」、「L3」、「L7」および「L9」免疫型への言及を指している。
【0037】
この方法において、遺伝子操作ステップは、好ましくは、lgtA遺伝子産物の発現の相変異性を低下させる(好ましくは、該発現を固定させる)[好ましくは、全長の機能性産物の発現が相変異によりスイッチオフされないようにする(すなわち、上記のように構成的に発現されるようにする)]こと、および/またはlgtG遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現を永久的にダウンレギュレーションさせることを含んでなる。
【0038】
「機能性遺伝子産物の発現をダウンレギュレーションさせる」とは、該遺伝子のプロモーターまたはオープンリーディングフレームに対して付加、欠失または置換を行って、全体的な遺伝子産物の生合成活性が(60、70、80、90、95、または最も好ましくは100%)低下するようになることを意味する。明らかに、フレームシフト突然変異を導入したり、より弱いプロモーターに置換したりすることが可能であるが、最も好ましくは、オープンリーディングフレームおよび/またはプロモーターの大部分または全部を欠失させて、該遺伝子産物の永久的なダウンレギュレーションを確実なものとする。遺伝子をダウンレギュレーションさせるための他の方法については、WO 01/09350を参照されたい。
【0039】
明白なことであるが、lgtA発現が改変すべき野生型髄膜炎菌株においてもともと固定されているか、またはlgtG発現がもともとダウンレギュレーションされている場合は、免疫型を固定させる必要がある遺伝子のみを操作すればよい。
【0040】
本発明の方法において、固定は、構成的に発現されるlgtA遺伝子の余剰のコピーを生物に挿入する(と同時に、好ましくは野生型コピーを不活性化する)ことにより行うことができるが、この方法は1以上の野生型遺伝子のコピーを単に操作するよりも複雑である。
【0041】
lgtA遺伝子産物の発現は、上述したように、該遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、該遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーヌクレオチドトラクトの長さを短縮する(好ましくは、lgtAオープンリーディングフレーム内のホモポリマーGトラクトを8個、より好ましくは2個、最も好ましくは5個連続したGヌクレオチドに短縮する)ことにより、および/または、該遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、グリシンをコードする1つ以上のGGGコドンがグリシンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、および/またはセリンをコードするTCGコドンがセリンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、lgtA遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーヌクレオチドトラクトの配列を変えることにより、より低い相変異性にする(好ましくは固定させる)ことができる。例えば、5Gホモポリマートラクトは、1つのGGGグリシンコドンをヌクレオチド配列GGG(A/C/T)Gに突然変異させることが有利でありうる。
【0042】
本発明の上記方法の組合せ(トラクトの長さの短縮およびトラクトのコドン利用頻度の変更)を用いてlgtA遺伝子を固定させることができる。例えば、lgtAトラクトを5G残基に短縮するとともに、グリシンをコードするGGGコドンの1つを、グリシンをコードする他の3つのコドンのうちの1つに置換する[最終トラクトヌクレオチド配列GGG(A/C/T)Gをもたらす]。
【0043】
好ましくは、lgtG遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現がスイッチオフされる(すなわち、突然変異後はlgtG遺伝子産物の生合成活性が皆無であるか、無視できる程度である)。
【0044】
有利な実施形態においては、lgtA遺伝子産物の発現を、該遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、該遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーGヌクレオチドトラクトの長さを5個または2個連続したGヌクレオチドに短縮することにより固定し、かつlgtG遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現を、該遺伝子のプロモーターおよび/またはオープンリーディングフレームの全部または一部を欠失させることによりスイッチオフする。
【0045】
改変すべき髄膜炎菌株がlgtC遺伝子を有する場合(例えば、126E株)、本発明の方法は、lgtC遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現を(好ましくは、該遺伝子をスイッチオフすることで、最も好ましくは、該遺伝子のプロモーターおよび/またはオープンリーディングフレームの全部または一部を欠失させることで)永久的にダウンレギュレーションすることを含む遺伝子操作ステップを有することが好適である。
【0046】
潜在的な安全性との関係から、上記方法を拡張することが有利でありうる。L3またはL2 LOSに対する抗体の安全性は、ヒト・グリコスフィンゴリピド中に存在するラクト-N-ネオテトラオースオリゴ糖基(Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glcβ1- ; 図1〜3)と類似する構造の存在ゆえに、問題を提起してきた。大多数の人々は、残留量のL3 LOSを含有するデオキシコール酸抽出小胞ワクチンを安全に接種することができるが(G. Bjuneら, Lancet (1991), 338, 1093-1096; GVG. Sierraら, NIPH ann (1991), 14, 195-210)、LOSが本明細書中で述べた抗原として保持される場合は、LOS糖構造の末端部分の欠失がヒト組織の表面にある構造との抗LOS免疫応答の交差反応を防止する上で有利である、ことを本発明者らは見出した。好ましい実施形態において、lgtB遺伝子を不活性化させると、末端ガラクトース残基とシアル酸が存在しない中間体LOS構造が得られる(図1〜3参照;突然変異によって、L2およびL3 LOS中に4GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glcβ1-構造が残される)。このような中間体は、L3を固定(lgtAをオンに固定および/またはlgtGをオフに固定)しかつL2を固定(lgtAおよび/またはlgtGをオンに固定)したLOS菌株において得ることができる。LOSのあまり好ましいとは言えない(短い)別のバージョンは、lgtE遺伝子を消失させることにより得られる。
【0047】
したがって、上記方法はまた、lgtBまたはlgtE遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現を、好ましくは該遺伝子をスイッチオフすることで、最も好ましくは該遺伝子のプロモーターおよび/またはオープンリーディングフレームの全部または一部を欠失させることで、(好ましくは、永久的に)ダウンレギュレーションすることを含む遺伝子操作ステップを有する。菌株をlgtB-にすることを含む方法が最も好適である。というのは、本発明者らは、殺菌性(さらには交差殺菌性)の抗体応答を依然引き出すことができるL2またはL3 LOSの防御オリゴ糖エピトープをまだ保持させながら安全性の問題を解決するためには、これが最適なトランケーションであることを見出したからである。
【0048】
本発明の方法で用いる菌株は莢膜多糖体を合成する能力をもたないことが好ましい。そうでない場合は、莢膜多糖体の生産にとって非常に重要な機能性遺伝子産物の発現をダウンレギュレーションさせる追加のステップを含めることが有利である。
【0049】
上記方法が野生型の髄膜炎菌B株を必要とする場合、上記方法の遺伝子操作ステップは、siaD遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現を、好ましくは該遺伝子をスイッチオフすることで、最も好ましくは該遺伝子のプロモーターおよび/またはオープンリーディングフレームの全部または一部を欠失させることで、永久的にダウンレギュレーションすることを含むことが好ましい。このような不活性化はWO 01/09350にも記載されている。siaD(synDとしても知られる)の突然変異は、莢膜多糖体からヒトに類似したエピトープを除去することができる多くの突然変異のうちで最も有利である。その理由は、それがLOSの防御エピトープの生合成に何の影響も及ぼさない突然変異の一つであるからである。したがって、これは、防御抗原としてLOSを最終的に使用することにしておりかつ細菌の増殖に最小の効果しか与えない方法において有利である。最も好ましくは、本発明の方法では、lgtBおよびsiaD遺伝子がダウンレギュレーションまたは不活性化されている髄膜炎菌B突然変異株(好ましくは、lgtB- siaD- 株)を利用する。
【0050】
siaD- 突然変異は上記の理由のために好ましいものであるが、髄膜炎菌B(または一般的には髄膜炎菌)莢膜多糖体の合成をスイッチオフする他の突然変異も本発明の方法において使用することができる。かくして、ブレブ産生株を遺伝子操作して、次の遺伝子、すなわちctrA、ctrB、ctrC、ctrD、synA (synXおよびsiaAに相当)、synB (siaBに相当) またはsynC (siaCに相当)のうち1つ以上からの機能性遺伝子産物の発現を、好ましくは該遺伝子をスイッチオフすることで、最も好ましくは該遺伝子のプロモーターおよび/またはオープンリーディングフレームの全部または一部を欠失させることで、永久的にダウンレギュレーションさせることができる。lgtE- 突然変異をこれらの突然変異の1つ以上と組み合わせてもよい。好ましくは、lgtB- 突然変異をこれらの突然変異の1つ以上と組み合わせる。
【0051】
lgtBおよびlgtEをはじめとする各種lgt遺伝子を含むナイセリア属遺伝子座およびその配列は当技術分野で公知である (M.P. Jenningsら, Microbiology 1999, 145, 3013-3021ならびにそこに引用された参考文献; J. Exp. Med. 180:2181-2190 [1994]; WO 96/10086を参照されたい)。
【0052】
本発明の方法はまた、LOSをより低毒性にするステップを含むことができる。これは天然OMVによる鼻腔内免疫には必要でないが (J.J. Drabickら, Vaccine (2000), 18, 160-172)、非経口ワクチン接種には無毒化がある利点を提供すると考えられる。LOSはリピドAの生合成に関係する遺伝子の突然変異/修飾/不活性化により遺伝的に無毒化することができ、例えば、msbBおよび/またはhtrB遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現を、好ましくは該遺伝子をスイッチオフすることで、最も好ましくは該遺伝子のプロモーターおよび/またはオープンリーディングフレームの全部または一部を欠失させることで、ダウンレギュレーションさせることによりLOSの無毒化を行う。これとは別に(またはこれに加えて)、次の遺伝子、すなわちpmrA、pmrB、pmrEおよびpmrF、の1つ以上を(より強力なプロモーターを導入するか、または該遺伝子の過剰コピーを組み込むことにより)アップレギュレーションさせてもよい。
【0053】
上記無毒化法、関連するプロモーター/遺伝子配列、ならびにアップレギュレーションおよびダウンレギュレーション方法に関する詳細については、WO 01/09350を参照されたい。ナイセリア属のmsbBおよびhtrB遺伝子はそれぞれlpxL1およびlpxL2とも呼ばれており(WO 00/26384参照)、これらの遺伝子の欠失突然変異は、表現型的に、msbB-突然変異LOSが野生型と比較して1つの第2アシル鎖を失っており(そして4つの第1アシル鎖と1つの第2アシル鎖を保持しており)、htrB-突然変異LOSが両方の第2アシル鎖を失っていることにより特徴づけられる。かかる突然変異は、ブレブ上への無毒化されたLOSの最適な提示を確実にするために、あるいは無毒化されたサブユニットLOSの精製を容易にするために、ナイセリア属産生株が莢膜多糖体欠損性となることを確実にする突然変異(上記参照)と組み合わせることが好ましい。
【0054】
本発明のさらなる態様は、上述した本発明の方法により、低下した相変異性の(好ましくは、固定された)L2免疫型を有する遺伝子操作ナイセリア属菌株を作製し、得られた菌株からL2 LOSを単離するステップを含んでなるL2 LOSの単離方法である。この方法には、さらに有利なステップを追加することができ、すなわち、T細胞エピトープ源を含む担体(LOSをより良好な免疫原にする)にL2 LOSをコンジュゲートさせるステップ、および/またはL2 LOSを当技術分野で公知(例えば、WO 96/40063とそこに引用された参考文献参照)のリポソーム製剤として提示させるステップである。
【0055】
細菌からのLOSの単離方法は当技術分野で公知である (例えば、Wesphal & Jannの温水-フェノール法 [Meth. Carbo. Chem. 1965, 5:83-91]を参照されたい)。また、Galanosら. 1969, Eur J Biochem 9:245-249およびWuら. 1987, Anal Bio Chem 160:281-289も参照されたい。単離されたLOSをコンジュゲートさせる技法も知られている (例えば、参考として本明細書に組み入れられるEP 941738を参照されたい)。
【0056】
本発明にとって、「T細胞エピトープ源を含む担体」は通常はペプチド、好ましくはポリペプチドまたはタンパク質である。コンジュゲーション方法は当技術分野で公知である。代表的な担体としては、型別不能なH. influenzae由来のプロテインD、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM197、またはブレブ(特にナイセリア属または髄膜炎菌のもの)調製物中に存在する外膜タンパク質が挙げられる。好ましくは、LOSのオリゴ糖部分がコンジュゲートされる。
【0057】
同様に、本発明のさらに別の態様は、上述した本発明の方法により、低下した相変異性の(好ましくは、固定された)L3免疫型を有する遺伝子操作髄膜炎菌株を作製し、得られた菌株からL3 LOSを単離するステップを含んでなるL3 LOSの単離方法である。この方法には、さらに有利なステップを追加することができ、すなわち、T細胞エピトープ源を含む担体にL3 LOSをコンジュゲートさせるステップ、および/またはL3 LOSをリポソーム製剤として提示させるステップである。
【0058】
低下した相変異性を有する菌株からLOSを単離することを含む本発明の方法の場合、この方法の一部としてLOSを無毒化することが好ましい。これはLOS分子からアシル鎖を除去するヒドラジンまたはアルカリ加水分解化学的処理の公知方法により行うことができる(しかし、この方法は該分子の防御効力を低下させることがある)が、htrB-および/またはmsbB-髄膜炎菌突然変異体(上記のとおり;特に莢膜多糖体マイナス株)からLOSを単離することにより、あるいは単離されたLOSにポリミキシンBの非毒性ペプチド機能性等価物[リピドAに対して高い親和性を有する分子]、特にSAEP 2を添加することにより行うことが好ましい。本発明の方法で用いることのできるポリミキシンBの非毒性ペプチド機能性等価物、特にペプチドSAEP 2(2個のシステインがジスルフィド橋を形成する場合は、配列KTKCKFLKKCのペプチド)の使用のさらなる詳細については、WO 93/14115、WO 95/03327、Velucchiら (1997) J Endotoxin Res 4: 1-12、およびEP 976402を参照されたい。
【0059】
固定されたLOSを単離する本発明の方法がLOSをリポソームに導入する場合は、外膜タンパク質を任意で添加してもよく、そのような外膜タンパク質にLOSをリポソーム内でコンジュゲートさせると、該オリゴ糖をT依存性抗原とすることができる。これは以下に記載するブレブ内LOS架橋について述べるのと同様の化学を用いて行うことができる。
【0060】
本発明のさらなる態様は、上述した本発明の方法により、低下した相変異性の(好ましくは、固定された)L2またはL3免疫型を有する遺伝子操作髄膜炎菌株を作製し、得られた菌株からブレブを単離するステップを含んでなる、L2またはL3 LOS免疫型を有する髄膜炎菌性ブレブの単離方法である。
【0061】
外膜小胞(Outer Membrane Vesicles: OMVまたはブレブ)は、多くの公知技法により単離することができる (Fredriksenら, NIPH Annals (1991), 14, 67-79; Zollingerら, J. Clin Invest (1979), 63, 836-848; Saundersら, Infect Immun (1999), 67, 113-119; J.J. Drabickら, Vaccine (1999), 18, 160-172)。これらは2つのグループに大別され、すなわち、髄膜炎菌からブレブを抽出するためにデオキシコール酸(約0.5%)を使用する技法およびデオキシコール酸(DOC)を低レベルで使用するかまたは全く使用しない技法である。DOCフリーの方法により得られるブレブは、OMV中に高レベルのLOSを保持するという興味深い特徴を有し、これはLOSが防御抗原であるワクチンにおいて有利である。DOC抽出ブレブと比較して、DOCフリーの方法で得られたOMV中のL3 Agsの濃度は、lgtAの固定を考慮に入れても、およそ10倍高い。この理由のために、ブレブを調製するための界面活性剤フリー(好ましくは、DOCフリー)の方法が本発明の方法において好適であるが、低レベルの界面活性剤(好ましくは、DOC)を含むバッファーを用いた抽出も次の点で有利でありうる。つまり、このステップは、堅く相互作用しているLOSをブレブ中に残すが、より毒性の高い、ゆるく保持されたLOSを取り除くと思われる点である。典型的には、ブレブの調製のために0〜0.5%、好ましくは0.02〜0.4%、0.04〜3%または0.06〜2%の界面活性剤(好ましくはDOC)を用いるが、より好ましくは0.08〜0.15%、最も好ましくはおよそ0.1%または正確に0.1%を用いてブレブ中に安定に存在する最適量のLOSを得る。LOSが上で詳述した1つ以上の方法で無毒化されている場合は、DOCフリー(または低レベルのDOC、すなわち0.3%またはそれ以下(好ましくは0.05〜0.2%)のDOC)抽出法が特に好適である。
【0062】
本発明の方法で単離されたブレブのLOS含有量は、標準として精製LOSを用いるSDS-PAGE電気泳動後の銀染色により測定して、3〜30%、5〜25%、10〜25%、最も好ましくはおよそ20%または正確に20%のLOS含有量とすることが好適である (Tsai, J. Biol. Standardization (1986) 14:25-33に記載される方法を参照されたい)。この方法で標準としてNmen L3 LOSを用いると、一般に、0.1% DOCで抽出したNmen L3免疫型ブレブ中のLOS含有量は約20% LOSとなり、0.2% DOCで抽出すると約15% LOS、0.3% DOCで抽出すると約10% LOS、0.5% DOCで抽出すると約5% LOSとなる。
【0063】
本発明の上記ブレブ単離方法は、L2またはL3 LOSを、やはりブレブ調製物中に存在する外膜タンパク質(例えば、PorAまたはPorB)にその場でコンジュゲートさせる追加の有利なステップを含むことができる。かくして、本発明のさらなる態様は、単離されたブレブ調製物を(内在性の外膜タンパク質を介して)LOSにコンジュゲートさせる本発明の方法である。コンジュゲーションのためにLOSをブレブ調製物に添加してもよいが、LOSはブレブ調製物の表面にもともと存在していることが好ましい。
【0064】
この方法は、ブレブ製剤内のLOS抗原の安定性および/または免疫原性(T細胞ヘルプを提供する)および/または抗原性を有利に高めることができ、したがって、最も高い防御コンフォメーションでの(すなわち、外膜の表面上のその天然環境におけるLOSとしての)T非依存性オリゴ糖免疫原に対してT細胞ヘルプが提供される。その上、ブレブ内のLOSのコンジュゲーションはLOSの無毒化をもたらすことができる(理論によって拘束されることを望まないが、コンジュゲートされるとリピドA部分がより安定に外膜に埋め込まれるため、毒性を生じさせるようにはあまり利用されないと考えられる)。したがって、htrB-またはmsbB-突然変異体からブレブを単離するか、または組成物にポリミキシンBの非毒性ペプチド機能性等価物を添加する、ことによる上記の無毒化方法は必要でなくなる(しかし、さらなる安全性のために無毒化方法を併用してもよい)。
【0065】
こうして、本発明の方法はコンジュゲートされたブレブ調製物を提供するが、これは、典型的には、全体的にコンジュゲートされていないLOSを同量で含む同じブレブと比較して、ブレブ内のLOSの毒性が低下している。LOSの毒性は、例えばヨーロッパ薬局方に載っているLOSウサギ発熱原性アッセイを用いて、当業者により容易に測定され得る。
【0066】
特に、本発明者らは、ブレブ中に存在するLOSがやはりブレブ中に存在する外膜タンパク質にブレブ内様式でコンジュゲートされているブレブを含む組成物を提供する本発明の方法が、ナイセリア属(好ましくは髄膜炎菌)疾患の治療または予防用のワクチンを製造する方法(この方法は、毒性が低下しておりかつ/または天然環境のLOSに対してT依存性殺菌応答を引き出すことができるワクチンを可能にする)の一部であるという点で有利であることを見出した。
【0067】
したがって、本発明は、低下した相変異性の(好ましくは、固定された)LOS免疫型の菌株から、そのようなブレブ内LOSコンジュゲートされたブレブ調製物を製造する方法を提供する。「ブレブ内」(intra bleb)とは、ブレブ中にもともと存在するLOSが同じブレブ上に存在する外膜タンパク質にコンジュゲートされることを意味する。
【0068】
このようなブレブ調製物は、ブレブを単離し、次いでそれらを公知のコンジュゲーション化学に供して、LOSのオリゴ糖部分にある基(例えば、NH2またはCOOH)をブレブ外膜タンパク質上の基(例えば、NH2またはCOOH)に結合させることにより製造することができる。グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、またはグルタルアルデヒド/ホルムアルデヒド混合物を用いる架橋法を使用してもよいが、より選択的な化学、例えばEDACまたはEDAC/NHS (J.V. Staros, R.W. WrightおよびD.M. Swingle. Enhancement by N-hydroxysuccinimide of water-soluble carbodiimide-mediated coupling reactions「水溶性カルボジイミド媒介カップリング反応のN-ヒドロキシスクシンイミドによる増強」. Analytical chemistry 156: 220-222 (1986); ならびにBioconjugates Techniques. Greg T. Hermanson (1996) pp173-176)を用いることが好適である。本発明において使用しうるその他のコンジュゲーション化学またはLOSとタンパク質分子間に共有結合を作ることができる処理法は、EP 941738に記載されている。
【0069】
好ましくは、ブレブ調製物は莢膜多糖体の不在下でコンジュゲートさせる。ブレブは、莢膜多糖体を(天然でまたは突然変異を経て)産生しない菌株から単離したり、または、混入している莢膜多糖体の大部分(60、70、80、90、または99%以上を取り除く)、好ましくは全部から精製したりすることができる。この方法では、ブレブ内LOSコンジュゲーション反応がより一層効率的になる。
【0070】
好ましくは、ブレブ中に存在するLOSの5、10、20、30、40、50、60、70、80、90または95%以上を架橋/コンジュゲートさせる。
【0071】
好ましくは、本発明のブレブは、ブレブのLOS含有量が、標準として精製LOSを用いるSDS-PAGE電気泳動後の銀染色により測定して、3〜30%、5〜25%、10〜25%、15〜22%、最も好ましくはおよそ20%または正確に20%のLOS含有量となるように調製されている(Tsai, J. Biol. Standardization (1986) 14:25-33に記載される方法を参照されたい)。髄膜炎菌性ブレブ中の20% LOSは、ゆるく保持されたLOS分子を除去しうるが該抗原の大部分を保存する0.1%という低濃度のDOC抽出により達成することができる。
【0072】
本発明の方法により製造されるブレブ内コンジュゲートされたブレブが髄膜炎菌から誘導される場合、ブレブが誘導される菌株は莢膜多糖体を産生できない突然変異菌株(例えば、上記の突然変異菌株の1つ、特にsiaD-)であることが好ましい。
【0073】
本発明において使用できる典型的なL3髄膜炎菌株はH44/76 menB株である。典型的なL2菌株はB16B6 menB株または39E髄膜炎菌C型株または株760676である。
【0074】
上述したように、本発明の方法はコンジュゲーションの結果としてブレブの無毒化をある程度まで可能にするので、さらに無毒化する必要はないが、安全性を高めるために、例えば、htrB-またはmsbB-である髄膜炎菌株に由来するブレブを使用するか、またはポリミキシンBの非毒性ペプチド機能性等価物[リピドAに対して高い親和性を有する分子](好ましくはSEAP 2)をブレブ組成物に添加することにより、さらなる無毒化法を行ってもよい。
【0075】
上記の方法では、重要な抗原として特定の免疫型(好ましくはL2またはL3)のLOSを含む髄膜炎菌性ブレブおよび該ブレブを含む免疫原性組成物が本発明の方法により製造される。かかるLOSは相変異性なしに再現可能に産生され、毒性が低下しており(好ましくは、実質的に毒性がなく)、自己免疫の諸問題を回避することができ、T依存性の性質を有し、しかもその天然環境の状態で存在する。
【0076】
Men A、C、YまたはW 莢膜多糖またはオリゴ糖の1つ以上(好ましくは、少なくともMenC、またはMenAとMenC、またはMenCとMenY)を、本発明の方法においてブレブの外膜タンパク質にコンジュゲートさせてもよい。これはLOS架橋と同じ反応で行うことができるが、別個の(好ましくは後続の)反応で行うことが好適である。
【0077】
ブレブ内コンジュゲーションは、好ましくは、次の方法ステップのうちの1つ、2つまたは3つ全てを組み入れるべきである。すなわち、コンジュゲーションpHをpH 7.0より大、好ましくはpH 7.5以上(最も好ましくはpH 9以下)にする;反応中は1〜5%、好ましくは2〜4%、最も好ましくは約3%のスクロースの条件を維持する;コンジュゲーション反応中はNaClを最小限に、好ましくは0.1M、0.05M、0.01M、0.005M、0.001M以下に低下させ、最も好ましくは存在させない。こうした方法の構成はすべて、ブレブがコンジュゲーション方法全体を通して溶液中に安定した状態で存在することを確実にする。
【0078】
EDAC/NHSコンジュゲーション法はブレブ内コンジュゲーションに好適な方法である。EDAC/NHSは、あまりにも高度に架橋しすぎるため濾過性に悪影響を及ぼすホルムアルデヒドに対して好適である。EDACはカルボン酸(LOS中のKDOなど)と反応して活性エステル中間体を生成する。アミン求核試薬(PorBのような外膜タンパク質中のリシンなど)の存在下では、イソウレア副生成物の放出とともにアミド結合が形成される。しかし、EDAC媒介反応の効率はスルホ-NHSエステル中間体の形成により増大させることができる。スルホ-NHSエステルは、EDAC単独とカルボン酸との反応から形成される活性エステルよりも長く水溶液中に残っている。したがって、この2段階法を用いると、アミド結合形成のより高い収率を実現することができる。EDAC/NHSコンジュゲーションは、J.V. Staros, R.W. WrightおよびD.M. Swingle. Enhancement by N-hydroxysuccinimide of water-soluble carbodiimide-mediated coupling reactions. Analytical chemistry 156: 220-222 (1986); ならびにBioconjugates Techniques. Greg T. Hermanson (1996) pp173-176に記載されている。好ましくは、この反応において0.01〜5 mg EDAC/mgブレブ (Lowry により測定したタンパク質基準)、さらに好ましくは0.05〜1 mg EDAC/mgブレブを使用する。用いるEDACの量はサンプル中に存在するLOSの量に依存し、ひいてはブレブを抽出するために用いたデオキシコール酸(DOC)%に依存する。DOC%が低い場合(例えば、0.1%)はEDACを多量(1mg/mg以上)用いるが、DOC%がより高い場合(例えば、0.5%)は、ブレブ内架橋が起こりすぎるのを回避するため、EDACをより少ない量(0.025〜0.1mg/mg)で用いる。
【0079】
したがって、本発明の好ましい方法は、低下した相変異性のLOSを産生させ、ブレブを単離し、EDAC/NHSの存在下にpH 7.0〜pH 9.0 (好ましくは、約7.5)で、1〜5%(好ましくは、約3%)のスクロース中、場合によりNaClが実質的に存在しない条件下で、ブレブをコンジュゲートさせ(上記のとおり)、コンジュゲートされたブレブを反応混合物から単離するステップを含んでなる、ブレブ内コンジュゲートされたLOS(好ましくは、髄膜炎菌性)の製造方法である。
【0080】
この反応に続いて、反応時間の進行につれてブレブ内の高比率のLOSの分子量の増加を示すために、抗LOS(例えば、抗L2または抗L3)モノクローナル抗体を用いた反応混合物のウェスタン分離ゲルを行う。
【0081】
このような技法を用いると、99%の収率でブレブを回収することができる。
【0082】
EDACは、LOSのT依存的免疫原性を向上させるのに十分なほどLOSをOMPに架橋させるが、低い濾過性、凝集およびブレブ間架橋といった問題が生じるほど高度にはLOSを架橋させないという点で、すぐれたブレブ内架橋剤であることが判明した。生成されたブレブの形態は(電子顕微鏡によれば)コンジュゲートされていないブレブの形態と類似している。さらに、上記プロトコルによって、あまりにも高い架橋(ブレブの表面にもともと存在する防御OMP、例えばTbpAまたはHsf、の免疫原性を低下させることがある)が起こるのを回避できた。
【0083】
免疫原性組成物またはワクチンの製造方法も提供され、この方法は、上記の本発明方法により単離されたL2 LOSを調製し、かつ/または上記の本発明方法によりL2 LOS免疫型を有する単離された髄膜炎菌性ブレブを調製し、該L2 LOSおよび/またはブレブを製薬上許容される賦形剤により製剤化するステップを含んでなる。
【0084】
同様に、上記の本発明方法により単離されたL3 LOSを調製し、かつ/または上記の本発明方法によりL3 LOS免疫型を有する単離された髄膜炎菌性ブレブを調製し、該L3 LOSおよび/またはブレブを製薬上許容される賦形剤により製剤化するステップを含んでなる、免疫原性組成物またはワクチンの製造方法も提供される。
【0085】
本発明の有利な方法は、単離されたL2 LOSおよびL2 LOS免疫型を有する単離された髄膜炎菌性ブレブの一方または両方を上記の本発明方法により調製し、単離されたL3 LOSおよびL3 LOS免疫型を有する単離された髄膜炎菌性ブレブの一方または両方を上記の本発明方法により調製し、該L2およびL3ワクチン成分を製薬上許容される賦形剤と共に混合するステップを含んでなる、多価免疫原性組成物またはワクチンの製造方法である。好ましくは、この方法では、上記のように作られる単離されたL2およびL3 LOSを一緒に混合する(最も好ましくは、コンジュゲートさせ、かつリポソーム製剤とする)。さらに好ましくは、この方法では、上記のように作られるL2およびL3ブレブを一緒に混合する。このような組成物は、疾患分離株に観察される髄膜炎菌B免疫型の約70%がL3構造を有し、30%がL2であるので、有利である。したがって、本発明は普遍的な髄膜炎菌Bワクチンを提供しうる方法を開示する。
【0086】
上記の免疫原性組成物またはワクチンの製造方法は、血清群A、C、YまたはWからの1種以上(2、3または4種)の髄膜炎菌性多糖体またはオリゴ糖体(そのまま、あるいはT細胞エピトープを含む担体にコンジュゲートさせたもの)を前記組成物に添加する追加のステップを含んでいてもよい。好ましくは、少なくともCを添加し(最も好ましくは、コンジュゲートさせ)、さらに好ましくは、AとCまたはYとCを添加し(好ましくは、全てをコンジュゲートさせ)、最も好ましくは、A、C、YおよびWを添加する(好ましくは、全てをコンジュゲートさせる)。
【0087】
上記の免疫原性組成物またはワクチンの製造方法に追加しうるさらなるステップは、適当なアジュバントの添加である。適当なアジュバントとしては、アルミニウム塩、例えば水酸化アルミニウムゲル(アルム)またはリン酸アルミニウム(好ましくは、水酸化アルミニウム)が挙げられるが、カルシウム塩(特に、炭酸カルシウム)、鉄塩または亜鉛塩であってもよく、あるいはアシル化チロシンもしくはアシル化糖、カチオンもしくはアニオン的に誘導された多糖類、またはポリホスファゼンの不溶性懸濁液であってもよい。
【0088】
添加しうる適当なTh1アジュバント系には、モノホスホリルリピドA、特に3-脱-O-アシル化モノホスホリルリピドA(または他の非毒性LPS誘導体)、およびモノホスホリルリピドA(好ましくは、3-脱-O-アシル化モノホスホリルリピドA:3D-MPL)[または非毒性LPS誘導体]とアルミニウム塩(好ましくは、リン酸アルミニウム)との組合せが含まれる。増強された系は、WO 94/00153に記載されるようなモノホスホリルリピドAとサポニン誘導体との組合せ、特にQS21[または他のサポニン]と3D-MPL[または非毒性LPS誘導体]との組合せ、あるいはWO 96/33739に記載されるようなQS21[またはサポニン]がコレステロールにより抑えられている、より低い反応原性の組成物を含む。水中油型エマルジョン中にQS21、3D-MPLおよびトコフェロールを含む特に強力なアジュバント処方物がWO 95/17210に記載されているが、これは添加しうる好ましい処方物である。添加しうるその他のアジュバントはサポニン(より好ましくは、QS21)および/または水中油型エマルジョンおよびトコフェロールを含む。非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチド(WO 96/02555)も添加することができる。
【0089】
ワクチン製剤は、一般的に、ワクチンデザイン(Vaccine Design)(「サブユニットおよびアジュバントアプローチ」(Powell M.F. & Newman M.J.編集) (1995) Plenum Press New York)に記載されている。
【0090】
免疫防御量のワクチンは全身または粘膜経路から投与することができる。こうした投与には、筋内、腹腔内、皮内、または皮下経路による注入、あるいは口腔/消化管、気道、尿生殖管への粘膜投与による注入が含まれる。一般的に、それぞれのワクチン用量中のブレブ量は、典型的なワクチン接種者において顕著な有害作用を起こすことなく、免疫防御応答を引き出す量として選択される。かかる量は、特異的な免疫原としてどれを使用するか、また、それをどのように提示させるか、によって変化するだろう。一般的に、各用量はそれぞれのブレブを1〜100μg、好ましくは5〜50μg、最も典型的には5〜25μg含むであろう。
【0091】
ゴーストまたは死菌全細胞ワクチン
本発明者らは、ブレブに関する上記方法が(同一の利点を有する)ゴーストまたは死菌全細胞製剤およびワクチンに関する方法にまで容易に延長しうる、と考える。グラム陰性菌株からゴースト製剤(無傷の外被を有する空の細胞)を製造する方法は、当技術分野において公知である(例えば、WO 92/01791を参照)。ワクチンに使用する不活化細胞を調製するために全細胞を死滅させる方法もまた公知である。したがって、本明細書全体を通して記載されるブレブに関する方法は、本発明の目的において、ゴーストおよび死菌全細胞に関する方法に適用することができる。
【0092】
発酵槽でのナイセリア属細胞の高細胞密度への増殖
本発明者らはまた、LOS相変異が発酵槽で細胞を高細胞密度へと増殖させようとするとき特に問題のあることを見出した。栄養分が不足するようになると、一般的に髄膜炎菌性LOSの免疫型が変化する(特に、オリゴ糖鎖LOS免疫型をより短くする)ようになる。これはL2およびL3菌株、とりわけトランケート型(lgtB-)菌株、の場合に起こりうる。本発明者らは、LOS免疫型を固定させる際の本発明方法がこの問題を軽減することができ、免疫型を変えることなく高細胞密度を可能にしうることを見出した。特に、lgtAの相変異性を低下させる(好ましくは、固定させる)べきである。
【0093】
したがって、本発明のさらなる態様においては、ナイセリア属菌株を高細胞密度へと増殖させる方法が提供され、この方法は、
a) 上記の本発明方法に従って、低下した相変異性へとナイセリア属菌株を遺伝子操作して前記菌株のLOS免疫型を好ましくは固定させ、
b) 前記菌株を発酵槽内で高細胞密度へと増殖させる、
各ステップを含んでなる。
【0094】
好ましくは、L2またはL3髄膜炎菌株を増殖させる(この場合、好ましくは、lgtAの相変異性を低下させる、好ましくは固定させるべきである)。
【0095】
「高細胞密度」とは、鉄を制限しない条件下ではOD450 10〜19、好ましくは12〜16の細胞密度を、鉄を制限した条件下ではOD450 6〜12、好ましくは8〜10の細胞密度を意味する。
【0096】
上記方法は、高細胞密度の培養物からLOSを単離するステップを追加することにより拡張することができる。次いでLOSを担体にコンジュゲートさせ、かつ/または上述したようにリポソームに導入してもよい。
【0097】
あるいはまた、ブレブを単離するステップを追加して、高細胞密度の培養物からブレブを取得することもできる。これは理想的には低濃度の界面活性剤(好ましくはDOC)、一般的には0〜0.3%、好ましくは0.05〜0.2%、最も好ましくはおよそ0.1%または正確に0.1%のデオキシコール酸を用いて行うべきである。
【0098】
ブレブのLOSは、上述したように、やはりブレブに存在する外膜タンパク質とブレブ内コンジュゲートさせることが有利である。
【0099】
上記方法は、上で取得されたLOSを製薬上許容される賦形剤により製剤化することで免疫原性組成物を調製するように拡張することができる。
【0100】
有利には、多価免疫原性組成物の製造方法が提供され、この方法は、特定の免疫型(好ましくはL2)の単離されたLOSまたは単離されたブレブを上記方法により取得し、異なる免疫型(好ましくはL3)の単離されたLOSまたはブレブを上記方法により取得し、これらのLOS成分を製薬上許容される賦形剤と共に混合するステップを含んでなる。
【実施例】
【0101】
以下の実施例は、特に詳細に記述する場合を除いて、当業者には公知で慣用の標準方法を用いて行うものとする。実施例は単なる例示であって、本発明を制限するものではない。
【0102】
実施例1: 固定L3菌株(lgtA固定)の作製
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)のグリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子は、しばしば、相変異(遺伝子発現の高頻度の可逆的オン/オフ切り替え)を媒介する単純な縦列反復配列タンデムリピート(例えば、ホモポリマートラクト)を含む (Jenningsら、1995, Mol Micro 18 724; Jenningsら、1999, Microbiology 145 3013)。これらの遺伝子の反復配列はオープンリーディングフレームで存在し、タンパク質に転写・翻訳される。相変異はホモポリマートラクトを(インフレームで)短縮することにより排除することができる。反復配列を欠失させるための代替法は、反復領域のヌクレオチド配列が同一のアミノ酸配列をコードするが反復を構成しないように、反復領域のヌクレオチド配列を改変することである(実施例3のlgtG「固定」突然変異体を参照されたい)。この研究において、本発明者らは、髄膜炎菌のいくつかのグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子の発現が構成的に「オン」または「オフ」となるように、該遺伝子の発現を「固定」させようとした。この方法では、発現されるLPS抗原を、もはや相変異を受けない特定の構造に固定することができた。
【0103】
LgtAの構成的発現をもたらすlgtA遺伝子の突然変異−lgtA2G突然変異体
lgtA遺伝子の発現を「オン」に固定するために、本発明者らはlgtA遺伝子のホモポリマートラクトを改変して、2個のG残基のみがホモポリマートラクト領域に残存するようにした(野生型株MC58は14個のGを有する;Jenningsら、1995, 前掲)。PCRにおいてプライマーとしてLic31ext: 5’- CCT TTA GTC AGC GTA TTG ATT TGC G - 3’および lgtAG2: 5’-ATC GGT GCG CGC AAT ATA TTC CGA CTT TGC CAA TTC ATC - 3’、鋳型として髄膜炎菌株MC58の染色体DNAを用いて、改変すべき前記領域を増幅させた。後者のプライマーは14Gから2GへのlgtA配列の変更を組み入れた。得られるPCR産物をpT7Blue (Novogen) にクローニングしてプラスミドpT7lgtAG2を作製した。該プラスミドを用いてこの新しい対立遺伝子を髄膜炎菌に形質転換できるように完全なlgtA遺伝子に再構成するため、プラスミドp1B11 (Jenningsら、1995, 前掲)からのBssHII断片をpT7lgtAG2のBssHII部位に正しい方向でクローニングした。ヌクレオチド配列解析により、該遺伝子の正しい配向を確認し、また、14Gから2G残基へのホモポリマートラクトの改変を別にすれば、この配列セグメントが野生型lgtA遺伝子(Genbank登録 NMU25839)の対応部分と同一であることを確認した。同様の方法を用いて、lgtAG2プライマー突然変異の変異体を作製することにより、ホモポリマートラクト領域に3、4、5、7および10個のG残基を有するlgtA対立遺伝子を含む一連の同様のプラスミドを作製した。
【0104】
同様の方法を用いて、ホモポリマートラクトの相変異を固定させることもでき、これは、GGGコドンが別のグリシンコドン(これは、同じアミノ酸配列をコードするが、ヌクレオチド配列が反復性をもたずかつ相変異を起こす可能性がないように配置される)で置換されるようにポリG領域を改変させることにより行う(以下のlgtGの実施例を参照されたい)。さらに、これら2つの方法を組み合わせて用いることもできる。例えば、ホモポリマートラクトを5個のG残基に切断し、かつGGGコドンを別のグリシンコドンで置き換える。
【0105】
lgtAG2を髄膜炎菌株MC58c3の染色体に導入するための菌株MC58c3のpT7lgtAG2による形質転換
lgtAG2突然変異を髄膜炎菌の染色体に導入して突然変異株を作製するために、プラスミドpT7lgtAG2を線状化して、lgtA::kan突然変異を含む髄膜炎菌株MC58c3の形質転換に使用した (Jenningsら、1995, 前掲)。コロニー-イムノブロットにおいてmAb 4A8B2により陽性コロニーを検出した (Jenningsら、1999, 前掲)。この形質転換体のLgtA陽性表現型(L3免疫型構造)がlgtAG2対立遺伝子の染色体への導入の結果であることを、プライマーとしてLic31extおよびLic16ext: 5’- CGA TGA TGC TGC GGT CTT TTT CCA T -3’を用いるlgtA遺伝子の関連部分のPCRと、これに続く同一セットのプライマーを用いるヌクレオチド配列決定により確認した。得られる菌株2G2の遺伝子型はMC58親株; siaD::ery lgtAG2であった。その後、菌株2G2を、lgtB::kan突然変異を含むプラスミド(Jenningsら、1995, 前掲)で形質転換して菌株2G2ecoNIを作製したが、この菌株の遺伝子型はMC58親株; siaD::ery lgtAG2 lgtB::kanであった。
【0106】
実施例2: 固定L3および中間体(lgtB-)のDOCフリーブレブ(非無毒化LOS)を用いた実験は交差殺菌性抗体を誘導した
用いたMC58派生株はB:P1.7.16、opc-、siaD-である。この菌株を、L3(菌株2G2[ホモポリマートラクトをたったの2Gヌクレオチドに減らすように改変された]、lgtAがオンに固定)または中間体エピトープ(菌株2G EcoN1b-1、2G2と同様にlgtAがオンに固定されているが、さらにlgtBがオフになっている)または短鎖型のLPS(菌株C6、lgtEがオフ)のいずれかを発現するように遺伝的に改変した。DOC法またはDOCフリーの方法に従ってOMVを調製した。
【0107】
マウス(1群10匹)を0、20、および28日目に筋内経路で3回免疫した。マウスにはAl(OH)3で製剤化した1または10μg(タンパク質の含有量)のブレブを投与した。血液サンプルを28日目(post II)と42日目(post III)に採取した。
【0108】
殺菌アッセイは、同種菌株(MC58およびH44/76)ならびに2つの異種菌株(M97250687およびM9725078)を外因性補体源としての幼ウサギ血清と共に用いて、プールした血清に対して行った。
【0109】
以下の表にこれらの結果(50%死滅に対する殺菌力価)を示す。
【表2】

【0110】
明らかに、L3(2g2)または中間体(2gecon1b-1)エピトープの存在は交差殺菌性抗体を誘導するが、トランケート型LPS菌株(C6)からのブレブはより低レベルの交差反応性抗体を誘導する。これは特に、1μgのOMVを注射したときに示された。
【0111】
さらに、DOCで精製したOMVの場合に示されるように、ブレブのLPS含有量を低下させると、交差殺菌性抗体の誘導が減少する。LPSの増加は別として、DOCフリーのブレブはまた、リポタンパク質のようなOMVとゆるく相互作用する一部のタンパク質を有利に保持しうると考えられる。
【0112】
実施例3: LgtGの構成的発現をもたらすlgtG遺伝子の突然変異−lgtG「固定」突然変異体
鋳型として髄膜炎菌株35E(L2免疫型タイピング株)を使用し、プライマー対Lg1: 5’-ATG AAG CTC AAA ATA GAC ATT G-3’およびLg21: 5’- ATC TGC GGG CGG CGG CGC GAC TTG GAT-3’、ならびにプライマー対LGdel18: 5’-GAA TTC GGA TCC AAC TGA TTG TGG CGC ATT CC-3’およびLg2UP: 5’-TGC CGT CTG AAG ACT TCA GAC GGC TTA TAC GGA TGC CAG CAT GTC-3’(下線を引いた配列は髄膜炎菌の取込み配列を示す)を用いて2つのPCR産物を取得した。これらの産物を精製し、その後プライマーとしてLg1およびLg2UPを用いるスプライスオーバーラップPCRにおいて使用して最終産物を得、これをpGEM-T Easyベクター(Promega)にクローニングした。得られたプラスミドpL2+の配列決定を行って、lgtGの野生型ポリCトラクト中の11個のC残基からなる野生型配列が5’-CGCCGCCGCCC-3’で置換されていることを確認した。突然変異領域のlgtGコード配列の配列を図4に示す[図4は、髄膜炎菌株35EのlgtG遺伝子の野生型配列のヌクレオチド配列と、プラスミドpL2+に含まれるlgtG「固定」突然変異(下線、太字)のヌクレオチド配列とのアライメントを示す。lgtG::kan突然変異体を構築するために用いるXcmI制限エンドヌクレアーゼ切断部位も示される]。
【0113】
lgtG「固定」突然変異を染色体に導入するための菌株MC58c3lgtAG2のpL2+による形質転換
lgtG「固定」突然変異に形質転換し、かつイムノコロニー-ブロットスクリーニングでLPS表現型を検出するためには、LgtGの発現を「オフ」に固定した菌株を作製することが必要であった。pUK4kanからのカナマイシンカセットをpL2+のXcmI部位にクローニングした。得られたプラスミドplgtG::kanを用いて2G2(上記参照)をカナマイシン耐性に形質転換し、lgtG::kan対立遺伝子の正しい位置を、プライマーとしてLg1およびLg4 5’-AACCGTTTTCCTATTCCCAT-3’を用いるPCRにより確認し、続いて同一のプライマーを用いてヌクレオチド配列解析を行った。得られた菌株c3lgtA2GlgtG::kan-3は、MC58親株; siaD::ery lgtAG2 lgtG::kanの遺伝子型を有していた。次に、この菌株をプラスミドpL2+で形質転換し、L2表現型を有するコロニーについてコロニー-イムノブロット(Mn 42F12.32)でスクリーニングした。陽性コロニーを取り上げて、カナマイシン感受性についてと、プライマーとしてLg1およびLg8 5’-CAC CGA TAT GCC CGA ACT CTA-3’を用いるPCRとの両方により試験し、続いてプライマーLg5 5’-CAC CGC CAA ACT GAT TGT-3’を用いて配列解析を行うことによりlgtG「固定」突然変異がlgtG::kan対立遺伝子に取って代わったことを確認した。得られた菌株c3lgtA2GlgtGL2+は、MC58親株; siaD::ery lgtAG2 lgtG「固定」の遺伝子型を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】L2免疫型とL3またはL4またはL1免疫型とのLOS糖構造の主な相違点を示す。
【図2】L3免疫型とL2免疫型とのLOS糖構造の主な相違点を示す。
【図3】L3免疫型とL1免疫型とのLOS糖構造の主な相違点を示す。
【図4】髄膜炎菌株35EのlgtG遺伝子の野生型配列のヌクレオチド配列と、プラスミドpL2+に含まれるlgtG「固定」突然変異(下線、太字)のヌクレオチド配列とのアライメントを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低下した相変異性のLOS免疫型を有する遺伝子操作ナイセリア属菌株の作製方法であって、以下のステップ:
a) 相変異性LOS合成を示すナイセリア属菌株を選択すること、
b) 該菌株を遺伝子操作することにより、相変異性LOSオリゴ糖合成遺伝子の発現をより低い相変異性にするように該遺伝子のホモポリマーヌクレオチドトラクトを改変すること、
を含んでなる方法。
【請求項2】
LOSオリゴ糖合成遺伝子が該遺伝子の発現を非相変異性にするように改変される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非相変異性であるLOS免疫型を有する遺伝子操作ナイセリア属菌株を作製するための、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ナイセリア属菌株が髄膜炎菌株、好ましくは髄膜炎菌Bである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
L2 LOS免疫型を有する遺伝子操作ナイセリア属菌株を作製するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)において、相変異性L2 LOS合成を示すナイセリア属菌株を選択する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップb)がlgtA遺伝子産物の発現を固定させるステップを含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
lgtA遺伝子産物の発現が、該遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、該遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーヌクレオチドトラクトの長さを短縮することにより固定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
lgtAオープンリーディングフレーム内のホモポリマーGトラクトが8、5または2個連続したGヌクレオチドに短縮される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
lgtA遺伝子産物の発現が、該遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、グリシンをコードする1つ以上のGGGコドンがグリシンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、および/またはセリンをコードするTCGコドンがセリンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、lgtA遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーGヌクレオチドトラクトの配列を変えることにより固定される、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ホモポリマートラクト中の2、3または4つのコドンが、好ましくは同一のアミノ酸をコードするように、変更される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップb)がlgtG遺伝子産物の発現を固定させるステップを含む、請求項5〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
lgtG遺伝子産物の発現が、該遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、該遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーヌクレオチドトラクトの長さを短縮することにより固定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
lgtGオープンリーディングフレーム内のホモポリマーCトラクトが8、5または2個連続したCヌクレオチドに短縮される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
lgtG遺伝子産物の発現が、該遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、プロリンをコードする1つ以上のCCCコドンがプロリンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、および/またはアラニンをコードするGCCコドンがアラニンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、lgtG遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーCヌクレオチドトラクトの配列を変えることにより固定される、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ホモポリマートラクト中の2、3または4つのコドンが、好ましくは同一のアミノ酸をコードするように、変更される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステップb)が、lgtA遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、該遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーGヌクレオチドトラクトの長さを5または2個連続したGヌクレオチドに短縮することにより(また場合により、グリシンをコードする1つ以上のGGGコドンがグリシンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、および/またはセリンをコードするTCGコドンがセリンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、ホモポリマーGヌクレオチドトラクトの配列を変えることにより)、lgtA遺伝子産物の発現を固定させるステップ、および、lgtG遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、プロリンをコードする1、2または3つのCCCコドンがプロリンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、および/またはアラニンをコードするGCCコドンがアラニンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、lgtG遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーCヌクレオチドトラクトの配列を変えることにより、lgtG遺伝子産物の発現を固定させるステップを含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項18】
L3 LOS免疫型を有する遺伝子操作ナイセリア属菌株を作製するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ステップa)において、相変異性L3 LOS合成を示すナイセリア属菌株を選択する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップb)がlgtA遺伝子産物の発現を固定させるステップを含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
lgtA遺伝子産物の発現が、該遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、該遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーヌクレオチドトラクトの長さを短縮することにより固定される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
lgtAオープンリーディングフレーム内のホモポリマーGトラクトが8、5または2個連続したGヌクレオチドに短縮される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
lgtA遺伝子産物の発現が、該遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、グリシンをコードする1つ以上のGGGコドンがグリシンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、および/またはセリンをコードするTCGコドンがセリンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、lgtA遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーGヌクレオチドトラクトの配列を変えることにより固定される、請求項20〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記ホモポリマートラクト中の2、3または4つのコドンが、好ましくは同一のアミノ酸をコードするように、変更される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ステップb)がlgtG遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現を永久的にダウンレギュレーションさせるステップを含む、請求項18〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
lgtG遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現が、好ましくは該遺伝子のプロモーターまたはオープンリーディングフレームの全部または一部を欠失させることにより、スイッチオフされる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ステップb)が、lgtA遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、該遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーGヌクレオチドトラクトの長さを2個連続したGヌクレオチドに短縮することによりlgtA遺伝子産物の発現を固定させるステップ、および、lgtG遺伝子のプロモーターまたはオープンリーディングフレームの全部または一部を欠失させることによりlgtG遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現をスイッチオフするステップを含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項28】
ステップb)が、lgtC遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現を、好ましくは該遺伝子をスイッチオフすることにより、最も好ましくは該遺伝子のプロモーターまたはオープンリーディングフレームの全部または一部を欠失させることにより、永久的にダウンレギュレーションさせるステップを含む、請求項5〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
ステップa)がlgtB-であるナイセリア属菌株を選択するステップを含むか、あるいは、ステップb)が、lgtBまたはlgtE遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現を、好ましくは該遺伝子をスイッチオフすることにより、最も好ましくは該遺伝子のプロモーターまたはオープンリーディングフレームの全部または一部を欠失させることにより、永久的にダウンレギュレーションさせるように該菌株を遺伝子操作するステップをさらに含む、請求項5〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
ステップa)が莢膜多糖を合成できないナイセリア属菌株を選択するステップを含むか、あるいは、ステップb)が、好ましくは以下の遺伝子:siaD(synDとしても知られる)、ctrA、ctrB、ctrC、ctrD、synA(synXおよびsiaAに相当)、synB(siaBに相当)またはsynC(siaCに相当)のうち1つの遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現を永久的にダウンレギュレーションさせることにより、より好ましくは該遺伝子をスイッチオフすることにより、最も好ましくは該遺伝子のプロモーターまたはオープンリーディングフレームの全部または一部を欠失させることにより、莢膜多糖の合成ができないように該菌株を遺伝子操作するステップをさらに含む、請求項5〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
ステップa)がmsbB-および/またはhtrB-であるナイセリア属菌株を選択するステップを含むか、あるいは、ステップb)が、msbBおよび/またはhtrB遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現を、好ましくは該遺伝子をスイッチオフすることにより、最も好ましくは該遺伝子のプロモーターまたはオープンリーディングフレームの全部または一部を欠失させることにより、永久的にダウンレギュレーションさせるように該菌株を遺伝子操作するステップをさらに含む、請求項5〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
請求項5〜17および28〜31のいずれか1項に記載の方法により、固定されたL2免疫型を有する遺伝子操作ナイセリア属菌株を作製し、得られた菌株からL2 LOSを単離するステップを含んでなる、L2 LOSの単離方法。
【請求項33】
L2 LOSを、T細胞エピトープ源を含む担体にコンジュゲートさせる追加のステップ、および/またはL2 LOSをリポソーム製剤で提示させるステップを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
請求項5〜17および28〜31のいずれか1項に記載の方法により、固定されたL2免疫型を有する遺伝子操作ナイセリア属菌株を作製し、得られた菌株からブレブを単離するステップを含んでなる、L2 LOS免疫型を有するナイセリア属ブレブの単離方法。
【請求項35】
ブレブを単離するステップが、0〜0.3%、好ましくは0.05〜0.2%、最も好ましくはおよそ0.1%または正確に0.1%のデオキシコール酸塩による抽出を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
L2 LOSを、やはりブレブ内に存在する外膜タンパク質にブレブ内コンジュゲートさせる追加のステップを含む、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
請求項18〜31のいずれか1項に記載の方法により、固定されたL3免疫型を有する遺伝子操作ナイセリア属菌株を作製し、得られた菌株からL3 LOSを単離するステップを含んでなる、L3 LOSの単離方法。
【請求項38】
L3 LOSを、T細胞エピトープ源を含む担体にコンジュゲートさせる追加のステップ、および/またはL3 LOSをリポソーム製剤で提示させるステップを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
請求項18〜31のいずれか1項に記載の方法により、固定されたL3免疫型を有する遺伝子操作ナイセリア属菌株を作製し、得られた菌株からブレブを単離するステップを含んでなる、L3 LOS免疫型を有するナイセリア属ブレブの単離方法。
【請求項40】
ブレブを単離するステップが、0〜0.3%、好ましくは0.05〜0.2%、最も好ましくはおよそ0.1%または正確に0.1%のデオキシコール酸塩による抽出を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
L3 LOSを、やはりブレブ内に存在する外膜タンパク質にブレブ内コンジュゲートさせる追加のステップを含む、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
単離されたL2 LOSを請求項32または33に記載の方法により取得するか、またはL2 LOS免疫型を有する単離されたナイセリア属ブレブを請求項34〜36のいずれか1項に記載の方法により取得し、該L2 LOSまたはブレブを製薬上許容される賦形剤により製剤化するステップを含んでなる、免疫原性組成物の製造方法。
【請求項43】
単離されたL3 LOSを請求項37または38に記載の方法により取得するか、またはL3 LOS免疫型を有する単離されたナイセリア属ブレブを請求項39〜41のいずれか1項に記載の方法により取得し、該L3 LOSまたはブレブを製薬上許容される賦形剤により製剤化するステップを含んでなる、免疫原性組成物の製造方法。
【請求項44】
単離されたL2 LOSを請求項32または33に記載の方法により取得するか、またはL2 LOS免疫型を有する単離されたナイセリア属ブレブを請求項34〜36のいずれか1項に記載の方法により取得し、単離されたL3 LOSを請求項37または38に記載の方法により取得するか、またはL3 LOS免疫型を有する単離されたナイセリア属ブレブを請求項39〜41のいずれか1項に記載の方法により取得し、該L2およびL3成分を製薬上許容される賦形剤と共に混合するステップを含んでなる、多価免疫原性組成物の製造方法。
【請求項45】
L2またはL3ナイセリア属菌株を高細胞密度へと増殖させる方法であって、以下のステップ:
a) 請求項5〜31のいずれか1項に記載の方法によりナイセリア属菌株を遺伝子操作すること、
b) 該菌株を発酵槽内で高細胞密度へと増殖させること、
を含んでなる方法。
【請求項46】
前記菌株を、鉄を制限しない条件下でOD450 10〜19、好ましくは12〜16の細胞密度へと増殖させるか、または鉄を制限した条件下でOD450 6〜12、好ましくは8〜10の細胞密度へと増殖させる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
L2またはL3ナイセリア属菌株を請求項45または46に記載の方法により高細胞密度へと増殖させ、得られた菌株からL2またはL3 LOSを単離するステップを含んでなる、ナイセリア属L2またはL3 LOSの単離方法。
【請求項48】
L2またはL3 LOSを、T細胞エピトープ源を含む担体にコンジュゲートさせる追加のステップ、および/または、L2またはL3 LOSをリポソーム製剤で提示させるステップを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
L2またはL3ナイセリア属菌株を請求項45または46に記載の方法により高細胞密度へと増殖させ、得られた菌株からブレブを単離するステップを含んでなる、L2またはL3 LOS免疫型を有するナイセリア属ブレブの単離方法。
【請求項50】
ブレブを単離するステップが、0〜0.3%、好ましくは0.05〜0.2%、最も好ましくはおよそ0.1%または正確に0.1%のデオキシコール酸塩による抽出を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
L2またはL3 LOSを、やはりブレブ内に存在する外膜タンパク質にブレブ内コンジュゲートさせる追加のステップを含む、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
単離されたL2もしくはL3 LOSを請求項47または48に記載の方法により取得するか、またはL2もしくはL3 LOS免疫型を有する単離されたナイセリア属ブレブを請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法により取得し、該L2もしくはL3 LOSまたはブレブを製薬上許容される賦形剤により製剤化するステップを含んでなる、免疫原性組成物の製造方法。
【請求項53】
単離されたL2 LOSを請求項47または48に記載の方法により取得するか、またはL2 LOS免疫型を有する単離されたナイセリア属ブレブを請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法により取得し、単離されたL3 LOSを請求項47または48に記載の方法により取得するか、またはL3 LOS免疫型を有する単離されたナイセリア属ブレブを請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法により取得し、該L2およびL3成分を製薬上許容される賦形剤と共に混合するステップを含んでなる、多価免疫原性組成物の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫原性組成物を製造するための、低下した相変異性のL2またはL3 LOS免疫型を有する遺伝子操作ナイセリア属菌株の作製方法であって、以下のステップ:
a) 相変異性LOS合成を示すナイセリア属菌株を選択すること、
b) 該菌株を遺伝子操作することにより、相変異性lgtAおよび/またはlgtG LOSオリゴ糖合成遺伝子の発現をより低い相変異性にするように該遺伝子のホモポリマーヌクレオチドトラクトを改変すること、
c) 該ナイセリア属菌株からL2またはL3 LOSを単離すること、
d) 単離したL2またはL3 LOSを製薬上許容される賦形剤により製剤化すること、
を含んでなる方法。
【請求項2】
LOSオリゴ糖合成遺伝子が該遺伝子の発現を非相変異性にするように改変される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非相変異性であるLOS免疫型を有する遺伝子操作ナイセリア属菌株を作製するための、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ナイセリア属菌株が髄膜炎菌株、好ましくは髄膜炎菌Bである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
L2 LOS免疫型を有する遺伝子操作ナイセリア属菌株を作製するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)において、相変異性のL2 LOS合成を示すナイセリア属菌株を選択する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップb)がlgtA遺伝子産物の発現を固定させるステップを含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
lgtA遺伝子産物の発現が、該遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、該遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーヌクレオチドトラクトの長さを短縮することにより固定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
lgtAオープンリーディングフレーム内のホモポリマーGトラクトが8、5または2個連続したGヌクレオチドに短縮される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
lgtA遺伝子産物の発現が、該遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、グリシンをコードする1つ以上のGGGコドンがグリシンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、および/またはセリンをコードするTCGコドンがセリンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、lgtA遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーGヌクレオチドトラクトの配列を変えることにより固定される、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ホモポリマートラクト中の2、3または4つのコドンが、好ましくは同一のアミノ酸をコードするように、変更される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップb)がlgtG遺伝子産物の発現を固定させるステップを含む、請求項5〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
lgtG遺伝子産物の発現が、該遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、該遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーヌクレオチドトラクトの長さを短縮することにより固定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
lgtGオープンリーディングフレーム内のホモポリマーCトラクトが8、5または2個連続したCヌクレオチドに短縮される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
lgtG遺伝子産物の発現が、該遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、プロリンをコードする1つ以上のCCCコドンがプロリンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、および/またはアラニンをコードするGCCコドンがアラニンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、lgtG遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーCヌクレオチドトラクトの配列を変えることにより固定される、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ホモポリマートラクト中の2、3または4つのコドンが、好ましくは同一のアミノ酸をコードするように、変更される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステップb)が、lgtA遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、該遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーGヌクレオチドトラクトの長さを5または2個連続したGヌクレオチドに短縮することにより(また場合により、グリシンをコードする1つ以上のGGGコドンがグリシンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、および/またはセリンをコードするTCGコドンがセリンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、ホモポリマーGヌクレオチドトラクトの配列を変えることにより)、lgtA遺伝子産物の発現を固定させるステップ、および、lgtG遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、プロリンをコードする1、2または3つのCCCコドンがプロリンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、および/またはアラニンをコードするGCCコドンがアラニンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、lgtG遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーCヌクレオチドトラクトの配列を変えることにより、lgtG遺伝子産物の発現を固定させるステップを含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項18】
L3 LOS免疫型を有する遺伝子操作ナイセリア属菌株を作製するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ステップa)において、相変異性のL3 LOS合成を示すナイセリア属菌株を選択する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップb)がlgtA遺伝子産物の発現を固定させるステップを含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
lgtA遺伝子産物の発現が、該遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、該遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーヌクレオチドトラクトの長さを短縮することにより固定される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
lgtAオープンリーディングフレーム内のホモポリマーGトラクトが8、5または2個連続したGヌクレオチドに短縮される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
lgtA遺伝子産物の発現が、該遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、グリシンをコードする1つ以上のGGGコドンがグリシンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、および/またはセリンをコードするTCGコドンがセリンをコードする他の任意のコドンもしくは保存的突然変異をコードするコドンに変更されるように、lgtA遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーGヌクレオチドトラクトの配列を変えることにより固定される、請求項20〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記ホモポリマートラクト中の2、3または4つのコドンが、好ましくは同一のアミノ酸をコードするように、変更される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ステップb)がlgtG遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現を永久的にダウンレギュレーションさせるステップを含む、請求項18〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
lgtG遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現が、好ましくは該遺伝子のプロモーターまたはオープンリーディングフレームの全部または一部を欠失させることにより、スイッチオフされる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ステップb)が、lgtA遺伝子のオープンリーディングフレームをインフレームで維持しながら、該遺伝子のオープンリーディングフレーム内のホモポリマーGヌクレオチドトラクトの長さを2個連続したGヌクレオチドに短縮することによりlgtA遺伝子産物の発現を固定させるステップ、および、lgtG遺伝子のプロモーターまたはオープンリーディングフレームの全部または一部を欠失させることによりlgtG遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現をスイッチオフするステップを含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項28】
ステップb)が、lgtC遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現を、好ましくは該遺伝子をスイッチオフすることにより、最も好ましくは該遺伝子のプロモーターまたはオープンリーディングフレームの全部または一部を欠失させることにより、永久的にダウンレギュレーションさせるステップを含む、請求項5〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
ステップa)がlgtB-であるナイセリア属菌株を選択するステップを含むか、あるいは、ステップb)が、lgtBまたはlgtE遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現を、好ましくは該遺伝子をスイッチオフすることにより、最も好ましくは該遺伝子のプロモーターまたはオープンリーディングフレームの全部または一部を欠失させることにより、永久的にダウンレギュレーションさせるように、該菌株を遺伝子操作するステップをさらに含む、請求項5〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
ステップa)が莢膜多糖を合成できないナイセリア属菌株を選択するステップを含むか、あるいは、ステップb)が、好ましくは以下の遺伝子:siaD(synDとしても知られる)、ctrA、ctrB、ctrC、ctrD、synA(synXおよびsiaAに相当)、synB(siaBに相当)またはsynC(siaCに相当)のうち1つの遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現を永久的にダウンレギュレーションさせることにより、より好ましくは該遺伝子をスイッチオフすることにより、最も好ましくは該遺伝子のプロモーターまたはオープンリーディングフレームの全部または一部を欠失させることにより、莢膜多糖の合成ができないように該菌株を遺伝子操作するステップをさらに含む、請求項5〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
ステップa)がmsbB-および/またはhtrB-であるナイセリア属菌株を選択するステップを含むか、あるいは、ステップb)が、msbBおよび/またはhtrB遺伝子からの機能性遺伝子産物の発現を、好ましくは該遺伝子をスイッチオフすることにより、最も好ましくは該遺伝子のプロモーターまたはオープンリーディングフレームの全部または一部を欠失させることにより、永久的にダウンレギュレーションさせるように、該菌株を遺伝子操作するステップをさらに含む、請求項5〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
請求項5〜17および28〜31のいずれか1項に記載の方法により、固定されたL2免疫型を有する遺伝子操作ナイセリア属菌株を作製し、得られた菌株からL2 LOSを単離するステップを含んでなる、L2 LOSの単離方法。
【請求項33】
L2 LOSを、T細胞エピトープ源を含む担体にコンジュゲートさせる追加のステップ、および/またはL2 LOSをリポソーム製剤で提示させるステップを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
請求項5〜17および28〜31のいずれか1項に記載の方法により、固定されたL2免疫型を有する遺伝子操作ナイセリア属菌株を作製し、得られた菌株からブレブを単離するステップを含んでなる、L2 LOS免疫型を有するナイセリア属ブレブの単離方法。
【請求項35】
ブレブを単離するステップが、0〜0.3%、好ましくは0.05〜0.2%、最も好ましくはおよそ0.1%または正確に0.1%のデオキシコール酸塩による抽出を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
L2 LOSを、やはりブレブ内に存在する外膜タンパク質にブレブ内コンジュゲートさせる追加のステップを含む、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
請求項18〜31のいずれか1項に記載の方法により、固定されたL3免疫型を有する遺伝子操作ナイセリア属菌株を作製し、得られた菌株からL3 LOSを単離するステップを含んでなる、L3 LOSの単離方法。
【請求項38】
L3 LOSを、T細胞エピトープ源を含む担体にコンジュゲートさせる追加のステップ、および/またはL3 LOSをリポソーム製剤で提示させるステップを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
請求項18〜31のいずれか1項に記載の方法により、固定されたL3免疫型を有する遺伝子操作ナイセリア属菌株を作製し、得られた菌株からブレブを単離するステップを含んでなる、L3 LOS免疫型を有するナイセリア属ブレブの単離方法。
【請求項40】
ブレブを単離するステップが、0〜0.3%、好ましくは0.05〜0.2%、最も好ましくはおよそ0.1%または正確に0.1%のデオキシコール酸塩による抽出を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
L3 LOSを、やはりブレブ内に存在する外膜タンパク質にブレブ内コンジュゲートさせる追加のステップを含む、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
単離されたL2 LOSを請求項32または33に記載の方法により取得するか、またはL2 LOS免疫型を有する単離されたナイセリア属ブレブを請求項34〜36のいずれか1項に記載の方法により取得し、該L2 LOSまたはブレブを製薬上許容される賦形剤により製剤化するステップを含んでなる、免疫原性組成物の製造方法。
【請求項43】
単離されたL3 LOSを請求項37または38に記載の方法により取得するか、またはL3 LOS免疫型を有する単離されたナイセリア属ブレブを請求項39〜41のいずれか1項に記載の方法により取得し、該L3 LOSまたはブレブを製薬上許容される賦形剤により製剤化するステップを含んでなる、免疫原性組成物の製造方法。
【請求項44】
単離されたL2 LOSを請求項32または33に記載の方法により取得するか、またはL2 LOS免疫型を有する単離されたナイセリア属ブレブを請求項34〜36のいずれか1項に記載の方法により取得し、単離されたL3 LOSを請求項37または38に記載の方法により取得するか、またはL3 LOS免疫型を有する単離されたナイセリア属ブレブを請求項39〜41のいずれか1項に記載の方法により取得し、該L2およびL3成分を製薬上許容される賦形剤と共に混合するステップを含んでなる、多価免疫原性組成物の製造方法。
【請求項45】
L2またはL3ナイセリア属菌株を高細胞密度へと増殖させる方法であって、以下のステップ:
a) 請求項5〜31のいずれか1項に記載の方法によりナイセリア属菌株を遺伝子操作すること、
b) 該菌株を発酵槽内で高細胞密度へと増殖させること、
を含んでなる方法。
【請求項46】
前記菌株を、鉄を制限しない条件下でOD450 10〜19、好ましくは12〜16の細胞密度へと増殖させるか、または鉄を制限した条件下でOD450 6〜12、好ましくは8〜10の細胞密度へと増殖させる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
L2またはL3ナイセリア属菌株を請求項45または46に記載の方法により高細胞密度へと増殖させ、得られた菌株からL2またはL3 LOSを単離するステップを含んでなる、ナイセリア属L2またはL3 LOSの単離方法。
【請求項48】
L2またはL3 LOSを、T細胞エピトープ源を含む担体にコンジュゲートさせる追加のステップ、および/または、L2またはL3 LOSをリポソーム製剤で提示させるステップを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
L2またはL3ナイセリア属菌株を請求項45または46に記載の方法により高細胞密度へと増殖させ、得られた菌株からブレブを単離するステップを含んでなる、L2またはL3 LOS免疫型を有するナイセリア属ブレブの単離方法。
【請求項50】
ブレブを単離するステップが、0〜0.3%、好ましくは0.05〜0.2%、最も好ましくはおよそ0.1%または正確に0.1%のデオキシコール酸塩による抽出を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
L2またはL3 LOSを、やはりブレブ内に存在する外膜タンパク質にブレブ内コンジュゲートさせる追加のステップを含む、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
単離されたL2もしくはL3 LOSを請求項47または48に記載の方法により取得するか、またはL2もしくはL3 LOS免疫型を有する単離されたナイセリア属ブレブを請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法により取得し、該L2もしくはL3 LOSまたはブレブを製薬上許容される賦形剤により製剤化するステップを含んでなる、免疫原性組成物の製造方法。
【請求項53】
単離されたL2 LOSを請求項47または48に記載の方法により取得するか、またはL2 LOS免疫型を有する単離されたナイセリア属ブレブを請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法により取得し、単離されたL3 LOSを請求項47または48に記載の方法により取得するか、またはL3 LOS免疫型を有する単離されたナイセリア属ブレブを請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法により取得し、該L2およびL3成分を製薬上許容される賦形剤と共に混合するステップを含んでなる、多価免疫原性組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−500963(P2006−500963A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506113(P2005−506113)
【出願日】平成15年7月31日(2003.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2003/008569
【国際公開番号】WO2004/015099
【国際公開日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【出願人】(397062700)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (37)
【出願人】(505037730)ザ ユニバーシティー オブ クイーンズランド (1)
【Fターム(参考)】